特許第6769293号(P6769293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769293
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】監視装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20201005BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   H04N7/18 D
   H04N7/18 E
   H04N5/232 990
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-250934(P2016-250934)
(22)【出願日】2016年12月26日
(65)【公開番号】特開2018-107578(P2018-107578A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 匡憲
【審査官】 益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−175843(JP,A)
【文献】 特開2014−052277(JP,A)
【文献】 特開2007−126025(JP,A)
【文献】 特開2009−085927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
H04N 5/225
G01S 17/00
G01C 3/00
G08B 13/00
G08B 21/00
G08B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された監視エリアを監視する監視装置であって、
前記監視エリア内を所定の検出方向に走査するようにレーザ光を照射し、その照射されたレーザ光の反射光を受光し、前記レーザ光の照射時点から前記反射光の受光時点までの時間に基づいて前記レーザ光を反射した物体までの距離を計測する光学式距離計と、
前記監視エリア内の所定の領域を撮像するカメラ装置と、
前記カメラ装置を制御するカメラ制御部と、
前記光学式距離計による距離の計測結果に基づいて前記監視エリア内への物体の侵入を検知する侵入検知部と、
前記レーザ光の照射方向のうち背景物が存在する方向である背景有り方向を表す背景情報を予め取得する背景情報取得部と、
前記背景有り方向に前記レーザ光が照射された際に、前記光学式距離計により距離が計測されないと、その背景有り方向に低反射物体が存在することを検知する低反射物体検知部と、
を備え、
前記カメラ制御部は、
前記侵入検知部により前記物体の侵入が検知されると、その物体を含む領域を撮像するように前記カメラ装置を制御し、
前記低反射物体検知部により前記低反射物体が存在することが検知されると、その低反射物体が存在することが検知された方向を含む領域を撮像するように前記カメラ装置を制御し、
さらに、監視の対象とする物体の前記検出方向についての長さである監視物体サイズを設定する監視物体サイズ設定部を備え、
前記低反射物体検知部は、前記低反射物体が存在することを検知した際、前記光学式距離計により距離が計測されない方向の範囲および前記監視物体サイズを用いて、その低反射物体の位置を推定し、
前記カメラ制御部は、前記低反射物体検知部により前記低反射物体の位置が推定されると、その推定された位置を含む領域を撮像するように前記カメラ装置を制御する監視装置。
【請求項2】
予め設定された監視エリアを監視する監視装置であって、
前記監視エリア内を所定の検出方向に走査するようにレーザ光を照射し、その照射されたレーザ光の反射光を受光し、前記レーザ光の照射時点から前記反射光の受光時点までの時間に基づいて前記レーザ光を反射した物体までの距離を計測する光学式距離計と、
前記監視エリア内の所定の領域を撮像するカメラ装置と、
前記カメラ装置を制御するカメラ制御部と、
前記光学式距離計による距離の計測結果に基づいて前記監視エリア内への物体の侵入を検知する侵入検知部と、
前記レーザ光の照射方向のうち背景物が存在する方向である背景有り方向を表す背景情報を予め取得する背景情報取得部と、
前記背景有り方向に前記レーザ光が照射された際に、前記光学式距離計により距離が計測されないと、その背景有り方向に低反射物体が存在することを検知する低反射物体検知部と、
を備え、
前記カメラ制御部は、
前記侵入検知部により前記物体の侵入が検知されると、その物体を含む領域を撮像するように前記カメラ装置を制御し、
前記低反射物体検知部により前記低反射物体が存在することが検知されると、その低反射物体が存在することが検知された方向を含む領域を撮像するように前記カメラ装置を制御し、
前記背景情報取得部により前記レーザ光の照射方向の一部についての前記背景情報が取得されていないとき、
前記カメラ制御部は、前記侵入検知部により前記物体の侵入が検知されておらず、且つ前記低反射物体検知部により前記低反射物体が存在することが検知されていない期間、前記背景情報が取得されていない方向を撮像するように前記カメラ装置を制御する監視装置。
【請求項3】
予め設定された監視エリアを監視する監視装置であって、
前記監視エリア内を所定の検出方向に走査するようにレーザ光を照射し、その照射されたレーザ光の反射光を受光し、前記レーザ光の照射時点から前記反射光の受光時点までの時間に基づいて前記レーザ光を反射した物体までの距離を計測する光学式距離計と、
前記監視エリア内の所定の領域を撮像するカメラ装置と、
前記カメラ装置を制御するカメラ制御部と、
前記光学式距離計による距離の計測結果に基づいて前記監視エリア内への物体の侵入を検知する侵入検知部と、
前記レーザ光の照射方向のうち背景物が存在する方向である背景有り方向を表す背景情報を予め取得する背景情報取得部と、
前記背景有り方向に前記レーザ光が照射された際に、前記光学式距離計により距離が計測されないと、その背景有り方向に低反射物体が存在することを検知する低反射物体検知部と、
を備え、
前記カメラ制御部は、
前記侵入検知部により前記物体の侵入が検知されると、その物体を含む領域を撮像するように前記カメラ装置を制御し、
前記低反射物体検知部により前記低反射物体が存在することが検知されると、その低反射物体が存在することが検知された方向を含む領域を撮像するように前記カメラ装置を制御し、
さらに、前記監視エリア内の所定の領域を重点監視エリアとして設定する重点監視エリア設定部を備え、
前記カメラ制御部は、前記侵入検知部により前記物体の侵入が検知されておらず、且つ前記低反射物体検知部により前記低反射物体が存在することが検知されていない期間、前記重点監視エリアを撮像するように前記カメラ装置を制御する監視装置。
【請求項4】
前記監視エリアは、建物に隣接する敷地を含む領域であり、
前記重点監視エリアは、前記建物の出入口および窓のうち少なくとも一方を含む領域に設定される請求項に記載の監視装置。
【請求項5】
前記重点監視エリアは、前記光学式距離計の設置部分を含む領域に設定される請求項またはに記載の監視装置。
【請求項6】
予め設定された監視エリアを監視する監視装置であって、
前記監視エリア内を所定の検出方向に走査するようにレーザ光を照射し、その照射されたレーザ光の反射光を受光し、前記レーザ光の照射時点から前記反射光の受光時点までの時間に基づいて前記レーザ光を反射した物体までの距離を計測する光学式距離計と、
前記監視エリア内の所定の領域を撮像するカメラ装置と、
前記カメラ装置を制御するカメラ制御部と、
前記光学式距離計による距離の計測結果に基づいて前記監視エリア内への物体の侵入を検知する侵入検知部と、
