(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769249
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】塗布装置、塗膜付ウェブの製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
B05C 3/18 20060101AFI20201005BHJP
B05C 3/12 20060101ALI20201005BHJP
B05C 9/04 20060101ALI20201005BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20201005BHJP
B05D 1/18 20060101ALI20201005BHJP
B05D 1/34 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
B05C3/18
B05C3/12
B05C9/04
B05D7/00 A
B05D1/18
B05D1/34
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-219462(P2016-219462)
(22)【出願日】2016年11月10日
(65)【公開番号】特開2018-75531(P2018-75531A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】民宮 尚美
(72)【発明者】
【氏名】西野 聡
【審査官】
團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−194265(JP,A)
【文献】
特開平10−328596(JP,A)
【文献】
特開平10−034050(JP,A)
【文献】
特開2015−062865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B05C 1/00− 3/20
7/00−21/00
B05C 1/00− 3/20
7/00−21/00
B05D 1/00− 7/26
H01M 2/14− 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行するウェブの両面に同時に塗液を塗布するための塗布装置であって、
塗液を貯留する貯液部を形成する貯液部材と、
前記貯液部材よりもウェブの走行方向下流側でウェブの走行面を挟んで間隙を空けて対向して設けられ、塗膜を所望の厚みに調整する計量部を有し、前記貯液部材とともに貯液部を形成する一対の計量部材と、を有し、
前記計量部材は、ウェブの走行方向上流側から下流側に向かって順に、ウェブの幅方向に延びる上流側の第1の計量面、溝および下流側の第2の計量面で構成され、
前記第1の計量面および前記第2の計量面は、前記ウェブの走行面に略平行な平面であり、
前記第1の計量面と前記ウェブの走行面との間隙は、前記第2の計量面と前記ウェブの走行面との間隙と同じ広さ、またはそれよりも広い、塗布装置。
【請求項2】
請求項1の塗布装置と、前記一対の計量部材の間隙にウェブを導入する手段と、を含む、塗膜付きウェブの製造装置。
【請求項3】
請求項1の塗布装置を用いて、前記一対の計量部材の間隙にウェブを導入し、前記貯液部において、この貯液部に溜めた塗液をウェブの両面に付着させ、前記一対の計量部材の間隙を調整することで前記ウェブの両面に塗膜を形成する、塗膜付きウェブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブの両面に対して同時に塗膜を形成するための塗布装置、その塗布装置を備えた塗膜付きウェブの製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェブの表裏両面に同時に塗膜を形成する両面同時塗布法は、ウェブを挟んで両側にバー、ナイフ、ロール、スリットダイなどを対向させて配置し、ウェブの表裏両面に同時に塗膜を形成する方法であり、従来、表裏両面で同一の膜厚を得るための方法が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1および2では、ウェブを挟んで両側に存在する塗液により生じる圧力を等しくすることで、表裏両面に同一の厚みを有する方法が開示されている。具体的には、ウェブを挟んで両側に配置されたパイプ型ドクターで計量する塗液の量をウェブの表裏で均一にする方法(特許文献1)、ウェブを挟んで両側に配置されたスリットダイから吐出される塗液の量を同量にする方法(特許文献2)が開示されている。
【0004】
