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特許6769061スラブ搬送方法、スラブ搬送システム及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769061
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】スラブ搬送方法、スラブ搬送システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B21B 37/00 20060101AFI20201005BHJP
   B65G 63/00 20060101ALI20201005BHJP
   B21B 1/00 20060101ALI20201005BHJP
   B21B 39/00 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   B21B37/00 210
   B65G63/00 A
   B21B1/00 C
   B21B39/00 D
【請求項の数】16
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-57263(P2016-57263)
(22)【出願日】2016年3月22日
(65)【公開番号】特開2017-170462(P2017-170462A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年11月5日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 梓
(72)【発明者】
【氏名】枚田 優人
(72)【発明者】
【氏名】小幡 恭平
(72)【発明者】
【氏名】井元 浩一
(72)【発明者】
【氏名】足立 巧
(72)【発明者】
【氏名】山内 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】河井田 博昭
【審査官】 藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−034222(JP,A)
【文献】 特開2013−126674(JP,A)
【文献】 特開2007−137612(JP,A)
【文献】 特開2011−105483(JP,A)
【文献】 国際公開第96/012572(WO,A1)
【文献】 特開2010−254429(JP,A)
【文献】 特開2013−226566(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1225766(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 37/00−37/78
B21B 39/00−41/12
B21B 1/00−11/00
B21B 47/00−99/00
G05B 19/418
B65G 63/00−63/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の拠点を備えたスラブ搬送システムにおいて、拠点の1つである製鋼工場で製造されたスラブを、他の拠点を経由して、加熱炉に搬送するスラブ搬送方法であって、
前記複数の拠点のうちの着目する拠点である自拠点において、前記スラブの次の搬送先に基づいて、1枚以上の前記スラブからなるスラブ群を組み替える配替を行う拠点配替ステップを備え、
前記複数の拠点のうちの少なくとも一つには、前記スラブ群を構成するスラブの順序が指定された順序指定スラブ群を払出す順序指定拠点があり、
前記拠点配替ステップでは、
前記自拠点が前記順序指定拠点であって、配替を行える状態の拠点であるとき、前記順序指定スラブ群を形成するように配替を行い、
前記自拠点が前記順序指定拠点でなく、配替を行える状態の拠点であるとき前記スラブが経由する拠点を順番に辿っていったときに最も近い前記順序指定拠点である直近順序指定拠点までに、拠点を経由しないか又は前記順序指定スラブ群を形成する配替を行えない状態の拠点のみを経由し、かつ、前記直近順序指定拠点が前記順序指定スラブ群を形成する配替を行えない状態のとき、前記自拠点の受入れ及び払出し時、又は払出し時に、前記直近順序指定拠点が受入れる前記順序指定スラブ群を形成するように配替を行うことを特徴とするスラブ搬送方法。
【請求項2】
前記拠点配替ステップでは、前記スラブを搬送可能な搬送先が複数ある拠点において、前記スラブ群の払出し時に、前記スラブの搬送先に基づいて、配替を行うことを特徴とする請求項1に記載のスラブ搬送方法。
【請求項3】
前記拠点配替ステップでは、前記スラブ群の受入れ時に、前記スラブを前記自拠点に留めるか否かに基づいて、配替を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のスラブ搬送方法。
【請求項4】
前記拠点配替ステップでは、さらに前記スラブの温度に基づいて、配替を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスラブ搬送方法。
【請求項5】
前記拠点配替ステップでは、前記スラブの温度に基づく配替による前記スラブの温度の低下が、前記スラブの温度に基づく配替を行わないときの温度の低下より小さいとき、前記スラブの温度に基づいて、配替を行うことを特徴とする請求項4に記載のスラブ搬送方法。
【請求項6】
各拠点は、前記スラブ群の受入れ及び前記スラブ群の払出しの少なくとも一方を行い、かつ、前記スラブ群の配替を行う移動設備を備え、
前記拠点配替ステップでは、前記スラブの温度に基づく配替を行ったときでも、受入れ対象の前記スラブ群、及び、払出し対象の前記スラブ群が滞留しない場合に、前記スラブの温度に基づいて、前記移動設備で配替を行うことを特徴とする請求項4又は5に記載のスラブ搬送方法。
【請求項7】
前記拠点配替ステップでは、前記順序指定スラブ群を形成する配替を、複数回の配替で行うことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のスラブ搬送方法。
【請求項8】
配替には、拠点に前記スラブ群を受入れるとき又は拠点から前記スラブ群を払出すときに行われる前記スラブ群の組み替えである仕分けと、拠点の中で行われる前記スラブ群の組み替えである山繰りと、があり、
前記拠点配替ステップでは、前記順序指定スラブ群を形成する配替の最後の1回は前記スラブ群を払出すときに行われる前記仕分けで行うことを特徴とする請求項に記載のスラブ搬送方法。
【請求項9】
前記拠点配替ステップでは、前記自拠点が配替を行える状態の拠点であるとき、さらに、前記スラブが次に搬送される拠点が配替を行えない状態である配替不可拠点のとき、前記スラブが次に搬送される拠点から、前記スラブが経由する拠点を順番に辿っていったときに1箇所以上の連続する前記配替不可拠点の最後の前記配替不可拠点の次の搬送先までに基づいて、配替を行うことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のスラブ搬送方法。
【請求項10】
拠点間で前記スラブを搬送する搬送設備が、前記搬送設備で搬送される前記スラブ群の次の搬送先の拠点に到達すべき時刻に基づいて、前記スラブ群の配替を行う搬送配替ステップをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のスラブ搬送方法。
【請求項11】
前記搬送配替ステップでは、配替として、前記スラブ群の一方が前記スラブ群の他方を追越す追越しを行うことを特徴とする請求項10に記載のスラブ搬送方法。
【請求項12】
前記搬送配替ステップでは、追越す前記スラブ群と追越される前記スラブ群とが異なるルートを通ることで、前記追越しを行うことを特徴とする請求項11に記載のスラブ搬送方法。
【請求項13】
前記搬送配替ステップでは、追越される前記スラブ群を拠点に置き、追越す前記スラブ群を前記搬送設備で搬送することで、前記追越しを行うことを特徴とする請求項12に記載のスラブ搬送方法。
【請求項14】
前記スラブ群は、前記スラブが山積みされた状態であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載のスラブ搬送方法。
【請求項15】
複数の拠点を備え、拠点の1つである製鋼工場で製造されたスラブを、他の拠点を経由して、加熱炉に搬送するスラブ搬送システムであって、
前記複数の拠点のうちの着目する拠点である自拠点において、前記スラブの次の搬送先に基づいて、1枚以上の前記スラブからなるスラブ群を組み替える配替を行う拠点配替手段を備え、
前記複数の拠点のうちの少なくとも一つには、前記スラブ群を構成するスラブの順序が指定された順序指定スラブ群を払出す順序指定拠点があり、
前記拠点配替手段は、
前記自拠点が前記順序指定拠点であって、配替を行える状態の拠点であるとき、前記順序指定スラブ群を形成するように配替を行い、
前記自拠点が前記順序指定拠点でなく、配替を行える状態の拠点であるとき前記スラブが経由する拠点を順番に辿っていったときに最も近い前記順序指定拠点である直近順序指定拠点までに、拠点を経由しないか又は前記順序指定スラブ群を形成する配替を行えない状態の拠点のみを経由し、かつ、前記直近順序指定拠点が前記順序指定スラブ群を形成する配替を行えない状態のとき、前記自拠点の受入れ及び払出し時、又は払出し時に、前記直近順序指定拠点が受入れる前記順序指定スラブ群を形成するように配替を行うことを特徴とするスラブ搬送システム。
