(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記制御部は、上記電源部に上記記録ヘッドへ上記駆動電圧を印加させた状態で、上記昇圧処理及び上記移動処理を並行して実行する請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが「向き」と表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が「方向」と表現される。さらに、複合機10が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、開口13が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8が定義され、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向9が定義される。
【0026】
[複合機10の全体構成]
複合機10は、
図1に示されるように、概ね直方体に形成されている。複合機10は、プリンタ11を備えている。複合機10は、インクジェット記録装置の一例である。また、複合機10は、原稿を読み取って画像データを生成するスキャナ部等をさらに備えていてもよい。複合機10は、インクジェット記録装置の一例である。
【0027】
[プリンタ11]
プリンタ11は、インクを吐出することによって、画像データで示される画像をシート12(
図2参照)に記録する。すなわち、プリンタ11は、所謂インクジェット記録方式を採用している。プリンタ11は、
図2に示されるように、給送部15A、15Bと、給送トレイ20A、20Bと、排出トレイ21と、搬送ローラ部54と、記録部24と、排出ローラ部55と、プラテン42とを備えている。搬送ローラ部54、及び排出ローラ部55は、搬送部の一例である。
【0028】
[給送トレイ20A、20B、排出トレイ21]
プリンタ11の正面には、開口13(
図1参照)が形成されている。給送トレイ20A、20Bは、開口13を通じて前後方向8に挿抜される。給送トレイ20A、20Bは、各々が積層された複数のシート12を支持する。排出トレイ21は、開口13を通じて排出ローラ部55によって排出されたシート12を支持する。給送トレイ20Aは第1トレイの一例であり、給送トレイ20Bは第2トレイの一例である。
【0029】
[給送部15A、15B]
給送部15Aは、
図2に示されるように、給送ローラ25Aと、給送アーム26Aと、軸27Aとを備える。給送ローラ25Aは、給送アーム26Aの先端部に回転可能に支持されている。給送アーム26Aは、プリンタ11のフレームに支持された軸27Aに回動可能に支持されている。給送アーム26Aは、自重或いはバネ等による弾性力によって、給送トレイ20Aへ向けて回動付勢されている。給送部15Bは、給送ローラ25Bと、給送アーム26Bと、軸27Bとを備える。給送部15Bの具体的な構成は、給送部15Aと共通する。
【0030】
給送部15Aは、給送モータ101の正転によって給送ローラ25Aが回転されることによって、給送トレイ20Aに支持されたシート12を搬送路65へ給送する。給送部15Bは、給送モータ101の正転によって給送ローラ25Bが回転されることによって、給送トレイ20Aに支持されたシート12を搬送路65へ給送する。給送ローラ25Aは第1給送ローラの一例であり、給送ローラ25Bは第2給送ローラの一例である。
【0031】
[搬送路65]
搬送路65は、ガイド部材18、30及びガイド部材19、31によって形成される空間を指す。ガイド部材18、30及びガイド部材19、31は、プリンタ11の内部において所定間隔で対向する。搬送路65は、給送トレイ20A、20Bの後端部からプリンタ11の後方側に延びる経路である。また、搬送路65は、プリンタ11の後方側において下方から上方に延びつつUターンし、記録部24を経て排出トレイ21に至る経路である。なお、搬送路65内におけるシート12の搬送向き16は、
図2において一点鎖線の矢印で示されている。
【0032】
[搬送ローラ部54]
搬送ローラ部54は、記録部24より搬送向き16の上流に配置されている。搬送ローラ部54は、互いに対向する搬送ローラ60及びピンチローラ61を備える。搬送ローラ60は、搬送モータ102(
図6参照)によって駆動される。ピンチローラ61は、搬送ローラ60の回転に伴って連れ回る。シート12は、搬送モータ102の正転によって正回転する搬送ローラ60及びピンチローラ61に挟持されて、搬送向き16に沿って搬送される。また、搬送ローラ60は、搬送モータ102の逆転によって、正回転と逆向きの逆回転する。
【0033】
[排出ローラ部55]
排出ローラ部55は、記録部24より搬送向き16の下流に配置されている。排出ローラ部55は、互いに対向する排出ローラ62及び拍車63を備える。排出ローラ62は、搬送モータ102によって駆動される。拍車63は、排出ローラ62の回転に伴って連れ回る。シート12は、搬送モータ102の正転によって正回転する排出ローラ62及び拍車63に挟持されて、搬送向き16に沿って搬送される。
【0034】
[レジストセンサ120]
プリンタ11は、
図2に示されるように、レジストセンサ120を備える。レジストセンサ120は、搬送ローラ部54より搬送向き16の上流に設置されている。レジストセンサ120は、設置位置にシート12が存在するか否かに応じて、異なる検出信号を出力する。レジストセンサ120は、シート12が設置位置に存在していることに応じて、ハイレベル信号を後述する制御部130(
図6参照)に出力する。一方、レジストセンサ120は、シート12が設置位置に存在していないことに応じて、ローレベル信号を制御部130に出力する。
【0035】
[ロータリエンコーダ121]
プリンタ11は、
