(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溶接部は、前記エンドプレートに位置する前記溶接部の回転軸線方向の端部から前記ロータコア側に向かって溶接断面積が徐々に増加された溶接スロープ部を含む、請求項1に記載のロータ。
前記エンドプレートは、前記ロータコアの回転軸線方向の一方側に設けられる第1エンドプレートと、前記ロータコアの回転軸線方向の他方側に設けられる第2エンドプレートとを含み、
前記溶接部の溶接開始点は、前記第1エンドプレートに設けられ、前記溶接部の溶接終了点は、前記第2エンドプレートに設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のロータ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
[第1実施形態]
(回転電機の構造)
図1〜
図7を参照して、第1実施形態による回転電機100(ロータ20)の構造について説明する。
【0017】
本願明細書では、「回転軸線方向」とは、ロータ20として完成した状態のロータ20(ロータコア21)の回転軸線に沿った方向(C方向、
図1参照)を意味する。また、「周方向」とは、ロータ20として完成した状態のロータ20(ロータコア21)の周方向(B1方向またはB2方向、
図2参照)を意味する。また、「内径側」とは、ロータ20として完成した状態のロータ20(ロータコア21)の中心に向かう方向(C1方向、
図2参照)を意味する。また、「外径側」とは、ロータ20として完成した状態のロータ20(ロータコア21)の外に向かう方向(C2方向、
図2参照)を意味する。
【0018】
図1および
図2に示すように、回転電機100は、ステータ10とロータ20とを備えている。
【0019】
ステータ10は、ステータコア11と、ステータコア11に巻回される巻線12とを備えている。ロータ20は、ロータコア21を備えている。ロータコア21は、回転軸線C回りに回転されるとともに、複数の電磁鋼板22が回転軸線Cの延びる方向である軸方向(Z方向)に積層されることにより形成されている。また、ロータコア21には、回転中心C0に貫通孔23が設けられている。また、ロータコア21の貫通孔23には、ハブ部材30が取り付けられている。また、ハブ部材30には、回転軸31が取り付けられている。また、ステータコア11とロータコア21とは、互いに対向するように配置されている。なお、貫通孔23は、特許請求の範囲の「ロータコア側貫通孔」の一例である。また、ハブ部材30は、特許請求の範囲の「回転伝達部材」の一例である。
【0020】
また、
図2〜
図4に示すように、ロータコア21には、永久磁石32が挿入される挿入孔24が設けられている。挿入孔24は、円環状のロータコア21の周方向に沿って複数設けられている。また、挿入孔24は、ロータコア21のZ1方向側のコア端面25a(
図3参照)からZ2方向側のコア端面25bまで貫通して延びるように形成されている。
【0021】
図5および
図6に示すように、ロータコア21には、回転軸線方向から見て、貫通孔23の内径側から外径側に窪む凹部26と、後述するエンドプレート40の凸部42にオーバラップするように凹部26の底部から回転中心C0に向かって突出するように設けられる凸部27とを含む。具体的には、凹部26は、回転軸線方向から見て、外径側に窪む半円形状の2つの部分26aおよび26bを含む。そして、凸部27は、部分26aおよび26bの間に設けられ、回転中心C0に向かって先細る形状を有する。また、凹部26(凸部27)は、ロータコア21の周方向に45度の等角度間隔で8個設けられている。なお、凸部27は、特許請求の範囲の「ロータコア側凸部」の一例である。
【0022】
また、
図3に示すように、ロータ20は、ロータコア21の回転軸線方向の端部(コア端面25a、コア端面25b)に配置され、回転中心C0に貫通孔41を有するエンドプレート40を備えている。エンドプレート40は、ロータコア21の挿入孔24に挿入された永久磁石32を固定するための樹脂(図示せず)が、ロータ20の外に飛び出すのを抑制する機能を有する。また、エンドプレート40は、略円環形状を有する。なお、貫通孔41は、特許請求の範囲の「エンドプレート側貫通孔」の一例である。
【0023】
