特許第6769235号(P6769235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6769235タイヤ成形用ブラダー及びそれを用いたタイヤ成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769235
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】タイヤ成形用ブラダー及びそれを用いたタイヤ成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/26 20060101AFI20201005BHJP
   B29D 30/36 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   B29D30/26
   B29D30/36
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-206797(P2016-206797)
(22)【出願日】2016年10月21日
(65)【公開番号】特開2018-65343(P2018-65343A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 有二
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5141588(US,A)
【文献】 米国特許第5213823(US,A)
【文献】 実開昭58−24330(JP,U)
【文献】 実開昭51−150270(JP,U)
【文献】 特開2011−161767(JP,A)
【文献】 特開昭64−61235(JP,A)
【文献】 特開2014−172347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00− 30/72
B60C 1/00− 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ成形工程において使用されるタイヤ成形用ブラダーにおいて、円筒状をなす膜部と該膜部の両端に形成されたクランプ部とを有するブラダー本体と、該ブラダー本体から独立していて前記クランプ部から外れた位置で前記膜部の外周面上に積層される円筒状のカバー部材とを備え、該カバー部材がグリーンタイヤに対して離型性を有する材料で構成されることを特徴とするタイヤ成形用ブラダー。
【請求項2】
前記ブラダー本体と前記カバー部材とを非接着状態で互いに拘束する拘束部材を備えることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ成形用ブラダー。
【請求項3】
前記拘束部材が一対の面ファスナーであることを特徴とする請求項2に記載のタイヤ成形用ブラダー。
【請求項4】
前記拘束部材が一対の機械的留め具であることを特徴とする請求項2に記載のタイヤ成形用ブラダー。
【請求項5】
前記カバー部材の任意位置での初期内径が前記ブラダー本体の対応位置での初期外径よりも小さく、かつ前記カバー部材の永久歪みが前記ブラダー本体の永久歪みよりも小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ成形用ブラダー。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ成形用ブラダーを用いたタイヤ成形方法であって、前記カバー部材をグリーンタイヤに当接させた状態で前記タイヤ成形用ブラダーを膨張させることで前記グリーンタイヤの形状を整えることを特徴とするタイヤ成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ成形工程において使用されるタイヤ成形用ブラダー及びそれを用いたタイヤ成形方法に関し、更に詳しくは、コストの増大や作業性の低下を伴うことなく、グリーンタイヤからの離型を安定的に実施可能とするタイヤ成形用ブラダー及びそれを用いたタイヤ成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に空気入りタイヤを成形する工程では、インナーライナー層とカーカス層と一対のビードリングを含む円筒状の組立体を成形した後、この組立体に空気を充填してトロイダル形状に膨らませ、ベルト層とトレッドゴム層を含むトレッドリングの内側に組立体を圧着することでグリーンタイヤを成形する。その後、グリーンタイヤを成形機から取り外し、これを加硫工程に移送する。
【0003】
このような空気入りタイヤの成形工程において、組立体に空気を充填して膨らませる際、組立体の内側にゴム製のブラダーを配置し、このブラダー内に空気を充填する方法が採られている。このとき、ブラダーは加硫ゴムにより形成されているため、グリーンタイヤの内面との密着が起こり易く、成形後にグリーンタイヤを取り外すことが困難な場合があり、これがタイヤの生産効率を阻害する要因になっている。また、ブラダーとグリーンタイヤとが密着している影響でグリーンタイヤが成形機からの取り外し時に変形すると、タイヤ内部での剥離が生じるなどタイヤ品質の低下も引き起こすことになる。
【0004】
