特許第6769422号(P6769422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769422
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/217 20110101AFI20201005BHJP
   B60R 21/262 20110101ALI20201005BHJP
【FI】
   B60R21/217
   B60R21/262
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-204621(P2017-204621)
(22)【出願日】2017年10月23日
(65)【公開番号】特開2019-77279(P2019-77279A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2019年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中野 暢哉
(72)【発明者】
【氏名】岡山 悠太
【審査官】 鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−104176(JP,A)
【文献】 特開2006−076392(JP,A)
【文献】 特表2010−505677(JP,A)
【文献】 特開2014−069627(JP,A)
【文献】 特開2014−196063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に沿って延び、かつハーネスが接続される被接続部を一方の端部に有するインフレータを備えるとともに、前記インフレータを覆う筒状のリテーナを備えるガス発生器と、
挿入口を有するバッグ本体を備え、前記挿入口に挿入された前記ガス発生器における前記リテーナのうち、前記被接続部と同じ側の端部である外端部の一部が、同被接続部とともに前記バッグ本体の外部に配置され、前記リテーナの残部が、前記インフレータのガス噴出部とともに前記バッグ本体の内部に配置され、前記ガス噴出部から前記バッグ本体に供給される膨張用ガスにより展開及び膨張するエアバッグと
を備え、前記リテーナに設けられた取付部において、前記ガス発生器及び前記エアバッグが乗物に取付けられるエアバッグ装置であって、
前記リテーナの前記外端部には、前記軸線に沿って、前記ガス噴出部から遠ざかる側へ延びる延長部が形成され、
前記バッグ本体は、前記挿入口の周辺部分に、前記インフレータと前記リテーナとの隙間の一部を埋める隙間埋め部を有しており、同隙間埋め部が前記インフレータと前記延長部とにより挟み込まれているエアバッグ装置。
【請求項2】
前記延長部は、前記外端部の周方向における一部に形成され、
前記外端部のうち、周方向における前記延長部の両側部分には、前記延長部が延びる方向とは反対側へ延び、かつ前記隙間埋め部が係合される係合凹部が形成されている請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記リテーナのうち、前記外端部に対し、前記ガス噴出部側に隣接する箇所には、前記軸線を挟んで前記延長部に対し、径方向の反対側となる部分から、同延長部に向けて前記外端部の周壁部に沿って延びる切欠き部が形成され、
前記外端部は、前記切欠き部に対し、前記ガス噴出部から遠ざかる側に隣接する箇所に、外端部縮径用の被かしめ部を有しており、
前記外端部のうち、前記被かしめ部を挟んで前記切欠き部に対し前記軸線に沿う方向に反対側となる部分には、同リテーナの内側に向けて突出し、かつ前記インフレータに接触することにより同インフレータが前記リテーナから抜け出すのを規制するストッパが形成されている請求項1又は2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記ストッパは、前記延長部が延びる方向における先端部分に形成されている請求項3に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記切欠き部は、前記軸線に沿う方向に相対向する一対の対向壁部を有しており、
一方の前記対向壁部は、前記被かしめ部に隣接し、他方の前記対向壁部は、前記延長部から遠ざかるに従い前記一方の前記対向壁部との間隔が大きくなるように前記軸線に対し傾斜している請求項3又は4に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記エアバッグは、前記乗物における側壁部に対し、側方から衝撃が加わった場合に、前記側壁部と乗物用シートとの間で展開及び膨張することにより、前記乗物用シートに着座している乗員を衝撃から保護するものである請求項1〜5のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突等により乗物に衝撃が加わった場合に、乗物用シートに着座している乗員に接近した箇所でエアバッグを展開及び膨張させて、乗員を衝撃から保護するエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衝突等により車両に衝撃が加わった場合に乗員をその衝撃から保護する装置として、ガス発生器及びエアバッグを備えるエアバッグ装置が有効である。
例えば、特許文献1に記載されたエアバッグ装置では、ガス発生器として、軸線に沿って延び、かつハーネスが接続される被接続部を一方の端部に有するインフレータと、インフレータを覆う筒状のリテーナとを備えるものが用いられている。また、エアバッグとして、挿入口を有し、かつ挿入口を通じて挿入されたガス発生器のインフレータから供給される膨張用ガスにより展開及び膨張するバッグ本体と、バッグ本体に形成されて挿入口を覆う舌片とを備えるものが用いられている。
【0003】