また、第1実施形態では、エンドプレート40は、鉄を含有する非磁性体を含む。たとえば、エンドプレート40は、SUS(stainless steel)304により構成されている。また、エンドプレート40の厚みt1は、1枚の電磁鋼板22の厚みt2よりも大きい。なお、電磁鋼板22は、たとえばケイ素鋼により構成されている。また、電磁鋼板22の表面には、絶縁皮膜(図示せず)が設けられている。一方、エンドプレート40には、絶縁皮膜(図示せず)は、設けられていない。
【0024】
また、
図5および
図7に示すように、エンドプレート40は、回転軸線方向から見て、貫通孔41の内径側から回転中心C0に向かって突出するように設けられる凸部42を含む。凸部42は、回転中心C0に向かって先細る形状を有する。また、凸部42は、ロータコア21の周方向に45度の等角度間隔で8個設けられている。すなわち、凸部42の数と、ロータコア21の凸部27の数とは等しい。なお、凸部42は、特許請求の範囲の「エンドプレート側凸部」の一例である。
【0025】
また、
図5に示すように、回転軸線方向から見て、ロータコア21は、エンドプレート40の貫通孔41から内径側に突出するように設けられている。すなわち、
図2に示すように、回転中心C0からエンドプレート40の内径側(内側面41a)までの距離(径)r1は、回転中心C0からロータコア21の内径側(内側面23a)までの距離(径)r2よりも大きい。なお、回転中心C0からエンドプレート40の外径側までの距離(径)r11は、回転中心C0からロータコア21の外径側までの距離(径)r12よりも小さい。
【0026】
ここで、第1実施形態では、
図3に示すように、ロータ20は、エンドプレート40の貫通孔41の内側面41aから、ロータコア21の貫通孔23の内側面23aに渡って、エンドプレート40とロータコア21の複数の電磁鋼板22とが溶接された溶接部50を備えている。そして、溶接部50における、溶接開始点S1および溶接終了点E1は、エンドプレート40に配置されている。なお、溶接部50とは、エンドプレート40とロータコア21の複数の電磁鋼板22とが溶接された後に形成される溶接痕である。そして、溶接部50により、エンドプレート40と、エンドプレート40に隣接する電磁鋼板22とが固定され、さらに、複数の電磁鋼板22同士が固定される。
【0027】
また、第1実施形態では、エンドプレート40は、ロータコア21の回転軸線方向の一方側に設けられるエンドプレート40aと、ロータコア21の回転軸線方向の他方側に設けられるエンドプレート40bとを含む。そして、溶接部50の溶接開始点S1は、エンドプレート40aに設けられ、溶接部50の溶接終了点E1は、エンドプレート40bに設けられている。具体的には、溶接開始点S1(溶接終了点E1)は、エンドプレート40a(エンドプレート40b)の回転軸線方向外側の端部よりも、ロータコア21(内側)に配置されている。また、エンドプレート40aおよび40bは、それぞれ、特許請求の範囲の「第1エンドプレート」および「第2エンドプレート」の一例である。
【0028】
また、第1実施形態では、溶接部50は、エンドプレート40からロータコア21の複数の電磁鋼板22に連続して設けられている。すなわち、溶接は、エンドプレート40aから、複数の電磁鋼板22を介して、エンドプレート40bまで、連続的に行われている。
【0029】
また、第1実施形態では、溶接部50は、エンドプレート40(40a)に位置する溶接部50の回転軸線方向の端部からロータコア21側に向かって溶接断面積(溶接深さd1)が徐々に増加された溶接スロープ部51(溶接スロープ部51aおよび51b)を含む。なお、「溶接深さ」とは、回転軸線方向に直交する方向(X方向)の溶接部50の深さ(長さ)を意味する。
【0030】
溶接スロープ部51aの溶接深さd1(溶接断面積)は、溶接開始点S1において0であり、ロータコア21側に向かって溶接深さd1が徐々に略直線的に大きくなる。そして、溶接スロープ部51aの溶接深さd1(溶接断面積)は、エンドプレート40aにおいて、最大になる。その後、溶接部50は、最大の溶接深さd1(最大の溶接断面積)が維持された状態で、エンドプレート40aから、複数の電磁鋼板22を介して、エンドプレート40bまで、回転軸線方向に沿って延びるように形成されている。
【0031】
