特許第6769408号(P6769408)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6769408電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769408
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/06 20060101AFI20201005BHJP
   G03G 5/05 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   G03G5/06 312
   G03G5/06 313
   G03G5/05 101
   G03G5/06 314A
【請求項の数】10
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2017-141461(P2017-141461)
(22)【出願日】2017年7月21日
(65)【公開番号】特開2019-20674(P2019-20674A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2019年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】清水 智文
(72)【発明者】
【氏名】大路 喜一郎
(72)【発明者】
【氏名】東 潤
【審査官】 廣田 健介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−180845(JP,A)
【文献】 特開2017−068014(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/159244(WO,A1)
【文献】 特開2010−286762(JP,A)
【文献】 特開平10−104859(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/115970(WO,A1)
【文献】 特開昭59−216853(JP,A)
【文献】 特開2000−221712(JP,A)
【文献】 特開昭59−190931(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0325093(US,A1)
【文献】 特開2002−023398(JP,A)
【文献】 特開2007−179038(JP,A)
【文献】 特開2016−194678(JP,A)
【文献】 特開平09−124781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/00−5/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、感光層とを備える電子写真感光体であって、
前記感光層は、単層であり、かつ電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂とを含み、
前記正孔輸送剤は、下記化学式(H−5)又は(H−10)で表される化合物を含む、電子写真感光体。
【化1】
【請求項2】
前記バインダー樹脂は、下記一般式(1)で表される繰返し単位を有するポリアリレート樹脂を含む、請求項1に記載の電子写真感光体。
【化2】
(前記一般式(1)中、
r、s、t及びuは、各々独立に、0以上の数を表し、
r+s+t+u=100であり、
r+t=s+uであり、
r/(r+t)は、0.00以上0.90以下であり、
s/(s+u)は、0.00以上0.90以下であり、
Xは、下記化学式(1A)又は(1B)で表される二価の基であり、
Yは、下記化学式(2A)又は(2B)で表される二価の基である。)
【化3】
【請求項3】
前記電子輸送剤は、下記一般式(ETM)で表される化合物を含む、請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【化4】
(前記一般式(ETM)中、
41及びR44は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は水素原子を表し、
42及びR43は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、
f1及びf2は、各々独立に、0以上4以下の整数を表し、
f1が2以上4以下の整数を表す場合、複数のR42は互いに同一であっても異なってもよく、
f2が2以上4以下の整数を表す場合、複数のR43は互いに同一であっても異なってもよい。)
【請求項4】
前記電子輸送剤は、下記化学式(E−1)で表される化合物を含む、請求項に記載の電子写真感光体。
【化5】
【請求項5】
請求項1〜の何れか一項に記載の電子写真感光体を備える、プロセスカートリッジ。
【請求項6】
像担持体と、
前記像担持体の表面を帯電させる帯電部と、
帯電された前記像担持体の前記表面を露光して、前記像担持体の前記表面に静電潜像を形成する露光部と、
前記静電潜像をトナー像として現像する現像部と、
前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写する転写部と
を備える画像形成装置であって、
前記像担持体は、請求項1〜の何れか一項に記載の電子写真感光体であり、
前記帯電部の帯電極性は、正極性であり、
前記転写部は、前記像担持体の前記表面と前記被転写体とを接触させながら前記トナー像を前記像担持体から前記被転写体へ転写する、画像形成装置。
【請求項7】
前記被転写体は、記録媒体である、請求項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記帯電部は、帯電ローラーである、請求項又はに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記現像部は、前記像担持体の前記表面と接触しながら、前記静電潜像を前記トナー像として現像する、請求項の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記現像部は、前記像担持体の前記表面を清掃する、請求項の何れか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体は、像担持体として電子写真方式の画像形成装置(例えば、プリンター、及び複合機)において用いられる。電子写真感光体は、感光層を備える。電子写真感光体としては、例えば、単層型電子写真感光体、及び積層型電子写真感光体が挙げられる。単層型電子写真感光体は、電荷発生の機能と、電荷輸送の機能とを有する感光層を備える。積層型電子写真感光体は、電荷発生の機能を有する電荷発生層と、電荷輸送の機能を有する電荷輸送層とを含む感光層を備える。
【0003】
特許文献1には、正孔輸送剤として特定のトリフェニルアミン化合物を含有する電子写真感光体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−11855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電子写真感光体は、耐オイルクラック性が十分ではなかった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐オイルクラック性に優れる感光層を備えた電子写真感光体を提供することである。また、本発明の別の目的は、画像不良の発生を抑制するプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子写真感光体は、導電性基体と、感光層とを備える。前記感光層は、単層であり、かつ電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂とを含む。前記正孔輸送剤は、下記一般式(HTM1)又は一般式(HTM2)で表される化合物を含む。
【0008】
【化1】
【0009】