図6に示されるように、搬送ローラ60の回転(換言すれば、搬送モータ102の回転駆動)に応じてパルス信号を発生させるロータリエンコーダ121を備える。ロータリエンコーダ121は、エンコーダディスクと、光学センサとを備える。エンコーダディスクは、搬送ローラ60の回転と共に回転する。光学センサは、回転するエンコーダディスクを読み取ってパルス信号を生成し、生成したパルス信号を制御部130に出力する。
【0036】
[記録部24]
記録部24は、
図2に示されるように、搬送向き16における搬送ローラ部54及び排出ローラ部55の間に配置されている。また、記録部24は、上下方向7においてプラテン42と対向して配置されている。記録部24は、キャリッジ23と、記録ヘッド39と、エンコーダセンサ38Aとを備えている。また、キャリッジ23には、
図3に示されるように、インクチューブ32及びフレキシブルフラットケーブル33が接続されている。インクチューブ32は、インクカートリッジのインクを記録ヘッド39に供給する。フレキシブルフラットケーブル33は、制御部130が実装された制御基板と記録ヘッド39とを電気的に接続する。
【0037】
キャリッジ23は、
図3に示されるように、前後方向8に離間する位置において各々が左右方向9に延設されたガイドレール43、44に支持されている。キャリッジ23は、ガイドレール44に配置された公知のベルト機構に連結されている。なお、このベルト機構は、キャリッジモータ103(
図6参照)によって駆動される。つまり、キャリッジモータ103の駆動により周運動するベルト機構に接続されたキャリッジ23は、左右方向9に往復移動することができる。左右方向9は、主走査方向の一例である。
【0038】
記録ヘッド39は、
図2に示されるように、キャリッジ23に搭載されている。記録ヘッド39の下面には、複数のノズル40が形成されている。記録ヘッド39は、ピエゾ素子等の駆動素子が振動されることによって、ノズル40からインクを吐出する。キャリッジ23が移動する過程において、プラテン42に支持されているシート12に対して記録ヘッド39がインク滴を吐出する。これにより、シート12に画像が記録される。
【0039】
また、ガイドレール44には、
図3に示されるように、左右方向9に延びる帯状のエンコーダストリップ38Bが配置されている。エンコーダセンサ38Aは、エンコーダストリップ38Bに対面する位置において、キャリッジ23の下面に搭載されている。キャリッジ23が移動する過程において、エンコーダセンサ38Aは、エンコーダストリップ38Bを読み取ってパルス信号を生成し、生成したパルス信号を制御部130に出力する。エンコーダセンサ38A及びエンコーダストリップ38Bは、キャリッジセンサ38(
図6参照)を構成する。
【0040】
[プラテン42]
プラテン42は、
図2に示されるように、搬送向き16における搬送ローラ部54及び排出ローラ部55の間に配置されている。プラテン42は、上下方向7において記録部24に対向して配置されている。プラテン42は、搬送ローラ部54及び排出ローラ部55の少なくとも一方によって搬送されるシート12を下方から支持する。
【0041】
[メンテナンス機構70]
プリンタ11は、
図3に示されるように、メンテナンス機構70をさらに備える。メンテナンス機構70は、記録ヘッド39のメンテナンスを行うものである。より詳細には、メンテナンス機構70は、ノズル40内のインクや空気、及びノズル面に付着した異物を吸引するパージ動作を実行する。なお、ノズル面とは、記録ヘッド39においてノズル40が形成された面を指す。また、ノズル40内のインクや空気、及びノズル面に付着した異物のことを、以下ではインク等と表記する。メンテナンス機構70によって吸引除去されたインク等は、排液タンク74(
図4参照)に貯留される。
【0042】
メンテナンス機構70は、
図3に示されるように、シート対向領域から主走査方向の一方(右方)に外れた位置に配置される。シート対向領域は、搬送部によって搬送されたシート12とキャリッジ23とが対面し得る主走査方向の領域を指す。メンテナンス機構70は、
図4に示されるように、キャップ71と、チューブ72と、ポンプ73とを備えている。
【0043】
キャップ71は、ゴムにより構成されている。キャップ71は、シート対向領域から主走査方向の右方に外れた第1位置にキャリッジ23が位置するときに、キャリッジ23の記録ヘッド39に対面する位置に配置されている。チューブ72は、キャップ71からポンプ73を経由して排液タンク74に至る。ポンプ73は、例えば、ロータリ式のチューブポンプである。ポンプ73は、搬送モータ102に駆動されることによって、ノズル40内のインク等をキャップ71及びチューブ72を通じて吸引し、チューブ72を通じて排液タンク74に排出する。
【0044】
キャップ71は、例えば、上下方向7に離間した被覆位置及び離間位置の間を移動可能に構成されている。被覆位置のキャップ71は、第1位置のキャリッジ23の記録ヘッド39に密着してノズル面を覆う。一方、離間位置のキャップ71は、ノズル面から離間する。キャップ71は、給送モータ101によって駆動される不図示の昇降機構によって、被覆位置と離間位置との間を移動する。
【0045】
[キャップセンサ122]
キャップセンサ122は、キャップ71が被覆位置か否かに応じて、異なる検出信号を出力する。キャップセンサ122は、キャップ71が被覆位置であることに応じて、ハイレベル信号を制御部130に出力する。一方、キャップセンサ122は、キャップ71が被覆位置と異なる位置であることに応じて、ローレベル信号を制御部130に出力する。なお、キャップ71を被覆位置から離間位置へ移動させたとき、キャップセンサ122から出力される検出信号は、キャップ71が離間位置へ到達する前にハイレベル信号からローレベル信号に変化する。
【0046】
[インク受け部75]
プリンタ11は、
