特許第6769128号(P6769128)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6769128シールドトンネルの覆工体および覆工体に用いるセグメント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769128
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】シールドトンネルの覆工体および覆工体に用いるセグメント
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/08 20060101AFI20201005BHJP
【FI】
   E21D11/08
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-122867(P2016-122867)
(22)【出願日】2016年6月21日
(65)【公開番号】特開2017-227009(P2017-227009A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】辻 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松浦 大祐
(72)【発明者】
【氏名】内橋 修一
(72)【発明者】
【氏名】大前 尚裕
(72)【発明者】
【氏名】後藤 義宜
(72)【発明者】
【氏名】今井 哲也
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−060997(JP,A)
【文献】 特開2011−038307(JP,A)
【文献】 特開平07−158079(JP,A)
【文献】 特開昭59−233098(JP,A)
【文献】 米国特許第04662773(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル周方向にRCセグメントを複数接続して形成したセグメントリングを、隣り合う前記RCセグメントの接続部が千鳥配置となるように、トンネル軸方向に複数接続して構築されたシールドトンネルの覆工体であって、
内周面における下部所定領域に、滑り止め構造がトンネル軸方向に連続して前記RCセグメントの凹面に設けられており、
前記セグメントリングが、凹面の全面に前記滑り止め構造を設けたRCセグメント、凹面におけるトンネル周方向端部の一方側に偏って前記滑り止め構造を設けたRCセグメント、凹面におけるトンネル周方向端部の他方側に偏って前記滑り止め構造を設けたRCセグメント、のうちの少なくとも1つを備えることを特徴とするシールドトンネルの覆工体。
【請求項2】
請求項1に記載のシールドトンネルの覆工体において、
トンネル軸方向に連続する前記滑り止め構造が、帯状をなして2列形成されることを特徴とするシールドトンネルの覆工体。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシールドトンネルの覆工体に用いるRCセグメントであって、
前記滑り止め構造が備えられていることを特徴とするRCセグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工法にて地中に構築されるシールドトンネルの覆工体および覆工体に用いるセグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シールド工法にてセグメントを組み立てて構築した覆工体内で、資機材やズリ等を運搬する際には、例えば特許文献1で示すように、孔内に軌道を敷設した上で機関車等の牽引車を利用して走行する作業台車を用いる方法を採用していた。
【0003】
このような牽引車を利用して走行する作業台車を用いる方法では、法定軌道勾配が5%と定められているため、縦断勾配が5%を超えるトンネルではラックピニオンシステムを補助的に用いる。この場合には、走行速度が制限されることから、シールドトンネルの大断面化に伴って搬送物が大量に生じる現場では、作業台車1台当たりの運搬サイクルを増やしたり、牽引車の台数を増やすなどの対策が必要となり不経済であった。
【0004】
