【文献】
SAMANTA,S.K. et al,Reversible cargo shipping between orthogonal stations of a nanoscaffold upon redox input,Dalton Transactions,2014年 7月 7日,Vol.43, No.25,p.9438-9447,文献全体、特に、スキーム1の配位子5及び8参照
【文献】
ZHANG,M. et al,Chromium(III) complexes bearing 2-benzazole-1,10-phenanthrolines: synthesis, molecular structures and ethylene oligomerization and polymerization,Dalton Transactions,2009年 6月24日,No.32,p.6354-6363,文献全体、特に、第6355頁の配位子L3、L4、L7、L8及びL10参照
【文献】
CHAMPIN,B. et al,A highly rigid ditopic conjugate with orthogonal coordination axes and its zinc(II) and copper(II) complexes,New Journal of Chemistry,2008年 2月 5日,Vol.32, No.6,p.1048-1054,文献全体、特に、スキーム1の配位子1参照
【文献】
YANG,Y. et al,Synthesis, structure, and catalytic ethylene oligomerization of nickel complexes bearing 2-pyrazolyl substituted 1,10-phenanthroline ligands,Journal of Molecular Catalysis A: Chemical,2008年 9月 5日,Vol.296, No.1-2,p.9-17,文献全体、特に、スキーム1の配位子L4−L12参照
【文献】
COLLIN,J. et al,Synthesis and structural characterization of copper(I) and copper(II) complexes with an ambivalent phenanthroline-type ligand,Australian Journal of Chemistry,1997年,Vol.50, No.10,p.951-957
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
陽極と陰極の間に発光層を含む複数の有機層を有し、電気エネルギーにより発光する発光素子であって、前記有機層の少なくとも1層に請求項1〜4のいずれかに記載のフェナントロリン誘導体を含む発光素子。
前記有機層に少なくとも電荷発生層が存在し、電荷発生層が請求項1〜4いずれかに記載のフェナントロリン誘導体を含むことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の発光素子。
前記有機層に少なくとも二つの発光層が存在し、これら発光層の間に電荷発生層が存在し、前記電荷発生層はN型電荷発生層とP型電荷発生層を含み、前記N型電荷発生層が請求項1〜4いずれかに記載のフェナントロリン誘導体および金属元素を含む物質を含む請求項8に記載の発光素子。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<フェナントロリン誘導体>
一般式(1)で表されるフェナントロリン誘導体について詳細に説明する。
【0017】
R
1〜R
8はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、ハロゲン、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ボリル基、シリル基、−P(=O)R
9R
10からなる群より選ばれる。R
9およびR
10はアリール基またはヘテロアリール基である。ただしR
1およびR
2のいずれかはL
1−Bで表される基であり、R
7およびR
8のいずれかはL
2−Cで表される基である。R
1〜R
10はそれぞれ置換されていてもされていなくてもよい。また、R
1〜R
8はフェナントロリン骨格を有さない。
【0018】
L
1およびL
2はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、単結合またはフェニレン基のいずれかから選ばれる。
【0019】
Bは電子受容性窒素を有する置換もしくは無置換のヘテロアリール基、Cは置換もしくは無置換の環形成炭素数が20未満であるアリール基を表す。ただし、Bはフェナントロリン骨格を有さない。
【0020】
BおよびCが置換される場合、置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、ハロゲン、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ボリル基、シリル基、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、キノリニル基および−P(=O)R
9R
10からなる群より選ばれる。これらの基は、さらにアルキル基、ハロゲン、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基またはキノリニル基で置換されていても良い。
【0021】
環形成炭素数とは、主骨格となる環を形成する炭素の数を示し、置換基に含まれる炭素数を含まない。例えば、ナフチル基の環形成炭素数は置換基の有無に関わらず10であり、フルオレニル基の環形成炭素数は置換基の有無に関わらず13である。
【0022】
上記の全ての基において、水素は重水素であってもよい。
【0023】
また、以下の説明において例えば炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基とは、アリール基に置換した置換基に含まれる炭素数も含めて6〜40であり、炭素数を規定している他の置換基もこれと同様である。
【0024】
また、上記の全ての基において、置換される場合における置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、シリル基、−P(=O)R
9R
10が好ましく、さらには、各置換基の説明において好ましいとする具体的な置換基が好ましい。また、これらの置換基は、さらに上述の置換基により置換されていてもよい。
【0025】
「置換もしくは無置換の」という場合における「無置換」とは、水素原子または重水素原子が置換したことを意味する。
【0026】
以下に説明する化合物またはその部分構造において、「置換もしくは無置換の」という場合についても、上記と同様である。
【0027】
アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。置換されている場合の追加の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル基、ハロゲン、アリール基、ヘテロアリール基等を挙げることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、好ましくは1以上20以下、より好ましくは1以上8以下の範囲である。
【0028】
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルキル基部分の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、3以上20以下の範囲である。
【0029】
複素環基とは、例えば、ピラン環、ピペリジン環、環状アミドなどの炭素以外の原子を環内に有する脂肪族環を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。複素環基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
【0030】
アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基などの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルケニル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
【0031】
シクロアルケニル基とは、例えば、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基などの二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。
【0032】
アルキニル基とは、例えば、エチニル基などの三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルキニル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
【0033】
アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのエーテル結合を介して脂肪族炭化水素基が結合した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、1以上20以下の範囲である。
【0034】
アルキルチオ基とは、アルコキシ基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アルキルチオ基の炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルキルチオ基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、1以上20以下の範囲である。
【0035】
アリールエーテル基とは、例えば、フェノキシ基など、エーテル結合を介して芳香族炭化水素基が結合した官能基を示し、芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
【0036】
アリールチオエーテル基とは、アリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アリールエーテル基における芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
【0037】
アリール基とは、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ベンゾフェナントリル基、ベンゾアントラセニル基、クリセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ベンゾフルオランテニル基、ジベンゾアントラセニル基、ペリレニル基、ヘリセニル基などの芳香族炭化水素基を示す。
【0038】
中でも、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基が好ましい。アリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは6以上40以下、より好ましくは6以上30以下の範囲である。
【0039】
B、C、L
1、L
2がアリール基で置換される場合やそれぞれの置換基がさらにアリール基で置換される場合、アリール基としてはフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基およびナフチル基がより好ましい。
【0040】
ヘテロアリール基とは、例えば、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、ナフチリジニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、カルボリニル基、インドロカルバゾリル基、ベンゾフロカルバゾリル基、ベンゾチエノカルバゾリル基、ジヒドロインデノカルバゾリル基、ベンゾキノリニル基、アクリジニル基、ジベンゾアクリジニル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェナントロリニル基などの、炭素以外の原子を一個または複数個環内に有する環状芳香族基を示す。ただし、ナフチリジニル基とは、1,5−ナフチリジニル基、1,6−ナフチリジニル基、1,7−ナフチリジニル基、1,8−ナフチリジニル基、2,6−ナフチリジニル基、2,7−ナフチリジニル基のいずれかを示す。ヘテロアリール基は置換基を有していても有していなくてもよい。ヘテロアリール基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上40以下、より好ましくは2以上30以下の範囲である。