【請求項16】
複数の拠点を備え、拠点の1つである製鋼工場で製造されたスラブを、他の拠点を経由して、加熱炉に搬送するスラブ搬送システムを制御するためのプログラムであって、
前記複数の拠点のうちの着目する拠点である自拠点において、前記スラブの次の搬送先に基づいて、1枚以上の前記スラブからなるスラブ群を組み替える配替を行う拠点配替ステップをコンピュータに実行させ、
前記複数の拠点のうちの少なくとも一つには、前記スラブ群を構成するスラブの順序が指定された順序指定スラブ群を払出す順序指定拠点があり、
前記拠点配替ステップでは、
前記自拠点が前記順序指定拠点であって、配替を行える状態の拠点であるとき、前記順序指定スラブ群を形成するように配替を行い、
前記自拠点が前記順序指定拠点でなく、配替を行える状態の拠点であるとき前記スラブが経由する拠点を順番に辿っていったときに最も近い前記順序指定拠点である直近順序指定拠点までに、拠点を経由しないか又は前記順序指定スラブ群を形成する配替を行えない状態の拠点のみを経由し、かつ、前記直近順序指定拠点が前記順序指定スラブ群を形成する配替を行えない状態のとき、前記自拠点の受入れ及び払出し時、又は払出し時に、前記直近順序指定拠点が受入れる前記順序指定スラブ群を形成するように配替を行うことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブ搬送方法、スラブ搬送システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製鋼工場で製造されるスラブの圧延は、例えば次の工程で行われる。まず、製鋼工場において溶鋼からスラブが製造される。次に、製造されたスラブは、製鋼工場から圧延前面ヤードに搬送されて一時的に保管される。次に、圧延前面ヤードに保管されたスラブは、加熱炉に搬送されて加熱された後、熱間圧延機で圧延される。
この工程におけるスラブの搬送に関する技術として、特許文献1には次のようなスラブ供給ヤードが開示されている。特許文献1のスラブ供給ヤードでは、連続鋳造装置で鋳造されたスラブが、スラブ搬出ヤードへ搬出される際に、スラブを圧延スラブと冷片保存スラブとに分類し、これらスラブをそれぞれ有手入れスラブと無手入れスラブのスラブ幅、圧延単位別に分ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−34222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、スラブが製鋼工場から加熱炉まで搬送されるとき、スラブの温度がなるべく低下しないようにすることが望ましい。スラブの温度が大きく低下すると、その分加熱炉での加熱が必要になり、加熱炉での燃料使用量が増加し、さらに二酸化炭素の排出量が増加するためである。スラブの温度を低下しにくくするためには、搬送時にスラブを大きなまとまりにしておくことが重要である。
しかしながら、特許文献1では、スラブ搬出ヤードへ搬出されるときに、スラブがスラブ幅等で分けられる。よって、スラブの搬送の早い段階でスラブが小さいまとまりに分けられる。したがって、搬送によってスラブの温度が大きく低下するおそれがある。
【0005】
本発明は以上のような状況に鑑みてなされたものであり、搬送時のスラブの温度の低下を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスラブ搬送方法は、複数の拠点を備えたスラブ搬送システムにおいて、拠点の1つである製鋼工場で製造されたスラブを、他の拠点を経由して、加熱炉に搬送するスラブ搬送方法であって、前記複数の拠点のうちの着目する拠点である自拠点において、前記スラブの次の搬送先に基づいて、1枚以上の前記スラブからなるスラブ群を組み替える配替を行う拠点配替ステップを備え、前記複数の拠点のうちの少なくとも一つには、前記スラブ群を構成するスラブの順序が指定された順序指定スラブ群を払出す順序指定拠点があり、前記拠点配替ステップでは、前記自拠点が前記順序指定拠点であって、配替を行える状態の拠点であるとき、前記順序指定スラブ群を形成するように配替を行い、前記自拠点が前記順序指定拠点でなく、配替を行える状態の拠点であるとき前記スラブが経由する拠点を順番に辿っていったときに最も近い前記順序指定拠点である直近順序指定拠点までに、拠点を経由しないか又は前記順序指定スラブ群を形成する配替を行えない状態の拠点のみを経由し、かつ、前記直近順序指定拠点が前記順序指定スラブ群を形成する配替を行えない状態のとき、前記自拠点の受入れ及び払出し時、又は払出し時に、前記直近順序指定拠点が受入れる前記順序指定スラブ群を形成するように配替を行うことを特徴とする。
本発明のスラブ搬送システムは、複数の拠点を備え、拠点の1つである製鋼工場で製造されたスラブを、他の拠点を経由して、加熱炉に搬送するスラブ搬送システムであって、前記複数の拠点のうちの着目する拠点である自拠点において、前記スラブの次の搬送先に基づいて、1枚以上の前記スラブからなるスラブ群を組み替える配替を行う拠点配替手段を備え、前記複数の拠点のうちの少なくとも一つには、前記スラブ群を構成するスラブの順序が指定された順序指定スラブ群を払出す順序指定拠点があり、前記拠点配替手段は、前記自拠点が前記順序指定拠点であって、配替を行える状態の拠点であるとき、前記順序指定スラブ群を形成するように配替を行い、前記自拠点が前記順序指定拠点でなく、配替を行える状態の拠点であるとき前記スラブが経由する拠点を順番に辿っていったときに最も近い前記順序指定拠点である直近順序指定拠点までに、拠点を経由しないか又は前記順序指定スラブ群を形成する配替を行えない状態の拠点のみを経由し、かつ、前記直近順序指定拠点が前記順序指定スラブ群を形成する配替を行えない状態のとき、前記自拠点の受入れ及び払出し時、又は払出し時に、前記直近順序指定拠点が受入れる前記順序指定スラブ群を形成するように配替を行うことを特徴とする。
本発明のプログラムは、複数の拠点を備え、拠点の1つである製鋼工場で製造されたスラブを、他の拠点を経由して、加熱炉に搬送するスラブ搬送システムを制御するためのプログラムであって、前記複数の拠点のうちの着目する拠点である自拠点において、前記スラブの次の搬送先に基づいて、1枚以上の前記スラブからなるスラブ群を組み替える配替を行う拠点配替ステップをコンピュータに実行させ、前記複数の拠点のうちの少なくとも一つには、前記スラブ群を構成するスラブの順序が指定された順序指定スラブ群を払出す順序指定拠点があり、前記拠点配替ステップでは、前記自拠点が前記順序指定拠点であって、配替を行える状態の拠点であるとき、前記順序指定スラブ群を形成するように配替を行い、前記自拠点が前記順序指定拠点でなく、配替を行える状態の拠点であるとき前記スラブが経由する拠点を順番に辿っていったときに最も近い前記順序指定拠点である直近順序指定拠点までに、拠点を経由しないか又は前記順序指定スラブ群を形成する配替を行えない状態の拠点のみを経由し、かつ、前記直近順序指定拠点が前記順序指定スラブ群を形成する配替を行えない状態のとき、前記自拠点の受入れ及び払出し時、又は払出し時に、前記直近順序指定拠点が受入れる前記順序指定スラブ群を形成するように配替を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、搬送時のスラブの温度の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】物流システムの概念図である。
図2】物流システムが備えるコンピュータシステムのブロック図である。
図3】配替の概念図であり、(a)は仕分けの概念図、(b)は山繰りの概念図、(c)は追越しの概念図である。
図4】熱ロスグラフを表す図である。
図5】幅広順スラブ群を形成する配替の手順の図であり、(a)は配替を行う前の状態の図、(b)は幅別配替を行った状態の図、(c)は幅広順スラブ群が形成された状態の図である。
図6】拠点での受入れ処理及び払出し処理のフローチャートである。
図7】第1ヤードでの受入れ処理の例を説明する図であり、(a)は受入対象スラブの例を示す図、(b)は受入れ処理後の第1ヤードの状態を示す図、(c)は受入れ処理後の第1ヤードの他の状態を示す図である。
図8】搬送設備での追越し処理のフローチャートである。
図9】スラブの温度変化の例を説明する図であり、(a)は比較例と本実施形態とでの温度変化の違いを示す図、(b)は搬送設備のカバー被服までの時間を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
はじめに、図1を参照して、物流システム1について説明する。図1は物流システム1の概念図である。なお、物流システム1は、本発明のスラブ搬送システムの一例であり、後に説明するようなスラブ搬送を実現する。
物流システム1は、製鋼工場10と、圧延前面ヤード20と、搬送ルート30と、搬送設備40と、中間ヤード50と、加熱炉装入テーブル60と、加熱炉61と、熱間圧延機62とを備える。
製鋼工場10は、転炉と連続鋳造機とを備える。転炉は溶鋼を生成し、連続鋳造機は、転炉で生成された溶鋼を冷やしながら板状等の形状にし、所定の長さで切断してスラブ70を製造する。製鋼工場10で製造されたスラブ70は、圧延前面ヤード20等を経由して加熱炉61に搬送されて加熱された後、熱間圧延機62に搬送されて圧延される。また、製鋼工場10は、製造されたスラブ70を一時的に保管できる置場を備える。
【0010】