特許文献3では、ウェブの表裏両面に塗膜を形成したのち、塗膜を固化させるまでの距離を長くすることで塗液がレベリングする作用を利用して、塗膜の厚みをウェブの表裏両面に均一にする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−337516号公報
【特許文献2】欧州特許第1270133号公報
【特許文献3】特開2011−12266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3には、ウェブを搬送中に生じる搬送シワを抑制しながら塗布をすることでウェブの表裏両面に均一な膜厚を得る方法については何も開示されていない。
【0007】
基材の厚みが薄いウェブでは、その剛性が低いため搬送シワを生じやすく、低張力で搬送することが一般的である。
【0008】
一方で、ウェブの表裏両面に同時に塗液を塗布する両面同時塗布法では、塗布工程で塗液の粘性によりウェブへの抵抗力が生じるため、低張力で搬送させることができない。
【0009】
塗布工程で生じるウェブへの抵抗力は、塗液が受けるせん断力に起因するものであり、せん断力は塗布装置とウェブとで形成される狭い流路において生じる。塗液がせん断力を受けることでウェブがそのせん断力とは逆向きの力を受け、その結果ウェブへの抵抗力になる。
【0010】
そこで、両面同時塗布法において、低張力でウェブを搬送させるためには、せん断力を下げることが考えられる。せん断力は、塗液がせん断を受ける部分の長さ、つまり狭い流路の長さを短くすることで低減できる。
【0011】
しかしながら、せん断力を下げると、同時にウェブを押す力が弱くなる。ウェブを押す力とは、塗液により生じる液圧に、ウェブが液圧を受ける面積を乗じたものである。液圧は、パイプ型ドクターのように(特許文献1)徐々に閉塞する流路や、狭い流路の上流側、狭い流路で生じる。そのため、狭い流路の長さを短くしてせん断力を低減させると、液圧を受ける面積が小さくなるため、ウェブを押す力が低減する。
【0012】
ウェブを押す力は、塗布工程でウェブを挟んで両側からウェブを押すことで、搬送シワを抑制する機能がある。搬送シワとは搬送方向でトタン状に入るシワであるため、塗布工程で搬送シワが発生している場合は、ウェブ幅方向において塗布装置とウェブとの間隙がウェブの表裏で周期的に異なる。その結果、ウェブ幅方向での厚みが不均一になったり、ウェブが塗布装置に接触してスジ状の欠点を生じたりする。
【0013】
特許文献1〜3に開示されている塗布方法では、塗布工程でのウェブへの抵抗力を下げると同時に、塗布工程でのウェブを押す力も減じる構造であるため、塗膜に欠点を生じる問題があり、特に両面同時塗布法において、ウェブへの抵抗力を低減させると同時に、ウェブを押す力を保持することは困難である。
【0014】
そこで本発明は、塗布工程でのウェブへの抵抗力を抑制して搬送張力を低くしつつも、塗布工程での搬送シワを抑制しうるウェブを押す力を保持することで、ウェブの両面に塗布幅方向に均一な膜厚で塗膜を塗布できる塗液の塗布装置を提供する。また、その塗布装置を備えた塗膜付ウェブの製造装置および製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する本発明の塗布装置は、走行するウェブの両面に同時に塗液を塗布するための塗布装置であって、
塗液を貯留する貯液部を形成する貯液部材と、
前記貯液部材よりもウェブの走行方向下流側でウェブの走行面を挟んで間隙を空けて対向して設けられ、塗膜を所望の厚みに調整する計量部を有し、前記貯液部材とともに貯液部を形成する一対の計量部材と、を有し、
前記計量部材は、ウェブの走行方向上流側から下流側に向かって順に、ウェブの幅方向に延びる上流側の第1計量面、溝および下流側の第2計量面で構成され、
前記第1計量面および前記第2計量面は、ウェブの走行面に略平行な平面であり、
前記第1計量面と前記ウェブの走行面との間隙は、前記第2計量面と前記ウェブの走行面との間隙と同じ広さ、またはそれよりも広くなっている。
【0016】
また、本発明の塗膜付きウェブの製造装置は、本発明の塗布装置と、前記一対の計量部材の間隙にウェブを導入するウェブ導入手段と、を備えている。
【0017】
また、本発明の塗膜付きウェブの製造方法は、本発明の塗布装置を用い、前記一対の計量部材の間隙にウェブを導入し、前記貯液部において、この貯液部に溜めた塗液を前記ウェブの両面に付着させ、前記一対の計量部材の間隙を調整することで前記ウェブの両面に塗膜を形成する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の塗布装置を用いれば、塗布工程で生じるウェブへの抵抗力を減じるとともに、ウェブを押す力も保持することができる。その結果、塗布工程で過剰な張力を付与せずに、塗布工程でウェブに生じる搬送シワを抑制することができるので、塗布幅方向に均一な膜厚の塗膜をウェブの両面に対して同時に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態による塗布装置の概略断面図である。
