特許第6769327号(P6769327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日信化学工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769327
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】インク組成物及び印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/38 20140101AFI20201005BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20201005BHJP
   B41M 5/00 20060101ALN20201005BHJP
【FI】
   C09D11/38
   B41J2/01 501
   !B41M5/00 120
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-23430(P2017-23430)
(22)【出願日】2017年2月10日
(65)【公開番号】特開2018-127580(P2018-127580A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2019年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226666
【氏名又は名称】日信化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水崎 透
【審査官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−077072(JP,A)
【文献】 特開2017−019990(JP,A)
【文献】 特開2016−053129(JP,A)
【文献】 特開2016−175265(JP,A)
【文献】 特開2016−041809(JP,A)
【文献】 特開平11−043639(JP,A)
【文献】 特開2016−190981(JP,A)
【文献】 特開2003−253166(JP,A)
【文献】 特開2005−120181(JP,A)
【文献】 特開2017−001369(JP,A)
【文献】 特開2016−006167(JP,A)
【文献】 特開2007−091908(JP,A)
【文献】 特開2018−070827(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/005457(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/115614(WO,A1)
【文献】 特開平07−207187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D1/00−201/10
B41J2/01
B41M5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で示される非イオン性界面活性剤と、水と、(B)溶解度パラメータ(SP値)が9.0〜12.0であり、炭素数5〜10のアルキルアルコール類、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル及びアセトンの群から選ばれる1種類のみの水溶性有機溶剤と、着色剤とを含有し、上記(A)成分の含有量が0.01〜5質量%であることを特徴とするインク組成物。
【化1】
[式(1)中、m1は10以上の整数、n1は1以上の整数であり、R1は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシ基含有アルキル基、炭素数1〜20のカルボキシル基含有アルキル基、又は下記式(2)で示される基を表す。]
【化2】
[R2は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基、aは〜10の数、bは1〜20の数である。また、(C24O)単位及び(C36O)単位はその順序を問わず、ランダムであってもブロックであってもよい。]
【請求項2】
上記(A)成分の式(1)のR1の少なくとも1個が、上記式(2)で示される基である請求項1記載のインク組成物。
【請求項3】
上記(A)成分の非イオン性界面活性剤が、上記式(1)中のn1が1〜5である請求項1又は2記載のインク組成物。
【請求項4】
上記(B)成分の水溶性有機溶剤の含有量が5〜40質量%である請求項1〜3のいずれか1項記載のインク組成物。
【請求項5】
水と(B)成分の水溶性有機溶剤との比が、質量比として95:5〜60:40である請求項1〜4のいずれか1項記載のインク組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載のインク組成物による印刷部を有することを特徴とする印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非イオン性界面活性剤、水、水溶性有機溶剤及び着色剤を含有するインク組成物及び印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷業界において、環境問題への対応からインクの水系化(水/低揮発性水溶性有機溶剤混合系)が進みつつある。このような動きは、従来の有機溶剤系インクが主流である光沢紙、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム等の吸収性の悪いメディア(記録媒体)についても同様である。
【0003】
特に、このような吸収性の悪いメディアにおいて、インクの有機溶剤の一部を水に置き換えた系(水/有機溶剤混合系)では、濡れ性不足に起因した印字不良が発生する。そのため、このようなインクには、界面活性剤が添加されることが一般的である。
【0004】