圧延前面ヤード20は、加熱炉61に搬送されるスラブ70を一時的に保管する場所であり、加熱炉装入テーブル60の近傍に設けられる。圧延前面ヤード20は、第1ヤード21と第2ヤード25とで構成される。第1ヤード21は、第2ヤード25より広く、圧延前面ヤード20に搬送されるスラブ70は、通常、まず第1ヤード21に置かれる。第2ヤード25は、圧延前面ヤード20における加熱炉装入テーブル60に近い側に設けられる。第1ヤード25に置かれたスラブ70は、加熱炉61に搬送される時刻が近づくと、第2ヤード25に搬送され、第2ヤード25から加熱炉装入テーブル60に運ばれる。
【0011】
搬送ルート30は、搬送設備40によってスラブ70が搬送されるルートであり、第1ルート31と第2ルート32とを備える。第1ルート31は、製鋼工場10と圧延前面ヤード20の第1ヤード21とを繋ぐルートである。なお、第1ルート31は、製鋼工場10と圧延前面ヤード20との間にある中間ヤード50を経由する。第2ルート32は、中間ヤード50と圧延前面ヤード20の第1ヤード21とを繋ぐルートである。
搬送設備40は、搬送ルート30を通ってスラブ70を搬送する。本実施形態において、搬送設備40は列車であり、牽引車両41と貨車42とを備え、搬送ルート30を走行してスラブ70を搬送する。牽引車両41は、例えばディーゼル機関車であり、牽引車両41に連結された貨車42を牽引する。貨車42は、スラブ70を載せることができる車両である。搬送設備40は、図1に示す例では、1台の牽引車両41と4台の貨車42からなるが、これ以外の台数であってもよい。搬送ルート30上を複数の搬送設備40が運行してもよい。
搬送設備40には、第1搬送設備40Aと第2搬送設備40Bとがある。第1搬送設備40Aは、第1ルート31を運行して、スラブ70を製鋼工場10から圧延前面ヤード20又は中間ヤード50に搬送する。第2搬送設備40Bは、第2ルート32を運行して、スラブ70を中間ヤード50から圧延前面ヤード20に搬送する。
【0012】
第1ルート31及び第2ルート32は、それぞれ、圧延前面ヤード20に向かう方向の上りルートと、圧延前面ヤード20から戻る方向の下りルートとを備える。第1ルート31には、複数の上りルートがあり、第1搬送設備40Aは、第1ルート31において他の第1搬送設備40Aを追越すことができる。一方、第2ルートの上りルートは1つであり、第2搬送設備40Bは、第2ルート32において他の第2搬送設備40Bを追越すことができない。
なお、搬送設備40は、コンベアや車両(例えば電動車、電車又はトレーラ)等であってもよい。
【0013】
中間ヤード50は、製鋼工場10から圧延前面ヤード20に搬送中のスラブ70の一部を一時的に保管可能な場所であり、製鋼工場10と圧延前面ヤード20との間にある。なお、本実施形態では中間ヤード50は1つであるが、中間ヤード50は複数あってもよい。
加熱炉装入テーブル60は、第2ヤード25から運ばれたスラブ70を、加熱炉61に搬送する搬送ラインである。
加熱炉61は、スラブ70を予め定められた所定の温度まで加熱する。加熱炉61は、例えば、第1加熱炉61A、第2加熱炉61B、第3加熱炉61C及び第4加熱炉61Dの4つがある。それぞれの加熱炉61は、加熱炉装入テーブル60に隣接する位置に配置される。加熱炉装入テーブル60は、スラブ70が搬送される予定になっている加熱炉61まで到達すると、スラブ70をこの加熱炉61に入れる。なお、加熱炉61は4基に限定されるものではなく、何基であってもよい。
熱間圧延機62は、加熱炉61から搬入されるスラブを圧延する。熱間圧延機62は、一対の圧延ロールからなる圧延ロールセットを複数備える。そして、圧延ロールを回転させて、それぞれの圧延ロールセットにおいて、一対の圧延ロールの間にスラブを通すことで、スラブを圧延する。
【0014】
次に、図2を参照して、物流システム1が備えるコンピュータシステムを説明する。図2は、物流システム1が備えるコンピュータシステムのブロック図である。
物流システム1は、製鋼管理装置100と、加熱圧延管理装置101と、中間ヤード管理装置102と、圧延前面ヤード管理装置103と、搬送設備管理装置104とを備える。
製鋼管理装置100は、製鋼工場10で製造されるスラブ70のスケジュール、製鋼工場10に一時的に保管されるスラブ70、及び、スラブ70の搬送先や搬送時刻等を管理する。
【0015】
加熱圧延管理装置101は、加熱炉61で加熱されるスラブ70や熱間圧延機62で圧延されるスラブ70のスケジュールを管理したり、加熱炉61や熱間圧延機62を制御したりする。
中間ヤード管理装置102は、中間ヤード50に保管されているスラブ70、及び、スラブ70の搬送先や搬送時刻等を管理する。
圧延前面ヤード管理装置103は、圧延前面ヤード20に保管されているスラブ70、及び、スラブ70の搬送先や搬送時刻等を管理する。
搬送設備管理装置104は、搬送設備40の運行を管理する。
【0016】
製鋼管理装置100は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、及びハードディスク等の記憶装置を備える。同様に、加熱圧延管理装置101、中間ヤード管理装置102、圧延前面ヤード管理装置103及び搬送設備管理装置104は、それぞれ、CPU、メモリ、及びハードディスク等の記憶装置を備える。記憶装置に記憶されたプログラムがメモリに展開され、CPUがメモリに展開されたプログラムを実行することで、それぞれの装置が備える機能が実現される。なお、それぞれの装置が備える機能の実現には、必要に応じて他の装置等から取得するデータが使われる。
【0017】
次に、スラブ70の搬送の流れについて説明する。
製鋼工場10で製造されるスラブ70は、圧延前面ヤード20の第1ヤード21、第2ヤード25又は中間ヤード50に搬送される。中間ヤード50に搬送されたスラブ70は、中間ヤード50で所定期間保管された後、圧延前面ヤード20の第1ヤード21又は第2ヤード25に搬送される。第1ヤード21に搬送されたスラブ70は、第2ヤード25に搬送される。第2ヤード25に搬送されたスラブ70は、第1加熱炉61Aから第4加熱炉61Dのいずれかに搬送されて加熱されて、熱間圧延機62に搬送される。
スラブ70がどのような流れで熱間圧延機62に搬送されるかは、原則として製鋼工場10で製造されるときに、製鋼管理装置100がスラブ70毎に定める。この情報は、物流システム1のコンピュータシステムの各装置で共有される。ただし、中間ヤード50のスラブ70の量や、搬送ルート30の混雑具合等に応じて、搬送設備管理装置104等の装置等が、スラブ70の搬送中に、スラブ70の搬送の流れを変更することもある。
【0018】
次に、物流システム1でスラブ70を搬送するときのスラブ70の管理方法について説明する。
物流システム1では、1枚以上のスラブ70からなるスラブ群71を単位としてスラブ70の搬送が管理される。そして、本実施形態では、1つのスラブ群71は、スラブ70を積み重ねて山積みされた状態として管理される。例えば、搬送設備40では、1台の貨車42には、山積みされた状態の1つのスラブ群71が積載されて搬送される。また、製鋼工場10のスラブ70の置場、圧延前面ヤード20の第1ヤード21及び第2ヤード25、並びに、中間ヤード50では、スラブ群71が所定の場所に配置されて管理され、スラブ群71毎に次の搬送先に搬送される。
しかし、スラブ群71の構成が製鋼工場10から第2ヤード25まで常に変わらない、とは限らない。例えば、スラブ群71を構成するスラブ70の搬送先が異なったり、スラブ群71の搬送先の拠点が受入れるスラブ群71の構成が決まっていたりするときは、スラブ群71の組み替えである配替を行う必要がある。
【0019】
次に、拠点及び移動設備について説明する。拠点は、スラブ70を一時的に保管したり留めたりできる場所のことである。製鋼工場10、圧延前面ヤード20及び中間ヤード50は、拠点といえる。各拠点は、スラブ群71の受入れ及びスラブ群71の払出し、並びに、スラブ群71の配替を行う移動設備を1台以上備える。移動設備は、移動設備を備える拠点に対応する装置に管理される。例えば、圧延前面ヤード20に対応する装置である圧延前面ヤード管理装置103が、圧延前面ヤード20の移動設備の動作等を管理する。また、中間ヤード50に対応する装置である中間ヤード管理装置102が、中間ヤード50の移動設備の動作等を管理する。他の拠点も同様である。
【0020】
本実施形態では、移動設備にはクレーンが用いられる。圧延前面ヤード20を構成する第1ヤード21及び第2ヤード25もそれぞれ拠点といえるが、第1ヤード21及び第2ヤード25は1台のクレーンを共有する。ただし、第1ヤード21及び第2ヤード25がそれぞれクレーンを備えてもよい。
本実施形態の拠点には、スラブ70を搬送可能な搬送先が複数ある拠点がある。例えば、製鋼工場10におけるスラブ70を搬送可能な搬送先は、圧延前面ヤード20の第1ヤード21、第2ヤード25及び中間ヤード50である。同様に、中間ヤード50における搬送先は、圧延前面ヤード20の第1ヤード21及び第2ヤード25である。また、第2ヤード25における搬送先は、第1から第4加熱炉61である。
【0021】
次に、配替について説明する。配替は、スラブ群71を組み替えることである。配替には、スラブ群71の構成自体は変えずにスラブ群71の並び(順序)を入れ替えることが含まれる。
配替には、仕分け、山繰り、及び、追越しがある。