【
図3】本発明の別の実施形態による塗布装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の望ましい実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は図面に示された形態に限定されるものではなく、発明の目的を達成できて、且つ発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更は有り得る。
【0021】
図1は本発明の塗液2の塗布装置100の概略断面図である。この塗布装置100はウェブ1の両面に塗液2を塗布し塗膜3を形成する装置である。この塗布装置100において、ウェブ1が塗液2と接する部分を塗布部Zと定義する。塗布部Zは、貯液部Xと計量部Yとからなる。
【0022】
この塗布装置100は、貯液部材101および101’と、一対の計量部材102および102’とを有している。貯液部材101、101’は塗液2を貯留するための貯液部Xの壁面となる。計量部材102、102’は、貯液部材101および101’よりもウェブ1の走行方向下流側でウェブ1の走行面を挟んで間隙tを空けて対向して設けられており、貯液部Xの底面となり貯液部材101、101’とともに貯液部Xを形成する。さらにこの塗布装置100では、貯液部Xに塗液2を貯留できるようにするため、
図1の紙面手前側と奥側に、貯液部材101、および101’および計量部材102、102’を挟むようにして側板(図示せず)が設けられる。
【0023】
計量部材102、102’は、計量部Yを有し、その塗液2と接する面がウェブ1の走行面に向かう方向に順に、ウェブ1の幅方向に伸びる上流側の第1計量面103および103’、溝104および104’、さらに下流側の第2計量面105および105’で構成されている。そして、第1計量面103および103’、および第2計量面105および105’はウェブ1の走行面に略平行な平面で構成されている。
【0024】
このような本発明の一対の計量部材102、102’を用いれば、塗布部Zでのウェブへの抵抗力を抑制できるため、基材厚みの薄いウェブ1でも低張力で塗布が可能であると共に、塗布部Zでのウェブ1を押す力により搬送シワを抑制できるので、塗布幅方向に均一な厚みの塗膜3をウェブ1の両面に対して同時に形成することができる。その作用は以下の通りである。
【0025】
塗布装置100の計量部Yの拡大図である
図2を参照する。本発明の計量部材102(102’)は第1計量面103(103’)、溝104(104’)、第2計量面105(105’)で構成されている。第1計量面103(103’)とウェブ1とでなす部分を第1計量部Y1、溝104(104’)とウェブ1とでなす部分を溝部Y2、第2計量面105(105’)とウェブ1とでなす部分を第2計量部Y3と定義する。
【0026】
上述のとおり、ウェブ1への抵抗力を低減させるためには、塗布装置100とウェブ1とで形成される狭い流路の長さを短くするとよい。しかしながら、この狭い流路を単に短くすると、ウェブ1が液圧を受ける面積が小さくなるのでウェブを押す力が低減してしまう。
【0027】
そこで、本発明では、塗布装置100とウェブ1とで形成される狭い流路の途中に、溝部Y2を設けた。これにより、狭い流路の長さを短くできる。このとき、第1計量部Y1と第2計量部Y3との狭い流路で生じるせん断力の和が、塗布部Zで生じるせん断力になる。
【0028】
一方、塗布部Zでの液圧の分布は、次の通りである。第1計量部Y1の上流側で生じる塗液2による液圧が、第1計量部Y1を塗液2が通過するときに圧力損失を生じて液圧が低下する。低下した液圧を溝部Y2で保持し、第2計量部Y3を通過するときにさらに圧力損失を生じる。溝部Y2では、流路が広いので圧力損失を生じない。第1計量部Y1の上流側から溝部Y2を経て第2計量部Y3まで、この液圧がウェブ1に作用するため、ウェブを押す力を保持することができる。
【0029】
また
図2に示すように、第1計量部Y1とウェブ1との間隙をt1、溝部Y2とウェブ1との間隙をt2、第2計量部Y2とウェブ1との間隙をt3とすると、本発明における塗布装置100では、以下の関係を満たす。
t3≦t1<t2。
【0030】
まず上記で説明したとおり、間隙t2を間隙t1および間隙t3よりも広くすることで(t1<t2、t3<t2)、ウェブ1を押す力を保持しつつ、ウェブ1への抵抗力を低減することができる。
【0031】
