特許第6769076号(P6769076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6769076電着塗料組成物及びそれを用いた絶縁電線の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769076
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】電着塗料組成物及びそれを用いた絶縁電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 179/08 20060101AFI20201005BHJP
   C09D 5/25 20060101ALI20201005BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20201005BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20201005BHJP
   C09D 5/44 20060101ALI20201005BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   C09D179/08 B
   C09D5/25
   C09D7/63
   H01B13/00 517
   C09D5/44 Z
   C09D5/02
【請求項の数】5
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-74961(P2016-74961)
(22)【出願日】2016年4月4日
(65)【公開番号】特開2017-186413(P2017-186413A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2018年11月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芦田 桂子
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
【審査官】 川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−043578(JP,A)
【文献】 特開2016−015295(JP,A)
【文献】 特開2016−216705(JP,A)
【文献】 特開2017−145397(JP,A)
【文献】 特開2017−115120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸価が10〜50mgKOH/gであるポリアミドイミドと塩基性中和剤とを含むO/W型分散液であり、分散物の50%径が15000nm以下である電着塗料組成物であって、
前記塩基性中和剤がアミノアルコール系化合物を含む電着塗料組成物。
【請求項2】
請求項1に記載された電着塗料組成物において、
非プロトン性極性溶媒を更に含み、前記非プロトン性極性溶媒の含有量の水の含有量に対する比が10/90〜60/40である電着塗料組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された電着塗料組成物において、
前記塩基性中和剤が分子中にアミノ基及び水酸基を有する化合物を含む電着塗料組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された電着塗料組成物において、
固形分濃度が0.5〜11質量%である電着塗料組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された電着塗料組成物に導線を通して電着塗装することにより前記導線の外周面を樹脂絶縁層で被覆する絶縁電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電着塗料組成物及びそれを用いた絶縁電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導線を樹脂絶縁層で被覆して絶縁電線を製造することは公知である。特許文献1〜3には、ポリアミドイミドを溶剤に溶解させた塗料に導線を浸漬して引き上げた後、導線に塗料を焼き付けて樹脂絶縁層を形成する絶縁電線の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−242738号公報
【特許文献2】特開2009−140878号公報
【特許文献3】特開2012−197367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、絶縁電線の製造に好適なポリアミドイミドのO/W型分散液の電着塗料組成物及びそれを用いた絶縁電線の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電着塗料組成物は、酸価が10〜50mgKOH/gであるポリアミドイミドと塩基性中和剤とを含むO/W型分散液であり、分散物の50%径が15000nm以下であって、前記塩基性中和剤がアミノアルコール系化合物を含む
【0006】
本発明の絶縁電線の製造方法は、本発明の電着塗料組成物に導線を通して電着塗装することにより前記導線の外周面を樹脂絶縁層で被覆するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ポリアミドイミドと塩基性中和剤とを含むO/W型分散液であって、50%径が15000nm以下であるので、適度な粘度を有することとなることから電着塗装加工性が優れ、そのため電着塗装により導線の外周面を樹脂絶縁層で被覆する絶縁電線の製造に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】絶縁電線の斜視図である。
図1B】他の絶縁電線の斜視図である。
図2】実施形態に係る絶縁電線の製造方法の工程順を示す図である。
図3】平角導線の露出率の測定方法を説明するための写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0010】
実施形態に係る電着塗料組成物は、ポリアミドイミドと、非プロトン性極性溶媒と、塩基性中和剤と、着色剤と、水とを含み、ポリアミドイミドの粒子が水に分散したO/W型分散液である。実施形態に係る電着塗料組成物は、例えば、これにより導線の外周面を樹脂絶縁層で被覆する絶縁導線の製造に用いられるものである。
【0011】
ポリアミドイミドの数平均分子量は、樹脂絶縁層の耐熱性、可撓性、及び導線への密着性が優れるという観点から、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上、更に好ましくは12000以上であり、また、導線の外周面への付着性が優れるという観点から、好ましくは75000以下、より好ましくは50000以下、更に好ましくは30000以下である。ポリアミドイミドの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により標準ポリスチレンの検量線を用いて測定される。
【0012】
ポリアミドイミドの酸価は、沈殿の発生による電着塗料組成物の固形分の損失を抑制する観点から、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上であり、また、導線の外周面に付着した電着塗料組成物における水の取り込みを低減して焼き付け時の発泡を抑制する観点及び電着塗装速度を高める観点から、好ましくは50mgKOH/g以下、より好ましくは40mgKOH/g以下である。このポリアミドイミドの酸価は、JISK5601−2−1:1999「塗料成分試験方法−第2部:溶剤可溶物中の成分分析−第1節:酸価(滴定法)」に基づいて測定される。
【0013】
「非プロトン性極性溶媒」とは、アルコールを除く極性有機溶媒である。非プロトン性極性溶媒は、極性を有することから、水に対する親和性が高く、水と混合した際に相分離することなく相溶して均一な単一相となる。電着塗料組成物に含まれる非プロトン性極性溶媒は、ポリアミドイミドに対しての良溶媒であることが必要である。「ポリアミドイミドに対する良溶媒」とは、ポリアミドイミドに対する溶解性が高い溶媒、具体的には、25℃における溶媒1kgに対するポリアミドイミドの溶解量が100g以上である溶媒をいう。かかる非プロトン性極性溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(以下「NMP」という。)、ジメチルホルムアミド(以下「DMF」という。)、ジメチルアセトアミド(以下「DMAc」という。)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、シクロヘキサノン等が挙げられる。非プロトン性極性溶媒は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。非プロトン性極性溶媒は、NMP、又は、NMPに加えてDMFを含むことがより好ましい。
【0014】
