(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記締結工具では、締結完了後には、ジョーおよびジョーケースは、カバー部の先端部側の初期位置に戻される。このような構成の締結工具では、例えば、ノズル、ジョー、またはジョーケースが摩耗すると、初期位置において、ジョーの分割体の適正な配置関係(つまり、ジョーの内径)が維持できず、ジョーがピンを適切に把持できなくなる可能性がある。この場合、スペーサを配置して摩耗により生じた隙間を埋める等の対策が必要となる。
【0006】
本発明は、かかる状況に鑑み、締結工具において、ピン把持部が初期位置においてピンを適切に把持することを可能とするための技術を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、ピンと、ピンが挿通された筒状部とを備えたファスナを介して作業材を締結するように構成された締結工具が提供される。この締結工具は、ハウジングと、ファスナ当接部と、ピン把持部と、被検出部と、検出装置と、モータと、駆動機構とを備えている。
【0008】
ハウジングは、所定の駆動軸に沿って、前記締結工具の前後方向に延在している。ファスナ当接部は、筒状に形成されている。また、ファスナ当接部は、ファスナの筒状部に当接可能に前記ハウジングの前端部に保持されている。ピン把持部は、ファスナのピンの一部を把持可能に構成された複数の把持爪を有する。また、ピン把持部は、駆動軸に沿って前後方向に相対移動可能にファスナ当接部内に同軸状に保持されている。更に、ピン把持部は、ファスナ当接部に対する前後方向の相対移動に連動して、複数の把持爪が駆動軸に対して径方向に移動することで、ピンに対する把持力が変化するように構成されている。
【0009】
被検出部は、ピン把持部と一体的に前記前後方向に移動するように設けられている。検出装置は、前後方向においてピン把持部が所定の検出位置に配置された場合に、被検出部を検出するように構成されている。
【0010】
駆動機構は、モータの動力によって駆動され、初期位置に配置されたピン把持部を駆動軸に沿ってファスナ当接部に対して後方へ相対移動させることで、複数の把持爪に把持されたピンを引っ張って、ファスナ当接部に当接された筒状部を変形させ、これによってファスナを介して作業材を締結するとともに、ピンを破断用の小径部で破断させ、その後、ピン把持部を駆動軸に沿ってファスナ当接部に対して前方へ相対移動させ、検出装置の検出結果に基づいて、初期位置に復帰させるように構成されている。また、締結工具は、検出位置から初期位置までのピン把持部の移動距離である第1の移動距離を調整可能に構成されている。
【0011】
本態様の締結工具は、検出位置から初期位置までのピン把持部の移動距離(第1の移動距離)を調整することができる。第1の移動距離が調整されると、前後方向におけるピン把持部の初期位置が変更されることになる。ピン把持部は、ファスナ当接部に対する前後方向の相対移動に連動して、複数の把持爪が駆動軸に対して径方向に移動することで、ピンに対する把持力が変化するように構成されている。このため、初期位置が前後方向に変更されると、初期位置における複数の把持爪による把持力も変化する。よって、例えば、ファスナ当接部またはピン把持部が摩耗した場合、第1の移動距離を長く、または短く調整することで、初期位置における複数の把持爪の把持力を適正な把持力に調整することができる。これにより、スペーサ等の別部材を用いた対策を不要とすることができる。
【0012】
本態様の締結工具において使用可能なファスナとしては、典型的には、リベットやブラインドリベットと称されるファスナが挙げられる。リベットやブラインドリベットでは、ピンと筒状体(リベット本体またはスリーブとも称される)とは、一体的に形成されている。このようなファスナでは、典型的には、筒状部の一端にはフランジが一体形成されている。また、ピンの軸部は、筒状部を貫通し、筒状部のフランジが形成された一端側に長く突出し、ヘッドは、筒状部の他端に隣接するように突出する。このようなファスナで作業材が締結される場合、作業材は、筒状部の一端部のフランジ部と、ピンが軸方向に引っ張られることで拡径するように変形した筒状部の他端部とによって挟持される。
【0013】
ハウジングは、工具本体とも称される部分である。ハウジングは、モータを収容する部分や、駆動機構を収容する部分等の複数の部分が連結されることで形成されていてもよい。また、ハウジングは、1層構造のハウジングであってもよいし、2層構造のハウジングであってもよい。
【0014】
モータは、直流モータであっても交流モータであってもよいし、ブラシの有無も特に限定されない。但し、小型で大出力が得られるという観点からは、ブラシレスDCモータが採用されることが好ましい。
【0015】
ファスナ当接部の構成は、特に限定されるものではなく、任意の公知の構成を採用可能である。ファスナ当接部は、直接ハウジングに連結されることで、または別部材を介して連結されることでハウジングに保持されればよい。なお、ファスナ当接部は、ハウジングから着脱可能に構成されていてもよい。ピン把持部の構成についても、特に限定されるものではなく、任意の公知の構成を採用可能である。ピン把持部は、典型的には、複数の把持爪を含むジョーと、ジョーの保持部(ジョーケースとも称される)とを主体として構成される。なお、ピン把持部は、ハウジングから着脱可能に構成されていてもよい。
【0016】
被検出部は、ピン把持部、またはピン把持部に直接的または間接的に連結されてピン把持部と一体的に移動する部材に設けられることが好ましい。なお、被検出部は、ピン把持部の一部、またはピン把持部と一体的に移動する部材の一部であってもよい。例えば、駆動機構が、回転部材と移動部材を含む送りネジ機構またはボールネジ機構によって構成される場合には、被検出部は、移動部材および回転部材のうち、ピン把持部に連結されて前後方向に直線状に移動する部材に設けられればよい。
【0017】
検出装置は、ピン把持部が所定の検出位置に配置された場合に被検出部を検出可能であればよく、その検出方式には任意の公知の方式を採用可能である。例えば、非接触方式(磁界検出方式、光学式等)または接触方式等の何れも採用することができる。
【0018】
駆動機構としては、例えば、送りネジ機構やボールネジ機構を好適に採用することができる。送りネジ機構およびボールネジ機構は、何れも回転運動を直線運動に変換可能な機構である。なお、送りネジ機構では、円筒状の回転部材の内周面に形成された雌ネジ部と、回転部材に挿通された移動部材の外周面に形成された雄ネジ部とが直接的に係合(螺合)する。一方、ボールネジ機構では、回転部材と移動部材は、円筒状の回転部材の内周面と、回転部材に挿通された移動部材の外周面との間に形成された螺旋状の軌道内に転動可能に配置された多数のボールを介して係合する。なお、典型的には、回転部材がベアリングを介してハウジングに保持される一方、移動部材がピン把持部に直接的または間接的に連結されるが、移動部材が回転可能にハウジングに支持され、回転部材がピン把持部に直接的または間接的に連結されていてもよい。他には、例えば、ラックアンドピニオン機構が採用されてもよい。
【0019】
なお、駆動機構は、ピン把持部が検出位置に配置される毎に検出装置から得られる検出結果に基づいてピン把持部を初期位置で停止させてもよいし、ある特定の時点でピン把持部が検出位置に配置されたときに得られた検出結果に基づいて、その後、ピン把持部を初期位置で停止させる動作を複数回行ってもよい。言い換えると、ピン把持部を初期位置から後方へ移動させた後、初期位置へ復帰させるまでの締結工程の1サイクル中で、検出と停止とが1対1の関係で行われてもよいし、1回の検出結果が、複数回の締結工程においてピン把持部の停止に利用されてもよい。
【0020】
締結工具において、検出位置から初期位置までのピン把持部の移動距離(第1の移動距離)が調整される方法は、特に限定されるものではない。例えば、駆動機構またはその他の内部機構の配置関係が機械的に調整されることで、第1の移動距離が調整可能であってもよい。このような調整は、例えば、締結工具の工場出荷時や、販売後の修理、メンテナンス作業において行われうる。また、締結工具は、外部から入力された情報等に応じて第1の移動距離を調整するように構成されていてもよい。なお、「検出位置から初期位置までのピン把持部の移動距離(第1の移動距離)」は、検出装置による被検出部の検出時点から、ピン把持部の停止時点までのピン把持部(被検出部)の移動距離と言い換えることもできる。第1の移動距離は、例えば、被検出部の検出後にピン把持部を制動するまでの間の経過時間、被検出部の検出後にモータに供給される駆動パルスの数、被検出部の検出後に回転されるモータの回転角度等を通じて調整することができる。
