(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1部分と前記第2部分との間のタイヤ径方向に沿った距離をL3としたとき、前記長さD1は、前記距離L3の30%以上である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
前記空気入りタイヤをタイヤ径方向から見たときのタイヤ領域をタイヤ幅方向に4分割したとき、前記受信コイルの配置位置は、タイヤ幅方向の一方の最外側の分割領域にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
前記受信コイルは、フレキシブル基板の面に、らせん形状に信号線路が形成された素子であり、前記フレキシブル基板が、前記空気入りタイヤのタイヤ内周面またはタイヤ空洞領域内に設けられている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
前記タイヤ内周面に設けられる前の前記フレキシブル基板は、前記タイヤ内周面の形状に沿うように形成された湾曲基板であり、前記湾曲基板に前記信号線路が形成されている、請求項6に記載の空気入りタイヤ。
前記送信コイルの前記送信領域のタイヤ周方向に沿った寸法の長さを長さD4とし、前記受信コイルのタイヤ周方向に沿った前記受信領域の最大寸法を長さD2としたとき、前記長さD4は、前記長さD2より短い、請求項14または15に記載の給電システム。
前記送信コイルの送信領域と前記空気入りタイヤの離間距離dの、前記空気入りタイヤのタイヤ断面高さSHに対する比d/SHは、0.05以上0.6以下である、請求項14〜17のいずれか1項に記載の給電システム。
前記送信コイルの位置の、前記空気入りタイヤが接地する地面からの高さを高さHとし、前記空気入りタイヤの最大外径を最大外径Dmaxとしたとき、前記高さHの前記最大外径Dmaxに対する比(H/Dmax)と、前記空気入りタイヤの偏平率α[%]は、下記式(1)を満たす、
式(1):
・α=30以上75未満のとき、
−7.707・(α/100)3+12.17・(α/100)2−4.875・(α/100)+0.642<H/Dmax<1
・α=30未満のとき、
0.067<H/Dmax<1
・α=75以上のとき、
0.580<H/Dmax<1
請求項18に記載の給電システム。
前記送信コイルは、前記空気入りタイヤを装着する車両のサスペンションのバネ下領域の、前記空気入りタイヤのサイド部に対向する位置に設けられる、請求項14〜20のいずれか1項に記載の給電システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記技術では、タイヤ空洞領域に設けられる複数の二次コイルがタイヤの側壁の内周面全周に亘り互いに隣接するように埋設されている(特許文献1の
図5)。
しかし、このような二次コイルの配置では、伝送効率が低く、送信装置及びセンサーに十分な電力の供給ができないことがわかった。
伝送効率を高めるには、磁界を利用して電力をワイヤレス給電する場合、空気入りタイヤに用いられるスチール材の配置を考慮して二次コイル(受信コイル)を配置することが好ましい。
【0007】
本発明は、空気入りタイヤ内に設けられた素子に電力を給電する際、従来に比べて伝送効率の高い電力の供給を可能にする受信コイルを備えた空気入りタイヤ、空気入りタイヤ組み立て体、及び、この空気入りタイヤに適用した給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、タイヤ外部からの交流磁界を受けて電力を生成する受信コイルを備えた空気入りタイヤである。当該空気入りタイヤは、
スチール製のビードコードにより構成された一対の環状のビードコアと、
前記ビードコアそれぞれの周りに巻きまわして折り返すことによりトロイダル形状を成した、有機繊維コードにより構成されたカーカスプライ層と、
前記カーカスプライ層のタイヤ径方向外側に設けられ、スチール製のベルトコードで構成されたベルト層と、
前記空気入りタイヤのタイヤ空洞領域内に設けられ、前記カーカスプライ層を透過した交流磁界を受ける面状の受信領域を有し、前記交流磁界を受けることにより交流信号を生成する面状の受信コイルと、を備える。
タイヤ幅方向の一方の側から、前記受信コイルを見たとき、前記受信コイルの前記受信領域の面は、前記ビードコードの最もタイヤ径方向外側にある第1部分と前記ベルト層のタイヤ径方向の最も内側にある第2部分との間に挟まれたタイヤ径方向の領域内に、前記受信領域の面が前記タイヤ幅方向に向くように設けられ、
前記受信コイルのタイヤ径方向に沿った前記受信領域の最大寸法を長さD1とし、前記受信コイルの前記受信領域から前記ビードコアの最も近い部分までの距離を距離L1とし、前記受信コイルの前記受信領域から前記ベルト層の最も近い部分までの距離を距離L2としたとき、前記受信コイルは、前記距離L1及び前記距離L2が前記長さD1/4より大きくなるように、前記ビードコア及び前記ベルトから離れて配置されている。
【0009】
前記第1部分と前記第2部分との間のタイヤ径方向に沿った距離をL3としたとき、前記長さD1は、前記距離L3の30%以上である、ことが好ましい。
【0010】
前記受信コイルのタイヤ周方向に沿った前記受信領域の最大寸法を長さD2としたとき、前記長さD2は、前記長さD1よりも長い、ことが好ましい。
【0011】
前記空気入りタイヤをタイヤ径方向から見たときのタイヤ領域をタイヤ幅方向に4分割したとき、前記受信コイルの配置位置は、タイヤ幅方向の一方の最外側の分割領域にある、ことが好ましい。
【0012】
前記受信コイルを第1受信コイルというとき、前記タイヤ空洞領域には、前記受信コイルとしてさらに少なくとも1つ以上の第2受信コイルが設けられ、
前記第1受信コイルと前記第2受信コイルで構成される受信コイル群は、タイヤ周方向に互いに離間してタイヤ周方向に一周するように配置され、タイヤ周方向に隣接する受信コイル間の離間距離は、前記長さD1よりも短い、ことが好ましい。
【0013】
前記受信コイルは、フレキシブル基板の面に、らせん形状に信号線路が形成された素子であり、前記フレキシブル基板が、前記空気入りタイヤのタイヤ内周面またはタイヤ空洞領域内に設けられている、ことが好ましい。