電着塗料組成物における非プロトン性極性溶媒の含有量は、樹脂成分100質量部当たり好ましくは340質量部以上、より好ましくは370質量部以上であり、また、好ましくは1000質量部以下、より好ましくは850質量部以下である。非プロトン性極性溶媒の含有量の水の含有量に対する質量比(非プロトン性極性溶媒の含有量/水の含有量)は、沈殿の発生を抑制する観点から、好ましくは10/90以上、より好ましくは20/80以上であり、また、電着塗装速度を高める観点から、好ましくは60/40以下、より好ましくは50/50以下である。溶媒中における非プロトン性極性溶媒の含有量は、沈殿の発生を抑制する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、また、電着塗装速度を高める観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。電着塗料組成物の非プロトン性極性溶媒がNMPを含む場合、非プロトン性極性溶媒中におけるNMPの含有量は、好ましくは84質量部以上、より好ましくは85質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは95質量部以下である。非プロトン性極性溶媒がNMPに加えてDMFを含む場合、非プロトン性極性溶媒中におけるDMFの含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは7質量%以上であり、また、好ましくは16.5質量%以下、より好ましくは16質量%以下である。DMFの含有量のNMPの含有量に対する質量比(DMFの含有量/NMPの含有量)は、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上であり、また、好ましくは0.19以下、より好ましくは0.18以下である。
【0015】
塩基性中和剤としては、例えば、2−アミノエタノール(以下「AE」という。)、2,2’−イミノジエタノール、2−アミノ−2−メチルプロパノールなどのアミノアルコール系化合物;モルホリンなどのモルホリン系化合物;ピペラジン無水物、ピペラジン六水和物などのピペラジン系化合物;トリエチルアミン、トリプロピルアミンなどのアルキルアミン系化合物;ピペリジンなどのピペリジン系化合物等が挙げられる。塩基性中和剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。塩基性中和剤は、沈殿の発生による電着塗料組成物の固形分の損失を抑制する観点から、分子中にアミノ基及び水酸基を有する化合物を含むことが好ましく、アミノアルコール系化合物を含むことがより好ましく、2−アミノエタノールを含むことが更に好ましい。電着塗料組成物における樹脂成分100質量部当たりの塩基性中和剤量は、樹脂絶縁層におけるピンホールの形成を抑制すると共に樹脂絶縁層を十分な厚さに形成する観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、同様の観点から、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。塩基性中和剤による電着塗料組成物の中和率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であり、また、好ましくは400%以下、より好ましくは350%以下である。電着塗料組成物の中和率は前記したポリアミドイミドの酸価(AV)を用いて以下の式で算出する。
【0016】
中和率(%)= [(NA/NM)×NV /(PA×AV/56.1/1000)]×100
AV:ポリアミドイミドの酸価(mgKOH/g)
PM:ポリアミドイミドの分子量
PA:ポリアミドイミドの配合質量(g)
NM:中和剤の分子量
NV:中和剤の価数
NA:中和剤の配合質量(g)
56.1:水酸化カリウムの分子量
【0017】
着色剤としては、例えば、C.I.ソルベントブラック3、C.I.ソルベントブラック27、C.I.ソルベントブラック7等が挙げられる。着色剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。着色剤は、均一に着色する観点から、C.I.ソルベントブラック3を含むことが好ましい。電着塗料組成物における着色剤の含有量は、樹脂成分100質量部あたり、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0018】
水は、例えば、イオン交換水や蒸留水である。電着塗料組成物における水の含有量は、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0019】
実施形態に係る電着塗料組成物は、その他にナフサなどの非プロトン性非極性溶媒やアルコールなどのプロトン性極性溶媒等を含んでいてもよい。
【0020】
実施形態に係る電着塗料組成物の固形分濃度は、優れた電着塗装加工性を得る観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上であり、また、電着塗料組成物の適度な粘度を得る観点から、好ましくは11.5質量%以下、より好ましくは11質量%以下である。なお、電着塗料組成物の固形分とは、樹脂および着色剤など、電着塗料組成物を乾燥固化した場合に残留する成分のことである。
【0021】
実施形態に係る電着塗料組成物の50%径(D50:メジアン径)は15000nm以下であるが、電着塗装速度を高める観点から、好ましくは20nm以上、より好ましくは50nm以上であり、また、電着塗料組成物の安定性の観点から、好ましくは13000nm以下、より好ましくは10000nm以下である。90%径(D90)は、好ましくは70nm以上、より好ましくは100nm以上であり、また、好ましくは70000nm以下、より好ましくは60000nm以下である。10%径(D10)は、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上であり、また、好ましくは1500nm以下、より好ましくは250nm以下である。これらの電着塗料組成物の粒子径は、例えば大塚電子社製のゼータ電位・粒径・分子量測定システム(ELSZ−2000ZS)を用いた動的光散乱法により測定される。
【0022】
実施形態に係る電着塗料組成物の粘度は、優れた電着塗装加工性を得る観点から、液温20℃において、好ましくは2mPa・s以上、より好ましくは4mPa・s以上であり、また、同様の観点から、好ましくは50mPa・s以下、より好ましくは30mPa・s以下である。電着塗料組成物の粘度はB型粘度計(100rpm)により測定される。
【0023】
実施形態に係る電着塗料組成物のpHは、pHメーターにより測定され、例えば7〜9である。電着塗料組成物の液温は例えば10〜30℃である。
【0024】
実施形態に係る電着塗料組成物は、アニオン型のものであっても、また、カチオン型のものであっても、どちらでもよい。
【0025】
実施形態に係る電着塗料組成物は、例えば、ポリアミドイミドを含む油相成分と水相成分とをそれぞれ準備し、それらを混合した後に撹拌して転相乳化させることにより調製することができる。この撹拌には、汎用の乳化機、分散機、混合機、又は、攪拌機を用いることができる。具体的には、例えば、高剪断を与えることができるローター式又はステーター式ミキサー、コロイドミル、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等が挙げられる。撹拌の際における撹拌翼の外周の周速は、好ましくは1m/min以上、より好ましくは5m/min以上、更に好ましくは10m/min以上であり、また、好ましくは70m/min以下、より好ましくは50m/min以下、更に好ましくは30m/min以下である。撹拌時間は、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上であり、また、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下である。
【0026】
以上の構成の実施形態に係る電着塗料組成物によれば、ポリアミドイミドと塩基性中和剤とを含むO/W型分散液であって、50%径が15000nm以下であるので、適度な粘度を有することとなることから電着塗装加工性が優れ、そのため電着塗装により導線の外周面を樹脂絶縁層で被覆する絶縁電線の製造に好適に用いることができる。
【0027】
次に、実施形態に係る電着塗料組成物を用いた絶縁電線の製造方法について説明する。
【0028】
図1A及び1Bは、製造対象の絶縁電線10を示す。絶縁電線10は、図1Aに示すように上下面及び両側面が平坦面に形成された断面形状が扁平な矩形のものであっても、また、図1Bに示すように上下面が平坦面に形成され且つ両側面が外側に膨出した曲面に形成された断面形状が扁平なものであっても、どちらでもよい。これらの絶縁電線10は、例えば、電気・電子機器分野における電子基板上に実装されるコイル、ノイズフィルタ、インダクタ、リアクトル等に用いられるものである。
【0029】
絶縁電線10は、扁平な断面形状を有する平角導線11と、その外周面を被覆する樹脂絶縁層12とを備えている。
【0030】
平角導線11は、例えば純度4N以上の高純度銅で形成されている。平角導線11の厚さは例えば0.01〜1mm、及び幅は例えば0.2〜4.0mmである。
【0031】
樹脂絶縁層12は、ポリアミドイミドで形成されている。樹脂絶縁層12は、単一処理層で構成されていることが好ましい。樹脂絶縁層12の厚さは例えば1.5〜30μmである。樹脂絶縁層12の厚さにおいて、通常、長辺中央対応部分12a及び長辺端対応部分12bが相対的に厚く、次いで角対応部分12c、短辺対応部分12dが相対的に薄く形成されるが、それらの部分間の厚さの差は小さく、樹脂絶縁層12の厚さの均一性が高いことが好ましい。
【0032】
樹脂絶縁層12のヤング率は例えば7000〜50000N/mmであり、従って、可とう性および耐外傷性が優れる。樹脂絶縁層12のヤング率は、微小硬度計により求められる。具体的には、押し込み荷重を制御しながら錐形状(例えば三角錐形状或いは円錐形状)の圧子で樹脂絶縁層12を押し込み、そのときの押し込み荷重に対する押し込み深さの関数をプロットし、それに基づいてヤング率を算出する。なお、錐状の拡がり角度は例えば100°及び115°である。
【0033】
樹脂絶縁層12における被膜凹みの数は少ないことが好ましく、1.5m当たり0個であることが最も好ましい。樹脂絶縁層12におけるピンホールの数も少ないことが好ましく、5m当たり0個であることが最も好ましい。
【0034】
