【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、かかるTMD10’の一例として、質量体20’を、下方からダンピングコイルばね40’で支持した構成も考えられる。
図1Aは、その概略縦断面図であり、
図1Bは、
図1A中のB−B断面図である。なお、
図1A中では、コイルばね41’等のTMD10’の一部の構成を側面視で示している。
ここで、タンピングコイルばね40’とは、上記弾性部材としてのコイルばね41’の外周部を、減衰部材として機能する粘弾性の筒状部材45’で覆いつつ接着剤で接合一体化したものである。
【0005】
そして、このような構成のTMD10’によれば、コイルばね41’の上下方向の変形に伴って粘弾性の筒状部材45’も上下方向に変形する。よって、同調した質量体20’及び粘弾性の筒状部材45’の上下振動に基づいて、床1’の上下振動を減衰させることが可能となる。
【0006】
しかしながら、このような筒状部材45’たる減衰部材が一体化したコイルばね41’を用いると、当該一体化の不均一性等に起因して質量体20’がロッキング振動をする恐れがある。そして、その場合には、質量体20’は、床1’の上下振動と同調した略逆位相の上下振動をし難くなって、その結果、床1’の上下振動の抑制効果が減退してしまい得る。
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、減衰部材が一体化された弾性部材をTMDに用いることで起こり得るTMDの質量体のロッキング振動を防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、
制振対象物の上方又は下方に配置された質量体が、前記制振対象物の上下振動に同調して上下振動することにより、前記制振対象物の前記上下振動を抑制するチューンドマスダンパーであって、
前記質量体と前記制振対象物との間に互いに並列に介挿されて前記質量体を支持する少なくとも3つの第1弾性部材と、
前記質量体と前記制振対象物との間に前記第1弾性部材と並列に介挿されて前記質量体を支持する少なくとも1つの第2弾性部材と、
前記第2弾性部材に並列に設けられつつ前記第2弾性部材に一体化された減衰部材と、を有し、
前記3つの第1弾性部材と前記質量体の重心の位置との水平方向の距離は、前記第2弾性部材と前記重心の位置との水平方向の距離よりも大きいことを特徴とする。
【0009】
上記請求項1に示す発明によれば、上記3つの第1弾性部材は、減衰部材が一体化された第2弾性部材よりも質量体の重心から離れた位置に配置されている。よって、質量体が安定して上下振動をするように、当該質量体を、これら3つの第1弾性部材は安定して支持することができる。そして、これにより、質量体のロッキング振動を防ぐことができる。
【0010】
請求項2に示す発明は、請求項1に記載のチューンドマスダンパーであって、
前記質量体と前記制振対象物との間に位置する全ての前記第1弾性部材の前記上下方向の剛性値(N/m)の合計値は、前記質量体と前記制振対象物との間に位置する全ての前記第2弾性部材の前記上下方向の剛性値(N/m)の合計値よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
上記請求項2に示す発明によれば、第1弾性部材の剛性値の合計値の方が、減衰部材が一体化された第2弾性部材の剛性値の合計値より大きい。よって、質量体を第1弾性部材で安定して支持することができて、これにより、質量体のロッキング振動を効果的に防ぐことができる。
【0012】
請求項3に示す発明は、請求項1又は2に記載のチューンドマスダンパーであって、
前記第2弾性部材と前記減衰部材とは、接着剤で接着されることにより一体化されていることを特徴とする。
【0013】
上記請求項3に示す発明によれば、第2弾性部材に減衰部材は接着剤で接着されることにより一体化されている。そのため、質量体の上下振動に伴って第2弾性部材に入力される上下変位を、第2弾性部材を介して減衰部材にも確実に入力することができて、これにより、減衰部材も質量体の上下振動に連動して確実に上下方向に変形する。よって、当該減衰部材を、制振対象物の上下振動の減衰に有効に寄与させることができる。
【0014】
請求項4に示す発明は、請求項3に記載のチューンドマスダンパーであって、
前記第2弾性部材は、上下方向に沿った中心軸回りに線材を螺旋状に旋回してなるコイルばねであり、