前記一般式(HTM1)中、R1及びR2は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。a1及びa2は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。a1が2以上5以下の整数を表す場合、複数のR1は互いに同一であっても異なってもよい。a2が2以上5以下の整数を表す場合、複数のR2は互いに同一であっても異なってもよい。R3及びR4は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基若しくは炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有してもよいフェニル基、又は−CR11=CR1213を表す。R11、R12及びR13は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基若しくは炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有してもよいフェニル基、又は水素原子を表す。複数のベンゼン環の少なくとも1つは、前記炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有する。Gは、単結合又はp−フェニレン基を表す。
【0010】
【化2】
【0011】
前記一般式(HTM2)中、R5及びR6は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。b1及びb2は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。b1が2以上5以下の整数を表す場合、複数のR5は互いに同一であっても異なってもよい。b2が2以上5以下の整数を表す場合、複数のR6は互いに同一であっても異なってもよい。R7及びR8は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基若しくは炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有してもよいフェニル基、又は水素原子を表す。複数のベンゼン環の少なくとも1つは、前記炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有する。kは、0又は1を表す。
【0012】
本発明のプロセスカートリッジは、上述の電子写真感光体を備える。
【0013】
本発明の画像形成装置は、像担持体と、帯電部と、露光部と、現像部と、転写部とを備える。前記像担持体は、上述の電子写真感光体である。前記帯電部は、前記像担持体の表面を帯電させる。前記帯電部の帯電極性は、正極性である。前記露光部は、帯電された前記像担持体の前記表面を露光して、前記像担持体の前記表面に静電潜像を形成する。前記現像部は、前記静電潜像をトナー像として現像する。前記転写部は、前記像担持体の前記表面と被転写体とを接触させながら前記トナー像を前記像担持体から前記被転写体へ転写する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電子写真感光体は、耐オイルクラック性に優れる。また、本発明のプロセスカートリッジ及び画像形成装置は、画像不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一実施形態に係る電子写真感光体の構造の一例を示す部分断面図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る電子写真感光体の構造の一例を示す部分断面図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る電子写真感光体の構造の一例を示す部分断面図である。
図4】本発明の第二実施形態に係る画像形成装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。また、本明細書において、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
【0017】
以下、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、及び炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基は、各々、次の意味である。
【0018】
炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、及びヘキシル基が挙げられる。
【0019】
炭素原子数1以上3以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上3以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びイソプロピル基が挙げられる。
【0020】
炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、及びヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0021】
炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、及びイソプロポキシ基が挙げられる。
【0022】
また、以下の説明において、「アルキル基を有してもよい」とは、官能基の水素原子の一部又は全部がアルキル基で置換されていてもよいことを意味する。「アルコキシ基を有してもよい」についても同様である。
【0023】
<第一実施形態:電子写真感光体>
本発明の第一実施形態に係る電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある。)の構造を説明する。図1図2及び図3は、第一実施形態の一例である感光体1の構造を示す部分断面図である。図1に示すように、感光体1は、導電性基体2と、感光層3とを備える。感光層3は、単層である。図1に示すように、感光層3は導電性基体2上に直接的に設けられてもよい。また、図2に示すように、感光体1は、例えば、導電性基体2と、中間層4(例えば下引き層)と、感光層3とを備えてもよい。図2に示す例では、感光層3は、導電性基体2上に中間層4を介して間接的に設けられている。また、図3に示すように、感光体1は、最表面層として保護層5を備えてもよい。
【0024】
以下、感光体1の要素(導電性基体2、感光層3、及び中間層4)を説明する。更に感光体1の製造方法も説明する。
【0025】
[1.導電性基体]
導電性基体2は、感光体1の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体2としては、少なくとも表面部が導電性を有する材料で構成される導電性基体を用いることができる。導電性基体2としては、例えば、導電性を有する材料(導電性材料)で構成される導電性基体、及び導電性材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、及びインジウムが挙げられる。これらの導電性材料は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。二種以上の組合せとしては、例えば、合金(より具体的には、アルミニウム合金、ステンレス鋼、真鍮等)が挙げられる。これらの導電性材料の中でも、感光層3から導電性基体2への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。
【0026】
導電性基体2の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて適宜選択することができる。導電性基体2の形状としては、例えば、シート状、及びドラム状が挙げられる。また、導電性基体2の厚みは、導電性基体2の形状に応じて、適宜選択することができる。
【0027】
[2.感光層]
感光層3は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂とを含有する。感光層3は更に添加剤を含有してもよい。感光層3の厚さは、感光層としての機能を十分に発現できれば、特に限定されない。具体的には、感光層3の厚さは、5μm以上100μm以下であってもよく、10μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0028】
以下、電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、バインダー樹脂、及び任意成分である添加剤について説明する。
【0029】
(電荷発生剤)