【0041】
B、C、L
1、L
2がヘテロアリール基で置換される場合やそれぞれの置換基がさらにヘテロアリール基で置換される場合、ヘテロアリール基としてはピリジル基、キノリニル基、ピリミジル基、トリアジニル基、キノキサリニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基が好ましく、ピリジル基、キノリニル基、ピリミジル基、トリアジニル基、キノキサリニル基がより好ましく、ピリジル基、キノリニル基が特に好ましい。
【0042】
「電子受容性窒素を含む」という場合における電子受容性窒素とは、隣接原子との間に多重結合を形成している窒素原子を表す。電子受容性窒素を含む芳香族複素環は、例えば、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、オキサジアゾール環、チアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、ナフチリジン環、シンノリン環、フタラジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、ベンゾキノリン環、フェナントロリン環、アクリジン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、等が挙げられる。ただし、ナフチリジンとは、1,5−ナフチリジン、1,6−ナフチリジン、1,7−ナフチリジン、1,8−ナフチリジン、2,6−ナフチリジン、2,7−ナフチリジンのいずれかを示す。
【0043】
アミノ基とは、置換もしくは無置換のアミノ基である。置換する場合の置換基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基、直鎖アルキル基、分岐アルキル基が挙げられ、中でもアリール基、ヘテロアリール基が好ましい。より具体的には、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ベンゾフルオランテニル基、ピリジル基、キノリニル基、ピリミジル基、トリアジニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基が好ましく、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントラセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、ピリジル基、キノリニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、フェナントロリニル基がより好ましい。特に好ましくはフェニル基、ナフチル基、ピリジル基、キノリニル基である。これら置換基はさらに置換されてもよい。炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上50以下、より好ましくは6以上40以下、特に好ましくは6以上30以下の範囲である。
【0044】
ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選ばれる原子を示す。
【0045】
シリル基とは、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基などのアルキルシリル基や、フェニルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、トリナフチルシリル基などのアリールシリル基を示す。ケイ素上の置換基はさらに置換されてもよい。シリル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、1以上30以下の範囲である。
【0046】
ボリル基とは、置換もしくは無置換のボリル基である。置換する場合の置換基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、アリールエーテル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基が挙げられ、中でもアリール基、アリールエーテル基が好ましい。
【0047】
カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基は、置換基を有していても有していなくてもよい。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などが挙げられ、これら置換基はさらに置換されてもよい。
【0048】
ホスフィンオキシド基−P(=O)R
9R
10としては、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
【0050】
フェナントロリン骨格は電荷に対する安定性が高く、電子による還元や、正孔による酸化をスムーズに繰り返し行うことができる。そのため、本発明のフェナントロリン誘導体は高い電荷安定性を示し、発光素子に用いた場合に電気化学的な変質を生じにくい。電気化学的な変質による材料の劣化および電荷輸送性の変化が生じにくいため、発光素子の寿命の向上が可能となる。
【0051】
また、発光素子によっては、発光層に注入された正孔の一部が再結合せずに電子輸送層まで到達し、発光素子の耐久性を悪化させてしまう場合がある。本発明のフェナントロリン誘導体は、フェナントロリン骨格に由来する大きなバンドギャップを持つため、発光層に接する電子輸送層に用いた場合、発光層との界面でイオン化ポテンシャルのエネルギー差が大きくなり、高い正孔ブロック性を示す。また、電荷耐久性も高いため、正孔アタックに対して高い耐久性を示し、素子の寿命の向上が可能となる。
【0052】
本発明のフェナントロリン誘導体はフェナントロリン骨格をひとつのみ含むことから、昇華精製時の耐熱性が良好である。フェナントロリン骨格を複数もつ化合物は、昇華温度が上昇し、真空蒸着時の耐熱性に課題が生じることが多い。
【0053】
また、フェナントロリン骨格の特定の位置にアリール基やヘテロアリール基などの耐熱性の高い置換基を導入することにより、化合物の耐熱性を向上させ、かつ結晶性を低下させ、ガラス転移温度を向上させることもできる。耐熱性が向上すると、素子作製時に材料の分解を抑制できるため、耐久性が向上する。加えて、結晶性を低下させたりガラス転移温度を向上させたりすることで、薄膜安定性を向上させることができる。薄膜安定性が向上すると、発光素子において長時間駆動しても膜の変質が抑制されるため、耐久性が向上する。
【0054】
フェナントロリン骨格の特定の位置へのアリール基やヘテロアリール基の導入により、効率的に共役を拡張させることができるため、化合物の電荷輸送性が向上する。
【0055】
また、アリール基やヘテロアリール基は電気化学的安定性が高い置換基であり、これらの置換基を導入することで化合物に優れた電気化学的安定性および電荷耐久性を付与することができる。電気化学的安定性および電荷耐久性が高いと、材料の変質などによる欠陥が生じず、発光素子の耐久性が向上する。
【0056】
本発明のフェナントロリン誘導体は、L
1−Bで表される基の中に電子受容性窒素を含む置換もしくは無置換のヘテロアリール基を持つ。窒素原子が高い電気陰性度を有することから、該窒素原子と隣接原子との間の多重結合は電子受容的な性質を有する。それゆえ、L
1−Bで表される基は高い電子親和性をもち、分子全体の電子輸送性の向上に寄与する。
【0057】
また、電子受容性窒素は窒素原子上に非共有電子対を有することから金属原子への強い配位性を示す。それゆえ、L
1−Bで表される基は強い金属配位性をもつ。フェナントロリン骨格も強い金属配位性を持つことが知られているが、L
1−Bで表される基が隣接することで、より強い金属配位性を発現することができる。L
1が単結合である場合、さらに強い金属配位性を発現することができるため、好ましい。
【0058】
さらに、L
1−Bで表される基は、適度に回転の自由度を持つため、剛直性が抑えられ、様々な種類の金属に対して強い配位性を発現することができる。
【0059】
このため一般式(1)で表されるフェナントロリン誘導体を発光素子の電子輸送層に用いた場合には、陰極である金属に配位しやすくなるため、陰極との相互作用が強くなる。陰極との相互作用が強くなることで、陰極からの電子注入性が促進され、発光素子の駆動電圧を低くすることができる。また、発光層への電子の供給が多くなり、再結合確率が高くなるので発光効率が向上する。
【0060】
さらに、一般式(1)で表されるフェナントロリン誘導体は、金属元素を含む物質と強く相互作用することができる。中でも、アルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素と強く相互作用することができるため、リチウム、セシウム、カルシウム、バリウム、LiF、CaF
2、CaO、BaO、リチウムキノリノールなどの、アルカリ金属元素を含む物質やアルカリ土類金属元素を含む物質と良好に相互作用する。このため、例えば、一般式(1)で表されるフェナントロリン誘導体を発光素子の電子輸送層に用い、同じ層にアルカリ金属元素を含む物質やアルカリ土類金属元素を含む物質を混合した場合には、電子輸送能が向上し、発光素子の駆動電圧を低くすることができる。
【0061】
また、上記のように、一般式(1)で表されるフェナントロリン誘導体に金属元素を含む物質、特にアルカリ金属元素を含む物質やアルカリ土類金属元素を含む物質を混合した電子輸送層は、複数の発光素子を連結するタンデム構造型素子におけるN型の電荷発生層としても好適に用いることができる。一般式(1)で表されるフェナントロリン誘導体を用いたN型の電荷発生層は、優れた電子輸送能を示すため、P型の電荷発生層と接した際、効率的な電荷分離能を示し、発光素子の駆動電圧を低くすることができる。この結果、発光素子の発光効率を向上させ、かつ、耐久性も向上させることができる。
【0062】
さらに、一般式(1)で表されるフェナントロリン誘導体を光電変換素子の電子取り出し層に用いた場合では、陰極への電子取り出しを促進するため、光電変換素子の変換効率やオン−オフ比を向上することができる。
【0063】
本発明において好適に用いられる電子受容性窒素を含むヘテロアリール基としては、例えば、ピリジル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、ナフチリジニル基、シンノリニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、ベンゾキノリニル基、アクリジニル基、ジベンゾアクリジニル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、等が挙げられる。中でも、ピリジル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、ベンゾキノリニル基、アクリジニル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基が好ましく、ヘテロ元素として窒素のみを含む、ピリジル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、ベンゾキノリニル基、アクリジニル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基がより好ましい。その中でも好ましくは、ピリジル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピリミジル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、ベンゾキノリニル基、イミダゾピリジル基であり、さらに好ましくはピリジル基、キノリニル基、イソキノリニル基であり、特に好ましくは、ピリジル基、キノリニル基である。
【0064】
本発明のフェナントロリン誘導体はL
2−Cで表される基の中に環形成炭素数が20未満であるアリール基を持つ。高い平面性と比較的広いπ共役を持つアリール基を持つことで、分子同士がうまく重なり合い、高い電荷輸送性を発現することができる。このため、適度に広いπ共役を持つアリール基が好ましい。環形成炭素数が大きすぎるアリール基は、分子間におけるπ共役平面の過度な重なりの原因となり、結晶性を増大させ、薄膜安定性が低くなるため、好ましくない。
【0065】
