【実施例】
【0039】
以下に本発明の実施例を比較例と共に挙げて、本発明をより詳細に説明する。
【0040】
実施例1
アセチルアセトンカルシウム(ロディア社製ロディアスタブX77)とポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン(株)製ノバテックLL UJ370(MFR=16)を重量比1:1でコニカルミキサーでブレンドした。
【0041】
シリンダー径30mmの2軸押出機(L/D=40)((株)塚田樹機製RT30)を用いて、上記ブレンド物をシリンダー温度190℃、金型温度200℃にて溶融混練し、押出して、アセチルアセトンカルシウムとポリエチレン樹脂からなる組成物をペレットとして得た。このペレットをアトマイザーで微粉砕して、マスターバッチを粉末状組成物として得た。
【0042】
参考例1
アセチルアセトンカルシウム(ロディア社製アロディアスタブX77)とポリエチレン
樹脂(日本ポリエチレン(株)製ノバテックLL UJ370(MFR=16)を重量比
1:2でコニカルミキサーでブレンドした。このブレンド物を用いて、実施例1と同様に
して、マスターバッチを粉末状組成物として得た。
【0043】
実施例2
アセチルアセトンカルシウム(ロディア社製アロディアスタブX77)とポリスチレン
樹脂(PSジャパン(株)製ポリスチレンHF−77)を重量比1:1でコニカルミキサ
ーでブレンドした。このブレンド物を用いて、実施例1と同様にして、マスターバッチを
粉末状組成物として得た。
【0044】
参考例2
アセチルアセトンカルシウム(ロディア社製ロディアスタブX77)とポリプロピレン
樹脂(サンアロマー(株)製PM−900A(MFR=30)を重量比1:2でコニカル
ミキサーでブレンドした。このブレンド物を用いて、実施例1と同様にして、マスターバ
ッチを粉末状組成物として得た。
【0045】
参考例3
アセチルアセトンカルシウム(ロディア社製ロディアスタブX77)とポリエチレン樹
脂(日本ポリエチレン(株)製ノバテックLL UJ370(MFR=16)を重量比3
:1でコニカルミキサーでブレンドした。
【0046】
予め、200℃に加熱した加圧式ニーダー型混合機((株)モリヤマ製DS0.5−3GHH−E型ニーダー)を用いて、上記ブレンド物を10分間、溶融混練した後、冷却し、固化させて、アセチルアセトンカルシウムとポリエチレン樹脂からなら固体状組成物を得た。この固体状組成物をアトマイザーで微粉砕して、マスターバッチを粉末状組成物として得た。
【0047】
参考例4
アセチルアセトンカルシウム(ロディア社製ロディアスタブX77)とポリエチレン樹
脂(日本ポリエチレン(株)製ノバテックLL UJ370(MFR=16)を重量比1
:4でコニカルミキサーでブレンドした。このブレンド物を用いて、実施例1と同様にし
て、マスターバッチを粉末状組成物として得た。
【0048】
実施例3
アセチルアセトン亜鉛(堺化学工業(株)製)とポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン
(株)製ノバテックLL UJ370(MFR=16)を重量比1:1でコニカルミキサ
ーでブレンドした。このブレンド物を用いて、実施例1と同様にして、マスターバッチを
粉末状組成物として得た。
【0049】
実施例4
アセチルアセトンマグネシウム(堺化学工業(株)製)とポリエチレン樹脂(日本ポリ
エチレン(株)製ノバテックLL UJ370(MFR=16)を重量比1:1でコニカ
ルミキサーでブレンドした。このブレンド物を用いて、実施例1と同様にして、マスター
バッチを粉末状組成物として得た。
【0050】
実施例5
アセチルアセトンカルシウム(ロディア社製ロディアスタブX77)とABS樹脂(日
本エイアンドエル(株)製 サンタックUT−61、MFR=35)を重量比1:1でコ
ニカルミキサーでブレンドした。このブレンド物を用いて、実施例1と同様にして、マス
ターバッチを粉末状組成物として得た。
【0051】
比較例1
アセチルアセトンカルシウム(ロディア社製ロディアスタブX77)をそのまま、用いた。
【0052】
比較例2
アセチルアセトンカルシウム(ロディア社製ロディアスタブX77)とポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン(株)製ノバテックLL UJ370(MFR=16))を室温で重量比1:1でコニカルミキサーでブレンドして、アセチルアセトンカルシウムとポリエチレン樹脂からなる混合物を得、これをアトマイザーで微粉砕して、マスターバッチを粉末状混合物として得た。
【0053】
以上のようにして得られた上記実施例及び比較例によるマスターバッチをそれぞれ下記組成物と共に粒状組成物とし、これを塩化ビニル樹脂に配合し、ロールシートとプレスシートに成形して、得られた各シートの着色の度合いを目視にて調べて、上記アセチルアセトン金属塩の安定剤としての性能を下記の試験によって調べた。
【0054】
試験方法1(加熱粒状化による性能変化の試験)
下記の組成物を調製した。
【0055】
【表1】
【0056】
上記実施例及び比較例において得られたマスターバッチのそれぞれ0.5Kgと上記組成物4.4Kgを20L容量の高速撹拌ミキサーに投入し、80℃まで撹拌加熱した後、常温まで放冷し、かくして、粒状化してなる粒子状組成物を得た。
【0057】