図3に示されるように、インク受け部75をさらに備える。インク受け部75は、シート対向領域から主走査方向の他方(左方)に外れた位置に配置されている。より詳細には、インク受け部75は、シート対向領域から主走査方向の左方に外れた第2位置にキャリッジ23が位置するときに、キャリッジ23の記録ヘッド39に対面する位置に配置されている。なお、メンテナンス機構70とインク受け部75とは、シート対向領域から主走査方向の同じ側に設けられていてもよい。但し、第1位置及び第2位置は、主走査方向に離間した位置である。
【0047】
インク受け部75は、上面に開口が形成された概ね直方体の箱形状である。インク受け部75の内部には、インク吸収体が収容されている。キャリッジ23が第2位置に位置している場合において、記録ヘッド39のノズル40からインク受け部75の開口に向けて排出されたインクは、インク受け部75内のインク吸収体に吸収される。
【0048】
[駆動力伝達機構80]
プリンタ11は、
図6に示されるように、駆動力伝達機構80をさらに備える。駆動力伝達機構80は、給送モータ101及び搬送モータ102の駆動力を、給送ローラ25A、25B、搬送ローラ60、排出ローラ62、キャップ71の昇降機構、及びポンプ73に伝達する。駆動力伝達機構80は、歯車、プーリ、無端環状のベルト、遊星歯車機構(振子ギヤ機構)、及びワンウェイクラッチ等の全部又は一部を組み合わせて構成される。また、駆動力伝達機構80は、給送モータ101及び搬送モータ102の駆動力の伝達先を切り替える切替機構170(
図5参照)を備えている。
【0049】
[切替機構170]
切替機構170は、
図3に示されるように、シート対向領域より主走査方向の一方に外れた位置に配置されている。また、切替機構170は、ガイドレール43の下方に配置されている。切替機構170は、
図5に示されるように、スライド部材171と、駆動ギヤ172、173と、被駆動ギヤ174、175、176、177と、レバー178と、付勢部材の一例であるバネ179、180とを備える。切替機構170は、第1状態と、第2状態と、第3状態に切替可能に構成されている。
【0050】
第1状態は、給送モータ101の駆動力を、給送ローラ25Aに伝達し、給送ローラ25B及びキャップ71の昇降機構に伝達しない状態である。第2状態は、給送モータ101の駆動力を、給送ローラ25Bに伝達し、給送ローラ25A及びキャップ71の昇降機構に伝達しない状態である。第3状態は、給送モータ101の駆動力を、キャップ71の昇降機構に伝達し、給送ローラ25A、25Bに伝達しない状態である。
【0051】
また、第1状態及び第2状態は、搬送モータ102の駆動力を、搬送ローラ60及び排出ローラ62に伝達し、ポンプ73に伝達しない状態である。第2状態は、搬送モータ102の駆動力を、搬送ローラ60、排出ローラ62、及びポンプ73の全てに伝達する状態である。
【0052】
スライド部材171は、左右方向9に延びる支軸(
図5において破線で示す)に支持された概ね円柱形状の部材である。また、スライド部材171は、支軸に沿って左右方向9にスライド可能に構成されている。さらに、スライド部材171は、その外面の左右方向9にずれた位置において、駆動ギヤ172、173を各々が独立して回転可能な状態で支持している。すなわち、スライド部材171及び駆動ギヤ172、173は、一体となって左右方向9にスライドする。
【0053】
駆動ギヤ172は、給送モータ101の回転駆動力が伝達されて回転する。駆動ギヤ172は、被駆動ギヤ174、175、176のうちの1つに噛み合う。より詳細には、駆動ギヤ172は、切替機構170が第1状態のときに、
図5(A)に示されるように被駆動ギヤ174に噛み合う。また、駆動ギヤ172は、切替機構170が第2状態のときに、
図5(B)に示されるように被駆動ギヤ175に噛み合う。さらに、駆動ギヤ172は、切替機構170が第3状態のときに、
図5(C)に示されるように被駆動ギヤ176に噛み合う。
【0054】
駆動ギヤ173は、搬送モータ102の回転駆動力が伝達されて回転する。駆動ギヤ173は、切替機構170が第1状態及び第2状態のときに、
図5(A)及び
図5(B)に示されるように被駆動ギヤ176との噛み合いが解除される。また、駆動ギヤ173は、切替機構170が第3状態のときに、
図5(C)に示されるように被駆動ギヤ176に噛み合う。
【0055】
被駆動ギヤ174は、給送ローラ25Aを回転させるギヤ列に噛み合う。すなわち、給送モータ101の回転駆動力は、駆動ギヤ172と被駆動ギヤ174とが噛み合うことによって、給送ローラ25Aに伝達される。また、給送モータ101の回転駆動力は、駆動ギヤ172と被駆動ギヤ174との噛み合いが解除されたことによって、給送ローラ25Aに伝達されない。被駆動ギヤ174は、第1被駆動ギヤの一例である。
【0056】
被駆動ギヤ175は、給送ローラ25Bを回転させるギヤ列に噛み合う。すなわち、給送モータ101の回転駆動力は、駆動ギヤ172と被駆動ギヤ175とが噛み合うことによって、給送ローラ25Bに伝達される。また、給送モータ101の回転駆動力は、駆動ギヤ172と被駆動ギヤ175との噛み合いが解除されたことによって、給送ローラ25Bに伝達されない。被駆動ギヤ175は、第2被駆動ギヤの一例である。
【0057】
被駆動ギヤ176は、キャップ71の昇降機構を駆動させるギヤ列に噛み合う。すなわち、給送モータ101の回転駆動力は、駆動ギヤ172と被駆動ギヤ176とが噛み合うことによって、キャップ71の昇降機構に伝達される。また、給送モータ101の回転駆動力は、駆動ギヤ172と被駆動ギヤ176との噛み合いが解除されたことによって、昇降機構に伝達されない。被駆動ギヤ176は、第3被駆動ギヤの一例である。
【0058】