【0021】
本発明の一態様によれば、締結工具は、第1の移動距離を調整可能に構成された調整装置を備えていてもよい。調整装置が第1の移動距離を調整する方法は、特に限定されるものではない。調整装置は、使用者による外部操作が可能な操作部を介して入力された情報に応じて、第1の移動距離を調整するように構成されていてもよい。また、例えば、調整装置は、過去のピン把持部の相対移動時の実際の移動距離に基づいて、次の移動時の第1の移動距離を自動的に調整してもよい。本態様によれば、調整装置が第1の移動距離を調整するため、細かい機械的な調整作業の手間を省くことができる。
【0022】
本発明の一態様によれば、締結工具は、ピン把持部が検出位置から第2の移動距離だけ移動された場合、ピン把持部を制動するように構成された制動装置を更に備えてもよい。そして、調整装置は、第2の移動距離を調整することで、第1の移動距離を調整するように構成されていてもよい。検出位置から初期位置までのピン把持部の移動距離(第1の移動距離)は、検出装置による検出から制動装置による制動開始までのピン把持部の移動距離(第2の移動距離)と、ピン把持部の制動開始から実際にピン把持部が停止するまでにかかる移動距離との合計である。よって、調整装置は、第2の移動距離を調整することで、第1の移動距離を調整することができる。なお、ここでいう「ピン把持部を制動する」とは、ピン把持部を減速させること、および、停止させることの両方を含む意である。ピン把持部の制動方法として、例えば、モータの駆動を停止する、モータに一定期間逆方向のトルクを与える、モータから駆動機構に至る動力伝達経路において動力伝達を遮断する、等の方法を採用することができる。
【0023】
本発明の一態様によれば、検出位置は、ピン把持部が駆動機構によって初期位置へ向けて前方へ移動される途中の位置として設定されていてもよい。そして、制動装置は、ピン把持部が検出位置に配置され、検出装置によって被検出部が検出される度に、その時点の検出位置を起点として、ピン把持部が第2の移動距離だけ移動された場合、ピン把持部を制動するように構成されていてもよい。本態様によれば、ピン把持部が初期位置に向けて前方へ移動される度に、検出と制動とが1対1の関係で行われるため、ピン把持部の制動、ひいてはピン把持部の初期位置での停止をより正確に行うことができる。
【0024】
本発明の一態様によれば、調整装置は、使用者による外部操作が可能に構成された操作部を介して入力された情報に応じて、第1の移動距離を調整するように構成されていてもよい。本態様によれば、使用者は、操作部を操作することで、適宜、摩耗等に起因する実際のピン把持部の初期位置のズレを補正することができる。なお、操作部は締結工具に設けられていてもよいし、締結工具と有線または無線で通信可能に構成された外部装置として構成されていてもよい。
【0025】
本発明の一態様によれば、締結工具は、モータの駆動を制御するように構成された制御装置を更に備えてもよい。そして、制御装置は、駆動機構がピン把持部を駆動軸に沿ってファスナ当接部に対して前方へ相対移動させるときに、モータの回転速度を制御するように構成されていてもよい。本態様によれば、ファスナの締結後にピン把持部を初期位置へ戻すときにモータの回転速度を制御することで、ピン把持部を初期位置へ戻すのに要する時間、ひいては締結作業の1サイクルに要する時間を最適化することができる。
【0026】
本発明の一態様によれば、制御装置は、駆動機構がピン把持部を駆動軸に沿ってファスナ当接部に対して前方へ相対移動させるときに、モータを定回転制御するように構成されていてもよい。本態様によれば、モータの動作を安定させることができ、ピン把持部をより正確に初期位置で停止させることができる。なお、ここでいう「定回転制御」とは、モータを、所定範囲内の回転速度で(言い換えると、モータの回転速度の変動が所定の閾値以下に抑えられた状態で)駆動するように制御することである。なお、駆動機構がピン把持部を駆動軸に沿ってファスナ当接部に対して前方へ相対移動させる間、全期間に亘って一定の回転速度を基準とした定回転制御が行われてもよいし、複数の期間ごとに異なる回転速度を基準とした定回転制御が行われてもよい。
【0027】
本発明の一態様によれば、被検出部は磁石を備える一方、検出装置は、ホールセンサを備えていてもよい。本態様によれば、ホール素子と磁石を用いた簡便な構成によって、ピン把持部が検出位置に配置されたことを検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、ファスナを使用して作業材を締結可能な締結工具1を例示する。
【0030】
まず、
図1を参照して、締結工具1で使用可能なファスナの一例としてのファスナ8について説明する。ファスナ8は、ブラインドリベットやリベットと称されるタイプの公知のファスナであって、一体的に形成されたピン81と本体部85とで構成されている。
【0031】
本体部85は、円筒状のスリーブ851と、スリーブ851の一端部から径方向外側に突出するフランジ853とを含む筒状体である。ピン81は、本体部85を貫通し、本体部85の両端から突出する棒状体である。ピン81は、軸部811と、軸部の一端部に形成されたヘッド815とを含む。ヘッド815は、スリーブ851の内径よりも大径に形成され、フランジ853とは反対側のスリーブ851の端部から突出するように配置されている。軸部811は、本体部85を貫通して、フランジ853側の端部から軸方向に突出している。軸部811のうち、スリーブ851内に配置された部分には、破断用の小径部812が形成されている。小径部812は、他の部分よりも比較的強度の弱い部分であり、ピン81が軸方向に引っ張られると、最初に破断するように構成されている。軸部811のうち、小径部812に対してヘッド815とは反対側の部分を、ピンテール813という。ピンテール813は、軸部811が破断した場合に、ピン81(ファスナ8)から分離される部分である。
【0032】
なお、締結工具1では、
図1で例示されたファスナ8のほか、ピン81および本体部85の軸方向の長さや径、小径部812の位置等が異なるブラインドリベットタイプのファスナが使用可能である。
【0033】
以下、締結工具1について説明する。まず、
図2を参照して、締結工具1の概略構成について簡単に説明する。
【0034】
図2に示すように、締結工具1の外郭は、主に、アウタハウジング11と、ハンドル15と、ノーズ保持部材14を介して保持されたノーズ部6によって形成されている。
【0035】
本実施形態では、アウタハウジング11は概ね矩形箱状に形成され、所定の駆動軸A1に沿って延在している。ノーズ部6は、駆動軸A1に沿って延在するように、アウタハウジング11の長軸方向における一端部に、ノーズ保持部材14を介して保持されている。なお、アウタハウジング11の他端部には、締結工程において分離されたピンテール813(
図1参照)を収容可能な回収容器7が取り外し可能に装着されている。ハンドル15は、アウタハウジング11の長軸方向における中央部から、駆動軸A1に交差する方向(本実施形態では、概ね直交する方向)に突出している。
【0036】
以下では、締結工具1の方向に関して、説明の便宜上、駆動軸A1の延在方向(アウタハウジング11の長軸方向とも言い換えられる)を締結工具1の前後方向、ノーズ部6が配置されている側を前側、回収容器7が着脱される側を後側と定義する。また、駆動軸A1に直交し、ハンドル15の延在方向に対応する方向を上下方向、アウタハウジング11が配置されている側を上側、ハンドル15の突出端(自由端)側を下側と定義する。また、前後方向および上下方向に直交する方向を左右方向と定義する。
【0037】
図2に示すように、アウタハウジング11には、主に、モータ2と、モータ2の動力によって駆動される駆動機構4と、モータ2の動力を駆動機構4に伝達する伝達機構3とが収容されている。なお、本実施形態では、駆動機構4の一部(詳細には、ボールネジ機構40のナット41)は、インナハウジング13に収容されている。インナハウジング13は、アウタハウジング11に固定状に保持されている。この観点から、アウタハウジング11とインナハウジング13とをハウジング10として一体的にとらえることもできる。
【0038】
ハンドル15は、使用者によって把持可能に構成されている。ハンドル15の上端部(アウタハウジング11に接続する基端部)には、使用者による押圧操作(引き操作)が可能に構成されたトリガ151が設けられている。ハンドル15の下端部には、バッテリ159を着脱可能に構成されたバッテリ装着部158が設けられている。バッテリ159は、締結工具1の各部およびモータ2へ電力を供給するための、繰り返し充電が可能な電源である。なお、バッテリ装着部158およびバッテリ159の構成は周知であるため、これらの説明は省略する。
