特許第6769493号(P6769493)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6769493弾性表面波装置および弾性表面波フィルタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769493
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】弾性表面波装置および弾性表面波フィルタ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/64 20060101AFI20201005BHJP
【FI】
   H03H9/64 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-559105(P2018-559105)
(86)(22)【出願日】2017年12月20日
(86)【国際出願番号】JP2017045759
(87)【国際公開番号】WO2018123775
(87)【国際公開日】20180705
【審査請求日】2019年4月19日
(31)【優先権主張番号】特願2016-251332(P2016-251332)
(32)【優先日】2016年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 憲良
【審査官】 竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−109894(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/107069(WO,A1)
【文献】 特開2003−332884(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/069777(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00−9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電性基板と、前記圧電性基板上に形成されたIDT(Inter Digital Transducer)電極とを有する弾性表面波共振子により各々が形成されており、並列接続された少なくとも第1の共振子群と第2の共振子群と
前記第1および第2の共振子群に並列接続された第3の共振子群とを備え、
前記第1の共振子群は、少なくとも1つの弾性表面波共振子を含み、
前記第2の共振子群は、直列接続された、前記第1の共振子群よりも多くの数の弾性表面波共振子を含み、
前記第1の共振子群に含まれる弾性表面波共振子の共振周波数は、前記第2の共振子群に含まれる弾性表面波共振子の共振周波数よりも高く設定され
前記第3の共振子群は、直列接続された、前記第1の共振子群よりも多くの数の弾性表面波共振子を含み、
前記第1の共振子群に含まれる弾性表面波共振子の共振周波数は、前記第3の共振子群に含まれる弾性表面波共振子の共振周波数よりも高く設定される、弾性表面波装置。
【請求項2】
各弾性表面波共振子は、反射器を含み、
前記圧電性基板上において、前記第1の共振子群に含まれる弾性表面波共振子の反射器の一部は、前記第2の共振子群に含まれる弾性表面波共振子の反射器と共通化されている、請求項1に記載の弾性表面波装置。
【請求項3】
前記第1の共振子群の合成容量と、前記第2の共振子群の合成容量と、前記第3の共振子群の合成容量とは等しい、請求項1または2に記載の弾性表面波装置。
【請求項4】
前記第1の共振子群の合成容量と、前記第2の共振子群の合成容量と、前記第3の共振子群の合成容量とは異なる、請求項1または2に記載の弾性表面波装置。
【請求項5】
入力端子と出力端子の間に設けられる直列腕に配置された直列腕共振部と、前記直列腕と接地電位との間に接続された並列腕に設けられた並列腕共振部とを備えるラダー型の弾性表面波フィルタであって、
前記直列腕共振部は、請求項1〜のいずれか1項に記載の弾性表面波装置により形成されている、弾性表面波フィルタ。
【請求項6】
前記直列腕に配置される他の直列腕共振部をさらに備え、