このような不都合を解消するために、従来からブラダーの外表面に離型剤を塗布することが行われているが、離型剤はグリーンタイヤの内表面にも付着してしまうため、反復的な成形作業における離型性の低下が激しく、それを補うために離型剤を頻繁に塗布する必要がある。また、グリーンタイヤの内表面に付着した離型剤の量が多い場合、それがタイヤの品質を低下させることがある。更に、離型剤が成形機の周辺に飛散した場合、それが作業環境に悪影響を与えることになる。
【0005】
そこで、離型剤を使用する代わりに、シリコーン等の離型層をブラダー外表面に一体的に成形することでブラダーに離形機能を付与することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、一般的に接着性が悪いシリコーン等をゴムと一体的に成形することは非常に難しく、ブラダーそのものの製造プロセスが煩雑になり、ブラダーの製造コストが増大すると共に、その耐久性も不十分になる。
【0006】
また、タイヤ成形用ブラダーそのものをシリコーンゴムで形成することも提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、シリコーンゴムからなるブラダーは強度が必ずしも十分ではないため、ブラダーが早期に破壊してしまうので、問題の根本的な解決には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭51−150270号公報
【特許文献2】実開昭56−41629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、コストの増大や作業性の低下を伴うことなく、グリーンタイヤからの離型を安定的に実施可能とするタイヤ成形用ブラダー及びそれを用いたタイヤ成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明のタイヤ成形用ブラダーは、タイヤ成形工程において使用されるタイヤ成形用ブラダーにおいて、円筒状をなす膜部と該膜部の両端に形成されたクランプ部とを有するブラダー本体と、該ブラダー本体から独立していて前記クランプ部から外れた位置で前記膜部の外周面上に積層される円筒状のカバー部材とを備え、該カバー部材がグリーンタイヤに対して離型性を有する材料で構成されることを特徴とするものである。
【0010】
また、上記目的を達成するための本発明のタイヤ成形方法は、上記タイヤ成形用ブラダーを用いたタイヤ成形方法であって、前記カバー部材をグリーンタイヤに当接させた状態で前記タイヤ成形用ブラダーを膨張させることで前記グリーンタイヤの形状を整えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、タイヤ成形用ブラダーがブラダー本体とカバー部材とを備え、該カバー部材がグリーンタイヤに対して離型性を有する材料で構成されることにより、カバー部材の離型性に基づいてタイヤ成形用ブラダーのグリーンタイヤからの離型を安定的に行うことが可能となる。
【0012】
また、ブラダー本体としては従来のブラダーを使用することが可能であり、ブラダー本体に対してカバー部材を付加すれば良いので、タイヤ成形用ブラダーの製造コストの増大を最小限に抑制することができる。
【0013】
また、カバー部材はブラダー本体のクランプ部から外れた位置で膜部の外周面上に積層される円筒状をなし、それ自体がクランプ部を持たない構造を有しているので、加硫機において従来のブラダーと同様の手順で交換することが可能であり、そのブラダー交換作業が容易である。
【0014】
更に、本発明によれば、ブラダー本体に対してカバー部材が独立しているので、これらブラダー本体とカバー部材の各々を必要周期で交換可能であり、各部材を有効に活用することが可能である。
【0015】
本発明において、ブラダー本体とカバー部材とを非接着状態で互いに拘束する拘束部材を備えることが好ましい。これにより、ブラダー本体とカバー部材との間の一体性を確保し、タイヤ成形工程を円滑に行うことができる。このような拘束部材としては、一対の面ファスナー又は一対の機械的留め具を用いると良い。
【0016】
カバー部材の任意位置での初期内径はブラダー本体の対応位置での初期外径よりも小さく、かつカバー部材の永久歪みがブラダー本体の永久歪みよりも小さいことが好ましい。カバー部材の任意位置での初期内径をブラダー本体の対応位置での初期外径よりも小さくすることにより、ブラダー本体とカバー部材との間の一体性を確保し、タイヤ成形工程を円滑に行うことができる。また、カバー部材の永久歪みをブラダー本体の永久歪みよりも小さくすることにより、ブラダー本体とカバー部材とが収縮を繰り返しても両者間の一体性を確保することができる。上記永久歪みは例えばJIS−K6262に規定された圧縮永久歪みを意味する。
【0017】
上述したタイヤ成形用ブラダーを用いてタイヤを成形する場合、カバー部材をグリーンタイヤに当接させた状態でタイヤ成形用ブラダーを膨張させることでグリーンタイヤの形状を整える。これにより、離型剤を使用しなくても、タイヤ成形用ブラダーのグリーンタイヤからの離型を安定的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明が適用されるタイヤ成形用ブラダーの一例を示す子午線断面図である。
図2】本発明の実施形態からなるタイヤ成形用ブラダーを示す子午線断面図である。
図3】本発明の実施形態からなるタイヤ成形用ブラダーを示す側面図である。
図4】本発明の他の実施形態からなるタイヤ成形用ブラダーを示す子午線断面図である。