【0014】
前記タイヤ内周面に設けられる前の前記フレキシブル基板は、前記タイヤ内周面の形状に沿うように形成された湾曲基板であり、前記湾曲基板に前記信号線路が形成されている、ことが好ましい。
【0015】
前記受信コイルは、前記空気入りタイヤのタイヤ内周面上に設けられ、
前記受信コイルの前記タイヤ内周面に固定する部分のタイヤ径方向の領域は、前記カーカス層の前記ビードコアの周りに折り返した部分の折り返し端のタイヤ径方向の位置から外れている、ことが好ましい。
【0016】
前記受信コイルは、前記空気入りタイヤのタイヤ内周面と固定される基材を介して設けられ、
前記基材の前記タイヤ内周面に固定する部分のタイヤ径方向の領域は、前記受信コイルの前記受信領域から離れており、さらに、前記カーカス層の前記ビードコアの周りに折り返した部分の折り返し端のタイヤ径方向の位置から外れている、ことが好ましい。
【0017】
前記受信コイルは、織布に設けられ、
前記織布の一部の縦糸及び横糸が導電性糸で構成され、
前記受信コイルの信号線路は、前記導電性糸によって形成されている、ことが好ましい。
【0018】
前記空気入りタイヤのタイヤ空洞領域には、吸音材が設けられ、
前記受信コイルは、前記吸音材の側面又は内部に設けられている、ことが好ましい。
【0019】
前記長さD1は、前記空気入りタイヤのタイヤ断面高さSHの10〜50%である、ことが好ましい。
【0020】
本発明の他の一態様は、タイヤ外部からの交流磁界を受けて給電を受ける素子を備えた、空気入りタイヤをホイールに組み付けた空気入りタイヤ組み立て体である。
前記空気入りタイヤは、
スチール製のビードコードにより構成された一対の環状のビードコアと、
前記ビードコアそれぞれの周りに巻きまわして折り返すことによりトロイダル形状を成した、有機繊維コードにより構成されたカーカスプライ層と、
前記カーカスプライ層のタイヤ径方向外側に設けられ、スチール製のベルトコードで構成されたベルト層と、を備え、
前記ホイールは、前記空気入りタイヤのタイヤ空洞領域に面するホイール表面に固定して設けられ、前記カーカスプライ層を透過した交流磁界を受ける平面状受信領域を有し、交流信号を生成する平面状の受信コイルを備える。
前記空気入りタイヤ、あるいは前記ホイールは、前記タイヤ空洞領域に面する前記ホイール表面あるいは前記空気入りタイヤの内周面に固定された、前記交流信号から変換された電力の供給を受けて駆動する素子、を備える。
タイヤ幅方向の一方の側から、前記受信コイルを見たとき、前記受信コイルの前記受信領域の面は、前記ビードコードの最もタイヤ径方向外側にある第1部分と前記ベルト層のタイヤ径方向の最も内側にある第2部分との間に挟まれたタイヤ径方向の領域内に、前記受信領域の面が前記タイヤ幅方向に向くように設けられ、
前記受信コイルのタイヤ径方向に沿った前記受信領域の最大寸法を長さD1とし、前記受信コイルの前記受信領域から前記ビードコアの最も近い部分までの距離を距離L1とし、前記受信コイルの前記受信領域から前記ベルト層の最も近い部分までの距離を距離L2としたとき、前記受信コイルは、前記距離L1及び前記距離L2が前記長さD1/4より大きくなるように、前記ビードコア及び前記ベルトから離れて配置されている。
【0021】
本発明のさらに他の一態様は、送信ユニットから、空気入りタイヤに設けられた受信ユニットに電力をワイヤレス伝送して、前記受信ユニットに設けられる素子に給電する給電システムである。
前記送信ユニットは、前記空気入りタイヤに対して非回転の基部に設けられ交流磁界を生成し送信する送信領域を有する送信コイルを備え、
前記空気入りタイヤは、
スチールビードコードにより構成された一対の環状のビードコアと、
前記ビードコアそれぞれの周りに巻きまわして折り返すことによりトロイダル形状を成した、有機繊維コードにより構成されたカーカスプライ層と、
前記カーカスプライ層のタイヤ径方向外側に設けられ、前記スチールベルトコードで構成されたベルト層と、を備える。
前記受信ユニットは、前記空気入りタイヤに設けられ、
前記受信ユニットは、
前記空気入りタイヤのタイヤ空洞領域内に設けられ、前記送信コイルが送信し前記カーカスプライ層を透過した前記交流磁界を受ける平面状の受信領域を有し、前記交流磁界を受けることにより交流信号を生成する平面状の受信コイルと、
前記交流信号から変換された電力の供給を受けて駆動する素子と、を備える。
タイヤ幅方向の一方の側から、前記受信コイルを見たとき、前記受信コイルの前記受信領域の面は、前記ビードコードの最もタイヤ径方向外側にある第1部分と前記ベルト層のタイヤ径方向の最も内側にある第2部分との間に挟まれたタイヤ径方向の領域内に、前記受信領域の面が前記タイヤ幅方向に向くように設けられ、
前記受信コイルのタイヤ径方向に沿った前記受信領域の最大寸法を長さD1とし、前記受信コイルの前記受信領域から前記ビードコアの最も近い部分までの距離を距離L1とし、前記受信コイルの前記受信領域から前記ベルト層の最も近い部分までの距離を距離L2としたとき、前記受信コイルは、前記距離L1及び前記距離L2が前記長さD1/4より大きくなるように、前記ビードコア及び前記ベルトから離れて配置されている。
【0022】
前記送信コイルの前記送信領域のタイヤ径方向に沿った寸法の長さを長さD3としたとき、前記長さD3は、前記長さD1より長い、ことが好ましい。
【0023】
前記送信コイルの前記送信領域のタイヤ周方向に沿った寸法の長さを長さD4とし、前記受信コイルのタイヤ周方向に沿った前記受信領域の最大寸法を長さD2としたとき、前記長さD4は、前記長さD2より短い、ことが好ましい。
【0024】
前記受信コイルを第1受信コイルというとき、前記タイヤ空洞領域には、前記受信コイルとしてさらに少なくとも1つ以上の第2受信コイルが設けられ、
前記第1受信コイルと前記第2受信コイルで構成される受信コイル群は、タイヤ周方向に互いに離間してタイヤ周方向に一周するように配置され、タイヤ周方向に隣接する受信コイル間の離間距離は、前記送信コイルの前記送信領域のタイヤ周方向に沿った寸法の長さD4に比べて短い、ことが好ましい。