前記レーザ光の照射方向のうち背景物が存在する方向である背景有り方向を表す背景情報を予め取得する背景情報取得部と、
前記背景有り方向に前記レーザ光が照射された際に、前記光学式距離計により距離が計測されないと、その背景有り方向に低反射物体が存在することを検知する低反射物体検知部と、
を備え、
前記カメラ制御部は、
前記侵入検知部により前記物体の侵入が検知されると、その物体を含む領域を撮像するように前記カメラ装置を制御し、
前記低反射物体検知部により前記低反射物体が存在することが検知されると、その低反射物体が存在することが検知された方向を含む領域を撮像するように前記カメラ装置を制御し、
前記カメラ制御部は、前記侵入検知部により前記物体の侵入が検知され、且つ前記低反射物体検知部により前記低反射物体が存在することが検知された場合、前記侵入検知部により検知された物体を優先的に撮像するように前記カメラ装置を制御する監視装置。
【請求項7】
予め設定された監視エリアを監視する監視装置であって、
前記監視エリア内を所定の検出方向に走査するようにレーザ光を照射し、その照射されたレーザ光の反射光を受光し、前記レーザ光の照射時点から前記反射光の受光時点までの時間に基づいて前記レーザ光を反射した物体までの距離を計測する光学式距離計と、
前記監視エリア内の所定の領域を撮像するカメラ装置と、
前記カメラ装置を制御するカメラ制御部と、
前記光学式距離計による距離の計測結果に基づいて前記監視エリア内への物体の侵入を検知する侵入検知部と、
前記レーザ光の照射方向のうち背景物が存在する方向である背景有り方向を表す背景情報を予め取得する背景情報取得部と、
前記背景有り方向に前記レーザ光が照射された際に、前記光学式距離計により距離が計測されないと、その背景有り方向に低反射物体が存在することを検知する低反射物体検知部と、
を備え、
前記カメラ制御部は、
前記侵入検知部により前記物体の侵入が検知されると、その物体を含む領域を撮像するように前記カメラ装置を制御し、
前記低反射物体検知部により前記低反射物体が存在することが検知されると、その低反射物体が存在することが検知された方向を含む領域を撮像するように前記カメラ装置を制御し、
前記カメラ制御部は、前記侵入検知部により前記物体の侵入が検知され、且つ前記低反射物体検知部により前記低反射物体が存在することが検知された場合、前記低反射物体検知部により存在することが検知された前記低反射物体を優先的に撮像するように前記カメラ装置を制御する監視装置。
【請求項8】
前記背景情報取得部は、前記監視が実行されていない期間における前記光学式距離計による距離の計測結果に基づいて、前記レーザ光の照射方向のうち前記距離が計測された方向を前記背景有り方向として前記背景情報の取得を行う請求項1からのいずれか一項に記載の監視装置。
【請求項9】
前記背景情報取得部は、前記監視が開始されるタイミング毎に前記背景情報の取得を行う請求項に記載の監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式距離計およびカメラ装置を用いて監視エリアを監視する監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
監視エリアを監視するシステムに用いられるカメラ装置として、例えばパン・チルト・ズーム機能を有するPTZカメラが採用されることがある。このようなカメラ装置は、撮像位置を制御することが可能であることから、1台で比較的広い範囲の領域を撮像することができる。そのため、カメラ装置単体で上述したシステムが構成されることもある。
【0003】
このようにカメラ装置単体で構成したシステムでは、監視エリアが広範囲にわたる場合には次のような問題が生じる。すなわち、この場合、通常はカメラ装置により監視エリア全域を撮像しておき、その撮像した画像を用いた画像認識などにより侵入検知を行い、侵入があった場合には侵入方向を拡大して撮像するといった制御が行われることになる。しかしながら、画像認識による侵入検知では検知の精度や速度を十分に高めることが難しい。そのため、カメラ装置単体で構成したシステムでは、広範囲にわたる監視エリアへの侵入があった際、その侵入方向を素早く且つ確実に撮像することが困難であった。
【0004】
そこで、例えば屋外警備のような広範囲の監視を必要とする警備システムなどでは、レーザ距離計などのレーザレーダ装置(光学式距離計に相当)とカメラ装置を組み合わせて構成されたシステムが採用されることが多い。例えば、特許文献1、2には、レーザレーダ装置を用いて監視エリアを走査することで侵入者を検知し、検知した侵入者の移動に追従させてカメラ装置で継続的に侵入者を撮像する技術が開示されている。このような技術によれば、レーザレーダ装置により広範囲を監視することで侵入者を素早く検知(位置計測)し、その検知した方向へとカメラの撮像方向を制御することで侵入者の確実な撮像が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3011121号公報
【特許文献2】特開2014−175843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザレーダ装置は、レーザ光を照射した時点からその反射光を受光した時点までの時間に基づいて、そのレーザ光を反射した物体までの距離を計測している。そのため、レーザレーダ装置は、レーザ光が照射される部位の反射率が比較的低い物体(以下、低反射物体と呼ぶ)については、距離を計測することができずに、検知できないおそれがある。
【0007】
すなわち、レーザ光が低反射物体に照射された場合、照射されたレーザ光の大部分が低反射物体に吸収されてしまうことから、非常に小さい強度の反射光しか得られなくなる。そのため、レーザレーダ装置は、低反射物体については、測距を行うために必要な強度の反射光を受光できず、その検知(距離計測)ができなくなる。
【0008】
そして、監視エリアへの侵入を試みる侵入者が、例えばカーボン素材などの低反射物体で、自分の身体のうち少なくともレーザ光が照射される可能性のある部分を覆い隠した場合、レーザレーダ装置による検知が不可能となるため、従来の警備システムでは、このような侵入者を検知することができない可能性がある。
【0009】
さらに、このようにして監視エリア内に侵入した侵入者によって、レーザレーダ装置自体が低反射物体で覆われてしまうと、監視エリア内の全域にわたってレーザレーダ装置を用いた物体の検知ができなくなる。そうすると、侵入者が容易に監視をすり抜けることが可能となってしまい、警備システムとして全く機能しなくなるおそれがある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、低反射物体についても検知することができる監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の監視装置は、予め設定された監視エリアを監視するものであり、光学式距離計と、監視エリア内の所定の領域を撮像するカメラ装置と、カメラ装置を制御するカメラ制御部と、を備えている。光学式距離計は、監視エリア内を所定の検出方向に走査するようにレーザ光を照射し、その照射されたレーザ光の反射光を受光し、レーザ光の照射時点から反射光の受光時点までの時間に基づいてレーザ光を反射した物体までの距離を計測する。
【0012】
侵入検知部は、光学式距離計による距離の計測結果に基づいて監視エリア内への物体の侵入を検知する。カメラ制御部は、侵入検知部により物体の侵入が検知されると、その物体を含む領域を撮像するようにカメラ装置を制御する。つまり、監視装置は、光学式距離計による測距に基づいて監視エリア内への物体の侵入を検知すると、その侵入した物体をカメラ装置により撮像するようになっている。そのため、監視装置は、侵入した物体が低反射物体ではない場合、その侵入を素早く検知するとともに、その物体を確実に撮像することができる。