図5】本発明の更に他の実施形態からなるタイヤ成形用ブラダーを示す子午線断面図である。
図6】本発明の更に他の実施形態からなるタイヤ成形用ブラダーを展開した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明が適用されるタイヤ成形用ブラダーの一例を示すものである。図1において、ブラダー10はグリーンタイヤGの成形工程において使用されるものである。このブラダー10は円筒状をなし、一対ビード支持部材20,20により支持されたグリーンタイヤGの内側に同軸的に挿入される。そして、ブラダー10をグリーンタイヤGの内側で膨らませることにより、グリーンタイヤGを所望の形状に変形させるように機能する。
【0020】
図2及び図3は本発明の実施形態からなるタイヤ成形用ブラダーを示すものである。図2及び図3に示すように、ブラダー10は、円筒状をなす膜部11Aと該膜部11Aの両端に形成されたクランプ部11Bとを有するブラダー本体11と、該ブラダー本体11から独立していてクランプ部11Bから外れた位置で膜部11Aの外周面上に積層される円筒状のカバー部材12とを備えている。クランプ部11Bは膜部11Aよりも厚く成形されている。ブラダー本体11がブチルゴムを主体とするゴム組成物から構成されているのに対して、カバー部材12はグリーンタイヤG(特に、タイヤインナーライナー層)に対して離型性を有する材料から構成されている。グリーンタイヤGに対して離型性を有する材料として、好ましくはシリコーンゴムが使用される。他の材料として、フッ素ゴム等を挙げることができる。
【0021】
上述したタイヤ成形用ブラダー10を用いてタイヤを成形する場合、一対ビード支持部材20,20により支持されたグリーンタイヤGの内側に円筒状のブラダー10を同軸的に配置し、カバー部材12をグリーンタイヤGに当接させた状態でブラダー10を膨らませることにより、グリーンタイヤGを所望の形状に変形させる。しかる後、ブラダー10を収縮させた状態に戻し、グリーンタイヤGからブラダー10を離型することにより、タイヤ成形工程を完了する。
【0022】
上述のようにタイヤ成形用ブラダー10がブラダー本体11とカバー部材12とを備え、カバー部材12がグリーンタイヤGに対して離型性を有する材料で構成されているので、カバー部材12の離型性に基づいてタイヤ成形用ブラダー10のグリーンタイヤGからの離型を安定的に行うことが可能となる。
【0023】
また、ブラダー本体11としては従来のブラダーを使用することが可能であり、単にブラダー本体11に対してカバー部材12を付加すれば良いので、タイヤ成形用ブラダー10の製造コストの増大を最小限に抑制することができる。つまり、シリコーン等の離型層をブラダー外表面に一体的に成形する場合とは異なって、タイヤ成形用ブラダー10を構成するブラダー本体11とカバー部材12の製造工程は簡素である。
【0024】
また、カバー部材12はブラダー本体11のクランプ部11Bから外れた位置で膜部11Aの外周面上に局所的に積層される円筒状をなし、それ自体がクランプ部を持たない構造を有しているので、ブラダー交換作業が容易である。つまり、上述したタイヤ成形用ブラダー10は従来のブラダー(ブラダー本体11に相当するもの)と同様の手順で交換することが可能である。
【0025】
更に、ブラダー本体11に対してカバー部材12が独立しているので、これらブラダー本体11とカバー部材12の各々を必要周期で交換可能であり、各部材11,12を有効に活用することが可能である。つまり、従来のようにゴム層と離型層とが一体的に成形された多層構造を有するブラダーの場合、ゴム層と離型層のいずれか一方が寿命を迎えた場合、その全体を交換する必要があるが、ブラダー本体11とカバー部材12とを独立させた場合、ブラダー本体11とカバー部材12の各々を寿命限度まで使用することができる。
【0026】
上述した実施形態において、例えば、カバー部材12の任意の位置での初期内径はブラダー本体11のそれに対応する位置での初期外径よりも小さくなるように設定されることが望ましい。例えば、ブラダー10の軸方向中心位置において、カバー部材12の初期内径はブラダー本体11の初期外径よりも小さくなっているのが良い。カバー部材12の任意位置での初期内径をブラダー本体11の対応位置での初期外径よりも小さくすることにより、ブラダー本体11とカバー部材12との間の一体性を確保し、タイヤ成形工程を円滑に行うことができる。つまり、ブラダー本体11とカバー部材12とを互いに固定しなくても、両者間に位置ずれを生じ難いのである。
【0027】
また、カバー部材12の永久歪みがブラダー本体11の永久歪みよりも小さくなるようにブラダー本体11及びカバー部材12の材料が選択されることが望ましい。カバー部材12の永久歪みをブラダー本体11の永久歪みよりも小さくすることにより、ブラダー本体11とカバー部材12とが収縮を繰り返しても両者間の一体性を確保することができる。
【0028】
図4は本発明の他の実施形態からなるタイヤ成形用ブラダーを示すものである。図4において、タイヤ成形用ブラダー10は、ブラダー本体11及びカバー部材12に加えて、ブラダー本体11とカバー部材12とを非接着状態で互いに拘束する拘束部材13を備えている。拘束部材13は、互いに係合可能な一対の面ファスナー13A,13Bで構成されている。これにより、ブラダー本体11とカバー部材12との間の位置ずれを防止し、両者の一体性を確保することができる。また、面ファスナー13A,13Bによる非接着状態での拘束であるため、ブラダー本体11とカバー部材12とを必要に応じて分離することができる。