被駆動ギヤ177は、ポンプ73を駆動するギヤ列に噛み合う。すなわち、搬送モータ102の回転駆動力は、駆動ギヤ173と被駆動ギヤ177とが噛み合うことによって、ポンプ73に伝達される。また、搬送モータ102の回転駆動力は、駆動ギヤ173と被駆動ギヤ177との噛み合いが解除されたことによって、ポンプ73に伝達されない。一方、搬送モータ102の回転駆動力は、切替機構170を経由せずに搬送ローラ60及び排出ローラ62に伝達される。すなわち、搬送ローラ60及び排出ローラ62は、切替機構170の状態に拘わらず、搬送モータ102の回転駆動力によって回転する。
【0059】
レバー178は、スライド部材171の右方に隣接する位置において、支軸に支持されている。また、レバー178は、支軸に沿って左右方向9にスライドする。さらに、レバー178は、上方に突出している。そして、レバー178の先端は、ガイドレール43に設けられた開口43Aを通じて、キャリッジ23に当接し得る位置にまで到達している。レバー178は、キャリッジ23に接離されることによって左右方向9にスライドする。また、切替機構170は、レバー178を係止する複数の係止部を備える。そして、係止部に係止されたレバー178は、キャリッジ23に離間された後も、その位置に留まることができる。
【0060】
バネ179、180は、支軸に支持されている。バネ179は、その一端(左端)がプリンタ11のフレームと当接し、他端(右端)がスライド部材171の左端面に当接している。すなわち、バネ179は、スライド部材171及びスライド部材171に当接するレバー178を右向きに付勢する。バネ180は、その一端(右端)がプリンタ11のフレームに当接し、他端(左端)がレバー178の右端面に当接している。すなわち、バネ180は、レバー178及びレバー178に当接するスライド部材171を左向きに付勢する。さらに、バネ180の付勢力は、バネ179の付勢力より大きい。
【0061】
レバー178が第1係止部に係止されているとき、切替機構170は、第1状態である。そして、右向きに移動するキャリッジ23に押されたレバー178は、バネ180の付勢力に抗して右向きに移動し、第1係止部より右方に位置する第2係止部に係止される。これにより、スライド部材171は、バネ179の付勢力によって、レバー178の動きに追従して右向きに移動する。その結果、切替機構170は、
図5(A)に示される第1状態から、
図5(B)に示される第2状態に切り替えられる。すなわち、レバー178は、第2位置から第1位置へ向かうキャリッジ23に当接されて、切替機構170を第1状態から第2状態に切り替える。
【0062】
また、第1位置まで移動するキャリッジ23に押されたレバー178は、バネ180の付勢力に抗して右向きに移動し、第2係止部よりさらに右方に位置する第3係止部に係止される。これにより、スライド部材171は、バネ179の付勢力によって、レバー178の動きに追従して右向きに移動する。その結果、切替機構170は、
図5(A)に示される第1状態或いは
図5(B)に示される第2状態から、
図5(C)に示される第3状態に切り替えられる。すなわち、レバー178は、第1位置へ移動するキャリッジ23に当接されて、切替機構170を第3状態に切り替える。
【0063】
さらに、第1位置よりさらに右方に移動するキャリッジ23に押され、その後に左向きに移動するキャリッジ23に離間されたレバー178は、第3係止部による係止が解除される。これにより、スライド部材171及びレバー178は、バネ180の付勢力によって左向きに移動される。そして、レバー178は、第1係止部に係止される。その結果、切替機構170は、
図5(C)に示される第3状態から、
図5(A)に示される第1状態に切り替えられる。すなわち、レバー178は、第1位置から第2位置へ移動するキャリッジ23に接離されて、切替機構170を第3状態から第1状態に切り替える。
【0064】
すなわち、切替機構170の状態は、レバー178に対するキャリッジ23の接離によって切り替えられる。換言すれば、給送モータ101及び搬送モータ102の駆動力の伝達先は、キャリッジ23によって切り替えられる。なお、本実施形態に係る切替機構170の状態は、第3状態から第2状態に直接切り替えられず、前述のように、第3状態から第1状態に切り替え、さらに第1状態から第2状態に切り替える必要がある。
【0065】
[電源部110]
複合機10は、
図6に示されるように、電源部110を有する。電源部110は、電源プラグを通じて外部電源から供給された電力を、複合機10の各構成要素に供給する。より詳細には、電源部110は、外部電源から取得した電力を、各モータ101〜103及び記録ヘッド39に駆動電力(例えば、24V)として出力し、制御部130に制御電力(例えば、5V)として出力する。なお、
図6には、電源部110から記録ヘッド39の延びる矢印のみが図示されている。
【0066】
また、電源部110は、制御部130から出力される電源信号に基づいて、駆動状態と休眠状態とに切り替えが可能である。より詳細には、制御部130は、HIGHレベルの電源信号(例えば、5V)を出力することによって、電源部110を休眠状態から駆動状態に切り替える。また、制御部30は、LOWレベルの電源信号(例えば、0V)を出力することによって、電源部110を駆動状態から休眠状態に切り替える。
【0067】
駆動状態とは、モータ101〜103及び記録ヘッド39に駆動電力を出力している状態である。換言すれば、駆動状態とは、モータ101〜103及び記録ヘッド39が動作可能な状態である。休眠状態とは、モータ101〜103及び記録ヘッド39に駆動電力を出力していない状態である。換言すれば、休眠状態とは、モータ101〜103及び記録ヘッド39が動作不能な状態である。一方図示は省略するが、電源部110は、駆動状態であるか休眠状態であるかに拘わらず、制御部30及び通信部50に制御電力を出力している。
【0068】
[制御部130]
制御部130は、