前記直列腕共振部は、前記直列腕において、前記他の直列腕共振部よりも前記入力端子に近い位置に配置される、請求項に記載の弾性表面波フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波装置に関し、より特定的には、直列腕共振子と並列共振子とを含むラダー型の弾性表面波フィルタに用いられる弾性表面波装置の耐電力性を向上させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)共振子を直列腕と並列腕とに交互に配置した梯子型(ラダー型)の構成を有する弾性表面波フィルタが知られている。弾性表面波共振子は、概略的には、タンタル酸リチウム(LiTaO)やニオブ酸リチウム(LiNbO)などの圧電単結晶、あるいは圧電セラミックスからなる圧電性基板上に、たとえばアルミニウム、銅、銀、金、チタン、タングステン、白金、クロム、ニッケル、モリブデンの少なくとも一種からなる単体金属、またはこれらを主成分とする合金などの電極材を用いて形成された一対の櫛歯状電極(IDT:Inter Digital Transducer)が配置された構成を有している。なお、支持基板上に、圧電膜が積層されている圧電性基板を用いてもよい。
【0003】
弾性表面波フィルタにおいて、近年、フィルタ本体の小型化とともに、駆動周波数や通過帯域の高周波化、広帯域化、および高出力化が望まれている。高周波化に対応するためには、IDT電極の電極指ピッチおよび電極線幅を微細化することが必要となる。一方、高出力化を行なうには、出力信号を従来よりも高電力にすることが必要となる。
【0004】
IDT電極の微細化および高電力化が進められると、高い電力と圧電効果による電気的および機械的なストレスが共振子に発生し、弾性表面波共振子の特性劣化、あるいは電極指の破壊などが生じやすくなる。
【0005】
このような課題を解決することを目的として、特開2001−156588号公報(特許文献1)は、ラダー型の弾性表面波フィルタにおいて、相対的に高い電力が印加される、信号入力端子に最も近い直列腕共振子について、複数の共振子を直列接続させた構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−156588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2001−156588号公報(特許文献1)のような構成とすることによって、個々のIDT電極に印加される電力を分散させることができるため、耐電力性を向上させることが可能となる。
【0008】
一方で、直列分割を行なった共振子について、分割前と同等のインピーダンスを得るためには、個々のIDT電極の静電容量を分割段数に比例した値とすることが必要となる。たとえば、2段の分割であれば各共振子の容量を2倍とし、3段の分割であれば各共振子の容量を3倍とする必要がある。
【0009】
また、IDT電極の面積は、個々のIDT電極の静電容量を足し合わせた総容量に比例して増加する。そのため、圧電性基板上におけるIDT電極の面積は、分割段数の二乗に比例して大きくなってしまう。たとえば、2段分割の場合にはIDT電極の面積は4倍、3段分割の場合にはIDT電極の面積は9倍となり、フィルタの小型化の観点からは不利になる。すなわち、共振子の直列分割については、耐電力性の向上とサイズの小型化とがトレードオフの関係になり得る。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、弾性表面波装置において、共振子サイズの過度な増大を抑制しつつ、耐電力性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による弾性表面波装置は、圧電性基板と圧電性基板上に形成されたIDT電極とを有する弾性表面波共振子により各々が形成され、並列接続された少なくとも第1の共振子群と第2の共振子群とを含む。第1の共振子群は、少なくとも1つの弾性表面波共振子を含む。第2の共振子群は、直列接続された、第1の共振子群よりも多くの数の弾性表面波共振子を含む。第1の共振子群に含まれる弾性表面波共振子の共振周波数は、第2の共振子群に含まれる弾性表面波共振子の共振周波数よりも高く設定される。
【0012】
好ましくは、各弾性表面波共振子は反射器を含む。圧電性基板上において、第1の共振子群に含まれる弾性表面波共振子の反射器の一部は、第2の共振子群に含まれる弾性表面波共振子の反射器と共通化されている。
【0013】
好ましくは、第1の共振子群の合成容量と、第2の共振子群の合成容量とは等しい。
好ましくは、第1の共振子群の合成容量と、第2の共振子群の合成容量とは異なる。
【0014】
好ましくは、弾性表面波装置は、第1および第2の共振子群に並列接続された第3の共振子群をさらに含む。第3の共振子群は、直列接続された、第1の共振子群よりも多くの数の弾性表面波共振子を含む。第1の共振子群に含まれる弾性表面波共振子の共振周波数は、第3の共振子群に含まれる弾性表面波共振子の共振周波数よりも高く設定される。
【0015】