【0013】
さらに、監視装置は、背景情報取得部および低反射物体検知部を備えており、これにより、侵入した物体が低反射物体である場合にも、その侵入を検知することができる。すなわち、背景情報取得部は、レーザ光の照射方向のうち背景物が存在する方向である背景有り方向を表す背景情報を予め取得する。ここで言う背景物とは、監視エリアの背景(光学式距離計から見て後方)に元々存在する物体のことであり、例えば監視エリアが建物に隣接した駐車場などの敷地である場合には、その駐車場の周囲に存在する塀、ゲートなどが想定される。
【0014】
監視装置は、このような背景情報を予め取得しておくことで、次のようにして低反射物体の存在を検知することが可能となっている。すなわち、背景物が存在する背景有り方向にレーザ光が照射されると、その照射方向に物体が存在する場合にはその物体までの距離が計測され、その照射方向に物体が存在しない場合には背景物までの距離が計測されるはずである。
【0015】
しかし、その照射方向に存在する物体が低反射物体である場合、その低反射物体によりレーザ光が吸収されてしまうため、光学式距離計は距離を計測することができない。このような点を考慮し、低反射物体検知部は、背景有り方向にレーザ光が照射された際に、光学式距離計により距離が計測されないと、その背景有り方向に低反射物体が存在することを検知する。このようにすることで、監視装置は、監視エリア内に低反射物体が侵入した場合でも、その侵入を検知することができる。
【0016】
そして、カメラ制御部は、低反射物体検知部により低反射物体が存在することが検知されると、その低反射物体が存在することが検知された方向を含む領域を撮像するようにカメラ装置を制御する。したがって、監視装置は、監視エリア内に侵入した物体が低反射物体であるか否かにかかわらず、その物体の侵入を素早く検知するとともに、その物体を確実に撮像することができる。
【0017】
請求項1に記載の監視装置によれば、監視エリア内に侵入した低反射物体が存在する方向を検知することはできるものの、その位置までは検知することができない。ところで、低反射物体のサイズ(検出方向についての長さ)が一定であれば、その低反射物体までの距離に応じて光学式距離計により距離が計測されない方向の範囲が変化する。具体的には、低反射物体までの距離が近いほど距離が計測されない方向の範囲が広くなり、距離が遠いほど距離が計測されない方向の範囲が狭くなる。
【0018】
このような点を考慮し、請求項に記載の監視装置では、次のようにして低反射物体の位置を推定するようになっている。すなわち、請求項に記載の監視装置は、さらに、監視の対象とする物体の検出方向についての長さである監視物体サイズを設定する監視物体サイズ設定部を備えている。そして、低反射物体検知部は、低反射物体が存在することを検知した際、光学式距離計により距離が計測されない方向の範囲および設定された監視物体サイズを用いて、その低反射物体の位置を推定する。このようにすることで、請求項に記載の監視装置では、低反射物体の位置をも検知することが可能となっている。
【0019】
また、この場合、カメラ制御部は、低反射物体検知部により低反射物体の位置が推定されると、その推定された位置を含む領域を撮像するようにカメラ装置を制御する。このようにすれば、監視エリア内に低反射物体が侵入したとしても、その低反射物体を一層素早く且つ精度良く検知して撮像することができる。なお、例えば監視装置が警備システムに適用される場合には、監視の対象とする物体は主に人間であるため、平均的な人の肩幅などを監視物体サイズとして設定しておけばよい。このようにすれば、監視エリア内に、低反射物体で自分の身体を覆い隠した人間(侵入者)が侵入した場合でも、その侵入者を素早く且つ精度良く検知してカメラ装置で確実に撮像することが可能となり、警備システムとしての役割を十分に果たすことができる。
【0020】
低反射物体検知部は、監視エリアの全域にわたって背景物が存在する場合には、監視エリア内に侵入した低反射物体を確実に検知することができるが、監視エリアの周囲の一部、つまりレーザ光の照射方向の一部に背景物が存在しない場合には、その方向に存在する低反射物体を検知することができない。そこで、請求項に記載の監視装置では、背景情報取得部によりレーザ光の照射方向の一部についての背景情報が取得されていないとき、カメラ制御部は、次のような制御を行う。
【0021】
すなわち、カメラ制御部は、侵入検知部により物体の侵入が検知されておらず、且つ低反射物体検知部により低反射物体が存在することが検知されていない期間、背景情報が取得されていない方向を撮像するようにカメラ装置を制御する。このようにすれば、監視エリア内への物体の侵入が検知されていないときには、背景物が存在しない方向がカメラ装置により常に撮像されることになる。そのため、背景物が存在しない方向から低反射物体が侵入した場合でも、その物体をカメラ装置により撮像することができる。したがって、請求項に記載の監視装置によれば、監視エリアの周囲の一部に背景物が存在しないような設置環境においても、監視エリア内に侵入する物体の侵入を素早く且つ確実に検知して撮像することができる。
【0022】
請求項に記載の監視装置は、さらに、監視エリア内の所定の領域を重点監視エリアとして設定する重点監視エリア設定部を備えている。そして、カメラ制御部は、侵入検知部により物体の侵入が検知されておらず、且つ低反射物体検知部により低反射物体が存在すると判断されていない期間、重点監視エリアを撮像するようにカメラ装置を制御する。このようにすれば、例えば、背景物が存在しない方向から侵入した低反射物体についても、重点監視エリアとして設定された領域を通過した際に確実に撮像することができる。
【0023】
重点監視エリアとしては、監視対象となる物体が確実に通過するような領域に設定しておくとよい。例えば、請求項に記載の監視装置では、監視エリアは、建物に隣接する敷地を含む領域であり、重点監視エリアは、建物の出入口および窓のうち少なくとも一方を含む領域に設定されている。監視エリアである敷地に侵入した物体(侵入者)は、その敷地に隣接する建物への侵入をも試みることが多い。そこで、このように建物の出入口や窓を含む領域を重点監視エリアとして設定しておけば、低反射物体検知部により検知できない場合でも、このような侵入者を確実にカメラ装置で撮像することができる。
【0024】
また、請求項に記載の監視装置では、監視エリアは、光学式距離計の設置部分を含む領域に設定されている。前述したように、監視エリア内に侵入した侵入者によって、光学式距離計自体が低反射物体で覆われてしまうと、監視装置としての役割を全く果たすことができなくなるおそれがある。そこで、光学式距離計の設置部分を含む領域を重点監視エリアとして設定しておけば、侵入検知部および低反射物体検知部により検知できなかった侵入者が光学式距離計の設置部分まで到達してしまった場合でも、光学式距離計が低反射物体で覆われる前に、その侵入者をカメラ装置で確実に撮像することができる。
【0025】
請求項に記載の監視装置では、カメラ制御部は、侵入検知部により物体の侵入が検知され、且つ低反射物体検知部により低反射物体が存在することが検知された場合、侵入検知部により検知された物体を優先的に撮像するようにカメラ装置を制御する。このように制御する理由は、次の通りである。
【0026】