そして、溶接スロープ部51bは、エンドプレート40bにおいて、ロータコア21側からエンドプレート40bの回転軸線方向外側に向かって、溶接深さd1が徐々に略直線的に小さくなる。そして、溶接部50(溶接スロープ部51b)は、溶接終了点E1において、溶接深さd1(溶接断面積)が0になる。すなわち、第1実施形態では、溶接スロープ部51(溶接スロープ部51aおよび51b)の最大の溶接深さd1(最大の溶接断面積)の部分が、エンドプレート40(エンドプレート40aおよび40b)に配置されている。つまり、複数の電磁鋼板22における、溶接部50の溶接深さd1(溶接断面積)は、略一定である。
【0032】
また、第1実施形態では、
図5に示すように、エンドプレート40の凸部42と、ロータコア21の貫通孔41から内径側に突出した部分とが溶接されることにより、溶接部50が構成されている。上記のように、ロータコア21にエンドプレート40を重ねた状態で、エンドプレート40の貫通孔41からロータコア21が露出する。そして、エンドプレート40の内径側に突出する凸部42と、ロータコア21の露出した部分から内径側に突出する凸部27とが溶接されることにより、溶接部50が構成されている。
【0033】
詳細には、回転軸線方向から見て、エンドプレート40の凸部42と、ロータコア21の凸部27とは、回転中心C0に向かって先細る略同じ形状を有する。そして、回転軸線方向から見て、エンドプレート40の凸部42とロータコア21の凸部27とがオーバラップするように配置されている。そして、このオーバラップしたエンドプレート40の凸部42の先端部とロータコア21の凸部27の先端部とが、溶接されることにより、溶接部50が形成される。
【0034】
また、第1実施形態では、
図2に示すように、回転軸線方向から見て、溶接部50は、ロータコア21の周方向に沿って等角度間隔で複数設けられている。具体的には、溶接部50は、凸部42および凸部27と同様に、周方向に沿って45度間隔で8個設けられている。
【0035】
また、
図5に示すように、回転軸線方向から見て、ハブ部材30には、回転中心C0に向かって窪む凹部30aが設けられている。また、ロータコア21には、回転中心C0に向かって突出する凸部28(
図6参照)が設けられている。また、エンドプレート40には、回転中心C0に向かって突出する凸部43(
図7参照)が設けられている。そして、
図5に示すように、エンドプレート40の凸部43およびロータコア21の凸部28と、ハブ部材30の凹部30aとが嵌合されている。
【0036】
また、第1実施形態では、ロータ20は、ロータコア21の貫通孔23に取り付けられたハブ部材30を備えている。そして、ロータコア21の貫通孔41から内径側に突出した部分の内側面23aと、ハブ部材30の外側面30bとが溶接されている。なお、ロータコア21とハブ部材30との溶接の溶接深さd2(溶接断面積)(
図4参照)は、周方向に沿って、略一定である。また、ロータコア21とハブ部材30との溶接は、ロータコア21(ハブ部材30)の全周に渡るのではなく、ロータコア21(ハブ部材30)の周方向に沿って部分的に行われる。また、ロータコア21とハブ部材30との溶接は、ロータ20の回転軸線方向の両側において行われている。
【0037】
(ロータの製造方法)
次に、
図4、
図5および
図8を参照して、第1実施形態によるロータ20の製造方法について説明する。
【0038】
(積層工程)
まず、
図8に示すように、円環形状を各々有する、複数の電磁鋼板22が、回転軸線の延びる方向である回転軸線方向に積層される。これにより、回転軸線回りに回転されるとともに、回転中心C0に貫通孔23を有するロータコア21が形成される。
【0039】
(エンドプレート配置工程)
次に、ロータコア21(積層された複数の電磁鋼板22)の回転軸線方向の端部に、回転中心C0に貫通孔41を有するエンドプレート40を配置する。エンドプレート40(エンドプレート40aおよび40b)は、ロータコア21の回転軸線方向の両端にそれぞれ配置される。また、
図5に示すように、ロータコア21の回転軸線方向の端部にエンドプレート40が配置された状態で、回転軸線方向から見て、ロータコア21(凸部27)は、貫通孔41から内径側に突出する(露出する)。また、ロータコア21の凸部27は、エンドプレート40の凸部42にオーバラップする。
【0040】
(溶接工程)
次に、第1実施形態では、
図8に示すように、溶接開始点S1がエンドプレート40に配置されるように、エンドプレート40の貫通孔41の内側面41aと、ロータコア21の複数の電磁鋼板22の内側面(貫通孔23の内側面23a)とが溶接されて、溶接部50が形成される。この場合の溶接工法としては、たとえば、高エネルギービーム溶接(レーザ、電子ビームなど)が用いられる。また、合計8個の溶接部50は、同時ではなく、1つずつ順に形成される。