また、適度な嵩高さと適度に広いπ共役を持つアリール基を持つことで、本発明のフェナントロリン誘導体は程よいキャリア移動度および電子受容性を発現する。その結果、発光素子において電子と正孔のキャリアバランスを整えることができ、発光素子の耐久性をより向上させることができる。L
2がフェニレン基の場合、フェナントロリン骨格とCで表されるアリール基の間に適度なスペースができるため、分子同士の配向が適切となり、望ましいキャリア移動度および電子受容性を発現することができるため、好ましい。
【0066】
環形成炭素数が20未満であるアリール基の好ましい例としては、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
【0068】
中でも、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基が好ましく、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、ピレニル基、フルオランテニル基がより好ましい。それらの中でも、適度なπ共役の広さと、三重項エネルギー準位が小さくなりすぎない点で、フルオレニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、フルオランテニル基が好ましい。三重項エネルギー準位が小さくなりすぎると、三重項励起子ブロック機能が小さくなり、リン光発光材料と組み合わせた場合に発光効率の低下が起こる。さらに好ましくは、フェナントリル基、ピレニル基、フルオランテニル基であり、ピレニル基、フルオランテニル基が特に好ましい。
【0069】
アリール基であるCとヘテロアリール基であるBはそれぞれ極性の異なる置換基であるが、それらを非対称に導入することで、分子内双極子モーメントが大きくなり、電荷輸送性のさらなる向上が可能である。この分子内双極子モーメントの増大は分子の配向にも寄与し、分子が適度に配向することで高い電荷輸送性を発現することができる。分子が非対称性を持つことで、ガラス転移温度が上昇し、薄膜安定性も向上する。L
1−Bで表される基とL
2−Cで表される基が異なる場合、分子内双極子モーメントがさらに増大するため、好ましい。
【0070】
特に限定されるものではないが、B,C,L
1,L
2の好ましい組み合わせは、以下のような組み合わせが挙げられる。ただし、R
11はアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基である。B,C,L
1,L
2,R
11はそれぞれ置換基を有しても良い。また、「−」は単結合を示す。
【0095】
一般式(1)で表されるフェナントロリン誘導体は、R
1およびR
2のいずれかはL
1−Bで表される基である。1,10−フェナントロリンの2つの窒素原子と電子受容性窒素を有するL
1−Bが近接することで、より強い電子親和性と金属配位性を示し、優れた電子輸送性および電子注入性を発現することで、発光素子の駆動電圧を低くすることができる。特に、R
1がL
1−Bで表される基であることが好ましい。
【0096】
また、R
7およびR
8のいずれかがL
2−Cで表される基である。すなわち、一般式(1)で表されるフェナントロリン誘導体は以下のような構造である。
【0098】
中でも、R
1がL
1−Bで表される基であり、かつ、R
8がL
2−Cで表される基である場合、分子内双極子モーメントの大きさと向きが適切となるため、電荷輸送性がより向上し、かつ薄膜安定性もより向上するため、好ましい。また、このとき、フェナントロリン骨格のπ平面が他のπ平面と重なり合うことが容易となるため、電荷輸送性をさらに向上させることができる。
【0099】
本発明のフェナントロリン誘導体は、一般式(1)におけるR
3〜R
6にアリール基およびヘテロアリール基を持たない。これにより、フェナントロリン骨格の高い平面性と比較的広いπ共役を生かして分子同士がうまく重なることで、高い電荷輸送性を発現することができる。
【0100】
一般式(1)におけるR
3〜R
6にアリール基およびヘテロアリール基を持つ場合、電荷輸送性が低下し、駆動電圧の上昇、素子の耐久寿命の悪化が起こるため、好ましくない。
【0101】
L
1−BおよびL
2−Cで表される基以外のフェナントロリン骨格上の置換基が全て水素である場合、フェナントロリン骨格のπ平面が他のπ平面と重なり合うことが容易となるため、より好ましい。
【0102】
すなわち、本発明の一般式(1)で表される化合物は、以下のような構造であることがより好ましい。
【0104】
このように、本発明のフェナントロリン誘導体は良好な電子輸送性と高い耐久性を示し、発光素子に用いた場合に、低い駆動電圧、高い発光効率、さらに優れた耐久寿命の両立が可能である。
【0105】
本発明のフェナントロリン誘導体の分子量は、特に限定されるものではないが、耐熱性や製膜性の観点から、800以下であることが好ましく、750以下であることがより好ましい。さらに好ましくは700以下であり、特に好ましくは650以下である。また、一般に分子量が大きいほどガラス転移温度は上昇する傾向にあり、ガラス転移温度が高くなると薄膜安定性が向上する。そのため、分子量は400以上であることが好ましく、450以上であることがより好ましい。さらに好ましくは、500以上である。
【0106】
一般式(1)で表される化合物としては、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
【0155】
本発明のフェナントロリン誘導体の合成には、公知の方法を使用することができる。例えば、アリール基やヘテロアリール基の導入の際は、ハロゲン化誘導体とボロン酸あるいはボロン酸エステル化誘導体とのカップリング反応を用いて炭素−炭素結合を生成する方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、フェナントロリン骨格への置換基導入では、有機リチウム試薬などを用いることで、ハロゲン−リチウム交換によりハロゲン化誘導体をリチオ化し、フェナントロリン骨格に求核的に作用させ、炭素−炭素結合を生成する方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0156】
本発明のフェナントロリン誘導体は、発光素子、光電変換素子、リチウムイオン電池、燃料電池、トランジスタ等の電子デバイスに用いられることが好ましい。本発明の化合物は、電子デバイスにおいて、電子デバイス材料として用いることが好ましく、特に、発光素子、光電変換素子において、発光素子材料や光電変換素子材料として用いられることが好ましい。
【0157】
発光素子材料とは、発光素子のいずれかの層に使用される材料を表し、後述するように、正孔輸送層、発光層および電子輸送層から選ばれた層に使用される材料であるほか、電極の保護層(キャップ層)に使用される材料も含む。本発明の化合物を、発光素子のいずれかの層に使用することにより、高い発光効率が得られ、かつ低駆動電圧および高耐久性の発光素子が得られる。
【0158】
光電変換素子材料とは、光電変換素子のいずれかの層に使用される材料を表し、後述するように、正孔取出し層、光電変換層および電子取出し層から選ばれた層に使用される材料である。本発明の化合物を、光電変換素子のいずれかの層に使用することにより、高い変換効率を得られる。
【0159】
<光電変換素子>
光電変換素子は、アノードとカソード、およびそれらアノードとカソードとの間に介在する有機層を有し、有機層において光エネルギーが電気的信号に変換される。前記有機層は少なくとも光電変換層を有していることが好ましく、さらに前記光電変換層はp型材料とn型材料を含むことがより好ましい。p型材料は、電子供与性(ドナー性)の材料であり、HOMOのエネルギー準位が浅く、正孔を輸送しやすい。n型材料は、電子吸引性(アクセプター性)の材料であり、LUMOのエネルギー準位が深く、電子を輸送しやすい。p型材料とn型材料は積層されていてもよいし、混合されていてもよい。
【0160】
有機層は、光電変換層のみからなる構成の他に、1)正孔取出し層/光電変換層、2)光電変換層/電子取出し層、3)正孔取出し層/光電変換層/電子取出し層などの積層構成が挙げられる。電子取出し層とは、光電変換層からカソードへの電子の取出しが容易に行われるように設けられる層であり、通常、光電変換層とカソードとの間に設けられる。正孔取出し層とは、光電変換層からアノードへの正孔の取出しが容易に行われるように設けられる層であり、通常、アノードと光電変換層との間に設けられる。また、上記各層は、それぞれ単一層、複数層のいずれでもよい。
【0161】
本発明のフェナントロリン誘導体は、上記の光電変換素子において、いずれの層に用いられてもよいが、高い電子親和性および薄膜安定性を有しており、且つ、可視光領域に強い吸収を有しているため、光電変換層に用いることが好ましい。特に、優れた電子輸送能を有していることから、光電変換層のn型材料に用いることが好ましい。また、本発明の化合物は、特に高い電子親和性を有することから、電子取り出し層にも好適に用いることができる。これにより、光電変換層から陰極への電子取出し効率が高められるため、変換効率を向上させることが可能となる。
【0162】
光電変換素子は、光センサーに用いることができる。また、本実施形態における光電変換素子は、太陽電池に用いることもできる。
【0163】
<発光素子>
次に、本発明の発光素子の実施の形態について詳細に説明する。本発明の発光素子は、陽極と陰極、およびそれら陽極と陰極との間に介在する有機層を有し、該有機層が電気エネルギーにより発光する。
【0164】
有機層は、発光層のみからなる構成の他に、1)正孔輸送層/発光層、2)発光層/電子輸送層、3)正孔輸送層/発光層/電子輸送層、4)正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層、5)正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層などの積層構成が挙げられる。また、上記各層は、それぞれ単一層、複数層のいずれでもよい。また、リン光発光層や蛍光発光層を複数有する積層型であってもよく、蛍光発光層とリン光発光層を組み合わせた発光素子でもよい。さらにそれぞれ互いに異なる発光色を示す発光層を積層することができる。
【0165】
また、上記の素子構成を中間層を介して複数積層したタンデム型であってもよい。中でも、少なくとも一層はリン光発光層であることが好ましい。上記中間層は、一般的に、中間電極、中間導電層、電荷発生層、電子引抜層、接続層、中間絶縁層とも呼ばれ、公知の材料構成を用いることができる。タンデム型の具体例は、例えば、6)正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷発生層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層、7)正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/電荷発生層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層といった、陽極と陰極の間に中間層として電荷発生層を含む積層構成が挙げられる。
【0166】
本発明のフェナントロリン誘導体は、上記の素子構成において、いずれの層に用いられてもよいが、高い電子注入輸送能、蛍光量子収率および薄膜安定性を有しているため、発光素子の発光層、電子輸送層または電荷発生層に用いることが好ましい。特に、優れた電子注入輸送能を有していることから、電子輸送層または電荷発生層に用いることが好ましい。特に、電子輸送層に好適に用いることができる。
【0167】
(陽極および陰極)
本発明の発光素子において、陽極と陰極は素子の発光のために十分な電流を供給するための役割を有するものであり、光を取り出すために少なくとも一方は透明または半透明であることが好ましい。通常、基板上に形成される陽極を透明電極とする。
【0168】
陽極に用いる材料は、正孔を有機層に効率よく注入できる材料、かつ光を取り出すために透明または半透明であれば、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)などの導電性金属酸化物、あるいは、金、銀、クロムなどの金属、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなど特に限定されるものでないが、ITOガラスやネサガラスを用いることが特に好ましい。これらの電極材料は、単独で用いてもよいが、複数の材料を積層または混合して用いてもよい。透明電極の抵抗は素子の発光に十分な電流が供給できればよいので限定されないが、素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが好ましい。例えば300Ω/□以下のITO基板であれば素子電極として機能するが、現在では10Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、20Ω/□以下の低抵抗の基板を使用することが特に好ましい。ITOの厚みは抵抗値に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常100〜300nmの間で用いられることが多い。