絶縁電線10をJIS C3216−3:2011「巻線試験方法−第3部:機械的特性」に基づいて急激伸張試験した後の側面視での破断点から長さ4mmの所定幅(絶縁電線10の外径にもよるが例えば中央の1mm)の部分における平角導線11の露出率は小さく、好ましくは7%以下、最も好ましくは0%であり、従って、平角導線11への樹脂絶縁層12の優れた密着性を得ることができる。「急激伸張試験」については、JISC3216−3:2011の「5 可とう性及び密着性」の「5.3 急激伸長試験」に規定されている。また、露出率は、破断した絶縁電線10の先端部分のマイクロスコープによる側面画像の画像処理により求められる。具体的には、側面画像を白色領域と着色領域との単純二値化し、そのうちの白色領域の面積割合を平角導線11の露出率とする。なお、単純二値化の際の閾値は、側面画像を確認して平角導線11が白色となるように設定する。また、側面画像において平角導線11と樹脂絶縁層12との色調分離が困難な場合には、側面画像における平角導線11の露出領域を白色に着色してもよい。
【0035】
以上の構成の絶縁電線10の製造方法は、図2に示すように、伸線加工工程、冷間加工工程、焼鈍工程、油分除去工程、及び電着塗装工程を含む。なお、これらの工程は、それぞれの工程をバッチ式で行ってもよく、また、全ての工程を連続式で行ってもよく、更には、例えば伸線加工工程及び冷間加工工程を連続式で行った後、焼鈍工程のみをバッチ式で行い、それ以降の油分除去工程及び電着塗装工程を連続式で行う場合のようにバッチ式と連続式とを組み合わせて行ってもよい。
【0036】
<伸線加工工程>
伸線加工工程では、母線としての荒引線を細径化して横断面が円形の丸線に伸線加工する。伸線加工としては、一般的には、荒引線を伸線ダイスに通す加工が挙げられる。荒引線の外径は例えば8.0mmであり、伸線後の丸線の外径は例えば0.05〜0.2mmである。なお、伸線加工は通常は多段階で行い、例えば、まず外径が8.0mmの荒引き線を外径が2.6〜3.2mmとなるように伸線し、次いで0.6〜0.8mmとなるように伸線し、更に0.05〜0.2mmとなるように伸線する。
【0037】
<冷間加工工程>
冷間加工工程では、伸線工程で伸線した丸線を、外周面に平行な一対の平坦面を含む平角導線11に冷間加工する。冷間加工としては、例えば、丸線を圧延機のローラー間に通す圧延加工、丸線をダイスに通す加工等が挙げられる。図1Aに示すような上下面及び両側面が平坦面に形成された断面形状が扁平な矩形の絶縁電線10を製造する場合、丸線を厚さ方向及び幅方向のそれぞれで圧延加工することにより同様の断面形状の平角導線11を得ることができる。また、図1Bに示すような上下面が平坦面に形成され且つ両側面が外側に膨出した曲面に形成された断面形状が扁平の絶縁電線10を製造する場合、丸線を厚さ方向で圧延加工することにより同様の断面形状の平角導線11を得ることができる。
【0038】
<焼鈍工程>
焼鈍工程では、熱処理により、平角導線11を形成する金属の結晶粒度や0.2%耐力等の物性調整を行う。この焼鈍工程での熱処理は、長さ方向の特性を均一化させる観点からはバッチ式で行うことが好ましく、その場合、冷間加工工程後の平角導線11を巻回したボビンを熱処理炉に投入後、所定の昇温速度で炉内の温度を所定の保持温度まで高め、その保持温度で所定の保持時間を保持した後、所定の降温速度で炉内の温度を低下させることが好ましい。ここで、昇温速度は例えば20〜2000℃/hである。保持温度(焼鈍温度)は例えば150〜1000℃である。保持時間(焼鈍時間)は例えば1秒間〜100時間である。降温速度は例えば10〜2000℃/hである。また、熱処理を連続式で行う場合、熱処理条件は、例えば焼鈍温度500〜900℃及び焼鈍時間1〜60秒である。熱処理は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0039】
<油分除去工程>
油分除去工程では、平角導線11の外周面に付着した油分を洗浄除去する。この油分除去工程での洗浄は、例えば、平角導線11を洗浄液に浸漬して引き上げた後、窒素ガス等の不活性ガスを吹き付けて平角導線11の外周面に付着した洗浄液を飛散させることにより行うことができる。ここで、洗浄液としては、例えば、水(温水)、有機溶剤等が挙げられる。洗浄液を水とする場合、水温は例えば10〜60℃である。洗浄液には洗剤を含めてもよい。
【0040】
<電着塗装工程>
電着塗装工程では、実施形態に係る電着塗料組成物を用いて電着塗装することにより平角導線11の外周面を樹脂絶縁層12で被覆する。具体的には、実施形態に係る電着塗料組成物に平角導線11を連続して通すと共に、平角導線11を一方の電極として電着塗料組成物に電圧を印加することにより平角導線11の外周面に電着塗料組成物を付着させ、そして、それを焼付炉に通して平角導線11の外周面に付着した電着塗料組成物を焼き付けることにより樹脂絶縁層12を形成する。なお、実施形態に係る電着塗料組成物を希釈して固形分濃度を調整してもよい。
【0041】
電着塗装工程では、電着塗料組成物を入れた槽を隔室に収容し、低真空雰囲気(100Pa以上)或いは窒素ガス雰囲気で平角導線11の電着塗料組成物への浸漬を行ってもよい。電着塗装工程はバッチまたは連続で行うことが出来る。バッチの場合は電着塗料組成物槽に平角導線11を浸漬し導体が静止した状態で電着する。連続の場合は平角導線11を電着塗料組成物に連続的に通過しながら電着を行い、平角導線11を電着塗料組成物に通すときの線速は例えば5〜40m/minである。電着塗料組成物への電圧印加は、定電流法で行っても、また、定電圧法で行っても、どちらでもよい。その印加電圧は例えば10〜100Vである。
【0042】
電着塗料組成物から出た後に焼付炉に入るまでの間に平角導線11の外周面に付着した電着塗料組成物は溶媒成分が飛散して濃縮されることとなるが、平角導線11の外周面に付着したその濃縮された電着塗料組成物の固形分濃度は例えば5〜40質量%である。
【0043】
焼付処理温度、つまり、焼付炉の炉内温度は、例えば200〜500℃である。焼付処理時間は例えば5〜1800秒である。焼付処理時間は、平角導線11の線速や焼付炉長さの設定によって調節することができる。焼付処理は、単一の焼付処理温度により一段階で行っても、また、相互に異なる焼付処理温度の多段階で行っても、どちらでもよい。
【0044】
以上の実施形態に係る絶縁電線10の製造方法によれば、実施形態に係る電着塗料組成物を用いているので、平角導線11への樹脂絶縁層12の優れた密着性と共に、優れた耐外傷性を得ることができる。例えば、樹脂を有機溶剤に溶解させた塗料を用いて樹脂絶縁層を形成する場合、1回の処理で形成される被膜が薄いことから複数回の処理を必要とし、そのため内側部分に過剰な熱が加えられて導体との密着性が低くなるが、実施形態に係る電着塗料組成物を用いた電着塗装では、1回の処理で厚肉の被膜が形成されるので、平角導線11への樹脂絶縁層12の優れた密着性を得ることができる。また、樹脂絶縁層12における長辺中央対応部分12a、長辺端対応部分12b、角対応部分12c、及び短辺対応部分12dの部分間の厚さの差が小さく、厚さの均一性が高い樹脂絶縁層12を形成でき、しかも、従来薄くなりがちであった樹脂絶縁層12の角対応部分12c及び短辺対応部分12dの厚さを厚く形成することができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、断面形状が扁平な矩形の絶縁電線10を示したが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、厚さ方向及び幅方向の寸法が等しい断面形状が正方形のものであってもよく、また、断面形状が円形の丸線であってもよい。
【実施例】
【0046】
[第1実施例]
(絶縁電線)
以下の実施例1-1及び比較例1-1〜1-2の絶縁電線を作製した。それぞれの構成については表1にも示す。
【0047】
<実施例1-1>
数平均分子量10000及び酸価30.3mgKOH/gのポリアミドイミド238gと、非プロトン性極性溶媒のNMP1566g(39.1質量%)及びDMF136g(3.2質量%)と、塩基性中和剤のAE7.6g(0.18質量%)と、着色剤のC.I.ソルベントブラック3の20質量%NMP溶液100.2g(溶液として2.44質量%、着色剤として0.48質量%)と、水2160g(51.3質量%)とを含み、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が42.3質量%であり、且つDMF含有量/NMP含有量(質量比)=0.082である固形分濃度が5.7質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。電着塗料組成物におけるポリアミドイミド100質量部当たりの塩基性中和剤の含有量は3.19質量部である。電着塗料組成物の中和率は95.7%であった。電着塗料組成物の50%径(D50)は255nm、90%径(D90)は2647nm、及び10%径(D10)は42nmであった。
【0048】
この電着塗料組成物を厚さ0.05mm及び幅0.3mmの平角銅導線にバッチ電着して30Vの電圧を印加して電着塗装することにより平角導線の外周面を樹脂絶縁層で被覆して絶縁電線を作製した。得られた絶縁電線を実施例1-1とした。
【0049】
<比較例1-1>
ポリアミドイミドの代わりにポリイミド樹脂を含む電着塗料組成物を用いたことを除いて実施例1-1と同様に絶縁電線を作製した。この絶縁電線を比較例1-1とした。
【0050】
<比較例1-2>
ポリアミドイミドを溶剤に溶解させた塗料に平角導線を線速30m/minで連続的に通して焼き付けることにより平角導線の外周面を樹脂絶縁層で被覆して絶縁電線を作製した。得られた絶縁電線を比較例1-2とした。
【0051】
【表1】
【0052】
(試験評価方法)
<平角導線の露出率>
実施例1-1及び比較例1-1〜1-2のそれぞれについて、JIS C3216−3:2011に基づいて急激伸張試験した後の側面視での図3に示すように破断点から長さ0.9mm及び中央の幅0.2mmの部分における平角導線の露出率を画像処理により求めた。
