(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記顔撮影手段は、前記検眼手段が前記初期位置に移動された場合に、装置本体の機械中心と左右方向の位置が同じになるように配置されることを特徴とする請求項1の眼科装置。
前記制御手段は、前記顔撮影手段によって撮影された顔画像に基づいて前記被検眼の位置座標を検出し、前記顔画像の歪みに応じて前記位置座標を補正することを特徴とする請求項1〜3のいずれかの眼科装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、第1実施形態に係る眼科装置について説明する。第1実施形態に係る眼科装置は、検眼部(例えば、検眼部2)と、駆動部(例えば、駆動部4)と、制御部(例えば、制御部70)と、を備えてもよい。
【0011】
検眼部は、被検眼を検査するために設けられてもよい。検眼部は、例えば、被検眼を検査するための構成として、検眼光学系を備えてもよい。検眼部としては、例えば、被検眼を測定するための構成であってもよいし、被検眼を撮影するための構成であってもよい。なお、検眼光学系に限定されず、他の測定系(例えば、超音波眼圧計)、他の撮影系(例えば、眼科用超音波撮影装置)が設けられてもよい。
【0012】
駆動部は、検眼部と被検眼との間の相対位置を調整するために設けられてもよい。例えば、駆動部は、被検眼に対して検眼部を移動させる駆動部であってもよいし、検眼部に対して被検眼を移動させる駆動部(例えば、顎受移動機構)であってもよい。
【0013】
制御部は、例えば、プロセッサであってもよい。制御部は、眼科装置に設けられた各構成を制御してもよいし、各種演算処理を行ってもよい。制御部は、本実施形態に係る眼科装置を制御するための制御プログラムによって動作されてもよい。
【0014】
また、第1実施形態に係る眼科装置は、少なくとも前眼部を照明するための照明光学系(例えば、指標投影光学系50)と、少なくとも前眼部を撮像するための撮像光学系(例えば、前眼部撮影光学系60)と、を備えてもよい。撮像光学系は、前眼部を含む正面像を撮像するための撮像光学系であってもよく、例えば、撮像光学系は、前眼部を含む正面像を二次元撮像素子により撮像するための撮像光学系であってもよい。照明光学系は、撮像光学系によって撮像される前眼部を含む領域を照明するために設けられてもよい。以下、照明光学系、撮像光学系に係る実施形態の一例について示す。
【0015】
<照明光学系>
照明光学系は、被検眼の前眼部を照明するための第1の照明光学系と、第1の照明光学系よりも広範囲で被検眼の前眼部を照明するための第2の照明光学系と、を備えてもよい。第2の照明光学系は、第1の照明光学系の少なくとも一部に対して異なる位置に配置されてもよい。この場合、第2の照明光学系の少なくとも一部は、第1の照明光学系よりも検眼部の検査軸から離れた位置に配置されてもよい。また、第2の照明光学系が、第1の照明光学系を兼用してもよい。
【0016】
第1の照明光学系と第2の照明光学系の少なくともいずれかは、赤外光にて照明する照明光学系であってもよい。この場合、例えば、赤外光源が用いられてもよいし、可視光源と共に、赤外光を透過し可視光をカットするフィルタが用いられてもよい。第1の照明光学系と第2の照明光学系の少なくともいずれかは、被検眼に対してアライメント指標を投影するための指標投影光学系を兼用してもよい。
【0017】
第1の照明光学系は、前眼部照明光学系であってもよい。第1の照明光学系の照明範囲は、例えば、被検眼の瞳孔、強膜、睫を少なくとも含む照明範囲であってもよい。
【0018】
第2の照明光学系は、第1の照明光学系よりも広範囲の照明範囲を備える。第2の照明光学系は、第1の照明光学系よりも広範囲にて前眼部を含む領域を照明してもよい。第2の照明光学系は、例えば、顔照明光学系であってもよい。第2の照明光学系の照明範囲は、両眼を少なくとも含む被検者の顔を照明可能な照明範囲であってもよい。また、第2の照明光学系の照明範囲は、第1の照明光学系よりも広範囲にて片眼を照明可能な照明範囲であってもよい。
【0019】
照明光学系は、第1の照明光学系と、第2の照明光学系とをそれぞれ別に備えてもよい。これによって、第1の撮像光学系によるアライメントと第2の撮像光学系によるアライメントにおいて良好な照明が行われ、アライメントをスムーズに行うことができる。
【0020】
広範囲な照明範囲を備えるための構成の一例として、第2の照明光学系は、第1の照明光学系よりも検眼部の検査軸から離れた位置に配置されることで、被検者を広範囲で照明できる。この場合、第1の撮像光学系の光軸から第1の照明光学系までの上下左右方向での距離より、第2の撮像光学系の光軸から第2の照明光学系までの上下左右方向での距離の方が長く配置されてもよい。
【0021】
広範囲な照明範囲を備えるための構成の一例として、第2の照明光学系は、拡散光学系であってもよく、照明光源から発せられた広範囲に拡散するための光拡散光学部材(例えば、光拡散板)を備えてもよい。これにより、被検者の顔を広範囲に照明することが可能である。光拡散光学部材としては、例えば、光を発散させるレンズであってもよい。もちろん、光拡散性を備える照明光源が用いられてもよい。
【0022】
第2の照明光学系は、複数の照明光源を備えてもよく、複数の照明光源は、第2の撮像光学系に対して左右それぞれに配置されることで、左右方向の照明バランスが確保される。左右に配置された各照明光源は、所定の瞳孔間距離(例えば、人眼の平均的な瞳孔間距離)よりも離れた位置に配置されてもよい。これにより、両眼を広範囲にて照明できる。
【0023】
この場合、複数の照明光源は、例えば、第1の撮像光学系に対して左右対称に照明光源が配置されてもよいし、第2の撮像光学系に対して左右対称に照明光源は配置されてもよい。さらに、照明光源は、上下に複数配列されてもよく、上下方向における照明バランスが確保される。なお、上下方向に長手方向を持つ面発光型の照明光源が用いられてもよい。また、照明光源は、リング状の光源であってもよい。もちろん、照明光源の配置構成は、種々の変容が可能であり、これらに限定されない。
【0024】
また、照明光源の配置に関し、照明光源の光軸が、検眼部の検査軸に対して被検眼側に向けて傾斜するように配置されてもよい。これによって、被検眼の両眼を良好に照明することができる。さらに、第2の照明光学系は、検眼窓に対して被検眼側にせり出した位置に配置されてもよい。これにより、被検眼に近い位置に照明光学系が配置され、照明光量が確保される。
【0025】
<撮像光学系>
撮像光学系は、被検眼の前眼部を撮像するための第1の撮像光学系と、第1の撮像光学系よりも広範囲で被検眼の前眼部を撮像するための第2の撮像光学系と、を備えてもよい。第2の撮像光学系は、第1の撮像光学系に対して異なる位置に配置されてもよい。第1の撮像光学系と第2の撮像光学系は、検査部の筐体内に配置されてよいし、第1の撮像光学系が検査部の筐体内に配置され、第2の撮像光学系が、検査部における筐体外に配置されてもよい。ここで、筐体内に配置された場合、撮像光学系は、検眼部に設けられた検眼窓を介して被検眼を撮像し、筐体外に配置された場合、撮像光学系は、検眼窓を介さずに被検眼を撮像する。もちろん、第1の撮像光学系と第2の撮像光学系の両方が、被検者側筐体面の外側に配置されてもよい。また、第2の撮像光学系が、第1の撮像光学系を兼用してもよい。
【0026】
第1の撮像光学系は、第1の照明光学系によって照明された被検眼の前眼部を撮像するために用いられてもよい。第2の撮像光学系は、第2の照明光学系によって照明された被検者の前眼部を撮像するために用いられてもよい。
【0027】
第1の撮像光学系は、前眼部撮像光学系であってもよい。第1の撮像光学系の撮像範囲は、例えば、被検眼の瞳孔、強膜、睫を少なくとも含む撮像範囲であってもよい。前眼部撮像光学系は、前眼部照明光学系によって照明された前眼部を撮像するために用いられてもよい。
【0028】