【0169】
また、発光素子の機械的強度を保つために、発光素子を基板上に形成することが好ましい。基板は、ソーダガラスや無アルカリガラスなどのガラス基板が好適に用いられる。ガラス基板の厚みは、機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよいので、0.5mm以上あれば十分である。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましい。または、SiO
2などのバリアコートを施したソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用することもできる。さらに、第一電極が安定に機能するのであれば、基板はガラスである必要はなく、例えば、プラスチック基板上に陽極を形成しても良い。ITO膜形成方法は、電子線ビーム法、スパッタリング法および化学反応法など特に制限を受けるものではない。
【0170】
陰極に用いる材料は、電子を効率よく発光層に注入できる物質であれば特に限定されない。一般的には白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウム、インジウムなどの金属、またはこれらの金属とリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの低仕事関数金属との合金や多層積層などが好ましい。中でも、主成分としてはアルミニウム、銀、マグネシウムが電気抵抗値や製膜しやすさ、膜の安定性、発光効率などの面から好ましい。特にマグネシウムと銀で構成されると、本発明における電子輸送層および電子注入層への電子注入が容易になり、低電圧駆動が可能になるため好ましい。
【0171】
さらに、陰極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウムおよびインジウムなどの金属、またはこれら金属を用いた合金、シリカ、チタニアおよび窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、炭化水素系高分子化合物などの有機高分子化合物を、保護膜層として陰極上に積層することが好ましい例として挙げられる。また、本発明のフェナントロリン誘導体もこの保護膜層(キャップ層)として利用できる。ただし、陰極側から光を取り出す素子構造(トップエミッション構造)の場合は、保護膜層は可視光領域で光透過性のある材料から選択される。これらの電極の作製法は、抵抗加熱、電子線ビーム、スパッタリング、イオンプレーティングおよびコーティングなど特に制限されない。
【0172】
(正孔輸送層)
正孔輸送層は、正孔輸送材料の一種または二種以上を積層または混合する方法、もしくは、正孔輸送材料と高分子結着剤の混合物を用いる方法により形成される。また、正孔輸送材料は、電界を与えられた電極間において正極からの正孔を効率良く輸送することが必要で、正孔注入効率が高く、注入された正孔を効率良く輸送することが好ましい。そのためには適切なイオン化ポテンシャルを持ち、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが要求される。
【0173】
このような条件を満たす物質として、特に限定されるものではないが、例えば、4,4’−ビス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(TPD)、4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(NPD)、4,4’−ビス(N,N−ビス(4−ビフェニリル)アミノ)ビフェニル(TBDB),ビス(N,N’−ジフェニル−4−アミノフェニル)−N,N−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−1,1’−ビフェニル(TPD232)といったベンジジン誘導体、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミン(1−TNATA)などのスターバーストアリールアミンと呼ばれる材料群、カルバゾール骨格を有する材料が挙げられる。
【0174】
中でもカルバゾール多量体、具体的にはビス(N−アリールカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)などのカルバゾール2量体の誘導体、カルバゾール3量体の誘導体、カルバゾール4量体の誘導体が好ましく、カルバゾール2量体の誘導体、カルバゾール3量体の誘導体がより好ましい。さらに非対称型のビス(N−アリールカルバゾール)誘導体が特に好ましい。また、カルバゾール骨格とトリアリールアミン骨格を1つずつ有する材料も好ましい。より好ましくはアミンの窒素原子とカルバゾール骨格の間に連結基としてアリーレン基を有する材料であり、特に好ましくは下記の一般式(3)および(4)で表される骨格を有する材料である。
【0176】
L
3、L
4はアリーレン基であり、Ar
1〜Ar
5はアリール基である。
【0177】
上記化合物の他にも、トリフェニレン化合物、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体やチオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、フラーレン誘導体、ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが正孔輸送材料として好ましく使用できる。さらにp型Si、p型SiC等の無機化合物も使用できる。本発明の化合物も、電気化学的安定性に優れているため、正孔輸送材料として用いることができる。
【0178】
発光素子によっては、発光層に注入された電子の一部が再結合せずに正孔輸送層まで到達し、発光素子の耐久性を悪化させてしまう場合がある。そのため正孔輸送層には電子ブロック性の優れた化合物を用いるのが好ましい。中でも、カルバゾール骨格を含有する化合物は電子ブロック性に優れ、発光素子の高効率化に寄与できるので好ましい。さらに上記カルバゾール骨格を含有する化合物が、カルバゾール多量体あるいは一般式(3)および(4)で表される骨格を有する材料であることが好ましい。カルバゾール多量体骨格を有するものとしては、カルバゾール2量体の誘導体、カルバゾール3量体の誘導体、またはカルバゾール4量体の誘導体が好ましい。より好ましくはカルバゾール2量体の誘導体、カルバゾール3量体の誘導体であり、非対称型のビス(N−アリールカルバゾール)誘導体が特に好ましい。これらは良好な電子ブロック性と、正孔注入輸送特性を併せ持っているためである。さらに、正孔輸送層にカルバゾール骨格を含有する化合物を用いた場合、組み合わせる発光層が後述するリン光発光材料を含んでいることがより好ましい。上記カルバゾール骨格を有する化合物は高い三重項励起子ブロック機能も有しており、リン光発光材料と組み合わせた場合に高発光効率化できるためである。
【0179】
また高い正孔移動度を有する点で優れているトリフェニレン骨格を含有する化合物を正孔輸送層に用いると、キャリアバランスが向上し、発光効率向上、耐久寿命向上といった効果が得られるので好ましい。トリフェニレン骨格を含有する化合物が2つ以上のジアリールアミノ基を有していると、さらに好ましい。
【0180】
上記カルバゾール骨格を含有する化合物、またはトリフェニレン骨格を含有する化合物はそれぞれ単独で正孔輸送層として用いてもよいし、互いに混合して用いてもよい。また本発明の効果を損なわない範囲で他の材料が混合されていてもよい。また正孔輸送層が複数層で構成されている場合は、いずれか1層にカルバゾール骨格を含有する化合物、あるいは、トリフェニレン骨格を含有する化合物が含まれていることが好ましい。
【0181】
(正孔注入層)
陽極と正孔輸送層の間に正孔注入層を設けてもよい。正孔注入層を設けることで発光素子が低駆動電圧化し、耐久寿命も向上する。
【0182】
正孔注入層には通常正孔輸送層に用いる材料よりもイオン化ポテンシャルの小さい材料が好ましく用いられる。具体的には、上記TPD232のようなベンジジン誘導体、スターバーストアリールアミン材料群が挙げられる他、フタロシアニン誘導体等も用いることができる。
【0183】
また正孔注入層がアクセプター性化合物単独で構成されているか、またはアクセプター性化合物が別の正孔輸送材料にドープされて用いられていることも好ましい。アクセプター性化合物の例としては、塩化鉄(III)、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、塩化アンチモンのような金属塩化物、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化ルテニウムのような金属酸化物、トリス(4−ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネート(TBPAH)のような電荷移動錯体が挙げられる。また分子内にニトロ基、シアノ基、ハロゲンまたはトリフルオロメチル基を有する有機化合物や、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなども好適に用いられる。
【0184】
これらの化合物の具体的な例としては、ヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F
4−TCNQ)、2,3,6,7,10,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(HAT−CN
6)、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、テトラメチルベンゾキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、o−ジシアノベンゼン、p−ジシアノベンゼン、1,4−ジシアノテトラフルオロベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、p−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、o−ジニトロベンゼン、p−シアノニトロベンゼン、m−シアノニトロベンゼン、o−シアノニトロベンゼン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1−ニトロナフタレン、2−ニトロナフタレン、1,3−ジニトロナフタレン、1,5−ジニトロナフタレン、9−シアノアントラセン、9−ニトロアントラセン、9,10−アントラキノン、1,3,6,8−テトラニトロカルバゾール、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,3,5,6−テトラシアノピリジン、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、C
60、およびC
70などが挙げられる。
【0185】
これらの中でも、金属酸化物やシアノ基含有化合物が取り扱いやすく、蒸着もしやすいことから、容易に上述した効果が得られるので好ましい。好ましい金属酸化物の例としては酸化モリブデン、酸化バナジウム、または酸化ルテニウムがあげられる。シアノ基含有化合物の中では、(a)分子内に、シアノ基の窒素原子以外に少なくとも1つの電子受容性窒素有する化合物、(b)分子内にハロゲンとシアノ基の両方を有している化合物、(c)分子内にカルボニル基とシアノ基の両方を有している化合物、または(d)分子内にハロゲンとシアノ基の両方を有し、さらにシアノ基の窒素原子以外に少なくとも1つの電子受容性窒素を有する化合物が強い電子アクセプターとなるためより好ましい。このような化合物として具体的には以下のような化合物があげられる。
【0188】
正孔注入層がアクセプター性化合物単独で構成される場合、または正孔注入層にアクセプター性化合物がドープされている場合のいずれの場合も、正孔注入層は1層であってもよいし、複数の層が積層されていてもよい。またアクセプター化合物がドープされている場合に組み合わせて用いる正孔注入材料は、正孔輸送層への正孔注入障壁が緩和できるという観点から、正孔輸送層に用いる化合物と同一の化合物であることがより好ましい。