【0053】
<樹脂絶縁層のヤング率>
実施例1-1及び比較例1-1〜1-2のそれぞれについて、ダイナミック超微小硬度計(島津製作所社製 型番:DVH−211S)により樹脂絶縁層のヤング率を求めた。なお、圧子には、拡がり角度が115°の三角錐形状のものを用い、最大荷重0.5gfで測定した。
【0054】
(試験評価結果)
試験結果を表1に示す。
【0055】
表1の結果によれば、ポリアミドイミドと塩基性中和剤のAEとを含むO/W型分散液であり、50%径が15000nm以下の255nmである電着塗料組成物を用いて作製した実施例1-1は、導線の露出率が7%以下で且つ樹脂絶縁層のヤング率が7000N/mm以上であるので、平角導線への樹脂絶縁層の優れた密着性と共に、優れた耐外傷性を期待することができる。一方、ポリイミド樹脂を含む電着塗料組成物を用いて作製した比較例1-1は、導線の露出率が7%以下であるので、平角導線への樹脂絶縁層の優れた密着性を期待できるものの、ヤング率が7000N/mmよりも低いので、優れた耐外傷性を期待することができない。また、ポリアミドイミドを溶剤に溶解させた塗料を用いて作製した比較例1-2は、樹脂絶縁層のヤング率が7000N/mm以上であるので、優れた耐外傷性を期待することはできるものの、導線の露出率が7%よりも大きいので、平角導線への樹脂絶縁層の高い密着性は期待することができない。
【0056】
[第2実施例]
以下の実施例2-1〜2-6及び比較例2-1〜2-3の電着塗料組成物を作製した。それぞれの構成については表2A及びBにも示す。
【0057】
<実施例2-1>
数平均分子量10000及び酸価30.3mgKOH/gのポリアミドイミド(1)238g(5.9質量%)と、非プロトン性極性溶媒のNMP1502g(37.2質量%)及びDMF136g(3.4質量%)と、塩基性中和剤のAE7.6g(0.19質量%)と、着色剤のC.I.ソルベントブラック3の20質量%NMP溶液35.7g(溶液として0.88質量%)と、水2160g(53.5質量%)とを含む固形分濃度が6.0質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例2-1とした。
【0058】
実施例2-1の電着塗料組成物は、樹脂成分100質量部に対し、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が700.1質量部、AEの含有量が3.19質量部、及び着色剤の含有量が3.0質量部である。また、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は40.8質量%であり、且つDMF含有量/NMP含有量(質量比)=0.089である。更に、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)の水の含有量に対する質量比(非プロトン性極性溶媒の含有量/水の含有量)は40.6/53.5である。溶媒中における非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は43.5質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるNMPの含有量は91.8質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるDMFの含有量は8.2質量%である。中和率は95.7%であった。50%径(D50)は262nm、90%径(D90)は514nm、及び10%径(D10)は46nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0059】
<実施例2-2>
ポリアミドイミド(1)281g(6.9質量%)と、非プロトン性極性溶媒のNMP1467g(36.3質量%)及びDMF160g(4.0質量%)と、塩基性中和剤のAE9.0g(0.22質量%)と、着色剤のC.I.ソルベントブラック3の20質量%NMP溶液42.1g(溶液として1.04質量%)と、水2136g(52.8質量%)とを含む固形分濃度が7.1質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例2-2とした。
【0060】
実施例2-2の電着塗料組成物は、樹脂成分100質量部に対し、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が591.8質量部、AEの含有量が3.19質量部、及び着色剤の含有量が3.0質量部である。また、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は40.6質量%であり、且つDMF含有量/NMP含有量(質量比)=0.107である。更に、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)の水の含有量に対する質量比(非プロトン性極性溶媒の含有量/水の含有量)は40.3/52.8である。溶媒中における非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は43.7質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるNMPの含有量は90.3質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるDMFの含有量は9.7質量%である。中和率は95.6%であった。50%径(D50)は265nm、90%径(D90)は830nm、及び10%径(D10)は53nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0061】
<実施例2-3>
ポリアミドイミド(1)321g(7.9質量%)と、非プロトン性極性溶媒のNMP1432g(35.4質量%)及びDMF183g(4.5質量%)と、塩基性中和剤のAE10.2g(0.25質量%)と、着色剤のC.I.ソルベントブラック3の20質量%NMP溶液48.1g(溶液として1.19質量%)と、水2114g(52.2質量%)とを含む固形分濃度が8.0質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例2-3とした。
【0062】
実施例2-3の電着塗料組成物は、樹脂成分100質量部に対し、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が515.9質量部、AEの含有量が3.20質量部、及び着色剤の含有量が3.0質量部である。また、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は40.3質量%であり、且つDMF含有量/NMP含有量(質量比)=0.125である。更に、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)の水の含有量に対する質量比(非プロトン性極性溶媒の含有量/水の含有量)は39.9/52.2である。溶媒中における非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は43.9質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるNMPの含有量は88.9質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるDMFの含有量は11.1質量%である。中和率は95.7%であった。50%径(D50)は491nm、90%径(D90)は4654nm、及び10%径(D10)は66nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0063】
<実施例2-4>
ポリアミドイミド(1)361g(8.9質量%)と、非プロトン性極性溶媒のNMP1399g(34.5質量%)及びDMF206g(5.1質量%)と、塩基性中和剤のAE11.5g(0.28質量%)と、着色剤のC.I.ソルベントブラック3の20質量%NMP溶液54.1g(溶液として1.33質量%)と、水2090g(51.5質量%)とを含む固形分濃度が9.0質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例2-4とした。
【0064】
実施例2-4の電着塗料組成物は、樹脂成分100質量部に対し、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が456.3質量部、AEの含有量が3.19質量部、及び着色剤の含有量が3.0質量部である。また、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は40.0質量%であり、且つDMF含有量/NMP含有量(質量比)=0.143である。更に、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)の水の含有量に対する質量比(非プロトン性極性溶媒の含有量/水の含有量)は39.6/51.5である。溶媒中における非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は44質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるNMPの含有量は87.5質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるDMFの含有量は12.5質量%である。中和率は95.5%であった。50%径(D50)は937nm、90%径(D90)は1685nm、及び10%径(D10)は109nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0065】