【0039】
本実施形態の締結工具1は、ファスナ8を介して作業材を締結可能に構成されている。ファスナ8(
図1参照)は、ピンテール813の一部が締結工具1のノーズ部6の先端部に挿入され、本体部85とヘッド815がノーズ部6の先端部から突出した状態で、後述のジョーアセンブリ63によって把持される。そして、締結される作業材Wの一面にフランジ853が当接する位置まで、作業材Wに形成された取付け孔にスリーブ851が挿入される。トリガ151の押圧操作に応じてモータ2を介して駆動機構4が駆動される。これにより、ジョーアセンブリ63に把持されたピンテール813が強く引っ張られると、ヘッド815側のスリーブ851の端部が拡径し、この端部とフランジ853の間に作業材Wが挟持される。また、軸部811が小径部812で破断して、ピンテール813が分離される。その後、駆動機構4によってジョーアセンブリ63が前方に戻されて、締結工程が終了する。
【0040】
このように、本実施形態では、締結工具1は、駆動機構4がジョーアセンブリ63を前方の初期位置から後方の停止位置まで移動させた後、初期位置まで戻す動作を1サイクルとして、ファスナ8で作業材を締結する締結工程を遂行するように構成されている。
【0041】
以下、締結工具1の物理的構成について詳細に説明する。
【0042】
まず、モータ2について説明する。
図3に示すように、モータ2は、アウタハウジング11の後端部の下部に収容されている。本実施形態では、モータ2として、小型で高出力なブラシレスDCモータが採用されている。モータ2は、ステータ21およびロータ23を含むモータ本体部20と、ロータ23から延出されてロータ23と一体的に回転するモータシャフト25とを含む。モータ2は、モータシャフト25の回転軸A2が駆動軸A1の下方で駆動軸A1と平行に(つまり、前後方向に)延在するように配置されている。なお、本実施形態では、モータ2は、その全体が駆動軸A1に対して下方に配置されている。モータシャフト25の前端部は、減速機ハウジング30内に突出している。モータシャフト25の後端部には、モータ2を冷却するためのファン27が固定されている。
【0043】
次に、伝達機構3について説明する。
図3に示すように、本実施形態では、伝達機構3は、遊星減速機31と、中間シャフト33と、ナット駆動ギア35とを主体として構成されている。以下、これらについて順に説明する。
【0044】
遊星減速機31は、モータ2から駆動機構4(詳細には、ボールネジ機構40)に至る動力伝達経路において、モータ2の下流側に配置されて、モータ2のトルクを増大させて中間シャフト33に伝達するように構成されている。本実施形態では、遊星減速機31は、2組の遊星歯車機構と、これらを収容する減速機ハウジング30を主体として構成されている。なお、減速機ハウジング30は樹脂で形成されており、モータ2の前側で、アウタハウジング11に固定状に保持されている。なお、遊星歯車機構の構成自体は周知であるため、ここでの詳細な説明は省略する。モータシャフト25は、遊星減速機31への回転動力の入力シャフトとされている。モータシャフト25の前端部(減速機ハウジング30内に突出している部分)には、遊星減速機31の第1の(上流側の)遊星歯車機構の太陽ギア311が固定されている。第2の(下流側の)遊星歯車機構のキャリア313は、遊星減速機31の最終出力シャフトとされている。
【0045】
中間シャフト33は、キャリア313と一体的に回転するように構成されている。具体的には、中間シャフト33は、モータシャフト25と同軸状に回転可能に配置され、その後端部がキャリア313に連結されている。ナット駆動ギア35は、中間シャフト33の前端部の外周部に固定されている。ナット駆動ギア35は、後述するナット41の外周部に形成された被動ギア411に噛合し、中間シャフト33の回転動力をナット41に伝達する。ナット駆動ギア35と被動ギア411は、減速ギア機構として構成されている。
【0047】
図3に示すように、本実施形態では、駆動機構4は、アウタハウジング11の上部に収容されたボールネジ機構40を主体として構成されている。以下、ボールネジ機構40とその周辺の構成について、順に説明する。
【0048】
図3および
図4に示すように、ボールネジ機構40は、ナット41と、ネジシャフト46とを主体として構成されている。本実施形態では、ボールネジ機構40は、ナット41の回転運動をネジシャフト46の直線運動に変換して、後述のジョーアセンブリ63(
図5参照)を直線状に移動するように構成されている。
【0049】
本実施形態では、ナット41は、前後方向の移動が規制され、且つ、駆動軸A1周りに回転可能な状態で、インナハウジング13に支持されている。ナット41は、円筒状に形成されており、外周部に一体に設けられた被動ギア411を有する。ナット41は、被動ギア411の前側および後側で、ナット41に外嵌された一対のラジアルベアリング412、413を介して、インナハウジング13に対して駆動軸A1周りに回転可能に支持されている。被動ギア411は、ナット駆動ギア35に噛合している。被動ギア411がナット駆動ギア35からモータ2の回転動力を受けることで、ナット41が駆動軸A1周りに回転される。
【0050】
ネジシャフト46は、駆動軸A1周りの回転が規制され、且つ、駆動軸A1に沿って前後方向に移動可能な状態でナット41に係合している。詳細には、
図3および
図4に示すように、ネジシャフト46は、長尺体として構成され、駆動軸A1に沿って延在するように、ナット41に挿通されている。ナット41の内周面に形成された螺旋溝とネジシャフト46の外周面に形成された螺旋溝によって規定される螺旋状の軌道内には、多数のボール(図示略)が転動可能に配置されている。ネジシャフト46は、これらのボールを介してナット41に係合している。これにより、ネジシャフト46は、ナット41の回転駆動によって、駆動軸A1に沿って前後方向に直線状に移動する。
【0051】
図4に示すように、ネジシャフト46の後端部には、ローラ保持部463の中央部が固定されている。ローラ保持部463は、ネジシャフト46に直交して中央部から左右方向に突出するアーム部を有する。ローラ保持部463のアーム部の左右端部には、夫々、ローラ464が回転可能に保持されている。一方、アウタハウジング11の左右の内壁部には、左右一対のローラ464に対応して、夫々、前後方向に延在するローラガイド111が固定されている。なお、詳細な図示は省略するが、ローラ464は、ローラガイド111によって上側と下側への移動が規制されている。これにより、ローラガイド111内に配置されたローラ464は、ローラガイド111に沿って前後方向に転動可能とされている。
【0052】
以上のように構成されたボールネジ機構40において、ナット41が回転軸A1周りに回転されると、ボールを介してナット41に係合したネジシャフト46は、ナット41およびハウジング10に対して前後方向に直線状に移動する。なお、ナット41の回転に伴い、ネジシャフト46には駆動軸A1周りのトルクが作用する可能性もあるが、ローラ464がローラガイド111に当接することで、かかるトルクに起因するネジシャフト46の駆動軸A1周りの回転が規制されている。
【0053】
以下、ネジシャフト46の後端部の周辺構成と、ネジシャフト46の後端部が配置されるアウタハウジング11の後端部内部の構成について説明する。
【0054】
図3に示すように、ネジシャフト46の後端部に固定されたローラ保持部463には、磁石保持部485が固定されている。磁石保持部485は、ネジシャフト46の上側に配置され、磁石保持部485の上端には、磁石486が取り付けられている。磁石486はネジシャフト46と一体化されているため、ネジシャフト46の前後方向の移動に伴って前後方向に移動する。
【0055】
一方、アウタハウジング11には、位置検出機構48が設けられている。本実施形態では、位置検出機構48は、第1センサ481と第2センサ482とを含む。第2センサ482は、第1センサ481よりも後方に配置されている。なお、本実施形態では、第1センサ481および第2センサ482は、何れも、ホール素子を備えたホールセンサとして構成されている。第1センサ481および第2センサ482は、何れも図示しない配線を介してコントローラ156(
図6参照)に電気的に接続されており、磁石486が所定の検出範囲内に配置されている場合、所定の検出信号をコントローラ156へ出力するように構成されている。本実施形態では、第1センサ481および第2センサ482による検出結果は、コントローラ156によるモータ2の駆動制御に使用される。この点については後で詳述する。