このような中、大断面のトンネル施工現場では資機材やズリ等の運搬に、例えば特許文献2で示すような、タイヤ走行式の作業車両を利用した運搬方法が多く採用されている。タイヤ走行式の作業車両は、軌道の敷設や撤去等の作業が不要となるため、経済的であるとともに施工性を向上することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−127386号公報
【特許文献2】特開平8−326305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、タイヤ走行式の作業車両を採用する場合において、覆工体内に水平な走行路を構築することはなく、覆工体の内周面をそのまま作業車両の走行路として使用する。そして、覆工体の内周面は、シールドトンネル坑内の湿気や洗浄水により濡れている場合が多い。このため、特に縦断勾配が大きい区間では、作業車両のタイヤにスリップが生じやすく、制動距離の増加を招くなど安全性に劣る。
【0007】
そこで、路面の摩擦係数を増やすべく、敷板を敷設する、砂を散布する等の対策が講じられている。しかし、敷板は作業車両の通過により移動しやすく、また、破損の恐れが生じる等保守作業が必要となる。一方、砂の散布は、持続性に乏しいだけでなく、坑内の環境悪化を招きやすい。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、シールド工法によるトンネル施工において、資機材やズリ等の搬送に安全かつ効率よくタイヤ走行式の作業車両を採用することの可能な、シールドトンネルの覆工体および覆工体に用いるセグメントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため、本発明のシールドトンネルの覆工体は、トンネル周方向にRCセグメントを複数接続して形成したセグメントリングを、隣り合う前記RCセグメントの接続部が千鳥配置となるように、トンネル軸方向に複数接続して構築されたシールドトンネルの覆工体であって、内周面における下部所定領域に、滑り止め構造がトンネル軸方向に連続して前記RCセグメントの凹面に設けられており、前記セグメントリングが、凹面の全面に前記滑り止め構造を設けたRCセグメント、凹面におけるトンネル周方向端部の一方側に偏って前記滑り止め構造を設けたRCセグメント、凹面におけるトンネル周方向端部の他方側に偏って前記滑り止め構造を設けたRCセグメント、のうちの少なくとも1つを備えることを特徴とする。
【0010】
上述する本発明のシールドトンネルの覆工体によれば、覆工体の内周面における下部所定領域に、滑り止め構造がトンネル軸方向に連続して設けられることから、これらトンネル軸方向に連続する滑り止め構造をタイヤ走行式の作業車両の走行路とすることにより、トンネル坑内の湿気や洗浄水により覆工体の内周面が濡れている場合にも、作業車両のスリップを防止できる。したがって、トンネルが大断面であり、資機材やズリ等の搬送物が大量に生じる現場であっても、効率よく安全に運搬作業を実施でき、施工性を大幅に向上することが可能となる。
【0012】
上述する本発明のシールドトンネルの覆工体によれば、あらかじめ滑り止め構造を設けたRCセグメントを複数種類用意しておくことにより、これらRCセグメントをセグメントリングの一部に使用して覆工体を構築するのみの簡略な作業で、滑り止め構造がトンネル軸方向に連続してなる走行路を覆工体に構築することが可能となる。
【0013】
また、凹面の全面に前記滑り止め構造を設けたRCセグメント、凹面におけるトンネル周方向端部の一方側に偏って前記滑り止め構造を設けたRCセグメント、凹面におけるトンネル周方向端部の他方側に偏って前記滑り止め構造を設けたRCセグメントの3種類を準備しておくことにより、隣り合う前記セグメントの接続部がトンネル軸方向に千鳥配置となるようにしつつ、覆工体の内周面における下部所定領域に容易に滑り止め構造を配置することが可能となる。
【0014】
本発明のシールドトンネルの覆工体は、トンネル軸方向に連続する前記滑り止め構造が、帯状をなして2列形成されることを特徴とする。
【0015】
上述する本発明のシールドトンネルの覆工体によれば、2列形成される帯状の前記滑り止め構造を作業車両のタイヤの位置に対応した配置間隔とすることにより、覆工体の内周面に形成する滑り止め構造の範囲を最小にして確実に作業車両のスリップを抑止できるため、コストを大幅に抑えつつ施工性を大幅に向上することが可能となる。
【0016】