インクや水系塗料業界においては、シリコーン系界面活性剤やアセチレングリコール系界面活性剤などの非イオン性界面活性剤が広く使用されている。シリコーン系界面活性剤としては、変性ポリシロキサン化合物が知られており、特許文献1〜4(特開2003−253166号公報、特開2013−203910号公報、特開2005−23253号公報及び特開2005−120181号公報)には、ポリエーテル変性シリコーンを用いたインク組成物が開示されている。
【0005】
しかしながら、吸収性の悪いメディアに単にこのようなシリコーン系等の界面活性剤を用いたインキで印字しても十分な濡れ性を与えられない場合が多く、そのためこの点の解決が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−253166号公報
【特許文献2】特開2013−203910号公報
【特許文献3】特開2005−23253号公報
【特許文献4】特開2005−120181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、光沢紙、PP、PET、PVCフィルム等の吸収性の悪いメディアに印字した際にも、優れた濡れ性を発揮できるインク組成物及び該インク組成物が記録媒体に印刷された印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、インク組成物に用いる有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)とインクの濡れ性には、ある程度の相関があることを新たに知見した。即ち、有機溶剤単独で比較した場合、SP値の小さな有機溶剤を用いた方がインク組成物の濡れ性に優れる傾向があることを知見した。従って、水・有機溶剤の混合系インク組成物において、SP値の小さな有機溶剤を用いれば、濡れ性に優れたインク組成物が得られることが予見される。
【0009】
しかしながら、上記の水・有機溶剤の混合系インク組成物において、従来から用いられている界面活性剤を添加しても、濡れ性が大きく改善されることはなかった。このため、本発明者は更に検討を進めた結果、溶解度パラメータ(SP値)が12.0以下と比較的小さい有機溶剤を用いた水・有機溶剤の混合系インク組成物において、最適な界面活性剤、即ち、後述する式(1)で表されるシリコーン系非イオン性界面活性剤を採用することによって、光沢紙、PP、PET、PVCフィルム等の吸収性の悪いメディアに印字した際にも、優れた濡れ性を発揮でき、インクのドットが独立するものであり、滲みがなく、印字濃度、印字画像の色濃度が濃く、極めて良好な印字性能を示すことを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0010】
従って、本発明は、下記のインク組成物及び該インク組成物が記録媒体に印刷された印刷物を提供する。
〔1〕(A)下記式(1)で示される非イオン性界面活性剤と、水と、(B)溶解度パラメータ(SP値)が9.0〜12.0であり、炭素数5〜10のアルキルアルコール類、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル及びアセトンの群から選ばれる1種類のみの水溶性有機溶剤と、着色剤とを含有し、上記(A)成分の含有量が0.01〜5質量%であることを特徴とするインク組成物。
【化1】
[式(1)中、m1は10以上の整数、n1は1以上の整数であり、R1は、炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数が1〜20のヒドロキシ基含有アルキル基、炭素数が1〜20のカルボキシル基含有アルキル基、又は下記式(2)で示される基を表す。]
【化2】
[R2は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基、aは〜10の数、bは1〜20の数である。また、(C24O)単位及び(C36O)単位はその順序を問わず、ランダムであってもブロックであってもよい。]
〔2〕上記(A)成分の式(1)のR1の少なくとも1個が、上記式(2)で示される基である〔1〕記載のインク組成物。
〔3〕上記(A)成分の非イオン性界面活性剤が、上記式(1)中のn1が1〜5である〔1〕又は〔2〕記載のインク組成物。
〔4〕上記(B)成分の水溶性有機溶剤の含有量が5〜40質量%である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のインク組成物。
〔5〕水と(B)成分の水溶性有機溶剤との比が、質量比として95:5〜60:40である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のインク組成物。
〔6〕上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のインク組成物による印刷部を有することを特徴とする印刷物。
【発明の効果】
【0011】
本発明のインク組成物は、優れた濡れ性、浸透性を有するため、カラーブリードがなく、発色性、画像均一性にも優れ、高速印刷及び高速塗工にも対応可能である。また、このインク組成物は、光沢紙、PP、PET、PVCフィルム等の吸収性の悪いメディアに対しても適度に低接触角を示すため、インクのドットが独立するものであり、滲みがなく、印字濃度、印字画像の色濃度が濃く、極めて良好な印字性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のインク組成物は、(A)成分として特定の非イオン性界面活性剤と、水と、(B)成分として特定の溶解度パラメータ(SP値)を示す水溶性有機溶剤と、着色剤とを含有するものである。
【0013】
(A)成分は、下記式(1)で示される非イオン性界面活性剤である。
【化3】
【0014】
上記式(1)中、m1は10以上の整数、n1は1以上の整数であり、R1は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシ基含有アルキル基、炭素数1〜20のカルボキシル基含有アルキル基、又は下記式(2)で示される基を表す。
【化4】
【0015】