上記エアバッグ装置では、ガス発生器及びハーネスのエアバッグへの組付けに際し、リテーナが挿入口に挿入される。リテーナから突出するボルトがバッグ本体に挿通されることにより、リテーナがバッグ本体に係止される。次に、インフレータが、バッグ本体の外からリテーナに挿入される。この状態では、被接続部がバッグ本体の外部に露出する。続いて、舌片によって挿入口が覆われる。この際、舌片に形成された孔に被接続部が挿入される。さらに、舌片が、バッグ本体に挿通されて同バッグ本体から露出する上記ボルトに引っ掛けられる。エアバッグの外からハーネスが舌片の孔を通じて被接続部に接続される。
【0004】
なお、挿入口が舌片によって覆われる前に、ハーネスが同舌片の孔を通じて被接続部に接続されてもよい。
そして、上記ボルトが車体(シートフレーム等)に挿通され、そのボルトにナットが締付けられることにより、ガス発生器がエアバッグとともに車体に取付けられる。
【0005】
上記エアバッグ装置によれば、インフレータから供給された膨張用ガスが、挿入口を通じてエアバッグの外部へ漏出するのを、舌片によって抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−104176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記特許文献1では、舌片によって挿入口を覆う構成を採っているため、膨張用ガスの漏出を抑制することができる反面、被接続部やハーネスを舌片の孔に通す作業が必要となり、このことが、組付け作業性の低下を招いている。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、エアバッグ外部への膨張用ガスの漏出を抑制しつつ組付け作業性の向上を図ることのできるエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するエアバッグ装置は、軸線に沿って延び、かつハーネスが接続される被接続部を一方の端部に有するインフレータを備えるとともに、前記インフレータを覆う筒状のリテーナを備えるガス発生器と、挿入口を有するバッグ本体を備え、前記挿入口に挿入された前記ガス発生器における前記リテーナのうち、前記被接続部と同じ側の端部である外端部の一部が、同被接続部とともに前記バッグ本体の外部に配置され、前記リテーナの残部が、前記インフレータのガス噴出部とともに前記バッグ本体の内部に配置され、前記ガス噴出部から前記バッグ本体に供給される膨張用ガスにより展開及び膨張するエアバッグとを備え、前記リテーナに設けられた取付部において、前記ガス発生器及び前記エアバッグが乗物に取付けられるエアバッグ装置であって、前記リテーナの前記外端部には、前記軸線に沿って、前記ガス噴出部から遠ざかる側へ延びる延長部が形成され、前記バッグ本体は、前記挿入口の周辺部分に、前記インフレータと前記リテーナとの隙間の一部を埋める隙間埋め部を有しており、同隙間埋め部が前記インフレータと前記延長部とにより挟み込まれている。
【0010】
上記の構成を有するエアバッグ装置では、ガス発生器及びハーネスの組付けに際し、リテーナが挿入口に挿入されることで、同リテーナの外端部の一部がバッグ本体の外部に配置され、残部がバッグ本体の内部に配置される。この残部には、延長部が含まれる。
【0011】
バッグ本体の外からインフレータが単独で、又は被接続部にハーネスが接続された状態で、リテーナ内に挿入される。この挿入により、バッグ本体の挿入口の周辺部分における隙間埋め部が、インフレータと延長部とによって挟み込まれる。
【0012】
被接続部はバッグ本体の外部に露出する。インフレータが単独でリテーナ内に挿入された場合には、被接続部にハーネスが接続される。従って、舌片によって挿入口を覆う特許文献1とは異なり、舌片の孔に被接続部やハーネスを通す作業は不要である。
【0013】
上記エアバッグ装置におけるガス発生器及びエアバッグは、リテーナに設けられた取付部において乗物に取付けられる。
上記エアバッグ装置が搭載された乗物に対し、衝突等により衝撃が加わると、ガス噴出部から膨張用ガスが噴出される。この膨張用ガスがバッグ本体に供給されて、エアバッグが展開及び膨張し、乗員を衝撃から保護する。インフレータとリテーナとの隙間の一部が隙間埋め部によって埋められていることから、埋められていないものに比べ、隙間が小さくなる。そのため、ガス噴出部から噴出された膨張用ガスは、上記隙間を通過してエアバッグの外部へ漏出しにくくなる。
【0014】
上記エアバッグ装置において、前記延長部は、前記外端部の周方向における一部に形成され、前記外端部のうち、周方向における前記延長部の両側部分には、前記延長部が延びる方向とは反対側へ延び、かつ前記隙間埋め部が係合される係合凹部が形成されていることが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、バッグ本体の隙間埋め部は係合凹部に係合されると、リテーナの外端部のうち、延長部の形成されていない箇所であって、同延長部との境界部分、すなわち延長部に接近した部分に位置する。
【0016】
しかも、係合凹部の壁面は、隙間埋め部に接触することにより、同隙間埋め部がリテーナの径方向へ動くことを規制する。この規制により、隙間埋め部が、延長部に接近した上記部分に安定した状態で位置する。
【0017】
ここで、仮に係合凹部がないと、隙間埋め部が延長部からリテーナの径方向へ遠ざかるおそれがあり、その場合には、隙間埋め部はインフレータのリテーナへの挿入の妨げとなり、インフレータをリテーナに挿入しにくくなる。従って、隙間埋め部を押す等して延長部に近づける対策が必要となる。しかし、係合凹部に隙間埋め部が係合されることで、同隙間埋め部が延長部に近づけられるため、隙間埋め部は、インフレータの挿入の妨げとなりにくい。隙間埋め部を押すといった上記対策が不要となり、インフレータがリテーナに挿入しやすくなる。