第2の撮像光学系は、第1の撮像光学系よりも広範囲の撮像範囲を備える。第2の撮像光学系は、例えば、顔撮像光学系であってもよい。第2の照明光学系の照明範囲は、両眼を少なくとも含む被検者の顔を撮像可能な撮像範囲であってもよい。第2の撮像光学系は、第2の照明光学系によって照明された被検者の顔を撮像するために用いられてもよい。例えば、顔撮像光学系は、顔照明光学系によって照明された顔を撮像するために用いられてもよい。
【0029】
また、第2の撮像光学系の撮像範囲は、第1の撮像光学系よりも広範囲にて片眼を撮像可能な撮像範囲であってもよい。第2の撮像光学系は、第2の照明光学系によって照明された被検者の片眼を第1の撮像光学系よりも広範囲で撮像するために用いられてもよい。
【0030】
撮像光学系は、第1の撮像光学系と、第2の撮像光学系とをそれぞれ別に備えてもよい。これによって、第1の撮像光学系を用いたシビアなアライメントと、第2の撮像光学系を用いたラフなアライメントを行う場合、それぞれに適した状態で行うことができる。
【0031】
広範囲な撮像範囲を備えるための構成の一例として、第2の撮像光学系は、魚眼レンズを備えてもよい。魚眼レンズによって、小型化と広角化の両方を実現できる。
【0032】
<アライメントへの利用>
なお、制御部は、第1の撮像光学系からの撮像信号に基づく前眼部画像を表示部に表示してもよいし、又は、被検眼に対する検眼部の自動アライメントに利用してもよい。また、制御部は、第2の撮像光学系からの撮像信号に基づく画像を表示部に表示してもよいし、又は、被検眼に対する検眼部の自動アライメントに利用してもよい。この場合、制御部は、第1の撮像光学系及び第2の撮像光学系からの撮像信号に基づいて駆動部を制御することによって被検眼に対する自動アライメントを行うようにしてもよい。
【0033】
また、制御部は、自動アライメント完了後、自動的に検眼動作を開始させてもよい。この場合、例えば、制御部は、検眼部を用いた検眼動作を開始するためのトリガ信号を自動的に発し、トリガ信号に基づいて検眼部(例えば、検眼光学系)を作動させてもよい。
【0034】
なお、撮像光学系からの撮像信号に基づいて被検眼と検眼部との相対位置を自動的に調整する場合、検眼部と顎受けの少なくともいずれかを撮像信号に基づいて移動させることで、自動アライメントを行うようにしてもよい。この場合、検眼部を移動させるための駆動部、顎受けを移動させるための駆動部の少なくともいずれかが、制御部によって駆動制御されてもよい。
【0035】
ここで、制御部は、被検眼と検眼部との距離が長い場合において、第2の撮像光学系からの撮像信号に基づく自動アライメントを作動させてもよい。また、被検眼と検眼部との距離が短い場合において、第1の撮像光学系からの撮像信号に基づく自動アライメントを作動させてもよい。
【0036】
<照明制御>
制御部は、第1の照明光学系による前眼部照明と第2の照明光学系による広範囲での前眼部照明との間での前眼部に対する照明状態を制御してもよい。これによって、第1の撮像光学系によるアライメントと第2の撮像光学系によるアライメントの少なくともいずれかに適した照明状態が設定され、良好なアライメントを行うことができる。
【0037】
例えば、制御部は、第1の照明光学系による前眼部照明と第2の照明光学系による広範囲での前眼部照明との間において、前眼部に対する照明状態を変更してもよい。前眼部照明は、第1の撮像光学系を用いたアライメントにおいて用いられ、広範囲照明は、第2の撮像光学系を用いたアライメントにおいて用いられてもよい。
【0038】
なお、第1の照明光学系による前眼部照明のいずれかのタイミングで、第2の照明光学系による広範囲照明とは異なる照明が行われればよく、必ずしも第1の撮像光学系によるアライメントと第2の撮像光学系によるアライメントとの切換時に変更される必要はない。この場合、制御部は、第1の照明光学系による前眼部照明と第2の照明光学系による顔照明とを切り換えてもよい。これによって、例えば、アライメント制御に応じた照明切換が可能となり、アライメントをスムーズに行うことができる。
【0039】
前述の照明状態の制御の一例として、制御部は、第1の撮像光学系を用いた検眼部のアライメントの際、第2の照明光学系による照明を制限してもよい。これにより、第2の照明光学系による影響を軽減できる。例えば、第1の撮像光学系を用いたアライメントモード(以下、第1のアライメント)において、制御部は、第1の照明光学系を作動させて前眼部照明を行うと共に、第2の照明光学系による広範囲照明を制限してもよい。これによって、前眼部画像において第2の照明光学系によるノイズ(例えば、前眼部輝点、画像全体の光量増)が制限され、適正な前眼部アライメントを行うことができる。
【0040】
前述の照明状態の制御の一例として、第2の撮像光学系を用いた検眼部のアライメントの際、第1の照明光学系による照明を制限してもよい。これにより、第1の照明光学系による影響を軽減できる。例えば、第2の撮像光学系を用いたアライメントモード(以下、第2のアライメント)において、制御部は、第2の照明光学系を作動させて広範囲照明を行うと共に、第2の照明光学系による前眼部照明を制限してもよい。これによって、広範囲の前眼部画像において第1の照明光学系によるノイズ(例えば、前眼部輝点、画像全体の光量増)が制限され、適正な広範囲アライメントを行うことができる。
【0041】
なお、広範囲照明を制限する具体的手法としては、例えば、被検者への照明光が全て遮断されてもよい。この場合、照明光源を消灯させてもよいし、シャッタ駆動によって照明光が遮断されてもよい。また、被検者への照明光が全て遮断されてなくても、ノイズ光が軽減される程度に照明光が減光されてもよい。この場合、照明光源の光量が減少されてもよいし、減光フィルタによって照明光の一部が減光されてもよい。なお、前眼部照明を制限する手法においても、上記手法のいずれかを用いることができる。
【0042】
なお、本実施形態に係る眼科装置としては、第1のアライメントにおける広範囲照明の制限機能と、第2のアライメントにおける前眼部照明の制限機能との両機能を備える眼科装置の他、広範囲照明の制限機能のみを備える眼科装置、或いは前眼部照明の制限機能のみを備える眼科装置であってもよい。
【0043】
なお、第2の照明光学系が、第1の照明光学系の少なくとも一部に対して異なる位置に配置されている場合において、制御部は、第1の照明光学系と第2の照明光学系の作動を切り換えることによって、第1の照明光学系による前眼部照明と第2の照明光学系による広範囲照明との間での被検者に対する照明状態を制御してもよい。
【0044】
<照明切換制御>
制御部は、撮像光学系からの撮像信号に基づいて、第1の照明光学系による前眼部照明と第2の照明光学系による広範囲での前眼部照明との間での被検者に対する照明状態を制御してもよい。これによって、アライメントをスムーズに行うことができる。
【0045】
この場合、例えば、制御部は、第1の撮像光学系からの撮像信号に基づいて、第2の照明光学系による広範囲照明を制限してもよい。この場合、制御部は、第1の撮像光学系からの撮像信号に基づいて広範囲照明を制限するか否かを判定し、判定結果に応じて広範囲照明を制限してもよい。
【0046】
例えば、制御部は、第1の撮像光学系からの撮像信号に基づく眼に対するアライメント検出結果に基づいて、広範囲照明を制限してもよい。アライメント検出結果としては、例えば、制御部は、第1の撮像光学系からの撮像信号に基づいて、指標検出とは異なる解析処理により被検眼が検出されているか否かを判定し、被検眼が検出されていると判定された場合、広範囲照明を制限してもよい。指標検出とは異なる解析処理としては、例えば、被検眼の特徴部位(例えば、瞳孔、虹彩、強膜、血管等)を検出処理であってもよい。また、制御部は、第1の撮像光学系からの撮像信号に基づいて、眼からのアライメント指標が検出されているか否かを判定し、アライメント指標が検出されていると判定された場合、第2照明光学系を制限してもよい。なお、第1の撮像光学系からの撮像信号において、照明光学系又は指標投影光学系による角膜反射、又は眼の特徴部位等によって、眼が検出されているかどうかが判定されればよく、上記手法に限定されない。