仕分けは、第1ヤード21等の拠点でスラブ群71を受入れるとき、又は、第1ヤード21等の拠点からスラブ群71を払出すときに、拠点への受入れ又は拠点からの払出しと同時に行うスラブ群71の組み替えである。さらに、第1ヤード21から第2ヤード25にスラブ群71を払出すときに、払出しと同時に行われるスラブ群71の組み替えも仕分けである。
図3(a)を参照して、スラブ群71を受入れるときの仕分けの例を説明する。図3(a)は、仕分けの概念図である。図3(a)では、第1ヤード21の受入れ対象のスラブ群71が貨車42で第1ヤード21まで搬送されて来ている。貨車42に載せられているスラブ群71は、上から順に、第1スラブ70から第4スラブ70の4枚のスラブで構成されている。
第1ヤード21には、第1置場22Aから第3置場22Cまで3つの置場がある。それぞれの置場には1つのスラブ群71を保管できる。また、第1ヤード21では、第1スラブ70と第2スラブ70とからなるスラブ群71、及び、第3スラブ70と第4スラブ70とからなるスラブ群71を形成する必要があるものとする。
【0022】
このとき、第1ヤード21のクレーンは、貨車42のスラブ群71を第1ヤード21に移動する。本実施形態のクレーンはスラブを1枚ずつ移動できるものとする。そこで、第1ヤード21のクレーンは、まず、貨車42の第1スラブ70及び第2スラブ70を順番に第2置場22Bに置く。次に、第1ヤード21のクレーンは、貨車42の第3スラブ70及び第4スラブ70を順番に第1置場22Aに置く。
このように、スラブ群71の受入れと同時に仕分けが行われて、貨車42のスラブ群71が、2つのスラブ群71に組み替えられる。なお、クレーンは、貨車42のスラブ群71の上にあるスラブ70から順番に移動していく。したがって、第1ヤード21にスラブ70が置かれたとき、スラブ群71のスラブ70の順序は、貨車42に積まれていたときのスラブ群71のスラブ70の順序とは逆になる。
なお、本実施形態のクレーンはスラブを1枚ずつ移動できるものとするが、物流システム1にはスラブを複数枚同時に移動できるクレーンを用いてもよい。
【0023】
山繰りは、第1ヤード21等の拠点の中で行われるスラブ群71の組み替えである。
図3(b)を参照して、スラブ群71の山繰りの例を説明する。図3(b)は、山繰りの概念図である。第1ヤード21の第1置場22Aに、上から順に、第1スラブ70から第4スラブ70の4枚のスラブで構成されているスラブ群71が置かれている。そして、第1ヤード21では、第1スラブ70と第2スラブ70とからなるスラブ群71、及び、第3スラブ70と第4スラブ70とからなるスラブ群71を形成する必要があるものとする。
このとき、第1ヤード21のクレーンは、第1置場22Aの第1スラブ70及び第2スラブ70を順番に第2置場22Bに移動する。次に、第1ヤード21のクレーンは、第1置場22Aの第3スラブ70及び第4スラブ70を順番に第3置場22Cに移動する。
このように山繰りが行われて、第1置場22Aのスラブ群71が、2つのスラブ群71に組み替えられる。
【0024】
追越しは、搬送設備40を用いて、スラブ群71が搬送先の拠点に到着する順序を入れ替えることである。
図3(c)を参照して、スラブ群71の追い越しの例を説明する。図3(c)は、追越しの概念図である。第1ルート31にある2つの上りルート31A、Bのうち、一方の上りルート31Aの搬送設備40が製鋼工場10から先に出発しており、他方の上りルート31Bの搬送設備40が後から出発している。
このとき、上りルート31Aの搬送設備40が停止したり減速したりして、上りルート31Bの搬送設備40が上りルート31Aの搬送設備40を追越す。
このように追越しが行われて、スラブ群71の搬送先である圧延前面ヤード20に到着する順序を入れ替えることができる。
【0025】
ここでは、搬送ルート30(第1ルート31)を使った追越しを説明したが、追越しには中間ヤード50を使ってもよい。
中間ヤード50を使った追越しの第1の方法では、搬送設備40が第1ルート31で搬送するスラブ群71のうち、追越されるスラブ群71を一旦中間ヤード50に置く。追越すスラブ群71はそのまま第1ルート31で圧延前面ヤード20に搬送される。
中間ヤード50を使った追越しの第2の方法では、搬送設備40が第1ルート31で搬送するスラブ群71のうち、追越すスラブ群71を、中間ヤード50を経由して第2ルート32に移動する。第2ルート32に移動して搬送設備40に載せられたスラブ群71が、第1ルート31の追越されるスラブ群71を追越して圧延前面ヤード20に搬送される。このように追越しが行われる。
なお、第1ルート31の搬送設備40のスラブ群71を、中間ヤード50に置いたり、第2ルート32の搬送設備40に移動したりするときには、中間ヤード50のクレーンが使われる。
【0026】
次に、図4を参照して、配替による熱ロスについて説明する。図4は、熱ロスグラフを表す図である。熱ロスグラフは、配替を行うことによって生じるスラブ70の熱ロスを表すグラフである。熱ロスグラフの横軸は、スラブ70が製鋼工場10から熱間圧延機62に搬送されるまでの工程を表す。したがって、前の工程(横軸の左側)に比べて後の工程(横軸の右側)の方が、時間が経過していることになる。熱ロスグラフの縦軸は、1回の配替による熱ロスを表す。
熱ロスとは、スラブ70の温度の減少量のことである。熱ロスが大きいと、スラブ70の温度が大きく下がることになり、その分、加熱炉61がスラブ70を加熱する必要がある。したがって、加熱炉61での燃料使用量が増加し、さらに二酸化炭素の排出量が増加することになる。このため、熱ロスは小さい方が望ましい。
【0027】
図4から分かるように、配替は、前の工程であるほど、1回の配替による熱ロスが大きい。これは、次のような理由によるものである。第1に、配替では、搬送ルート30を使った追越しを除いて、クレーンでスラブ群71のスラブ70を移動する。この移動の際に、スラブ70の温度が下がるが、スラブ70の温度が高いほどスラブ70の温度が大きく下がる。このため、前の工程であるほど、配替を1回行ったときの熱ロスが大きくなる。
第2に、配替として仕分け又は山繰りが行われると、スラブ群71を構成するスラブ70の数が少なくなっていき、スラブ群71の高さが低くなる場合が多い。よってスラブ群71の体積が小さくなり、体積あたりの表面積が大きくなる傾向になる。したがって、仕分け又は山繰りを行うことで、スラブ群71の温度が下がりやすくなる。ここで、前の工程ほどスラブ70の温度が高いため、温度が下がりやすい。このため、前の工程であるほど、配替を1回行ったときの熱ロスが大きくなる。
したがって、可能な限り配替は後の工程で行うことが望ましい。
【0028】
次に、仕分け、山繰り、及び、追越しのそれぞれの熱ロスの特徴を説明する。
仕分けは、拠点への受入れ又は拠点から払出しと同時に行うスラブ群71の組み替えである。スラブ群71を拠点に受入れたり、拠点から払出したりするときは、拠点のクレーンを用いて、スラブ群71のスラブ70を例えば1枚ずつ移動する。仕分けは、この移動と同時に行われる。したがって、スラブ群71を拠点に受入れたり、拠点から払出したりするときに、仕分けをする場合と仕分けをしない場合とを比べると、スラブ70の熱ロスに差がない。
しかし、仕分けによりスラブ群71が分けられていくため、山積みされたスラブ群71の高さが低くなり、仕分けされた後のスラブ群71は温度が下がりやすくなる。したがって、仕分けの後に熱ロスが大きくなる。
このため、仕分けは後の工程で行うことが望ましい。
【0029】
山繰りは、拠点の中で行われるスラブ群71の組み替えである。山繰りは、スラブ群71の拠点への受入れ又は拠点から払出しとは別に行うものである。スラブ70を移動したときの熱ロスは、スラブ70の温度が高いほど大きい。したがって、熱ロスが小さくなるように、山繰りは後の工程で行うことが望ましい。
山繰りを実施するには、仕分けとは異なり、山繰りのみのためにクレーンでスラブ70を移動する必要がある。よって、スラブ群71の配替えを山繰りで実施する場合と仕分けで実施する場合とを比べると、山繰りで実施する場合の方が全体として熱ロスが大きくなる。したがって、同じ配替をするならば、山繰りで実施するよりも仕分けで実施した方が、全体として熱ロスが小さくなるため、好ましい。
【0030】
追越しのうち、まず、搬送ルート30を使った追越しについて説明する。搬送ルート30を使った追越しは、スラブ群71を別の搬送設備40に移動させたり、スラブ群71を中間ヤード50に置いたりする必要がないため、熱ロスが生じない。
次に、中間ヤード50を使った追越しについて説明する。追越されるスラブ群71を搬送設備40から中間ヤード50に置かれるときは、追越されるスラブ群71をクレーンが中間ヤード50に移動するときに熱ロスが生じる。一方、追越すスラブ群71は熱ロスが生じない。
追越すスラブ群71が、第1ルート31の搬送設備40から、中間ヤード50を介して第2ルート32の搬送設備40に移動するときは、追越すスラブ群71をクレーンが第2ルート32の搬送設備40に移動するときに熱ロスが生じる。一方、追越されるスラブ群71は熱ロスが生じない。
【0031】
次に、配替を行う目的について説明する。
配替の第1の目的は、スラブ70の搬送先毎にスラブ70を分類することである。
例えば、製鋼工場10では、スラブ群71は次のように分類されている必要がある。第1に、搬送先が圧延前面ヤード20の第1ヤード21であるスラブ群71である。第2に、搬送先が圧延前面ヤード20の第2ヤード25であるスラブ群71である。第3に、搬送先が中間ヤード50となるスラブ群71である。さらに、2つある第1ルート31の上りルート毎にスラブ群71を分類する必要がある。