<実施例2-5>
ポリアミドイミド(1)401g(9.9質量%)と、非プロトン性極性溶媒のNMP1364g(34質量%)及びDMF229g(6質量%)と、塩基性中和剤のAE12.8g(0.32質量%)と、着色剤のC.I.ソルベントブラック3の20質量%NMP溶液60.1g(溶液として1.48質量%)と、水2068g(50.0質量%)とを含む固形分濃度が10.0質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例2-5とした。
【0066】
実施例2-5の電着塗料組成物は、樹脂成分100質量部に対し、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が409.2質量部、AEの含有量が3.19質量部、及び着色剤の含有量が3.0質量部である。また、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は39.7質量%であり、且つDMF含有量/NMP含有量(質量比)=0.162である。更に、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)の水の含有量に対する質量比(非プロトン性極性溶媒の含有量/水の含有量)は39.2/50.9である。溶媒中における非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は44.2質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるNMPの含有量は86.0質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるDMFの含有量は14.0質量%である。中和率は95.6%であった。50%径(D50)は1295nm、90%径(D90)は2608nm、及び10%径(D10)は193nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0067】
<実施例2-6>
ポリアミドイミド(1)441g(10.8質量%)と、非プロトン性極性溶媒のNMP1331g(32.7質量%)及びDMF252g(6.2質量%)と、塩基性中和剤のAE14.1g(0.35質量%)と、着色剤のC.I.ソルベントブラック3の20質量%NMP溶液66.1g(溶液として1.63質量%)と、水2044g(50.2質量%)とを含む固形分濃度が10.9質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例2-6とした。
【0068】
実施例2-6の電着塗料組成物は、樹脂成分100質量部に対し、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が371.0質量部、AEの含有量が3.19質量部、及び着色剤の含有量が3.0質量部である。また、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は39.4質量%であり、且つDMF含有量/NMP含有量(質量比)=0.182である。更に、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)の水の含有量に対する質量比(非プロトン性極性溶媒の含有量/水の含有量)は39.9/50.2である。溶媒中における非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は44.5質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるNMPの含有量は84.6質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるDMFの含有量は15.4質量%である。中和率は95.6%であった。50%径(D50)は2866nm、90%径(D90)は40125nm、及び10%径(D10)は216nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0069】
<比較例2−1>
ポリアミドイミド(1)481g(11.8質量%)と、非プロトン性極性溶媒のNMP1296g(31.8質量%)及びDMF275g(6.7質量%)と、塩基性中和剤のAE15.4g(0.38質量%)と、着色剤のC.I.ソルベントブラック3の20質量%NMP溶液72.1g(溶液として1.77質量%)と、水2022g(49.6質量%)とを含む固形分濃度が11.9質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を比較例2-1とした。
【0070】
比較例2-1の電着塗料組成物は、樹脂成分100質量部に対し、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が338.7質量部、AEの含有量が3.19質量部、及び着色剤の含有量が3.0質量部である。また、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は39.1質量%であり、且つDMF含有量/NMP含有量(質量比)=0.203である。更に、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)の水の含有量に対する質量比(非プロトン性極性溶媒の含有量/水の含有量)は38.5/49.6である。溶媒中における非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は44.6質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるNMPの含有量は83.1質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるDMFの含有量は16.9質量%である。中和率は95.7%であった。50%径(D50)は16635nm、90%径(D90)は72157nm、及び10%径(D10)は1592nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0071】
<比較例2-2>
ポリアミドイミド(1)522g(12.8質量%)と、非プロトン性極性溶媒のNMP1263g(30.9質量%)及びDMF298g(7.3質量%)と、塩基性中和剤のAE16.6g(0.41質量%)と、着色剤のC.I.ソルベントブラック3の20質量%NMP溶液78.1g(溶液として1.92質量%)と、水1998g(49.0質量%)とを含む固形分濃度が12.9質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を比較例2-2とした。
【0072】
比較例2-2の電着塗料組成物は、樹脂成分100質量部に対し、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が311.2質量部、AEの含有量が3.19質量部、及び着色剤の含有量が3.0質量部である。また、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は38.9質量%であり、且つDMF含有量/NMP含有量(質量比)=0.225である。更に、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)の水の含有量に対する質量比(非プロトン性極性溶媒の含有量/水の含有量)は38.2/49.0である。溶媒中における非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は44.8質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるNMPの含有量は81.6質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるDMFの含有量は18.4質量%である。中和率は95.6%であった。50%径(D50)は19635nm、90%径(D90)は71345nm、及び10%径(D10)は5243nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0073】
<比較例2-3>
ポリアミドイミド(1)561g(13.7質量%)と、非プロトン性極性溶媒のNMP1228g(30.1質量%)及びDMF321g(7.9質量%)と、塩基性中和剤のAE17.9g(0.44質量%)と、着色剤のC.I.ソルベントブラック3の20質量%NMP溶液84.2g(溶液として2.06質量%)と、水1976g(48.4質量%)とを含む固形分濃度が13.8質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を比較例2-3とした。
【0074】
比較例2-3の電着塗料組成物は、樹脂成分100質量部に対し、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が287.9質量部、AEの含有量が3.19質量部、及び着色剤の含有量が3.0質量部である。また、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は38.6質量%であり、且つDMF含有量/NMP含有量(質量比)=0.248である。更に、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)の水の含有量に対する質量比(非プロトン性極性溶媒の含有量/水の含有量)は38.0/48.4である。溶媒中における非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は45.0質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるNMPの含有量は80.1質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるDMFの含有量は19.9質量%である。中和率は95.6%であった。50%径(D50)は49481nm、90%径(D90)は239666nm、及び10%径(D10)は2049nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0075】