【0047】
アライメント検出結果としては、これに限定されず、第1の撮像光学系を用いて検出されるアライメントずれが許容範囲を満たした場合、広範囲照明を制限してもよい。この場合、許容範囲は、検眼開始のトリガが発せられる許容範囲よりも緩和された条件であってもよい。これにより、検眼開始に向けた精密なアライメントの際、広範囲照明が制限され、被検眼に対するアライメントを精度よく行うことができる。
【0048】
上記のように、アライメント検出結果に基づいて広範囲照明を制限することによって、第1の撮像光学系を用いたアライメント検出結果に基づく自動アライメントをスムーズに行うことができる。例えば、瞳孔又はアライメント指標を用いて被検眼に対する検眼部のアライメント状態を検出する場合、瞳孔又はアライメント指標の検出に連動して広範囲照明が制限されることで、以降のアライメント検出を、ノイズ光の影響が軽減された状態で行うことができる。よって、自動アライメントをスムーズに行うことができる。
【0049】
制御部は、第1の撮像光学系からの撮像信号に基づいて広範囲照明を制限するか前眼部照明を制限するかを判定し、判定結果に応じた照明を制限するようにしてもよい。例えば、制御部は、第1の撮像光学系からの撮像信号において、被検眼が検出された場合、広範囲照明を制限し、被検眼が検出されない場合、前眼部照明を制限するようにしてもよい。これによって、各アライメントにおうじた照明制限をスムーズに行うことができる。
【0050】
なお、上記説明においては、第1の撮像光学系からの撮像信号に基づいて顔照明を制限したが、これに限定されず、第2の撮像光学系からの撮像信号に基づいて広範囲照明を制限してもよい。例えば、第1の撮像光学系と第2の撮像光学系との間の光軸間距離は予め既知であるので、制御部は、第2の撮像光学系によって検出される被検眼と検眼部とのアライメントずれに対し光軸間距離分オフセットを掛けることによって、第1の撮像光学系と検眼部との位置関係を検出可能である。そこで、制御部は、第2の撮像光学系によって検出される第1の撮像光学系と検眼部との位置関係において、アライメントずれが許容範囲内に達したとき、第1の撮像光学系によって眼が検出されていると判断して広範囲照明を制限してもよい。
【0051】
なお、制御部は、アライメント制御に用いる撮像光学系を、第1の撮像光学系と第2の撮像光学系との間で切り換える際に、第1の照明光学系による前眼部照明と第2の照明光学系による広範囲照明とを切り換えるようにしてもよい。これによって、各アライメントをスムーズに行うことができる。なお、アライメント制御に用いる撮像光学系が、第1の撮像光学系と第2の撮像光学系の一方に設定された場合においても、他方の撮像光学系がバックグラウンドで作動していてもよい。
【0052】
なお、上記説明においては、撮像光学系からの撮像信号に基づいて照明を制限する例を示したが、これに限定されず、制御部は、検者によって操作される操作部からの操作信号に基づいて照明を制限してもよい。
【0053】
<変容形態>
なお、上記第1実施形態においては、第1のアライメントと第2のアライメントにおいて照明状態を切り換える場合、第1の照明光学系による前眼部照明と第2の照明光学系による広範囲照明との間で照明状態を交互に切り換えるようにしてもよい。この場合、制御部は、広範囲照明時に第2の撮像光学系によって取得された撮像信号に基づいて被検眼に対するアライメント状態を検出してもよい。また、制御部は、前眼部照明時に撮像光学系によって取得された撮像信号に基づいて被検眼に対するアライメント状態を検出してもよい。この場合、アライメントの反応速度は若干減少されるが、他方の照明による影響が軽減され、良好なアライメントを行うことができる。
【0054】
なお、制御部は、第2のアライメントにおいては、第2の照明光学系による常時照明を行い、第1のアライメントにおいては、第2の照明光学系による広範囲照明と第1の照明光学系による前眼部照明との交互に行うようにしてもよい。
【0055】
なお、単一の照明光学系が前眼部照明と顔照明を行う場合においても、本実施形態の適用は可能である。例えば、第2の照明光学系が、第1の照明光学系を兼用してもよい。
【0056】
この場合、制御部は、前眼部照明と広範囲照明との間での前眼部に対する照明状態を変更してもよい。例えば、制御部は、第1のアライメントにおいて、第2の照明光学系による照明状態を、第2のアライメントを行う際に対して変更させてもよい。これによって、例えば、第2の照明光学系が第1の照明光学系を兼用する場合においても、第1のアライメントに適した照明を行うことができる。
【0057】
なお、第1のアライメントを行う際、照明光の光量不足が生じる構造の場合、制御部は、第2の照明光学系による照明光量を顔アライメントを行う際に対して増加させるようにしてもよい。一方、なお、第1のアライメントを行う際、照明光の光量多過が生じる構造の場合、制御部は、第2の照明光学系による照明光量を第1のアライメントを行う際に対して減少させるようにしてもよい。なお、照明状態を変更させる場合、例えば、光源からの光の増減であってもよいし、複数の光源が用いられる場合、照明に利用する光源を選択するような構成であってもよい。
【0058】
なお、単一の撮像光学系が前眼部撮像と顔撮像を行う場合においても、本実施形態の適用は可能である。例えば、被検眼の両眼を含む画像を撮像可能な第2の撮像光学系が配置され、制御部は、第2の撮像光学系からの撮像信号に基づいてラフな自動アライメントとシビアな自動アライメントを行うようにしてもよい。
【0059】
この場合において、制御部は、第1の照明光学系及び第2の照明光学系による照明状態を切り換えるようにしてもよい。例えば、制御部は、ラフな自動アライメント(検眼部と眼との距離が離れている場合)においては、第2の照明光学系を用いた広範囲照明を行ってもよい。また、制御部は、シビアな自動アライメント(検眼部と眼との距離が近い場合)においては、第1の照明光学系を用いた前眼部照明を行ってもよい。
<第2実施形態>
以下、第2実施形態の眼科装置について説明する。第2実施形態の眼科装置は、例えば、検眼部(例えば、検眼部2)と、駆動部(例えば、駆動部4)と、顔撮影部(例えば、顔撮影部90)を主に備える。検眼部は、例えば、検眼光学系を備え、被検眼を検査する。駆動部は、被検眼に対して検眼部を相対移動させる。顔撮影部は、被検者の顔を撮影する。顔撮影部は、例えば、被検者の左右両眼を撮影してもよい。顔撮影部の撮影光軸は、検査光学系の検査光軸よりも左右のいずれかにずれた位置に配置される。
【0060】
これによって、被検眼を検査するために検眼部が左右のいずれかに移動した場合であっても、顔撮影部を被検者の顔の中央付近に配置することができる。これによって、顔撮影部は被検者の両眼を撮影しやすい。被検眼の両眼を含む顔を撮影することによって、例えば、片眼を測定した後にもう一方の眼に移動する場合に、顔画像から得られる眼の情報を利用することができる。また、例えば、一方の眼の付近に検眼部が配置された場合であっても、顔画像を利用することで、他方の眼への移動をスムーズに行うことができる。
【0061】
なお、顔撮影手段は、検眼部が予め設定された所定位置に移動された場合に、被検者の左眼と右眼との間に位置するように設けられてもよい。所定位置は、初期位置であってもよい。所定位置は、例えば、左右のいずれかの眼を速く測定するために、機械中心位置よりも左右のいずれかにずれた位置に設定される。機械中心位置は、例えば、駆動部の左右方向の駆動範囲の中心位置であってもよいし、装置本体(例えば、基台、顔支持部など)の左右対称軸の位置であってもよい。検眼部が所定位置に移動された場合に、例えば顔撮影部は、装置本体(例えば、基台)の機械中心と左右方向の位置が同じになるように配置されてもよい。これによって、顔撮影部は、検眼部2が所定位置に配置された場合に被検者の両眼を撮影できる。なお、左右方向は、例えば、被検者の眼幅方向である。