すなわち、監視装置により検知される物体としては、低反射物体よりも、測距を行うために十分な強度の反射光が得られる通常の反射率を有する物体(以下、通常の物体と呼ぶ)が多い。したがって、上述したように、通常の物体と低反射物体が同時期に検知された場合、侵入検知部により検知された通常の物体の撮像を低反射物体検知部により検知された低反射物体の撮像よりも優先することで、通常の物体の検知精度については従来技術と同程度の精度を維持しつつ、従来技術では検知することができなかった稀に存在する低反射物体についても検知することが可能となる。
【0027】
請求項に記載の監視装置では、カメラ制御部は、侵入検知部により物体の侵入が検知され、且つ低反射物体検知部により低反射物体が存在することが検知された場合、低反射物体検知部により存在することが検知された低反射物体を優先的に撮像するようにカメラ装置を制御する。このように制御する理由は、次の通りである。
【0028】
すなわち、侵入検知部により検知された物体は、その後も継続的に検知(追尾)することが可能であると考えられるため、カメラ装置による撮像を直ちに行わなくとも、いずれは撮像することができるはずである。一方、低反射物体については、その後も継続的に存在を検知することができるとは限らない。そこで、上述したように、通常の物体と低反射物体が同時期に検知された場合、いつ検知できなくなるか分からない低反射物体の撮像を優先することで、侵入検知部により検知された物体と低反射物体の両方をカメラ装置により確実に撮像することができる。
【0029】
請求項に記載の監視装置では、背景情報取得部は、監視が実行されていない期間における光学式距離計による距離の計測結果に基づいて、レーザ光の照射方向のうち距離が計測された方向を背景有り方向として背景情報の取得を行う。このようにすれば、光学式距離計などが実際に設置される設置環境に存在する背景物の有無や配置を的確に表した背景情報を取得することが可能となり、低反射物体の検知精度をさらに高めることができる。
【0030】
例えば、監視エリアが駐車場である場合、駐車車両の有無やゲートの開閉状態などにより、背景物の有無やその配置などの状況が変化する可能性がある。そこで、請求項に記載の監視装置では、背景情報取得部は、監視が開始されるタイミング毎に背景情報の取得を行う。このようにすれば、監視が開始されるタイミング毎に背景情報が最新の情報へと更新されるため、背景物の状況に変化が生じた場合でも、その変化を反映した背景情報に基づいて低反射物体の検知を行うことが可能となり、その検知の精度を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1実施形態を示すもので、警備システムの構成を模式的に示す図
図2】警備システムの監視対象となる監視エリアを模式的に示す図
図3】警備システムの初期設定の流れを模式的に示す図
図4】警備システムによる監視動作の流れを模式的に示す図
図5】監視エリアの更新を説明するための図
図6】物体が検知されていない場合におけるカメラ制御の内容を示す図
図7】監視エリアの一部に背景物が存在しない設置環境を模式的に示す図その1
図8】監視エリアの一部に背景物が存在しない設置環境を模式的に示す図その2
図9】第2実施形態を示すもので、監視エリアの全てに背景物が存在しない設置環境を模式的に示す図その1
図10】監視エリアの全てに背景物が存在しない設置環境を模式的に示す図その2
図11】第3実施形態を示すもので、監視装置およびその監視対象を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について、図1図8を参照して説明する。
【0033】
図1に示す警備システム1は、予め設定された監視エリアに対する侵入監視警備を行うシステムである。本実施形態では、図2に示すように、カーディーラーなどの店舗(建物)に隣接する駐車場を含む敷地が監視エリア2となっている。その監視エリア2の周囲には、塀3、ゲート4および店舗の壁である建物壁5が存在する。
【0034】
図1に示すように、警備システム1は、レーザレーダ装置6、カメラ装置7およびモニタ装置8を備えている。この場合、レーザレーダ装置6およびカメラ装置7により、監視エリア2を監視する監視装置9が構成される。図2に示すように、レーザレーダ装置6は、建物壁5の中央付近に設置され、カメラ装置7は建物壁5の図2における左端付近に設置されている。なお、レーザレーダ装置6およびカメラ装置7は、図示しない専用のポールなどに取り付けられている。
【0035】
図1に示すように、レーザレーダ装置6は、制御部10、記憶部11、レーザ走査部12、距離計測部13、侵入検知部14、背景情報取得部15、低反射物体検知部16、監視物体サイズ設定部17、重点監視エリア設定部18、カメラ制御部19、入出力部20などを備えている。
【0036】
制御部10は、図示しないCPUやROMおよびRAMなどを有するマイクロコンピュータを主体として構成されており、記憶部11などに記憶されているコンピュータプログラムを実行することによりレーザ走査部12などを制御する。なお、本実施形態では、距離計測部13、侵入検知部14、背景情報取得部15、低反射物体検知部16、監視物体サイズ設定部17、重点監視エリア設定部18およびカメラ制御部19は、制御部10により実行されるコンピュータプログラムによりソフトウェア的に実現されている。また、レーザ走査部12および距離計測部13により光学式距離計21が構成される。
【0037】
記憶部11は、図示しないメモリ素子またはHDDなどの記憶装置などにより構成されており、コンピュータプログラムや、後述する各種の処理において用いられる各種の情報などを記憶する。入出力部20は、図示しない上位の制御装置からの指令信号の入力や、物体の検知結果の報知出力などを行う。
【0038】
レーザ走査部12は、レーザ照射部22、レーザ照射部22から照射されたレーザ光を監視エリアに向かって反射するとともに監視エリア内の物体で反射した光を受光するミラー23、予め定められている角度分解能および走査周期にてミラー23を回転駆動するモータ24および反射光を受光するレーザ受光部25を備えている。なお、走査周期は、監視すべき対象物の動きを見逃さないように、ミリ秒オーダー(例えば30m秒)の極めて短い周期に設定されている。
【0039】
このような構成により、監視エリア2内を所定の検出方向(この場合、水平方向)に走査するようにレーザ光が照射される。そして、監視エリア2内に存在する物体で反射した反射光は、レーザ受光部25にて受光される。なお、この構成は一例であり、レーザ照射部22を駆動する構成(照射時にはミラー23を利用しない構成)であってもよい。
【0040】
距離計測部13は、レーザ光の照射時点から反射光の受光時点までの時間に基づいて、そのレーザ光を反射した物体までの距離を計測する。侵入検知部14は、距離計測部13による距離の計測結果などに基づいて、監視エリア2内に存在する物体の位置を検知する、つまり監視エリア2内への物体の侵入を検知する。侵入検知部14は、監視エリア2内への物体の侵入を検知すると、入出力部20などを介してその検知結果を警備管理者やユーザに報知する。
【0041】
上記構成では、監視エリア2の周囲には、元々、塀3およびゲート4が存在する。これら塀3およびゲート4は、監視エリア2の背景(レーザレーダ装置6から見て後方)に存在する背景物に相当する。上記構成において、背景物が存在する方向(以下、背景有り方向と呼ぶ)にレーザ光が照射されると、その照射方向に通常の物体が存在する場合にはその物体までの距離が計測され、その照射方向に物体が存在しない場合には背景物である塀3またはゲート4までの距離が計測されるはずである。
【0042】