【0056】
図3および
図4に示すように、ネジシャフト46の後端部には、延設シャフト47が同軸状に連結固定され、ネジシャフト46に一体化されている。以下、一体化されたネジシャフト46と延設シャフト47を総称して、駆動シャフト460ともいう。駆動シャフト460には、駆動軸A1に沿って駆動シャフト460を貫通する貫通孔461が設けられている。なお、貫通孔461の径は、締結工具1で使用可能なファスナのピンテールの最大径よりも僅かに大きい程度に設定されている。
【0057】
アウタハウジング11の後端部における駆動軸A1上には、アウタハウジング11の内部と外部とを連通する開口部114が形成されている。開口部114の前側には、延設シャフト47の外径と概ね等しい内径を有する円筒状のガイドスリーブ117が固定されている。延設シャフト47(駆動シャフト460)の後端は、ネジシャフト46(駆動シャフト460)が初期位置(
図3および
図4に示す位置)に配置されたときには、ガイドスリーブ117内に配置される。ナット41の回転に伴ってネジシャフト46(駆動シャフト460)が初期位置から後方へ移動されると、延設シャフト47はガイドスリーブ117内を摺動しながら後方へ移動する。
【0058】
また、
図3および
図4に示すように、アウタハウジング11の後端部には、円筒状に形成されて後方へ突出する容器連結部113が設けられている。容器連結部113は、ピンテール813の回収容器7を着脱可能に構成されている。回収容器7は、蓋付きの円筒部材として形成されている。使用者は、容器連結部113を介して、開口部114と回収容器7の内部空間が連通するように回収容器7をアウタハウジング11に取り付けることができる。
【0059】
以下、ノーズ部6およびノーズ保持部材14の構成について説明する。
【0061】
図5に示すように、ノーズ部6は、ファスナ8の本体部85(フランジ853)に当接可能に構成された筒状のアンビル61と、ファスナ8のピン81(ピンテール813)を把持可能に構成され、アンビル61に対して駆動軸A1に沿って相対移動可能にアンビル61内に同軸状に保持されたジョーアセンブリ63とを主体として構成されている。本実施形態では、ノーズ部6は、ノーズ保持部材14を介してハウジング10の前端部に着脱可能に構成されている。以下では、ノーズ部6の方向に関しては、ノーズ部6がハウジング10に装着された状態を基準として説明する。
【0062】
まず、アンビル61について説明する。
【0063】
図5に示すように、本実施形態では、アンビル61は、長尺の円筒状のスリーブ611と、スリーブ611の前端部に固定されたノーズチップ614とを含む。スリーブ611の内径は、後述するジョーアセンブリ63のジョーケース64の外径と概ね等しく設定されている。スリーブ611の外周部の中央部よりもやや後端側には、径方向外側に突出する係止リブ612が設けられている。ノーズチップ614は、前端部がファスナ8のフランジ853に当接可能に構成されるとともに、後端部がスリーブ611内に突出するように配置されている。ノーズチップ614には、ピンテール813を挿入可能な挿入孔615が形成されている。
【0064】
ジョーアセンブリ63について説明する。
図5に示すように、本実施形態では、ジョーアセンブリ63は、ジョーケース64と、連結部材641と、ジョー65と、付勢バネ66とを主体として構成されている。以下、これらの部材について順に説明する。
【0065】
ジョーケース64は、アンビル61のスリーブ611内を駆動軸A1に沿って摺動可能、且つ、内部にジョー65を保持可能な円筒状に形成されている。なお、ジョーケース64は、概ね均一の内径を有するが、前端部のみ、前方へ向けて内径が小さくなるテーパ部として構成されている。つまり、ジョーケース64の前端部の内周面は、前端に向けて縮径する円錐状のテーパ面として形成されている。また、ジョーケース64の後端部には、円筒状の連結部材641の前端部が螺合され、ジョーケース64に一体化されている。なお、連結部材641の後端部は、後述する連結部材49の前端部に螺合可能に構成されている。
【0066】
ジョー65は、全体としては、ジョーケース64のテーパ面に対応する円錐状の筒状体として形成され、ジョーケース64の前端部内に、ジョーケース64と同軸状に配置されている。ジョー65は、ピンテール813の一部を把持可能に構成され、駆動軸A1周りに配置された複数の爪651(例えば、3つの爪)を有する。爪651の内周面には、ピンテール813の把持を容易とするための凹凸が形成されている。
【0067】
付勢バネ66は、前後方向においてジョー65と連結部材641の間に介在配置されている。ジョー65は、付勢バネ66の付勢力によって前方へ付勢され、その外周面がジョーケース64のテーパ面に当接した状態で保持されている。なお、本実施形態では、付勢バネ66は、ジョー65と連結部材641の間に配置されたバネ保持部材67によって保持されている。
【0068】
バネ保持部材67は、ジョーケース64内で駆動軸A1に沿って摺動可能に配置された円筒状の第1部材671および第2部材675を含む。第1部材671は、前側に配置されてジョー65に当接する一方、第2部材675は、後側に配置されて連結部材641に当接する。第1部材671および第2部材675は、ジョーケース64の内径よりも小さい外径を有し、夫々の前端部と後端部には、径方向外側に突出するフランジが設けられている。これらのフランジの外径は、ジョーケース64の内径(テーパ部以外の部分)と概ね等しい。付勢バネ66は、その前端部と後端部が夫々第1部材671および第2部材675のフランジに当接した状態で、第1部材671および第2部材675に外装されている。なお、第1部材671の内部には、後方に突出する円筒状の摺動部672が固定されている。摺動部672の後端部は第2部材675内に摺動可能に挿入されている。摺動部672の内径は、ネジシャフト46の貫通孔461に概ね等しい。
【0069】
以上のような構成により、アンビル61に対し、ジョーケース64が駆動軸A1方向に移動すると、付勢バネ66の付勢力によって、駆動軸A1方向におけるジョーケース64とジョー65との配置関係が変化する。このとき、ジョー65の爪651は、夫々、その外周のテーパ面がジョーケース64のテーパ面に摺動しつつ、駆動軸A1方向および径方向に移動し、隣接する爪651同士が接近または離間する。これにより、ジョー65(爪651)によるピンテール813の把持力は変化する。
【0070】
詳細には、ネジシャフト46が
図5に示す初期位置に配置されている場合、ジョー65は、爪651の外周のテーパ面がジョーケース64のテーパ面に当接するとともに、ジョーケース64の前端部内に突出する上述のノーズチップ614の後端に当接した状態で保持される。なお、ネジシャフト46(駆動シャフト460)の初期位置(つまり、ジョーアセンブリ63の初期位置)は、ジョー65の爪651がピン81を適切に把持可能な位置に設定されている必要がある。詳細は後述するが、本実施形態では、ネジシャフト46およびジョーアセンブリ63の初期位置は、使用者によって操作部157を介して入力された値に応じて調整可能とされている。
【0071】
ジョーアセンブリ63が駆動軸A1に沿ってアンビル61に対して後方へ移動すると、付勢バネ66によって前方に付勢されたジョー65に対し、ジョーケース64は後方に移動する。爪651のテーパ面とジョーケース64のテーパ面との作用で、複数の爪651は、径方向に互いに近接するように移動する。これにより、ジョー65(爪651)によるピンテール813の把持力が増大し、ピンテール813は強固に把持される。反対に、ジョーアセンブリ63が駆動軸A1に沿って前方に戻されると、ジョー65がノーズチップ614の後端に当接し、ジョーケース64はジョー65に対して前方に移動する。複数の爪651は、径方向に互いに離間可能となる。これにより、ジョー65(爪651)によるピンテール813の把持力が低下し、ピンテール813は、外力が付与されるとジョー65から離脱可能となる。なお、締結工具1によるファスナ8の締結工程については、後で詳述する。
【0072】
以下、ノーズ保持部材14について説明する。
【0073】
図5に示すように、ノーズ保持部材14は、円筒状に形成され、駆動軸A1に沿って前方へ突出するようにハウジング10の前端部に固定されている。より詳細には、ノーズ保持部材14は、インナハウジング13の円筒状の前端部に螺合されることで、ハウジング10に一体的に連結されている。ノーズ保持部材14の後側部分の内径は、ネジシャフト46の外径よりも大きく設定されている。また、ノーズ保持部材14の前後方向における中央部には、径方向内側に突出する環状の係止部141が形成されている。係止部141が形成された部分の内径は、ジョーアセンブリ63の外径と概ね等しく、係止部141よりも前側部分の内径は、アンビル61の外径と概ね等しく設定されている。