本発明のRCセグメントは、本発明のシールドトンネルの覆工体に用いるRCセグメントであって、前記滑り止め構造が備えられていることを特徴とする。
【0017】
上述する本発明のRCセグメントによれば、工場等により製作されるRCセグメントに滑り止め構造をあらかじめ設けることができるため、現場における従来のような敷板を敷設する、砂を散布する等の対策を省略でき、作業効率を大幅に向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シールド工法によるトンネル施工において、資機材やズリ等の搬送にタイヤ走行式の作業車両を採用する場合にも、安全かつ効率よく運搬作業を実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明における覆工体の概略を示す図である。
図2】本発明におけるセグメントリングを示す図である。
図3】本発明における凹面に滑り止め構造を備えたセグメントを示す図である。
図4】本発明における滑り止め構造の概念を示す図である。
図5】本発明における作業車両の走行路の詳細を示す図である。
図6】本発明における作業車両の走行路の他の事例を示す図である。
図7】本発明における突起の他の事例を示す図である。
図8】本発明における突起に対する作業車両のタイヤの接地状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のシールドトンネルの覆工体は、シールド掘削機により地中を掘進しながらトンネルを構築するシールド工法にて、掘進部の内壁面に沿ってRCセグメントを組み立てることで構築されるものであり、覆工体の内周面におけるトンネル中心線近傍の下部所定領域に、滑り止め構造よりなるタイヤ走行式の作業車両の走行路を設けるものである。本実施の形態では、断面が円形の覆工体を事例とするが、その断面形状は楕円形や矩形のような異径断面等いずれでもでもよく、また覆工体を構築する際の方法もいずれのシールド工法によるものであってもよい。
【0021】
以下に、本発明のシールドトンネルの覆工体および覆工体に用いるセグメントを、図1図8を参照しつつ説明する。
【0022】
シールドトンネルの覆工体1は、図1で示すように、凹面を平滑に形成されたAセグメント2a、凹面に滑り止め構造6が形成された全面突起セグメント2bおよび端部突起セグメント2c、2d、セグメントリング1aを閉合する際に用いるKセグメント2e、そしてKセグメント2eに隣接するBセグメント2f1、2f2、の7種類のRCセグメント2より構成されている。これら7種類のRCセグメント2は、いずれも鉄筋コンクリート造のプレキャスト部材よりなる。
【0023】
セグメントリング1aは、Aセグメント2a、Kセグメント2eおよびBセグメント2fに加えて、全面突起セグメント2b、端部突起セグメント2c、2d、の3種類のうちの少なくともいずれか一つを適宜選択してトンネル周方向に接続することにより構築される。例えば図2では、全面突起セグメント2bを選択し、セグメントリング1aを構築している。そして、セグメントリング1aをトンネル軸方向に複数接続することにより、覆工体1を構築する。なお、セグメントリング1aは、図1で示すように、トンネル軸線と直交するトンネル周方向に隣り合うRCセグメント2の接続部がトンネル軸方向に連続することなく千鳥配置となるように、トンネル軸方向に接続する。
【0024】
このように構築される覆工体1の内周面には、図1および図2で示すように、トンネル中心線近傍の下部所定領域に走行路7が設けられている。走行路7は、トンネル施工に必要な資機材やシールド掘削機による地中掘進により生じたズリ等を搬送するタイヤ走行式の作業車両5の通行エリアとして機能するもので、図1で示すように、全面突起セグメント2b、端部突起セグメント2c、2dの凹面に形成された滑り止め構造6を、トンネル軸方向に連続させることにより形成されている。
【0025】
ここで凹面に滑り止め構造6が形成された全面突起セグメント2bおよび端部突起セグメント2c、2dのうち、全面突起セグメント2bは凹面の全面に、図3(a)で示すような複数の突起群33よりなる滑り止め構造6が設けられており、端部突起セグメント2c、2dは凹面におけるトンネル周方向端部の一方側もしくは他方側に偏って、図3(b)(c)で示すような複数の突起群33よりなる滑り止め構造6が設けられている。これら滑り止め構造6を形成する突起群33は、トンネル周方向に延在する棒形状の突起3を、トンネル軸方向に所定の間隔を設けて配置したものである。