しかし、その照射方向に低反射物体Mが存在する場合、その低反射物体Mによりレーザ光が吸収されてしまうため、距離計測部13は距離を計測することができない。本実施形態では、このような点を考慮し、次のようにして低反射物体Mの存在を検知することを可能としている。
【0043】
すなわち、背景情報取得部15は、背景情報を予め取得する。背景情報は、レーザ光の照射方向のうち背景物が存在する方向である背景有り方向と、その背景物までの距離である背景距離値とが対応付けられた情報である。具体的には、背景情報取得部15は、警備システム1による監視が実行されていない期間における距離計測部13による距離の計測結果に基づいて、レーザ光の照射方向のうち距離が計測された方向を背景有り方向として背景情報の取得を行う。また、背景情報取得部15は、警備システム1による監視が開始されるタイミング毎に、このような背景情報の取得を行う。
【0044】
そして、警備システム1による監視が実行されている期間、低反射物体検知部16は、背景有り方向にレーザ光が照射された際に、距離計測部13により距離が計測されないと、その背景有り方向に低反射物体Mが存在することを検知する。低反射物体検知部16は、監視エリア2内に低反射物体Mが存在することを検知すると、入出力部20などを介してその検知結果を警備管理者やユーザに報知する。このような手法によれば、低反射物体検知部16は、監視エリア2内に侵入した低反射物体Mが存在する方向を検知することはできるものの、その位置までは検知することができない。
【0045】
ところで、低反射物体Mのサイズが一定であれば、その低反射物体Mまでの距離に応じて距離計測部13により距離が計測されない方向の範囲(角度範囲)が変化する。具体的には、低反射物体Mまでの距離が近いほど角度範囲が広くなり、距離が遠いほど角度範囲が狭くなる。なお、この場合のサイズとは、前述した検出方向(水平方向)についての長さ(横長)である。
【0046】
このような点を考慮し、本実施形態では、次のようにして低反射物体Mの位置を推定するようになっている。すなわち、監視物体サイズ設定部17は、監視の対象とする物体のサイズである監視物体サイズを設定する。このような設定は、後述する初期設定において、例えばユーザによる所定の操作に応じて実行される。なお、監視物体サイズ(モデルサイズ)は、特に検知したい対象物に応じて決定すればよい。本実施形態の警備システム1の場合、監視の対象とする物体は主に人間であるため、平均的な人の肩幅などが監視物体サイズとして設定される。
【0047】
そして、低反射物体検知部16は、低反射物体Mが存在することを検知した際、距離計測部13により距離が計測されない方向の角度範囲および設定された監視物体サイズを用いて、その低反射物体Mまでの距離を求める。例えば、下記(1)式に基づいて低反射物体Mまでの距離Lを求めることができる。ただし、距離が計測されない方向の角度範囲をθとし、監視物体サイズをSとする。
L=(S/2)÷tan(θ/2) …(1)
【0048】
上記(1)式によれば、監視物体サイズSが例えば50cmである場合、角度範囲θが90度であれば低反射物体までの距離Lは25cmとなり、角度範囲θが60度であれば距離Lは約43cmとなり、角度範囲θが30度であれば距離Lは約93cmとなる。低反射物体検知部16は、上述したようにして低反射物体Mまでの距離Lを求め、それに基づいて低反射物体Mの概略的な位置を推定する。このように、本実施形態では、低反射物体Mの概略的な位置を検知することが可能となっている。
【0049】
上述した距離計測部13により距離が計測されない方向の角度範囲は、反射光が受光されない角度の連続数(受光欠損角度連続数)により得ることができる。したがって、上記角度範囲を取得するための処理、ひいては低反射物体Mの概略的な位置を推定するための処理は、1走査周期中に、通常の物体検知のための処理と並行して逐次実行することができる。このようにすれば、制御部10における処理負荷が分散され、その処理負荷が過大になることを防止できる。
【0050】
重点監視エリア設定部18は、監視エリア2内の所定の領域を重点監視エリアとして設定する。このような設定は、後述する初期設定において、例えばユーザによる所定の操作に応じて実行される。重点監視エリアは、建物壁5に設けられた店舗の出入口26および窓(図示略)を含む領域に設定されている。なお、重点監視エリアは、監視対象となる物体(侵入者)が確実に通過するような領域に設定されていればよく、侵入経路として可能性の高い出入口26および窓の一方を含む領域や、レーザレーダ装置6の設置部分を含む領域などに設定してもよい。
【0051】
カメラ制御部19は、カメラ装置7の動作を制御する。この場合、カメラ装置7は、PTZカメラであり、パン機能、チルト機能およびズーム機能や、動画および静止画を撮影する機能などを備えている。カメラ装置7は、ズーム機能を有することで、物体を識別可能に撮像できる画角から監視エリア2の全域を撮像するための画角まで、その画角を変更可能となっている。なお、ここで言う「物体を識別可能」とは、例えば物体が人間であれば、その顔を認識できる程度のことを意味している。
【0052】
カメラ制御部19は、侵入検知部14により物体の侵入が検知されると、その物体を含む領域を撮像するようにカメラ装置7を制御する。具体的には、カメラ制御部19は、侵入検知部14により検知された物体の位置情報に基づいて、その物体が存在する方向を撮像するようにパンおよびチルト機能を制御するとともに、その物体を識別可能な画角で撮像するようにズーム機能の制御を行う。つまり、カメラ制御部19は、侵入検知部14により検知された物体の移動に追従させてカメラ装置7で継続的に物体を撮像する。これにより、警備システム1は、監視エリア2内に侵入した物体を自動追尾することができる。
【0053】
また、カメラ制御部19は、低反射物体検知部16により低反射物体Mが存在することが検知されると、その低反射物体Mが存在することが検知された方向を含む領域を撮像するようにカメラ装置7を制御する。具体的には、カメラ制御部19は、低反射物体検知部16により推定された低反射物体Mの位置情報に基づいて、その低反射物体Mが存在する方向を撮像するようにパンおよびチルト機能を制御するとともに、その物体を識別可能な画角で撮像するようにズーム機能の制御を行う。つまり、カメラ制御部19は、低反射物体検知部16により検知された低反射物体Mの移動に追従させてカメラ装置7で継続的に低反射物体Mを撮像する。これにより、警備システム1は、監視エリア2内に侵入した低反射物体Mを自動追尾することができる。
【0054】
モニタ装置8は、表示部27を備えており、カメラ装置7にて撮像した画像を表示する。モニタ装置8は、例えば図示しない警備室などに設けられており、警備員などによって監視が行われる。
【0055】
次に、警備システム1の初期設定について図3に沿って説明する。
警備システム1の初期設定は、レーザレーダ装置6およびカメラ装置7などの設置が完了した後に設置業者やユーザにより実行される。まずステップS1では、監視エリア2の初期設定が行われる。監視エリア2の初期設定は、例えば次のようにして行われる。すなわち、レーザレーダ装置6を動作させて背景情報(背景物の位置情報)の取得が行われる。そして、取得された背景物の位置情報に基づいて、背景物に囲まれた領域(例えば、塀3およびゲート4に囲まれた駐車場の全域)が監視エリア2として設定される。
【0056】
続くステップS2では、前述した重点監視エリアの設定が行われる。そして、ステップS3では、警備解除中のカメラ制御設定が行われる。警備解除中のカメラ制御設定とは、警備システム1による警備が実行されない期間にカメラ装置7による撮像動作をどのように制御するかを設定するものである。警備解除中のカメラ制御設定としては、例えば、監視エリア2の全域を見渡すように順次撮像するオートパトロールや、監視エリア2内の所定領域を常時撮像する定点監視などが挙げられる。そして、ステップS4では、前述した監視物体サイズの設定が行われる。