【0041】
具体的には、第1実施形態では、溶接の開始時(溶接開始点S1)から溶接熱源の出力を徐々に上げながら、エンドプレート40aの内側面41aに対して溶接ヘッド60を相対的に移動させることにより、エンドプレート40aに位置する溶接部50の回転軸線方向の端部からロータコア21側に向かって溶接深さd1(溶接断面積)が徐々に増加された溶接スロープ部51(溶接スロープ部51a)が形成される。溶接熱源の出力は、たとえば、直線的に増加される。また、溶接熱源の出力は、溶接ヘッド60がエンドプレート40aに対向している状態(つまり、エンドプレート40と電磁鋼板22との溶接が開始される前)で、最大の出力(または、所定の出力)にされる。これにより、溶接深さd1が最大の部分(溶接断面積が最大の部分)は、エンドプレート40aに配置される。
【0042】
その後、溶接熱源の出力が最大の出力に維持された状態で、エンドプレート40aと電磁鋼板22との溶接が行われる。その後、電磁鋼板22同士の溶接が行われる。さらに、溶接熱源の出力が最大の出力に維持された状態で、電磁鋼板22とエンドプレート40bとの溶接が行われる。
【0043】
そして、溶接ヘッド60がエンドプレート40bに対向している状態で、溶接熱源の出力を徐々に下げながら、エンドプレート40bの内側面41aに対して溶接ヘッド60を相対的に移動させる。これにより、エンドプレート40bのロータコア21側から、エンドプレート40bの回転軸線方向の端部に向かって溶接深さd1(溶接断面積)が徐々に減少された溶接スロープ部51(溶接スロープ部51b)が形成される。溶接熱源の出力は、たとえば、直線的に減少される。
【0044】
(ハブ部材の挿入工程)
次に、
図4に示すように、ロータコア21の貫通孔23にハブ部材30が挿入される。その後、ロータコア21の内側面23aと、貫通孔23に挿入されたハブ部材30の外側面30bとが、高エネルギービーム(レーザ、電子ビームなど)などにより溶接される。これにより、溶接部52が形成される。その後、永久磁石32が、挿入孔24に挿入される。そして、ロータ20が完成する。
【0045】
[第2実施形態]
次に、
図9を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、溶接部150に溶接スロープ部51(
図3参照)は形成されていない。
【0046】
図9に示すように、ロータ120のロータコア121では、エンドプレート140の貫通孔141の内側面141aから、ロータコア121の貫通孔123の内側面123aに渡って、エンドプレート140とロータコア121の複数の電磁鋼板122とが溶接された溶接部150が設けられている。そして、第2実施形態では、溶接部150の溶接深さd11(溶接断面積)は、エンドプレート140に位置する溶接部150の回転軸方向の端部からロータコア121の複数の電磁鋼板122に渡って(溶接部150の全体に渡って)一定になるように構成されている。すなわち、溶接部150では、上記第1実施形態の溶接スロープ部51(
図3参照)とは異なり、溶接深さd11(溶接断面積)は徐々に増加(減少)せずに、一定である。つまり、エンドプレート140における溶接部150の溶接深さd11(溶接断面積)と、複数の電磁鋼板122における溶接部150の溶接深さd11(溶接断面積)とは、略等しい。なお、「一定」とは、略一定の状態も含む広い概念である。また、貫通孔141は、特許請求の範囲の「エンドプレート側貫通孔」の一例である。
【0047】
また、第2実施形態では、溶接深さd11(溶接断面積)が、エンドプレート140に位置する溶接部150の回転軸方向の端部からロータコア121の複数の電磁鋼板122に渡って一定である溶接部150の溶接開始点S2は、エンドプレート140aの回転軸方向の端部よりもロータコア121側に配置されている。同様に、溶接部150の溶接終了点E2は、エンドプレート140bの回転軸方向の端部よりもロータコア121側に配置されている。つまり、溶接部150の形成(エンドプレート140に対するレーザの照射)は、エンドプレート140aの回転軸方向の端部からは開始されないとともに、エンドプレート140bの回転軸方向の端部において終了されない。また、エンドプレート140aおよび140bは、それぞれ、特許請求の範囲の「第1エンドプレート」および「第2エンドプレート」の一例である。
