(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記素体の前記第1の面とは異なる第2の面から前記他方の極性の内部電極の引き出し電極が露出するとともに、前記素体の前記第2の面に前記第2の電極層が設けられており、
前記複数の内部電極の積層方向から見て、前記素体の幅をW4としたときに、W1/W4≧0.20の式が成り立つ、請求項1に記載の積層コンデンサ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る積層コンデンサについて詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0015】
図1に、実施形態に係る積層コンデンサ10を示す。
図1に示すように、積層コンデンサ10は、略直方体形状の外形を有する素体20を備える。素体20は、対向する一対の端面20a、20bを有し、また、両端面20a、20bに直交するように延在し、かつ、両端面20a、20bを結ぶ底面(第1の面)20cを有する。素体20の寸法は、一例として、長手方向長さ(両端面20a、20bの離間距離)が600μm、短手方向長さ(両端面20a、20bの対向方向と底面20cの法線方向とに直交する方向の長さ)が300μm、高さが300μmであるが、これに限定されない。素体20の寸法は、長手方向長さを1000μm以下、短手方向長さを500μm以下、高さを500μm以下とすることが好ましい。
【0016】
素体20の内部には、複数の内部電極22、24が形成されている。各内部電極22、24は、素体20の底面20cに対して立直した姿勢で、端面20a、20bの対向方向に沿って延在している。そして、複数の内部電極22、24は、所定距離だけ離間されて互いに平行に積層されている。すなわち、複数の内部電極22、24は、素体20の端面20a、20bの対向方向および底面20cの法線方向に対して直交するように、積層されている。
【0017】
複数の内部電極22、24は、正極の内部電極(第1の電極層)22と負極の内部電極24とで構成されており、正極の内部電極22と負極の内部電極24とが交互に配置されている。各内部電極22、24は、一体的に形成された、主に容量を形成するための容量電極22a、24aと、主に電極を素体外部に引き出するための引き出し電極22b、24bとを有する。具体的には、
図2に示すように、内部電極24は、素体端面20a、20bの対向方向(
図2の左右方向)に長く延びる長方形状の容量電極24aと、容量電極24aの底面20c側に設けられて底面20cに露出する長方形状の引き出し電極24bとを有する。引き出し電極24bは、底面20cに沿って、端面20b近傍から底面20cの中央付近まで延びている。他方の内部電極22についても、内部電極24の容量電極24aと実質的に同一寸法の容量電極22aと、容量電極22aの底面20c側に設けられて底面20cに露出する長方形状の引き出し電極22bとを有する。
【0018】
なお、容量電極22a、24aの寸法は、一例として、長さ500μm、高さ200μm、厚さ1μmである。引き出し電極22b、24bの寸法は、一例として、長さ200μm、高さ50μm、厚さ1μmである。
【0019】
そして、素体20の底面(第1の面)20cには、電極層30A(第1の電極層)、電極層30B(第2の電極層)および絶縁層40が形成されている。一対の電極層30A、30Bおよび絶縁層40は、
図1〜3に示すように、底面20cの短手方向(すなわち、内部電極22、24の積層方向)に全長に亘って形成されている。
【0020】
一対の電極層30A、30Bは、上述した内部電極22、24と接続される。具体的には、正極の電極層30Aは、端面20a側の底面領域に設けられ、底面20cに露出した各内部電極22の引き出し電極22bの端面23の全域と接し、それにより、電極層30Aと各内部電極22とが電気的に接続される。負極の電極層30Bは、端面20b側の底面領域に設けられ、底面20cに露出した各内部電極24の引き出し電極24bの端面25の全域と接し、それにより、電極層30Bと各内部電極24とが電気的に接続される。