【0074】
ネジシャフト46の前端部には、連結部材49が連結されている。連結部材49は、ネジシャフト46とジョーアセンブリ63とを連結する部材である。連結部材49は、円筒状に形成されており、その後端部がネジシャフト46の前端部に螺合されることで、ネジシャフト46に一体的に連結されている。連結部材49は、ネジシャフト46の前後方向の移動に伴って、ノーズ保持部材14内を摺動する。連結部材49の前端部は、ジョーアセンブリ63(詳細には、連結部材641)の後端部に螺合されている。つまり、ジョーアセンブリ63は、連結部材49を介してネジシャフト46に一体的に連結されている。なお、連結部材49が連結部材641に連結されると、両者を駆動軸A1に沿って貫通する貫通孔495が形成される。この貫通孔495の径は、ネジシャフト46の貫通孔461に概ね等しい。
【0075】
ノーズ部6のハウジング10に対する連結方法は次の通りである。上述のようにジョーアセンブリ63が連結部材49に連結された後、アンビル61(詳細には、スリーブ611)の後端部がノーズ保持部材14内に挿入される。更に、ノーズ保持部材14の前端部の外周部に円筒状の固定リング145が螺合されることで、ノーズ部6がノーズ保持部材14を介してハウジング10に連結される。なお、アンビル61は、その後端がノーズ保持部材14の係止部141に当接し、係止リブ612が固定リング145の前端部とノーズ保持部材14の前端の間に配置されるように位置決めされている。
【0076】
ノーズ部6がノーズ保持部材14を介してハウジング10に連結されると、
図2に示すように、ノーズ部6の先端からアウタハウジング11の開口部114まで、駆動軸A1に沿って延在する通路70が形成される。より詳細には、通路70は、ノーズチップ614の挿入孔615、ジョー65の内部、バネ保持部材67の内部、連結部材641、49の貫通孔495(
図5参照)、駆動シャフト460の貫通孔461、および開口部114によって形成される通路である。ファスナ8から分離されたピンテール813は、通路70を通過して回収容器7に収容される。
【0077】
以下、ハンドル15について説明する。
【0078】
図2に示すように、ハンドル15の上端部の前側には、トリガ151が設けられている。トリガ151の後側のハンドル15内部には、トリガ151の押圧操作に応じてオン状態とオフ状態の間で切り替えられるスイッチ152が収容されている。
【0079】
ハンドル15の下端部は、矩形箱状に形成され、コントローラ収容部155を構成している。コントローラ収容部155内部には、メイン基板150が収容されている。メイン基板150には、締結工具1の動作を制御するコントローラ156、後述の3相インバータ201、電流検出アンプ205等が搭載されている。本実施形態では、コントローラ156として、CPU、ROM、RAM、タイマ等を含むマイクロコンピュータで構成された制御回路が採用されている。また、コントローラ収容部155の上部には、使用者による外部操作に応じて、各種の情報を入力可能な操作部157が設けられている。本実施形態では、操作部157は、ネジシャフト46およびジョーアセンブリ63の初期位置の調整のための情報(具体的には、後述の移動距離D1(制動待機時間)の設定値を増減するための値)を入力可能なボタンを備えている。
【0080】
以下、締結工具1の電気的な構成について説明する。
【0081】
図6に示すように、締結工具1は、コントローラ156と、三相インバータ201と、ホールセンサ203とを備えている。三相インバータ201は、6つの半導体スイッチング素子を用いた三相ブリッジ回路を備えており、コントローラ156からの制御信号が示すデューティ比に従って三相ブリッジ回路の各スイッチング素子をスイッチング動作させることで、そのデューティ比に応じたパルス状の電流(駆動パルス)をモータ2に供給する。ホールセンサ203は、モータ2の各相に対応して配置される3つのホール素子を備えており、ロータ22の回転角度を示す信号を出力するように構成されている。コントローラ156は、ホールセンサ203から入力された信号に基づいて、三相インバータ201を介してモータ2への通電を制御することで、モータ2の回転速度を制御する。なお、回転速度の制御には、PWM制御が用いられる。
【0082】
また、コントローラ156には、電流検出アンプ205が電気的に接続されている。電流検出アンプ205は、モータ2の駆動電流をシャント抵抗によって電圧に変換し、更にアンプによって増幅した信号をコントローラ156に出力する。
【0083】
更に、コントローラ156には、トリガ151のスイッチ152、操作部157、第1センサ481、および第2センサ482が電気的に接続されている。コントローラ156は、スイッチ152、操作部157、第1センサ481、および第2センサ482から出力される信号に基づいて、適宜、モータ2の駆動(駆動機構4の動作)を制御する。
【0084】
ところで、本実施形態では、上述のように、ファスナ8の締結工程の1サイクルにおいて、ネジシャフト46は、初期位置から停止位置まで後方へ移動された後、停止位置から初期位置まで前方へ戻される。処理の詳細は後述するが、ネジシャフト46の移動は、第1センサ481と第2センサ482の検出結果に基づいて、コントローラ156によるモータ2の駆動制御を通じて行われる。ここで、
図7を参照して、本実施形態におけるネジシャフト46の前後方向位置と、第1センサ481および第2センサ482との関係について説明する。なお、上述の通り、磁石486はネジシャフト46と一体化されているため、ネジシャフト46およびジョーアセンブリ63の位置は、磁石486の位置と対応している。図中の矢印R3は、磁石486の移動範囲を示している。また、矢印Pは、1サイクル中の磁石486の移動方向を示している。
【0085】
図7に示すように、ネジシャフト46が初期位置に配置されている場合、磁石486は、第1センサ481の検出範囲R1の略中央部(486Aに示す位置)に配置されている。このとき、第1センサ481は、磁石486を検出し、コントローラ156に検出信号を出力している。ネジシャフト46が後方へ移動され、磁石486が検出範囲R1から離脱すると、第1センサ481からの検出信号の出力がオフとなる。ネジシャフト46が更に後方へ移動され、磁石486が486Bに示す位置に到達して、第2センサ482の検出範囲R2に進入すると、第2センサ482は、検出信号の出力を開始する。以下、後方への移動過程で磁石486が第2センサ482によって検出されるネジシャフト46の位置を、後方検出位置という。
【0086】
ネジシャフト46が後方検出位置に配置されると、モータ2が制動され、ネジシャフト46はモータ2が完全に停止するまで後方に移動し、停止位置で停止する。ネジシャフト46が停止位置に配置されている場合、磁石486は検出範囲R2の略中央部(486Cに示す位置)に配置される。このとき、第2センサ482は検出信号を出力している。
【0087】
ネジシャフト46が停止位置から前方に移動され、磁石486が検出範囲R2から離脱すると、第2センサ482からの検出信号の出力はオフとなる。ネジシャフト46が更に前方へ移動され、磁石486が486Dに示す位置に到達して、検出範囲R1に進入した時点で、第1センサ481は、検出信号の出力を開始する。以下、前方への移動過程で磁石486が第1センサ481によって検出されるネジシャフト46の位置を、前方検出位置という。ネジシャフト46が前方検出位置から予め設定された移動距離D1だけ前方へ移動し、磁石486が486Eに示す位置に到達すると、モータ2が制動されることで、ネジシャフト46も制動される。このときのネジシャフト46の位置を、制動開始位置という。モータ2が制動された後も、ネジシャフト46はモータ2が完全に停止するまで前方に移動し、初期位置で停止する。
【0088】
このように、本実施形態では、ネジシャフト46が初期位置に戻されるときには、ネジシャフト46が前方検出位置から移動距離D1だけ前方の制動開始位置まで移動されると、モータ2を介してネジシャフト46が制動される。ネジシャフト46は、減速しつつ、制動開始位置から移動距離D2だけ前方に移動され、初期位置で停止する。つまり、前方検出位置から初期位置までのネジシャフト46の移動距離D3は、移動距離D1と移動距離D2の合計であるから、移動距離D1の増減に対応して移動距離D3も増減する。