【0048】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
(ロータの製造方法)
次に、
図9を参照して、第2実施形態によるロータ120の製造方法について説明する。
【0049】
積層工程、および、エンドプレート配置工程は、上記第1実施形態と同様である。
【0050】
(溶接工程)
次に、第2実施形態では、
図9に示すように、溶接の開始時から溶接熱源(図示せず)の出力を一定にした状態で、エンドプレート140の内側面141a、および、ロータコア121の内側面123aに対して溶接ヘッド60(
図8参照)を相対的に移動させる。これにより、溶接深さd11(溶接断面積)がエンドプレート140に位置する溶接部150の回転軸方向の端部からロータコア121に渡って一定になる溶接部150が形成される。たとえば、溶接の開始時から溶接熱源の出力が最大にされた状態のままで溶接が行われる。また、溶接の開始時から溶接熱源(図示せず)の出力を一定にした状態で、エンドプレート140aから、複数の電磁鋼板122を介して、エンドプレート140bまで、溶接が行われる。
【0051】
また、ハブ部材30の挿入工程は、上記第1実施形態と同様である。
【0052】
(第1および第2実施形態の効果)
第1および第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。なお、以下の効果は、後述する変形例によるロータ(220、320)についての効果も含んでいる。
【0053】
第1および第2実施形態では、上記のように、エンドプレート(40、140、240、340)の貫通孔(41、141)の内側面(41a、141a)と、ロータコア(21、121、221、321)の複数の電磁鋼板(22、122、322)の内側面(貫通孔(23、123)の内側面(23a、123a))とが溶接された溶接部(50、150、250、350)の、溶接開始点(S1、S2)は、エンドプレート(40、140、240、340)に配置されている。これにより、積層された複数の電磁鋼板(22、122、322)と異なり、エンドプレート(40、140、240、340)は、絶縁皮膜が設けられていないので、エンドプレート(40、140、240、340)に比較的高い出力のレーザが照射されても、ガス化した絶縁皮膜の吹き上げは発生しない。その結果、エンドプレート(40、140、240、340)においてレーザの出力が比較的高くすることができるので、エンドプレート(40、140、240、340)から開始された溶接がロータコア(21、121、221、321)(複数の電磁鋼板(22、122、322))の端部に到達した際には、レーザの出力が比較的高い状態となる。これにより、ロータコア(21、121、221、321)の端部における溶接断面積を十分に確保することができるので、ロータコア(21、121、221、321)と回転伝達部材(30)との溶接の溶接断面積(溶接深さd2)を大きくする必要がない。その結果、回転伝達部材(30)が歪むのが防止される。また、ロータコア(21、121、221、321)の回転軸線方向の端部にエンドプレート(40、140、240、340)が配置されているので、ロータコア(21、121、221、321)(複数の電磁鋼板(22、122、322))の端部を溶接する際の溶接の熱がエンドプレート(40、140、240、340)側にも伝達される。これにより、溶接の熱がロータコア(21、121、221、321)(複数の電磁鋼板(22、122、322))の端部に留まることに起因する、ロータコア(21、121、221、321)の端部におけるスパッタの発生や端部の破損を防止することができる。このように、第1および第2実施形態では、ロータコア(21、121、221、321)の端部における溶接品質の安定化を図りながら、剛性の高いロータコア(21、121、221、321)を低コストで生産することができる。また、ロータコア(21、121、221、321)と回転伝達部材(30)との溶接の溶接断面積(溶接深さd2)を大きくする必要がないので、溶接熱源が大型化するのを防止することができる。
【0054】
また、第1および第2実施形態では、上記のように、溶接部(50、150、250、350)は、エンドプレート(40、140、240、340)からロータコア(21、121、221、321)の複数の電磁鋼板(22、122、322)に連続して設けられている。このように構成すれば、エンドプレート(40、140、240、340)とロータコア(21、121、221、321)(複数の電磁鋼板(22、122、322))とを確実に固定することができる。