前記減衰部材は、前記コイルばねの外周面の全周を覆う筒状部材であり、
前記筒状部材の内周面が前記コイルばねの外周部に前記接着剤で接着されていることを特徴とする。
【0015】
上記請求項4に示す発明によれば、減衰部材たる筒状部材の内周面が、第2弾性部材たるコイルばねの外周部に接着剤で接着されている。そのため、質量体の上下振動に伴ってコイルばねに入力される上下変位が、当該コイルばねを介して筒状部材にも確実に入力されて、これにより、当該筒状部材も質量体の上下振動に連動して上下方向に変形する。よって、当該筒状部材たる減衰部材を、制振対象物の上下振動の減衰により有効に寄与させることができる。
【0016】
請求項5に示す発明は、請求項4に記載のチューンドマスダンパーであって、
前記第2弾性部材は1つだけ設けられ、
前記質量体の前記重心の平面位置は、前記第2弾性部材としての前記コイルばねの内周側に位置していることを特徴とする。
【0017】
上記請求項5に示す発明によれば、質量体の重心の平面位置は、第2弾性部材としてのコイルばねの内周側に位置している。よって、質量体が安定して上下振動するように、同質量体を当該コイルばねは支持することができる。そして、このことも、質量体のロッキング振動の防止に有効に寄与する。
【0018】
請求項6に示す発明は、請求項1又は2に記載のチューンドマスダンパーであって、
前記第2弾性部材と前記減衰部材とは、連結部材を介して連結されることにより一体化されていることを特徴とする。
【0019】
上記請求項6に示す発明によれば、第2弾性部材に減衰部材は連結部材を介して連結されることにより一体化されている。そのため、質量体の上下振動に伴って第2弾性部材に入力される上下変位を、上記連結部材を介して減衰部材にも確実に入力することができて、これにより、当該減衰部材も質量体の上下振動に連動して速やかに上下方向に変形する。よって、同減衰部材を、制振対象物の上下振動の減衰に確実に寄与させることができる。
【0020】
請求項7に示す発明は、請求項6に記載のチューンドマスダンパーであって、
前記第2弾性部材は、上下方向に沿った中心軸回りに線材を螺旋状に旋回してなるコイルばねであり、
前記減衰部材は、中心軸が上下方向を向きつつ前記コイルばねの内周側に収容された棒状粘弾性体であり、
前記連結部材は、前記コイルばねの上端と前記棒状粘弾性体の上端面とに接着される上側板部材と、前記コイルばねの下端と前記棒状粘弾性体の下端面とに接着される下側板部材と、を有することを特徴とする。
【0021】
上記請求項7に示す発明によれば、減衰部材としての棒状粘弾性体は、第2弾性部材としてのコイルばねの内周側に収容されている。また、連結部材としての上側板部材は、コイルばねの上端と棒状粘弾性体の上端面とに接着され、同じく連結部材としての下側板部材は、コイルばねの下端と棒状粘弾性体の下端面とに接着されている。そのため、質量体の上下振動に伴って上記のコイルばねに入力される上下変位を、上側板部材及び下側板部材を介して棒状粘弾性体にも確実に入力することができて、これにより、当該棒状粘弾性体も質量体の上下振動に連動して速やかに上下方向に変形する。よって、当該棒状粘弾性体たる減衰部材を、制振対象物の上下振動の減衰に確実に寄与させることができる。
【0022】
請求項8に示す発明は、請求項7に記載のチューンドマスダンパーであって、
前記コイルばねの前記中心軸の平面位置が、前記棒状粘弾性体の前記上端面及び前記下端面に含まれていることを特徴とする。
【0023】
上記請求項8に示す発明によれば、第2弾性部材としてのコイルばねの中心軸の平面位置が、減衰部材としての棒状粘弾性体の上端面及び下端面に含まれている。よって、質量体の上下振動に伴って上記のコイルばねに入力される上下変位を、上記の上端面及び下端面を介して棒状粘弾性体にも安定して入力することができる。
【0024】
請求項9に示す発明は、請求項1乃至8の何れかに記載のチューンドマスダンパーであって、
前記第1弾性部材には、粘弾性の減衰部材が一体化されていないことを特徴とする。
【0025】
上記請求項9に示す発明によれば、第1弾性部材には、粘弾性の減衰部材が一体化されていない。よって、一体化の不均一性の影響を受けることなく、当該第1弾性部材は、質量体が安定して上下振動するように、同質量体を安定して支持することができる。そして、これにより、質量体のロッキング振動をより効果的に防ぐことができる。