【0189】
(発光層)
発光層は単一層、複数層のどちらでもよく、それぞれ発光材料(ホスト材料、ドーパント材料)により形成され、これはホスト材料とドーパント材料との混合物であっても、ホスト材料単独であっても、いずれでもよい。すなわち、本発明の発光素子では、各発光層において、ホスト材料もしくはドーパント材料のみが発光してもよいし、ホスト材料とドーパント材料がともに発光してもよい。電気エネルギーを効率よく利用し、高色純度の発光を得るという観点からは、発光層はホスト材料とドーパント材料の混合からなることが好ましい。
【0190】
また、ホスト材料とドーパント材料は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。ドーパント材料はホスト材料の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれでもよい。ドーパント材料は積層されていても、分散されていても、いずれでもよい。
【0191】
ドーパント材料は発光色の制御ができる。ドーパント材料の量は、多すぎると濃度消光現象が起きるため、ホスト材料に対して20重量%以下で用いることが好ましく、さらに好ましくは10重量%以下である。ドーピング方法は、ホスト材料との共蒸着法によって形成することができるが、ホスト材料と予め混合してから同時に蒸着してもよい。
【0192】
発光材料は、具体的には、以前から発光体として知られていたアントラセンやピレンなどの縮合環誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウムを始めとする金属キレート化オキシノイド化合物、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、インデン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリマー系では、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、そして、ポリチオフェン誘導体などが使用できるが特に限定されるものではない。
【0193】
発光材料に含有されるホスト材料は、特に限定されないが、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、トリフェニレン、ペリレン、フルオランテン、フルオレン、インデンなどの縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミンなどの芳香族アミン誘導体、トリス(8−キノリナート)アルミニウム(III)をはじめとする金属キレート化オキシノイド化合物、ジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、インデン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ピロロピロール誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、トリアジン誘導体、ポリマー系では、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体などが使用できるが特に限定されるものではない。
【0194】
またドーパント材料には、特に限定されないが、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、トリフェニレン、ペリレン、フルオランテン、フルオレン、インデンなどの縮合アリール環を有する化合物やその誘導体(例えば2−(ベンゾチアゾール−2−イル)−9,10−ジフェニルアントラセンや5,6,11,12−テトラフェニルナフタセンなど)、フラン、ピロール、チオフェン、シロール、9−シラフルオレン、9,9’−スピロビシラフルオレン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、イミダゾピリジン、フェナントロリン、ピリジン、ピラジン、ナフチリジン、キノキサリン、ピロロピリジン、チオキサンテンなどのヘテロアリール環を有する化合物やその誘導体、ボラン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、4,4’−ビス(2−(4−ジフェニルアミノフェニル)エテニル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−(スチルベン−4−イル)−N−フェニルアミノ)スチルベンなどのアミノスチリル誘導体、芳香族アセチレン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、スチルベン誘導体、アルダジン誘導体、ピロメテン誘導体、ジケトピロロ[3,4−c]ピロール誘導体、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−9−(2’−ベンゾチアゾリル)キノリジノ[9,9a,1−gh]クマリンなどのクマリン誘導体、イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾールなどのアゾール誘導体およびその金属錯体およびN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミンに代表される芳香族アミン誘導体などを用いることができる。
【0195】
また発光層にリン光発光材料が含まれていてもよい。リン光発光材料とは、室温でもリン光発光を示す材料である。ドーパントしてリン光発光材料を用いる場合は基本的に室温でもリン光発光が得られる必要があるが、特に限定されるものではなく、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、オスミウム(Os)、及びレニウム(Re)からなる群から選択される少なくとも一つの金属を含む有機金属錯体化合物であることが好ましい。中でも室温でも高いリン光発光収率を有するという観点から、イリジウム、もしくは白金を有する有機金属錯体がより好ましい。
【0196】
リン光発光性のドーパントと組み合わせて用いられるホストとしては、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ピリジン、ピリミジン、トリアジン骨格を有する含窒素芳香族化合物誘導体、ポリアリールベンゼン誘導体、スピロフルオレン誘導体、トルキセン誘導体、トリフェニレン誘導体といった芳香族炭化水素化合物誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体といったカルコゲン元素を含有する化合物、ベリリウムキノリノール錯体といった有機金属錯体などが好適に用いられるが、基本的に用いるドーパントよりも三重項エネルギーが大きく、電子、正孔がそれぞれの輸送層から円滑に注入され、また輸送するものであればこれらに限定されるものではない。また2種以上の三重項発光ドーパントが含有されていてもよいし、2種以上のホスト材料が含有されていてもよい。さらに1種以上の三重項発光ドーパントと1種以上の蛍光発光ドーパントが含有されていてもよい。
【0197】
好ましいリン光発光性ホストまたはドーパントとしては、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
【0200】
また、発光層に熱活性化遅延蛍光材料が含まれていてもよい。熱活性化遅延蛍光材料は、一般的に、TADF材料とも呼ばれ、一重項励起状態のエネルギー準位と三重項励起状態エネルギー準位のエネルギーギャップを小さくすることで、三重項励起状態から一重項励起状態への逆項間交差を促進し、一重項励起子生成確率を向上させた材料である。熱活性化遅延蛍光材料は、単一の材料で熱活性化遅延蛍光を示す材料であってもいいし、複数の材料で熱活性化遅延蛍光を示す材料であってよい。用いられる熱活性化遅延蛍光材料は、単一でも複数の材料でもよく、公知の材料を用いることができる。具体的には、例えば、ベンゾニトリル誘導体、トリアジン誘導体、ジスルホキシド誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ジヒドロフェナジン誘導体、チアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体などが挙げられる。
【0201】
本発明のフェナントロリン誘導体も発光材料として用いることができ、特にリン光ホスト材料として好適に用いられる。
【0202】
(電子輸送層)
本発明において、電子輸送層とは、陰極と発光層との間にある層である。電子輸送層は単層でも複数層であってもよく、陰極もしくは発光層に接していてもいいし、接していなくてもよい。
【0203】
電子輸送層には、陰極からの電子注入効率が高いこと、注入された電子を効率良く輸送すること、発光への電子注入効率が高いことなどが望まれる。そのため電子輸送層は、電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質で構成されることが好ましい。しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、電子輸送層が陽極からの正孔が再結合せずに陰極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たすならば、電子輸送能力がそれ程高くない材料で構成されていても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料で構成されている場合と同等となる。したがって、本発明における電子輸送層には、正孔の移動を効率よく阻止できる正孔阻止層も同義のものとして含まれる。
【0204】
電子輸送層に用いられる電子輸送材料としては、ナフタレン、アントラセンなどの縮合多環芳香族誘導体、4,4’−ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香環誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、リンオキサイド誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)などのキノリノール錯体、ベンゾキノリノール錯体、ヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体およびフラボノール金属錯体などの各種金属錯体が挙げられるが、駆動電圧を低減し、高効率発光が得られることから、炭素、水素、窒素、酸素、ケイ素、リンの中から選ばれる元素で構成され、電子受容性窒素を含む芳香族複素環構造を有する化合物を用いることが好ましい。
【0205】
電子受容性窒素を含む芳香族複素環構造を有する化合物としては、例えば、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジンやターピリジンなどのオリゴピリジン誘導体、キノキサリン誘導体およびナフチリジン誘導体などが好ましい化合物として挙げられる。中でも、トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼンなどのイミダゾール誘導体、1,3−ビス[(4−tert−ブチルフェニル)1,3,4−オキサジアゾリル]フェニレンなどのオキサジアゾール誘導体、N−ナフチル−2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾールなどのトリアゾール誘導体、バソクプロインや1,3−ビス(1,10−フェナントロリン−9−イル)ベンゼンなどのフェナントロリン誘導体、2,2’−ビス(ベンゾ[h]キノリン−2−イル)−9,9’−スピロビフルオレンなどのベンゾキノリン誘導体、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロールなどのビピリジン誘導体、1,3−ビス(4’−(2,2’:6’2”−ターピリジニル))ベンゼンなどのターピリジン誘導体、ビス(1−ナフチル)−4−(1,8−ナフチリジン−2−イル)フェニルホスフィンオキサイドなどのナフチリジン誘導体が、電子輸送能の観点から好ましく用いられる。また、これらの誘導体が、縮合多環芳香族骨格を有していると、ガラス転移温度が向上すると共に、電子移動度も大きくなり発光素子の低電圧化の効果が大きいのでより好ましい。さらに、素子耐久寿命が向上し、合成のし易さ、原料入手が容易であることを考慮すると、縮合多環芳香族骨格はアントラセン骨格、ピレン骨格またはフェナントロリン骨格であることが特に好ましい。上記電子輸送材料は単独でも用いられるが、上記電子輸送材料を2種以上混合して用いたり、その他の電子輸送材料の一種以上を上記の電子輸送材料に混合して用いたりしても構わない。