【0021】
絶縁層40は、一対の電極層30A、30Bの間の領域および各電極層30A、30Bの一部を一体的に覆うように、底面20cの中央領域に設けられている。より詳しくは、
図2に示すように、絶縁層40は、電極層30Aの中央側の端部(すなわち、電極層30B側の端部)を所定長さ分だけ覆っている。絶縁層40は、同様に、電極層30Bの中央側の端部(すなわち、電極層30A側の端部)も、電極層30Aと同じ長さ分だけ覆っている。そのため、絶縁層40は、
図2において線対称の断面形状を呈する。
【0022】
また、絶縁層40は、一対の電極層30A、30Bの間を充たすとともに、各電極層30A、30B上に乗り上げており、各電極層30A、30Bの厚さよりも絶縁層40の厚さが厚くなるように設計されている。絶縁層40と接する部分の電極層30A、30Bが、絶縁層40の下側(底面20c側)に潜り込んでいると言うこともできる。
【0023】
絶縁層40は、たとえばガラスや樹脂等の絶縁材料で構成されており、印刷等の形成方法によって形成される。
【0024】
なお、
図2に示すように、電極層30A、30Bが絶縁層40から露出している領域それぞれに、めっき層50を形成することができる。めっき層50が形成された領域において、回路基板51上に実装され得る。
【0025】
ここで、
図4を参照しつつ、引き出し電極22b、24b、電極層30A、30Bおよび絶縁層40の位置関係および寸法の大小関係について、より詳しく説明する。
【0026】
図4に示すように、説明の便宜上、内部電極22、24の積層方向から見て、内部電極22の引き出し電極22bの引き出し方向に関する幅をW1とし、電極層30Aが絶縁層40から露出している領域の幅をW2とし、電極層30Aの幅をW3とする。また、素体20の底面20cの幅をW4とし、底面20cにおいて、内部電極22、24の引き出し電極22b、24bの端面23、25のいずれも露出していない領域の合計長さをY(Y=y1+y2+y3)とする。なお、y1は、素体20の端面20aと、底面20cに露出した引き出し電極22bの端面23とが離間している領域の長さを示し、y2は、素体20の底面20cの中央付近において引き出し電極22bの端面23と引き出し電極24bの端面25とが離間している領域の長さを示し、y3は、素体20の端面20bと、底面20cに露出した引き出し電極24bの端面25とが離間している領域の長さを示す。上記の幅W1、W2、W3、W4はいずれも、
図4のように内部電極の法線方向からみたときの、引き出し電極の引き出し方向に関する幅、すなわち、引き出し方向に対して直交する方向の長さである。
【0027】
このとき、積層コンデンサ10においては、W2≦W1<W3の式(以下、第1の式とも称す。)が成り立つとともに、W1/Y≧0.76の式(以下、第2の式とも称す。)が成り立つ。
【0028】
上記第1の式は、電極層30Aが絶縁層40から露出している領域の幅(W2)が、電極層30Aの幅(W3)より狭い(すなわち、W2<W3)ことを意味し、
図2に示すように電極層30Aの中央側の端部が絶縁層40で覆われていることを意味する。この場合、電極層30Aは、絶縁層40により、その露出部分が他方の電極層30Bから遠ざかるため、電極層30Aと電極層30Bとの間に電圧が印加される実装時において、両電極層30A、30B間に短絡が生じる事態が抑制される。
【0029】
また、上記第1の式は、引き出し電極22bの幅(W1)が、電極層30Aが絶縁層40から露出している領域の幅(W2)と比べて同じまたはより大きい(すなわち、W2≦W1)ことを意味し、かつ、電極層30Aの幅(W3)が引き出し電極22bの幅(W1)より大きい(すなわち、W1<W3)ことを意味し、十分に広い幅の引き出し電極22bの端面23がその全域に亘って電極層30Aで覆われることを意味する。それにより、積層コンデンサ10のESLの低減が図られる。
【0030】