【0018】
上記エアバッグ装置において、前記リテーナのうち、前記外端部に対し、前記ガス噴出部側に隣接する箇所には、前記軸線を挟んで前記延長部に対し、径方向の反対側となる部分から、同延長部に向けて前記外端部の周壁部に沿って延びる切欠き部が形成され、前記外端部は、前記切欠き部に対し、前記ガス噴出部から遠ざかる側に隣接する箇所に、外端部縮径用の被かしめ部を有しており、前記外端部のうち、前記被かしめ部を挟んで前記切欠き部に対し前記軸線に沿う方向に反対側となる部分には、同リテーナの内側に向けて突出し、かつ前記インフレータに接触することにより同インフレータが前記リテーナから抜け出すのを規制するストッパが形成されていることが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、被かしめ部がかしめられることにより外端部が縮径されると、同外端部がインフレータに圧接されて、リテーナがインフレータに係止される。これに加え、ストッパは、ガス噴出部から膨張用ガスを噴出するインフレータがリテーナから抜け出す方向へ移動しようとした場合に、そのインフレータに直接又は間接に接触することにより、インフレータの同方向への移動を規制する。そのため、インフレータはリテーナから抜け出しにくくなる。
【0020】
上記エアバッグ装置において、前記ストッパは、前記延長部が延びる方向における先端部分に形成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、ストッパは延長部とともにバッグ本体の内部に位置する。このストッパは、ガス噴出部から膨張用ガスを噴出するインフレータがリテーナから抜け出す方向へ移動しようとした場合に、バッグ本体を介してそのインフレータに間接に接触することにより、インフレータ及びバッグ本体の同方向への移動を規制する。そのため、インフレータ及びバッグ本体はリテーナから抜け出しにくくなる。
【0021】
上記エアバッグ装置において、前記切欠き部は、前記軸線に沿う方向に相対向する一対の対向壁部を有しており、一方の前記対向壁部は、前記被かしめ部に隣接し、他方の前記対向壁部は、前記延長部から遠ざかるに従い前記一方の前記対向壁部との間隔が大きくなるように前記軸線に対し傾斜していることが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、一対の対向壁部の間隔は、延長部からリテーナの径方向へ遠ざかるほど大きくなる。そのため、外端部が挿入口に挿入される際に、同リテーナの切欠き部を、バッグ本体のうち、挿入口の開口縁部の一部に引っ掛けることが可能となる。
【0023】
リテーナが切欠き部においてバッグ本体に引っ掛けられると、同切欠き部の一方の対向壁部は、バッグ本体の開口縁部が、被接続部側へ動くのを規制する。そのため、膨張用ガスの圧力がバッグ本体に加わっても、バッグ本体がリテーナから抜け出しにくくなる。
【0024】
上記エアバッグ装置において、前記エアバッグは、前記乗物における側壁部に対し、側方から衝撃が加わった場合に、前記側壁部と乗物用シートとの間で展開及び膨張することにより、前記乗物用シートに着座している乗員を衝撃から保護するものであることが好ましい。
【0025】
乗物の側壁部と乗物用シートに着座している乗員との間の隙間は狭い。しかも、側壁部に対し側方から衝突等により衝撃が加わると、その側壁部は室内側へ変形するため、側壁部と乗員との上記隙間は一層狭くなる。こうした狭い隙間でエアバッグを展開及び膨張させるためには、エアバッグを短時間で展開及び膨張させる必要がある。そのためには、膨張用ガスのエアバッグ外部への漏出量を少なくすることが重要である。この点、上述したように、バッグ本体の隙間埋め部をインフレータとリテーナの延長部とによって挟み込む構造を採用することで、インフレータとリテーナとの隙間が小さくなり、膨張用ガスのエアバッグ外部への漏出量が少なくなる。従って、側壁部と乗員との隙間が狭くても、エアバッグを効率よく短時間で展開及び膨張させ、乗員を衝撃から適切に保護することが可能である。
【発明の効果】
【0026】
上記エアバッグ装置によれば、エアバッグ外部への膨張用ガスの漏出を抑制しつつ組付け作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】車両用のサイドエアバッグ装置に具体化した一実施形態を示す図であり、同装置が設けられた車両用シートを乗員とともに示す側面図。
図2】一実施形態において、車両用シート、エアバッグ、乗員及び側壁部の位置関係を示す部分平断面図。
図3】一実施形態において、車両用シート、エアバッグ、乗員及び側壁部の位置関係を示す部分断面図。
図4】一実施形態において、エアバッグが展開非膨張状態にされたエアバッグモジュールの側面図。
図5】一実施形態におけるリテーナの斜視図。
図6】一実施形態において図5とは異なる方向から見たリテーナの斜視図。
図7】一実施形態において、バッグ本体の挿入口に挿入されたリテーナと、バッグ本体の外からリテーナ内に挿入されるインフレータとを示す部分背面図。
図8】一実施形態において、エアバッグモジュールがサイドフレーム部に取付けられた状態を示す部分断面図。
図9】一実施形態において、エアバッグモジュールがサイドフレーム部に取付けられた状態を示す部分断面図。
図10】一実施形態において、バッグ本体と、バッグ本体の内側から挿入口に挿入されるリテーナとを示す部分側面図。
図11】一実施形態におけるエアバッグモジュールの平面図。
図12】一実施形態において、被かしめ部がかしめられてリテーナがインフレータに係止される様子を説明する平断面図。