図6に示されるように、CPU131、ROM132、RAM133、EEPROM134、及びASIC135を備えており、これらは内部バス137によって接続されている。ROM132には、CPU131が各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM133は、CPU131が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM134には、電源オフ後も保持すべき設定情報が格納される。
【0069】
ASIC135には、給送モータ101、搬送モータ102、及びキャリッジモータ103が接続されている。ASIC135は、各モータを回転させるための駆動信号を生成し、この駆動信号を基に各モータを制御する。各モータは、ASIC135からの駆動信号によって正転又は逆転する。また、制御部130は、電源部110の駆動電圧を記録ヘッド39の駆動素子に印加することによって、ノズル40からインクを吐出させる。
【0070】
また、ASIC135には、通信部50が接続されている。通信部50は、情報処理装置51と通信可能な通信インタフェースである。すなわち、制御部130は、通信部50を通じて情報処理装置51に各種情報を出力し、通信部50を通じて情報処理装置51から各種情報を受信する。通信部50は、例えば、Wi−Fi(Wi−Fi Allianceの登録商標)に従った通信手順で無線信号を送受信するものであってもよいし、LANケーブル或いはUSBケーブルが接続されるインタフェースであってもよい。なお、
図6において、情報処理装置51を点線の枠で囲むことによって、複合機10の構成要素と区別している。
【0071】
さらに、ASIC135には、レジストセンサ120、ロータリエンコーダ121、キャリッジセンサ38、及びキャップセンサ122が接続されている。制御部130は、レジストセンサ120から出力される検出信号と、ロータリエンコーダ121から出力されるパルス信号とに基づいて、シート12の位置を検知する。また、制御部130は、キャリッジセンサ38から出力されるパルス信号に基づいて、キャリッジ23の位置を検知する。さらに、制御部130は、キャップセンサ122から出力される検出信号に基づいて、キャップ71の位置を検知する。
【0072】
[画像記録処理]
次に、
図7〜
図10を参照して、本実施形態の画像記録処理を説明する。複合機10は、通信部50を通じて情報処理装置51からコマンドを受信したことに応じて、画像記録処理を開始する。なお、画像記録処理の開始時点において、キャリッジ23は第1位置に位置し、キャップ71は被覆位置に位置し、切替機構170は第3状態であるものとする。以下の各処理は、ROM132に記憶されているプログラムをCPU131が読み出して実行してもよいし、制御部130に搭載されたハードウェア回路によって実現されてもよい。また、各処理の実行順序は、本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜変更することができる。
【0073】
まず図示は省略するが、情報処理装置51は、例えば、複合機10に画像記録処理を実行させる指示をユーザから受け付けたことに応じて、複合機10に先行コマンドを送信する。先行コマンドは、後述する記録コマンドの送信を予告するコマンドである。次に、情報処理装置51は、先行コマンドを送信したことに応じて、ユーザによって指定された画像データをラスタデータに変換する。そして、情報処理装置51は、ラスタデータを生成したことに応じて、記録コマンドを複合機10に送信する。記録コマンドは、ラスタデータで示される画像をシートに記録させるコマンドである。
【0074】
制御部130は、通信部50を通じて情報処理装置51から先行コマンドを受信したことに応じて(S11:先行コマンド)、第1準備処理を実行する。すなわち、先行コマンドは、第1準備処理の実行を指示するコマンドと言い換えることができる。第1準備処理は、プリンタ11を記録処理の実行が可能な状態にするための処理である。「記録処理の実行が可能な状態」とは、例えば、所定以上の品質の画像を記録することが可能な状態と言い換えることができる。第1準備処理は、例えば
図8に示されるように、昇圧処理(S21)と、離間処理(S22)と、第1移動処理及び第1切替処理(S23)と、クック処理(S24、S25)とを含む。
【0075】
昇圧処理(S21)は、電源部110がプリンタ11の各構成要素へ供給する駆動電圧を目標電圧V
Tまで昇圧させる処理である。電源部110は、例えば、外部電源から供給される電源電圧を、不図示の昇圧回路によって目標電圧V
Tまで昇圧する。電源部110を昇圧するとは、例えば、不図示のチョークコイル或いはコンデンサに電気エネルギーを蓄えることを指す。但し、駆動電圧を急激に昇圧すると、昇圧中の駆動電圧が不安定になる可能性がある。
【0076】
そこで、制御部130は、例えば昇圧処理において、フィードバック制御によって、駆動電圧をチェック電圧V
1まで昇圧する。次に、制御部130は、駆動電圧がチェック電圧V
1に達したことに応じて、フィードバック制御によって、駆動電圧をチェック電圧V
2まで昇圧する。すなわち、V
1<V
2<V
Tである。このように、複数の昇圧ステップを繰り返して徐々に昇圧することにより、昇圧中の駆動電圧の変動が抑制される。
【0077】
また、制御部130は、電源部110に記録ヘッド39へ駆動電圧を印加させた状態で、昇圧処理を実行してもよい。「記録ヘッド39に駆動電圧を印加させた状態」とは、例えば、電源部110から記録ヘッド39に至る回路のスイッチ素子を導通状態とすることによって、昇圧中の駆動電圧が記録ヘッド39の駆動素子に印加される状態を指す。換言すれば、昇圧中の駆動電圧が目標電圧V
Tに達した場合に、ノズル40からインクが吐出される状態と表現することもできる。これにより、以下の理由によって、昇圧中の駆動電圧の変動をさらに抑制することができる。
【0078】