また、中間ヤード50では、スラブ群71は次のように分類されている必要がある。第1に、搬送先が圧延前面ヤード20の第1ヤード21であるスラブ群71である。第2に、搬送先が圧延前面ヤード20の第2ヤード25であるスラブ群71である。第3に、中間ヤード50に留めるスラブ群71である。さらに、第1ルート31及び第2ルート32毎にスラブ群71を分類する必要がある。また、2つある第1ルート31の上りルート毎にスラブ群71を分類する必要がある。
【0032】
スラブ70の搬送先は、例えば、予定されているトラックタイムが所定時間以上か否か、紐付材か余剰材か、及び、搬送先の第1加熱炉61Aから第4加熱炉61Dのどの加熱炉61か、等の観点で定められる。トラックタイムは、スラブ70が製鋼工場10で製造されてから加熱炉61に搬送されるまでの時間である。紐付材は鋼材の注文に対して紐付いたスラブ70である。余剰材は、鋼材の注文に対して紐付いていないスラブ70である。このようなことは、スラブ70が製造されたときに、例えば製鋼管理装置100で定められる。ただし、スラブ70が搬送されている途中に、圧延前面ヤード管理装置103等の他の装置で変更されることがある。
【0033】
配替の第2の目的は、スラブ70の物理的な属性に基づいて、スラブ群71を分類することである。スラブ70の物理的な属性には、スラブ70の大きさ(幅や長さや厚み)、スラブ70の温度、スラブ70の材質、及び、スラブ70の引っ張り強度等がある。
第2の目的の配替には次の2種類がある。第1が、スラブ群71を形成できるようにすることである。スラブ群71は、上記のように、スラブ70が山積みされた状態のものである。したがって、スラブ70の幅や長さの差が大きいと、山積みしたときに不安定になるためスラブ群71を形成できない。そこで、スラブ群71を形成できるように、スラブ70の幅や長さが所定の範囲に収まるスラブ70を用いてスラブ群71を形成する必要がある。
第2が、スラブ70の熱ロスが少なくなるように、スラブ70の温度に基づいてスラブ70を分類することである。例えば、1つのスラブ群71に20度のスラブ70と700度のスラブ70とが同数混在すると、スラブ70は、中間の360度程度になる。したがって、700度のスラブが360度程度まで温度が下がり、大きな熱ロスが生じる。このような熱ロスが生じないように、スラブ群71を構成するスラブ70の温度が所定の範囲に収まるようにスラブ70を分類する。スラブ70の温度に基づいてスラブ70を分類することで、スラブ群71は、所定の範囲内の温度に収まるスラブ70から構成されるようになり、熱ロスを抑制できる。
【0034】
なお、スラブ70の温度に基づいてスラブ70を配替することは必須ではなく、第1温度配替条件、及び、第2温度配替条件を満たす場合に行われる。
第1温度配替条件は、スラブ70の物流を阻害しないことである。すなわち、第1温度配替条件は、スラブ70の温度に基づく配替を行ったときでも、受入れ対象のスラブ群71及び払出し対象のスラブ群71が滞留しないことである。スラブ70の物流が阻害されると、熱間圧延機62にスラブ70が搬入されなくなり、操業に支障をきたすおそれがあるためである。
第2温度配替条件は、スラブ70の温度に基づく配替によるスラブ70の温度の低下が、スラブ70の温度に基づく配替を行わないときの温度の低下より小さいことである。既に説明したように、配替によってスラブ70の温度が低下する。そこで、スラブ70の温度に基づく配替によるスラブ70の温度の低下と、スラブ70の温度に基づく配替を行わないときの温度の低下とを比較する必要がある。
【0035】
配替の第3の目的は、拠点がスラブ70を受入れる順に、スラブ70の並びを変えることである。スラブ70の並びは、例えば、至急材か否かで定められる。至急材は納期までの日数が閾値未満のスラブ70である。
配替の第3の目的には、次に説明するような、スラブ群71を順序指定スラブ群に組み替えることも含まれる。
第2ヤード25のスラブ群71は、一番上のスラブ70が最も幅広であり、下にいくにつれて幅が狭くなるようにスラブ70が山積みされたスラブ群71である幅広順スラブ群である必要がある。これは、熱間圧延機62では、幅の広いスラブ70から順に圧延するためである。すなわち、第2ヤード25に置かれたスラブ群71が幅広順スラブ群であると、幅広順スラブ群の上にあるスラブ70から順に加熱炉装入テーブル60に払出されることになる。したがって、加熱炉61を通って、熱間圧延機62では、幅の広いスラブ70から順に搬送されることになる。このため、第2ヤード25のスラブ群71は幅広順スラブ群である必要がある。
幅広順スラブ群のようにスラブ群71を構成するスラブ70の順序が定められたスラブ群を順序指定スラブ群と呼ぶ。また、第2ヤード25のように、少なくとも払出すときに順序指定スラブ群が形成される必要がある拠点を順序指定拠点と呼ぶ。
【0036】
次に、幅広順スラブ群を形成する配替の手順について説明する。
第1の手順として、スラブ群を幅別に配替して、幅別に分類された複数のスラブ群を形成する。この配替を幅別配替と呼ぶ。
図5(a)に示す例では、スラブ群71Aは、上から順に第1スラブ70、第2スラブ70及び第3スラブ70で構成され、スラブ群71Bは、上から順に第4スラブ70、第5スラブ70及び第6スラブ70で構成される。そして、第1スラブ70及び第5スラブ70は幅が同程度であり、他のスラブより幅広である。第2スラブ70及び第4スラブ70は幅が同程度であり、他のスラブより幅狭である。第3スラブ70及び第6スラブ70は幅が同程度であり、第1スラブ70及び第5スラブ70より幅狭であり、第2スラブ70及び第4スラブ70より幅広である。なお、第1から第6スラブ70の幅の相違は、スラブ群71を形成できる範囲内であるものとする。
図5(a)の状態から幅別配替を行うと、図5(b)に示すように、スラブ群71Cと、スラブ群71Dと、スラブ群71Eとが形成される。スラブ群71Cは、幅広の第1スラブ70及び第5スラブ70からなる。スラブ群71Dは、幅が中程度の第3スラブ70及び第6スラブ70からなる。スラブ群71Eは、幅狭の第2スラブ70及び第4スラブ70からなる。
【0037】
第2の手順として、幅の狭い順に、幅別に分類された複数のスラブ群71から1枚ずつスラブ70を移動する配替により、幅広順スラブ群を形成する。
図5(b)の状態で、スラブ群71E、スラブ群71D、スラブ群71Cから順番に1枚ずつスラブ70を移動して、図5(c)に示すように幅広順スラブ群であるスラブ群71F及びスラブ群71Gを形成する。
このようにして、幅広順スラブ群を形成する配替が行われる。
なお、図5では、スラブ70の幅が、幅広、幅狭、幅が中程度の3種類のスラブ群71に幅別配替を行ったが、さらに細かく幅別配替を行ってもよい。また、通常は、幅の狭い順に、幅別に分類された複数のスラブ群71から1枚ずつスラブ70を移動する配替を行う際に、同時に、搬送先毎に分ける配替を行う。
【0038】
次に、図6を参照して、拠点でのスラブ群の受入れ及び払出し処理について説明する。図6は、拠点でのスラブ群の受入れ及び払出し処理のフローチャートである。なお、図6の処理は、全ての拠点で同じである。また、図6の処理は本発明の拠点配替手段によって行われる拠点配替ステップの一例である。
図6の処理は、拠点に搬入される1つのスラブ群71に着目した処理であり、スラブ群71の受入れ処理と、命令待ちと、払出し処理とからなる。受入れ処理で、スラブ群71が配替されて複数のスラブ群71になったときは、それぞれのスラブ群71毎に払出し処理がされる。受入れ処理は図6のステップS100からS104までであり、命令待ちはステップS105であり、払出し処理はステップS106からS110までである。
あるスラブ群71が拠点に到着してからクレーンで拠点に置かれた後に、他のスラブ群71が拠点に到着すると、他のスラブ群71についての図6の処理が開始する。
【0039】
ステップS100において、物流システム1の管理者(以下では単に管理者と呼ぶ)は、到着したスラブ群71についての配替が必要か否かを判断する。配替が必要か否かは、上記の配替の第1の目的(搬送先毎)、第2の目的(物理的な属性)及び第3の目的(拠点への受入れ順)に基づいて、次のように判断される。
まず、自拠点に到着したスラブ群71に、自拠点に一定期間留める予定のスラブ70と、自拠点に留めずに搬送する予定のスラブ70とが混在するとき、両者を分けるために配替が必要であると判断される。
また、自拠点に到着したスラブ群71に、所定値の温度差があるスラブ70が混在し、かつ、上記の第1温度配替条件及び第2温度配替条件を満たすとき、スラブ70の温度に基づいてスラブ70を配替することが必要であると判断される。
【0040】
また、自拠点で順序指定スラブ群を形成する必要があり、かつ、次に説明する幅別配替条件を満たすときは、順序指定スラブ群を形成する配替の一部である幅別配替が必要であると判断される。
自拠点が順序指定拠点のときは、自拠点の順序指定スラブ群を形成する必要があると判断される。しかし、自拠点が順序指定拠点ではなくても、第1順序配替条件、及び、第2順序配替条件を満たす場合は、順序指定スラブ群を形成する必要があると判断される。
第1順序配替条件は、スラブ70が経由する拠点を順番に辿っていったときに最も近い順序指定拠点である直近順序指定拠点までに、拠点を経由しない、又は、順序指定スラブ群を形成する配替を行えない状態の拠点のみを経由することである。