【0025】
前記送信コイルの送信領域と前記空気入りタイヤの離間距離dの、前記空気入りタイヤのタイヤ断面高さSHに対する比d/SHは、0.05以上0.6以下である、ことが好ましい。
【0026】
前記送信コイルの位置の、前記空気入りタイヤが接地する地面からの高さを高さHとし、前記空気入りタイヤの最大外径を最大外径Dmaxとしたとき、前記高さHの前記最大外径Dmaxに対する比(H/Dmax)と、前記空気入りタイヤの偏平率α[%]は、下記式(1)を満たす、ことが好ましい。
式(1):
・α=30以上75未満のとき、
−7.707・(α/100)
3+12.17・(α/100)
2−4.875・(α/100)+0.642<H/Dmax<1
・α=30未満のとき、
0.067<H/Dmax<1
・α=75以上のとき、
0.580<H/Dmax<1
【0027】
前記送信ユニットの回路における共振周波数と、前記受信ユニットの回路における共振周波数が一致する、ことが好ましい。
【0028】
前記送信コイルは、前記空気入りタイヤを装着する車両のサスペンションのバネ下領域の、前記空気入りタイヤのサイド部に対向する位置に設けられる、ことが好ましい。
前記送信ユニットから、前記受信ユニットへの電力のワイヤレス伝送は、磁界共鳴方式で行われる、ことが好ましい。
また、前記送信コイルは、前記空気入りタイヤ1つに対して1つ設けられる、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
上述の空気入りタイヤ、空気入りタイヤ組み立て体、及び、給電システムによれば、空気入りタイヤ内に設けられた素子に電力を給電する際、従来に比べて電力の供給の伝送効率を高くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、一実施形態の空気入りタイヤ、空気入りタイヤ組み立て体、及び空気入りタイヤに設けられる素子に電力を供給するための給電システムを、図面を参照しながら説明する。
【0032】
図1は、空気入りタイヤ及び空気入りタイヤ組み立て体の断面の一例を示す図である。
図1に示す空気入りタイヤ10は、一対のビードコア12、カーカスプライ層14、ベルト層16を骨格部分として備える。空気入りタイヤ10は、ホイール11に組みつけられて空気入りタイヤ組み立て体となっている。
図1中、ホイール11の一部(リム底面、リムフランジ)を示している。
【0033】
ビードコア12は、スチール製のビードコードがタイヤ周方向に多段に巻きまわされて構成された環状部材である。
カーカスプライ層14は、ビードコア12それぞれの周りに巻きまわして折り返すことによりトロイダル形状を成した、有機繊維コードにより構成された部材である。カーカスプライ層14には、有機繊維コードはタイヤ径方向あるいはタイヤ幅方向に延びるように設けられている。
図1に示す空気入りタイヤ10は、一枚のカーカスプライ層14で構成されるが、複数のカーカスプライ層がトロイダル形状を成してもよい。
ベルト層16は、カーカスプライ層14のタイヤ径方向外側に設けられ、スチール製のベルトコードで構成されている。ベルト層16は、2枚の積層ベルトで構成され、スチールコードのタイヤ周方向に対する傾斜の向きが互いに異なって交錯層を形成している。
これらの骨格部分の周りに、トレッドゴム40、サイドゴム42、ビードフィラーゴム44、リムクッションゴム46、及びインナーライナーゴム48が設けられる。ビードコア12のタイヤ径方向外側に、サイドゴム42、ビードフィラーゴム44、及びリムクッションゴム46がタイヤ幅方向外側に凸状に湾曲してサイド部Sを形成する。
【0034】
空気入りタイヤ10は、さらに、受信コイル18、センサー20、及び通信装置22を備える。受信コイル18、センサー20、及び通信装置22は、ワイヤレス伝送によりタイヤ外部から電力の供給を受ける受信ユニット30である。
受信コイル18は、空気入りタイヤ10の空洞領域C内に設けられ、サイド部Sのサイドゴム42及びカーカスプライ層14を透過した交流磁界を受ける面状の受信領域を有し、交流磁界を受けることにより交流磁界に応じた交流信号を生成する部分で、面状を成している。タイヤ空洞領域Cは、タイヤ内周面とリム組みしたホイール11のリム底面とで囲まれた、空気が所定の内圧に充填される領域である。
図1に示す例では、受信コイル18は、タイヤ空洞領域Cに面するタイヤ内周面に沿って設けられている。
センサー20は、生成した交流信号から変換された電力の供給を受けて駆動する素子である。センサー20は、特に制限されないが、例えば、転動中の空気入りタイヤ10のトレッド部の変形挙動を計測する加速度センサーである。
通信装置22は、センサー20で計測したモニタリング結果の情報を、ワイヤレスでタイヤ外部の図示されない通信装置に送信する部分で、生成した交流信号から変換された電力の供給を受けて駆動する素子でもある。
受信コイル18から延びる図示されない電力線が、通信装置22に設けられた処理回路に接続されている。受信コイル18で生成された交流信号が電力線を通して処理回路に導かれ、整流されてDC電力に変換される。このDC電力は、センサー20の駆動電力及び通信装置22の駆動電力(信号処理や送信等の電力)に用いられる。
【0035】
受信コイル18が受ける交流磁界は、例えば
図1に示す電力送信装置102と送信コイル100とを備える送信ユニット104によって生成される。送信ユニット100は、空気入りタイヤ10の回転に対して、非回転の基部、例えばサスペンションの非回転部分(例えば、ナックル)に設けられる。送信ユニット104は、送信ユニット104に設けられるインバータにより交流信号を生成し、送信コイル100の送信領域で交流磁界を生成する。
一実施形態によれば、送信ユニット104から受信ユニット30の電力の伝送を、磁界共鳴方式で行う。磁界共鳴方式は、送信ユニット104の回路における共振周波数に、受信ユニット30の回路における共振周波数を一致させることにより、送信コイル100で生成された交流磁界が受信コイル18を共鳴させる。すなわち、共鳴により受信コイル18に交流電流が流れ、この交流電流を整流することにより直流電力を得ることができる。