【0089】
なお、ここまででは、ネジシャフト46の前後方向位置と、第1センサ481および第2センサ482との関係を説明したが、上述のように、ジョーアセンブリ63はネジシャフト46と一体的に前後方向に移動するため、ネジシャフト46の前後方向位置に対応するジョーアセンブリ63の前後方向位置と、第1センサ481および第2センサ482との関係についても同じことがいえる。以下では、説明の簡単化のため、ネジシャフト46の位置を用いて説明するが、ネジシャフト46の位置をジョーアセンブリ63の位置と読み替えることができる。
【0090】
上述のように、本実施形態では、ネジシャフト46(駆動シャフト460)の初期位置(つまり、ジョーアセンブリ63の初期位置)は、ジョー65の爪651がピン81を適切に把持可能な位置に設定される必要がある。具体的には、初期位置は、ジョー65の内部にピンテール813を挿入可能、且つ、ピンテール813がジョー65の内部に挿入された場合、爪651が、ファスナ8が自重でノーズ部6から脱落しない程度の把持力でピンテール813を緩く把持できる位置に設定されることが好ましい。工場出荷時には、初期位置は適切な位置に設定されている。しかしながら、アンビル61やジョーアセンブリ63(ジョーケース64またはジョー65)の摩耗や位置ズレ等に起因して、ネジシャフト46が工場出荷時の初期位置に配置されたときのジョー65の把持力が、当初とは変わってしまい、ピン81を適切に把持できなくなる場合がある。また、使用者によって、適切と感じる把持力には若干の差が生じうる。
【0091】
そこで、本実施形態の締結工具1は、ネジシャフト46の初期位置を調整可能に構成されている。より詳細には、使用者は、操作部157を操作することで、設定された移動距離D1を変更するための値を入力することができる。本実施形態では、移動距離D1に対応するパラメータとして、磁石486が486Dに示す位置で第1センサ481によって検出された後、モータ2の制動を開始するまでの間の時間(以下、制動待機時間という)が用いられる。なお、制動待機時間の初期値は、モータ2の仕様とその回転速度に応じて予め定められ、例えば、コントローラ156のROMに記憶されている。なお、モータ2の回転速度が速いほど、制動に要する時間がかかるため、制動待機時間は短く設定される。コントローラ156は、操作部157を介して入力された値に応じて、制動待機時間の初期値、または初期値から変更された後の設定値を調整する。これにより、前方検出位置から初期位置までのネジシャフト46の移動距離D3、つまり、ネジシャフト46の初期位置を調整することができる。
【0092】
以下、
図8〜
図11を参照して、ファスナ8の締結工程において、コントローラ156(詳細には、CPU)によって実行されるモータ2の駆動制御処理について説明する。なお、
図8に示すモータ2の駆動制御処理は、バッテリ159がバッテリ装着部158に装着されることで締結工具1への電力供給が開始されると開始され、電力供給が停止されると終了される。なお、以下の説明では、処理中の各「ステップ」を「S」と簡略表記する。
【0093】
モータ2の駆動制御処理開始時(締結工程の開始時)には、ネジシャフト46は初期位置に配置されている。よって、
図9の時間t0で示すように、第1センサ481は検出信号を出力する一方、第2センサ482の出力はオフ状態である。また、トリガ151のスイッチ152はオフ状態にあり、出力されるデューティ比およびモータ2の回転速度はゼロである。
図8に示すように、処理が開始されると、コントローラ156は、初期位置の設定を行う(S101)。具体的には、コントローラ156は、予めROMに記憶された制動待機時間の初期値をRAMに読み出す。コントローラ156は、操作部157からの入力を受け付けた場合、入力された値に応じて初期値を変更し、後の処理で使用される設定値として記憶する。つまりS101において、工場出荷時等に予め設定された初期位置が、入力された値に応じて変更されることとなる。
【0094】
なお、コントローラ156が不揮発性メモリを備える場合には、制動待機時間の初期値が変更された場合、最新の制動待機時間の設定値は不揮発性メモリに記憶されてもよい。この場合、新たにモータの駆動制御処理が開始される際、不揮発性メモリに記憶された設定値が読みだされ、使用されればよい。この場合、モータの駆動制御処理の都度、使用者が操作部157を操作して初期値を調整しなおす手間を不要とすることができる。
【0095】
コントローラ156は、トリガ151のスイッチ152がオフ状態の間は、操作部157からの入力に応じて初期位置を設定する処理を継続する(S102:NO、S102)。使用者は、上述のようにピン81をノーズ部6の先端に装着してジョー65に緩く把持させ、本体部85を作業材Wの取付け孔に挿入する(
図5参照)。使用者がトリガ151を押圧操作すると、スイッチ152がオン状態に切り替えられる(S102:YES)。これに応じて、コントローラ156は、モータ2の駆動を開始する(S103)(
図9の時間t1)。より詳細には、コントローラ156は、三相インバータ201を介してモータ2への通電を開始する。このときのモータ2(ロータ23)の回転方向は、ネジシャフト46をハウジング10に対して後方へ移動させる正転方向に設定される。また、デューティ比は100%に設定される。
【0096】
コントローラ156は、スイッチ152がオン状態の間、第2センサ482の検出信号を監視し、ネジシャフト46が後方検出位置に到達していない場合(第2センサ482の検出信号がオフの場合)は、モータ2の駆動を継続する(S104:YES、S105:NO、S103)(
図9の時間t1と時間t2の間の期間)。この間、ネジシャフト46とジョーアセンブリ63が後方へ移動されることで、ジョー65によってピン81が強固に把持され、後方へ引っ張られる。また、磁石486は第1センサ481の検出範囲R1から離脱し、第1センサ481からの検出信号の出力はオフとなる。なお、
図10に示すように、締結工具1は、ネジシャフト46が第2センサ482に対応する後方検出位置まで移動される前に、ファスナ8によって作業材Wを締結するとともに、ピン81を破断させ、ジョー65に把持されたピンテール813を分離する。その後、分離されたピンテール813がジョー65に把持された状態で、ネジシャフト46とジョーアセンブリ63は更に後方へ移動される。
【0097】
トリガ151の押圧操作が解除され、スイッチ152がオフ状態となった場合(S104:NO)、または、ネジシャフト46が後方検出位置に到達し、第2センサ482からの検出信号を認識した場合(S105:YES)、コントローラ156は、モータ2を制動することで、ネジシャフト46およびジョーアセンブリ63を制動する(減速させる)(S106)(
図9の時間t2)。なお、本実施形態では、コントローラ156は、モータ2への通電を停止する(デューティ比をゼロとする)ことでモータ2を制動する。モータ2の制動により、モータ2の回転速度がゼロとなると、ネジシャフト46は停止位置で停止する(
図9の時間t3)。なお、このとき、
図11に示すように、磁石486は第2センサ482の真下に配置されている。
【0098】
コントローラ156は、トリガ151のスイッチ152からの信号を監視し、スイッチ152がオン状態の間は待機する(S107:NO、S107)(
図9の時間t3と時間t4の間の期間)。この間、ネジシャフト46は停止位置で停止されており、磁石486は第2センサ482の検出範囲R2内にあるため、第2センサ482は検出信号を出力している。
【0099】
使用者がトリガ151の押圧操作を解除すると、スイッチ152がオフ状態に切り替えられる(S107:YES)。これに応じて、コントローラ156は、モータ2の駆動を開始する(S108)(
図9の時間t4)。より詳細には、コントローラ156は、三相インバータ201を介してモータ2への通電を開始する。このときのモータ2の回転方向は、ネジシャフト46をハウジング10に対して前方へ移動させる逆転方向に設定される。なお、本実施形態では、ネジシャフト46の前方への移動時には、コントローラ156は、定回転制御を行う。なお、定回転制御とは、モータ2を、所定範囲内の回転速度で(言い換えると、モータ2の回転速度の変動が所定の閾値以下に抑えられた状態で)駆動するように制御することである。このときの回転速度は、制動開始位置に到達した後に安定した制動を実現できる範囲で最高速度に設定されており、デューティ比は100%よりは低く設定されている。
【0100】
コントローラ156は、第1センサ481の検出信号を監視し、ネジシャフト46が前方検出位置に到達していない場合(第1センサ481の検出信号の出力がオフの場合)は、モータ2の駆動を継続する(S109:NO、S108)(