【0206】
好ましい電子輸送材料としては、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
【0208】
これら以外にも、国際公開第2004−63159号、国際公開第2003−60956号、Appl.Phys.Lett.74,865(1999)、Org.Electron.4,113(2003)、国際公開第2010−113743号、国際公開第2010−1817号等に開示された電子輸送材料も用いることができる。
【0209】
また、本発明のフェナントロリン誘導体も高い電子注入輸送能を有することから電子輸送材料として好適に用いられる。
【0210】
本発明のフェナントロリン誘導体が電子輸送材料として用いられる場合には、その各一種のみに限る必要はなく、本発明のフェナントロリン誘導体の複数種を混合して用いたり、その他の電子輸送材料の一種類以上を本発明の効果を損なわない範囲で本発明のフェナントロリン誘導体と混合して用いたりしてもよい。混合しうる電子輸送材料としては、特に限定されないが、ナフタレン、アントラセン、ピレンなどの縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、4,4’−ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香環誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、リンオキサイド誘導体、カルバゾール誘導体およびインドール誘導体、リチウムキノリノール、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)などのキノリノール錯体やヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体およびフラボノール金属錯体が挙げられる。
【0211】
上記電子輸送材料は単独でも用いられるが、上記電子輸送材料の2種以上を混合して用いたり、その他の電子輸送材料の一種以上を上記の電子輸送材料に混合して用いたりしても構わない。また、ドナー性材料を含有してもよい。ここで、ドナー性材料とは電子注入障壁の改善により、陰極または電子注入層からの電子輸送層への電子注入を容易にし、さらに電子輸送層の電気伝導性を向上させる化合物である。
【0212】
本発明におけるドナー性材料の好ましい例としては、アルカリ金属、アルカリ金属を含有する無機塩、アルカリ金属と有機物との錯体、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属を含有する無機塩またはアルカリ土類金属と有機物との錯体などが挙げられる。アルカリ金属、アルカリ土類金属の好ましい種類としては、低仕事関数で電子輸送能向上の効果が大きいリチウム、ナトリウム、セシウムといったアルカリ金属や、マグネシウム、カルシウムといったアルカリ土類金属が挙げられる。
【0213】
また、真空中での蒸着が容易で取り扱いに優れることから、金属単体よりも無機塩、あるいは有機物との錯体の状態であることが好ましい。さらに、大気中での取扱を容易にし、添加濃度の制御のし易さの点で、有機物との錯体の状態にあることがより好ましい。無機塩の例としては、LiO、Li
2O等の酸化物、窒化物、LiF、NaF、KF等のフッ化物、Li
2CO
3、Na
2CO
3、K
2CO
3、Rb
2CO
3、Cs
2CO
3等の炭酸塩などが挙げられる。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の好ましい例としては、原料が安価で合成が容易な点から、リチウムが挙げられる。また、有機物との錯体における有機物の好ましい例としては、キノリノール、ベンゾキノリノール、フラボノール、ヒドロキシイミダゾピリジン、ヒドロキシベンズアゾール、ヒドロキシトリアゾールなどが挙げられる。中でも、アルカリ金属と有機物との錯体が好ましく、リチウムと有機物との錯体がより好ましく、リチウムキノリノールが特に好ましい。これらのドナー性材料を2種以上混合して用いてもよい。
【0214】
好適なドーピング濃度は材料やドーピング領域の膜厚によっても異なるが、例えばドナー性材料がアルカリ金属、アルカリ土類金属といった無機材料の場合は、電子輸送材料とドナー性材料の蒸着速度比が10000:1〜2:1の範囲となるようにして共蒸着して電子輸送層としたものが好ましい。蒸着速度比は100:1〜5:1がより好ましく、100:1〜10:1がさらに好ましい。またドナー性材料が金属と有機物との錯体である場合は、電子輸送材料とドナー性材料の蒸着速度比が100:1〜1:100の範囲となるようにして共蒸着して電子輸送層としたものが好ましい。蒸着速度比は10:1〜1:10がより好ましく、7:3〜3:7がより好ましい。
【0215】
電子輸送層にドナー性材料をドーピングして電子輸送能を向上させる方法は、薄膜層の膜厚が厚い場合に特に効果を発揮するものである。電子輸送層および発光層の合計膜厚が50nm以上の場合に特に好ましく用いられる。例えば、発光効率を向上させるために干渉効果を利用する方法があるが、これは発光層から直接放射される光と、陰極で反射された光の位相を整合させて光の取り出し効率を向上させるものである。この最適条件は光の発光波長に応じて変化するが、電子輸送層および発光層の合計膜厚が50nm以上となり、赤色などの長波長発光の場合には100nm近くの厚膜になる場合がある。
【0216】
ドーピングする電子輸送層の膜厚は、電子輸送層の一部分または全部のどちらでも構わない。一部分にドーピングする場合、少なくとも電子輸送層/陰極界面にはドーピング領域を設けることが望ましく、陰極界面付近にドーピングするだけでも低電圧化の効果は得られる。一方、ドナー性材料が発光層に直接接していると発光効率を低下させる悪影響を及ぼす場合があり、その場合には発光層/電子輸送層界面にノンドープ領域を設けることが好ましい。
【0217】
(電子注入層)
本発明において、陰極と電子輸送層の間に電子注入層を設けてもよい。一般的に電子注入層は陰極から電子輸送層への電子の注入を助ける目的で挿入されるが、挿入する場合は、電子受容性窒素を含むヘテロアリール環構造を有する化合物を用いてもよいし、上記のドナー性材料を含有する層を用いてもよい。本発明のフェナントロリン誘導体が電子注入層に含まれていてもよい。
【0218】
また電子注入層に絶縁体や半導体の無機物を用いることもできる。これらの材料を用いることで発光素子の短絡を有効に防止して、かつ電子注入性を向上させることができるので好ましい。
【0219】
このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用するのが好ましい。電子注入層がこれらのアルカリ金属カルコゲナイド等で構成されていれば、電子注入性をさらに向上させることができる点でより好ましい。
【0220】
具体的に、好ましいアルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、Li
2O、Na
2S及びNa
2Seが挙げられ、好ましいアルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS及びCaSeが挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl及びNaCl等が挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF
2、BaF
2、SrF
2、MgF
2及びBeF
2等のフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。
【0221】
さらに有機物と金属の錯体も好適に用いられる。電子注入層に有機物と金属の錯体を用いる場合は膜厚調整が容易であるのでより好ましい。このような有機金属錯体の例としては有機物との錯体における有機物の好ましい例としては、キノリノール、ベンゾキノリノール、ピリジルフェノール、フラボノール、ヒドロキシイミダゾピリジン、ヒドロキシベンズアゾール、ヒドロキシトリアゾールなどが挙げられる。中でも、アルカリ金属と有機物との錯体が好ましく、リチウムと有機物との錯体がより好ましく、リチウムキノリノールが特に好ましい。
【0222】
(電荷発生層)
本発明において、電荷発生層とは、上記のタンデム構造型素子における、陽極と陰極の間にある中間層であり、電荷分離により正孔および電子を発生させる層である。電荷発生層は、一般に、陰極側のP型層と陽極側のN型層から形成される。これらの層には、効率的な電荷分離と、生じたキャリアの効率的な輸送が望まれる。
【0223】
P型の電荷発生層には、上述の正孔注入層や正孔輸送層に用いられる材料を用いることができる。例えば、HAT−CN6、NPDやTBDBなどのベンジジン誘導体、m−MTDATAや1−TNATAなどのスターバーストアリールアミンと呼ばれる材料群、一般式(3)および(4)で表される骨格を有する材料などを好適に用いることができる。
【0224】
N型の電荷発生層には、上述の電子注入層や電子輸送層に用いられる材料を用いることができ、電子受容性窒素を含むヘテロアリール環構造を有する化合物を用いてもよいし、上記のドナー性材料を含有する層を用いてもよい。本発明のフェナントロリン誘導体に上記のドナー性材料がドープされた層も好適に用いることができる。
【0225】
発光素子を構成する上記各層の形成方法は、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、コーティング法など特に限定されないが、通常は、素子特性の点から抵抗加熱蒸着または電子ビーム蒸着が好ましい。
【0226】
有機層の厚みは、発光物質の抵抗値にもよるので限定することはできないが、1〜1000nmであることが好ましい。発光層、電子輸送層、正孔輸送層の膜厚はそれぞれ、好ましくは1nm以上200nm以下であり、さらに好ましくは5nm以上100nm以下である。
【0227】
本発明の発光素子は、電気エネルギーを光に変換できる機能を有する。ここで電気エネルギーとしては主に直流電流が使用されるが、パルス電流や交流電流を用いることも可能である。電流値および電圧値は特に制限はないが、素子の消費電力や寿命を考慮すると、できるだけ低いエネルギーで最大の輝度が得られるよう選ばれるべきである。
【0228】
本発明の発光素子は、例えば、マトリクスおよび/またはセグメント方式で表示するディスプレイとして好適に用いられる。
【0229】
マトリクス方式とは、表示のための画素が格子状やモザイク状など二次元的に配置され、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状やサイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられ、また、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法は、線順次駆動方法やアクティブマトリクスのどちらでもよい。線順次駆動はその構造が簡単であるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリクスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
【0230】
本発明におけるセグメント方式とは、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、このパターンの配置によって決められた領域を発光させる方式である。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示および自動車のパネル表示などが挙げられる。そして、前記マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
【0231】
本発明の発光素子は、各種機器等のバックライトとしても好ましく用いられる。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板および標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が検討されているパソコン用途のバックライトに本発明の発光素子は好ましく用いられ、従来のものより薄型で軽量なバックライトを提供できる。
【実施例】
【0232】
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例10,12,22,24,34,36,46,48,53,66,67および75は、参考例1〜12に読み替えるものとする。