磁界共鳴方式では、電力の伝送効率が磁気誘導方式に比べて高く、伝送距離も磁気誘導方式における数cmに対して数10cmと長い。この点から、送信ユニット104と受信ユニット30の共振周波数を一致させることが好ましい。共振周波数の調整は、例えば、送信ユニット104及び受信ユニット30の共振回路内のキャパシタンスあるいはインダクタンスの調整によって行われる。
なお、磁界共鳴方式では、送信ユニット104と受信ユニット30の回路における共振周波数を一致させるので、従来に比べて、交流磁界の伝送経路に近傍に、導電性材料が存在し、交流磁界が乱れるのは好ましくない。この点から、受信コイル18の配置位置は以下説明するように制限される。
【0036】
受信コイル18は、タイヤ空洞領域C内に設けられる。具体的には、タイヤ幅方向の一方の側、例えば、
図1の紙面左側から、受信コイル18を見たとき、
図1に示すように、タイヤ径方向の領域W内に、受信領域の面がタイヤ幅方向に向くように設けられる。領域Wは、ビードコア12のビードコードの最もタイヤ径方向外側にある第1部分X1(
図1参照)とベルト層16のタイヤ径方向の最も内側にある第2部分X2(
図1参照)との間に挟まれた領域である。これにより、サイドゴム42及びカーカスプライ層14を通して通過する交流磁界を受信コイル18の受信領域で効率よく受けることができる。
このとき、受信コイル18のタイヤ径方向に沿った受信領域の最大寸法を長さD1(
図1参照)とし、受信コイル18の受信領域からビードコア12の最も近い部分までの距離を距離L1とし、受信コイル18の受信領域からベルト16の最も近い部分までの距離を距離L2としたとき、受信コイル18は、距離L1及び距離L2が長さD1/4より大きくなるように、第1部分X1及び第2部分X2から離れて配置されている。
図1に示す例では、受信コイル18の受信領域からビードコア12の最も近い部分は、第1部分X1であり、受信コイル18の受信領域からベルト16の最も近い部分は、第2部分X2である。
【0037】
このように、受信コイル18をビードコア12及びベルト16から上述の距離、離れて配置させることにより、伝送効率の高い電力の供給が可能になる。交流磁界がベルト層14及びビードコア12のスチールコードにより乱れた状態で受信コイル18が受けることは、伝送効率の点で好ましくない。特に、伝送が磁界共鳴方式の場合、効率よく共鳴を起こさせるためには、交流磁界がベルト層14及びビードコア12のスチールコードによって乱れることは、伝送効率及び伝送距離の確保の点から好ましくない。
【0038】
図2(a),(b)は、
図1に示す受信コイル18の配置と異なる配置の例を示す図である。空気入りタイヤ10あるいはホイール11は、タイヤ空洞領域Cに面するホイール表面あるいは空気入りタイヤ10のタイヤ内周面に固定された、交流信号から変換された電力の供給を受けて駆動するセンサー20及び通信装置22(素子)を備える。
図2(a)に示す例は、受信コイル18をホイール11のリム底面(ホイール表面)に固定した基台19を介してタイヤ空洞領域C内に立設するように設けた例である。センサー20及び通信装置22(素子)は、タイヤ内周面に設けられている。これ以外の部分は、
図1に示す例と同じであるので説明は省略する。
図2(a)では、送信ユニット104の図示は省略されている。センサー20及び通信装置22は、ホイール表面に固定されてもよい。
【0039】
受信コイル18は、例えば、硬い基板上に平面状に形成されたもので、タイヤ周方向に沿って延びている(
図2(a)の紙面に対して垂直方向)。この例でも、タイヤ幅方向から受信コイル18を見たとき、受信コイル18の受信領域の面は、ビードコア12のビードコードの最もタイヤ径方向外側にある第1部分X1(
図2(a)参照)とベルト層16のタイヤ径方向の最も内側にある第2部分X2(
図2(a)参照)との間に挟まれたタイヤ径方向の領域W(
図2(a)参照)内に、受信領域の面がタイヤ幅方向に向くように設けられる。これにより、サイドゴム42及びカーカスプライ層14を通して通過する交流磁界を受信領域で効率よく受けることができる。
このとき、受信コイル18のタイヤ径方向に沿った受信領域の最大寸法を長さD1(
図2(a)参照)とし、受信コイル18の受信領域からビードコア12の最も近い部分までの距離を距離L1とし、受信コイル18からベルト16の最も近い部分までの距離を距離L2としたとき、受信コイル18は、距離L1及び距離L2が長さD1/4より大きくなるように、ビードコア12及びベルト16から上述の距離、離れて配置されている。この場合も、伝送効率の高い電力の供給が可能になる。
なお、
図2(a)に示す基台19は、リム底面に接着剤等で固定することができる。
【0040】
図2(b)に示す例は、受信コイル18をタイヤ空洞領域Cのタイヤ内周面に固定された基台19を介してタイヤ空洞領域C内に立設するように設けた例である。センサー20及び通信装置22(素子)は、タイヤ内周面に設けられている。これ以外の部分は、
図1に示す例と同じであるので説明は省略する。
図2(b)では、送信ユニット104の図示は省略されている。センサー20及び通信装置22は、ホイール表面に固定されてもよい。
受信コイル18は、
図2(a)に示す形態と同じものである。この例でも、タイヤ幅方向の一方の側、例えば、
図2(b)の紙面左側から、受信コイル18を見たとき、受信コイル18の受信領域の面は、ビードコア12のビードコードの最もタイヤ径方向外側にある第1部分X1(
図2(b)参照)とベルト層16のタイヤ径方向の最も内側にある第2部分X2(
図2(b)参照)との間に挟まれたタイヤ径方向の領域W(
図2(b)参照)内に、受信領域の面がタイヤ幅方向に向くように設けられる。これにより、サイドゴム42及びカーカスプライ層14を通して通過する交流磁界を受信領域で効率よく受けることができる。
このとき、距離L1及び距離L2が長さD1/4より大きくなるように、ビードコア12及びベルト16から上述の距離、離れて配置されている。この場合も、伝送効率の高い電力の供給が可能になる。
なお、