電荷発生剤は、感光体用の電荷発生剤である限り、特に限定されない。電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム及びアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料及びキナクリドン系顔料が挙げられる。電荷発生剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。フタロシアニン系顔料としては、例えば、無金属フタロシアニン及び金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン及びクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。フタロシアニン系顔料の結晶形状(例えば、α型、β型、X型、Y型、V型及びII型)については特に限定されず、種々の結晶形状を有するフタロシアニン系顔料が使用される。
【0030】
無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある。)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型及びY型結晶(以下、それぞれα型、β型及びY型チタニルフタロシアニンと記載することがある。)が挙げられる。ヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶としては、ヒドロキシガリウムフタロシアニンのV型結晶が挙げられる。
【0031】
また、デジタル光学式の画像形成装置に感光体1を適用する場合は、700nm以上の波長領域に感度を有する電荷発生剤を用いることが好ましい。700nm以上の波長領域に感度を有する電荷発生剤としては、例えばフタロシアニン系顔料が挙げられ、電荷を効率よく発生させる観点からX型無金属フタロシアニンが好ましい。なお、デジタル光学式の画像形成装置としては、例えば、半導体レーザーのような光源を使用したレーザービームプリンター及びファクシミリが挙げられる。
【0032】
また、短波長レーザー光源を用いた画像形成装置に感光体1を適用する場合は、電荷発生剤として、例えばアンサンスロン系顔料、及びペリレン系顔料が好適に用いられる。短波長レーザーの波長は、例えば、350nm以上550nm以下程度である。
【0033】
電荷発生剤としては、例えば、以下に示す化学式(CGM−1)〜(CGM−4)で表されるフタロシアニン系顔料(以下、それぞれ電荷発生剤(CGM−1)〜(CGM−4)と記載することがある。)が挙げられる。
【0034】
【化3】
【0035】
【化4】
【0036】
【化5】
【0037】
【化6】
【0038】
電荷発生剤の含有量は、電荷を効率よく発生させる観点から、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上4.5質量部以下であることが特に好ましい。
【0039】
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤は、以下に示す一般式(HTM1)又は一般式(HTM2)で表される化合物を含む。以下、一般式(HTM1)及び一般式(HTM2)で表される化合物を、それぞれ正孔輸送剤(HTM1)及び正孔輸送剤(HTM2)と記載することがある。また、正孔輸送剤(HTM1)及び正孔輸送剤(HTM2)をまとめて正孔輸送剤Aと記載することがある。感光層3には、これらの正孔輸送剤の一種が単独で含有されてもよく、二種以上が含有されてもよい。
【0040】
【化7】
【0041】
一般式(HTM1)中、R1及びR2は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。a1及びa2は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。a1が2以上5以下の整数を表す場合、複数のR1は互いに同一であっても異なってもよい。a2が2以上5以下の整数を表す場合、複数のR2は互いに同一であっても異なってもよい。R3及びR4は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基若しくは炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有してもよいフェニル基、又は−CR11=CR1213を表す。R11、R12及びR13は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基若しくは炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有してもよいフェニル基、又は水素原子を表す。複数のベンゼン環の少なくとも1つは、前記炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有する。Gは、単結合又はp−フェニレン基を表す。
【0042】
【化8】
【0043】
一般式(HTM2)中、R5及びR6は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。b1及びb2は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。b1が2以上5以下の整数を表す場合、複数のR5は互いに同一であっても異なってもよい。b2が2以上5以下の整数を表す場合、複数のR6は互いに同一であっても異なってもよい。R7及びR8は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基若しくは炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有してもよいフェニル基、又は水素原子を表す。複数のベンゼン環の少なくとも1つは、前記炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有する。kは、0又は1を表す。
【0044】
なお、「複数のベンゼン環」とは、一般式(HTM1)及び(HTM2)中、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有してもよいベンゼン環を指す。
【0045】
感光体1は、感光層3に正孔輸送剤Aを含有することにより、耐オイルクラック性を向上させることができる。その理由は以下のように推測される。
【0046】
正孔輸送剤Aは、分子構造の末端に炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を1つ以上有する。そのため、正孔輸送剤Aとバインダー樹脂との相溶性が高まり、感光層3の外部への正孔輸送剤Aの溶出が抑制される傾向がある。よって、感光体1は、耐オイルクラック性を向上させることができると考えられる。
【0047】
一般式(HTM1)及び(HTM2)中、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有するベンゼン環の個数は、耐オイルクラック性をより向上させる観点から、1個又は2個であることが好ましく、2個であることがより好ましい。
【0048】
一般式(HTM1)中、R1及びR2は、耐オイルクラック性をより向上させる観点から、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基又は炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基を表すことが好ましく、メチル基又はメトキシ基を表すことがより好ましい。
【0049】
一般式(HTM1)中、a1及びa2は、耐オイルクラック性をより向上させる観点から、各々独立に、1又は2を表すことが好ましい。
【0050】
一般式(HTM1)中、R3及びR4は、耐オイルクラック性をより向上させる観点から、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基又は炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基を有してもよいフェニル基を表すことが好ましく、メチル基又はメトキシ基を有してもよいフェニル基を表すことがより好ましく、メチル基を有してもよいフェニル基を表すことが更に好ましい。
【0051】
一般式(HTM1)中、R3及びR4の少なくとも一方が−CR11=CR1213を表す場合、R11、R12及びR13は、耐オイルクラック性をより向上させる観点から、各々独立に、フェニル基又は水素原子を表すことが好ましく、R11が水素原子を表し、かつR12及びR13がフェニル基を表すことがより好ましい。