まず、一般的に、回路に印加される電圧が変動した場合において、電圧波形の立ち上がり時間及び立ち下がり時間は、当該回路内における抵抗成分が大きいほど長くなる。すなわち、抵抗成分が大きいほど、単位時間当たりの電圧の変化が少なくなる。そして、電源部110から記録ヘッド39の駆動素子に至る回路には、スイッチ素子を構成するトランジスタ、駆動信号を出力する出力部等の抵抗成分が存在する。そこで、電源部110から記録ヘッド39までを1つの回路とすれば、電源部110と記録ヘッド39との間を遮断して電源部110単体の回路とする場合と比較して、昇圧中の駆動電圧の変動を減衰させることができる。
【0079】
また、駆動素子を有する記録ヘッド39の制御回路は、所定の静電容量を有するコンデンサとみなすことができる。そして、このコンデンサは、印加される駆動電圧の変動に伴って充電及び放電を繰り返す。その結果、電圧変動のうちの高周波数成分を除去することができるので、昇圧中の駆動電圧の変動をさらに減衰させることができる。
【0080】
また、昇圧処理(S21)は、典型的には、複合機10の電源が投入されたタイミング、或いは電源部110が休眠状態から駆動状態に切り替えられたタイミングで実行される。すなわち、既に電源部110が供給する駆動電圧が目標電圧V
Tに達している場合は、昇圧処理(S21)が省略されることがある。
【0081】
離間処理(S22)は、キャップ71を被覆位置から離間位置へ移動させる処理である。すなわち、制御部130は、給送モータ101を予め定められた回転量だけ回転させる。そして、給送モータ101の回転駆動力が第3状態の切替機構170を通じて昇降機構に伝達されることによって、キャップ71が被覆位置から離間位置へ移動される。また、キャップセンサ122から出力される検出信号は、キャップ71が離間位置に到達する前に、換言すれば、離間処理の実行中にハイレベル信号からローレベル信号に変化する。
【0082】
第1移動処理(S23)は、キャップ71に離間されたキャリッジ23を第1位置から第2位置へ移動させる処理である。また、第1切替処理(S23)は、切替機構170を第3状態から第1状態に切り替える処理である。すなわち、制御部130は、第1位置のキャリッジ23を右向きに移動させ、その後に第2位置に到達するまで左向きに移動させることによって、第1移動処理と第1切替処理とを同時に実行する。また、制御部130は、記録ヘッド39のノズル40に形成されたインクのメニスカスが破壊されるのを抑制するために、ステップS23の開始時点において、キャリッジ23を低速で左向きに移動させてから、ステップS23の処理を実行してもよい。
【0083】
クック処理(S24、S25)は、給送モータ101及び搬送モータ102の少なくとも一方を正逆回転させる処理である。より詳細には、制御部130は、切替機構170が第3状態のときに、給送モータ101及び搬送モータ102の両方を正逆回転させる(S24)。これにより、駆動ギヤ172と被駆動ギヤ176との間の面圧、及び駆動ギヤ173と被駆動ギヤ177との間の面圧が解除されるので、各ギヤの噛み合いがスムーズに解除される。また、制御部130は、切替機構170が第1状態に切り替えられる際に、給送モータ101を正逆回転させる(S25)。これにより、駆動ギヤ172と被駆動ギヤ174とをスムーズに噛み合わせることができる。なお、クック処理は、ステップS24、S25の一方のみであってもよい。
【0084】
なお、制御部130は、
図8に示されるように、先行コマンドを受信したタイミングでステップS21、S22の処理を同時に開始する。また、制御部130は、ステップS23、S24を同時に開始する。但し、ステップS24の開始タイミングは
図8の例に限定されず、ステップS23より僅かに遅れて開始されてもよい。
【0085】
さらに、制御部130は、キャップセンサ122の検出信号がハイレベル信号からローレベル信号に変化したタイミングでステップS23の処理を開始する。すなわち、制御部130は、ステップS21、S22の開始より後にステップS23を開始する。より詳細には、制御部130は、ステップS23のうち、キャリッジ23を低速で左向きに移動させる処理と、キャリッジ23を第1位置より右方に移動させる処理とを、ステップS22と並行して実行する。一方、制御部130は、ステップS23のうち、キャリッジ23を第2位置へ向けて左向きに移動させる処理を、ステップS22の終了後に実行する。
【0086】
典型的には、昇圧処理は、第1準備処理に含まれる複数の処理(S21〜S25)のなかで実行時間が最も長い。そこで、制御部130は、
図8に示されるように、ステップS21の処理と、ステップS22〜S25の各処理とを並行して実行する。換言すれば、制御部130は、ステップS21の処理を実行中の所定のタイミングで、ステップS22〜S25の各処理を実行する。さらに換言すれば、ステップS22〜S25の各処理は、ステップS21の処理に対して並行して実行される。
【0087】
次に
図7に戻って、制御部130は、通信部50を通じて情報処理装置51から記録コマンドを受信したことに応じて(S11:記録コマンド)、第1準備処理が終了したか否かを判断する(S13)。すなわち、記録コマンドの受信タイミングは、
図8に示されるように第1準備処理の終了前の場合もあるし、
図9に示されるように第1準備処理の終了後の場合もある。制御部130は、第1準備処理が未だ終了していないと判断したことに応じて(S13:No)、第1準備処理が終了するまで以降の処理の実行を待機する。
【0088】
そして、制御部130は、第1準備処理が終了したと判断したことに応じて(S13:Yes)、第2準備処理を実行する(S14)。第2準備処理は、プリンタ11を記録処理の実行が可能な状態にするための処理のうち、第1準備処理に含まれない処理である。第2準備処理は、例えば
図8に示されるように、フラッシング処理(S31)と、第2移動処理(S32)と、第1給送処理(S33)と、頭出し処理(S34)とを含む。