第2順序配替条件は、直近順序指定拠点が順序指定スラブ群を形成する配替を行えない状態であることである。
【0041】
例として、圧延前面ヤード20を考える。圧延前面ヤード20の第2ヤード25は面積が小さい。また、第2ヤード25のクレーンは、第2ヤード25から短い間隔でスラブ70を加熱炉装入テーブル60に払出す必要があるため、第2ヤード25内で配替を行う余力がない。よって、第2ヤード25は、配替を行えない状態の拠点である配替不可拠点である。したがって、第2ヤード25は、第2順序配替条件を満たす。
また、自拠点を第1ヤード21とすると、第1ヤード21のスラブ70は第2ヤード25に払出されるため、第1順序配替条件を満たすといえる。したがって、第1ヤード21では、順序指定スラブ群を形成する配替を行う必要があることになる。
【0042】
幅別配替条件は、スラブ群71の受入れ処理時に他の配替と共に幅別配替を行ったとき、配替の回数が増えないことである。また、幅別配替を行ったときのスラブ群71の高さは高い方がよい。例えば、スラブ70が8枚以上重なった高さが望ましい。
なお、ステップS100で配替が必要と判断されたときは、この必要な配替がステップS101、S103、S104で行われる。また、この必要な配替は、配替の回数が最小になるようにまとめて行われる。例えば、自拠点に一定期間留める予定のスラブ70と、自拠点に留めずに搬送する予定のスラブ70とを分けるために配替、及び、スラブ70の温度に基づく配替を1度の配替で行えるときは、1度の配替で行うことで熱ロスを抑える。
【0043】
ここで、図7を参照して、受入れ処理での配替の例を説明する。自拠点は第1ヤード21であり、図7(a)に示すスラブ群71が第1ヤード21に到着したものとする。図7(a)のスラブ群71は、上から順に、第1スラブ70、第2スラブ70、第3スラブ70、第4スラブ70と積まれている。第1及び第2スラブ70は第1ヤード21に留める予定であり、第3及び第4スラブは第1ヤード21に留めずに搬送する予定であるものとする。また、第1スラブ70及び第3スラブ70は温度が低い冷片であり、第2スラブ70及び第4スラブ70は温度が高い熱片であるものとする。なお、冷片と熱片とは、所定値の温度差があるものとする。また、図7(a)に示すスラブ群71が第1ヤード21に到着したとき、第1ヤード21の第1置場22A及び第2置場22Bは空いており、第3置場22C及び第4置場22Dには他のスラブ群71が置かれているものとする。
【0044】
図7の例では、幅別配替条件を満たさないとする。このため、幅別配替は行われない。
一方、第1温度配替条件及び第2温度配替条件を満たすとすると、自拠点に留めるスラブ70と留めないスラブ70とに分類し、さらに、温度に基づいて分類する必要がある。したがって、第1から第4スラブ70は、異なる4つのスラブ群71に配替する必要がある。しかし、空いている置場は第1置場22Aと第2置場22Bの2つしかない。
このとき、管理者は、自拠点に留めるスラブ70と留めないスラブ70とに分類する配替を優先するように判断し、自拠点に留めるスラブ70と留めないスラブ70とに分類する配替を行うように、圧延前面ヤード管理装置103に指示を出す。この指示により、圧延前面ヤード20のクレーンは、搬送設備40の第1スラブ70を第1置場22Aに降ろし、次に、搬送設備40の第2スラブ70を第1置場22Aの第1スラブ70の上に降ろす。さらに、圧延前面ヤード20のクレーンは、搬送設備40の第3スラブ70を第2置場22Bに降ろし、次に、搬送設備40の第4スラブ70を第2置場22Aの第3スラブ70の上に降ろす。こうして、第1ヤード21は図7(b)に示す状態になる。
この配替は、拠点でスラブ群71を受入れるとき同時にスラブ70が組み替えられる仕分けである。
【0045】
次に、第1ヤード21の第3置場22C及び第4置場22Dにあったスラブ群71が払出されたとする。これにより、第3置場22C及び第4置場22Dが空いた状態になる。
このとき、管理者は、温度に基づいてスラブ群71を配替するように、圧延前面ヤード管理装置103に指示を出す。この指示により、圧延前面ヤード20のクレーンは、第1置場22Aの第2スラブ70を第3置場22Cに移動し、次に、第2置場の第4スラブ70を第4置場22Dに移動する。こうして、第1ヤード21は図7(c)に示す状態になり、自拠点に留めるスラブ70と留めないスラブ70とに分類され、さらに、温度に基づいて分類された。
この配替は、拠点の中で行われるスラブ群71の組み替えである山繰りである。
【0046】
図6に戻って受入れ処理の説明を続ける。
ステップS100において、管理者は、到着したスラブ群71についての配替が必要なとき処理をステップS101に進め、配替が必要ではないとき処理をステップS102に進める。なお、自拠点が配替不可拠点のときは、必要な配替は前拠点までで終了しているため、管理者は、処理をステップS102に進めることになる。
ステップS101において、管理者は、受入れと合わせて仕分けを実施するように、自拠点に対応する装置に指示を出す。この指示により、自拠点のクレーンは、受入れと合わせて仕分けを実施する。図7の例では、ステップS101により、第1ヤード21は図7(b)の状態になる。
ステップS102において、管理者は、受入れを実施するように、自拠点に対応する装置に指示を出す。この指示により、自拠点のクレーンは、受入れを実施し、自拠点に搬送されたスラブ群71が自拠点に置かれる。このとき配替は行われない。
【0047】
ステップS103において、管理者は、配替が残っているか、すなわち、ステップS100で判断した必要な配替が全て終了したか否かを判断する。管理者は、配替が残っているとき処理をステップS104に進め、配替が残っていないとき処理をステップS105に進める。図7(b)の例では、温度に基づく配替が残っているため、管理者は、配替が残っていると判断することになる。
ステップS104において、管理者は、山繰りを1回実施するように、自拠点に対応する装置に指示を出す。この指示により、自拠点のクレーンは、山繰りを1回実施する。図7の例では、第1ヤード21は、山繰りにより、図7(b)の状態から図7(c)の状態になる。
【0048】
ステップS105において、管理者は、自拠点に対応する装置の出力を参照して、自拠点に置かれたスラブ群71について払出し命令が出るまで待機する。自拠点に一定期間留める予定のスラブ群71には、この一定期間の経過後に払出し命令が出る。また、自拠点に一定期間留めずに搬送する予定のスラブ群71には、すぐに、払出し命令が出る。
【0049】
ステップS106において、管理者は、払出し命令が出たスラブ群71についての配替が必要か否かを判断する。配替が必要か否かは、上記の配替の第1、第2及び第3の目的に基づいて、次のように判断される。
【0050】
まず、払出し命令が出たスラブ群71に、次の搬送先が異なるスラブ70が混在するとき、次の搬送先に基づく配替、すなわち、搬送先毎にスラブ70を分けるために配替が必要であると判断される。
しかし、スラブ70の次の搬送先になる拠点が配替不可拠点であるときは、スラブ70の次の搬送先になる拠点の次の搬送先も考慮して配替する必要があると判断される。詳しく説明すると、スラブ70の次の搬送先になる拠点が配替不可拠点であるときは、次のように配替が必要であると判断される。すなわち、スラブ70が次に搬送される拠点(配替不可拠点)から、スラブ70が経由する拠点を順番に辿っていったときに1箇所以上の連続する配替不可拠点の最後の配替不可拠点の次の搬送先までに基づいて、配替する必要がある。
【0051】
例として、圧延前面ヤード20を考える。上記の通り、第2ヤード25は配替不可拠点である。また、第2ヤード25の次の搬送先は加熱炉61であり、第2ヤード25では、第1加熱炉61Aから第4加熱炉61D毎にスラブ群71が形成されている必要がある。
そこで、第1ヤード21では、第2ヤード25の次の搬送先である第1加熱炉61Aから第4加熱炉61D毎に基づいて配替する必要がある。
【0052】
また、払出し命令が出たスラブ群71に、所定値の温度差があるスラブ70が混在し、かつ、上記の第1温度配替条件及び第2温度配替条件を満たすとき、スラブ70の温度に基づいてスラブ70を配替することが必要であると判断される。なお、受入れ処理時は、第1温度配替条件を満たさなかったが、払出し処理時は、クレーンの作業が減って第1温度配替条件を満たすようになることがある。
【0053】
また、自拠点で順序指定スラブ群を形成する必要があるときは、順序指定スラブ群を形成する配替のうち、スラブ群71の受入れ時に行った配替以外の配替が必要であると判断される。
例えば、図5の例では、スラブ群71の受入れ時に、図5(b)に示す幅別配替が行われたとき、ステップS106では、図5(c)に示す順序指定スラブ群を形成する配替が必要であると判断される。一方、スラブ群71の受入れ時に、幅別配替条件を満たさず、図5(b)に示す幅別配替が行われていないときは、ステップS106において、図5(b)に示す幅別配替、及び、図5(c)に示す順序指定スラブ群を形成する配替が必要であると判断される。
なお、ステップS106で配替が必要と判断されたときは、この必要な配替がステップS107、S108、S109で行われる。また、この必要な配替は、配替の回数が最小になるようにまとめて行われる。
【0054】
図6に戻って払出し処理の説明を続ける。
ステップS106において、管理者は、払出し命令が出たスラブ群71についての配替が必要なとき処理をステップS107に進め、配替が必要ではないとき処理をステップS110に進める。なお、自拠点が配替不可拠点のときは、必要な配替は前拠点までで終了しているため、管理者は、処理をステップS110に進めることになる。