本発明による弾性表面波フィルタは、入力端子と出力端子の間に設けられる直列腕に配置された直列腕共振部と、直列腕と接地電位との間に接続された並列腕に設けられた並列腕共振部とを備えるラダー型の構成を有する。直列腕共振部は、上記のいずれかの弾性表面波装置により形成されている。
【0016】
好ましくは、弾性表面波フィルタは、直列腕に配置される他の直列腕共振部をさらに備える。直列腕共振部は、直列腕において、他の直列腕共振部よりも入力端子に近い位置に配置される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐電力性を向上させるとともに、共振子サイズの増大を抑制することができる弾性表面波装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施の形態に従う弾性表面波フィルタを示す回路図である。
図2】比較例の弾性表面波フィルタを示す回路図である。
図3】比較例における直列腕共振部を示す図である。
図4】本実施の形態に従う直列腕共振部を示す図である。
図5】弾性表面波共振子の共振周波数と消費電力との関係を説明するための図である。
図6】本実施の形態に従う直列腕共振部の第1の変形例を示す図である。
図7】他の比較例における直列腕共振部を示す図である。
図8】本実施の形態に従う直列腕共振部の第2の変形例を示す図である。
図9】圧電性基板上の弾性表面波共振子の配置を説明するための図である。
図10】圧電性基板上の弾性表面波共振子の配置の他の例を説明するための図である。
図11】本実施の形態に従う直列腕共振部の第3の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0020】
図1は、本実施の形態に従う弾性表面波フィルタ100の一例を示す回路図である。図1を参照して、弾性表面波フィルタ100は、入力端子50と出力端子51との間に設けられる直列腕に直列に接続された直列腕共振部10〜13と、直列腕と接地電位との間に接続された並列腕に設けられた並列腕共振部20〜23とを備えるラダー型の構成を有する。各共振部は、1つ以上の弾性表面波装置により形成されており、各弾性表面波装置は、1つ以上の弾性表面波共振子により構成された共振子群を含む。弾性表面波共振子は、図9で後述するように、圧電性基板と、圧電性基板上に形成されたIDT電極とを有している。
【0021】
並列腕共振部20は、一方端が入力端子50に接続され、他方端がインダクタ30を介して接地電位に接続される。並列腕共振部21は、一方端が直列腕共振部10と直列腕共振部11との間の接続ノードに接続され、他方端がインダクタ31を介して接地電位に接続される。並列腕共振部22は、一方端が直列腕共振部11と直列腕共振部12との間の接続ノードに接続され、他方端がインダクタ31を介して接地電位に接続される。並列腕共振部23は、一方端が直列腕共振部12と直列腕共振部13との間の接続ノードに接続され、他方端がインダクタ31を介して接地電位に接続される。
【0022】
なお、直列腕共振部の数、並列腕共振部の数、および各共振子群に含まれる弾性表面波共振子の数は一例であり、フィルタの特性に応じて適宜設計される。
【0023】
本実施の形態においては、入力端子50に最も近い直列腕共振部10については、入力端子50と直列腕共振部11との間に並列に接続される第1の共振子群10−1と、第2の共振子群10−2とを含む。図1の例では、第1の共振子群10−1は直列接続された2つの弾性表面波共振子を含んで構成され、第2の共振子群10−2は直列接続された3つの弾性表面波共振子を含んで構成される。
【0024】
図2は、比較例の弾性表面波フィルタ100Aを示す回路図である。弾性表面波フィルタ100Aにおいては、図1における直列腕共振部10が、直列腕共振部10Aに置き換えられた構成となっており、その他の構成は図1と同様である。直列腕共振部10Aは、3つの弾性表面波共振子が直列に接続された構成を有している。
【0025】
図1,2に示すようなラダー型の弾性表面波フィルタは、たとえば携帯電話のような通信装置に用いられる場合がある。近年では、長い受信距離を確保するために送信信号の高出力化が求められており、それに伴って弾性表面波フィルタの耐電力性の向上が必要とされている。
【0026】
ラダー型の弾性表面波フィルタでは、特に、入力端子50から入力された信号が最初に印加される直列腕共振部10,10Aに印加される電力が大きくなる傾向にある。そのため、図2の比較例の直列腕共振部10Aのように、複数の弾性表面波共振子を直列に接続した直列分割構成とすることによって、個々の共振子(IDT電極)で消費される電力を低減し、耐電力性を向上させることが可能である。