図13】変形例におけるリテーナの部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、車両用のサイドエアバッグ装置に具体化した一実施形態について、図1図12を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方として説明し、車両の後進方向を後方として説明する。また、車両の幅方向(車幅方向)における中央部を基準とし、その中央部に近づく側を車内側とし、中央部から遠ざかる側を車外側とする。さらに、車両用シートには、衝突試験用のダミーと同様の体格を有する乗員が、予め定められた正規の姿勢で着座しているものとする。
【0029】
図1図3に示すように、乗物としての車両10において側壁部11の車内側の近傍には、前席を構成する乗物用シートとして、車両用シート12が配置されている。ここで、側壁部11とは、車両10の側部に配置された車両構成部材を指し、主としてドア、ピラー等がこれに該当する。前席に対応する側壁部11は、フロントドア、センターピラー(Bピラー)等である。
【0030】
車両用シート12は、シートクッション13及びシートバック14を備えている。シートクッション13は、車体の床に対し、前後位置調整可能に取付けられている。シートバック14は、シートクッション13の後部から、上側ほど後方に位置するように傾斜した状態で起立しており、傾斜角度を調整可能に構成されている。車両用シート12は、シートバック14が前方を向く姿勢で車室内に配置されている。このように配置された車両用シート12の幅方向は、車幅方向と合致する。
【0031】
シートバック14内には、その骨格をなすシートフレームが配置されている。シートフレームの一部は、図8に示すように、シートバック14内の車外側部分に配置されたサイドフレーム部15によって構成されている。
【0032】
シートバック14内であってサイドフレーム部15に対し、車外側に隣接する箇所には収納部16が設けられ、ここにサイドエアバッグ装置の主要部を構成するエアバッグモジュールABMが組込まれている。エアバッグモジュールABMは、ガス発生器20及びエアバッグ55を主要な構成部材として備えている(図1参照)。次に、これらの構成部材の各々について説明する。
【0033】
<ガス発生器20>
図7及び図8に示すように、ガス発生器20は、発生器本体21と、発生器本体21をエアバッグ55とともにサイドフレーム部15に取付けるための取付部としての取付突起51とによって構成されている。
【0034】
発生器本体21は、インフレータ22と、そのインフレータ22を覆うリテーナ30とを備えており、全体が軸線L1に沿って略上下方向へ延びる長尺状をなしている。
本実施形態では、インフレータ22として、パイロタイプと呼ばれるタイプが採用されている。インフレータ22は、それぞれ軸線L1に沿って略上下方向へ延びる円柱状のガス発生部23及びガス噴出部27を備えている。
【0035】
ガス発生部23の内部には、膨張用ガスを発生するガス発生剤(図示略)が収容されている。ガス発生部23は上端部に、上側ほど縮径するテーパ部24と、その上側の被接続部25とを有している。被接続部25には、インフレータ22への作動信号の入力配線となるハーネス26(図11参照)が接続されている。
【0036】
ガス噴出部27は、ガス発生部23よりも小径状をなしており、ガス発生部23の下側に隣接した状態で、そのガス発生部23と同軸上に設けられている。ガス噴出部27は、外周部に、膨張用ガスを噴出する複数のガス噴出孔28を有している。
【0037】
なお、インフレータ22としては、上記ガス発生剤を用いたパイロタイプに代えて、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスを噴出させるタイプ(ハイブリッドタイプ)が用いられてもよい。
【0038】
一方、リテーナ30は発生器本体21の外周部分を構成している。このリテーナ30は、膨張用ガスの噴出する方向を制御するディフューザとして機能するとともに、インフレータ22をエアバッグ55と一緒にサイドフレーム部15に取付ける機能を有する部材である。リテーナ30の大部分は、金属板等の板材を曲げ加工等することによって、軸線L1に沿う方向の両端が開放された略筒状に形成されている。本実施形態では、リテーナ30の両端部を区別するために、被接続部25と同じ側の端部(上端部)を外端部41といい、被接続部25とは反対側の端部(下端部)を内端部38というものとする。
【0039】
図11及び図12に示すように、リテーナ30は、軸線L1に対し平行に配置された平坦な基部31を有している。基部31は、曲げ加工された上記板材の両端部32,33が平らな状態で重ね合わされることによって構成されている。両端部32,33は、かしめられることにより相互に接合されている。図8中、符号36は、かしめられた箇所(トックス)を示している。図10及び図11に示すように、リテーナ30には、その一部を変形させることにより、同リテーナ30の径方向における内側へ突出するビード37が形成されている。
【0040】
図7及び図11に示すように、リテーナ30の内端部38には、その一部を、同リテーナ30の径方向における内側へ折り曲げることにより、受け部39が形成されている。図9に示すように、受け部39は、インフレータ22のガス発生部23を下側から受け止める役割を担っている。
【0041】
図5図7に示すように、リテーナ30の外端部41であって、上記基部31に対し周方向に隣接する箇所(前部)には、延長部42が形成されている。延長部42は、上記軸線L1に沿って、上記ガス噴出部27から遠ざかる側である上側へ向けて延びている。
【0042】
上記外端部41のうち、延長部42の上記周方向における両側部分には、同延長部42が延びる方向とは反対側である下側へ延びる係合凹部43が形成されている。両係合凹部43は、後述する隙間埋め部66が係合される機能を担っている。
【0043】