図9の時間t4と時間t5の間の期間)。この間、分離されたピンテール813がジョー65に把持された状態で、ネジシャフト46とジョーアセンブリ63が前方へ移動される。また、磁石486は第2センサ482の検出範囲R2から離脱し、第2センサ482からの検出信号の出力はオフとなる。
【0101】
ネジシャフト46が前方検出位置に到達し、コントローラ156が第1センサ481からの検出信号を認識した場合(S109:YES)、コントローラ156は、タイマによる計時を開始し、RAMに記憶されている制動待機時間が経過するまで、モータ2の駆動を継続する(S110)(
図9の時間t5と時間t6の間の期間)。つまり、制動待機時間に対応する移動距離D1だけ、ネジシャフト46が前方へ移動される。そして、コントローラ156は、制動待機時間が経過すると、モータ2を制動することで、ネジシャフト46およびジョーアセンブリ63を制動する(減速させる)(S111)(
図9の時間t6)。なお、コントローラ156は、S111でも、S106と同様、モータ2への通電を停止する(デューティ比をゼロとする)ことでモータ2を制動する。モータ2の制動により、モータ2の回転速度がゼロとなると、ネジシャフト46は初期位置で停止する(
図9の時間t7)。これをもって締結工程の1サイクルが終了する。コントローラ156は、S101の処理に戻る。
【0102】
以上に説明したように、本実施形態の締結工具1では、ジョーアセンブリ63は、ジョー65の複数の爪651がピン81を把持した状態で、アンビル61に対して後方に移動され、ファスナ8を介して作業材Wが締結されるとともにピン81が破断した後、前方の初期位置まで戻される。初期位置までのジョーアセンブリ63の移動は、ジョーアセンブリ63と一体的に前後方向に移動する磁石486の検出結果に基づいて行われる。磁石486は、ジョーアセンブリ63が前方検出位置に配置された場合に、第1センサ481によって検出される。なお、本実施形態では、ホール素子を備えたホールセンサとして構成された第1センサ481と、ネジシャフト46に取り付けられた磁石486とを用いた簡便な構成によって、ジョーアセンブリ63が検出位置に配置されたことを検出することができる。
【0103】
ジョーアセンブリ63は、前方検出位置から移動距離D3だけ更に移動して、初期位置で停止する。本実施形態では、コントローラ156は、前方検出位置から初期位置までのジョーアセンブリ63の移動距離D3を調整することができる。移動距離D3が調整されると、ジョーアセンブリ63の初期位置が変更されることになる。ジョーアセンブリ63は、アンビル61に対する前後方向の相対移動に連動して、複数の爪651が駆動軸A1に対して径方向に移動することで、ピン81に対する把持力が変化するように構成されている。このため、ジョーアセンブリ63の初期位置が前後方向に変更されると、初期位置における爪651の把持力も変化する。よって、例えば、アンビル61またはジョーアセンブリ63が摩耗した場合、コントローラ156が移動距離D3を長く、または短く調整することで、初期位置における爪651の把持力を適正な把持力に調整することができる。これにより、スペーサ等の別部材を用いた対策を不要とすることができる。
【0104】
特に、本実施形態では、コントローラ156は、使用者の外部操作によって操作部157から入力された値に応じて移動距離D3を調整するように構成されている。よって、使用者は、操作部157を操作することで、適宜、摩耗等に起因して生じるジョーアセンブリ63の初期位置のズレを補正することができる。また、操作部157を操作することで、ジョーアセンブリ63の初期位置を、爪651が所望の把持力を発揮する位置に調整することができる。
【0105】
更に、本実施形態では、コントローラ156がモータ2の制動を介してジョーアセンブリ63を制動し、停止させるように構成されている。そして、コントローラ156は、前方検出位置から制動開始位置までの移動距離D1(詳細には、移動距離D1に対応する制動待機時間)を調整することで、前方検出位置から初期位置までのジョーアセンブリ63の移動距離D3を調整するように構成されている。前方検出位置から初期位置までのジョーアセンブリ63の移動距離D3は、移動距離D1と、ジョーアセンブリ63(モータ2)の制動開始から、実際にジョーアセンブリ63が停止するまでにかかる移動距離D2との合計である。よって、移動距離D1を調整することで、初期位置を調整することができる。なお、本実施形態では、コントローラ156がモータ2の駆動を停止させるという簡便な方法でジョーアセンブリ63を制動している。
【0106】
また、本実施形態では、前方検出位置は、ジョーアセンブリ63が駆動機構4によって初期位置へ向けて前方へ移動される途中の位置として設定されている。そして、コントローラ156は、ジョーアセンブリ63が前方検出位置に配置され、第1センサ481によって磁石486が検出される度に、その検出時点の前方検出位置を起点として、ジョーアセンブリ63が移動距離D1だけ前方へ移動すると(制動待機時間が経過すると)、モータ2を制動する。つまり、ジョーアセンブリ63が初期位置に向けて前方へ移動される度に、検出と制動とが1対1の関係で行われているため、ジョーアセンブリ63の制動、ひいてはジョーアセンブリ63の初期位置での停止をより正確に行うことができる。
【0107】
本実施形態では、モータ2の駆動を制御するコントローラ156は、駆動機構4がジョーアセンブリ63を駆動軸A1に沿ってアンビル61に対して前方へ相対移動させるときに、モータ2の回転速度を制御するように構成されている。これにより、ジョーアセンブリ63を初期位置へ戻すのに要する時間、ひいては締結作業の1サイクルに要する時間を最適化することができる。特に、本実施形態では、定回転制御が行われるため、モータ2の動作を安定させることができ、ジョーアセンブリ63をより正確に初期位置で停止させることができる。
【0108】
上記実施形態は単なる例示であり、本発明に係る締結工具は、例示された締結工具1の構成に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。なお、これらの変更は、これらのうちいずれか1つのみ、あるいは複数が、独立して、または実施形態に示す締結工具1、あるいは各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
【0109】
モータ2、伝達機構3、および駆動機構4の構成は、適宜、変更されてよい。例えば、モータ2としてブラシ付のモータが採用されてもよいし、交流モータが採用されてもよい。例えば、遊星減速機31の遊星歯車機構の数や中間シャフト33の配置等が変更されてもよい。また、駆動機構4は、例えば、ナット41と、ボールを介してナットに係合するネジシャフト46とを備えたボールネジ機構40に代えて、内周部に雌ネジが形成されたナットと、外周部に雄ネジが形成され、ナットに直接螺合されたネジシャフトとを備えた送りネジ機構が採用されてもよい。また、ボールネジ機構40は、ネジシャフト46が、前後方向の移動が規制され、且つ、回転可能に支持される一方、ナット41が、ネジシャフト46の回転に伴って前後方向に移動するように構成されていてもよい。この場合、ジョーアセンブリ63は、直接的または間接的にナット41に連結されればよい。
【0110】
ノーズ部6のアンビル61およびジョーアセンブリ63の構成は、適宜、変更されてよい。例えば、アンビル61の形状やハウジング10への連結態様は変更されてもよい。ジョーアセンブリ63は、アンビル61に対する前後方向の相対移動に連動して、ジョー65(爪651)が径方向に移動することで、ピン81に対する把持力が変化するように構成されていればよく、例えば、ジョーケース64や爪651の形状、バネ保持部材67の構成、ネジシャフト46との連結態様等は、適宜、変更されてよい。
【0111】
上記実施形態では、コントローラ156は、使用者の外部操作に応じて操作部157から入力された値に基づいて、前方検出位置から制動開始位置までの移動距離D1に対応する制動待機時間を変更することで、前方検出位置から初期位置までのジョーアセンブリ63の移動距離D3を調整している。一方、コントローラ156は、ジョーアセンブリ63の前方検出位置から初期位置への過去の実際の移動距離に基づいて、次に検出位置から初期位置へ移動するときの移動距離D3を自動的に調整してもよい。例えば、コントローラ156は、ホールセンサ203からの出力によって特定される制動開始後のモータ2の実回転角度(つまり、実際の移動距離)に基づいて制動待機時間を変更することで、前方検出位置から初期位置までのジョーアセンブリ63の移動距離D3を調整してもよい。また、コントローラ156は、設定されている移動距離D3と実際の移動距離とにズレが生じた場合、モータ2を正転方向または逆転方向に駆動し、ジョーアセンブリ63を移動させて位置を補正してもよい。