次に間隙t1と間隙t3との関係であるが、間隙t1より間隙t3を広くすると(t1<t3)、塗膜3は計量部材102(102’)とウェブ1とが最も近接する第1計量部Y1で形成され、第2計量部Y3部分には接触しない。そのため、ウェブ1に作用する液圧は第1計量部Y1のみとなり、ウェブ1を押す力を保持できなくなる。したがって、間隔t1を間隔t3と同じ広さにするか、間隔t1を間隔t3よりも広くする必要がある(t3≦t1)。
【0032】
なお、間隙t1を間隙t3よりも広くすると(t3<t1)、間隔t1を間隔t3と同じ広さにした場合に比べて、ウェブ1への抵抗力を低減することができる。せん断力は、せん断力を受ける長さだけでなく、せん断力を受ける間隙にも依存するので、せん断力を下げることができる。ただし、間隙t1を広くすると液圧が下がるため、ウェブを押す力が低減する。そこで、せん断力を下げるために間隙t1を広くするにしても、必要なウェブを押す力を保持できる範囲で最適な間隙t1を決めるのがよい。
【0033】
塗膜3の厚みは計量部材102(102’)とウェブ1の表面との最小間隙の半分であることが知られているため、所望の塗膜3の厚みによって第2計量部Y3とウェブ1との間隙t3が決まることで、計量部材102(102’)の設置位置が決まる。また、このとき、第1計量面103(103’)および第2計量面105(105’)はウェブ1の走行面の略平行であることで、ウェブ1の両側での液圧が等しくなることから、ウェブ1の両側で塗膜3の厚みを均一にする効果がある。
【0034】
なお、塗膜3の厚みはウェブ1の搬送速度に依らないので、低速から高速までの幅広い速度範囲で塗布が可能である。
【0035】
前述のように塗膜3の厚みは計量部材102(102’)の設置位置に依存するので、塗布装置100は計量部材102(102’)をウェブ1の厚み方向に移動できる手段(図示しない)を備えていることが好ましい。このような手段として、計量部材102(102’)を載置し、計量部材102(102’)ごとウェブ1の厚み方向に移動できる移動テーブルなどが例示できる。このような移動手段を備えることで、塗膜3の厚みを均一かつ容易に再現性よく調整することができる。その結果、作業者によらず同じ間隙tに設定することが容易に可能になる。また、一対の計量部材102(102’)を、ウェブ1を挟んで間隙tを空けて対向して配置するとき、ウェブ1と計量部材102(102’)との間隙は、ウェブ1を挟んで同じ間隙tで移動することが好ましい。
【0036】
図3は、本発明の別の実施形態による塗布装置200の概略断面図である。塗布装置200の計量部材202(202’)は、第1計量面203(203’)、溝204(204’)および第2計量面205(205’)を含む第1のブロック206(206’)と第1のブロック206(206’)とともに計量部材202(202’)を構成する第2のブロック207(207’)とで構成された計量部材202(202’)を備えた塗布装置200である。
【0037】
第1のブロック206(206’)を、耐摩耗性を有する材料を選定した形態を例として説明する。塗液2に高硬度の粒子を含む塗液2を塗布する場合、ウェブ1と第1のブロック206(206’)の第2計量面205(205’)では塗液2のせん断力が大きく、塗液2に含まれる高硬度の粒子によって計量部材202(202’)が削られる。計量部材202(202’)が削られると、時間経過に伴ってウェブ1と計量部材202(202’)との間隙が変わることで塗膜3の厚みに変動が生じたり、塗布幅方向の塗膜3の厚みに分布が生じたり、あるいは削られた計量部材202(202’)の小片や磨耗分が製品に混入する。第1ブロック206(206’)に耐摩耗性を有する材料を使用することでこのような不具合を防止できる。
【0038】
一方で、第1ブロック206(206’)とともに計量部材202(202’)を構成する第2ブロック207(207’)は、第1ブロック206(206’)ほどには剛性や耐摩耗性、耐久性は求められないので、第1ブロック206(206’)よりも安価な材料を使うことができ、計量部材202(202’)のコストを抑えることができる。つまり、計量部材202(202’)を第1ブロック206(206’)と第2ブロック207(207’)とで異なる材質で構成することで、計量部材202(202’)の耐摩耗性や耐久性を向上しつつ、コストの上昇も抑えることができる。
【0039】
本発明の塗布装置100および200は、長尺状のウェブ1を搬送しながら塗液2を塗布するウェブ塗工装置として好適に使用することができる。特に本発明の塗布装置100および200を使用したウェブ塗工装置は、ウェブ1への抵抗力を低減することで搬送張力を低減でき、ウェブ1を押す力により塗布部Zで搬送シワを抑制することができる。
また、本発明の塗膜付きウェブの製造方法では、塗膜付きウェブの表裏で同一量の膜厚を得ることができるので、ウェブ1の両面に同じ膜厚の塗膜3を同時に形成するのに好適である。
【実施例】
【0040】