図2(b)に示す基台19は、例えば、トレッド部のタイヤ内周面の側に加硫前に設け加硫することで空気入りタイヤ10と一体化した面ファスナと、基台19に設けた面ファスナとが接合することでタイヤ内周面に固定することができる。また、基台19の固定方法は、面ファスナを用いた方法に制限されず、公知の固定方法であってもよい。
【0041】
図1あるいは
図2(a),(b)に示す空気入りタイヤ10とホイール11とを組み付けた空気入りタイヤ組み立て体において、送信ユニット104から、空気入りタイヤ10に設けられた受信ユニット30に電力をワイヤレス伝送して、センサー20及び通信装置22(素子)に給電する給電システムが形成される。
送信ユニット104は、空気入りタイヤ10に対して非回転の部分に設けられ交流磁界を生成し送信する送信領域を有する送信コイル100を備える。
受信ユニット30は、空気入りタイヤ10に設けられる。
具体的には、受信ユニット30は、受信コイル18と、センサー20及び通信装置22(素子)と、を備える。受信コイル18は、空気入りタイヤ10のタイヤ空洞領域C内に設けられ、送信コイル100が送信しカーカスプライ層14を透過した交流磁界を受ける平面状の受信領域を有し、交流信号を生成する。
この給電システムにおいて、受信コイル18は、タイヤ径方向の領域W内に、受信領域の面がタイヤ幅方向に向くように設けられ、受信コイル18は、距離L1及び距離L2が長さD1/4より大きくなるように、ビードコア12及びベルト16から離れて配置される。このため、受信コイル18が受ける交流磁場は、ビードコア12及びベルト16のスチール製のビードコード及びベルトコードの影響によって乱されないので、効率よく交流信号を生成することができ、その結果、従来に比べて電力の供給の伝送効率を高くすることができる。
【0042】
図1及び
図2(a),(b)に示す領域Wのタイヤ径方向に沿った距離(第1部分X1と第2部分X2との間のタイヤ径方向に沿った距離)をL3としたとき、長さD1(
図1、
図2(a),(b)参照)は、距離L3の30%以上であることが好ましい。交流磁場がスチールコードの影響を受けない範囲で、長さD1を可能な限り大きくすることは、伝送可能な距離を長くする点から好ましい。
【0043】
図3(a),(b)は、受信コイル18を平面視した図である。受信コイル18は、非磁性基板18aに信号線路18bがらせん形状状(渦巻き形状)に配線されたものである。信号線路18bの入力端及び出力端は、
図3(a)に示すように、非磁性基板18aの同じ側に設けられてもよいし、
図3(b)に示すように、非磁性基板18aの異なる側に設けられてもよい。信号線路18bは、所定のマスクを利用して金属蒸着またはCVD(Chemical Vapor Deposition)を行うことにより、あるいはスクリーン印刷を行うことにより、非磁性基板18a上に導体材料を線状に形成してもよい。
【0044】
図1に示す例の場合、受信コイル18は、サイド部Sのタイヤ内周面の湾曲した部分に設けるので、非磁性基板18aは、樹脂製のフレキシブル基板を用いることが好ましい。
すなわち、一実施形態によれば、受信コイル18は、フレキシブル基板の面に、らせん形状に信号線路18bが形成された素子であり、このフレキシブル基板が、空気入りタイヤ10のタイヤ内周面またはタイヤ空洞領域C内に設けられていることが好ましい。これにより、タイヤ空洞領域C内で受信コイル18が変形してもタイヤ内周面からの剥離や受信コイル18の破損を防止することができる。
また、一実施形態によれば、タイヤ内周面に設けられる前のフレキシブル基板は、タイヤ内周面の形状に沿うように形成された湾曲基板であり、この湾曲基板に信号線路18bが形成されている、ことも好ましい。フレキシブル基板は、予め、タイヤ内周面の形状に合わせて湾曲形状に形成されているので、平面状のフレキシブル基板をタイヤ内周面に合わせて湾曲形状に変形させる必要がない。このため、受信コイル18をタイヤ内周面に設けるときに受信コイル18に歪を与えることがなく、受信コイル18の耐久性、および受信コイル18による給電効率の低下を抑制することができる。
【0045】
このような受信コイル18において、受信コイル18のタイヤ周方向に沿った受信領域の最大寸法を長さD2(
図3(a)参照)としたとき、長さD2は、長さD1よりも長いことが好ましい。長さD1は、領域Wによって制限されるが、長さD2は、タイヤ周方向において制限されない。長さD2を長くすることにより、受信領域を大きくして、受信領域で、送信コイル100で生成される交流磁界を可能な限り受けて大きな電力を供給することができる。
【0046】
一実施形態によれば、
図4に示すように、空気入りタイヤ10をタイヤ径方向から見たときのタイヤ領域(タイヤ幅方向両側のタイヤ最大幅位置間の領域)をタイヤ幅方向に4分割したとき、受信コイル18の配置位置は、タイヤ幅方向の一方の最外側の分割領域Rにあることが好ましい。
図4は、一実施形態の空気入りタイヤに設けられる受信コイル18のタイヤ幅方向の配置領域を説明する図である。分割領域Rに受信コイル18を設けることにより、送信コイル100との距離を近づけることができ、伝送効率を向上させることができる。したがって、分割領域Rであって、領域W(
図1、
図2(a),(b)参照)の範囲内に、受信コイル18を設けることが好ましい。空気入りタイヤ10が、車両装着時、一方のサイド部Sが車両内側に向くように指示されているタイヤである場合、分割領域Rの位置は、車両内側に指定されたサイド部Sの側である。
【0047】
図5(a)〜(c)は、受信コイル18のタイヤ周方向における配置の形態を説明する図である。
図5(a)〜(c)では、受信コイル18のタイヤ周方向に沿った配置をわかり易く説明するために、受信コイル18の信号線路18bの最外部分の輪郭を示している。
図5(a)〜(c)に示すように、受信コイル18は、タイヤ周方向に複数に分割された領域のそれぞれ設けられている。
【0048】
すなわち、複数の受信コイル18からなる受信コイル群は、タイヤ周方向に互いに離間してタイヤ周方向に一周するように配置されている。
図5(a)に示す例では、タイヤ周方向で2分割された領域それぞれに、受信コイル18が設けられている。
図5(b)に示す例では、タイヤ周方向で3分割された領域それぞれに、受信コイル18が設けられている。