ステップS107において、管理者は、残っている配替の回数が2回以上であるか否かを判断する。管理者は、残っている配替の回数が2回以上のとき処理をステップS108に進め、残っている配替の回数が1回のとき処理をステップS109に進める。
ステップS108において、管理者は、山繰りを1回実施するように、自拠点に対応する装置に指示を出す。この指示により、自拠点のクレーンは、山繰りを1回実施する。図5の例では、スラブ群71の受入れ時に幅別配替が行われていないとき、山繰りにより、図5(a)のスラブ群71A、71Bが、図5(b)のスラブ群71C、71D、71Eに組み替えられる。
ステップS109において、管理者は、払出しと合わせて仕分けを実施するように、自拠点に対応する装置に指示を出す。この指示により、自拠点のクレーンは、払出しと合わせて仕分けを実施する。図5の例では、払出しと同時に、図5(b)のスラブ群71C、71D、71Eが、図5(c)のスラブ群71F、71Gに組み替えられる。
【0055】
ステップS110において、管理者は、払出しを実施するように、自拠点に対応する装置に指示を出す。この指示により、自拠点のクレーンは払出しを実施する。このとき配替は行われない。
なお、スラブ群71が製鋼工場10から払出されるときは、スラブ群71は第1搬送設備40Aに積載される。スラブ群71が中間ヤード50から払出されるときは、スラブ群71は第1搬送設備40A又は第2搬送設備40Bに積載される。
【0056】
次に、図8を参照して、搬送設備40での追越し処理について説明する。図8は、搬送設備40での追越し処理のフローチャートである。なお、図8の処理は本発明の搬送配替手段によって行われる搬送配替ステップの一例である。
ステップS200において、管理者は、搬送設備管理装置104等の出力を参照して、搬送設備40によって搬送されるスラブ群71が決定されたことを確認する。なお、搬送設備40によって搬送されるスラブ群71が決定していないとき、管理者は、搬送設備40によって搬送されるスラブ群71が決定するまで待機する。以降では、ステップS200で管理者が確認した搬送設備40を処理対象搬送設備と呼ぶ。
ステップS201において、管理者は、搬送設備管理装置104等の出力を参照して、処理対象搬送設備に積載されて搬送されるスラブ群71について、搬送先の拠点に到達すべき時刻が定まっているか否かを判断する。管理者は、時刻が定まっているとき処理をステップS202に進めて、時刻が定まっていないとき処理をステップS205に進める。
【0057】
ステップS202において、管理者は、搬送設備管理装置104等の出力を参照して、処理対象搬送設備に積載されて搬送されるスラブ群71について、追越しをしなくても搬送先の拠点に間に合うか否かを判断する。管理者は、追越しをしなくても搬送先の拠点に間に合うとき処理をステップS205に進め、間に合わないとき処理をステップS203に進める。
ステップS203において、管理者は、搬送設備管理装置104等の出力を参照して、処理対象搬送設備が搬送ルート30で追越しができる状態か否かを判断する。管理者は、追越しできる状態のとき処理をステップS204に進め、追越しできない状態のとき処理をステップS205に進める。
【0058】
ステップS204において、管理者は、処理対象搬送設備が追越しを行う旨を搬送設備管理装置104に入力する。この入力により、搬送設備40は、処理対象搬送設備が追越しを実施するようにスケジュールを設定する。ステップS204で設定される追越しは、熱ロスがない追越しである搬送ルート30を使った追越しを行うことが原則である。しかし、例えば第1ルート31及び第2ルート32の渋滞状況に応じて、中間ヤード50を使った追越しが設定される。
ステップS205において、管理者は、搬送を開始する旨を搬送設備管理装置104に入力する。この入力により、処理対象搬送設備は、積載されたスラブ群71の搬送を開始する。このとき、ステップS204で追越しが設定されているときは、設定された追越しが実施される。
【0059】
次に、図9を参照して、本実施形態のスラブ搬送方法でスラブ70を搬送したときのスラブの温度の例を、比較例と比べながら説明する。
図9の例では、本実施形態及び比較例ともに、スラブ70は次のように搬送される。すなわち、スラブ70は、製鋼工場10で製造され、第1ルート31で圧延前面ヤード20の第1ヤード21に搬送される。次に、スラブ70は、圧延前面ヤード20の第2ヤード25に搬送される。次に、スラブ70は、加熱炉装入テーブル60を経由して加熱炉61に搬送される。
また、図9の例では、順序指定スラブ群を形成する配替のみが必要であり、その他の配替は必要ではない状態であるものとする。順序指定スラブ群を形成する配替は、上記の通り、幅別配替と、幅別配替されたスラブ群71から幅広順スラブ群を形成する配替とからなる。また、幅別配替されたスラブ群71から幅広順スラブ群を形成する配替は、スラブ70を加熱炉61に分ける配替が含まれるために、加熱炉別配替と呼ぶことにする。
【0060】
次に、図9の比較例について説明する。図9の比較例では、原則として、配替が可能になった段階で必要な配替を全て行う。具体的には、製鋼工場10から第1ルート21の第1搬送設備40Aに払出されるとき、幅別配替を行う。また、第1ヤード21でのスラブ群71の受入れ時に、加熱炉別配替を行う。
一方、本実施形態では、図6の受入れ処理及び払出し処理から分かるように、第1ヤード21でのスラブ群71の受入れ時に幅別配替を行い、第1ヤード21からのスラブ群71の払出し時に加熱炉別配替を行う。
【0061】
図9(a)に示す第1工程では、製鋼工場10でスラブ70が製造される。製造直後のスラブ70の温度は、比較例及び本実施形態で、共に900度である。
第2工程では、スラブ70が製鋼工場10内を搬送されて、第1ルート21の第1搬送設備40Aに払出される。比較例では、払出し時に幅別配替が行われる。この配替は仕分けである。一方、本実施形態では、払出し時に幅別配替が行われない。すなわち、本実施形態では、仕分けは行われない。ここで、上記のように、仕分けはしてもしなくても熱ロスに変わりがない。したがって、第2工程後のスラブの温度は、比較例及び本実施形態で、同じ温度である。例えば、製鋼工場10内の搬送に60分かかり、スラブ70の温度が1分あたり2度下がるとすると、第2工程の終了後、スラブ70は780度になる。
【0062】
第3工程では、第1搬送設備40Aに払出されて、第1搬送設備40Aにカバーが被せられる(カバー被服)。
次に、図9(b)を参照して、比較例及び本実施形態における、第3工程でのカバー被服後のスラブ70の温度について説明する。
ここでは、第1スラブ70から第12スラブ70までの12枚のスラブ70がある場合を考える。12枚のスラブ70のうち、奇数番目のスラブ70は幅広で、偶数番目のスラブ70は幅狭とする。ただし、奇数番目のスラブ70と偶数番目のスラブ70とは、幅に大きな違いがなく、奇数番目のスラブ70と偶数番目のスラブ70とを重ねてスラブ群71を形成することはできるものとする。また、製鋼工場10ではスラブ70の番号順に、第1搬送設備40Aに払出すものとする。また、1回の払出しに4分かかるものとする。また、第1搬送設備40Aの貨車42A及び貨車42Bには、それぞれ6枚のスラブ70が載せられるものとする。
【0063】
まず、比較例では、第2工程で幅別配替が行われるため、仕分けにより、第1スラブ70が貨車42Aに載せられ、次に、第2スラブ70が貨車42Bに載せられ、次に、第3スラブ70が貨車42Aに載せられていく。こうして、貨車42Aには、奇数番目のスラブ70からなるスラブ群71Jが形成され、貨車42Bには、偶数番目のスラブ70からなるスラブ群71Kが形成される。
図9(b)に示す各スラブ70のカッコ内の時間は、第1スラブ70が貨車42Aに載せられてから各スラブ70がそれぞれの貨車42に載せられるまでの時間である。比較例では、スラブ群71Jが完成するのは、第1スラブ70が貨車42Aに載せられてから40分後である。スラブ群71Jが完成した後、スラブ群71Jにカバー43が被せられる。カバー被服に4分かかるとすると、カバー被服が終了して貨車42Aの準備が整うのは、第1スラブ70が貨車42Aに載せられてから44分後である。
同様に、比較例では、スラブ群71Kが完成するのは、第1スラブ70が貨車42Aに載せられてから48分後である。スラブ群71Kが完成した後、スラブ群71Kにカバー43が被せられる。したがって、貨車42Bの準備が整うのは、第1スラブ70が貨車42Aに載せられてから52分後である。
ここで、比較例におけるそれぞれの貨車42の準備時間について説明する。貨車42の準備時間とは、貨車42に1枚目のスラブ70が載せられてからカバー被服が終了するまでの時間である。比較例の貨車42Aでは、1枚目の第1スラブ70が載せられてから44分後にカバー被服が終了するため、貨車42Aの準備時間は44分である。比較例の貨車42Bでは、1枚目の第2スラブ70が載せられてから48分後にカバー被服が終了するため、貨車42Bの準備時間は48分である。
【0064】
スラブ群71Jの第1スラブ70は、貨車42Aに載せられてから44分後にカバー被服が終了する。同様に、奇数番目のスラブ70のうち第3から第11スラブ70は、貨車42Aに載せられてから、それぞれ、36分後、28分後、20分後、12分後、4分後にカバー被服が終了する。したがって、スラブ群71Jでは、各スラブ70は、貨車42Aに載せられてから、平均24分後にカバー被服が終了する。同様に、スラブ群71Kでも、スラブ70は、貨車42Bに載せられてから、平均24分後にカバー被服が終了する。