【表2A】
【0076】
【表2B】
【0077】
[第3実施例]
以下の実施例3-1の電着塗料組成物を作製した。それぞれの構成については表3にも示す。
【0078】
<実施例3-1>
ポリアミドイミド(1)401g(9.8質量%)と、非プロトン性極性溶媒のNMP1404g(34.2質量%)及びDMF229g(5.6質量%)と、塩基性中和剤のAE12.8g(0.31質量%)と、着色剤のC.I.ソルベントブラック3の20質量%NMP溶液100.2g(溶液として2.44質量%)と、水2068g(50.4質量%)とを含む固形分濃度が10.0質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例3-1とした。
【0079】
実施例3-1の電着塗料組成物は、樹脂成分100質量部に対し、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が427.1質量部、AEの含有量が3.19質量部、及び着色剤の含有量が5.0質量部である。また、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は40.6質量%であり、且つDMF含有量/NMP含有量(質量比)=0.154である。更に、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)の水の含有量に対する質量比(非プロトン性極性溶媒の含有量/水の含有量)は39.8/50.4である。溶媒中における非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は45.3質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるNMPの含有量は86.6質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるDMFの含有量は13.4質量%である。中和率は95.6%であった。50%径(D50)は1179nm、90%径(D90)は3513nm、及び10%径(D10)は125nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0080】
【表3】
【0081】
[第4実施例]
以下の実施例4-1及び4-2の電着塗料組成物を作製した。それぞれの構成については表4にも示す。
【0082】
<実施例4-1>
数平均分子量75000及び酸価11.8mgKOH/gのポリアミドイミド(2)43g(4.3質量%)と、非プロトン性極性溶媒のNMP356g(35.6質量%)及びDMAc22g(2.2質量%)と、非プロトン性非極性溶媒のナフサ39g(3.9質量%)と、塩基性中和剤のAE1.8g(0.18質量%)と、水540g(54.0質量%)とを含む固形分濃度が4.3質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例4-1とした。
【0083】
実施例4-1の電着塗料組成物は、樹脂成分100質量部に対し、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMAc含有量)が832.0質量部、及びAEの含有量が4.21質量部である。また、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMAc含有量)は35.5質量%である。更に、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)の水の含有量に対する質量比(非プロトン性極性溶媒の含有量/水の含有量)は37.8/54.0である。溶媒中における非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMAc含有量)は39.7質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるNMPの含有量は94.1質量%である。中和率は327.6%であった。50%径(D50)は62nm、90%径(D90)は137nm、及び10%径(D10)は30nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0084】
<実施例4-2>
数平均分子量223000及び酸価3.7mgKOH/gのポリアミドイミド(3)60g(6.0質量%)と、非プロトン性極性溶媒のNMP398g(39.9質量%)と、塩基性中和剤のAE1.5g(0.15質量%)と、水540g(54.1質量%)とを含む固形分濃度が6.0質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例4-2とした。
【0085】
実施例4-2の電着塗料組成物は、樹脂成分100質量部に対し、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量)が665.5質量部、及びAEの含有量が2.51質量部である。また、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量)の水の含有量に対する質量比(非プロトン性極性溶媒の含有量/水の含有量)は39.9/54.1である。溶媒中における非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量)は42.4質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるNMPの含有量は100質量%である。中和率は340.8%であった。50%径(D50)は1463nm、90%径(D90)は3520nm、及び10%径(D10)は230nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0086】
【表4】
【0087】
[第5実施例]
以下の実施例5-1及び5-2の電着塗料組成物を作製した。それぞれの構成については表5にも示す。
【0088】
<実施例5-1>
ポリアミドイミド(1)238g(6.0質量%)と、非プロトン性極性溶媒のNMP1466g(36.7質量%)及びDMF136g(3.4質量%)と、塩基性中和剤のAE6.8g(0.17質量%)と、水2160g(54.0質量%)とを含む固形分濃度が5.9質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例5-1とした。
【0089】
実施例5-1の電着塗料組成物は、樹脂成分100質量部に対し、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が673.1質量部、及びAEの含有量が2.86質量部である。また、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は40.0質量%であり、且つDMF含有量/NMP含有量(質量比)=0.093である。更に、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)の水の含有量に対する質量比(非プロトン性極性溶媒の含有量/水の含有量)は40.1/54.0である。溶媒中における非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は42.6質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるNMPの含有量は91.5質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるDMFの含有量は8.5質量%である。中和率は85.6%であった。50%径(D50)は1627nm、90%径(D90)は2916nm、及び10%径(D10)は955nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0090】
<実施例5-2>
ポリアミドイミド(1)238g(6.0質量%)と、非プロトン性極性溶媒のNMP1466g(36.7質量%)及びDMF136g(3.4質量%)と、塩基性中和剤のAE7.6g(0.19質量%)と、水2160g(54.0質量%)とを含む固形分濃度が5.9質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例5-2とした。
【0091】
実施例5-2の電着塗料組成物は、樹脂成分100質量部に対し、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が673.1質量部、及びAEの含有量が3.19質量部である。また、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は40.0質量%であり、且つDMF含有量/NMP含有量(質量比)=0.093である。更に、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)の水の含有量に対する質量比(非プロトン性極性溶媒の含有量/水の含有量)は40.1/54.0である。溶媒中における非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は42.6質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるNMPの含有量は91.5質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるDMFの含有量は8.5質量%である。中和率は95.7%であった。50%径(D50)は164nm、90%径(D90)は431nm、及び10%径(D10)は41nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0092】