このようにタイヤ一周を複数の領域に分割して、分割したそれぞれの領域に受信コイル18を配置するのは、以下の理由による。受信コイル18がタイヤ内周面に設けられる場合、受信コイル18が設けられるタイヤ内周面は、空気入りタイヤ10が転動中、縦撓み変形と縦撓み変形の解放が繰り返し行われるサイド部Sに対応した部分であり、このサイド部Sには、タイヤ周方向において縦撓み変形を受けた部分と縦撓み変形を受けていない部分が存在する。1つの受信コイル18がタイヤ全周に設けられる場合、この受信コイル18には、縦撓み変形を受けて歪む部分と縦撓み変形を受けていない部分とが存在する。このため、受信コイル18は、タイヤ内周面から剥離しやすくなる。したがって、タイヤ一周を複数の領域に分割して、分割したそれぞれの領域に受信コイル18を配置することにより、受信コイル18がタイヤ内周面から剥離することを防止することができる。この点から、タイヤ周方向の分割は、2〜8分割であることが好ましい。
【0049】
この場合、タイヤ周方向に隣接する受信コイル間の離間距離は、長さD1よりも短いことが好ましい。上記離間距離が長い場合、空気入りタイヤ10が転動を停止したとき、隣接する受信コイルの間の領域に、送信コイル100が生成した交流磁界が通過する場合が少なくなるように、隣接する受信コイルの間の離間距離を狭くすることが好ましい。この点から、タイヤ周方向に隣接する受信コイル間の離間距離は、領域Wによって制限されている長さD1よりもさらに短いことが好ましい。すなわち、複数の受信コイル18からなる受信コイル群は、タイヤ周方向に互いに離間してタイヤ周方向に一周するように配置され、タイヤ周方向に隣接する受信コイル間の離間距離は、長さD1よりも短いことが好ましい。しかし、離間距離が過度に近い場合、磁界が干渉して伝送効率を低下させ易い。この点から、離間距離は、長さD1の10分の1より長いことが好ましい。
【0050】
一実施形態によれば、タイヤ周方向に隣接する受信コイル18間の離間距離は、送信コイル100の送信領域のタイヤ周方向に沿った寸法の長さD4に比べて短い、ことが好ましい。空気入りタイヤ10が停止し、
図5(c)に示すように、隣接する受信コイル18の間の隙間が送信コイル100の送信領域に対向した状態にある場合でも、隣接する受信コイル18の間の離間距離が長さD4より短いので、交流磁界は、隣接する2つの受信コイル18で受信することができる。このため、空気入りタイヤ10が
図5(c)に示すような状態で停止した場合でも、電力の給電を維持することができる。
【0051】
また、一実施形態によれば、送信コイル100の送信領域のタイヤ径方向に沿った寸法の長さを長さD3としたとき、長さD3は、長さD1より長いことが好ましい。受信コイル18は、
図1に示すようにタイヤ内周面に設けられる場合、空気入りタイヤ10は高速回転したときの遠心力により、サイド部Sの湾曲の程度が小さくなり、受信コイル18の位置がタイヤ径方向外側に移動する。この場合でも、送信コイル100の送信領域の長さD3が長さD1よりも長いので、交流磁界の一部が、受信コイル18の受信領域から外れることを防止できる。
【0052】
一実施形態によれば、送信コイル100の送信領域のタイヤ周方向に沿った寸法の長さを長さD4とし、受信コイル18のタイヤ周方向に沿った受信領域の最大寸法を長さD2(
図3参照)としたとき、長さD4は、長さD2より短いことが好ましい。これにより、送信アンテナ100で生成した交流磁場をタイヤ周方向において漏らすことなく1つの受信コイル18で受けることができるので、素子に供給する電力量を大きくすることができる。
【0053】
一実施形態によれは、上述した隣接する受信コイル18間の離間距離が過度に短くなって磁界が干渉して伝送効率を低下させ易いことを考慮して、タイヤ周方向に隣接する受信コイル18は、タイヤ幅方向の異なる位置に設けることも好ましい。この場合、隣接する受信コイル18は、タイヤ幅方向において離間距離が過度に小さくならないように配置される。さらにいうと、タイヤ幅方向の異なる位置に設けたタイヤ周方向に隣接する受信コイル18の受信領域の一部は、タイヤ周方向において互いに重なってもよい。タイヤ幅方向において所定の離間距離が確保されるので、タイヤ周方向において、タイヤ周方向に隣接する受信コイル18の受信領域の一部が互いに重なっても、磁界が干渉して伝送効率が低下することはない。
【0054】
図6(a)〜(c)は、一実施形態の空気入りタイヤ10に設ける受信コイル18の例を説明する図である。
図6(a)に示すように、受信コイル18は、発泡ウレタンフォーム等の変形が容易な部材52中に配置される。この部材52は、空気入りタイヤ10の内面に固定される。
図6(b),(c)は、部材52中の受信コイル18の配置例を説明する図である。受信コイル18は、非磁性基板18aに設けられて部材52に配置固定されている。
図6(b)に示す例は、受信コイル18は、空気入りタイヤ10のタイヤ周方向に対して、タイヤ幅方向内側に向かって傾斜させている。
図6(c)に示す例は、受信コイル18は、空気入りタイヤ10のタイヤ周方向に沿って平行に設けるが、タイヤ周方向に隣接する受信コイル18とは、タイヤ幅方向の異なる位置に互い違いに配置されている。
【0055】
図7(a),(b)は、一実施形態の空気入りタイヤに設ける、受信コイル18のタイヤ周方向に沿った配置の形態の別の例を説明する図である。
図7(a),(b)は、
図5(a)〜(c)と同様に、受信コイル18のタイヤ周方向に沿った配置をわかり易く説明するために、受信コイル18の信号線路18bの最外部分の輪郭を示している。
図7(a)に示す例では、受信コイル18同士が隣接する輪郭の辺は、互いに平行に、タイヤ周方向に傾斜している。このように、受信コイル18同士が隣接する輪郭の辺をタイヤ周方向に傾斜させることにより、空気入りタイヤ10の回転中、受信アンテナ18が受信領域で受ける交流磁界の量が穏かに減少し、隣接する受信コイル18が受信領域で受ける交流磁界の量が穏かに上昇するので、受信コイル18で得られる交流信号、ひいては伝送される電力の変動は抑制される。