【0062】
なお、顔撮影部は、片眼瞳孔間距離(瞳孔間距離の半分)だけ検査光軸よりも左右のいずれかにずれた位置に配置されてもよい。初期位置は、例えば、アライメント時間の短縮のために、装置の機械中心に対して片眼瞳孔間距離だけずれた位置に設定される場合がある。このような場合、検査光軸が機械中心に対して片眼瞳孔間距離だけ左右にずれた位置に配置されたときに、顔撮影部が左右方向において機械中心の位置に配置されるように、顔撮影部は検査光軸に対して左右方向にずれた位置に配置されてもよい。この場合、瞳孔間距離としては、所定の瞳孔間距離が用いられてもよく、例えば、人眼の平均的な瞳孔間距離(一般的には64mm)が用いられてもよいが、もちろんこれに限定されない。
【0063】
なお、顔撮影部は、撮影光軸が検査光軸と平行になるように設けられてもよい。これによって、検眼部が初期位置に配置され、顔撮影部が被検者の顔の正面に位置する場合に、被検眼の両眼を撮影し易い。
【0064】
なお、本装置は制御部(例えば、制御部70)を備えてもよい。制御部は、例えば、顔撮影部によって撮影された顔画像に基づいて被検眼の位置座標を検出してもよい。このとき、制御部は、撮影レンズ(例えば、撮像レンズ92)等の影響で歪んだままの画像から被検眼の位置を検出してもよい。そして、制御部は、顔画像の歪みに応じて位置座標を補正してもよい。このように、歪んだ顔画像から被検眼の位置座標を検出したあとで、その位置座標を画像の歪みに応じて補正することによって、顔画像全体の歪みを補正する場合に比べて顔画像からスムーズに被検眼の位置座標を取得できる。
【0065】
なお、制御部は、例えば、駆動部を制御することによって検眼部を初期位置に移動させてもよい。そして、制御部は、顔撮影部を制御することによって検眼部が初期位置にある状態において左右の両眼を含む顔を撮影させてもよい。さらに、例えば、制御部は、顔撮影部によって撮影された顔画像に基づいて駆動部を制御し、被検眼に対して検眼手段を相対移動させてもよい。
【0066】
また、制御部は、例えば顔画像から両眼を検出し、その位置座標を求めてもよい。両眼の位置座標を取得した場合、制御部70は、測定対象眼を左右で切り換える際に両眼の位置座標に基づいて、粗アライメントを行ってもよい。このように、検眼部を左右のいずれかに移動させて最初に測定する眼に対して速やかにアライメントできる状態で、被検眼の両眼を撮影できる。これによって、最初に測定された最初に測定する眼だけでなく、次に測定する眼に対しての位置情報を取得でき、左右眼の切り換えをスムーズに行える。
【0067】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について説明する。第3実施形態の眼科装置は、例えば、検眼部(例えば、検眼部2)と、前眼部撮影部(例えば、前眼部撮影光学系60)と、指標投光部(例えば、指標投影光学系50)と、駆動部(例えば、駆動部4)と、制御部(例えば、制御部70)を主に備える。検眼部は、例えば、被検眼を検査する。前眼部撮影部は、例えば、被検眼の前眼部を撮影する。指標投光部は、例えば、被検眼と検眼部とのアライメント状態を検出するための指標を被検眼に投光する。駆動部は、被検眼に対して検眼部を相対移動させる。制御部は、例えば、駆動部を制御する。
【0068】
制御部は、例えば、指標検出処理と、指標検出処理とは異なる画像解析処理を前眼部画像に対して並行して行う。この場合、制御部70は、指標検出処理と画像解析処理の結果に基づいて、駆動部を制御する。これによって、より確実に被検眼と検眼部の位置合わせを行える。
【0069】
指標検出処理は、例えば、指標投光部によって被検眼の前眼部に投光された指標を検出する処理である。指標検出処理とは異なる画像解析処理による検出手法としては、例えば、前眼部画像から被検眼の特徴部位を検出してもよい。被検眼の特徴部位としては、例えば、瞳孔、虹彩、強膜の少なくともいずれかであってもよい。指標検出処理とは異なる画像解析処理による検出手法としては、例えば、指標検出とは異なる手法によって、前眼部画像の少なくとも一部に基づいてフォーカス評価値を検出してもよい。
【0070】
なお、指標検出を行う検出範囲よりも指標検出処理とは異なる画像解析処理による被検眼の検出範囲が広く設定されてもよい。例えば、指標検出に比べ、瞳孔等の特徴部位を検出する方が、画像のボケまたはケラレがあっても検出できる可能性が高く、検出範囲が広い。
【0071】
なお、制御部は、指標を検出できた場合、指標の検出結果に基づいて被検眼と検眼部とのアライメントを行ってもよい。また、指標を検出できず、画像解析処理によって被検眼を検出できた場合、画像解析処理による検出結果に基づいて被検眼と検眼手段との上下左右方向のアライメントを行ってもよい。なお、指標を検出できた場合とは、瞳孔を検出できずに指標を検出できた場合、指標及び瞳孔を検出できた場合のいずれかであってもよい。
【0072】
なお、画像解析処理としてフォーカス解析処理を行ってもよい。フォーカス解析処理は、例えば、前眼部画像を解析しフォーカス状態を評価するための評価値を得る処理である。この場合、制御部は、指標の検出結果またはフォーカス解析処理の解析結果に基づいて駆動部を制御してもよい。
【0073】
評価値としては、例えば、合焦位置に対する距離に応じて変化する評価値であってもよい。この場合、評価値としては、合焦位置に近づくほど高い値を示す評価値が用いられてもよい。また、評価値としては、合焦位置に近づくほど低い値を示す評価値が用いられてもよい。この場合、画像処理解析においては、合焦位置に対する距離に応じて変化する特性を持つ画像特徴量(例えば、画像の鮮明度)を取得してもよい。取得された画像特徴量に応じて駆動部が制御されてもよい。
【0074】
なお、制御部は、検眼部をZ方向に前進または後退させながら指標検出処理およびフォーカス解析処理を並行して行うZアライメントを行ってもよい。そして、制御部70は、指標が検出されず、フォーカス評価値が合焦位置に対応する評価値に対して所定量より大きく変化した場合、進行方向を逆にして再度Zアライメントを繰り返してもよい。これによって、指標が検出されるであう位置を通り過ぎた場合に、再度指標検出を試みることができる。
【0075】
なお、制御部は、上下左右方向のアライメントを行った後に、前後方向のアライメントを行ってもよい。
【0076】
なお、制御部は、駆動部によって検眼部を被検者方向へ前進させながら指標検出処理とフォーカス解析処理を行ってもよい。これによって、検眼部を合焦位置までスムーズに移動できる。
【0077】
なお、制御部70は、前眼部画像全体において評価値を計算してもよいし、瞳孔付近の領域において評価値を計算してもよい。このとき、制御部70は、前眼部画像から被検眼の瞳孔を検出してもよい。
【0078】
例えば、制御部は、指標検出処理において指標が検出された場合、自動アライメントを継続してもよい。制御部は、指標が検出されず、画像解析処理において被検眼が検出された場合、画像解析処理による検出結果に基づいて合焦位置に向けて自動アライメントを行った後、自動アライメントを停止してもよい。
【0079】
例えば、制御部は、指標検出処理において指標が検出された場合、自動アライメント完了後にオートショットを実行してもよい。制御部は、指標が検出されず、画像解析処理において被検眼が検出された場合、画像解析処理の検出結果に基づく自動アライメント完了後、オートショットを実行せずに、検者からの操作信号を待機してもよい。
【0080】
<実施例>
本開示に係る眼科装置を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、眼科装置として眼屈折力測定装置を例に説明するが、角膜曲率測定装置、角膜形状測定装置、眼圧測定装置、眼軸長測定装置、眼底カメラ、OCT(optical coherence tomography)、SLO(Scanning Laser Ophthalmoscope)等の他の眼科装置にも適用可能である。
【0081】