【0052】
一般式(HTM1)中、Gは、耐オイルクラック性をより向上させる観点から、単結合を表すことが好ましい。
【0053】
また、耐オイルクラック性を特に向上させる観点から、一般式(HTM1)中、R1及びR2は、各々独立にメチル基又はメトキシ基を表し、a1及びa2は、各々独立に1又は2を表し、R3及びR4は、各々独立にメチル基を有してもよいフェニル基を表し、Gは、単結合を表すことが好ましい。
【0054】
正孔輸送剤(HTM1)としては、例えば、下記化学式(H−1)〜(H−5)で表される化合物(以下、それぞれ正孔輸送剤(H−1)〜(H−5)と記載することがある。)が挙げられる。なお、正孔輸送剤(H−5)は、一般式(HTM1)において、R3及びR4が−CR11=CR1213を表し、R11が水素原子を表し、R12及びR13がフェニル基を表す化合物である。
【0055】
【化9】
【0056】
正孔輸送剤(HTM1)としては、耐オイルクラック性をより向上させる観点から、正孔輸送剤(H−1)及び(H−2)が好ましい。
【0057】
一般式(HTM2)中、R5及びR6は、耐オイルクラック性をより向上させる観点から、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基又は炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基を表すことがより好ましく、メトキシ基を表すことが更に好ましい。
【0058】
一般式(HTM2)中、b1及びb2は、耐オイルクラック性をより向上させる観点から、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。
【0059】
一般式(HTM2)中、R7及びR8は、耐オイルクラック性をより向上させる観点から、各々独立に、フェニル基又は水素原子を表すことが好ましい。
【0060】
また、耐オイルクラック性を特に向上させる観点から、一般式(HTM2)中、R5及びR6がメトキシ基を表し、かつ以下の条件(1)又は条件(2)を満たすことが好ましい。
条件(1):kが0を表す場合、b1及びb2は、各々独立に、0又は1を表す。
条件(2):kが1を表す場合、b1及びb2は、1を表す。
【0061】
正孔輸送剤(HTM2)としては、例えば、下記化学式(H−6)〜(H−11)で表される化合物(以下、それぞれ正孔輸送剤(H−6)〜(H−11)と記載することがある。)が挙げられる。
【0062】
【化10】
【0063】
正孔輸送剤(HTM2)としては、耐オイルクラック性をより向上させる観点から、正孔輸送剤(H−6)、(H−7)、(H−8)及び(H−11)が好ましい。
【0064】
感光層3は、正孔輸送剤Aに加えて、更に別の正孔輸送剤を含有してもよい。別の正孔輸送剤としては、例えば、含窒素環式化合物及び縮合多環式化合物のうち、正孔輸送剤Aとは異なる構造の化合物を使用することができる。含窒素環式化合物及び縮合多環式化合物としては、例えば、ジアミン化合物(より具体的には、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体等)、オキサジアゾール系化合物(より具体的には、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等)、スチリル化合物(より具体的には、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等)、カルバゾール化合物(より具体的には、ポリビニルカルバゾール等)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(より具体的には、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物及びトリアゾール系化合物が挙げられる。正孔輸送剤の合計質量に対する正孔輸送剤Aの含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0065】
正孔輸送剤の分子量は、耐オイルクラック性をより向上させる観点から、700以下であることが好ましく、600以下であることがより好ましい。また、正孔輸送剤の分子量は、正孔を効率よく輸送する観点から、300以上であることが好ましく、350以上であることがより好ましい。
【0066】
正孔輸送剤の含有量は、正孔を効率よく輸送する観点から、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、10質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
【0067】
(電子輸送剤)
電子輸送剤としては、例えば、キノン系化合物、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸、及びジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物、及びジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。これらの電子輸送剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0068】
これらの電子輸送剤のうち、正孔輸送剤Aと組み合わせることにより感光体1の感度特性を向上させる観点から、以下に示す一般式(ETM)で表される化合物が好ましく、以下に示す化学式(E−1)で表される化合物(以下、電子輸送剤(E−1)と記載することがある。)がより好ましい。
【0069】
【化11】
【0070】
一般式(ETM)中、R41及びR44は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は水素原子を表す。R42及びR43は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。f1及びf2は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。f1が2以上4以下の整数を表す場合、複数のR42は互いに同一であっても異なってもよい。f2が2以上4以下の整数を表す場合、複数のR43は互いに同一であっても異なってもよい。
【0071】
【化12】
【0072】
電子輸送剤の含有量は、電子を効率よく輸送する観点から、バインダー樹脂100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下であることが好ましく、10質量部以上80質量部以下であることがより好ましい。
【0073】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル酸重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂及びメラミン樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ−アクリル酸系樹脂(エポキシ化合物のアクリル酸付加物)及びウレタン−アクリル酸系共重合体(ウレタン化合物のアクリル酸付加物)が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0074】
これらのバインダー樹脂のうち、耐オイルクラック性をより向上させる観点から、ポリアリレート樹脂が好ましく、下記一般式(1)で表される繰返し単位を有するポリアリレート樹脂(以下、ポリアリレート樹脂(1)と記載することがある。)がより好ましい。
【0075】
【化13】
【0076】
一般式(1)中、r、s、t及びuは、各々独立に、0以上の数を表す。r+s+t+u=100である。r+t=s+uである。r/(r+t)は、0.00以上0.90以下である。s/(s+u)は、0.00以上0.90以下である。Xは、下記化学式(1A)又は(1B)で表される二価の基である。Yは、下記化学式(2A)又は(2B)で表される二価の基である。
【0077】
【化14】
【0078】
一般式(1)中、Xは、耐オイルクラック性を更に向上させる観点から、化学式(1A)で表される二価の基であることが好ましい。同様の観点から、Yは、化学式(2A)で表される二価の基であることが好ましい。
【0079】