リテーナ30において、上記外端部41に対し、ガス噴出部27側(下側)に隣接する箇所には切欠き部44が形成されている。切欠き部44は、軸線L1を挟んで延長部42に対し径方向の反対側となる部分(リテーナ30の後部)から、同延長部42に向けて外端部41の周壁部に沿って延びている。
【0044】
切欠き部44は、軸線L1に沿う方向である略上下方向に相対向する一対の対向壁部45,46を有している。下側の対向壁部46は、延長部42から遠ざかるに従い、上側の対向壁部45との間隔が大きくなるように、軸線L1に対し傾斜している。
【0045】
上記外端部41において、切欠き部44に対し、ガス噴出部27から遠ざかる側(上側)に隣接する箇所の後部には、被かしめ部47が後方へ突出するように曲げ形成されている。この被かしめ部47がかしめられることにより、外端部41が縮径されて、ガス発生部23の上部に圧接されている。この圧接により、リテーナ30が外端部41においてガス発生部23の上部に係止されている。
【0046】
上記外端部41のうち、被かしめ部47を挟んで切欠き部44に対し、軸線L1に沿う方向の反対側(上側)であって、周方向における一部には、リテーナ30の径方向における内側に向けて突出するストッパ48が形成されている。本実施形態では、基部31が上記延長部42よりも高い箇所まで延びており、その上端部にストッパ48が形成されている。ストッパ48は、基部31を構成する端部32,33毎に形成されている。両ストッパ48は、インフレータ22のテーパ部24と接触することにより、同インフレータ22がリテーナ30から抜け出すのを規制する役割を担っている。
【0047】
図8及び図9に示すように、取付突起51は、リテーナ30において、上記軸線L1に沿う方向へ互いに離間した2箇所に固定されている。各取付突起51は、両端部32,33が重ね合わされることによって剛性の高められた基部31に固定されている。各取付突起51は、上記軸線L1に直交する方向であって互いに同一側、本実施形態では車内側へ向けてそれぞれ突出している。各取付突起51は、本実施形態では、ボルトによって構成されている。一対の取付突起51としては、互いに同じ長さを有するものが用いられてもよいし、異なる長さを有するものが用いられてもよい。
【0048】
<エアバッグ55>
図4は、エアバッグ55が膨張用ガスを充填させることなく平面状に展開させられた状態(以下「展開非膨張状態」という)のエアバッグモジュールABMを、車内側から見た状態で示している。
【0049】
図1図4に示すように、エアバッグ55は、インフレータ22のガス噴出部27から膨張用ガスが供給されるバッグ本体56を備えている。バッグ本体56は、重ね合わされた2枚の布片(基布、パネル布等とも呼ばれる)を、それらの幅方向の中央部に設定された折り線57において二つ折りして車幅方向に重ね合わせ、その重ね合わされた部分を結合させることにより形成されている。ここでは、バッグ本体56の重ね合わされた2つの部分を区別するために、乗員P1に近いものを車内側の本体布部58といい、乗員P1から遠いものを車外側の本体布部59というものとする。互いに重ね合わされた本体布部58,59の厚み方向と車幅方向とは合致している。
【0050】
なお、本実施形態では、折り線57がバッグ本体56の後端部に位置するように布片が二つ折りされているが、折り線57がバッグ本体56の他の端部、例えば、前端部、上端部、下端部等に位置するように布片が二つ折りされてもよい。また、バッグ本体56は、1枚の布片によって形成されてもよい。さらに、各布片は、複数に分割されてもよい。
【0051】
エアバッグ55は、バッグ本体56に供給される膨張用ガスにより展開及び膨張する。エアバッグ55は、車両用シート12と側壁部11との間で展開及び膨張したときに、乗員P1の上半身の多くの部分、例えば腰部PPから肩部PSにかけての部位に対応する領域を占有し得る形状及び大きさに形成されている。
【0052】
バッグ本体56としては、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸、ポリアミド糸等を用いて形成した織布等が適している。
【0053】
両本体布部58,59の上記結合は、それらの周縁部に設けられた周縁結合部61においてなされている。本実施形態では、周縁結合部61は両本体布部58,59の周縁部のうち、後端部(折り線57の近傍部分)等を除く部分を、縫製(縫糸で縫合)することにより形成されている。このように、結合が縫製による点は、後述する結合部64(図7図10等参照)についても同様である。
【0054】
なお、本実施形態では、縫製部分は、一定長さの太線を断続的に並べることによって表現されている。
また、周縁結合部61は、上記縫糸を用いた縫合とは異なる手段、例えば接着剤を用いた接着によって形成されてもよい。この点は、結合部64についても同様である。
【0055】
また、バッグ本体56には、その内部を複数の部屋(膨張室)に区画する区画部や、膨張用ガスを整流する部材等が、エアバッグ55の構成部材の一部として設けられている。
図7及び図10に示すように、バッグ本体56の折り線57上であって上下方向における中間部分(上端部寄りの箇所)には、ガス発生器20(リテーナ30)の挿入口62が開口されている。挿入口62は、取付突起51の設けられていない箇所ではガス発生器20が通り、取付突起51の設けられている箇所ではガス発生器20が通らない大きさを有している。本実施形態では、挿入口62は、リテーナ30が通ることのできる最小又はそれに近い大きさに形成されている。表現を変えると、挿入口62は、リテーナ30が挿入された状態で、挿入口62の開口縁部65と同リテーナ30との間の隙間が、膨張用ガスの漏出に関し無視できるほど小さくなる大きさに形成されている。また、図8及び図10に示すように、車内側の本体布部58の後端部において挿入口62よりも低い2箇所には、取付突起51を挿通させるための挿通孔63があけられている。バッグ本体56を構成する上記2枚の布片は、挿入口62及び両挿通孔63を取り囲むように設けられた無端状の結合部64によって、相互に結合されている。