【0089】
フラッシング処理(S31)は、インク受け部75に向けて記録ヘッド39にインクを排出させる処理である。すなわち、制御部130は、目標電圧まで昇圧された電源部110の駆動電圧を駆動素子に印加することによって、第2位置のキャリッジ23の記録ヘッド39にインクを排出させる。なお、フラッシング処理の実行時間は、記録ヘッド39が直近にインクを吐出してからの経過時間が長いほど長くしてもよい。
【0090】
すなわち、制御部130は、記録ヘッド39がインクを吐出した時点で経過時間の計測を開始し、記録ヘッド39が再びインクを吐出したタイミングで経過時間をリセットする。経過時間の計測開始のトリガは、フラッシング処理(S31)によるインクの吐出でもよいし、後述する吐出処理(S15)によるインクの吐出でもよい。制御部130は、ステップS14において、フラッシング処理の実行時間を、計測した経過時間に基づいて決定する。そして制御部130は、ステップS31において、決定した実行時間の間継続して、記録ヘッド39にインクを排出させる。
【0091】
第2移動処理(S32)は、記録開始位置までキャリッジ23を移動させる処理である。すなわち、制御部130は、キャリッジ23を第2位置から記録開始位置まで移動させる。記録開始位置は、後述する吐出処理において、キャリッジ23が主走査方向への移動を開始する位置である。記録開始位置は、受信した記録コマンドで示される。
【0092】
第1給送処理(S33)は、給送トレイ20Aに支持されたシート12を、搬送ローラ部54に到達する位置まで給送部15Aに給送させる処理である。第1給送処理は、シート12の給送元として給送トレイ20Aを記録コマンドが示す場合に実行される。制御部130は、給送モータ101を正転させ、レジストセンサ120の検出信号がローレベル信号からハイレベル信号に変化してから予め定められた回転量だけさらに正転させる。そして、給送モータ101の回転駆動力が第1状態の切替機構170を通じて給送ローラ25Aに伝達されることによって、給送トレイ20Aに支持されたシートが搬送路65に給送される。
【0093】
頭出し処理(S34)は、第1給送処理によって搬送ローラ部54に到達されたシート12を、最初に画像が記録される領域(以下、「記録領域」と表記することがある。)が記録ヘッド39に対面し得る位置まで、搬送部に搬送向き16に搬送させる処理である。シート12上の最初の記録領域は、記録コマンドに示されている。制御部130は、搬送モータ102を所定の回転量だけ正転させることによって、第1給送処理によって搬送ローラ部54に到達されたシート12を搬送部に搬送させる。
【0094】
なお、第2準備処理に含まれる各処理(S31〜S34)は、第1準備処理に含まれる複数の処理の少なくとも一部が終了した後でなければ、開始することができない。フラッシング処理は、昇圧処理、離間処理、及び第1移動処理が終了した後でなければ開始できず、クック処理が終了していなくても開始できる。一方、第1給送処理は、第1切替処理及びクック処理が終了した後でなければ開始できず、昇圧処理及び第1移動処理が終了していなくても開始できる。また、第2移動処理は、フラッシング処理が終了した後でなければ開始できない。さらに、頭出し処理は、第1給送処理が終了した後でなければ開始できない。
【0095】
すなわち、制御部130は、記録コマンドを受信し且つ昇圧処理、離間処理、及び第1移動処理が終了したことに応じて(S11:記録コマンド&S13:Yes)、フラッシング処理を実行する。そして、制御部130は、フラッシング処理が終了したことに応じて、第2移動処理を実行する。また、制御部130は、記録コマンドを受信し且つ第1切替処理及びクック処理が終了したことに応じて(S11:記録コマンド&S13:Yes)、第1給送処理を実行する。そして、制御部130は、第1給送処理が終了したことに応じて、頭出し処理を実行する。一方、順番に実行されるフラッシング処理及び第2移動処理と、順番に実行される第1給送処理及び頭出し処理とは、並列に実行可能である。
【0096】
また、
図8及び
図9に示されるように、フラッシング処理及び第1給送処理の開始タイミングは、第1準備処理の終了タイミングと記録コマンドの受信タイミングとの関係によって変化する。すなわち、
図8に示されるように、第1準備処理の終了前に記録コマンドを受信した場合、制御部130は、フラッシング処理と第1給送処理とを別々のタイミングで開始する。一方、
図9に示されるように、第1準備処理の終了後に記録コマンドを受信した場合、制御部130は、フラッシング処理と第1給送処理とを同時に開始する。
【0097】
さらに、シート12の給送元として給送トレイ20Bを記録コマンドが示す場合、
図10に示されるタイミングで第2準備処理が実行される。
図10に示される第2準備処理は、第2切替処理(S41)をさらに含む点、第1給送処理(S33)に代えて第2給送処理(S42)を含む点において、
図8及び
図9に示される第2準備処理と相違する。以下、
図10に示される第2準備処理を、
図8及び
図9との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0098】
第2切替処理(S41)は、切替機構170を第1状態から第2状態に切り替える処理である。すなわち、制御部130は、第2位置のキャリッジ23を右向きに移動させて、第1係止部に係止されたレバー178を第2係止部に係止させる。なお、制御部130は、第2切替処理の実行に合わせてクック処理をさらに実行してもよい。第2給送処理(S42)は、給送トレイ20Bに支持されたシート12を、搬送ローラ部54に到達する位置まで給送部15Bに給送させる処理である。第2給送処理は、切替機構170が第2状態にされて実行される点を除いて、第1給送処理と共通する。
【0099】