【0055】
また、第1および第2実施形態では、上記のように、エンドプレート(40、140、240、340)は、鉄を有する非磁性体を含む。このように構成すれば、エンドプレート(40、140、240、340)にアルミニウム(非鉄金属)を用いる場合と異なり、エンドプレート(40、140、240、340)と電磁鋼板(22、122、322)とを容易に溶接することができる、
【0056】
また、第1実施形態では、上記のように、溶接部(50、250、350)は、エンドプレート(40、240、340)に位置する溶接部(50、250、350)の回転軸線方向の端部からロータコア(21、221、321)側に向かって溶接断面積(溶接深さd1、d21)が徐々に増加された溶接スロープ部(51、351)を含む。このように構成すれば、溶接スロープ部(51、351)の最も溶接断面積(溶接深さd1、d21)の大きい部分がロータコア(21、221、321)の端部近傍に位置することになるので、溶接部(50、250、350)のうち、電磁鋼板(22、322)に対応する部分の溶接断面積(溶接深さd1、d21)が比較的大きくなり、その分、ロータコア(21、221、321)と回転伝達部材(30)との溶接の溶接断面積(溶接深さd2)を小さくすることができる。
【0057】
また、第1実施形態では、上記のように、溶接スロープ部(51)の最大の溶接断面積(溶接深さd1)の部分が、エンドプレート(40)に配置されている。このように構成すれば、エンドプレート(40)において開始された溶接が、ロータコア(21)の電磁鋼板(22)に達した時点で溶接部(50)の溶接断面積(溶接深さd1)は、最大に達していることになる。これにより、溶接部(50)の電磁鋼板(22)の端部の溶接断面積(溶接深さd1)が確実に大きくなるので、その分、ロータコア(21)と回転伝達部材(30)との溶接の溶接断面積(溶接深さd2)を確実に小さくすることができる。
【0058】
また、第2実施形態では、上記のように、溶接部(150)の溶接断面積(溶接深さd11)は、エンドプレート(140)に位置する溶接部(150)の回転軸方向の端部からロータコア(121)の複数の電磁鋼板(122)に渡って一定になるように構成されている。このように構成すれば、溶接スロープ部(51、351)を設けるために溶接熱源の出力を調節する必要がない(一定の出力のままでよい)ので、溶接熱源の制御を簡略化することができる。また、エンドプレート(140)の厚みが比較的大きい場合(熱容量が大きい)には、溶接の熱がエンドプレート(140)内において拡散(伝達)されやすい。この場合、エンドプレート(140)の溶接におけるレーザの出力を短期間に増大させても(当初から最大にしても)、溶接の熱の影響が少ない。これにより、特に、厚みが比較的大きいエンドプレート(140)を設ける場合に、溶接断面積(溶接深さd11)が一定の溶接部(150)を容易に形成することができる。
【0059】
また、第2実施形態では、上記のように、溶接断面積(溶接深さd11)が、エンドプレート(140)に位置する溶接部(150)の回転軸方向の端部からロータコア(121)の複数の電磁鋼板(122)に渡って一定である溶接部(150)の溶接開始点(S2)は、エンドプレート(140)の回転軸方向の端部よりもロータコア(121)側に配置されている。ここで、電磁鋼板(122)の製造時の公差に起因して、積層された複数の電磁鋼板(122)の回転軸方向の長さには、ばらつきがある。つまり、積層された複数の電磁鋼板(122)に配置されるエンドプレート(140)の位置もばらつく。そこで、溶接開始点(S2)を、エンドプレート(140)の回転軸方向の端部よりもロータコア(121)側に配置する(つまり、溶接ヘッド(60)の溶接開始位置を、エンドプレート(140)の回転軸方向の端部よりもロータコア(121)側に設定する)ことによって、エンドプレート(140)の位置がばらついた場合でも、レーザをエンドプレート(140)に確実に照射することができる。すなわち、レーザがエンドプレート(140)に照射されずにエンドプレート(140)の側面側を素通りしてしまうのを防止することができる。
【0060】