図1に示す塗布装置100をモデル化し流体解析を実施した。モデル化した計量部材102(102’)の形状は次の通りである。
【0041】
(実施例1)
計量部材を、第1計量面103(103’)、第2計量面105(105’)および溝104(104’)を有する形状とした。第1計量面計量面103(103’)とウェブ1との間隙t1、および第2計量面計量面105(105’)とウェブ1との間隙t3を、いずれも50μm、第1計量面計量面103(103’)および第2計量面計量面105(105’)のウェブ搬送方向の長さを、いずれも0.3mmとした。溝104(104’)は、深さt2を1mm、ウェブ搬送方向の長さを2mmとした。
【0042】
(実施例2)
計量部材を、第1計量面103(103’)、第2計量面105(105’)および溝104(104’)を有する形状とした。第1計量面103(103’)とウェブ1との間隙t1を250μm、第2計量面105(105’)とウェブ1との間隙t3を50μmm、第1計量面103(103’)および第2計量面105(105’)のウェブ搬送方向の長さを、いずれも0.3mmとした。溝104(104’)は、深さt2を1mm、ウェブ搬送方向の長さを2mmとした。
【0043】
(比較例1)
計量部材を、第2計量面105(105’)および溝104(104’)を有さず、第1計量面103(103’)のみを有する形状とした。第1計量面103(103’)とウェブ1との間隙t1を50μm、第1計量面103(103’)のウェブ搬送方向の長さを2.6mmとした。
【0044】
(比較例2)
計量部材を、第2計量面105(105’)および溝104(104’)を有さず、第1計量面103(103’)のみを有する形状とした。第1計量面103(103’)とウェブ1との間隙t1を50μm、第1計量面103(103’)のウェブ搬送方向の長さを0.6mmとした。
【0045】
上記の形状を有する塗布装置の流体解析により、抵抗力およびウェブを押す力を導出した結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
(実施例1と比較例1との対比)
計量部材とウェブとで形成される間隙50μmの狭い流路のウェブ搬送方向長さは、実施例1は0.6mm(第1計量面0.3mm+第2計量面0.3mm)、比較例1は2.6mm(第1計量面2.6mm)であり、実施例1の方が短い。そのため、抵抗力については、実施例1は比較例1に比べて半分以下の大きさに低減できた。
一方、ウェブに液圧を作用させる部分のウェブ搬送方向長さは、実施例1も比較例1も2.6mmで同じ長さである(実施例1:第1計量面0.3mm+第2計量面0.3mm+溝2mm=2.6mm、比較例1:第1計量面2.6mm)。そのため、ウェブを押す力については、実施例1は比較例1とほぼ同じ大きさを保持できた。
【0048】
(実施例1と比較例2との対比)
計量部材とウェブとで形成される間隙50μmの狭い流路のウェブ搬送方向長さは、実施例1も比較例2も0.6mmで同じ長さである(実施例1:第1計量面0.3mm+第2計量面0.3mm=0.6mm、比較例1:第1計量面0.6mm)。そのため、抵抗力については、実施例1も比較例1もほぼ同じ大きさとなった。
ところが、ウェブに液圧を作用させる部分のウェブ搬送方向長さは、比較例2では0.6mm(第1計量面0.6mm)であり、実施例1では2.6mm(第1計量面0.3mm+第2計量面0.3mm+溝2mm=2.6mm)であり、比較例2の方が短い。そのため、ウェブを押す力については、比較例2は実施例1に比べて大幅に小さくなった。
【0049】
(実施例1と実施例2との対比)
実施例2は、第1計量部とウェブとの間隙が実施例1よりも広い(実施例1:50μm、実施例2:250μm)。そのため、抵抗力については、実施例2は実施例1よりもさらに低減できた。
一方、ウェブを押す力についても、実施例2は実施例1よりも小さくなったが、それでも比較例2に比べて約1.4倍となっていた。
【0050】
実施例と比較例との対比より、第1計量部と第2計量部との間に溝を設けることで、抵抗力を低減しつつ、ウェブを押す力を保持することが出来ることが確認できた。
【符号の説明】
【0051】
1: ウェブ
2: 塗液
3: 塗膜
100: 塗布装置
200: 塗布装置
101、101’: 貯液部材
102、102’: 計量部材
103、103’: 第1計量面
104、104’: 溝
105、105’: 第2計量面
202、202’: 複数の部材から構成される計量部材
206、206’: 第1ブロック
207、207’: 第2ブロック
t: 一対の計量部材102と102’との間隙
t1: 第1計量部とウェブとの間隙
t2: 溝部とウェブとの間隙
t3: 第2計量部とウェブとの間隙
X: 貯液部
Y: 計量部
Y1: 第1計量部
Y2: 溝部
Y3: 第2計量部
Z: 塗布部