【0056】
そして、図7及び図10に示すように、リテーナ30がバッグ本体56の内側から外側に向けて上記挿入口62に挿入されている。リテーナ30の外端部41の一部は、バッグ本体56の外部に配置されている。延長部42を含めたリテーナ30の残部は、バッグ本体56の内部に配置されている。
【0057】
各取付突起51は、車内側の本体布部58の対応する挿通孔63に挿通されている。この挿通により、リテーナ30が、車内側の本体布部58に対し位置決めされた状態で係止されている。
【0058】
図7及び図9に示すように、バッグ本体56における挿入口62の周辺部分のうち、同挿入口62の開口縁部65に沿う方向の一部、本実施形態では上部が、インフレータ22とリテーナ30との隙間の一部を埋める隙間埋め部66として、ガス発生部23の上端部と延長部42とにより挟み込まれている。さらに、この隙間埋め部66は、一対の係合凹部43のそれぞれに係合されている。
【0059】
ところで、エアバッグモジュールABMは、展開非膨張状態のエアバッグ55(図4参照)のうち、発生器本体21よりも前側部分が折り畳まれることにより、図示しないコンパクトな収納用形態にされている(図11の二点鎖線参照)。これは、エアバッグモジュールABMを、シートバック14における限られた大きさの収納部16に対し、収納に適したものとするためである。エアバッグ55が折り畳まれたエアバッグモジュールABMは、結束テープ(図示略)等の保持手段によって収納用形態に保持される。
【0060】
図8及び図9に示すように、収納用形態に保持されたエアバッグモジュールABMは収納部16に配置されている。そして、両取付突起51が、サイドフレーム部15にあけられた挿通孔17に対し、それぞれ車外側から挿通されている。両取付突起51のそれぞれに車内側からナット18が締付けられることにより、ガス発生器20がエアバッグ55と一緒にサイドフレーム部15に取付けられている。
【0061】
サイドエアバッグ装置は、上述したエアバッグモジュールABMのほかに、図1に示す衝撃センサ71及び制御装置72を備えている。衝撃センサ71は加速度センサ等からなり、車両10の側壁部11に側方から加わる衝撃を検出する。制御装置72は、衝撃センサ71からの検出信号に基づきインフレータ22の作動を制御する。
【0062】
さらに、車両10には、車両用シート12に着座している乗員P1を拘束するためのシートベルト装置が装備されているが、図1図3ではこのシートベルト装置の図示が省略されている。
【0063】
次に、上記のように構成された本実施形態のサイドエアバッグ装置の作用について説明する。
最初に、エアバッグ55にガス発生器20及びハーネス26を組付ける手順について説明する。
【0064】
この組付けに際しては、図10に示すように、リテーナ30の外端部41がバッグ本体56の内側から挿入口62に挿入される。この挿入の過程で、バッグ本体56の挿入口62の周辺部分における隙間埋め部66は、両係合凹部43に係合される。すると、隙間埋め部66は、図7に示すように、リテーナ30の外端部41のうち、延長部42の形成されていない箇所であって、同延長部42との境界部分、すなわち延長部42に接近した部分に位置する。
【0065】
しかも、各係合凹部43の壁面は、隙間埋め部66に接触することにより、同隙間埋め部66が、リテーナ30の径方向へ動くことを規制する。この規制により、隙間埋め部66が、延長部42に接近した上記部分に安定した状態で位置する。
【0066】
また、上記外端部41の挿入口62への挿入の過程で、バッグ本体56のうち、挿入口62の開口縁部65の下部がリテーナ30の切欠き部44に入り込む。切欠き部44においては、一対の対向壁部45,46の間隔が延長部42から径方向へ遠ざかるほど大きくなっている。そのため、挿入口62の開口縁部65の一部(下部)を切欠き部44に入り込ませやすい。
【0067】
各取付突起51が対応する挿通孔63に挿通されることにより、リテーナ30が、車内側の本体布部58に対し位置決めされた状態で係止される。
このようにして、リテーナ30の外端部41の一部がバッグ本体56の外部に配置され、延長部42を含むリテーナ30の残部がバッグ本体56内に配置される。
【0068】
次に、バッグ本体56の外からインフレータ22が単独で、又は被接続部25にハーネス26が接続された状態で、ガス噴出部27を下端部に有し、かつ被接続部25を上端部に有する姿勢にされてリテーナ30に対し、上方から下方に向けて挿入される。
【0069】
ここで、仮に、外端部41に係合凹部43が形成されていないと、隙間埋め部66が延長部42からリテーナ30の径方向へ遠ざかった箇所に位置するおそれがある。その場合には、隙間埋め部66が、インフレータ22の挿入の妨げとなる。従って、隙間埋め部66を押す等して延長部42に近づける対策が必要となる。しかし、本実施形態では、係合凹部43に隙間埋め部66が係合されることで、同隙間埋め部66が延長部42に近づけられている。そのため、隙間埋め部66は、インフレータ22の挿入の妨げとなりにくく、インフレータ22がリテーナ30に挿入しやすい。隙間埋め部66を押すといった上記対策が不要である。
【0070】
図9に示すように、インフレータ22のリテーナ30への挿入の過程で、隙間埋め部66がガス発生部23の上端部と延長部42とによって挟み込まれる。
また、ガス発生部23の下面が、リテーナ30の下端部の受け部39に当たると、インフレータ22は、ガス発生部23において、受け部39によって下側から受け止められた状態となり、それ以上のリテーナ30への挿入が規制される。また、図11に示すように、インフレータ22は、ビード37に接触又は接近し、径方向の動きを規制される。