一般式(1)中、r/(r+t)は、耐オイルクラック性を更に向上させる観点から、0.10以上0.70以下であることが好ましく、0.30以上0.70以下であることがより好ましい。同様の観点から、s/(s+u)は、0.10以上0.70以下であることが好ましく、0.30以上0.70以下であることがより好ましい。
【0080】
ポリアリレート樹脂(1)は、例えば下記一般式(1−5)で表される繰返し単位(以下、繰返し単位(1−5)と記載することがある。)、下記化学式(1−6)で表される繰返し単位(以下、繰返し単位(1−6)と記載することがある。)、下記化学式(1−7)で表される繰返し単位(以下、繰返し単位(1−7)と記載することがある。)、及び下記一般式(1−8)で表される繰返し単位(以下、繰返し単位(1−8)と記載することがある。)を有する。
【0081】
【化15】
【0082】
一般式(1−5)中のXは、一般式(1)中のXと同義である。一般式(1−8)中のYは、一般式(1)中のYと同義である。
【0083】
ポリアリレート樹脂(1)は、繰返し単位(1−5)〜(1−8)以外の繰返し単位を有してもよい。ポリアリレート樹脂(1)中の繰返し単位の物質量の合計に対する繰返し単位(1−5)〜(1−8)の物質量の合計の比率(モル分率)は、0.80以上が好ましく、0.90以上がより好ましく、1.00が更に好ましい。
【0084】
ポリアリレート樹脂(1)における繰返し単位(1−5)〜(1−8)の配列は、芳香族ジオール由来の繰返し単位と芳香族ジカルボン酸由来の繰返し単位とが互いに隣接する限り、特に限定されない。例えば、繰返し単位(1−5)は、繰返し単位(1−6)又は繰返し単位(1−8)と隣接して互いに結合している。同様に、繰返し単位(1−7)は、繰返し単位(1−6)又は繰返し単位(1−8)と隣接して互いに結合している。
【0085】
なお、一般式(1)において、rは、ポリアリレート樹脂(1)に含まれる、繰返し単位(1−5)の数、繰返し単位(1−6)の数、繰返し単位(1−7)の数及び繰返し単位(1−8)の数の合計に対する、繰返し単位(1−5)の数の百分率を表す。sは、ポリアリレート樹脂(1)に含まれる、繰返し単位(1−5)の数、繰返し単位(1−6)の数、繰返し単位(1−7)の数及び繰返し単位(1−8)数の合計に対する、繰返し単位(1−6)の数の百分率を表す。tは、ポリアリレート樹脂(1)に含まれる、繰返し単位(1−5)の数、繰返し単位(1−6)の数、繰返し単位(1−7)の数及び繰返し単位(1−8)の数の合計に対する、繰返し単位(1−7)の数の百分率を表す。uは、ポリアリレート樹脂(1)に含まれる、繰返し単位(1−5)の数、繰返し単位(1−6)の数、繰返し単位(1−7)の数及び繰返し単位(1−8)の数の合計に対する、繰返し単位(1−8)の数の百分率を表す。なお、r、s、t及びuは、各々、1本の樹脂鎖から得られる値ではなく、感光層3に含有され得るポリアリレート樹脂(1)全体(複数の樹脂鎖)から得られる数平均値である。また、r、s、t及びuは、例えばプロトン核磁気共鳴分光計を用いてポリアリレート樹脂(1)の1H−NMRスペクトルを測定し、得られた1H−NMRスペクトルから算出することができる。
【0086】
ポリアリレート樹脂(1)としては、例えば下記化学式(R−1)〜(R−4)で表されるポリアリレート樹脂(以下、それぞれポリアリレート樹脂(R−1)〜(R−4)と記載することがある。)が挙げられる。
【0087】
【化16】
【0088】
ポリアリレート樹脂(1)としては、耐オイルクラック性を更に向上させる観点から、ポリアリレート樹脂(R−2)及びポリアリレート樹脂(R−4)が好ましく、ポリアリレート樹脂(R−2)がより好ましい。また、感度特性を向上させる観点から、ポリアリレート樹脂(1)としては、ポリアリレート樹脂(R−1)及びポリアリレート樹脂(R−4)が好ましく、ポリアリレート樹脂(R−4)がより好ましい。
【0089】
バインダー樹脂の製造方法は、特に限定されない。バインダー樹脂としてポリアリレート樹脂(1)を用いる場合、ポリアリレート樹脂(1)の製造方法としては、例えば、繰返し単位を構成するための芳香族ジオールと、繰返し単位を構成するための芳香族ジカルボン酸とを縮重合させる方法が挙げられる。縮重合させる方法は特に限定されず、公知の合成方法(より具体的には、溶液重合、溶融重合、界面重合等)を採用することができる。
【0090】
ポリアリレート樹脂(1)を製造するための芳香族ジカルボン酸は、2つのカルボキシル基を有し、下記化学式(1−9)又は下記一般式(1−10)で表される。下記一般式(1−10)中のYは、一般式(1)中のYと同義である。
【0091】
【化17】
【0092】
なお、芳香族ジカルボン酸は、ジ酸クロライド、ジメチルエステル、ジエチルエステル等のような誘導体として用いることもできる。また、縮重合に用いる芳香族ジカルボン酸は、化学式(1−9)及び一般式(1−10)で表される芳香族ジカルボン酸以外の他の芳香族ジカルボン酸を含んでもよい。
【0093】
芳香族ジオールは、2つのフェノール性水酸基を有し、下記一般式(1−11)又は化学式(1−12)で表される。一般式(1−11)中のXは、一般式(1)中のXと同義である。
【0094】
【化18】
【0095】
ポリアリレート樹脂(1)を合成する際、芳香族ジオールは、ジアセテート等のような誘導体として用いることもできる。また、縮重合に用いる芳香族ジオールは、一般式(1−11)及び化学式(1−12)で表される芳香族ジオール以外に、他の芳香族ジオールを含んでもよい。
【0096】
バインダー樹脂の粘度平均分子量は、30,000以上40,000以下であることが好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が30,000以上である場合、耐オイルクラック性をより向上させることができる。また、バインダー樹脂の粘度平均分子量が40,000以下である場合、感光層3の形成時にバインダー樹脂が溶剤に溶解し易くなり、塗布液の粘度が高くなり過ぎない。その結果、感光層3を形成し易くなる。
【0097】
(添加剤)
任意成分である添加剤としては、例えば、劣化防止剤(より具体的には、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、消光剤、紫外線吸収剤等)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、ドナー、界面活性剤、及びレベリング剤が挙げられる。添加剤を添加する場合は、これらの添加剤の一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0098】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、チオエーテル化合物、及びホスファイト化合物が挙げられる。これらの酸化防止剤の中でも、ヒンダードフェノール化合物及びヒンダードアミン化合物が好ましい。
【0099】
[3.中間層]
上述したように本実施形態の感光体1は、中間層4(例えば、下引き層)を有してもよい。中間層4は、例えば、無機粒子、及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層4を介在させると、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体1を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、電気抵抗の上昇を抑えることができる。
【0100】
無機粒子としては、例えば、金属(より具体的には、アルミニウム、鉄、銅等)の粒子、金属酸化物(より具体的には、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化亜鉛等)の粒子、及び非金属酸化物(より具体的には、シリカ等)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。なお、無機粒子は、表面処理を施してもよい。
【0101】
中間層用樹脂としては、中間層を形成する樹脂として用いることができれば、特に限定されない。
【0102】
[4.感光体の製造方法]