【表5】
【0093】
[第6実施例]
以下の実施例6-1〜6-4の電着塗料組成物を作製した。それぞれの構成については表6にも示す。
【0094】
<実施例6-1>
ポリアミドイミド(1)401g(9.8質量%)と、非プロトン性極性溶媒のNMP1404g(34.2質量%)及びDMF229g(5.6質量%)と、塩基性中和剤のAE33.7g(0.82質量%)と、着色剤のC.I.ソルベントブラック3の20質量%NMP溶液100.2g(溶液として2.44質量%)と、水2068g(50.4質量%)とを含む固形分濃度が9.9質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例6-1とした。
【0095】
実施例6-1の電着塗料組成物は、樹脂成分100質量部に対し、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が427.1質量部、AEの含有量が8.40質量部、及び着色剤の含有量が5.0質量部である。また、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は40.4質量%であり、且つDMF含有量/NMP含有量(質量比)=0.154である。更に、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)の水の含有量に対する質量比(非プロトン性極性溶媒の含有量/水の含有量)は39.8/50.4である。溶媒中における非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は45.3質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるNMPの含有量は86.6質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるDMFの含有量は13.4質量%である。中和率は251.6%であった。50%径(D50)は140nm、90%径(D90)は2134nm、及び10%径(D10)は34nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0096】
<実施例6-2>
塩基性中和剤のAE(配合量16.8g)の含有量を0.41質量%としたことを除いて実施例6-1と同一構成の固形分濃度が10.0質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例6-2とした。
【0097】
実施例6-2の電着塗料組成物は、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が40.6質量%であり、樹脂成分100質量部に対し、AEの含有量が4.20質量部である。中和率は125.8%であった。50%径(D50)は164nm、90%径(D90)は911nm、及び10%径(D10)は28nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0098】
<実施例6-3>
塩基性中和剤のAE(配合量14.1g)の含有量を0.34質量%としたことを除いて実施例6-1と同一構成の固形分濃度が10.0質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例6-3とした。
【0099】
実施例6-3の電着塗料組成物は、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が40.6質量%であり、樹脂成分100質量部に対し、AEの含有量が3.53質量部である。中和率は105.7%であった。50%径(D50)は504nm、90%径(D90)は1854nm、及び10%径(D10)は45nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0100】
<実施例6-4>
塩基性中和剤のAE(配合量15.5g)の含有量を0.38質量%としたことを除いて実施例6-1と同一構成の固形分濃度が10.0質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例6-4とした。
【0101】
実施例6-4の電着塗料組成物は、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が40.6質量%であり、樹脂成分100質量部に対し、AEの含有量が3.86質量部である。中和率は115.7%であった。50%径(D50)は350nm、90%径(D90)は1369nm、及び10%径(D10)は34nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0102】
【表6】
【0103】
[第7実施例]
以下の実施例7-1〜7-5の電着塗料組成物を作製した。それぞれの構成については表7にも示す。
【0104】
<実施例7-1>
ポリアミドイミド(1)238g(5.8質量%)と、非プロトン性極性溶媒のNMP1566g(38.2質量%)及びDMF136g(3.3質量%)と、塩基性中和剤のAE6.8g(0.17質量%)と、着色剤のC.I.ソルベントブラック3の20質量%NMP溶液100.2g(溶液として2.44質量%)と、水2160g(52.7質量%)とを含む固形分濃度が6.1質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例7-1とした。
【0105】
実施例7-1の電着塗料組成物は、樹脂成分100質量部に対し、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が748.9質量部、AEの含有量が2.86質量部、及び着色剤が8.4質量部である。また、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は42.4質量%であり、且つDMF含有量/NMP含有量(質量比)=0.083である。更に、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)の水の含有量に対する質量比(非プロトン性極性溶媒の含有量/水の含有量)は41.5/52.7である。溶媒中における非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は45.2質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるNMPの含有量は92.4質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるDMFの含有量は7.6質量%である。中和率は85.6%であった。50%径(D50)は3270nm、90%径(D90)は43955nm、及び10%径(D10)は1626nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0106】
<実施例7-2>
塩基性中和剤のAE(配合量7.6g)の含有量を0.19質量%としたことを除いて実施例7-1と同一構成の固形分濃度が6質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例7-2とした。
【0107】
実施例7-2の電着塗料組成物は、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が42.4質量%であり、樹脂成分100質量部に対し、AEの含有量が3.19質量部である。中和率は95.7%であった。50%径(D50)は255nm、90%径(D90)は2647nm、及び10%径(D10)は42nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0108】
<実施例7-3>
塩基性中和剤のAE(配合量8.4g)の含有量を0.20質量%としたことを除いて実施例7-1と同一構成の固形分濃度が6.1質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例7-3とした。
【0109】
実施例7-3の電着塗料組成物は、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が42.3質量%であり、樹脂成分100質量部に対し、AEの含有量が3.53質量部である。中和率は105.7%であった。50%径(D50)は271nm、90%径(D90)は701nm、及び10%径(D10)は55nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0110】
<実施例7-4>
塩基性中和剤のAEの含有量(配合量9.2g)を0.22質量%としたことを除いて実施例7-1と同一構成の固形分濃度が6.1質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例7-4とした。
【0111】
実施例7-4の電着塗料組成物は、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が42.3質量%であり、樹脂成分100質量部に対し、AEの含有量が3.87質量部である。中和率は115.8%であった。50%径(D50)は89nm、90%径(D90)は1391nm、及び10%径(D10)は23nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0112】