【0071】
インフレータ22の被接続部25はバッグ本体56の外部に露出する。インフレータ22が単独でリテーナ30内に挿入された場合には、被接続部25にハーネス26が接続される。従って、舌片によって挿入口を覆う特許文献1とは異なり、舌片の孔に被接続部やハーネスを通す作業は不要となり、ガス発生器20及びハーネス26のエアバッグ55への組付け作業性が向上する。
【0072】
また、被かしめ部47もバッグ本体56の外部に位置する(図9参照)。この被かしめ部47に対し、図12において矢印で示すように、周方向の両側から力が加えられる。すると、同図12において二点鎖線で示すように、被かしめ部47が変形され(かしめられ)る。外端部41が縮径されて、ガス発生部23の上部に圧接される。この圧接により、リテーナ30がインフレータ22に係止されて、エアバッグモジュールABMが得られる。
【0073】
エアバッグ55のうち発生器本体21よりも前側部分が折り畳まれることによりエアバッグモジュールABMが収納用形態にされる。収納用形態のエアバッグモジュールABMは、図8に示すように、リテーナ30に設けられた取付突起51においてサイドフレーム部15に取付けられる。
【0074】
次に、本実施形態のサイドエアバッグ装置の動作について説明する。
図1及び図2において、側壁部11に対し側方から衝撃が加わったことが衝撃センサ71によって検出されないときには、制御装置72からインフレータ22に対し、これを作動させるための作動信号が出力されず、ガス噴出部27から膨張用ガスが噴出されない。エアバッグ55は、収納用形態でガス発生器20とともに収納部16に収納され続ける。
【0075】
これに対し、車両10の走行中等に、側突等により側壁部11に対し、側方等から所定値以上の衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ71によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置72からハーネス26を通じてインフレータ22に対し、これを作動させるための作動信号が出力される。この作動信号に応じて、インフレータ22は膨張用ガスをガス噴出部27から噴出する。
【0076】
この膨張用ガスはバッグ本体56に供給される。この際、インフレータ22とリテーナ30との隙間の一部が隙間埋め部66によって埋められているため、埋められていないものに比べ、ガス噴出部27から噴出された膨張用ガスは、上記隙間を通じてエアバッグ55の外部へ漏出しにくい。また、挿入口62の開口縁部65とリテーナ30との隙間は無視できるほど小さく、この隙間からエアバッグ55の外部へ漏出する膨張用ガスは僅かである。
【0077】
バッグ本体56は、上記のようにして供給された膨張用ガスにより膨張を開始する。エアバッグ55は、その一部(後部)を収納部16に残した状態で、シートバック14から、前方へ飛び出す。
【0078】
その後も膨張用ガスが供給されるエアバッグ55は、図1図3において二点鎖線で示すように、側壁部11と、車両用シート12に着座している乗員P1の上半身との間で前方へ向けて折り状態を解消(展開)しながら膨張する。このときにも、インフレータ22とリテーナ30との隙間や、挿入口62の開口縁部65とリテーナ30との隙間からエアバッグ55の外部へ漏出する膨張用ガスは僅かである。
【0079】
このように展開及び膨張したエアバッグ55が、乗員P1の上半身と、車内側へ進入してくる側壁部11との間に介在する。このエアバッグ55によって上半身が車内側へ押圧されて拘束される。そして、側壁部11を通じて上半身に伝わる側方からの衝撃が、エアバッグ55によって緩和されて、同上半身が保護される。
【0080】
ここで、図2及び図3に示すように、車両10の側壁部11と車両用シート12に着座している乗員P1との間の隙間は狭い。しかも、側壁部11に対し側方から衝突等により衝撃が加わると、その側壁部11は車室内側へ変形するため、側壁部11と乗員P1との上記隙間は一層狭くなる。こうした狭い隙間でエアバッグ55を展開及び膨張させるためには、エアバッグ55を短時間で展開及び膨張させる必要がある。そのためには、膨張用ガスのエアバッグ55の外部への漏出量を少なくすることが重要である。
【0081】
この点、本実施形態では、上述したように隙間埋め部66をインフレータ22と延長部42とによって挟み込む構造を採用することで、インフレータ22とリテーナ30との隙間を小さくし、膨張用ガスのエアバッグ55外部への漏出量を少なくしている。従って、側壁部11と乗員P1との隙間が狭くても、エアバッグ55を効率よく短時間で展開及び膨張させ、乗員P1を衝撃から適切に保護することができる。
【0082】
なお、図7に示すように、バッグ本体56が引っ掛けられた切欠き部44の上側の対向壁部45は、バッグ本体56の開口縁部65が上側へ動くのを規制する。そのため、膨張用ガスの圧力がバッグ本体56に加わっても、同バッグ本体56がリテーナ30から抜け出すのを抑制することができる。
【0083】
また、被かしめ部47のかしめにより、外端部41が縮径されてインフレータ22に圧接されて係止されている。これに加え、リテーナ30に設けられたストッパ48は、ガス噴出部27から膨張用ガスを噴出するインフレータ22がリテーナ30から抜け出す方向へ移動しようとした場合に、そのインフレータ22のテーパ部24に直接接触することにより、インフレータ22の同方向への移動を規制する。そのため、インフレータ22がリテーナ30から抜け出すのを抑制することができる。
【0084】
特に、ストッパ48は、板材の端部32,33が重ね合わされて接合されることにより剛性が高められた基部31に形成されているため、インフレータ22が接触しても変形しにくい。従って、インフレータ22をストッパ48によって受け止め、同インフレータ22がリテーナ30からの抜け出すのをより一層抑制することができる。