【0112】
移動距離D3(移動距離D1)の調整に使用されるパラメータとして、制動待機時間以外に、例えば、磁石486の検出からモータ2の制動開始までにモータ2に供給される駆動パルスの数、または、磁石486の検出からモータ2の制動開始までのモータ2の回転角度(回転数)等を採用することができる。
【0113】
上記実施形態では、駆動機構4は、ジョーアセンブリ63が前方検出位置に配置される毎に第1センサ481から得られる検出結果に基づいてジョーアセンブリ63を初期位置で停止させている。一方、駆動機構4は、ある時点でジョーアセンブリ63が特定の検出位置に配置されたときに得られた検出結果に基づいて、その後、ジョーアセンブリ63を初期位置で停止させる動作を複数回行うように構成されていてもよい。例えば、締結工具1への電源投入時に、接触式または非接触式の原点センサを用いてジョーアセンブリ63(ネジシャフト46)が原点位置(例えば、前後方向における移動可能範囲の最前方位置または最後方位置)に配置される。その後の締結工程では、駆動機構4は、原点センサの検出結果に基づき、ジョーアセンブリ63を初期位置で停止させればよい。
【0114】
具体的には、コントローラ156が、モータ2に供給された駆動パルスの数に基づいてモータ2を制御することで、ジョーアセンブリ63を、原点位置から初期位置、初期位置から停止位置、更に、停止位置から制動開始位置まで移動させ、制動開始位置でモータ2を制動すればよい。その後は、コントローラ156は、モータ2に供給された駆動パルスの数に基づいてモータ2を制御することで、ジョーアセンブリ63を、初期位置から停止位置、更に、停止位置から制動開始位置まで移動させ、制動開始位置でモータ2を制動するというサイクルを繰り返せばよい。つまり、原点センサによる原点位置の検出は、締結工程毎に行われる必要はなく、電源投入時の原点センサの検出結果が、その後の1または複数の締結工程で使用されてもよい。この場合、コントローラ156は、操作部157からの入力に応じて、または自動的に駆動パルスの数を変更することで、原点位置から制動開始位置までのジョーアセンブリ63の移動距離の調整を行うことができる。
【0115】
上記実施形態では、第1センサ481と第2センサ482には、磁界検出式のセンサが採用されているが、他の方式のセンサ(例えば、フォトインタラプタ等の光学式のセンサ)や機械式のスイッチが採用されてもよい。上述の原点センサについても同様である。
【0116】
上記実施形態では、ジョーアセンブリ63が前方検出位置から制動開始位置まで移動される間、モータ2はそのままの状態で駆動され、ジョーアセンブリ63が制動開始位置まで移動されると、モータ2の駆動が停止されることで、ジョーアセンブリ63が制動されている。これに代えて、例えば、ジョーアセンブリ63の制動は、モータ2に一定期間逆方向のトルクを与えることで行われてもよい。この場合、ジョーアセンブリ63が前方検出位置から制動開始位置まで移動される間、モータ2はそのままの状態で駆動されてもよいし、駆動が停止されて慣性で回転する状態とされてもよい。また、ジョーアセンブリ63の制動は、モータ2からナット41に至る動力伝達が遮断されることで行われてもよい。
【0117】
上記実施形態では、コントローラ156は、ジョーアセンブリ63が停止位置から前方検出位置まで移動される間の全期間に亘り、モータ2を定回転制御している。しかしながら、定回転制御は全期間に亘って行われる必要はない。例えば、締結工程の1サイクルに要する時間を短縮化するために、停止位置から所定期間はモータ2を最高速度で回転駆動した後、回転速度を低下させて定回転制御を行ってもよい。なお、少なくとも制動開始位置、より好ましくは前方検出位置では定回転制御されている状態であることが好ましい。よって、例えば、ジョーアセンブリ63が停止位置から前方検出位置まで移動される間の前半の期間では高速の定回転制御が行われ、後半の期間では、低速の定回転制御が行われてもよい。つまり、回転速度が段階的に低下されつつ、全期間に亘って定回転制御が行われてもよい。
【0118】
上記実施形態では、移動距離D3(移動距離D1)を変更するための値が入力される操作部157は、締結工具1に設けられている。しかしながら、締結工具1が有線または無線によって、使用者による外部操作が可能な外部装置(例えば、携帯端末)と通信可能に構成されている場合、コントローラ156は、通信を介して外部装置から入力された情報に基づき、移動距離D3(移動距離D1)を調整するように構成されていてもよい。
【0119】
上記実施形態および変形例では、コントローラ156は、CPU、ROM、RAM等を含むマイクロコンピュータにて構成される例が挙げられているが、コントローラ(制御回路)は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのプログラマブル・ロジック・デバイスで構成されていてもよい。また、上記実施形態および変形例の駆動制御処理は、CPUが、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより実現されればよい。この場合、プログラムは、コントローラ156のROMに予め記憶されていてもよいし、コントローラ156が不揮発性メモリを含む場合は不揮発性メモリに記憶されていてもよい。あるいは、プログラムは、データを読み取り可能な外部の記憶媒体(例えば、USBメモリ)に記録されていてもよい。上記実施形態および変形例の駆動制御処理は、複数の制御回路で分散処理されてもよい。
【0120】
上記実施形態およびその変形例の各構成要素と本発明の各構成要素との対応関係を以下に示す。ファスナ8は、本発明の「ファスナ」に対応する構成例である。ピン81および本体部85は、夫々、本発明の「ピン」および「筒状部」に対応する構成例である。
【0121】
締結工具1は、本発明の「締結工具」に対応する構成例である。駆動軸A1は、本発明の「駆動軸」に対応する例である。ハウジング10は、本発明の「ハウジング」に対応する構成例である。アンビル61は、本発明の「ファスナ当接部」に対応する構成例である。ジョーアセンブリ63は、本発明の「ピン把持部」に対応する構成例である。ジョー65の爪651は、本発明の「複数の把持爪」に対応する構成例である。モータ2は、本発明の「モータ」に対応する構成例である。駆動機構4は、本発明の「駆動機構」に対応する構成例である。磁石486は、本発明の「被検出部」および「磁石」に対応する構成例である。第1センサ481は、本発明の「検出装置」および「ホールセンサ」に対応する構成例である。コントローラ156(CPU)は、本発明の「調整装置」、「制動装置」、および「制御装置」に対応する構成例である。初期位置、前方検出位置、制動開始位置は、夫々、本発明の「初期位置」、「検出位置」、「制動開始位置」に対応する例である。移動距離D3は、本発明の「第1の移動距離」に対応する例である。移動距離D1は、「第2の移動距離」に対応する例である。操作部157は、本発明の「操作部」に対応する構成例である。
【0122】
更に、本発明および上記実施形態とその変形例の趣旨に鑑み、以下の態様が構築される。以下の態様は、実施形態に示す締結工具1、上記変形例、または各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
[態様1]
前記モータの駆動を制御することで、前記駆動機構の動作を制御するように構成された制御装置を更に備え、
前記制御装置は、前記検出結果に基づいて前記モータを制動することで、前記ピン把持部を前記初期位置で停止させるように構成されていてもよい。
[態様2]
前記制御装置は、前記駆動機構が前記ピン把持部を前記駆動軸に沿って前記ファスナ当接部に対して前方へ相対移動させるとき、少なくとも、前記ピン把持部が前記検出位置に到達するまでの所定期間中、前記モータを定回転制御するように構成されていてもよい。
[態様3]
態様1において、
前記調整装置は、前記検出装置によって前記被検出部が検出された時点から、前記制御装置が前記モータを制動するまでの時間である制動待機時間を調整することで、前記第1の移動距離を調整するように構成されていてもよい。
[態様4]
前記調整装置は、前記制動装置によって制動された前記ピン把持部の過去の実際の移動距離に基づいて、前記第2の移動距離を調整するように構成されていてもよい。