【0057】
続いて、警備システム1による監視動作の流れについて図4に沿って説明する。
警備システム1は、ユーザによる警備セットの操作により警備を開始するとともに、警備解除の操作により警備を終了するようになっている。例えば、カーディーラーの営業時間外に警備システム1による警備を実行する場合には、営業時間の終了後に警備セットの操作が行われるとともに、営業時間の開始前に警備解除の操作が行われることになる。そこで、まずステップS11では、警備セットの操作が実行されたか否かが判断される。ユーザにより警備セットの操作が実行されると、ステップS11で「YES」となってステップS12に進み、前述した背景情報の取得が行われる。
【0058】
続くステップS13では、取得した背景情報(背景有り方向および背景距離値)に基づいて、監視エリア2の更新が行われる。監視エリア2の更新は、次のようなルールに則って実施される。すなわち、ステップS12にて取得された背景距離値が初期設定時に取得された背景距離値よりも小さい値、つまり近い距離を示す方向については、ステップS12で取得した背景情報に基づいて監視エリア2を更新する。また、ステップS12にて取得された背景距離値が初期設定時に取得された背景距離値以上の値である方向、または背景距離値が計測できない方向については、監視エリア2の更新は行われず、初期設定時の値が反映される。
【0059】
例えば、図5(a)に示すように、初期設定時、駐車場の全域が監視エリア2として設定されていることとする。そして、図5(b)に示すように、警備セットの操作が実行された際、駐車場の一角に1台の車両28が駐車されているとともに、ゲート4が閉め忘れなどにより少し開いた状態となっている場合、初期設定時よりも近い距離が計測される箇所が存在するため、監視エリア2が更新される。
【0060】
更新後の監視エリア2Bは、図5(b)に示すように、初期設定時の監視エリア2に対し、駐車された車両28の領域だけが除外された領域となっている。なお、この場合、ゲート4が開いている箇所は距離が計測できないため、初期設定時の監視エリア2と同様の領域となっている。
【0061】
これに対し、図5(c)に示すように、警備セットの操作が実行された際、設置箇所の状況に変化がない場合、初期設定時よりも近い距離が計測される箇所は存在しないため、監視エリア2の更新は行われず、初期設定時と同様の領域が監視エリア2となる。
【0062】
このような監視エリア2の更新を行うステップS13の実行後はステップS14に進み、警備システム1による警備が開始される。そして、ステップS15では、警備解除の操作が実行されたか否かが判断される。ユーザにより警備解除の操作が実行されると、ステップS15で「YES」となってステップS16に進み、警備システム1による警備が終了される。
【0063】
続いて、警備実行中におけるカメラ制御部19による制御の内容について説明する。
[1]侵入検知部14または低反射物体検知部16による検知が有る場合
侵入検知部14により物体の侵入が検知された場合、カメラ制御部19は、検知された物体の移動に追従させて、その物体を継続的に撮像する。また、低反射物体検知部16により低反射物体が存在することが検知された場合、カメラ制御部19は、検知された低反射物体の移動に追従させて、その低反射物体を継続的に撮像する。
【0064】
なお、カメラ制御部19は、侵入検知部14により物体の侵入が検知され、且つ低反射物体検知部16により低反射物体が存在することが検知された場合、つまり侵入検知部14による物体の検知と低反射物体16による低反射物体の検知が概ね同じタイミングで(同時期に)なされた場合、侵入検知部14により検知された物体を優先的に撮像するようにカメラ装置7を制御する。
【0065】
[2]侵入検知部14および低反射物体検知部16による検知が無い場合
カメラ制御部19は、侵入検知部14により物体の侵入が検知されておらず、且つ低反射物体検知部16により低反射物体が存在することが検知されていない期間、図6に示す制御内容に基づいてカメラ装置7を制御する。
【0066】
(a)監視エリア2の全域にわたって背景物が存在する場合
図2図5(a)などに示すように、監視エリア2の全域にわたって背景物が存在する場合、レーザ光の照射方向の全てについての背景情報が取得されるため、低反射物体検知部16により監視エリア2内に侵入した低反射物体を確実に検知することができる。
【0067】
そこで、カメラ制御部19は、重点監視エリアが設定されている場合には重点監視エリアを常時または定期的に撮像するようにカメラ装置7を制御する。なお、カメラ装置7によって重点監視エリアの全域を一度に撮像することができない場合、カメラ制御部19は、重点監視エリアをオートパトロールするようにカメラ装置7を制御してもよい。
【0068】
また、カメラ制御部19は、重点監視エリアが設定されていない場合、警備解除中のカメラ制御設定に基づいてカメラ装置7を制御する。すなわち、カメラ制御部19は、監視エリア2の全域を見渡すように順次撮像するオートパトロールや、監視エリア2内の所定領域を常時撮像する定点監視などを実行するようにカメラ装置7を制御する。
【0069】
(b)監視エリア2の周囲の少なくとも一部に背景物が存在しない場合
図5(b)、図7図8などに示すように、例えばゲート4の閉め忘れなどにより監視エリア2の一部に背景物が存在しない場合、レーザ光の照射方向の一部についての背景情報が取得されないため、低反射物体検知部16は、その方向に存在する低反射物体を検知することができない。
【0070】
そこで、カメラ制御部19は、重点監視エリアが設定されている場合には重点監視エリアを常時または定期的に撮像するようにカメラ装置7を制御し、重点監視エリアが設定されていない場合には背景情報が取得されていない方向の領域R1、R2(図7図8参照)を常時または定期的に撮像するようにカメラ装置7を制御する。この場合、カメラ制御部19は、カメラ装置7により撮像された画像を用いた画像認識などにより物体の侵入検知を行い、侵入があった場合には侵入方向を拡大して撮像するといった制御を行うことで、背景物が存在しない方向から侵入した物体を継続的に撮像することができる。
【0071】
なお、図8に示すように、ゲート4が完全に開いており、背景物が取得されない方向の範囲が広い場合など、カメラ装置7によって、その方向の全域を一度に撮像することができない場合、カメラ制御部19は、背景情報が取得されていない方向をオートパトロールするようにカメラ装置7を制御してもよい。
【0072】
以上説明したように、本実施形態によれば次のような効果が得られる。
侵入検知部14は、レーザ光を反射した物体までの距離を計測する距離計測部13による距離の計測結果に基づいて監視エリア2内への物体の侵入を検知する。そして、カメラ制御部19は、侵入検知部14により物体の侵入が検知されると、その物体を含む領域を撮像するようにカメラ装置7を制御する。つまり、本実施形態の監視装置9は、従来技術と同様に、監視エリア2に通常の物体が侵入した場合、その侵入を素早く検知するとともに、その物体を確実に撮像することができる。
【0073】
さらに、背景情報取得部15は、レーザ光の照射方向のうち背景物が存在する背景有り方向を表す背景情報を予め取得しており、低反射物体検知部16は、背景有り方向にレーザ光が照射された際に、距離計測部13により距離が計測されないと、その背景有り方向に低反射物体が存在することを検知する。そのため、本実施形態の監視装置9は、監視エリア2内に低反射物体が侵入した場合でも、その侵入を検知することができる。