感光体1の製造方法について説明する。感光体1の製造方法は、例えば、感光層形成工程を有する。感光層形成工程では、感光層3を形成するための塗布液(以下、感光層用塗布液と記載することがある。)を調製する。次いで、感光層用塗布液を導電性基体2上に塗布する。次いで、適宜な方法で乾燥することによって、塗布した感光層用塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去して感光層3を形成する。感光層用塗布液は、例えば、電荷発生剤と、正孔輸送剤Aと、電子輸送剤と、バインダー樹脂と、溶剤とを含む。このような感光層用塗布液は、電荷発生剤と、正孔輸送剤Aと、電子輸送剤と、バインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散させることにより調製する。感光層用塗布液には、必要に応じて各種添加剤を加えてもよい。
【0103】
以下、感光層形成工程の詳細を説明する。感光層用塗布液に含有される溶剤は、感光層用塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できれば、特に限定されない。溶剤としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等)、脂肪族炭化水素(より具体的には、n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン等)、エーテル(より具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等)、ケトン(より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル(より具体的には、酢酸エチル、酢酸メチル等)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの溶剤のうち、非ハロゲン溶剤を用いることが好ましい。
【0104】
感光層用塗布液は、それぞれ各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー、又は超音波分散器を用いることができる。
【0105】
感光層用塗布液は、各成分の分散性を向上させるために、例えば、界面活性剤を含有してもよい。
【0106】
感光層用塗布液を塗布する方法としては、感光層用塗布液を均一に塗布できる方法であれば、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、及びバーコート法が挙げられる。
【0107】
感光層用塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去する方法としては、感光層用塗布液中の溶剤の少なくとも一部を蒸発させ得る方法であれば、特に限定されない。除去する方法としては、例えば、加熱、減圧、及び加熱と減圧との併用が挙げられる。より具体的には、高温乾燥機、減圧乾燥機等を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理条件は、例えば、40℃以上150℃以下の温度、かつ3分間以上120分間以下の時間である。
【0108】
なお、感光体1の製造方法は、必要に応じて中間層4を形成する工程等を更に有してもよい。中間層4を形成する工程は、公知の方法を適宜選択することができる。
【0109】
以上説明した本実施形態の感光体は、耐オイルクラック性に優れるため、種々の画像形成装置で好適に使用できる。
【0110】
<第二実施形態:画像形成装置>
以下、第二実施形態に係る画像形成装置について説明する。第二実施形態に係る画像形成装置は、像担持体と、帯電部と、露光部と、現像部と、転写部とを備える。前記像担持体は、上述した第一実施形態に係る感光体である。前記帯電部は、前記像担持体の表面を帯電させる。前記帯電部の帯電極性は、正極性である。前記露光部は、帯電された前記像担持体の前記表面を露光して、前記像担持体の前記表面に静電潜像を形成する。前記現像部は、前記静電潜像をトナー像として現像する。前記転写部は、前記像担持体の前記表面と被転写体とを接触させながら前記トナー像を前記像担持体から前記被転写体へ転写する。
【0111】
第二実施形態に係る画像形成装置は、画像不良の発生を抑制することができる。その理由は、以下のように推測される。第二実施形態に係る画像形成装置は、像担持体として第一実施形態に係る感光体を備える。第一実施形態に係る感光体は、耐オイルクラック性に優れる。よって、第二実施形態に係る画像形成装置は、画像不良(より具体的には、クラックに起因する画像欠陥等)の発生を抑制することができる。
【0112】
以下、第二実施形態に係る画像形成装置の一態様として、タンデム方式のカラー画像形成装置を例に図4を参照しながら説明する。
【0113】
図4に示す画像形成装置100は、直接転写方式の画像形成装置である。通常、直接転写方式を採用する画像形成装置では、像担持体が被転写体としての記録媒体に接触するため、画像不良が発生し易い。しかし、第二実施形態の一例である画像形成装置100は、像担持体30として第一実施形態に係る感光体を備える。第一実施形態に係る感光体は、耐オイルクラック性に優れる。よって、像担持体30として第一実施形態に係る感光体を備えると、直接転写方式を採用する画像形成装置100であっても、画像不良の発生を抑制できる。
【0114】
画像形成装置100は、画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dと、転写ベルト50と、定着部52とを備える。以下、区別する必要がない場合には、画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dの各々を、画像形成ユニット40と記載する。
【0115】
画像形成ユニット40は、像担持体30と、帯電部42と、露光部44と、現像部46と、転写部48とを備える。画像形成ユニット40の中央位置に、像担持体30が設けられる。像担持体30は、矢符方向(反時計回り)に回転可能に設けられる。像担持体30の周囲には、帯電部42を基準として像担持体30の回転方向の上流側から順に、帯電部42と、露光部44と、現像部46と、転写部48とが設けられる。なお、画像形成ユニット40には、クリーニング部(不図示)及び除電部(不図示)の一方又は両方が更に備えられてもよい。
【0116】
画像形成ユニット40a〜40dの各々によって、転写ベルト50上の記録媒体P(被転写体)に、複数色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの4色)のトナー像が順に重ねられる。
【0117】
帯電部42は、帯電ローラーである。帯電ローラーは、像担持体30の表面と接触しながら像担持体30の表面を帯電する。通常、帯電ローラーを備える画像形成装置では、画像不良が生じ易い。しかし、画像形成装置100は、像担持体30として第一実施形態に係る感光体を備える。第一実施形態に係る感光体は、耐オイルクラック性に優れる。よって、帯電部42として帯電ローラーを備えた画像形成装置100であっても、画像不良の発生は抑制される。このように第二実施形態の一例である画像形成装置100は、接触帯電方式を採用している。他の接触帯電方式の帯電部としては、例えば、帯電ブラシが挙げられる。なお、帯電部は非接触方式であってもよい。非接触方式の帯電部としては、例えば、コロトロン帯電部、及びスコロトロン帯電部が挙げられる。
【0118】
帯電部42が印加する電圧は、特に限定されない。帯電部42が印加する電圧としては、例えば、直流電圧、交流電圧、及び重畳電圧(直流電圧に交流電圧が重畳した電圧)が挙げられ、このうち直流電圧が好ましい。直流電圧は交流電圧及び重畳電圧に比べ、以下に示す優位性がある。帯電部42が直流電圧のみを印加すると、像担持体30に印加される電圧値が一定であるため、像担持体30の表面を一様に一定電位まで帯電させ易い。また、帯電部42が直流電圧のみを印加すると、感光層の磨耗量が減少する傾向がある。その結果、好適な画像を形成することができる。
【0119】
露光部44は、帯電された像担持体30の表面を露光する。これにより、像担持体30の表面に静電潜像が形成される。静電潜像は、画像形成装置100に入力された画像データに基づいて形成される。
【0120】
現像部46は、像担持体30の表面にトナーを供給し、静電潜像をトナー像として現像する。現像部46は、像担持体30の表面と接触しながら静電潜像をトナー像として現像する方式(接触現像方式)を採用することができる。通常、接触現像方式を採用する画像形成装置では画像不良が生じ易い。しかし、画像形成装置100は、像担持体30として第一実施形態に係る感光体を備える。第一実施形態に係る感光体は、耐オイルクラック性に優れる。従って、このような感光体を備える画像形成装置100は、接触現像方式を採用しても、画像不良の発生は抑制される。