なお、内部電極24および電極層30Bに関しても、内部電極22、24の積層方向から見て、引き出し電極24bの幅をW1とし、電極層30Bが絶縁層40から露出している領域の幅をW2とし、電極層30Bの幅をW3としたときも、同じ関係式(W2≦W1<W3)が成り立つ。
【0031】
上記第2の式は、W1がYの0.76倍以上であることを意味しており、発明者らによる以下に示す実験により見出された式である。
【0032】
実験では、
図5に示すように、3つの比較例1〜3に係る試料および5つの実施例1〜5に係る試料を準備し、ネットワークアナライザを使用してSパラメータからインピーダンスヘ換算し、各試料のESL(pH)を測定した。なお、いずれの試料も、内部電極22、24の積層方向から見た素体20の幅(W4)は600μmで統一されている。
【0033】
具体的には、比較例1に係る試料では、引き出し電極22b、24bの幅がいずれも50μmであり、W1がYの0.20倍となっている。また、比較例2および比較例3に係る試料では、引き出し電極22b、24bの幅がいずれも100μmであり、W1がYの0.50倍となっている。すなわち、比較例1〜3に係る試料のいずれもW1がYの0.76倍未満であり、第2の式の関係が成り立っていない。
【0034】
そして、比較例1〜3に係る試料それぞれについてESLを測定したところ、比較例1の試料では230pH、比較例2の試料では180pH、比較例3の試料では180pHとなり、いずれも高い値を示した。
【0035】
実施例1〜5に関しては、実施例1に係る試料では、引き出し電極22b、24bの幅がいずれも130μmであり、W1がYの0.76倍となっている。また、実施例2に係る試料では、引き出し電極22b、24bの幅がいずれも150μmであり、W1がYの1.00倍となっている。実施例3に係る試料では、引き出し電極22b、24bの幅がいずれも180μmであり、W1がYの1.50倍となっている。実施例4に係る試料では、引き出し電極22b、24bの幅がいずれも200μmであり、W1がYの2.00倍となっている。実施例5に係る試料では、引き出し電極22b、24bの幅がいずれも180μmであり、W1がYの1.50倍となっている。すなわち、実施例1〜5に係る試料のいずれもW1がYの0.76倍以上であり、第2の式の関係が成り立つ。
【0036】
実施例1〜5に係る試料それぞれについてESLを測定したところ、実施例1の試料では150pH、実施例2の試料では130pH、実施例3の試料では110pH、実施例4の試料では80pH、実施例5の試料では110pHとなり、いずれも比較例1〜3に比べて低い値を示した。なお、本実験において、ESLが150pH以下であれば実用上十分に低い値であり、110pH以下であればさらに実用性のある値である。
【0037】
以上の実験結果から、発明者らは、W1がYの0.76倍以上である場合には、すなわち上記第2の式が成り立つ場合には、実用上十分に低いESLの値が得られるとの知見を得た。
【0038】
積層コンデンサ10は、
図2に示すように、内部電極22、24、電極層30A、30Bおよび絶縁層40が対称性を有するため、上記実験結果から、内部電極24の引き出し電極24bの幅をW1としたときにW1/Y≧0.76が成り立つときにも、低いESLの値が得られると考えられる。
【0039】
図6に、上述した積層コンデンサ10とは異なる態様の積層コンデンサ10Aを示す。
【0040】
積層コンデンサ10Aは、上述した積層コンデンサ10の素体20と同様の素体20Aを有し、素体20Aの内部には、複数の内部電極26、28が形成されている。各内部電極26、28は、素体20Aの底面20cに対して平行な姿勢で、端面20a、20bの対向方向に沿って延在している。そして、複数の内部電極26、28は、所定距離だけ離間されて互いに平行に積層されている。
【0041】
複数の内部電極26、28は、正極の内部電極26と負極の内部電極28とで構成されており、正極の内部電極26と負極の内部電極28とが交互に配置されている。各内部電極26、28は、一体的に形成された、主に容量を形成するための容量電極26a、28aと、主に電極を素体外部に引き出するための引き出し電極26b、28bとを有する。具体的には、