塩化ビニル樹脂(信越化学工業(株)製TK−1000)100重量部に上記粒子状組成物2重量部を配合し、得られた塩化ビニル樹脂組成物を170℃で8インチロールにて3分間混練してロールシートを得た。このロールシートについて、配合したアセチルアセトン金属塩の安定剤としての熱着色防止効果を目視で評価した。
【0058】
更に、上記ロールシートを190℃で5分間プレスしてプレスシートを得た。このプレスシートについても、配合したアセチルアセトン金属塩の安定剤としての熱着色防止効果を目視で評価した。併せて、上記粒子状組成物の臭気についても評価した。
【0059】
結果を表2に示す。得られたロールシートとプレスシートの熱着色の評価は次の基準によった。シートに着色が認められないときを○とし、シートにやや着色が認められるが、許容できる範囲であるときを△とし、シートに顕著に着色が認められるときを×とした。また、粒子状組成物の臭気の評価は次の基準によった。臭気が認められないときを○、臭気が幾分、認められるが、許容できる範囲であるときを△とし、臭気が著しいときを×とした。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例によるマスターバッチを含む塩化ビニル樹脂組成物からのシートには、熱着色は認められなかった。
【0062】
しかし、比較例1に示すように、アセチルアセトン金属塩をそのまま、塩化ビニル樹脂に配合してなる塩化ビニル樹脂組成物からのシートには、著しい熱着色が認められた。また、粒子状混合物も臭気の著しいものであった。
【0063】
比較例2によるマスターバッチを配合した塩化ビニル系樹脂組成物からのシートも、著しい熱着色が認められた。また、粒子状混合物も臭気の著しいものであった。
【0064】
評価方法2(単純混合による経時変化試験)
上記実施例及び比較例において得られたマスターバッチ0.5Kgと前記組成物の4.4Kgを20L容量のコニカルミキサーに投入し、室温(30℃)にて混合して、粒子状組成物を得た。
【0065】
上記粒子状組成物をその製造の直後にその一部の2重量部をとり、これを塩化ビニル樹脂(信越化学工業(株)製TK−1000)100重量部に加え、得られた塩化ビニル樹脂組成物を170℃で8インチロールにて3分間混練してシートを得た。このロールシートについて、上記粒子状組成物による着色防止効果を目視で評価した。更に、上記ロールシートを190℃で5分間プレスしてプレスシートを得、このプレスシートについても、上記粒子状組成物による着色防止効果を目視で評価した。
【0066】
また、上記粒子状組成物の一部をポリエチレン袋に入れ、30℃で1か月間保管した後、その2重量部をとり、これを塩化ビニル樹脂(信越化学工業(株)製TK−1000)100重量部に加え、得られた塩化ビニル樹脂組成物を170℃で8インチロールにて3分間混練してシートを得た。このロールシートについて、上記粒子状組成物による着色防止効果を目視で評価した。更に、上記ロールシートを190℃で5分間プレスしてプレスシートを得た。このプレスシートについても、上記粒子状組成物による着色防止効果を目視で評価した。
【0067】
更に、上記30℃で1か月間保管した粒子状組成物から3Kgをとり、これを塩化ビニル樹脂(信越化学工業(株)製TK−1000)100Kgに加え、ヘンシェルミキサーにて80℃まで撹拌混合して、塩化ビニル樹脂組成物を得た。シートダイを装着した(株)東洋精機製作所製2軸コニカル押出機のスクリュー及びシートダイ温度を各180℃に設定して、上記塩化ビニル樹脂組成物30Kgを用いて、幅30mm×長さ30cmのテープ状成型体を得た。得られた成型体の外観について、表面を目視で評価した。
【0068】
結果を表3に示す。製造直後の粒子状組成物を配合した塩化ビニル樹脂組成物から得られたロールシートとプレスシートの着色はそれぞれロールシートの着色(1)とプレスシートの着色(1)として示し、製造後、30℃で1か月間保管した粒子状組成物を配合した塩化ビニル樹脂組成物から得られたロールシートとプレスシートの着色はそれぞれロールシートの着色(2)とプレスシートの着色(2)として示す。シートの着色の評価の基準は前記と同じである。
【0069】
成型体の外観は以下のようにして評価した。即ち、マスターバッチに配合した樹脂の分散不良による0.1〜0.2mm程度の粒や痘痕の数が成型体(幅30mm×長さ30cm)の表面に1個以下であり、外観が平滑性にすぐれるときを○とし、3個以下であって、許容できる外観を有するときを△とし、4個以上のときを外観不良とし、×とした。
【0070】
【表3】
【0071】
実施例による製造直後及び製造後1か月保管した後の粒子状組成物を含む塩化ビニル樹脂組成物はいずれも、熱着色なしにロールシートとプレスシートを与えた。
【0072】
一方、アセチルアセトン金属塩をそのまま、用いて、粒子状組成物とし、これを塩化ビニル樹脂に配合してなる塩化ビニル樹脂組成物と、アセチルアセトン金属塩とポリエチレン樹脂の単なる混合物を用いて、粒子状組成物とし、これを塩化ビニル樹脂に配合してなる塩化ビニル樹脂組成物はいずれも、製造直後の粒子状組成物を含む塩化ビニル樹脂組成物は、熱着色なしにロールシートとプレスシートを与えたが、1か月間保管した粒子状組成物を配合した塩化ビニル樹脂組成物から得られたロールシートとプレスシートはいずれも、著しい着色が認められた。
【0073】
また、実施例による製造後1か月保管した後の粒子状組成物を含む塩化ビニル樹脂組成物のうち、マスターバッチ中のアセチルアセトン金属塩と樹脂の割合が1:1の場合に成型体が外観に特にすぐれることが認められた。