【0085】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
<エアバッグモジュールABMの収納部16について>
・車両用シート12のシートバック14に代えて側壁部11に収納部16が設けられ、ここにエアバッグモジュールABMが組込まれてもよい。
【0086】
<ガス発生器20について>
・両取付突起51の少なくとも一方は、リテーナ30を乗物に取付ける取付部を構成するものであることを条件に、ボルトとは異なる部材に変更されてもよい。
【0087】
・取付突起51は、リテーナ30のうち、軸線L1に沿う方向における2箇所よりも多い複数箇所に設けられてもよい。この場合、全部の取付突起51が同じ形態(例えば、ボルトとナットとによる締結)で乗物(サイドフレーム部15)に取付けられてもよいし、互いに異なる形態で取付けられてもよい。
【0088】
・発生器本体21と1つの取付突起51とによってガス発生器20が構成されてもよい。
・被接続部25がガス噴出部27よりも下側に位置する姿勢でガス発生器20がバッグ本体56に配置されてもよい。
【0089】
・ガス発生器20の発生器本体21は、略上下方向とは異なる方向、例えば水平方向へ延びる姿勢で配置されてもよい。
・ストッパ48は、リテーナ30における外端部41のうち、被かしめ部47を挟んで切欠き部44に対し、軸線L1に沿う方向の反対側であることを条件に、基部31とは異なる箇所に形成されてもよい。
【0090】
例えば、図13に示すように、ストッパ48が、延長部42であって、同延長部42が延びる方向における先端部分(上端部)に形成されてもよい。なお、図13において、前述した実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号が付されている。
【0091】
このようにすると、ストッパ48は、延長部42とともにバッグ本体56の内部に位置する。このストッパ48は、ガス噴出部27から膨張用ガスを噴出するインフレータ22がリテーナ30から抜け出す方向へ移動しようとした場合に、バッグ本体56を介してそのインフレータ22のテーパ部24に間接に接触することにより、インフレータ22及びバッグ本体56の同方向への移動を規制する。そのため、インフレータ22及びバッグ本体56がリテーナ30から抜け出すのを抑制することができる。
【0092】
・リテーナ30の外端部41における係合凹部43の数が1つ又は3つ以上の複数に変更されてもよい。また、係合凹部43が省略されてもよい。
・インフレータ22として、軸線L1に沿う方向の端部に代えて、中間部分にガス噴出部27を有するものが用いられてもよい。
【0093】
<エアバッグ55について>
・バッグ本体56は、その略全体が上記実施形態のように膨張する部分からなるものであってもよいが、膨張用ガスが供給されず膨張することのない非膨張部を一部に有するものであってもよい。
【0094】
・バッグ本体56の内部は、複数の部屋(膨張室)に区画されず、1つの部屋によって構成されてもよい。
・乗員P1の上半身のうち、サイドエアバッグ装置によって保護される部位が、上記実施形態とは異なる部位に変更されてもよい。この場合、エアバッグ55の形状や大きさが、乗員P1の上半身の対象となる部位を保護できる形状や大きさに変更される。
【0095】
<適用できるエアバッグ装置の種類について>
・エアバッグ装置は、ガス発生器と、ガス噴出部から噴出される膨張用ガスにより、展開及び膨張するエアバッグとを備え、それらのガス発生器及びエアバッグがリテーナの取付部において乗物に取付けられるものであれば、サイドエアバッグ装置とは異なる種類のエアバッグ装置にも適用可能である。
【0096】
その1つとして、膝保護用エアバッグ装置(ニーエアバッグ装置とも呼ばれる)がある。このタイプのエアバッグ装置は、乗物に対し前方から加わる衝撃に応じ、乗物用シートに着座した乗員の下肢の前下方でバッグ本体を膨張させることにより、同乗員の脛部から膝部にかけての部位を保護するものである。
【0097】
そのほかにも、エアバッグ装置は、シートクッションエアバッグ装置にも適用可能である。このタイプのエアバッグ装置は、乗物に対し前方から加わる衝撃に応じ、乗物用シートのシートクッション内に配置されたバッグ本体を膨張用ガスにより膨張させて座面を隆起させ、シートクッション上の乗員が前方へ移動するのを規制するものである。
【0098】
<その他>
・上記サイドエアバッグ装置は、シートバック14が車両の前方とは異なる方向、例えば側方を向く姿勢で車両用シート12が配置された車両において、その車両用シート12に対し側方(車両の前後方向)から衝撃が加わった場合に、同衝撃から乗員P1を保護するタイプのサイドエアバッグ装置にも適用可能である。
【0099】
・上記エアバッグ装置が適用される車両には、自家用車に限らず各種産業車両も含まれる。
・上記エアバッグ装置は、車両以外の乗物、例えば航空機、船舶等に装備されるエアバッグ装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0100】
10…車両(乗物)、11…側壁部、12…車両用シート(乗物用シート)、20…ガス発生器、22…インフレータ、25…被接続部、26…ハーネス、27…ガス噴出部、30…リテーナ、41…外端部、42…延長部、43…係合凹部、44…切欠き部、45,46…対向壁部、47…被かしめ部、48…ストッパ、51…取付突起(取付部)、55…エアバッグ、56…バッグ本体、62…挿入口、66…隙間埋め部、L1…軸線、P1…乗員。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13