図7に示すように、内部電極26は、素体端面20a、20bの対向方向(
図7の左右方向)に長く延びる長方形状の容量電極26aと、容量電極26aから素体20Aの両側面20d、20eまで延びて露出する長方形状の一対の引き出し電極26bとを有する。一対の引き出し電極26bは、端面20a近傍から側面20dに沿って側面20dの中央付近まで延びている引き出し電極26bと、端面20b近傍から側面20eに沿って側面20eの中央付近まで延びている引き出し電極26bとで構成されている。他方の内部電極28についても、内部電極26の容量電極26aと実質的に同一寸法の容量電極28aと、容量電極28aから素体20Aの両側面20d、20eまで延びて露出する長方形状の一対の引き出し電極28bとを有する。一対の引き出し電極28bは、端面20a近傍から側面20eに沿って側面20eの中央付近まで延びている引き出し電極28bと、端面20b近傍から側面20dに沿って側面20dの中央付近まで延びている引き出し電極28bとで構成されている。そして、内部電極26の形状と内部電極28の形状とは、180度回転させたときに重なる回転対称の関係または鏡像の関係を有する。
【0042】
なお、容量電極26a、28aの寸法は、一例として、長さ500μm、高さ200μm、厚さ1μmである。各引き出し電極26b、28bの寸法は、一例として、長さ200μm、高さ50μm、厚さ1μmである。
【0043】
そして、素体20Aの両側面20d、20eには、4つの電極層30A〜30Dおよび2つの絶縁層40が形成されている。すなわち、素体20Aの一方の側面20d(第1の面)には、電極層30A(第1の電極層)、電極層30B(第2の電極層)および絶縁層40が形成されており、他方の側面20eには、一対の電極層30C、30Dおよび絶縁層40が形成されている。
【0044】
なお、積層コンデンサ10Aにおいても、電極層30A〜30Dが絶縁層40から露出している領域それぞれに、回路基板51上に実装するためのめっき層50を形成することができる。
【0045】
そして、積層コンデンサ10Aにおいては、素体20Aの両側面20d、20eのそれぞれの側において、内部電極26、28の積層方向から見たときの引き出し電極26b、28b、電極層30A〜30Dおよび絶縁層40の位置関係および寸法の大小関係が、上述した積層コンデンサ10の引き出し電極22b、24b、電極層30A、30Bおよび絶縁層40の位置関係および寸法の大小関係が同じになっている。
【0046】
すなわち、
図7に示すように、内部電極26、28の積層方向から見て、内部電極26の引き出し電極26bの引き出し方向に関する幅をW1とし、電極層30Aが絶縁層40から露出している領域の幅をW2とし、電極層30Aの幅をW3とする。また、素体20Aの側面20dの幅をW4とし、側面20dにおいて、内部電極26、28の引き出し電極26b、28bの端面27、29のいずれも露出していない領域の合計長さをY(Y=y1+y2+y3)とする。なお、y1は、素体20Aの端面20aと、側面20dに露出した引き出し電極26bの端面27とが離間している領域の長さを示し、y2は、素体20Aの側面20dの中央付近において引き出し電極26bの端面27と引き出し電極28bの端面29とが離間している領域の長さを示し、y3は、素体20Aの端面20bと、側面20dに露出した引き出し電極28bの端面29とが離間している領域の長さを示す。上記の幅W1、W2、W3、W4はいずれも、
図7のように内部電極の法線方向からみたときの、引き出し電極の引き出し方向に関する幅、すなわち、引き出し方向に対して直交する方向の長さである。
【0047】
このとき、積層コンデンサ10Aにおいては、上述した第1の式(W2≦W1<W3)が成り立つとともに、第2の式(W1/Y≧0.76)が成り立つ。
【0048】