また、第1および第2実施形態では、溶接部(50、150、250、350)の溶接開始点(S1、S2)は、第1エンドプレート(40a、140a)に設けられ、溶接部(50、150、250、350)の溶接終了点(E1、E2)は、第2エンドプレート(40b、140b)に設けられている。このように構成すれば、ロータコア(21、121、221、321)の両端において、ロータコア(21、121、221、321)の端部における溶接品質の安定化を図ることができる。
【0061】
また、第1および第2実施形態では、エンドプレート(40、140、240、340)は、回転軸線方向から見て、貫通孔(41、141)の内径側から回転中心(C0)に向かって突出するように設けられる凸部(42)を含み、凸部(42)と、ロータコア(21、121、221、321)の貫通孔(23、123)から内径側に突出した部分とが溶接されることにより、溶接部(50、150、250、350)が構成されている。このように構成すれば、エンドプレート(40、140、240、340)の凸部(42)以外の部分(エンドプレート(40、140、240、340)の本体部)が溶接される場合と異なり、エンドプレート(40、140、240、340)に対する溶接(熱)の影響がエンドプレート(40、140、240、340)の本体部に及ぶのを抑制することができる。
【0062】
また、第1および第2実施形態では、上記のように、ロータコア(21、121、221、321)は、回転軸線方向から見て、貫通孔(23、123)の内径側から外径側に窪む凹部(26)と、凸部(42)にオーバラップするように凹部(26)の底部から回転中心(C0)に向かって突出するように設けられる凸部(27)とを含み、凸部(42)と凸部(27)とが溶接されることにより、溶接部(50、150、250、350)が構成されている。このように構成すれば、エンドプレート(40、140、240、340)の凸部(42)に溶接されるロータコア(21、121、221、321)の凸部(27)が、凹部(26)によりロータコア(21、121、221、321)の本体部(凹部(26)以外の部分)から周方向に離間される。これにより、ロータコア(21、121、221、321)に対する溶接(熱)の影響がロータコア(21、121、221、321)の本体部に及ぶのを抑制することができる。
【0063】
また、第1および第2実施形態では、上記のように、ロータコア(21、121、221、321)の貫通孔(23、123)から内径側に突出した部分の内側面(23a)と、回転伝達部材(30)の外側面(30b)とが溶接されている。このように構成すれば、ロータコア(21、121、221、321)にエンドプレート(40、140、240、340)が配置された状態でも、ロータコア(21、121、221、321)と回転伝達部材(30)とを容易に溶接することができる。
【0064】
また、第1および第2実施形態では、上記のように、回転軸線方向から見て、溶接部(50、150、250、350)は、ロータコア(21、121、221、321)の周方向に沿って等角度間隔で複数設けられている。このように構成すれば、回転軸線方向から見て、溶接部(50、150、250、350)が設けられた状態のロータコア(21、121、221、321)が対称な形状(線対称、点対称)になるので、ロータコア(21、121、221、321)の形状のアンバランスを防止することができる。その結果、ロータコア(21、121、221、321)をバランスよく回転させることができる。
【0065】
また、第1および第2実施形態では、上記のように、溶接開始点(S1、S2)がエンドプレート(40、140、240、340)に配置されるように、エンドプレート(40、140、240、340)の貫通孔(41、141)の内側面(41a、141a)と、ロータコア(21、121、221、321)の貫通孔(23、123)の内側面(23a、123a)とを溶接して溶接部(50、150、250、350)を形成する工程を備える。このように構成すれば、ロータコア(21、121、221、321)の端部における溶接品質の安定化を図りながら、溶接に起因する歪が大きくなるのを防止することが可能なロータ(20、120、220、320)の製造方法を提供することができる。
【0066】