スラブ70は、貨車42に載せられてからカバー被服が終了するまで1分あたり1度温度が下がるとすると、比較例では、スラブ70の温度が24度下がり、756度になる。
【0065】
次に、本実施形態では、第2工程で幅別配替が行われないため、スラブ70の番号順にスラブ群71が形成される。すなわち、まず、貨車42Aに、第1から第6スラブ70が載せられてスラブ群71Lが形成される。次に、スラブ群71Lにカバー43が被せられる。次に、貨車42Bに、第7から第12スラブ70が載せられてスラブ群71Mが形成される。次に、スラブ群71Mにカバー43が被せられる。
ここで、本実施形態におけるそれぞれの貨車42の準備時間について説明する。本実施形態の貨車42Aでは、第1スラブ70が載せられてから24分後にカバー被服が終了するため、貨車42Aの準備時間は24分である。本実施形態の貨車42Bでは、第7スラブ70が載せられてから24分後にカバー被服が終了するため、貨車42Bの準備時間は24分である。
スラブ群71Lの第1スラブ70は、貨車42Aに載せられてから24分後にカバー被服が終了する。同様に、第2から第6スラブ70は、貨車42Aに載せられてから、それぞれ、20分後、16分後、12分後、8分後、4分後にカバー被服が終了する。したがって、スラブ群71Lでは、スラブ70は、貨車42Aに載せられてから、平均14分後にカバー被服が終了する。同様に、スラブ群71Mでも、スラブ70は、貨車42Bに載せられてから、平均14分後にカバー被服が終了する。
スラブ70は、貨車42に載せられてからカバー被服が終了するまで1分あたり1度温度が下がるとすると、本実施形態では、スラブ70の温度が14度下がり、766度になる。
【0066】
第4工程では、第1搬送設備40Aが、第1ルート31によって、スラブ群71を第1ヤード21に搬送する。この搬送に90分かかり、スラブ70の温度が1分あたり1度下がるとすると、スラブ70の温度は63度下がることになる。したがって、比較例でのスラブの温度は693度になり、本実施形態でのスラブ70の温度は703度になる。
第5工程では、まず、スラブ群71は第1ヤード21に受入れられ、次に、スラブ群71は第1ヤード21で一定時間待機し、次に、スラブ群71は第1ヤード21から払出される。
ここで、比較例では、スラブ群71の受入れ時に、仕分けによって、加熱炉別配替が行われる。この加熱炉別配替によって、スラブ群71の高さが4段(スラブ70が4枚重なった状態)になるとする。また、スラブ群71の高さが4段のとき、スラブ70は1分あたり0.4度温度が下がるものとする。また、第1ヤード21では、300分待機するものとする。このとき、比較例では、スラブ70の温度が120度下がって、573度になる。
【0067】
一方、本実施形態では、スラブ群71の受入れ時に、仕分けによって、幅別配替が行われ、払出し時に、仕分けによって、加熱炉別配替が行われる。そして、幅別配替では、スラブ群71の高さが8段(スラブ70が8枚重なった状態)になるとする。よって、本実施形態では、スラブ群71が第1ヤード21で一定時間待機しているときのスラブ群71の高さが、比較例と比べて高い。したがって、熱ロスが小さい。具体的には、本実施形態では、スラブ70は1分あたり0.3度温度が下がるものとする。また、第1ヤード21では、300分待機するものとする。このとき、本実施形態では、スラブ70の温度が90度下がって、613度になる。なお、本実施形態では、払出し時の仕分けで加熱炉別配替が行われたときは、比較例と同様に、スラブ群71の高さが4段になるものとする。
【0068】
第6工程では、まず、スラブ群71が第2ヤード25で一定時間待機し、次に、スラブ群71が加熱炉装入テーブル60を経由して加熱炉61に搬送される。スラブ群71は第2ヤード25に10分待機し、スラブ70の温度は1分あたり1度下がるものとする。すると、比較例では、スラブ70の温度が10度下がり563度になって、加熱炉61に搬送される。一方、本実施形態では、スラブ70の温度が10度下がり603度になって、加熱炉61に搬送される。
【0069】
このように、本実施形態では、比較例と比べて、スラブ70の温度が40度高い状態で加熱炉61に搬送される。すなわち、本実施形態では、比較例と比べて、搬送時のスラブ70の温度の低下を抑えることができる。したがって、本実施形態では、加熱炉61での燃料使用量を減らすことができ、さらに二酸化炭素の排出量を減らすことができる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態では、拠点において、スラブ70の次の搬送先に基づいて、スラブ群71の配替が行われる。よって、可能な限り配替が後の拠点で行われることになる。したがって、スラブ群71のまとまりが小さくなりにくくなり、スラブ群71の熱ロスが小さくなる。このため、搬送時のスラブ70の温度の低下を抑えることができる。
また、スラブ70を搬送可能な搬送先が複数ある拠点において、スラブ群71の払出し時に、スラブ70の搬送先に基づいて、配替を行う。よって、スラブ群71が拠点に受入れられてから払出されるまで時間がある場合でも、配替によってスラブ群71が小さくなることを回避して、熱ロスを小さくできる。このため、搬送時のスラブ70の温度の低下を抑えることができる。
また、拠点において、スラブ群71の受入れ時に、スラブ70を受入れた拠点に留めるか否かに基づいて、配替を行う。よって、拠点に到達する前に、スラブ群71について、スラブ70を受入れた拠点に留めるか否かに基づく配替を行う必要がない。したがって、スラブ群71のまとまりが小さくなりにくくなり、スラブ群71の熱ロスが小さくなる。このため、搬送時のスラブ70の温度の低下を抑えることができる。
【0071】
また、拠点において、スラブ70の温度に基づいて配替を行う。したがって、温度が離れたスラブ70が1つのスラブ群71にまとまることを回避して、スラブ70の温度の低下を抑えることができる。
また、拠点において、スラブ70の温度に基づく配替によるスラブ70の温度の低下が、スラブ70の温度に基づく配替を行わないときの温度の低下より小さいとき、スラブ70の温度に基づいて配替を行う。したがって、スラブ70の温度が下がる配替を回避でき、スラブ70の温度の低下を抑えることができる。
また、拠点において、スラブ70の温度に基づく配替を行ったときでも、受入れ対象のスラブ群71及び払出し対象のスラブ群71が滞留しない場合に、スラブ70の温度に基づいて、配替を行う。したがって、スラブ70の温度に基づく配替が、スラブ70の物流を妨げることを回避できる。
【0072】
また、拠点において、第1順序配替条件、及び、第2順序配替条件を満たす場合、自拠点が順序指定拠点ではなくても、順序指定スラブ群を形成する配替を行う。したがって、スラブ70が経由する拠点に、順序指定スラブ群を形成する配替を行えない拠点があっても、スラブ70が滞りなく搬送される。
また、拠点において、順序指定スラブ群を形成する複数回の配替の最後の1回はスラブ群71を払出すときに行われる仕分けで行う。したがって、配替による熱ロスを抑えられる。
また、配替を行える状態の拠点において、スラブ70が次に搬送される拠点が配替不可拠点のとき、次のように配替を行う。すなわち、スラブ70が次に搬送される拠点から、スラブ70が経由する拠点を順番に辿っていったときに1箇所以上の連続する配替不可拠点の最後の前記配替不可拠点の次の搬送先までに基づいて、配替を行う。したがって、スラブ70が経由する拠点に配替不可拠点があっても、スラブ70が滞りなく搬送される。
【0073】
また、搬送設備40は、搬送設備40で搬送されるスラブ群71の次の搬送先の拠点に到達すべき時刻に基づいて、配替として、スラブ群71の一方がスラブ群71の他方を追越す追越しを行う。よって、拠点のクレーンを使わずにスラブ70の順序を入れ替えられる。
また、搬送設備40は、搬送ルート30を使って追越しを行う。すなわち、第1ルート31にある2つの上りルート31A、Bを使って追越しを行う。この追越しは、上記のように熱ロスがないため、スラブ70の温度を下げずに、スラブ70の順序を入れ替えられる。
また、スラブ群71は、スラブ70が山積みされた状態である。よって、スラブ70の温度の低下を抑えられる。
【0074】
上記の実施形態では、図6及び図8では管理者が各種の判断等を行う。しかし、管理者が行う判断等の全て又は一部を、圧延前面ヤード管理装置103、中間ヤード管理装置102や搬送設備管理装置104等の装置が行うようにしてもよい。
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0075】
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、上記実施形態は本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 物流システム、10 製鋼工場、20 圧延前面ヤード、21 第1ヤード、25 第2ヤード、30 搬送ルート、31 第1ルート、32 第2ルート、40 搬送設備、50 中間ヤード、60 加熱炉装入テーブル、61 加熱炉、62 熱間圧延機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9