【0121】
現像部46は、像担持体30の表面を清掃することができる。すなわち、画像形成装置100は、いわゆるクリーナーレス方式を採用することができる。この場合、現像部46は、像担持体30の表面の残留成分を除去することができる。通常、クリーニング部(例えば、クリーニングブレード)を備えた画像形成装置は、像担持体の表面の残留成分がクリーニング部により掻き取られる。しかし、クリーナーレス方式の画像形成装置の場合は、像担持体の表面の残留成分が掻き取られない。そのため、クリーナーレス方式を採用する画像形成装置では、例えば像担持体30の表面に発生したクラック等に残留成分が残り易い。しかし、画像形成装置100は、像担持体30として、耐オイルクラック性に優れる第一実施形態の感光体を備える。従って、このような感光体を備える画像形成装置100は、クリーナーレス方式を採用しても、感光体の表面に残留成分が残り難い。その結果、画像形成装置100は、画像不良(例えば、かぶり)の発生を抑制することができる。
【0122】
現像部46が現像しつつ像担持体30の表面を効率的に清掃するためには、以下に示す条件(a)及び条件(b)を満たすことが好ましい。
条件(a):接触現像方式を採用し、像担持体30と現像部46との間に周速(回転速度)差が設けられる。
条件(b):像担持体30の表面電位と、現像バイアスの電位とが以下の数式(b−1)及び数式(b−2)を満たす。
0(V)<現像バイアスの電位(V)<像担持体30の未露光領域の表面電位(V)・・・(b−1)
現像バイアスの電位(V)>像担持体30の露光領域の表面電位(V)>0(V)・・・(b−2)
【0123】
条件(a)に示す接触現像方式を採用し、像担持体30と現像部46との間に周速差が設けられていると、像担持体30の表面が現像部46と接触し、像担持体30の表面の残留成分が現像部46との摩擦により除去される。現像部46の周速は、像担持体30の周速よりも速いことが好ましい。
【0124】
条件(b)では、現像方式が反転現像方式である場合を想定している。帯電極性が正極性である像担持体30の電気特性を向上させるためには、トナーの帯電極性と、像担持体30の未露光領域の表面電位と、像担持体30の露光領域の表面電位と、現像バイアスの電位とが何れも正極性であることが好ましい。なお、像担持体30の未露光領域の表面電位と、露光領域の表面電位とは、転写部48が像担持体30から記録媒体Pへトナー像を転写した後、帯電部42が像担持体30の表面を帯電する前に測定される。
【0125】
条件(b)の数式(b−1)を満たすと、像担持体30に残留したトナー(以下、残留トナーと記載することがある。)と像担持体30の未露光領域との間に作用する静電的斥力が、残留トナーと現像部46との間に作用する静電的斥力に比べ大きくなる。このため、像担持体30の未露光領域の残留トナーは、像担持体30の表面から現像部46へと移動し、回収される。
【0126】
条件(b)の数式(b−2)を満たすと、残留トナーと像担持体30の露光領域との間に作用する静電的斥力が、残留トナーと現像部46との間に作用する静電的斥力に比べ小さくなる。このため、像担持体30の露光領域の残留トナーは、像担持体30の表面に保持される。像担持体30の露光領域に保持されたトナーは、そのまま画像形成に使用される。
【0127】
転写ベルト50は、像担持体30と転写部48との間に記録媒体Pを搬送する。転写ベルト50は、無端状のベルトである。転写ベルト50は、矢符方向(時計回り)に回転可能に設けられる。
【0128】
転写部48は、現像部46によって現像されたトナー像を、像担持体30の表面から記録媒体Pへ転写する。像担持体30から記録媒体Pにトナー像が転写されるときに、像担持体30は記録媒体Pと接触している。転写部48としては、例えば、転写ローラーが挙げられる。
【0129】
定着部52は、転写部48によって記録媒体Pに転写された未定着のトナー像を、加熱及び/又は加圧する。定着部52は、例えば、加熱ローラー及び/又は加圧ローラーである。トナー像を加熱及び/又は加圧することにより、記録媒体Pにトナー像が定着する。その結果、記録媒体Pに画像が形成される。
【0130】
以上、第二実施形態に係る画像形成装置の一例について説明したが、第二実施形態に係る画像形成装置は、上述した画像形成装置100に限定されない。例えば、上述した画像形成装置100はタンデム方式の画像形成装置であったが、第二実施形態に係る画像形成装置はこれに限定されず、ロータリー方式等を採用してもよい。また、第二実施形態に係る画像形成装置は、モノクロ画像形成装置であってもよい。この場合、画像形成装置は、例えば画像形成ユニットを1つだけ備えていればよい。また、第二実施形態に係る画像形成装置は、中間転写方式を採用してもよい。第二実施形態に係る画像形成装置が中間転写方式を採用する場合、被転写体は中間転写ベルトに相当する。
【0131】
<第三実施形態:プロセスカートリッジ>
第三実施形態に係るプロセスカートリッジは、像担持体として第一実施形態に係る感光体を備える。引き続き、図4を参照して、第三実施形態に係るプロセスカートリッジの一例について説明する。
【0132】
第三実施形態に係るプロセスカートリッジは、例えば、画像形成ユニット40a〜40d(図4)の各々に相当する。これらのプロセスカートリッジは、ユニット化された部分を含む。ユニット化された部分は、像担持体30を含む。また、ユニット化された部分は、像担持体30に加えて、帯電部42、露光部44、現像部46、及び転写部48からなる群より選択される少なくとも1つを含んでもよい。プロセスカートリッジには、クリーニング部(不図示)及び除電部(不図示)の一方又は両方が更に備えられてもよい。プロセスカートリッジは、例えば画像形成装置100に対して着脱自在に設計される。この場合のプロセスカートリッジは、取り扱いが容易であり、像担持体30の感度特性等が劣化した場合に、像担持体30を含めて容易かつ迅速に交換することができる。
【0133】
以上説明した第三実施形態に係るプロセスカートリッジは、像担持体として第一実施形態に係る感光体を備えることで、画像不良の発生を抑制することができる。
【実施例】
【0134】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されるものではない。
【0135】
<実施例及び比較例で用いた材料>
単層型感光体を製造するための材料として、以下の電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、及びバインダー樹脂を準備した。
【0136】
[電荷発生剤]
第一実施形態で説明した電荷発生剤(CGM−1)を準備した。電荷発生剤(CGM−1)は、化学式(CGM−1)で表される無金属フタロシアニンであり、その結晶構造はX型であった。つまり、用いた電荷発生剤(CGM−1)は、X型無金属フタロシアニンであった。
【0137】
[正孔輸送剤]
第一実施形態で説明した正孔輸送剤(H−1)〜(H−11)を準備した。更に、正孔輸送剤(H−12)〜(H−22)も準備した。正孔輸送剤(H−12)〜(H−22)は、それぞれ以下に示す化学式(H−12)〜(H−22)で表される正孔輸送剤である。
【0138】
【化19】
【0139】
【化20】
【0140】
[電子輸送剤]
第一実施形態で説明した電子輸送剤(E−1)を準備した。更に、電子輸送剤(E−2)及び(E−3)も準備した。電子輸送剤(E−2)及び(E−3)は、それぞれ以下に示す化学式(E−2)及び(E−3)で表される電子輸送剤である。
【0141】
【化21】
【0142】
[バインダー樹脂]
第一実施形態で説明したポリアリレート樹脂(R−1)〜(R−4)を以下に示す方法で合成した。
【0143】
(ポリアリレート樹脂(R−1)の合成)
温度計、三方コック、及び滴下ロートを備えた容量1Lの三口フラスコを反応容器として用いた。反応容器に芳香族ジオールとしての1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン12.2g(41.3ミリモル)と、末端停止剤としてのt−ブチルフェノール0.25g(1.65ミリモル)と、水酸化ナトリウム3.9g(98ミリモル)と、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド0.12g(0.38ミリモル)とを投入した。次いで、反応容器内をアルゴン置換した。その後、水600mLを更に反応容器に投入した。反応容器の内温を20℃に維持し、反応容器の内容物を1時間攪拌した。次いで、反応容器の内容物を冷却し、反応容器の内温を10℃まで降温させた。このようにしてアルカリ性水溶液を調製した。