また、第1実施形態では、上記のように、溶接部(50、250、350)を形成する工程は、溶接の開始時から溶接熱源の出力を徐々に上げながら、エンドプレート(40、240、340)に対して溶接ヘッド(60)を相対的に移動させることにより、エンドプレート(40、240、340)に位置する溶接部(50、250、350)の回転軸線方向の端部からロータコア(21、221、321)側に向かって溶接断面積(溶接深さd1、d21)が徐々に増加された溶接スロープ部(51、351)を形成する工程を含む。このように構成すれば、溶接部(50、250、350)の電磁鋼板(22、322)に対応する部分の溶接断面積(溶接深さd1、d21)が比較的大きくなるので、その分、ロータコア(21、221、321)と回転伝達部材(30)との溶接の溶接断面積(溶接深さd2)を小さくすることができる。
【0067】
また、第2実施形態では、上記のように、溶接部(150)を形成する工程は、溶接の開始時から溶接熱源の出力を一定にした状態で、エンドプレート(140)およびロータコア(121)に対して溶接ヘッド(60)を相対的に移動させることにより、溶接断面積(溶接深さd11)がエンドプレート(140)に位置する溶接部(150)の回転軸方向の端部からロータコア(121)に渡って一定になる溶接部(150)を形成する工程である。このように構成すれば、溶接熱源の出力を調節する必要がない(一定の出力のままでよい)ので、溶接熱源の制御を簡略化することができる。
【0068】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0069】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、エンドプレートの貫通孔の内側面から、ロータコアの貫通孔の内側面に渡って溶接部が設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図10の第1実施形態の第1変形例によるロータ220のように、エンドプレート240の外側面240aから、ロータコア221の外側面220aに渡って溶接部250を設けてもよい。
【0070】
また、上記第1および第2実施形態では、溶接開始点および溶接終了点の両方が、エンドプレートに配置される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、溶接開始点および溶接終了点のうちの一方のみが、エンドプレートに配置されていてもよい。この場合、ロータコア(複数の電磁鋼板)において、溶接が開始(または終了)されるが、ロータコアの端部において、溶接熱源の出力を徐々に増加(または減少)させることにより、溶接品質の安定化を図ることが可能である。
【0071】
また、上記第1および第2実施形態では、エンドプレートがSUS304から構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、エンドプレートが鉄を含む非磁性体であれば、SUS304以外の材料から構成されていてもよい。
【0072】
また、上記第1実施形態では、溶接部の両端に溶接スロープ部が設けられ、上記第2実施形態では、溶接部の両端に溶接スロープ部が設けられていない例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、溶接部の一方端に溶接スロープ部を設けて、溶接部の他方端に溶接スロープ部を設けなくてもよい。
【0073】
また、上記第1実施形態では、溶接スロープ部の最大の溶接断面積(溶接深さ)の部分が、エンドプレートに配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図11の第1実施形態の第2変形例によるロータ320のように、溶接部350の溶接スロープ部351の最大の溶接断面積(溶接深さd21)の部分が、エンドプレート340ではなく、ロータコア321(複数の電磁鋼板322)に配置されていてもよい。すなわち、溶接熱源の出力がエンドプレート340からロータコア321(複数の電磁鋼板322)に渡って、徐々に増加(または、減少)される。
【0074】
また、上記第1および第2実施形態では、エンドプレートの凸部と、ロータコアの凸部とが溶接される例を示したが、本発明はこれに限られない。エンドプレートおよびロータコアの溶接される部分の形状は凸部以外の形状でもよい。
【0075】
また、上記第1および第2実施形態では、レーザがエンドプレートおよびロータコアに対して垂直に(回転軸線方向に直交するように)照射される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、レーザをエンドプレートおよびロータコアに対して傾斜させて照射してもよい。