【0233】
合成例1
化合物[A−1]の合成
2−アセチルピリジン12.1g、8−アミノキノリン−7−カルボアルデヒド17.2g、水酸化カリウム14.0g、エタノール1000mLを混合し、窒素置換した後に加熱還流した。4.5時間後、室温に冷却した後、トルエン500mL、水1000mLを加え分液した。水層をトルエン500mLで2回抽出した後、先の有機層と合わせ、エタノールを減圧留去した。溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した後、真空乾燥することにより、中間体[a]を23.9g得た。
【0234】
【化85】
【0235】
次に、1−ブロモ−4−クロロベンゼン6.13gとジブチルエーテル20.0mLを混合し、−10℃まで冷却した。そこにn−ブチルリチウム(1.6M、ヘキサン溶液)20.0mLを加え、0℃まで昇温した後、30分攪拌した。この調整液を、中間体[a]8.23g、トルエン165mLを混合して−10℃まで冷却した液にゆっくり添加した。添加の際、反応液温度は−5℃以下になるように調整した。添加後、−5℃以下で1時間攪拌したのち、水200mLを加えてクエンチした。水層を除去後、水100mLで3回有機層を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた固体にテトラヒドロフラン300mLを加え、溶解させた後、二酸化マンガン16.7gを加え、室温攪拌した。10時間後、テトラヒドロフラン200mLを加えた後に、不溶物をセライトろ過により除去した。ろ液の溶媒を減圧留去した後、得られた固体をトルエン/シクロヘキサンで再結晶し、得られた固体をろ過し、真空乾燥することにより、中間体[b]を9.39g得た。
【0236】
【化86】
【0237】
次に、中間体[b]2.15g、1−ピレンボロン酸1.59g、1,4−ジオキサン60.0mL、1.27Mリン酸カリウム水溶液10.2mLを混合し、窒素置換した。この混合溶液にビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)135mg、トリシクロヘキシルホスフィン・テトラフルオロボラン129mgを加え、3.5時間加熱還流した。室温に冷却した後、水100mlを加え、析出物をろ過した。真空乾燥後、テトラヒドロフラン400mLを加えて加熱溶解し、50℃付近まで冷却後、活性炭313mgを加え、1時間加熱還流した。冷却後、シリカパットでろ過した。ろ液の溶媒を留去した後、得られた固体をo−キシレンで再結晶し、得られた固体をろ過した。さらにもう一度o−キシレンで再結晶し、真空乾燥した後、ピリジン/メタノールで再結晶した。得られた固体をろ過し、真空乾燥することにより、化合物[A−1]の黄色固体を1.97g得た。同定はマススペクトル測定によりおこなった。
【0238】
なお、化合物[A−1]は、油拡散ポンプを用いて1×10
−3Paの圧力下、約300℃で昇華精製を行ってから発光素子材料として使用した。
【0239】
【化87】
【0240】
合成例2
化合物[A−2]の合成
3−アセチルピリジン12.1g、8−アミノキノリン−7−カルボアルデヒド17.2g、水酸化カリウム14.0g、エタノール1000mLを混合し、窒素置換した後に加熱還流した。4.5時間後、室温に冷却した後、トルエン500mL、水1000mLを加え分液した。水層をトルエン500mLで2回抽出した後、先の有機層と合わせ、エタノールを減圧留去した。溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した後、真空乾燥することにより、中間体[c]を14.4g得た。
【0241】
【化88】
【0242】
次に、1−ブロモ−3−クロロベンゼン6.13gとジブチルエーテル20.0mLを混合し、−10℃まで冷却した。そこにn−ブチルリチウム(1.6M、ヘキサン溶液)20.0mLを加え、0℃まで昇温した後、30分攪拌した。この調整液を、中間体[c]8.23g、トルエン165mLを混合して−10℃まで冷却した液にゆっくり添加した。添加の際、反応液温度は−5℃以下になるように調整した。添加後、−5℃以下で1時間攪拌したのち、水200mLを加えてクエンチした。水層を除去後、水100mLで3回有機層を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた固体にテトラヒドロフラン300mLを加え、溶解させた後、二酸化マンガン16.7gを加え、室温攪拌した。8時間後、テトラヒドロフラン200mLを加えた後に、不溶物をセライトろ過により除去した。ろ液の溶媒を減圧留去した後、得られた固体をトルエン/シクロヘキサンで再結晶し、得られた固体をろ過し、真空乾燥することにより、中間体[d]を9.34g得た。
【0243】
【化89】
【0244】
次に、中間体[b]2.21g、3−フルオランテンボロン酸1.62g、1,4−ジオキサン60.0mL、1.27Mリン酸カリウム水溶液10.4mLを混合し、窒素置換した。この混合溶液にビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)138mg、トリシクロヘキシルホスフィン・テトラフルオロボラン133mgを加え、3時間加熱還流した。室温に冷却した後、水100mlを加え、析出物をろ過した。真空乾燥後、テトラヒドロフラン300mLを加えて溶解し、活性炭313mgを加え、1時間加熱還流した。冷却後、シリカパットでろ過した。ろ液の溶媒を留去した後、得られた固体をピリジン/メタノールで再結晶した。得られた固体をろ過し、真空乾燥することにより、化合物[A−2]の黄色固体を2.55g得た。同定はマススペクトル測定によりおこなった。
【0245】
なお、化合物[A−
2]は、油拡散ポンプを用いて1×10
−3Paの圧力下、約300℃で昇華精製を行ってから発光素子材料として使用した。
【0246】
【化90】
【0247】
合成例3
化合物[A−3]の合成
4’−クロロアセトフェノン15.5g、8−アミノキノリン−7−カルボアルデヒド17.2g、水酸化カリウム14.0g、エタノール1000mLを混合し、窒素置換した後に加熱還流した。4.5時間後、室温に冷却した後、トルエン500mL、水1000mLを加え分液した。水層をトルエン500mLで2回抽出した後、先の有機層と合わせ、エタノールを減圧留去した。溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した後、真空乾燥することにより、中間体[e]を25.9g得た。
【0248】
【化91】
【0249】
次に、中間体[e]13.6g、ビスピナコラートジボロン17.8g、酢酸カリウム13.8g、1,4−ジオキサン468mLを混合し、窒素置換した後、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)538mg、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル892mgを加え、3時間加熱還流した。室温に冷却した後、析出物をろ過し、ろ液の溶媒を留去した。得られた固体を水100mLで2回、ヘプタン50mLで2回洗浄した後、真空乾燥することにより、中間体[f]を15.2g得た。
【0250】
【化92】
【0251】
次に、中間体[f]12.5g、8−クロロキノリン4.11g、リン酸カリウム7.47g、トルエン251mLを混合し、窒素置換した後、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)289mg、トリtert−ブチルホスフィン・テトラフルオロボラン292mgを加え、2時間加熱還流した。室温に冷却した後、水250mLを添加し、析出した固体をセライトを用いてろ過した。ろ液を分液し、分取した有機層を水200mLで2回洗浄した後、有機層の溶媒を減圧留去した。得られた固体をピリジン100mLに加熱溶解した後、活性炭963mgと“QuadraSil”(登録商標)1.50gを加え、100℃で1時間攪拌後、室温にてセライトろ過した。ろ液の溶媒を減圧留去した後、o−キシレンで再結晶し、得られた固体をろ過し、真空乾燥することにより、中間体[g]を8.96g得た。
【0252】
【化93】
【0253】
次に、1−ブロモピレン4.53gとジブチルエーテル40.0mLを混合し、−10℃まで冷却した。そこにn−ブチルリチウム(1.6M、ヘキサン溶液)10.0mLを加え、0℃まで昇温した後、30分攪拌した。この調整液を、中間体[g]6.13g、トルエン82.0mLを混合して−10℃まで冷却した液にゆっくり添加した。添加の際、反応液温度は−5℃以下になるように調整した。添加後、−5℃以下で2時間攪拌したのち、水100mLを加えてクエンチした。トルエン100mLを追加して分液した後、水層を除去した。有機層を水100mLで2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた固体にテトラヒドロフラン400mLを加え、溶解させた後、二酸化マンガン6.96gを加え、室温攪拌した。7時間後、不溶物をセライトろ過により除去し、ろ液の溶媒を減圧留去した。得られた固体をトルエンで再結晶し、得られた固体をさらにピリジンで再結晶した。ピリジンでの再結晶をもう一度繰り返し、得られた固体をろ過し、真空乾燥することにより、化合物[A−3]の黄色固体を5.22g得た。同定はマススペクトル測定によりおこなった。
【0254】
なお、化合物[A−3]は、油拡散ポンプを用いて1×10
−3Paの圧力下、約290℃で昇華精製を行ってから発光素子材料として使用した。
【0255】
【化94】
【0256】
合成例4
化合物[A−4]の合成
中間体[e]8.20g、3−フルオランテンボロン酸6.80g、1,4−ジオキサン282.0mL、1.27Mリン酸カリウム水溶液48.9mLを混合し、窒素置換した。この混合溶液にビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)578mg、トリシクロヘキシルホスフィン・テトラフルオロボラン555mgを加え、2時間加熱還流した。室温に冷却した後、水300mlを加え、析出物をろ過した。真空乾燥後、テトラヒドロフラン800mLを加えて溶解し、活性炭1.29mgを加え、1時間加熱還流した。冷却後、シリカパットでろ過した。ろ液の溶媒を留去した後、得られた固体をピリジン/メタノールで再結晶した。得られた固体をろ過し、真空乾燥することにより、中間体[h]を10.9g得た。
【0257】
【化95】
【0258】
次に、2−(4−ブロモフェニル)ピリジン3.74gとジブチルエーテル40.0mLを混合し、−10℃まで冷却した。そこにn−ブチルリチウム(1.6M、ヘキサン溶液)10.0mLを加え、0℃まで昇温した後、30分攪拌した。この調整液を、中間体[h]7.30g、トルエン82.0mLを混合して−10℃まで冷却した液にゆっくり添加した。添加の際、反応液温度は−5℃以下になるように調整した。添加後、−5℃以下で2時間攪拌したのち、水100mLを加えてクエンチした。トルエン100mLを追加して分液した後、水層を除去した。有機層を水100mLで2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた固体にテトラヒドロフラン500mLを加え、溶解させた後、二酸化マンガン6.96gを加え、室温攪拌した。8時間後、不溶物をセライトろ過により除去し、ろ液の溶媒を減圧留去した。得られた固体をo−キシレンで再結晶し、さらにピリジンで再結晶した。得られた固体をろ過し、真空乾燥することにより、化合物[A−4]の黄色固体を5.41g得た。同定はマススペクトル測定によりおこなった。
【0259】
なお、化合物[A−4]は、油拡散ポンプを用いて1×10−3Paの圧力下、約310℃で昇華精製を行ってから発光素子材料として使用した。
【0260】
【化96】
【0261】
下記の実施例において、化合物B−1〜B−12は以下に示す化合物である。
【0262】
【化97】
【0263】
実施例1
ITO透明導電膜を165nm堆積させたガラス基板(ジオマテック(株)製、11Ω/□、スパッタ品)を38×46mmに切断し、エッチングを行った。得られた基板を “セミコクリーン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。この基板を素子を作製する直前に1時間UV−オゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10