【0144】
一方、ハロゲン化アリーロイルとしての4,4’−オキシビス(ベンゾイルクロリド)4.8g(16.2ミリモル)及び2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロリド4.1g(16.2ミリモル)をクロロホルム300gに溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0145】
次いで、上記アルカリ性水溶液の温度を10℃に維持し、反応容器の内容物を攪拌させながら、上記クロロホルム溶液を上記アルカリ性水溶液へ投入し、重合反応を開始させた。重合反応は、反応容器の内容物を攪拌させて反応容器の内温を13±3℃に維持しつつ、3時間進行させた。その後、デカントを用いて上層(水層)を除去し、有機層を得た。
【0146】
次いで、容量2Lの三口フラスコにイオン交換水500mLを投入した後に、得られた有機層を投入した。更にクロロホルム300gと、酢酸6mLとを投入した。三口フラスコの内容物を室温(25℃)で30分攪拌した。その後、デカントを用いて三口フラスコの内容物における上層(水層)を除去し、有機層を得た。イオン交換水500mLを用いて得られた有機層を分液ロートにて8回洗浄した。その結果、水洗した有機層を得た。
【0147】
次に、水洗した有機層をろ過し、ろ液を得た。容量3Lの三角フラスコにメタノール1.5Lを投入した。得られたろ液を上記三角フラスコにゆっくり滴下し、沈殿物を得た。沈殿物をろ過によりろ別した。得られた沈殿物を温度70℃で12時間真空乾燥した。その結果、粘度平均分子量36,700のポリアリレート樹脂(R−1)を得た。
【0148】
(ポリアリレート樹脂(R−2)の合成)
ポリアリレート樹脂(R−1)の出発物質であるハロゲン化アリーロイルをポリアリレート樹脂(R−2)の出発物質であるハロゲン化アリーロイルに変更した以外は、ポリアリレート樹脂(R−1)と同様の方法で、粘度平均分子量32,400のポリアリレート樹脂(R−2)を得た。なお、ポリアリレート樹脂(R−2)の合成におけるハロゲン化アリーロイルの合計物質量は、ポリアリレート樹脂(R−1)の合成におけるハロゲン化アリーロイルの合計物質量と同様であった。
【0149】
(ポリアリレート樹脂(R−3)の合成)
ポリアリレート樹脂(R−1)の出発物質である芳香族ジオールをポリアリレート樹脂(R−3)の出発物質である芳香族ジオールに変更した以外は、ポリアリレート樹脂(R−1)と同様の方法で、粘度平均分子量31,600のポリアリレート樹脂(R−3)を得た。なお、ポリアリレート樹脂(R−3)の合成における芳香族ジオールの合計物質量は、ポリアリレート樹脂(R−1)の合成における芳香族ジオールの合計物質量と同様であった。
【0150】
(ポリアリレート樹脂(R−4)の合成)
ポリアリレート樹脂(R−1)の出発物質である芳香族ジオール及びハロゲン化アリーロイルを、それぞれポリアリレート樹脂(R−4)の出発物質である芳香族ジオール及びハロゲン化アリーロイルに変更した以外は、ポリアリレート樹脂(R−1)と同様の方法で、粘度平均分子量31,900のポリアリレート樹脂(R−4)を得た。なお、ポリアリレート樹脂(R−4)の合成における芳香族ジオールの合計物質量は、ポリアリレート樹脂(R−1)の合成における芳香族ジオールの合計物質量と同様であった。また、ポリアリレート樹脂(R−4)の合成におけるハロゲン化アリーロイルの合計物質量は、ポリアリレート樹脂(R−1)の合成におけるハロゲン化アリーロイルの合計物質量と同様であった。
【0151】
<感光体の製造>
[感光体(A−1)]
電荷発生剤(CGM−1)2質量部、正孔輸送剤(H−1)65質量部、電子輸送剤(E−1)35質量部、バインダー樹脂としてのポリアリレート樹脂(R−1)100質量部、及び溶剤としてのテトラヒドロフラン300質量部を容器内に投入した。棒状超音波振動子を用いて、容器内の材料と溶剤とを2分間混合させ、材料を溶剤に分散させた。更にボールミルを用いて、容器内の材料と溶剤とを50時間混合して、材料を溶剤に分散させた。これにより、感光層用塗布液を得た。この感光層用塗布液を、導電性基体としてのアルミニウム製のドラム状支持体上に、ディップコート法を用いて塗布した。塗布した感光層用塗布液を、100℃で40分間熱風乾燥させた。これにより、導電性基体上に、感光層(厚み27μm)を形成した。その結果、単層型感光体である感光体(A−1)が得られた。
【0152】
[感光体(A−2)〜(A−16)及び感光体(B−1)〜(B−11)]
バインダー樹脂、正孔輸送剤及び電子輸送剤として表1及び表2に記載のものを用いたこと以外は、上述の感光体(A−1)と同様の方法で感光体(A−2)〜(A−16)及び感光体(B−1)〜(B−11)をそれぞれ得た。なお、表1及び表2中、欄「正孔輸送剤」の「種類」のH−1〜H−22は、それぞれ正孔輸送剤(H−1)〜(H−22)を示す。
【0153】
<評価方法>
[耐オイルクラック性の評価]
感光体(A−1)〜(A−16)及び感光体(B−1)〜(B−11)の各々に対して、耐オイルクラック性を評価した。耐オイルクラック性の評価は、オリーブオイルを含浸させた不織布(2mm×15mm)を感光体の表面に付着させた後、温度23℃及び湿度50%RHの環境下で2日間放置した。その後、感光体の表面から不織布を取り除き、不織布が付着していた表面を光学顕微鏡(倍率50倍)で観察し、クラックの交点の個数を計数した。なお、クラックの交点とは、クラックとクラックとが交差する点である。計数結果から、下記基準に従って、感光体の耐オイルクラック性を判定した。耐オイルクラック性の結果を表1及び表2に示す。判定がA又はBである感光体を、耐オイルクラック性が良好であると評価した。また、判定がC又はDである感光体を、耐オイルクラック性が不良であると評価した。
【0154】
(耐オイルクラック性の判定基準)
A:クラックの交点が0個である。
B:クラックの交点が1個以上5個以下である。
C:クラックの交点が6個以上10個以下である。
D:クラックの交点が11個以上である。
【0155】
[感度特性の評価]
感光体(A−1)〜(A−16)及び感光体(B−1)〜(B−11)の各々に対して、感度特性を評価した。感度特性の評価は、温度23℃及び湿度50%RHの環境下で行った。まず、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、感光体の表面を+700Vに帯電させた。次いで、バンドパスフィルターを用いて、ハロゲンランプの白色光から単色光(波長780nm、半値幅20nm、光強度1.5μJ/m2)を取り出した。取り出された単色光を、感光体の表面に照射した。照射開始から0.5秒経過した時の感光体の表面電位を測定した。測定された表面電位を、露光後電位VL(単位V)とした。測定された感光体の露光後電位VLを表1及び表2に示す。なお、露光後電位VLの絶対値が小さいほど、感光体の感度特性が優れていることを示す。
【0156】
【表1】
【0157】
【表2】
【0158】
表1に示すように、感光体(A−1)〜(A−16)は、感光層に一般式(HTM1)又は一般式(HTM2)に包含される正孔輸送剤(H−1)〜(H−11)の何れかを含有していた。感光体(A−1)〜(A−16)は、耐オイルクラック性の評価がA(良好)又はB(良好)であった。
【0159】
表2に示すように、感光体(B−1)〜(B−11)は、感光層に一般式(HTM1)及び一般式(HTM2)に包含されない正孔輸送剤(H−12)〜(H−22)の何れかを含有していた。感光体(B−1)〜(B−11)は、耐オイルクラック性の評価がC(不良)又はD(不良)であった。
【0160】
表1及び表2から明らかなように、感光体(A−1)〜(A−16)は、感光体(B−1)〜(B−11)に比べ、耐オイルクラック性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明に係る電子写真感光体は、複合機のような画像形成装置に利用できる。
【符号の説明】
【0162】
1 電子写真感光体
2 導電性基体
3 感光層
4 中間層
図1
図2
図3
図4