【0027】
しかしながら、共振子を単純に直列分割した場合、同一インピーダンスを確保するためには、分割後の各共振子の静電容量(以下、単に「容量」とも称する。)は分割前の共振子の静電容量の分割数倍とすることが必要となる。たとえば、図3で示すように、分割前の共振子300の容量がCである場合、2分割後の合成容量をCとするためには、分割後の共振子310A,310Bの各容量を2Cとすることが必要となる。
【0028】
一般的に、圧電性基板上の共振子の面積は共振子の容量に比例するため、2つの共振子310A,310Bに分割すると、2倍の容量の共振子が2つとなるため、結果的に分割前の4倍の面積を共振子が占めることになる。そうすると、圧電性基板上のスペースが必要となるため、フィルタ本体の小型化の観点からは不利になる。
【0029】
本実施の形態においては、図1に示すように、直列腕共振部10は、並列接続された2つの共振子群10−1,10−2を有し、さらに各共振子群の少なくとも1つにおいて直列分割がなされる。このように並列分割を行なうことによって、各共振子群に必要とされる合成容量を低減することで、圧電性基板上で共振子に必要とされる面積の増加を抑制するとともに、各共振子群の直列分割により、各弾性表面波共振子で消費される電力を低減することができる。
【0030】
このとき、並列分割された各共振子群について同じ数の直列分割を行なうと、結果的には、並列分割しない場合と総容量が同じとなるため、面積の低減に寄与しなくなる。そのため、本実施の形態においては、並列分割した共振子群のうち少なくとも1つの共振子群(「第1の共振子群」とも称する。)については、他の共振子群(「第2の共振子群」とも称する。)よりも直列分割数を少なくすることで、圧電性基板上における面積の増大を抑制している。
【0031】
具体的には、図4に示すように、分割前の共振子300の容量がCである場合に、分割後の一方の共振子群(第1の共振子群)を容量C/2の1つの共振子320とし、他方の共振子群(第2の共振子群)を容量Cの2つの共振子330A,330Bの直列接続とする。この場合、各共振子群の合成容量はC/2となり、全体の合成容量はCとなるため、分割前とインピーダンスは変わらない。
【0032】
一方で、分割後の総容量は5C/2となるため、圧電性基板上における共振子の面積は分割前の2.5倍となる。このように、並列分割と直列分割を併用し、並列接続された共振子群の少なくとも1つの直列分割数を、他の共振子群の直列分割数よりも少なくすることで、分割前のインピーダンス(合成容量)を維持しつつ、図3のような直列分割のみの場合(4倍)に比べて、共振子に必要とされる圧電性基板上の面積を低減することができる。
【0033】
ただし、図4のように直列分割数を少なくした第1の共振子群については、印加される電力が小さくなる一方で、圧電性基板上の面積も小さくなってしまうため、当該共振部の耐電力性としては、少ない直列分割数の共振子群(第1の共振子群)に依存することになる。そこで、本実施の形態においては、直列分割数の少ない共振子群(第1の共振子群)に含まれる弾性表面波共振子の共振周波数を、直列分割数の多い共振子群(第2の共振子群)に含まれる弾性表面波共振子の共振周波数よりも高くなるように設定する。
【0034】
図5は、弾性表面波共振子の共振周波数と消費電力との関係を説明するための図である。図5においては、横軸に周波数が示され、縦軸に弾性表面波共振子の単位面積あたりの消費電力が示される。図5中において、曲線LN1は弾性表面波共振子の共振周波数を、たとえばf0とした場合の消費電力を示す曲線であり、曲線LN2は弾性表面波共振子の共振周波数をf0よりも高い共振周波数(f0+5MHz)に設定した場合の消費電力を示している。図5からわかるように、たとえば1910MHzの周波数の電力を弾性表面波共振子に投入した場合に、投入電力の周波数において、共振周波数を高くした場合の消費電力が、共振周波数が低い場合の消費電力よりも小さくなっている。
【0035】
このような特性から、直列分割数の少ない共振子群(第1の共振子群)に含まれる弾性表面波共振子の共振周波数を、直列分割数の多い共振子群(第2の共振子群)に含まれる弾性表面波共振子の共振周波数よりも高くすることによって、同じ面積の共振子でも消費電力を低減することができる。これにより、直列分割数の少ない共振子群(第1の共振子群)の耐電力性を向上させることができる。
【0036】
なお、弾性表面波共振子の共振周波数を高くするためには、IDT電極のデューティを小さくする(すなわち、線幅を小さくする)か、あるいは、電極指間隔(ピッチ)を狭くすることで実現することができる。
【0037】