そのため、積層コンデンサ10Aにおいても、上述した積層コンデンサ10同様、電極層30Aと電極層30Bとの間および電極層30Cと電極層30Dとの間に電圧が印加される実装時において、電極層30A、30B間および電極層30C、30D間に短絡が生じる事態が抑制されるとともに、ESLの低減が図られる。
【0049】
図8に、上述した積層コンデンサ10、10Aとは異なる態様の積層コンデンサ10Bを示す。
【0050】
積層コンデンサ10Bは、上述した積層コンデンサ10、10Aの素体20、20Aと同様の素体20Bを有し、素体20Bの内部には、複数の内部電極52、54が形成されている。各内部電極52、54は、素体20Bの底面20cに対して平行な姿勢で、端面20a、20bの対向方向に沿って延在している。そして、複数の内部電極52、54は、所定距離だけ離間されて互いに平行に積層されている。
【0051】
複数の内部電極52、54は、正極の内部電極52と負極の内部電極54とで構成されており、正極の内部電極52と負極の内部電極54とが交互に配置されている。各内部電極52、54は、一体的に形成された、主に容量を形成するための容量電極52a、54aと、主に電極を素体外部に引き出するための引き出し電極52b、54bとを有する。具体的には、
図9に示すように、内部電極52は、素体端面20a、20bの対向方向(
図9の左右方向)に長く延びる長方形状の容量電極52aと、容量電極52aから素体20Bの両側面20d、20eまで延びて露出する長方形状の一対の引き出し電極52bとを有する。一対の引き出し電極52bは、側面20d側の中央付近に形成された引き出し電極52bと、側面20e側の中央付近に形成された引き出し電極52bとで構成されている。他方の内部電極54は、内部電極52の容量電極52aと実質的に同一寸法の容量電極54aと、容量電極54aから素体20Bの両端面20a、20bまで延びて露出する長方形状の一対の引き出し電極54bとを有する。一対の引き出し電極54bは、端面20a側の中央付近に形成された引き出し電極54bと、端面20b側の中央付近に形成された引き出し電極54bとで構成されている。
【0052】
なお、容量電極52a、54aの寸法は、一例として、長さ500μm、高さ200μm、厚さ1μmである。各引き出し電極52b、54bの寸法は、一例として、長さ200μm、高さ50μm、厚さ1μmである。
【0053】
そして、素体20Bの両端面20a、20bおよび両側面20d、20eには、4つの電極層30A〜30Dおよび4つの絶縁層40が形成されている。すなわち、素体20Bの一方の側面20d(第1の面)には、電極層30A(第1の電極層)および2つの絶縁層40が形成されており、他方の側面20eには、電極層30Cおよび2つの絶縁層40が形成されており、一方の端面20a(第2の面)には電極層30B(第2の電極層)が形成されており、他方の端面20bには電極層30Dが形成されている。
【0054】
電極層30A、30Cは、内部電極52と接続される。具体的には、正極の電極層30A、30Cは、側面20d、20eの中央領域に設けられ、各側面20d、20eに露出した各内部電極52の引き出し電極52bの端面53の全域と接し、それにより、電極層30A、30Cと各内部電極52とが電気的に接続される。負極の電極層30B、30Dは、端面20a、20bの中央領域に設けられ、各端面20a、20bに露出した各内部電極54の引き出し電極54bの端面55の全域と接し、それにより、電極層30B、30Dと各内部電極54とが電気的に接続される。
【0055】
4つの絶縁層40は、正極の電極層30A、30Cと負極の電極層30B、30Dとのそれぞれの間を覆うように、両側面20d、20eに2つずつ設けられている。具体的には、各絶縁層40は、電極層の間の領域および電極層30A、30Cの一部を一体的に覆うように設けられている。より詳しくは、
図9に示すように、各側面20d、20eにおける2つの絶縁層40は、電極層30A、30Cの両端部を同じ長さ分だけ覆っている。そのため、電極層30A、30Cおよび絶縁層40は、
図9において線対称の平面形状を呈する。
【0056】