上記式(2)中、R2は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基、aは0〜10の数、bは0〜50の数である。また、(C24O)単位及び(C36O)単位はその順序を問わず、ランダムであってもブロックであってもよい。
【0016】
上記式(1)において、m1は10以上の整数である。m1が10以上の整数である上記式(1)の非イオン性界面活性剤を用いると、水溶性有機溶剤として溶解度パラメータ(SP値)12.0以下のものを用いたときに、優れた濡れ性を示す。また、上記式(1)中、m1は10〜100の整数であることが好ましく、より好ましくは10〜60の整数である。
【0017】
また、上記式(1)中、n1は1以上の整数であり、好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜5の整数である。上記のn1の値が上記範囲を逸脱すると、インクの濡れ性が不足するおそれがある。
【0018】
上記式(1)のR1としては、その少なくとも1個、より好ましくは全部が式(2)で示される基であることが好ましい。この場合、上記式(1)のR1として、上記式(2)で示される基を採用する場合、該式中のa,bの値については、a=1〜10,b=1〜20、特に、a=1〜5,b=1〜10であることが望ましい。上記のa又はbの値が上記範囲を逸脱すると、インクの濡れ性が不足するおそれがある。
【0019】
(A)成分は、上記式(1)で示されるものであればよいが、特に、HLBが5〜16、より好ましくは5〜8であるものが好適であるが、必ずしもHLBと性能は関係するわけではない。
【0020】
ここで、HLB(親水基/疎水基バランス「Hydrophile−Lipophile Barance」)は、下記式(3)(グリフィン法)により定義されるものである。HLBは0〜20までの値をとり、0に近づくほど親油性が高く、20に近づくほど親水性が高くなる値である。
【数1】
【0021】
上記式(1)に示される非イオン性界面活性剤のHLBの算出をするにあたり、親水性部分としてはR1の(C24O)単位、ヒドロキシ基、カルボキシル基が該当する。
【0022】
(A)成分の含有量は、インク組成物100質量%中、0.01〜5.0質量%であり、好ましくは0.05〜5.0質量%であり、より好ましくは0.1〜5.0質量%である。(A)成分の含有量が5.0質量%を超えると、泡の発生や印刷時の滲みの原因となる。
【0023】
また、着色剤に対する(A)成分の含有量は、0.2〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜100質量%である。
【0024】
また、本発明のインク組成物には、水と、(B)成分として、溶解度パラメータ(SP値)が9.0〜12.0である水溶性有機溶剤を含有する。
【0025】
本発明のインク組成物に含まれる水としては、例えば、イオン交換水などを用いることができる。水の含有量は、インク組成物100質量%中、55〜95質量%であることが好ましく、より好ましくは60〜80質量%である。
【0026】
(B)成分の水溶性有機溶剤としては、炭素数5〜10のアルキルアルコール類、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、アセトン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を適宜選択して使用することができるが、(B)成分の水溶性有機溶剤は、溶解度パラメータ(SP値)が9.0〜12.0である。この溶解度パラメータ(SP値)δは、Fedorsの推算法(R.F.Fedors:Polym.Eng.Sci.,14[2],147−154(1974))を用いて求めた値である。Fedorsの推算法では、分子構造に応じて、下記式(4)に表1に示す値を代入してSP値δを求める。なお、表1に示す値は、Fedorsの提案した値を抜粋したものである。
【数2】
ここで、ΣEcohは凝集エネルギー(cal/mol)を、ΣVはモル分子容(cm3/mol)を示す。
【表1】
【0027】
例えば、エチレングリコールモノプロピルエーテルであれば、下記のように求められる。
【表2】
【0028】
従って、ここではエチレングリコールモノプロピルエーテルの溶解度パラメータ(SP値)は「11.1」となる。
【0029】
(B)成分の水溶性有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)が12.0を超えると、インクの濡れ性が不足するおそれがあり、また、9.0より小さいと、インクの貯蔵安定性が不良となる場合がある。
【0030】
(B)成分の水溶性有機溶剤の含有量は、インク組成物100質量%中、5〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜40質量%である。
【0031】
水と(B)成分の水溶性有機溶剤との含有量比は、質量比で、95:5〜60:40であることが好ましく、より好ましくは80:20〜60:40である。この水溶性有機溶剤の含有量は少ない方が環境問題への配慮から好ましいが、少なすぎるとインク組成物の濡れ性が不足してしまうおそれがある。
【0032】