図7(b)に示す例では、タイヤ径方向に受信コイル18を2列に分け、この2列の受信コイル18間で、タイヤ周方向に隣接する受信コイル18間の隙間を、タイヤ周方向で互いにずらすように2列の受信コイル18を配置している。このため、1つの列において交流磁界を受ける受信コイル18がタイヤ周方向で切り替わる場合でも、別の列では、交流磁界を受ける受信コイル18は変化しないので、電力の変動は抑制される。特に、高扁平のタイヤの場合、
図7(b)に示す形態を用いることが好ましい。
【0056】
図8(a),(b)は、一実施形態の空気入りタイヤに設けられる受信アンテナ18の固定の例を説明する図である。受信コイル18は、タイヤ内周面上に設けられる場合、受信コイル18のタイヤ内周面に固定する部分のタイヤ径方向の領域は、
図8(a)に示すように、カーカス層14のビードコア12の周りに折り返した部分の折り返し端14aのタイヤ径方向の位置から外れている、ことが好ましい。
図8(a)に示す例では、折り返し端14aの位置は、ベルト層16のタイヤ幅方向の配置領域にあるが、サイド部Sの領域にあってもよい。特に、折り返し端14aの位置がサイド部Sにある場合、カーカス層14の折り返し端14a周辺の領域では、剛性が急激に変化するので、この周辺で縦撓み変形に大きな差異が生じ、その結果大きな歪が発生し易い。このため、受信コイル18のタイヤ内周面に固定する部分のタイヤ径方向の領域を、カーカス層14のビードコア12の周りに折り返した部分の折り返し端のタイヤ径方向の位置から外すことにより、受信コイル18に不要な縦撓みや歪を与えることを阻止することができ、受信コイル18のタイヤ内周面からの剥離を防止することができる。
【0057】
例えば、受信コイル18は、基材18cを介してタイヤ内周面に設けられる。基材18cは、タイヤ内周面と固定される。この場合、
図8(b)に示すように、基材18cのタイヤ内周面に固定する部分のタイヤ径方向の領域は、受信コイル18の受信領域から離れており、さらに、カーカス層14のビードコア12の周りに折り返した部分の折り返し端14aのタイヤ径方向の位置から外れていることが好ましい。受信コイル18の受信領域が、基材18cを介して空気入りタイヤ10のビード部(ビードフィラーゴム44のある部分)〜サイド部Sの縦撓み変形による影響を受けて変形することを防止することができる。基材18cは、
図2(a),(b)に示す基台19と同様に、例えば、ビード部のタイヤ内周面の側に加硫前に設け加硫することで空気入りタイヤ10と一体化した面ファスナと、基材18cに設けた面ファスナとが接合することで基材18cをタイヤ内周面に固定することができる。面ファスナの代わりに接着剤を用いることもできる。
【0058】
図9(a),(b)は、一実施形態の空気入りタイヤに設けられる受信コイル18のタイヤ内周面への固定を説明する図である。
図9(b)に示されるように、基材18cは、タイヤ内周面の形状にあった環状の部材である。基材18cは、例えば、ビード部に対応するタイヤ内周面の部分に加硫前に設け加硫することでビード部と一体化した面ファスナと、基材18cに設けた面ファスナとが接合することでタイヤ内周面に固定するように構成される。基材18cは、例えば、ゴムや樹脂で構成される。
図9(a),(b)に示す場合も、基材18cのタイヤ内周面に固定する部分のタイヤ径方向の領域は、受信コイル18の受信領域から離れており、さらに、カーカス層14のビードコア12の周りに折り返した部分の折り返し端14aのタイヤ径方向の位置から外れていることが好ましい。基材18cは、タイヤ内周面の形状に対応した形状を有し、受信コイル18は、基材18cに設けられるので、受信コイル18は、タイヤ内周面形状に沿って設けられる。このため、領域W内で、ベルト16及びビードコア12から所定の距離以上離れる位置に、受信コイル18を確実に配置することができる。また、空気入りタイヤ10をホイール11と組み付ける時に、受信コイル18を備えた基材18cを、タイヤ空洞領域C内に入れてタイヤ内周面に固定することが容易にできる。
【0059】
図10は、一実施形態の空気入りタイヤに設ける受信コイル18の例を説明する図である。
図10に示す例では、受信コイル18は、環形状の基材18c、あるいは非磁性基板18aに、設けられる。このような構成により、受信コイル18を個別の基材18cや非磁性基板18aに設けた場合、タイヤ回転時の遠心力で受信コイル18がタイヤ径方向に移動し、あるいは力を受けて変形するが、
図10に示すように、複数の受信コイル18を基材18c、あるいは非磁性基板18aに円環状に一体的に設けることにより、受信コイル18の移動や変形が抑制される。
【0060】
図11は、一実施形態の空気入りタイヤに設ける受信コイル18の例を説明する図である。発泡ウレタンフォーム等の柔軟な部材52が空気入りタイヤ10の内面に固定され、この部材52のタイヤ幅方向内側の表面に受信コイル18が接着固定されている。部材52のタイヤ幅方向内側に向く面は、サイド部の内面の曲率より小さい曲率、好ましくは平面である。したがって、この面に設けられる受信コイル18の非磁性基板18aは、サイド部の内面の曲率より小さい曲率、好ましくは平面を成して設けられる。
部材52は、サイド部の変形を阻害しないために、以下の物性を有することが好ましい。
・密度:5〜40[kg/m
3](JIS K 7222:2005準拠)
・硬さ:45〜160[N](JIS K6400−2:2012 6.7の“D法”)
・伸び:120%以上(JIS K 6400−5:2004準拠)
・引裂強度:2〜12[N/cm](JIS K 6400−5:2004準拠)
部材52の物性が上記の範囲内であることにより、部材52がサイド部の変形を吸収できずに断裂することを抑制でき、受信コイル18との接着が劣化せず、また、空気入りタイヤ10の質量増加を最小限に抑えつつ、長期間にわたって受信コイル18を固定することができる。
【0061】
図12は、一実施形態の空気入りタイヤに設けられる受信コイル18の固定を説明する図である。空気入りタイヤ10のタイヤ空洞領域C内には、トレッド部に対応したタイヤ内周面の領域に、吸音材50が設けられる場合、