図10において、制御部130は、フラッシング処理が終了したことに応じて第2切替処理を実行し、第2切替処理が終了したことに応じて第2移動処理を実行する。また、制御部130は、第2切替処理が終了したことに応じて第2給送処理を実行し、第2給送処理が終了したことに応じて頭出し処理を実行する。なお、
図10において、第1準備処理の終了後に記録コマンドを受信した場合、フラッシング処理の開始タイミングが記録コマンドの受信時まで繰り下がる以外は、前述の処理と共通する。
【0100】
再び
図7に戻って、制御部130は、第2準備処理に含まれる全ての処理が終了したことに応じて、受信した記録コマンドに従って記録処理を実行する(S15〜S18)。記録処理は、例えば、交互に実行される吐出処理(S15)及び搬送処理(S17)と、排出処理(S18)とを含む。吐出処理(S15)は、記録ヘッド39に対面されたシート12の記録領域に対して、記録ヘッド39にインクを吐出させる処理である。搬送処理(S17)は、搬送向き16に沿う所定の搬送幅だけシート12を搬送部に搬送させる処理である。排出処理(S18)は、画像が記録されたシート12を排出ローラ部55に排出トレイ21へ排出させる処理である。
【0101】
すなわち、制御部130は、キャリッジ23をシート対向領域の一端から他端に移動させ、記録コマンドで示されるタイミングで記録ヘッド39にインク滴を吐出させる(S16)。次に、制御部130は、次の記録領域に記録すべき画像が存在することに応じて(S16:No)、次の記録領域が記録ヘッド39に対面される位置まで、搬送部にシート12を搬送させる(S17)。制御部130は、全ての記録領域に画像を記録するまで(S16:No)、ステップS15〜S17の処理を繰り返し実行する。そして、制御部130は、全ての記録領域に画像を記録したことに応じて(S16:Yes)、排出ローラ部55にシート12を排出トレイ21へ排出させる(S18)。
【0102】
さらに図示は省略するが、制御部130は、記録処理(S15〜S18)が終了してから所定の時間が経過したことに応じて、キャリッジ23を第1位置に移動させ、切替機構170を第3状態に変化させ、キャップ71を被覆位置に移動させる。なお、制御部130は、この処理の実行に合わせてクック処理をさらに実行してもよい。
【0103】
[本実施形態の作用効果]
上記構成によれば、キャリッジ23の移動中に電源部110の駆動電圧が昇圧されるので、昇圧処理及び移動処理を順番に実行する場合と比較して、第1準備処理の実行時間が短縮される。このように、第1準備処理に含まれる昇圧処理、離間処理、及び移動処理を適切なタイミングで実行することによって、FPOTを短縮できる。
【0104】
また、記録ヘッド39へ駆動電圧を印加した状態の電源部110を昇圧すると、昇圧時の駆動電圧の変動が抑制される。これにより、例えば、昇圧処理における昇圧ステップの数を削減しても、昇圧中の駆動電圧が目標電圧V
Tを超えるのを抑制できる。その結果、昇圧処理の実行時間が短縮されるので、第1準備処理全体の実行時間が短縮される。さらに、駆動電圧が目標電圧を超えて記録ヘッド39からインクが吐出される可能性が低減されるので、昇圧処理及び移動処理を並行して実行した場合でも、シート対向領域でのインクの誤吐出が抑制される。
【0105】
なお、昇圧処理の具体例は上記の実施形態に限定されない。他の例として、制御部130は、電源部110に記録ヘッド39へ駆動電圧を印加させずに、昇圧処理を実行してもよい。すなわち、制御部130は、電源部110から記録ヘッド39に至る回路のスイッチ素子を遮断状態にして、昇圧処理を開始してもよい。そして、制御部130は、キャリッジ23が第2位置へ到達したことに応じて、すなわち第1移動処理が終了したことに応じて、記録ヘッド39への駆動電圧の印加を電源部110に開始させてもよい。なお、駆動電圧の印加を開始する時点において、昇圧処理が終了している必要はない。上記構成によっても、シート対向領域でのインクの誤吐出が抑制される。
【0106】
また、上記の実施形態によれば、先行コマンドをトリガとして第1準備処理が実行されるので、記録コマンドを受信してから第1準備処理を実行する場合と比較してFPOTを短縮することができる。また、第1準備処理において、昇圧処理に対して、離間処理、第1移動処理、第1切替処理、クック処理を並行して実行することにより、各処理を順番に実行する場合と比較して、第1準備処理の実行時間を短縮することができる。
【0107】
一方、上記の実施形態によれば、記録コマンドを受信した後にフラッシング処理が実行されるので、フラッシング処理が終了してから記録処理が開始されるまでの待機時間を短くすることができる。すなわち、ノズル内のインクが乾燥することによる画像記録品質の低下を抑制することができる。このように、第1準備処理及び第2準備処理を適切なタイミングで実行することによって、FPOTを短縮できると共に、画像記録品質の低下を抑制できる。
【0108】
なお、制御部130は、ステップS21〜S23の処理が終了した時点において、計測中の経過時間が閾値以上であることに応じて、記録コマンドを受信したか否かに拘わらず、フラッシング処理を開始してもよい。一方、制御部130は、ステップS21〜S23の処理が終了した時点において、計測中の経過時間が閾値未満であることに応じて、上記の実施形態のタイミングでフラッシング処理を開始すればよい。これにより、実行時間の長いフラッシング処理を記録コマンドを待たずに開始できるので、FPOTを短縮することができる。
【0109】
また、上記の実施形態によれば、記録コマンドを受信した後に給送処理(S33、S42)が実行される。その結果、記録コマンドで指定された給送トレイ20A、20Bからシート12が給送されるので、適切なシート12に画像を記録することができる。但し、給送トレイを1つだけ備える複合機10は、クック処理が終了したことに応じて、記録コマンドを受信したか否かに拘わらず、給送処理を実行してもよい。