【0074】
そして、カメラ制御部19は、低反射物体検知部16により低反射物体が存在することが検知されると、その低反射物体が存在することが検知された方向を含む領域を撮像するようにカメラ装置7を制御する。したがって、本実施形態の監視装置9によれば、監視エリア2内に侵入した物体が低反射物体であるか否かにかかわらず、その物体の侵入を素早く検知するとともに、その物体を確実にカメラ装置7で撮像することができる。
【0075】
また、監視装置9は、監視物体サイズを設定する監視物体サイズ設定部17を備えている。前述したように、低反射物体のサイズが一定であれば、その低反射物体までの距離に応じて距離計測部13により距離が計測されない方向の角度範囲が変化する。そこで、低反射物体検知部16は、低反射物体が存在することを検知した際、上記角度範囲および設定された監視物体サイズを用いて、その低反射物体までの距離を求め、低反射物体の概略的な位置を推定する。
【0076】
そして、カメラ制御部19は、低反射物体検知部16により低反射物体の位置が推定されると、その推定された位置を含む領域を撮像するようにカメラ装置7を制御する。つまり、この場合、カメラ制御部19は、低反射物体の移動に追従させて、カメラ装置7の撮像方向を制御して、その低反射物体を継続的に撮像することができる。したがって、本実施形態の監視装置9によれば、監視エリア2内に侵入した低反射物体を一層素早く且つ精度良く検知してカメラ装置7で撮像することができる。
【0077】
なお、監視装置9が用いられる警備システム1では、監視の対象とする物体は主に人間であるため、監視物体サイズとしては、平均的な人の肩幅などに設定される。このようにすれば、監視エリア2内に、例えばカーボン素材などの低反射物体Mで自身の身体を覆い隠した人間(侵入者)が侵入した場合でも、その侵入者を素早く且つ確実に検知してカメラ装置7で確実に撮像することが可能となり、警備システム1としての役割を十分に果たすことができる。
【0078】
監視装置9は、監視エリア2内の所定の領域を重点監視エリアとして設定する重点監視エリア設定部18を備えている。重点監視エリア設定部18により重点監視エリアが設定されている場合、カメラ制御部19は、侵入検知部14により物体の侵入が検知されておらず、且つ低反射物体検知部16により低反射物体が存在すると判断されていない期間、重点監視エリアを撮像するようにカメラ装置7を制御する。
【0079】
ここで、監視装置9が用いられる警備システム1では、監視エリア2は、店舗に隣接する敷地(駐車場)を含む領域となっており、重点監視エリアは、店舗の出入口26や窓を含む領域に設定されている。監視エリア2である敷地に侵入した侵入者は、その敷地に隣接する店舗への侵入を目的としていることが多い。そこで、このように店舗の出入口26や窓を含む領域を重点監視エリアとして設定すれば、仮に侵入検知部14および低反射物体検知部16により検知できない侵入者が存在した場合でも、その侵入者を確実にカメラ装置7で撮像することができる。
【0080】
なお、重点監視エリアは、監視対象となる物体が確実に通過するような領域に設定すればよく、例えば、レーザレーダ装置6の設置部分を含む領域に設定してもよい。監視エリア2内に侵入した侵入者によって、レーザレーダ装置6自体が低反射物体で覆われてしまうと、監視装置9としての役割を全く果たすことができなくなるおそれがある。
【0081】
そこで、レーザレーダ装置6の設置部分を含む領域を重点監視エリアとして設定しておけば、侵入検知部14および低反射物体検知部16により検知できなかった侵入者がレーザレーダ装置6の設置部分まで到達してしまった場合でも、レーザレーダ装置6が低反射物体で覆われる前に、その侵入者をカメラ装置7で確実に撮像することができる。
【0082】
低反射物体検知部16は、図2に示すように監視エリア2の全域にわたって背景物が存在する場合には、監視エリア2内に侵入した低反射物体を確実に検知することができるが、図7および図8に示すように監視エリア2の周囲の一部に背景物が存在しない場合には、その方向に存在する低反射物体を検知することができない。
【0083】
そこで、カメラ制御部19は、重点監視エリアが設定されておらず、さらに背景情報取得部15によりレーザ光の照射方向の一部についての背景情報が取得されていないとき、次のような制御を行う。すなわち、カメラ制御部19は、侵入検知部14により物体の侵入が検知されておらず、且つ低反射物体検知部16により低反射物体が検知されていない期間、背景情報が取得されていない方向を撮像するようにカメラ装置7を制御する。
【0084】
このようにすれば、監視エリア2内への物体の侵入が検知されていないときには、背景物が存在しない方向がカメラ装置7により常に撮像されることになる。そのため、背景物が存在しない方向から低反射物体が侵入した場合でも、その物体をカメラ装置7により撮像することができる。したがって、本実施形態の監視装置9によれば、監視エリア2の周囲の一部に背景物が存在しないような設置環境においても、監視エリア2内に侵入する物体の侵入を素早く且つ確実に検知して撮像することができる。
【0085】
本実施形態では、カメラ制御部19は、侵入検知部14により物体の侵入が検知され、且つ低反射物体検知部16により低反射物体が存在することが検知された場合、つまり侵入検知部14による物体の侵入検知と低反射物体検知部16による低反射物体の検知が同時期になされた場合、侵入検知部14により検知された物体を優先的に撮像するようにカメラ装置7を制御する。このように制御する理由は、次の通りである。
【0086】
すなわち、監視装置9により検知される物体としては、低反射物体よりも、通常の物体(測距を行うために十分な強度の反射光が得られる通常の反射率を有する物体)が多い。したがって、侵入検知部14により検知された通常の物体の撮像を低反射物体検知部16により検知された低反射物体の撮像よりも優先することで、通常の物体の検知精度については従来技術と同程度の精度を維持しつつ、従来技術では検知することができなかった稀に存在する低反射物体についても検知することが可能となる。
【0087】
なお、カメラ制御部19は、侵入検知部14により物体の侵入が検知され、且つ低反射物体検知部16により低反射物体が存在することが検知された場合、つまり侵入検知部14による物体の侵入検知と低反射物体検知部16による低反射物体の検知が同時期になされた場合、低反射物体検知部16により存在することが検知された低反射物体を優先的に撮像するようにカメラ装置7を制御するように変更してもよい。このように制御する理由は、次の通りである。
【0088】
すなわち、侵入検知部14により検知された物体は、その後も継続的に検知することが可能であると考えられるため、カメラ装置7による撮像を直ちに行わなくとも、いずれは撮像することができるはずである。一方、低反射物体については、その後も継続的に存在を検知することができるとは限らない。そこで、このようなケースでは、いつ検知できなくなるか分からない低反射物体の撮像を優先することで、侵入検知部14により検知された物体と低反射物体の両方をカメラ装置7により確実に撮像することができる。
【0089】
背景情報取得部15は、監視が実行されていない期間における距離計測部13による距離の計測結果に基づいて、レーザ光の照射方向のうち距離が計測された方向を背景有り方向として背景情報の取得を行う。このようにすれば、レーザレーダ装置6などが実際に設置される設置環境に存在する背景物の有無や配置を的確に表した背景情報を取得することが可能となり、低反射物体の検知精度をさらに高めることができる。