本実施例の眼科装置は、例えば、被検眼を検査する。例えば、本実施例の眼科装置は、片眼毎に検査を行ってもよいし、両眼同時に(両眼視で)検査を行う装置であってもよい。眼科装置は、例えば、検眼部と、撮影部と、駆動部と、制御部と、を主に備える。
【0082】
<外観>
図1に基づいて、眼科装置の外観を説明する。
図1に示すように、本実施例の眼科装置1は、検眼部2と、顔撮影部90と、駆動部4と、を主に備える。検眼部2は、被検眼を検査する。検眼部2は、例えば、被検眼の眼屈折力、角膜曲率、眼圧等を測定する光学系を備えてもよい。また、検眼部2は、被検眼の前眼部、眼底等を撮影するための光学系等を備えてもよい。本実施例では、屈折力を測定する検眼部2を例に説明する。顔撮影部90は、例えば、被検眼の顔を撮影する。顔撮影部90は、例えば、左右の被検眼のうち少なくとも一方を含む顔を撮影する。駆動部4は、例えば、検眼部2および顔撮影部90を基台5に対して上下左右前後方向(3次元方向)に移動させる。
【0083】
さらに、本実施例の眼科装置1は、例えば、筐体6、表示部7、操作部8、顔支持部9等を備えてもよい。例えば、筐体6は、検眼部2、顔撮影部90、駆動部4等を収納する。表示部7は、例えば、被検眼の観察画像および測定結果等を表示させる。表示部7は、例えば、装置1と一体的に設けられてもよいし、装置とは別に設けられてもよい。眼科装置1は、操作部8を備えてもよい。操作部8は、装置1の各種設定、測定開始時の操作に用いられる。操作部8には、検者による各種操作指示が入力される。例えば、操作部8は、タッチパネル、ジョイスティック、マウス、キーボード、トラックボール、ボタン等の各種ヒューマンインターフェイスであってもよい。顔支持部9は、例えば、額当て10と顎台11を備えてもよい。顎台11は、顎台駆動部12の駆動によって上下方向に移動されてもよい。
【0084】
<制御系>
図2に示すように、本装置1は制御部70を備える。制御部70は、本装置1の各種制御を司る。制御部70は、例えば、一般的なCPU(Central Processing Unit)71、ROM72、RAM73等を備える。例えば、ROM72には、眼科装置を制御するための眼科装置制御プログラム、初期値等が記憶されている。例えば、RAMは、各種情報を一時的に記憶する。制御部70は、検眼部2、顔撮影部90、駆動部4、表示部7、操作部8、顎台駆動部12、記憶部(例えば、不揮発性メモリ)74等と接続されている。記憶部74は、例えば、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、着脱可能なUSBフラッシュメモリ等を記憶部74として使用することができる。
【0085】
<検眼部>
検眼部2は、被検眼の測定,検査,撮影などを行う。検眼部2は、例えば、被検眼の屈折力を測定する測定光学系を備えてもよい。例えば、
図3に示すように、検眼部2は、測定光学系20と、固視標呈示光学系40と、指標投影光学系50と、観察光学系(撮像光学系)60と、を備えてもよい。
【0086】
測定光学系20は、投影光学系(投光光学系)20aと、受光光学系20bと、を有してもよい。投影光学系20aは、被検眼の瞳孔を介して眼底Efに光束を投影する。また、受光光学系20bは、瞳孔周辺部を介して眼底Efからの反射光束(眼底反射光)をリング状に取り出し、主に屈折力の測定に用いるリング状の眼底反射像を撮像してもよい。
【0087】
例えば、投影光学系20aは、測定光源21と、リレーレンズ22と、ホールミラー23と、対物レンズ24と、を光軸L1上に有している。光源21は、リレーレンズ22から対物レンズ24、および、瞳孔中心部を介して眼底Efにスポット状の光源像を投影する。光源21は、移動機構33によって光軸L1方向に移動される。ホールミラー23には、リレーレンズ22を介した光源21からの光束を通過させる開口が設けられている。ホールミラー23は、被検眼の瞳孔と光学的に共役な位置に配置されている。
【0088】
例えば、受光光学系20bは、ホールミラー23と、対物レンズ24と、を投影光学系20aと共用する。また、受光光学系20bは、リレーレンズ26と、全反射ミラー27と、を有している。更に、受光光学系20bは、受光絞り28と、コリメータレンズ29と、リングレンズ30と、撮像素子32と、をホールミラー23の反射方向の光軸L2上に有している。撮像素子32には、エリアCCD等の二次元受光素子を用いることができる。受光絞り28、コリメータレンズ29、リングレンズ30、及び撮像素子32は、移動機構33によって、投影光学系20aの測定光源21と一体的に光軸L2方向に移動される。移動機構33によって光源21が眼底Efと光学的に共役な位置に配置される場合、受光絞り28及び撮像素子32も、眼底Efと光学的に共役な位置に配置される。
【0089】
リングレンズ30は、対物レンズ24からコリメータレンズ29を介して導かれる眼底反射光を、リング状に整形するための光学素子である。リングレンズ30は、リング状のレンズ部と、遮光部と、を有している。また、受光絞り28及び撮像素子32が、眼底Efと光学的に共役な位置に配置される場合、リングレンズ30は、被検眼の瞳孔と光学的に共役な位置に配置される。撮像素子32では、リングレンズ30を介したリング状の眼底反射光(以下、リング像という)が受光される。撮像素子32は、受光したリング像の画像情報を、CPU71に出力する。その結果、CPU71では、表示部7でのリング像の表示、およびリング像に基づく屈折力の算出等が行われる。
【0090】
また、
図3に示すように、本実施例では、対物レンズ24と被検眼との間に、ダイクロイックミラー39が配置されている。ダイクロイックミラー39は、光源21から出射された光、および、光源21からの光に応じた眼底反射光を透過する。また、ダイクロイックミラー39は、後述の固視標呈示光学系40からの光束を被検眼に導く。更に、ダイクロイックミラー39は、後述の指標投影光学系50からの光の前眼部反射光を反射して、その前眼部反射光を観察光学系60に導く。
【0091】
図3に示すように、被検眼の前方には、指標投影光学系50が配置されてもよい。指標投影光学系50は、主に、被検眼に対する光学系の位置合わせ(アライメント)に用いられる指標を前眼部に投影する。ここで、指標投影光学系50は、眼Eの前眼部を照明する前眼部照明としても用いられてもよい。
【0092】
例えば、指標投影光学系50は、リング指標投影光学系51と、指標投影光学系52と、を備えてもよい。リング指標投影光学系51は、被検者眼Eの角膜に拡散光を投影し、リング指標(いわゆるマイヤーリング)を投影する。リング指標投影光学系51は、本実施例の眼科装置1では、被検者眼Eの前眼部を照明する前眼部照明としても用いられる。指標投影光学系52は、被検眼の角膜に平行光を投影し、無限遠指標を投影する。
【0093】
視標呈示光学系40は、被検眼を固視させるための視標呈示光学系であってもよい。視標呈示光学系40は、例えば、光源41、固視標42を少なくとも備える。
図3では、光源41、固視標42、リレーレンズ43は、反射ミラー46の反射方向の光軸L4上に設けられている。固視標42は、他覚屈折力測定時に被検眼を固視させるために使用される。例えば、光源41によって固視標42が照明されることによって、被検眼に呈示される。
【0094】
光源41及び固視標42は、駆動機構48によって光軸L4の方向に一体的に移動される。光源41及び固視標42の移動によって、固視標の呈示位置(呈示距離)を変更してもよい。これによって、被検眼に雲霧をかけて屈折力測定を行うことができる。
【0095】
前眼撮影光学系60は、被検眼の前眼部像を撮像するために設けられてもよい。例えば、前眼撮影光学系60は、撮像レンズ61と、撮像素子62とを少なくとも備える。
図3では、撮像レンズ61と、撮像素子62が、ハーフミラー63の反射方向の光軸L3上に設けられている。撮像素子62は、被検眼の前眼部と光学的に共役な位置に配置される。撮像素子62は、リング指標投影光学系61によって照明される前眼部を撮像する。撮像素子62からの出力は、制御部70に入力される。その結果、撮像素子62によって撮像される被検眼の前眼部画像Iaが、表示部7に表示される(