<実施例7-5>
塩基性中和剤のAEの含有量(配合量10.0g)を0.24質量%としたことを除いて実施例7-1と同一構成の固形分濃度が6.1質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例7-5とした。
【0113】
実施例7-5の電着塗料組成物は、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が42.3質量%であり、樹脂成分100質量部に対し、AEの含有量が4.20質量部である。中和率は125.9%であった。50%径(D50)は70nm、90%径(D90)は255nm、及び10%径(D10)は23nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0114】
【表7】
【0115】
[第8実施例]
以下の実施例8-1〜8-8の電着塗料組成物を作製した。それぞれの構成については表8A及びBにも示す。
【0116】
<実施例8-1>
ポリアミドイミド(1)60g(6.0質量%)と、非プロトン性極性溶媒のNMP366g(36.6質量%)及びDMF34g(3.4質量%)と、塩基性中和剤のAE1.8g(0.18質量%)と、水540g(54.0質量%)とを含む固形分濃度が6.0質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例8-1とした。
【0117】
実施例8-1の電着塗料組成物は、樹脂成分100質量部に対し、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が668.6質量部、及びAEの含有量が3.01質量部である。また、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は39.9質量%であり、且つDMF含有量/NMP含有量(質量比)=0.093である。更に、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)の水の含有量に対する質量比(非プロトン性極性溶媒の含有量/水の含有量)は40.0/54.0である。溶媒中における非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は42.6質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるNMPの含有量は91.5質量%である。非プロトン性極性溶媒中におけるDMFの含有量は8.5質量%である。中和率は90.1%であった。50%径(D50)は1017nm、90%径(D90)は2626nm、及び10%径(D10)は409nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0118】
<実施例8-2>
塩基性中和剤としてAEの代わりにモルホリン(配合量2.6g)を0.38質量%含有させたことを除いて実施例8-1と同一構成の固形分濃度が6.0質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例8-2とした。
【0119】
実施例8-2の電着塗料組成物は、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が39.9質量%であり、樹脂成分100質量部に対し、塩基性中和剤のモルホリンの含有量が4.34質量部である。中和率は91.3%であった。50%径(D50)は1579nm、90%径(D90)は3483nm、及び10%径(D10)は873nmであった。一晩保管後に沈殿(ハードケーキ)の発生が確認された。
【0120】
<実施例8-3>
塩基性中和剤としてAEの代わりにピペラジン無水物(配合量1.3g)を0.19質量%含有させたことを除いて実施例8-1と同一構成の固形分濃度が6.0質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例8-3とした。
【0121】
実施例8-3の電着塗料組成物は、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が40.0質量%であり、樹脂成分100質量部に対し、塩基性中和剤のピペラジン無水物の含有量が2.17質量部である。中和率は92.3%であった。50%径(D50)は2312nm、90%径(D90)は45372nm、及び10%径(D10)は573nmであった。一晩保管後に沈殿(ハードケーキ)の発生が確認された。
【0122】
<実施例8-4>
塩基性中和剤としてAEの代わりにピペラジン六水和物(配合量2.9g)を0.42質量%含有させたことを除いて実施例8-1と同一構成の固形分濃度が6.0質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例8-4とした。
【0123】
実施例8-4の電着塗料組成物は、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が39.9質量%であり、樹脂成分100質量部に対し、塩基性中和剤のピペラジン六水和物の含有量が4.85質量部である。中和率は91.3%であった。50%径(D50)は2646nm、90%径(D90)は47856nm、及び10%径(D10)は421nmであった。一晩保管後に沈殿(ハードケーキ)の発生が確認された。
【0124】
<実施例8-5>
塩基性中和剤としてAEの代わりに2,2’−イミノジエタノール(配合量3.1g)を0.45質量%含有させたことを除いて実施例8-1と同一構成の固形分濃度が6.0質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例8-5とした。
【0125】
実施例8-5の電着塗料組成物は、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が39.9質量%であり、樹脂成分100質量部に対し、塩基性中和剤の2,2’−イミノジエタノールの含有量が5.18質量部である。中和率は90.2%であった。50%径(D50)は231nm、90%径(D90)は806nm、及び10%径(D10)は67nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0126】
<実施例8-6>
塩基性中和剤としてAEの代わりに2−アミノ−2−メチルプロパノール(配合量2.6g)を0.26質量%含有させたことを除いて実施例8-1と同一構成の固形分濃度が6.0質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例8-6とした。
【0127】
実施例8-6の電着塗料組成物は、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が39.9質量%であり、樹脂成分100質量部に対し、塩基性中和剤の2−アミノ−2−メチルプロパノールの含有量が4.34質量部である。溶媒中における非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は42.6質量%である。中和率は89.2%であった。50%径(D50)は1133nm、90%径(D90)は2086nm、及び10%径(D10)は637nmであった。一晩保管後も沈殿の発生は確認されなかった。
【0128】
<実施例8-7>
塩基性中和剤としてAEの代わりにトリエチルアミン(配合量3.0g)を0.30質量%含有させたことを除いて実施例8-1と同一構成の固形分濃度が6.0質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例8-7とした。
【0129】
実施例8-7の電着塗料組成物は、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が39.9質量%であり、樹脂成分100質量部に対し、塩基性中和剤のトリエチルアミンの含有量が5.01質量部である。溶媒中における非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は42.6質量%である。中和率は90.7%であった。50%径(D50)は3508nm、90%径(D90)は52304nm、及び10%径(D10)は1567nmであった。一晩保管後に沈殿(ハードケーキ)の発生が確認された。
【0130】
<実施例8-8>
塩基性中和剤としてAEの代わりにトリプロピルアミン(配合量4.2g)を0.42質量%含有させたことを除いて実施例8-1と同一構成の固形分濃度が6.0質量%のO/W型分散液の電着塗料組成物を調製した。この電着塗料組成物を実施例8-8とした。
【0131】
実施例8-8電着塗料組成物は、非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)が39.8質量%であり、樹脂成分100質量部に対し、塩基性中和剤のトリプロピルアミンの含有量が7.02質量部である。溶媒中における非プロトン性極性溶媒の含有量(NMP含有量+DMF含有量)は42.6質量%である。中和率は89.7%であった。50%径(D50)は3846nm、90%径(D90)は53517nm、及び10%径(D10)は1498nmであった。一晩保管後に沈殿(ハードケーキ)の発生が確認された。
【0132】
【表8A】
【0133】
【表8B】
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、電着塗料組成物及びそれを用いた絶縁電線の製造方法の技術分野において有用である。
【符号の説明】
【0135】
10 絶縁電線
11 平角導線
12 樹脂絶縁層
12a 長辺中央対応部分
12b 長辺端対応部分
12c 角対応部分
12d 短辺対応部分
図1A
図1B
図2
図3