本発明のインク組成物は、着色剤を含有する。着色剤としては、染料、有機顔料、無機顔料を好適に用いることができる。例えば、染料としては、カラーインデックスにおいて、酸性染料、直接染料、反応染料、建染染料、硫化染料又は食品用色素に分類されているものの他に油溶染料、塩基性染料に分類される着色剤を用いることもできる。また、顔料として、黒色インク用としては、ファーネスブラック(カラーブラック)、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、具体的には、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA−II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上、コロンビア社製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、ヴァルカン(Valcan)XC−72R(以上、キャボット社製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(Special Black)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上、デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学社製)等、又は銅酸化物、鉄酸化物(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。更にカラーインク用としては、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83(ジスアゾイエローHR)、93、94、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、128、138、153、180、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22(ブリリアントファーストスカーレット)、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ba))、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3(パーマネントレッド2B(Sr))、48:4(パーマネントレッド2B(Mn))、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、202、206、209、219、C.I.ピグメントバイオレット19、23、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーG)、15:4、15:6(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36等が使用できる。着色剤の配合量は、インク組成物100質量%中、0.1〜15質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましい。
【0033】
本発明のインク組成物は、例えば、上記の各成分をプロペラ式撹拌機などの公知の混合調製方法により得ることができる。また、常温で固体の成分については、必要により加温して混合することができる。
【0034】
本発明のインク組成物には、必要に応じて、樹脂やその他添加剤を加えてもよい。樹脂としては、疎水基及び親水基を有しているポリマーであり、該ポリマーを形成する物質の疎水基が少なくともアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選ばれた1種以上であることが好ましい。そして、親水基が少なくともカルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、アミノ基、もしくはアミド基又はそれらの塩基であることが好ましい。それら分散ポリマーを形成する物質の具体例として2重結合を有するアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基或いはアリール基を有するモノマーやオリゴマー類を用いることができる。例えば、スチレン、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ブチルメタクリレート、(α,2,3又は4)−アルキルスチレン、(α,2,3又は4)−アルコキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、α−フェニルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他アルキル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基のジエチレングリコール又はポリエチレングリコールの(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、その他含フッ素、含塩素、含珪素(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、(メタ)アクリル酸等の1官能の他に架橋構造を導入する場合は(モノ、ジ、トリ、テトラ、ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール及び1,10−デカンジオール等の(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート、ビスフェノールA又はFのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のアクリル基やメタクリル基を有する化合物を用いることができる。
【0035】
上記の樹脂の配合量は、特に限定されるものではないが、インク組成物100質量%中、0〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜20質量%である。なお、樹脂を配合する場合には、1質量%以上とすることが好ましい。
【0036】
その他の添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、防腐剤、粘度調整剤などを適宜配合することができる。これらの添加剤は、インク組成物100質量%中の残部として配合させることができる。
【0037】
インク組成物は、粘度(23℃)を4mPa・s以下(0を含まず)に調製することが好ましく、これにより優れた印字特性を発揮させることができる。
【0038】
本発明のインク組成物は、インクとして、記録媒体に塗工、印刷されることによって、カラーブリードがなく、発色性、画像均一性に優れ、更に、滲みがなく、印字濃度、印字画像の色濃度が濃い印刷物が得られる。
【0039】