図2参照)。また、撮像素子62では、指標投影光学系50によって被検眼の角膜に形成されるアライメント指標像(本実施例では、リング指標および無限遠指標)が撮像される。その結果、制御部70は、撮像素子62の撮像結果に基づいてアライメント指標像を検出できる。また、制御部70は、アライメント状態の適否を、アライメント指標像が検出される位置に基づいて判定できる。
【0096】
<顔撮影部>
顔撮影部90は、例えば、左右の被検眼のうち少なくとも一方を含む顔を撮影するための光学系を備えてもよい。例えば、
図3に示すように、本実施例の顔撮影部90は、例えば、撮像素子91と、撮像レンズ92を主に備える。
【0097】
顔撮影部90は、例えば、検眼部2が初期位置にある場合に被検眼の両眼を撮影できる位置に設けられる。本実施例において、検眼部2の初期位置は、右眼を検査し易いように検眼部2の検査光軸に対して右側にずれた位置に設定される(
図4参照)。したがって、顔撮影部90は、検眼部2が右側にずれた初期位置にある状態で、被検眼の両眼を撮影できる位置に設けられる。例えば、顔撮影部90は、検眼部2が初期位置にある状態で機械中心Mに配置される。初期位置は、例えば、瞳孔間距離の半分、つまり片眼瞳孔間距離に基づいて設定される場合、顔撮影部90は、装置本体の機械中心Mに対して片眼瞳孔間距離だけ左右にずれた位置に配置されてもよい。なお、片眼瞳孔間距離の平均値はおよそ32mmである。
【0098】
また、顔撮影部90は、種々の装置の光学系に配慮して配置されてもよい。装置によっては、中央の検眼窓2aの左右に光源・レンズ・受光素子等の光学素子が設けられる場合がある。また、検眼窓2aの上下において光学素子が設けられる場合がある。また、眼圧測定用の空気噴出ノズルが設けられる場合がある。これらの場合を考慮して顔撮影部90は、検眼窓2aの上下方向と左右方向を避け、斜め方向に取り付けてもよい。本実施例では、斜め左に取り付けられる。このように、顔撮影部90の配置を種々の装置の光学系に配慮してもよい。もちろん、機種によっては検眼窓2aの回りのどの方向に取り付けてもよい。
【0099】
本実施例の顔撮影部90は、駆動部4によって検眼部2とともに移動される。もちろん、顔撮影部90は、例えば、基台5に対して固定され、移動しない構成でもよい。
【0100】
なお、撮像レンズ92は、例えば、広角レンズであってもよい。広角レンズは、例えば、魚眼レンズ、円錐レンズ等である。広角レンズを備えることによって、顔撮影部90は、広い画角で被検者の顔を撮影できる。例えば、
図5に示すように、両眼を確実に撮影できる範囲Dと、想定される検眼部2の前面からの被検眼までの最大距離Lとの関係から次式(1)が導かれる。
【数1】
ここで、検眼部2を最も検者側に引いた場合に確実に両眼を撮影する条件としてD=100mm,L=105mmとすると、式(1)からθ=50.9となる。したがって、顔撮影部90の画角が50°以上である場合、被検者の両眼をより好適に撮影できる。
【0101】
<顔照明光学系>
顔照明光学系80は、被検眼の顔を照明する。顔照明光学系80は、被検者の両眼を含む被検者の顔を照明するために設けられてもよい。顔照明光学系80は、例えば、照明光源81を備える。
図4に示すように、照明光源81a、照明光源81bを備える。照明光源81は、赤外光を発する。なお、顔照明光学系80は、顔撮影部90の光軸の周辺を均一に被検眼の顔を照明できるとよい。本実施例では、検眼窓の左右の位置に照明光源81が設けられている。なお、顔照明光学系80は、顔撮影部90を基準として対称的な位置に設けられてもよい。例えば、顔撮影部90を中心として左右対称な位置に設けられてもよいし、上下対称な位置に設けられてもよい。なお、顔照明光学系80は、アライメント用の指標光源よりも指向性の低い光源が用いられる。
【0102】
<制御方法>
以下、本装置1の制御動作について説明する。本装置1は、例えば、被検眼を検査するために、検眼部2と被検眼とのアライメントを全自動(フルオート)で行う。
【0103】
フルオート測定のフローチャートを
図6に示す。例えば、制御部70は、測定準備を行った後、フルオートアライメントを行い、被検眼と検眼部2との位置合わせを行う。その後、眼の測定を行い、もう一方の眼に検眼部2を移動させて再度フルオートアライメントンを行う。アライメントが完了すると、制御部70は、被検眼の測定を行い、処理を終了する。以下、各ステップについて説明する。
【0104】
{ステップS100:測定準備}
ステップS100において、制御部70は測定準備を行う。測定準備の詳細は後述する。制御部70は、測定準備が完了すると、ステップS200に移行する。
【0105】
{ステップS200:フルオートアライメント(1)}
ステップS200において、制御部70は、左右の一方の被検眼に対するフルオートアライメントを行う。フルオートアライメントの詳細は後述する。
【0106】
{ステップS300:測定(1)}
ステップS300において、制御部70は被検眼の検査を行う。例えば、制御部70は、測定光を被検眼の眼底に照射し、眼底によって反射された測定光の検出結果に基づいて、被検眼の眼屈折力を測定する。
【0107】
{ステップS400:左右眼切換}
ステップS400において、制御部70は測定対象眼を切り換える。例えば、制御部70は、ステップS300において検査が完了した眼からもう一方の眼に検眼部2を移動させる。
【0108】
{ステップS500:フルオートアライメント(2)}
ステップS500において、制御部70は検査が完了していない方の被検眼に対して、ステップS200と同様にフルオートアライメントを行う。
【0109】
{ステップS600:測定(2)}
ステップS600において、制御部70は、もう一方の被検眼の検査を行う。
【0110】
<測定準備から測定まで>
続いて、ステップS100の測定準備からステップS300の測定までの制御について
図7を用いてより詳しく説明する。例えば、制御部70は、顔撮影部90によって撮影される顔画像から被検者の両眼検出を行う。アライメント指標は照射する範囲が狭いため、被検者の両眼を照明することができない。そこで、本実施例では、顔照明光学系80を設ける。また、両眼検出後は、指標もしくは瞳孔検出を行なう。指標もしくは瞳孔が検出できた場合は顎台の位置が適切であるので、測定準備を終了しフルオートアライメント処理に移行する。それ以外の場合は、顎台調整を行う。あご台調整は検者が手動で行っても良いし、先に求めた顔撮影部での眼検出結果を用いて自動で行っても良い。このとき、顔照明は点灯していても瞳孔検出できるため、点灯していても良い。以下、
図7の各ステップについて説明する。
【0111】
{ステップS110:顔画像解析}
ステップS110において、制御部70は、顔照明光学系80による顔の照明を行う。例えば、光源81aおよび光源81bを点灯する。このとき、制御部70は、アライメント光を消灯させてもよい。制御部70は、顔撮影部90からの撮像信号に基づいて、左右眼の少なくともいずれかの被検眼を検出する。
【0112】
{ステップS120:前眼部画像解析}
ステップS120において、制御部70は、前眼撮影光学系60からの撮像信号に基づいて前眼部画像を解析し、被検眼の検出処理を行う。例えば、制御部70は、前眼部画像を解析し、指標または瞳孔の検出処理を行う。このとき、制御部70は、アライメント光を点灯させ、顔照明を消灯してもよい。なお、このとき、制御部70は、顔照明を点灯させていてもよい。
【0113】
{ステップS130:被検眼検出判定}
ステップS130において、制御部70は、ステップS120の検出処理において、前眼撮影光学系60からの撮像信号に基づいて被検眼が検出できたか否かを判定する。制御部70は、被検眼が検出された場合は、ステップS140の顎台調整をスキップして、前眼撮影光学系60による検眼部2の位置調整に移行する。また、被検眼が検出されなかった場合は、ステップS140に移る。