【0090】
監視装置9が用いられる警備システム1の監視エリア2は、カーディーラーの駐車場を含む領域となっている。そのため、駐車車両の有無やゲートの開閉状態などにより、背景物の有無やその配置などの状況が変化する可能性がある。そこで、背景情報取得部15は、監視が開始されるタイミング毎に背景情報の取得を行うようになっている。このようにすれば、監視が開始されるタイミング毎に背景情報が最新の情報へと更新されるため、背景物の状況に変化が生じた場合でも、その変化を反映した背景情報に基づいて低反射物体の検知を行うことが可能となり、その検知の精度を一層向上させることができる。
【0091】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について図9および図10を参照して説明する。
本実施形態では、図9および図10に示すように、周囲に背景物(図2に示した塀3やゲート4など)が全く存在しない監視エリア31を監視対象とした場合におけるカメラ制御部19の制御内容について説明する。この場合、背景情報取得部15は、レーザ光の照射方向の全てについて背景情報を取得することができない。そのため、低反射物体検知部16は、低反射物体が監視エリア31内に侵入したとしても、その低反射物体を検知することができない。
【0092】
そこで、図9に示すように、出入口26や窓(図示略)が含まれる建物壁5の付近の領域R3を重点監視エリアとして設定する。このように設定しておけば、カメラ制御部19は、侵入検知部14および低反射物体検知部16による検知が無い場合、侵入経路として可能性の高い出入口26および窓を含む領域R3を撮像するようにカメラ装置7を制御する。これにより、低反射物体で自身の身体を覆い隠した人間(侵入者)が監視エリア31内に侵入した場合でも、店舗に侵入する前にその侵入者を確実に撮像することができる。
【0093】
また、図10に示すように、監視エリア31の左右両側において建物壁5に隣接する箇所に、比較的高い反射率を有する反射物体32、33を設置してもよい。このようにすれば、背景情報取得部15は、建物壁5付近の領域R3に対応する方向については背景情報を取得することができる。そのため、低反射物体検知部16は、侵入経路として可能性の高い出入口26および窓を含む領域R3に存在する低反射物体については検知することができる。
【0094】
なお、この場合、カメラ制御部19は、侵入検知部14および低反射物体検知部16による物体の検知が無いときには、監視エリア31のうち領域R3を除く全領域を均一にパトロールするような形で撮像するようにカメラ装置7を制御すればよい。このように反射物体32、33を設置した場合でも、低反射物体で自身の身体を覆い隠した侵入者を確実に撮像することができる。さらに、上述した各制御のいずれについても、撮像された画像を用いた画像認識などにより侵入者の検知およびその報知を行えば、店舗への侵入を未然に防止することが可能となる。
【0095】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について図11を参照して説明する。
本実施形態の監視装置41は、第1実施形態で説明した監視装置9と同様の構成を備えており、その監視対象となる監視エリアは車両42が通行する道路43となっている。この場合、監視装置41を構成するレーザレーダ装置6およびカメラ装置7は、道路43の側部43aに隣接して設けられている。レーザレーダ装置6およびカメラ装置7は、道路43に沿って設けられた電柱や専用のポール(いずれも図示略)などに取り付けられている。
【0096】
この場合、道路43の側部43aとは反対側の側部43bに隣接するように、複数の反射物体44〜46が所定間隔毎に設けられている。これら反射物体44〜46は、例えば道路43に沿って設けられたポールであり、監視エリアとなる道路43の背景(レーザレーダ装置6から見て後方)に存在する背景物に相当する。
【0097】
上記構成によれば、レーザ光が照射される可能性の有る部分が通常の物体である車両42が道路43を通行した場合、侵入検知部14により、その位置を検知することができる。そのため、この場合、カメラ制御部19は、検知された車両42を含む領域を撮像するようにカメラ装置7を制御することが可能となる。
【0098】
これに対し、レーザ光が照射される可能性の有る部分が低反射物体である車両42が道路43を通行した場合、距離計測部13により距離を計測することができないため、侵入検知部14による検知はできない。ただし、この場合にも、次のように、低反射物体検知部16により、その車両42の存在を検知することができる。
【0099】
すなわち、この場合、背景情報取得部15は、反射物体44〜46が存在する方向を背景有り方向とした背景情報を予め取得している。そして、低反射物体検知部16は、背景有り方向(反射物体44〜46が存在する方向)にレーザ光が照射された際に、距離計測部13により距離が計測されないと、その方向(図11の場合、反射物体46が存在する方向)に低反射物体、つまり車両42が存在することを検知する。この場合、カメラ制御部19は、車両42が存在することが検知された方向を含む領域を撮像するようにカメラ装置7を制御することができる。
【0100】
上記手法によれば、低反射物体を含む車両42が道路43を通行した際、その車両42が存在する方向を検知することはできるものの、その位置までは検知することができない。つまり、上記手法では、低反射物体を含む車両42が道路43の2つの車線43c、43dのうちいずれを通行しているのかを特定することができない。
【0101】
そこで、低反射物体検知部16が次のような内容の処理を追加で実施することで、本実施形態においても低反射物体の位置を特定することが可能となる。すなわち、低反射物体が存在することを検知した際、その検知した方向(反射物体44〜46のいずれかが存在する方向)についての距離値が取得できない状態が継続する時間を計測する。そして、その計測した継続時間と、各種車両の平均的な全長とを用いて所定の演算を行う。
【0102】
このようにすれば、道路43の一方の側部43aに設けられた1つのレーザレーダ装置6を用いて、検知した車両42が車線43c、43dのうちいずれを通行しているのかを特定することが可能となる。
【0103】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
監視物体サイズ設定部17および重点監視エリア設定部18は、必要に応じて設ければよい。監視物体サイズ設定部17を省略する場合、低反射物体検知部16は、監視エリア内に侵入した低反射物体の位置を検知することはできない。この場合、カメラ制御部19は、低反射物体検知部16により低反射物体が存在することが検知されると、その検知された方向の全てを含む領域を撮像するようにカメラ装置7を制御し、その撮像された画像を用いた画像認識などにより物体の侵入検知を行い、侵入があった場合には侵入方向を拡大して撮像するといった制御を行えばよい。
【0104】
背景情報の更新は必ずしも行わなくともよい。例えば、背景物の有無や配置が変化する可能性が低い設置環境であれば、レーザレーダ装置6などの設置後に一度だけ背景情報の取得を行い、その後は背景情報の取得を行わなくともよい。
【符号の説明】
【0105】
7…カメラ装置、9、41…監視装置、14…侵入検知部、15…背景情報取得部、16…低反射物体検知部、17…監視物体サイズ設定部、18…重点監視エリア設定部、19…カメラ制御部、21…光学式距離計。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11