【0026】
これら突起3の高さは図3で示すように、突起3の頂部と全面突起セグメント2b、端部突起セグメント2c、2dの凹面との間に少なくとも排水路4を形成できる高さを有していればよい。また、トンネル軸方向の配置間隔は、図4で示す滑り止め構造6の概念図のように、トンネル軸方向に走行する作業車両5のタイヤ5aが、全面突起セグメント2b、端部突起セグメント2c、2dの凹面と接触してスリップを生じない程度の間隔を有していればよい。
【0027】
つまり、これら突起3は、作業車両5のタイヤ5aと全面突起セグメント2b、端部突起セグメント2c、2dの凹面との間に水膜が生じて摩擦抵抗を減少させるといった、スリップを招きやすい現象が生じない高さ及び配置間隔をもって突起群33を形成していれば、いずれの構成によるものであってもよい。このため、インサートボルトの位置、内部構築工事、および施工工事等を考慮し、突起3の設置位置を適宜調整することが可能である。
【0028】
本実施の形態では、4つの突起群33をトンネル周方向に配置して全面突起セグメント2bの凹面に滑り止め構造6を形成し、また、2つの突起群33をトンネル周方向に配置して端部突起セグメント2c、2d各々の凹面に滑り止め構造6を形成している。なお、これら突起群33の数量は、上記の数に限定されるものではない。
【0029】
また、隣り合う突起群33の配置間隔は、少なくともタイヤ5aの幅より小さい間隔となるよう配置していればよい。これにより、図4で示すように、隣り合う突起群33の間にもトンネル軸方向に延在する排水路4が形成される。したがって、トンネル坑内8に生じた湧水や湿気、洗浄水等による水は、隣り合う突起3の間に位置する排水路4、および隣り合う突起群33の間に位置する排水路4を経由して、効率よく坑口側に排水することができる。
【0030】
ところで、これら全面突起セグメント2b、端部突起セグメント2c、2dを用いてセグメントリング1aを構築する際には、図2で示したような、全面突起セグメント2bにて最下部を組み立てたセグメントリング1aと、端部突起セグメント2c、2dを用いて最下部を組み立てたセグメントリング1aの2種類を構築する。そして、これら2種類のセグメントリング1aを、図5で示すように交互にトンネル軸方向に接続する。こうすると、図1で示すように、トンネル周方向に隣り合うセグメント2の接続部がトンネル軸方向に連続することなく千鳥配置され、かつ滑り止め構造6がトンネル軸方向に連続した走行路7をトンネル中心線近傍の下部所定領域に備えた覆工体1が構築できる。
【0031】
このように、凹面における滑り止め構造6の配置位置が異なる全面突起セグメント2b、端部突起セグメント2c、2dをあらかじめ製作しておくことで、覆工体1を従来と同様の手順で構築するのみの簡略な作業で、トンネル中心線近傍の下部所定領域に作業車両5の走行路7を構築することが可能となる。これにより、トンネル坑内8の湿気や洗浄水により覆工体1の内周面が濡れている場合にも、作業車両5のスリップを防止できる。
【0032】
したがって、トンネルが大断面であり資機材やズリ等の搬送物が大量に生じる現場であっても、タイヤ走行式の作業車両5を採用して効率よく安全に運搬作業を実施でき、施工性を大幅に向上することが可能となる。また、作業車両5のスリップを防止するべく従来実施していたような、敷板を敷設する、砂を散布する等の現場での対策を省略でき、作業効率を大幅に向上することが可能となる。
【0033】
さらに、全面突起セグメント2b、端部突起セグメント2c、2dは、インバート部の一部であるトンネル中心線近傍の下部所定領域を含む位置にのみ使用するため、覆工体1の内周面におけるクラウン部および側壁部に相当する領域に、突起3が露出することはない。したがって、搬送作業が終了した後に走行路7をインバートコンクリートにて埋設するのみで、覆工体1の内装を、Aセグメント2aのような凹面を平滑に仕上げたセグメントのみを用いて構築した覆工体1と、同様の状態に仕上げることが可能となる。
【0034】