【0114】
{ステップS140:顎台調整}
ステップS140において、制御部70は、例えば、顎台駆動部12を制御し、顎台の高さを調整する。制御部70は、ステップS110の解析結果に基づいて顎台駆動部12を制御し、顎台の高さを調整する。この場合、制御部は、検眼部2の移動可能範囲内に被検眼が配置されるように顎台駆動部12を制御し、顎台の高さを調整してもよい。なお、顎台調整が必要ない場合は、ステップS180に移ってもよい。
【0115】
なお、上記フローによれば、顔撮影部90からの撮像信号に基づく顎台調整において、前眼撮影光学系60からの撮像信号に基づく眼検出を行うことによって、顎台の高さ調整が必ずしも必要ない場合において、少なくとも顎台調整をスキップできるので、被検眼に対するアライメントをスムーズに行うことができる。
【0116】
{ステップS150:第2の顔画像解析}
顎台の高さ調整が完了されると、制御部70は、ステップS150において、制御部70は、顔撮影部90からの撮像信号に基づいて、左右眼の少なくともいずれかの被検眼を検出する。
【0117】
{ステップS160:第2の前眼部画像解析}
ステップS120において、制御部70は、前眼撮影光学系60からの撮像信号に基づいて前眼部画像を解析し、被検眼の検出処理を行う。このとき、制御部70は、アライメント光を点灯させ、顔照明を消灯してもよい。なお、このとき、制御部70は、顔照明を点灯させていてもよい。
【0118】
{ステップS170:第2の被検眼検出判定}
ステップS170において、制御部70は、ステップS160の検出処理において、被検眼が検出できたか否かを判定する。制御部70は、被検眼が検出された場合は、顔撮影部90による検眼部2の位置調整をスキップして、前眼撮影光学系60による検眼部2の位置調整に移行する。また、被検眼が検出されなかった場合は、ステップS180に移る。
【0119】
{ステップS180:顔撮影部による位置調整}
ステップS180において、制御部70は、例えば、顔撮影部90からの撮像信号に基づいて駆動部4を制御し、検眼部2の位置を調整する。制御部70は、顔撮影部90からの撮像信号に基づいて被検眼の位置を検出する。制御部70は、位置検出結果に基づいて駆動部4を制御し、検眼部2の位置を調整する。この場合、制御部は、前眼撮影光学系60による撮影可能範囲内に被検眼が配置されるように駆動部4を制御し、検眼部2の位置を調整してもよい。
【0120】
{ステップS190:前眼撮影光学系60による位置調整}
ステップS190において、制御部は、前眼撮影光学系60からの撮像信号に基づいて駆動部4を制御し、検眼部2の位置を調整する。制御部70は、前眼撮影光学系60からの撮像信号に基づいて被検眼の位置を検出する。制御部70は、位置検出結果に基づいて駆動部4を制御し、検眼部2の位置を調整する。この場合、制御部は、アライメント許容範囲内に被検眼が配置されるように駆動部4を制御し、検眼部2の位置を調整してもよい。
【0121】
なお、上記フローによれば、顔撮影部90からの撮像信号に基づく検眼部の位置調整において、前眼撮影光学系60からの撮像信号に基づく眼検出を行うことによって、顔撮影部90による検眼部2の移動が必ずしも必要ない場合において、当該制御をスキップできるので、被検眼に対するアライメントをスムーズに行うことができる。
【0122】
<指標検出と、指標検出とは異なる被検眼検出の並行処理>
次に、ステップS190における制御の一例を
図8に基づいて説明する。ステップ190において、制御部70は、前眼撮影光学系60からの撮像信号に基づいて、前眼部画像における指標検出と、指標検出とは異なる被検眼検出とを並行して行ってもよい。なお、指標検出とは異なる被検眼検出として、以下の説明では、被検眼の特徴部位を検出することによって被検眼を検出する場合を例として説明する。
【0123】
この場合、制御部70は、指標が検出された場合、検出された指標に基づいて駆動部4を制御して検眼部2を被検眼に対して移動させる。指標が検出できず、被検眼の特徴部位検出された場合、制御部70は、特徴部位の検出結果に基づき駆動部4を制御してXYアライメントを行い、後述するZアライメントを行う。
【0124】
制御部70は、特徴部位を用いたXYアライメント完了後に顔照明を消灯してもよい。これは、顔照明光が輝点となって現れ、指標検出の妨げになることがあるためである。もちろん、これに限定されず、前眼撮影光学系60を用いて検眼部移動に変更された時点で、顔照明を消灯してもよい。また、制御部70は、指標を用いた自動アライメントの実行後、被検眼と検眼部2とのアライメントずれが所定のアライメント範囲に達したとき、顔照明を消灯し、被検眼と検眼部2とのシビアなアライメントを行うようにしてもよい。以下、
図8の各ステップについて説明する。
【0125】
{ステップS220:前眼部画像解析}
ステップS220において、制御部70は、例えば、前眼撮影光学系60によって撮影された前眼部画像から、被検眼の特徴部位および指標の少なくともいずれかを検出する検出処理を行う。
【0126】
{ステップS230:指標検出判定}
ステップS230において、制御部70は、例えば、ステップS220の検出処理において、指標が検出されたか否かを判定する。制御部70は、指標が検出された場合ステップS240に移り、指標が検出されなかった場合、ステップS250の処理に移る。
【0127】
{ステップS240:アライメント}
ステップS240において、制御部70は、例えば、ステップS220の前眼部画像解析において検出された指標の位置情報に基づいて駆動部4の駆動を制御し、検眼部2を移動させる。制御部70は、検眼部2を移動させるとフルオートアライメントを終了する。
【0128】
{ステップS250:特徴部位検出}
ステップS250において、制御部70は、例えば、前眼部画像から特徴部位を検出する。なお、制御部70は、特徴部位が検出できなかった場合、ステップ180に戻ってもよいし、エラー処理等を行ってもよい。
【0129】
{ステップS260:瞳孔アライメント(XY)}
ステップS260において、制御部70は、例えば、ステップS220において検出された特徴部位の位置情報に基づいて駆動部4の駆動を制御し、検眼部2を移動させる。例えば、制御部70は、ステップS220の前眼部画像解析によって検出した特徴部位の基準座標(例えば、瞳孔中心座標)が、画像上の目的の位置になるように検眼部2を移動させる。
【0130】
{ステップS270:Zアライメント}
ステップ270において、制御部70は、例えば、Z方向のアライメントを行う。Zアライメントの詳細については後述する。
【0131】
上記のように、指標検出によるアライメントと並行して、指標検出よりも検出可能範囲の広い被検眼検出によるアライメントを行うことによって検眼部2と被検眼とのアライメントを確実に行うことができる。
【0132】
また、指標検出と、指標検出とは異なる被検眼の特徴部位検出は同時に行うとしたが、粗アライメント移動による観測地点の位置ズレを無視できる程度のタイミングのズレは許容される。例えば、1フレーム毎に指標検出と、特徴部位検出を交互に行っても良い。このような場合、指標検出時と特徴部位検出時でカメラの設定や画像の前処理を変えてもよい。例えば、特徴部位検出時は、所定の特徴部位とそれ以外のコントラストを強くするためにガンマ補正を行ってもよい。
【0133】
なお、上記手法と同様に、制御部70は、顔撮影部90からの撮像信号に基づいて、顔画像における指標検出と、指標検出とは異なる被検眼検出とを並行して行ってもよい。この場合、顔撮影部90からの撮像信号に基づく並行検出と、前眼撮影光学系60からの撮像信号に基づく並行検出のすくなくともいずれかが行われてもよい。
【0134】
次いで、ステップS270のZアライメントについて説明する。本実施例において、制御部70は、指標検出しながらZ方向に進み、指標が検出できたらアライメントを行う。また、制御部70は、例えば、指標検出可能な位置を効率良く探索するために指標検出と並行して前眼部画像の鮮明度を計算する。以下、