インクの記録媒体への塗工、印刷方法としては、インクジェット記録方式、ペン等の筆記用具による記録方式、その他公知の印刷方法が挙げられる。特に、本発明のインク組成物は、インクジェット記録方式に好ましく用いることができ、高速印刷及び高速塗工にも対応可能である。
【0040】
また、本発明のインク組成物は、記録媒体に印刷されるものであり、特に、低吸収性被記録媒体、非吸収性被記録媒体への塗工に好適に用いることができる。低吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、表面に油性インクを受容するための塗工層が設けられた塗工紙が挙げられる。塗工紙としては、特に限定されないが、例えば、アート紙、コート紙、マット紙に代表される印刷本紙が挙げられる。非吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、インク吸収層を有していないプラスチックフィルム、紙に代表される基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0042】
[実施例1]
式(1)及び式(2)において、m1=10、n1=3、a=3、b=1、R2=Hである非イオン性界面活性剤(A−1)〔HLB=5〕を用いて、表3に示す組成でインク組成物を作製した。
【0043】
ブラック顔料であるカラーブラックS170(デグッサ社製)5.0質量%を、イオン交換水64.5質量%にプロペラ式撹拌機で撹拌しながら徐々に添加した後、非イオン性界面活性剤(A−1)を0.5質量%、エチレングリコールモノプロピルエーテル(SP値:11.1)(B−1)を30.0質量%添加し、1時間撹拌することによってブラック(B)インク組成物を得た。
【0044】
また、ブラック顔料に変えて、マゼンタ顔料(C.I.ピグメントレッド122)、シアン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)、イエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー74)を用いて、上記と同様の方法により、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)インク組成物をそれぞれ作製した。
【0045】
作製した各インク組成物について、以下の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0046】
(1)印字濃度
セイコーエプソン製PX−045Aで黒インクを用いてOKトップコート紙(王子製紙製)に印字したドットに関し、サクラマイクロデンシトメーターPDM−5型(サクラ精機社製)で印字濃度を測定した。印字濃度は0.99〜1.10であることが好ましく、1.01〜1.10であることがより好ましい。
【0047】
(2)ドット径
セイコーエプソン製PX−045Aで黒インクを用いてOKトップコート紙に印字し、100倍に拡大し、ドット径を測定した。ドット径は200〜250μmであることが好ましく、220〜240μmであることがより好ましい。
【0048】
(3)印字画像の色濃度
セイコーエプソン製PX−045Aでブラック(B)、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)インクをOKトップコート紙にベタ印刷し、マクベス濃度計RD−918(マクベス社製)で測定した。色濃度は1.30〜2.00であることが好ましく、1.40〜2.00であることがより好ましい。
【0049】
(4)画像均一性
セイコーエプソン製PX−045Aでブラック(B)、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)インクをOKトップコート紙に印字した。印字物を電子顕微鏡で100倍に拡大し、レベリング性を以下の基準により評価した。
○:ほとんど濃度差のないもの
△:僅かに濃度差のあるもの
×:ドット内で三日月状のまだら模様が見られる
【0050】
(5)接触角
各種界面活性剤溶液のOKトップコート紙、PP、PET、PVCへの0.3秒後の接触角値を協和界面科学社製の接触角計CA−D型を用いて測定した。
【0051】
[実施例2〜11、比較例1〜15]
実施例1と同様に、表3〜5に示す組成でインク組成物を作製し、評価を行った。その評価結果は、表3(実施例2〜11)、表4(比較例1〜8)及び表5(比較例9〜15)に併せて示す。なお、実施例2〜11及び比較例1〜15では、下記の(A)非イオン性界面活性剤と(B)水溶性有機溶剤とを用いた。
【0052】
(A−1):式(1)及び式(2)において、m1=10、n1=3、a=3、b=1及びR2=Hである非イオン性界面活性剤 〔HLB=5〕
(A−2):式(1)及び式(2)において、m1=30、n1=3、a=3、b=8及びR2=CH3である非イオン性界面活性剤 〔HLB=5〕
(A−3):式(1)及び式(2)において、m1=60、n1=3、a=3、b=1及びR2=Hである非イオン性界面活性剤 〔HLB=5〕
(A−4):式(1)及び式(2)において、m1=1、n1=1、a=3、b=8及びR2=CH3である非イオン性界面活性剤 〔HLB=4〕
(A−5):式(1)及び式(2)において、m1=8、n1=1、a=3、b=8及びR2=CH3である非イオン性界面活性剤 〔HLB=4〕
(A−6):式(1)及び式(2)において、m1=8、n1=3、a=3、b=1及びR2=Hである非イオン性界面活性剤 〔HLB=5〕
(A−7):式(1)及び式(2)において、m1=0、n1=1、a=1、b=0及びR2=Hである非イオン性界面活性剤 〔HLB=5〕
(B−1):エチレングリコールモノプロピルエーテル(SP値:11.1)
(B−2):エチレングリコールモノブチルエーテル(SP値:10.8)
(B−3):アセトン(SP値:9.1)
(B−4):プロピレングリコール(SP値:15.9)
(B−5):ジエチレングリコール(SP値:15.0)
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】