【0029】
拘束部材13を構成する一対の面ファスナー13A,13Bはタイヤ成形用ブラダー10の任意の箇所に設置することができる。例えば、図4においては、一対の面ファスナー13A,13Bがブラダー本体11の軸方向中央部及び両端部にそれぞれ配置されている。面ファスナー13A,13Bはそれ自体が伸縮性を有することが望ましい。また、面ファスナー13A,13Bはブラダー本体11の周方向に沿って点在するように配置されることが望ましい。特に、ブラダー本体11及びカバー部材12の伸縮を妨げないように、各ファスナー13A,13Bの面積を小さくし、必要な係合力に応じてファスナー13A,13Bの個数を増やし、それらを離散させると良い。例えば、各ファスナー13A,13Bの面積は100mm2以下であると良い。
【0030】
ファスナー13A,13Bはブラダー本体11及びカバー部材12の表面に接着剤を用いて固定することも可能であるが、縫合糸のような縫合部材やステープルのような係止部材を用いて固定することも可能である。また、ファスナー13A,13Bを加硫接着によりブラダー本体11及びカバー部材12の表面に固定することも可能である。
【0031】
ファスナー13A,13Bの構成は特に限定されるものではなく、例えば、シート状の基材と該基材の一方の面に形成された複数本の係合素子とを備えたものを使用することができる。また、各係合素子の形状は特に限定されるものではなく、例えば、フック状やループ状の係合素子を採用することができる。
【0032】
図5は本発明の更に他の実施形態からなるタイヤ成形用ブラダーを示すものである。図5において、タイヤ成形用ブラダー10は、ブラダー本体11及びカバー部材12に加えて、ブラダー本体11とカバー部材12とを非接着状態で互いに拘束する拘束部材14を備えている。拘束部材14は、互いに着脱可能な一対の機械的留め具14A,14Bで構成されている。これにより、ブラダー本体11とカバー部材12との間の位置ずれを防止し、両者の一体性を確保することができる。また、機械的留め具14A,14Bによる非接着状態での拘束であるため、ブラダー本体11とカバー部材12とを必要に応じて分離することができる。
【0033】
拘束部材14を構成する一対の機械的留め具14A,14Bとは、結合と分離を反復的に行うことを許容する機械的な連結構造を有するものを意味する。その代表的なものとして、ホック又はスナップと呼ばれる機械的留め具があり、衣料業界等では、より具体的には、スナップボタン、リングスナップ、リングホック、アメリカンスナップ、アメリカンホック、アイレットホック、バネホック、又は、ジャンパーホックと呼ばれるものである。また、機械的留め具14A,14Bは結合部が小面積(例えば、好ましくは1mm2〜115mm2、更に好ましくは4mm2〜90mm2)である点状の留め具である。
【0034】
機械的留め具14A,14Bはブラダー本体11及びカバー部材12の表面に接着剤を用いて直接的に固定することも可能であるが、ゴムシート等の基材に対して機械的留め具14A,14Bを固定し、その基材を縫合糸のような縫合部材やステープルのような係止部材を用いてブラダー本体11及びカバー部材12の表面に固定することも可能である。また、機械的留め具14A,14Bを備えた基材を加硫接着によりブラダー本体11及びカバー部材12の表面に固定することも可能である。
【0035】
図6は本発明の更に他の実施形態からなるタイヤ成形用ブラダーを示すものである。図6において、タイヤ成形用ブラダー10は、便宜上、その周方向Cが直線に沿うように描写されている。図6に示すように、ブラダー本体11の外表面にはブラダー周方向に延在する複数本の溝15が形成され、カバー部材12の内表面にはブラダー周方向に延在する複数本の突条16が形成されている。そして、ブラダー本体11の外側にカバー部材12を積層した状態において、ブラダー本体11の溝15内にカバー部材12の突条16が嵌合するようになっている。このような構成によれば、ブラダー本体11とカバー部材12との間の位置ずれを防止し、両者の一体性を確保することができる。
【0036】
上述した各実施形態において、カバー部材12の厚さはブラダー軸方向に沿って均一であると良い。また、カバー部材12の厚さは1.5mm以下であると良い。カバー部材12は離型性を担持するものであるので、均一厚さを有する簡単な構成とすれば良い。カバー部材12が厚過ぎると、タイヤ成形用ブラダー10に要求される伸縮特性が低下することになる。一方、ブラダー本体11の膜部11Aの厚さはブラダー軸方向に沿って均一であることが好ましく、例えば、その厚さが2mm〜30mmの範囲にあれば良い。
【0037】
本発明は上述のようにタイヤ内側に挿入されるタイプのタイヤ成形用ブラダーに適用することが好ましいが、例えば、タイヤ製造過程においてカーカス部材をターンナップする際に使用されるブラダーにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 ブラダー
11 ブラダー本体
11A 膜部
11B クランプ部
12 カバー部材
13,14 拘束部材
13A,13B 面ファスナー
14A,14B 機械的留め具
15 溝
16 突条
G グリーンタイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6