−4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、まず正孔注入層として、HAT−CN6を5nm、正孔輸送層として、HT−1を50nm蒸着した。次に、発光層として、ホスト材料H−1、ドーパント材料D−1をドープ濃度が5重量%になるようにして20nmの厚さに蒸着した。次に、電子輸送層として化合物B−1を35nmの厚さに蒸着して積層した。次に、フッ化リチウムを0.5nm蒸着した後、アルミニウムを1000nm蒸着して陰極とし、5×5mm角の素子を作製した。ここで言う膜厚は、水晶発振式膜厚モニター表示値である。この発光素子の1000cd/m
2時の特性は、駆動電圧4.3V、外部量子効率4.8%であった。また初期輝度を1000cd/m
2に設定し、定電流駆動させたところ輝度20%低下する時間は1500時間であった。なお化合物HAT−CN6、HT−1、H−1、D−1は以下に示す化合物である。
【0264】
【化98】
【0265】
実施例2〜12
電子輸送層に表1に記載した化合物を用いた以外は実施例1と同様にして発光素子を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0266】
比較例1〜5
電子輸送層に表1に記載した化合物を用いた以外は実施例1と同様にして発光素子を作製し、評価した。結果を表1に示す。なお、E−1〜E−5は以下に示す化合物である。
【0267】
【化99】
【0268】
実施例13
ITO透明導電膜を165nm堆積させたガラス基板(ジオマテック(株)製、11Ω/□、スパッタ品)を38×46mmに切断し、エッチングを行った。得られた基板を “セミコクリーン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。この基板を素子を作製する直前に1時間UV−オゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10
−4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、まず正孔注入層として、HAT−CN6を5nm、正孔輸送層として、HT−1を50nm蒸着した。次に、発光層として、ホスト材料H−1、ドーパント材料D−1をドープ濃度が5重量%になるようにして20nmの厚さに蒸着した。次に、第1電子輸送層として化合物B−1を25nmの厚さに蒸着して積層した。さらに第2電子輸送層として電子輸送材料に化合物B−1を、ドナー性材料としてリチウムを用い、化合物B−1とリチウムの蒸着速度比が20:1になるようにして10nmの厚さに積層した。次に、フッ化リチウムを0.5nm蒸着した後、アルミニウムを1000nm蒸着して陰極とし、5×5mm角の素子を作製した。この発光素子の1000cd/m
2時の特性は、駆動電圧3.9V、外部量子効率5.8%であった。また初期輝度を1000cd/m
2に設定し、定電流駆動させたところ輝度20%低下する時間は1650時間であった。
【0269】
実施例13〜24
電子輸送層に表2に記載した化合物を用いた以外は実施例13と同様にして発光素子を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0270】
比較例6〜10
電子輸送層に表2に記載した化合物を用いた以外は実施例13と同様にして発光素子を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0271】
実施例25
ITO透明導電膜を165nm堆積させたガラス基板(ジオマテック(株)製、11Ω/□、スパッタ品)を38×46mmに切断し、エッチングを行った。得られた基板を “セミコクリーン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。この基板を素子を作製する直前に1時間UV−オゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10
−4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、まず正孔注入層として、HAT−CN6を5nm、正孔輸送層として、HT−1を50nm蒸着した。次に、発光層として、ホスト材料H−1、ドーパント材料D−1をドープ濃度が5重量%になるようにして20nmの厚さに蒸着した。さらに電子輸送層として電子輸送材料に化合物B−1を、ドナー性材料として2E−1を用い、化合物B−1と2E−1の蒸着速度比が1:1になるようにして35nmの厚さに積層した。この電子輸送層は表4では第2電子輸送層として示す。次に、フッ化リチウムを0.5nm蒸着した後、マグネシウムと銀を1000nm共蒸着して陰極とし、5×5mm角の素子を作製した。この発光素子の1000cd/m
2時の特性は、駆動電圧3.9V、外部量子効率6.0%であった。また初期輝度を1000cd/m
2に設定し、定電流駆動させたところ輝度20%低下する時間は1800時間であった。なお、2E−1は下記に示す化合物である。
【0272】
【化100】
【0273】
実施例26〜36
電子輸送層、ドナー性材料として表3に記載した化合物を用いた以外は実施例25と同様にして発光素子を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0274】
比較例11〜15
電子輸送層、ドナー性材料として表3に記載した化合物を用いた以外は実施例25と同様にして発光素子を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0275】
実施例37
第1電子輸送層として化合物B−1を25nmの厚さに蒸着して積層し、さらに第2電子輸送層として電子輸送材料に化合物B−1を、ドナー性材料として2E−1を用い、化合物B−1と2E−1の蒸着速度比が1:1になるようにして10nmの厚さに積層した。それ以外は実施例25と同様にして発光素子を作製した。この発光素子の1000cd/m
2時の特性は、駆動電圧4.0V、外部量子効率5.9%であった。また初期輝度を1000cd/m
2に設定し、定電流駆動させたところ輝度20%低下する時間は1950時間であった。
【0276】
実施例38〜48
電子輸送層、ドナー性材料として表4に記載した化合物を用いた以外は実施例37と同様にして発光素子を作製し、評価した。結果を表4に示す。
【0277】
比較例15〜20
電子輸送層、ドナー性材料として表4に記載した化合物を用いた以外は実施例37と同様にして発光素子を作製し、評価した。結果を表4に示す。
【0278】
実施例49
ITO透明導電膜を165nm堆積させたガラス基板(ジオマテック(株)製、11Ω/□、スパッタ品)を38×46mmに切断し、エッチングを行った。得られた基板を “セミコクリーン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。この基板を素子を作製する直前に1時間UV−オゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10
−4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、まず正孔注入層として、HAT−CN6を5nm、正孔輸送層として、HT−1を50nm蒸着した。この正孔輸送層は表6では第1正孔輸送層として示す。次に、発光層として、ホスト材料H−2、ドーパント材料D−2をドープ濃度が10重量%になるようにして20nmの厚さに蒸着した。次に、電子輸送層として化合物B−2を35nmの厚さに蒸着して積層した。次に、フッ化リチウムを0.5nm蒸着した後、アルミニウムを1000nm蒸着して陰極とし、5×5mm角の素子を作製した。ここで言う膜厚は、水晶発振式膜厚モニター表示値である。この発光素子の4000cd/m
2時の特性は、駆動電圧3.9V、外部量子効率10.4%であった。また初期輝度を4000cd/m
2に設定し、定電流駆動させたところ輝度20%低下する時間は1400時間であった。なおH−2、D−2は以下に示す化合物である。
【0279】
【化101】
【0280】
実施例50〜54
電子輸送層として表5記載の化合物を用いた以外は実施例49と同様に発光素子を作製し、評価した。結果を表5に示す。
【0281】
比較例21〜23
電子輸送層として表5記載の化合物を用いた以外は実施例49と同様に発光素子を作製し、評価した。結果を表5に示す。
【0282】
実施例55
ITO透明導電膜を165nm堆積させたガラス基板(ジオマテック(株)製、11Ω/□、スパッタ品)を38×46mmに切断し、エッチングを行った。得られた基板を “セミコクリーン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。この基板を素子を作製する直前に1時間UV−オゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10
−4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、まず正孔注入層として、HAT−CN
6を5nm、第1正孔輸送層として、HT−1を40nm蒸着した。さらに第2正孔輸送層としてHT−2を10nm蒸着した。次に、発光層として、ホスト材料H−2、ドーパント材料D−2をドープ濃度が10重量%になるようにして20nmの厚さに蒸着した。次に、電子輸送層として化合物B−2を35nmの厚さに蒸着して積層した。次に、フッ化リチウムを0.5nm蒸着した後、アルミニウムを1000nm蒸着して陰極とし、5×5mm角の素子を作製した。ここで言う膜厚は、水晶発振式膜厚モニター表示値である。この発光素子の4000cd/m
2時の特性は、駆動電圧3.9V、外部量子効率13.3%であった。また初期輝度を4000cd/m
2に設定し、定電流駆動させたところ輝度20%低下する時間は1600時間であった。なお、HT−2は以下に示す化合物である。
【0283】
【化102】
【0284】
実施例56〜69
第2正孔輸送層および電子輸送層として表5記載の化合物を用いた以外は、実施例55と同様にして素子を作製し、評価した。結果を表5に示す。なおHT−3、HT−4、HT−5は以下に示す化合物である。
【0285】
【化103】
【0286】
比較例24〜31
第2正孔輸送層および電子輸送層として表5記載の化合物を用いた以外は、実施例55と同様にして素子を作製し、評価した。結果を表5に示す。
【0287】
実施例70
ITO透明導電膜を165nm堆積させたガラス基板(ジオマテック(株)製、11Ω/□、スパッタ品)を38×46mmに切断し、エッチングを行った。得られた基板を “セミコクリーン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。この基板を素子を作製する直前に1時間UV−オゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10−4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、まず正孔注入層として、HAT−CN6を10nm、正孔輸送層として、HT−6を90nm蒸着した。次に、発光層として、ホスト材料H−1、ドーパント材料D−3をドープ濃度が5重量%になるようにして30nmの厚さに蒸着し、その上に、電子輸送層として化合物ET−1を30nmの厚さに蒸着して積層した。次にN型の電荷発生層として電子輸送材料に化合物B−1を、ドナー性材料としてリチウムを用い、化合物B−1とリチウムの蒸着速度比が20:1になるようにして10nmの厚さに積層し、その上に、P型の電荷発生層として、HT−6を10nm蒸着した。さらに、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層を上記と同様の条件で積層した後、フッ化リチウムを0.5nm蒸着した後、アルミニウムを1000nm蒸着して陰極とし、5×5mm角の素子を作製した。この発光素子の1000cd/m
2時の特性は、駆動電圧8.7V、外部量子効率6.9%であった。また初期輝度を1000cd/m
2に設定し、定電流駆動させたところ輝度20%低下する時間は1000時間であった。なおHT−6、ET−1、D−3は以下に示す化合物である。
【0288】
【化104】
【0289】
実施例71〜76
N型の電荷発生層の電子輸送材料として表6記載の化合物を用いた以外は、実施例70と同様にして素子を作製し、評価した。結果を表6に示す。
【0290】
比較例32〜36
N型の電荷発生層の電子輸送材料として表6記載の化合物を用いた以外は、実施例70と同様にして素子を作製し、評価した。結果を表6に示す。
【0291】
【表1】
【0292】
【表2】
【0293】
【表3】
【0294】
【表4】
【0295】
【表5】
【0296】
【表6】