また、絶縁層40は、電極層30A〜30Dのそれぞれの間を覆うとともに、電極層30A、30C上に乗り上げている。絶縁層40と接する部分の電極層30A、30Cが、絶縁層40の下側(側面20d、20e側)に潜り込んでいると言うこともできる。
【0057】
なお、積層コンデンサ10Bにおいても、電極層30A〜30Dが絶縁層40から露出している領域それぞれに、回路基板51上に実装するためのめっき層50を形成することができる。
【0058】
そして、積層コンデンサ10Bにおいては、素体20Bの両側面20d、20eのそれぞれの側において、内部電極52、54の積層方向から見たときの引き出し電極52b、電極層30A、30Cおよび絶縁層40の位置関係および寸法の大小関係が、上述した第1の式(W2≦W1<W3)を満たしている。
【0059】
すなわち、
図9に示すように、内部電極52、54の積層方向から見て、内部電極52の引き出し電極52bの引き出し方向に関する幅をW1とし、電極層30Aが絶縁層40から露出している領域の幅をW2とし、電極層30Aの幅をW3とする。
【0060】
そのため、積層コンデンサ10Bにおいても、上述した積層コンデンサ10、10A同様、電極層30Aと電極層30B、30Dとの間および電極層30Cと電極層30B、30Dとの間に電圧が印加される実装時において、これらの電極層間に短絡が生じる事態が抑制されるとともに、ESLの低減が図られる。
【0061】
また、積層コンデンサ10Bにおいては、素体20Bの側面20dの幅をW4としたときに、W1/W4≧0.20の式(以下、第3の式とも称す。)が成り立つ。
【0062】
上記第3の式は、W1がW4の0.20倍以上であることを意味しており、発明者らによる以下に示す実験により見出された式である。
【0063】
実験では、
図10に示すように、1つの比較例1に係る試料および4つの実施例1〜4に係る試料を準備し、それぞれについてESL(pH)を測定した。ネットワークアナライザを使用してSパラメータからインピーダンスヘ換算し、各試料のESL(pH)を測定した。なお、いずれの試料も、内部電極52、54の積層方向から見た素体20Bの幅(W4)は1000μmで統一されている。
【0064】
具体的には、比較例1に係る試料では、引き出し電極52bの幅が80μmであり、W1がW4の0.08倍となっている。すなわち、比較例1に係る試料では、W1がW4の0.20倍未満であり、第3の式の関係が成り立っていない。この比較例1に係る試料についてESLを測定したところ、34pHとなり、高い値を示した。
【0065】
実施例1〜4に関しては、実施例1に係る試料では、引き出し電極52bの幅が200μmであり、W1がW4の0.20倍となっている。また、実施例2に係る試料では、引き出し電極52bの幅が250μmであり、W1がW4の0.25倍となっている。実施例3に係る試料では、引き出し電極52bの幅が300μmであり、W1がW4の0.30倍となっている。実施例4に係る試料では、引き出し電極52bの幅が500μmであり、W1がW4の0.50倍となっている。すなわち、実施例1〜4に係る試料のいずれもW1がYの0.20倍以上であり、第3の式の関係が成り立つ。
【0066】
実施例1〜4に係る試料それぞれについてESLを測定したところ、実施例1の試料では20pH、実施例2の試料では17pH、実施例3の試料では15pH、実施例4の試料では11pHとなり、いずれも比較例1に比べて低い値を示した。なお、本実験において、ESLが20pH以下であれば実用上十分に低い値である。
【0067】
以上の実験結果から、発明者らは、W1がW4の0.20倍以上である場合には、すなわち上記第3の式が成り立つ場合には、実用上十分に低いESLの値が得られるとの知見を得た。
【0068】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。たとえば、容量電極や引き出し電極といった内部電極の形状は、適宜変更することができる。また、そのような変更に伴い、電極層の形状や数も適宜変更することができる。