図12に示すように、受信コイル18は、吸音材50の側面又は内部に設けられることが好ましい。吸音材50は、タイヤ空洞領域C内の圧力の粗密による振動を抑制することで、タイヤ空洞領域C内の空気の振動に起因する騒音を抑制する部材であり、特に、振動を効果的に抑制する点からトレッド部に対応したタイヤ内周面の部分にタイヤ周方向に沿って一周するように設けられる。吸音材50の材料として、例えば、発泡ウレタン、発泡ゴム、不織布等の発泡材料を用いることができる。吸音材50のタイヤ内周面への固定方法は、特に制限されないが、例えば、接着剤で固定され、あるいは、タイヤ内周面の側に加硫前に設け加硫することでトレッド部と一体化した面ファスナと、吸音材50に設けた面ファスナとが接合することでタイヤ内周面に固定される。
受信コイル18を、吸音材50に固定することにより、受信コイル18をタイヤ空洞領域C内の領域Wであって、ビードコア12およびベルト16から上述した所定の距離、離間している場所に設けることができる。
【0062】
一実施形態によれば、受信コイル18は、織布に設けられる。この場合、織布の一部の縦糸及び横糸が導電性糸で構成される。このとき、受信コイル18の信号線路18bは、導電性糸によって形成されていることが好ましい。織布は、フレキシブルであるので、受信コイル18を、サイド部Sに対応したタイヤ内周面の領域に設けてもサイド部Sの縦撓み変形に応じて変形することができ、タイヤ内周面から剥離することを防止できる。織布は、タイヤ内周面に設ける場合、例えば接着剤や面ファスナを介して固定される。
【0063】
一実施形態によれば、
図1に示す送信コイル100は、空気入りタイヤを装着する車両のサスペンションのバネ下領域の、空気入りタイヤ10のサイド部Sに対向する位置に設けられることが好ましい。このように送信コイル100を配置することにより、受信コイル18と送信コイル100をほぼ対向するように設けることができるので、受信コイル18は、効率よく交流磁場を受けることができる。
送信コイル100は、例えば、ストラットサスペンションであればダンパケース、マルチリンクサスペンションであればナックルに設けることが好ましい。
【0064】
図13は、一実施形態の空気入りタイヤに設けられる受信コイル18と送信コイル100の配置を説明する図である。
一実施形態によれば、受信コイル18のタイヤ径方向に沿った長さD1は、空気入りタイヤ10のタイヤ断面高さSH(空気入りタイヤ10のビード底面12aからタイヤ最大外径位置までのタイヤ径方向に沿った長さ)の10〜50%であることが好ましい。長さD1をこのように設定することにより、領域W内に容易に配置させることができる。
また、一実施形態によれば、送信コイル100は、1つの空気入りタイヤ10に対して1つ設けることが好ましい。送信コイル100を隣接させて複数設ける場合、隣接する送信コイル100間のクロスカップリングが生じ、給電効率が低下し易い。
【0065】
また、一実施形態によれば、送信コイル100の送信領域と空気入りタイヤ10の離間距離dの、空気入りタイヤ10のタイヤ断面高さSHに対する比d/SHは、0.05以上0.6以下である、ことが好ましい。タイヤ断面高さSHが小さくなる程、タイヤコーナリング中のサイド部Sの横変形は小さくなるので、送信コイル100をサイド部Sに近づけてもサイド部Sの横変形によってサイド部Sと接触する可能性は小さくなる。このため、比d/SHを、0.05以上0.6以下とすることにより、送信コイル100がサイド部Sと横変形しても接触しない程度に送信コイル100をサイド部Sに近づけることができ、さらに、受信コイル18による受信を効率よく行わせることができる。比d/SHは、0.08〜0.5であることがより好ましい。
【0066】
一実施形態によれば、送信ユニット104の回路の共振周波数と、受信ユニット30の回路における共振周波数が一致することが好ましい。この場合、送信コイル100が生成する交流磁場の周波数も、送信ユニット104の回路の共振周波数である。このようにすることで、電力の伝送効率が電磁誘導方式に比べて高くなり、伝送距離も、電磁誘導方式における伝送距離に対して長くなる。したがって、比d/SHを上記範囲に設定することが可能となる。
【0067】
一実施形態によれば、送信コイル100の位置の、空気入りタイヤ10が接地する地面からの高さを高さH(送信コイル100の地面110から最も離れた位置の高さ)とし、空気入りタイヤ10の最大外径を最大外径Dmaxとしたとき、高さHの最大外径Dmaxに対する比(H/Dmax)と、空気入りタイヤ10の偏平率α[%]は、下記式(1)を満たすことが好ましい。
式(1):
・−7.707・(α/100)
3+12.17・(α/100)
2−4.875・(α/100)+0.642<H/Dmax<1 (α=30以上75未満)
・0.067<H/Dmax<1 (α=30未満)
・0.580<H/Dmax<1 (α=75以上)
【0068】
偏平率αが小さい程、タイヤコーナリング中のサイド部Sの横変形は小さくなるので、送信コイル100をサイド部Sに近づけてもサイド部Sの横変形によってサイド部Sと接触する可能性は小さくなる。さらに、サイド部Sの横変形は、地面110近傍で局部的に横変形するので、地面110から離れた場所におけるサイド部Sの横変形は比較的小さい。このため、比d/SHを上記数値範囲の最小値0.05としても、サイド部Sの横変形が小さい偏平率αの小さい空気入りタイヤ10では、送信コイル100の地面110からの高さHを低くしても、送信コイル100がサイド部Sと接触する可能性はない。すなわち、偏平率αが小さくなるほど、比(H/Dmax)の下限値を小さくすることができる。したがって、偏平率αが小さい程、送信コイル100の配置位置の自由度が広がる。
この点から、偏平率αと比(H/Dmax)との間には、式(1)を満足するように、送信コイル100を設けることが好ましい。偏平率αと比(H/Dmax)が式(1)を満足しない場合、送信コイル100がサイド部Sと接触する可能性が高くなるので好ましくない。
【0069】
以上、本発明の空気入りタイヤ、空気入りタイヤ組み立て体、及び給電システムについて詳細に説明したが、本発明の空気入りタイヤは上記実施形態あるいは実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。