図9の各ステップについて説明する。
【0135】
{ステップ271:指標・鮮明度計算・進行方向に進む}
ステップ271において、制御部70は、例えば、駆動部4の駆動を制御し、検眼部2をZ方向に移動させる。初めの段階では、制御部70は、被検眼に近づく方向へ検眼部2を前進させる。制御部70は、検眼部2を前進させつつ、指標検出と鮮明度計算を行う。画像の鮮明度はピントが合う位置で高くなり、逆にピントがボケる位置では低くなる。例えば、制御部70は、Z方向に進む前と後の鮮明度の変化量に基づいて進んだ結果が合焦位置に近づいたか、もしくは遠ざかったかを判定する。鮮明度の変化量はZ方向に動いた後でないと分からないため、スタート位置での進行方向判断には利用できない。そこで、スタート位置で指標が検出できなかった場合も尤もらしい方向に進めるように、スタート位置を前ピン位置(合焦位置よりも手前の位置)にしてもよい。
【0136】
なお、指標検出と鮮明度計算は同時に行ってもよいし、フォーカス方向への検眼部2の移動による観測地点の位置ズレを無視できる程度であれば異なるタイミングで行ってもよい。例えば、制御部70は、1フレーム毎に指標検出と鮮明度計算を交互に行ってもよい。
【0137】
{ステップS272:指標検出判定}
ステップS272において、制御部70は、検眼部2を前進させる途中で前眼部画像解析によってアライメント用の指標が検出されたか否か判定する。制御部70は指標が検出された場合ステップS273に移り、指標が検出されなかった場合ステップS274に移る。
【0138】
{ステップS273:アライメント}
ステップS273において、制御部70は、ステップ271において算出された指標の位置情報に基づいてアライメントを行い、アライメントを終了する。
【0139】
{ステップS274:鮮明度変化量判定}
ステップS274において、制御部70は、ステップ271において算出された鮮明度の変化量が大きいか否かを判定する。例えば、指標が検出できないまま合焦位置を通り過ぎてしまった場合、鮮明度が大きく低下する。制御部70は、鮮明度の変化量が大きい場合ステップS275に移り、鮮明度の変化量が小さい場合はステップS271Sに戻る。
【0140】
{ステップS275:往復判定}
ステップS275において、制御部70は、例えば、前進と後退を繰り返した往復回数が1回以上か否か判定する。制御部70は、往復回数が1回以上であった場合、ステップS276に移り、往復回数が1回未満であった場合、ステップS277に移る。
【0141】
{ステップS276:エラー処理}
ステップS276において、制御部70は、アライメントエラーとしてエラー処理を行う。例えば、制御部70は、前ピンと後ピン(合焦位置よりも奥の位置)との間で鮮明度が最大となるフォーカス位置まで移動させ、表示器や音声再生などでアライメントに失敗したことを検者または被検者に知らせてもよい。またこの場合、制御部70は、アライメントモードをフルオートモードからマニュアルモードに切り換えてもよい。
【0142】
また、制御部70は、エラーとする代わりに、鮮明度が最大となるフォーカス位置で測定を行ってもよい。また、その場合は測定位置が指標アライメントの位置ではないことを、測定結果とともに表示してもよい。
【0143】
{ステップS277:進行方向反転}
ステップS277において、制御部70は、例えば、検眼部2の進行方向を反転する。例えば、制御部70は、鮮明度が大きく低下した場合、進行方向を反対方向にする。この処理によって、適正位置を通り過ぎてしまった場合も早く復帰できる。制御部70は、進行方向を反転させるとステップS271に戻る。
【0144】
以上のように、前眼部画像から指標検出処理と鮮明度計算を並行して行うことによって、指標アライメント可能な位置までスムーズに検眼部2を移動させることができる。指標でのアライメントが難しい疾病眼であっても、本実施例のようにアライメント位置に近付けることができる。
【0145】
また、前眼部画像の鮮明度はアライメント指標の形状に依存しない手法であるため、前眼部画像解析によってアライメントを行う種々の装置に利用できる。また、手動で与えられた初期点(例えば、瞳孔位置)に基づいてアライメントを開始する眼科装置にも利用できる。
【0146】
<鮮明度計算>
鮮明度の計算の一例について説明する。本実施例では、鮮明度としてエッジ強度が計算される。例えば、制御部70は、前眼部画像にSobelフィルタ(輪郭検出用の1次元フィルタ)を畳み込み(上下左右からそれぞれ処理し)、エッジ強度を計算する。エッジ強度はある点での明るさの変化具合であり、輪郭が鮮明なほど値が大きくなる。例えば、制御部70は、画像全体のエッジ強度の積分値(画像全体のエッジ強度の合計値)を、フォーカス評価値とする。Sobelフィルタを畳み込んで得られた座標(x,y)のx方向の輝度勾配をG
x(x,y)、y方向の輝度勾配をG
y(x,y)とすると、輝度勾配強度G(x,y)は式(2)で与えられる。
【数2】
そして、このG(x,y)の積分値より、フォーカス評価値Fは式(3)で与えられる。
【数3】
ここで、Wは画像の幅(pixel)、Hは画像の高さ(pixel)である。この例ではSobelフィルタを用いているが、Prewittフィルタなど他のフィルタでも良い。また、画像全体のエッジ強度の積分値を利用しているが、領域はこれに限定しない。例えば、画像中央付近の領域のみ、としても良い。また、エッジ強度の変わりに、画像のコントラストを用いても良い。
【0147】
続いて、鮮明度変化量判定の一例について説明する。実施例において、制御部70は、検出した中で鮮明度が最大となるZ位置と、Z方向に進んだ後の位置での鮮明度の変化量を求める。
図10は、フォーカス位置とフォーカス評価値との関係を示すグラフである。
図10のように、フォーカス評価値は合焦位置でピーク(最大値)を持ち、前ピンや後ピンでは値が低くなる。
【0148】
ここで、フォーカス位置Zのときのフォーカス評価値をF(Z)とする。例えば、制御部70は、次式(4)の条件をみたすとき、鮮明度の変化量が大きいと判定する。
【数4】
【0149】
ただし、αは定数である。αは、経験的に求められる値であってもよい。本実施例では、αは2/3とした。Z
maxは、例えば、検出した中で鮮明度が最大となるZ位置である。位置Zでの鮮明度と最大値に十分差があるときは式(4)の条件を満たす。一方、ピンボケ位置しか観測していないとき、または合焦位置付近しか観測できていないときは式(4)の条件をみたさない。制御部70は、式(4)の条件を満たすと判定された場合は、鮮明度の変化量が大きく、合焦位置から遠ざかったとする。
【0150】
なお、画像から被検眼を検出する方法としては、例えば、赤外撮影による瞳孔検出、輝度値のエッジ検出等の種々の画像処理方法が挙げられる。例えば、被検者の顔を赤外撮影した場合、肌は白く写り、瞳孔は黒く写る。したがって、制御部70は、赤外撮影によって得られた赤外画像から丸くて黒い(輝度の低い)部分を瞳孔として検出してもよい。上記のような方法を用いて、制御部70は、顔画像Ifから被検眼を検出し、その2次元位置情報を取得する。
【0151】
なお、本実施例では、前眼撮影光学系60によって撮影された前眼部画像Iaにおいて、アライメント指標を検出することによって最終的なアライメントを行うものとしてが、これに限らない。例えば、制御部70は、前眼部画像Iaの瞳孔位置、コントラスト、エッジ等から最終的なアライメントを行ってもよい。
【0152】
なお、顔撮影部90は、検眼部2の光軸の高さと同じ高さに設けられてもよい。例えば、顔撮影部90の光軸が検眼部2の光軸の高さと同じであってもよい。例えば、顔撮影部90は、これによって、顔撮影部90の高さを被検眼に対して合わせることで、検眼部2の高さも被検眼に合わせることができる。
【0153】
なお、制御部70は、一番単純な方法として、奥行き位置を一番被検者から遠い位置にして、その後は指標検出できるまで検者方向へゆっくり進めてもよい。