また、例えば、施工時の修正を目的にRCセグメント2の割り付け位置をトンネル周方向に±2θ移動させる必要が生じる場合を想定し、あらかじめ全面突起セグメント2b、端部突起セグメント2c、2dの凹面に設ける滑り止め構造6の幅方向の範囲を最小限に規定しておいてもよい。こうすると、RCセグメント2の割り付け位置を円周方向に移動させた場合にも、滑り止め構造6が床板予定高さより上方に位置する状態を回避できる。
【0035】
なお、本実施の形態では、凹面の全面に複数の突起群33を設けた全面突起セグメント2bのみを用いたセメントリング1a、および凹面におけるトンネル周方向端部の一方側および他方側に偏って複数の突起群33を設けた端部突起セグメント2c、2dを用いたセメントリング1a、の2種類を用いて覆工体1を構築しているが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0036】
例えば、全面突起セグメント2bの両側に端部突起セグメント2c、セグメント2dを組み合わせたセグメントリング1aを複数構築し、これをトンネル軸方向に接続させてもよい。一方、トンネル周方向端部の一方側に偏って滑り止め構造6を設けた端部突起セグメント2cのみを用いたセメントリング1aと、他方側に偏って滑り止め構造6を設けた端部突起セグメント2dのみを用いたセメントリング1aとを構築し、これをトンネル軸方向に交互に接続してもよい。
【0037】
つまり、トンネル断面の形状や、セグメントリング1aに用いるRCセグメントの数量、走行路7に必要な幅等に応じて、1つのセメントリング1aあたりに用いる全面突起セグメント2b、端部突起セグメント2c、2dの組み合わせやその数量を適宜調整すればよい。
【0038】
また、本実施の形態では、全面突起セグメント2b、端部突起セグメント2c、2dの凹面に対して、トンネル周方向に突起群3を複数配置し、滑り止め構造6を幅広となるように構築したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、作業車両5のタイヤ5aにおけるタイヤ幅やタイヤ間隔をあらかじめ把握しておき、タイヤ5aの接地予定位置にのみ滑り止め構造6が連続して配置されるよう、全面突起セグメント2b、端部突起セグメント2c、2dの凹面に滑り止め構造6を形成しておく。
【0039】
こうすると、構築後の覆工体1には図6で示すように、トンネル軸方向に連続する滑り止め構造6が、作業車両5のタイヤ間隔と同じ間隔を有して帯状に2列配置されることとなる。したがって、これを作業車両5の走行路7とすればよい。このように、あらかじめタイヤ5aのタイヤ幅やタイヤ間隔を把握しておき、全面突起セグメント2b、端部突起セグメント2c、2dの凹面に設ける滑り止め構造6の幅方向の範囲を最小限に規定しておくと、凹面に設ける突起3の数量を大幅に削減でき、経済的にRCセグメント2を製造することが可能となる。
【0040】
本発明のシールドトンネルの覆工体および覆工体に用いるセグメントは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0041】
例えば、本実施の形態では、突起3をトンネル周方向に延在する棒状体に形成したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、図7(a)で示すような角型突起や図7(b)で示すような丸型突起等、RCセグメント2の本体を断面欠損させることがない凸形状のもので、かつ排水路4を形成できるものあれば、いずれの形状を用いてもよい。なお、突起3の形状が上記の角型突起や丸型突起である場合には、トンネル軸方向だけでなくトンネル周方向にも複数配置し、突起群33を構成するとよい。
【0042】
突起3にこのような角型突起や丸型突起を採用すると、図8で示すようにタイヤ5aの接地面における複数箇所において、隣り合う突起3の間にタイヤ5aが食い込むため、タイヤ5aと走行路7との摩擦抵抗を大幅に上昇させることが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1 覆工体
1a セグメントリング
2 RCセグメント
2a Aセグメント
2b 全面突起セグメント
2c 端部突起セグメント
2d 端部突起セグメント
2e Kセグメント
2f Bセグメント
3 突起
33 突起群
4 排水路
5 作業車両
5a タイヤ
6 滑り止め構造
7 走行路
8 トンネル坑内
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8