(変形例1)
図6は、本実施の形態の第1の変形例を示す図である。上記の図4の例においては、並列分割した各共振子群の合成容量を等しく設定した例を示したが、並列分割した各共振子群の合成容量は必ずしも等しくなくてもよい。図6の変形例においては、分割後の一方の共振子群(共振子340)の容量がC/3に設定され、他方の共振子群(共振子350A,350B)の合成容量が2C/3に設定された例が示されている。
【0038】
この場合、全体の合成容量はCとなり、分割前とインピーダンスは変化しないが、総容量については9C/3(=3C)となるので、圧電性基板上における共振子の面積は分割前の3倍となる。上記の図4の等分割の場合と比べると、圧電性基板上の共振子面積は大きくなるが、分割しない場合(4倍)に比べると面積は小さくできる。等分割の場合よりも面積が大きくなるため、耐電力性に関しては等分割の場合に比べて向上する。
【0039】
このように、並列分割後の各共振子群の合成容量の比率を調整することによって、フィルタサイズと耐電力性のバランスを所望の値に調整することができる。
【0040】
(変形例2)
変形例2においては、直列分割の段数を3段にした場合の例について説明する。図7は、容量Cの共振子300を、3段の共振子360A,360B,360Cに直列分割をした比較例を示す図である。この場合、分割前と同じインピーダンスとするためには、各共振子360A,360B,360Cの容量を3Cとすることが必要となる。分割する直列段数を3段に増やすことで、2段分割の場合よりも分割後の各共振子における消費電力を低減できるので、耐電力性を向上できる。しかしながら、分割後の総容量は9Cとなるため、圧電性基板上で必要となる面積が9倍となってしまう。
【0041】
図8は、並列数を2とし、一方の共振子群を2段に直列分割した共振子370A,370Bで構成し、他方の共振子群を3段に直列分割した共振子380A,380B,380Cで構成した例を示す図である。
【0042】
図8においては、並列分割後の各共振子群の合成容量は、それぞれC/2に等分割されている。そのため、共振子370A,370Bの各々の容量はCに設定され、共振子380A,380B,380Cの各々の容量は2C/3に設定される。これによって、総容量は13C/2となるので、圧電性基板上の弾性表面波共振子の面積は分割前の6.5倍となる。そのため、図7の直列分割の場合(9倍)と比べて、面積を低減することができる。
【0043】
なお、この場合においても、図5で説明したように、直列分割段数の小さい共振子370A,370Bの共振周波数を、共振子380A,380B,380Cよりも大きく設定し、共振子370A,370Bの消費電力を低減することによって耐電力性を確保する。
【0044】
ここで、この変形例2の場合の、圧電性基板上の弾性表面波共振子の配置について図9を用いて説明する。
【0045】
図9の左図(a)は、図7で説明したような、弾性表面波共振子を3段に直列分割した場合の弾性表面波共振子の配置図である。また、図9の右図(b)は、図8で説明したような、2段に直列分割した共振子群210と3段に直列分割した共振子群215とに並列分割した場合の弾性表面波共振子の配置図である。
【0046】
左図(a)の直列腕共振部10Aにおいては、圧電性基板200A上に3つのIDT電極が直列に接続された構成となっており、各IDT電極の両端には、反射器220が設けられている。左図(a)においては、各IDT電極による容量は3Cである。
【0047】
これを、右図(b)のように並列分割した場合には、2段の共振子群210の各IDT電極による容量はCであるので、IDT電極全体の幅が左図(a)の場合の1/3となる。また、3段の共振子群215の各IDT電極による容量は3C/2であるので、IDT電極全体の幅が左図(a)の場合の1/2となる。なお、各IDT電極の両端には反射器220が必要となるため、左図(a)の場合に対する右図(b)の場合の面積比は、単純に(6.5)/9とはならず、図9の場合においては、並列分割後の右図(b)の場合の面積は、直列分割のみの左図(a)の場合の面積のおよそ80%となる。
【0048】
図10は、図9よりもさらに面積を低減させるための弾性表面波共振子の配置を示す図である。図10においては、圧電性基板200B上において、2段の共振子群210の反射器の一部を、3段の共振子群215の反射器の一部と共用させることによって、全体の面積を低減している。図10の場合においては、右図(b)の場合の面積は、左図(a)の場合の面積のおよそ76%となる。
【0049】
このように、分割数を増やすとIDT電極自体の面積は小さくなるが、一方で反射器の数が増えるために、その反射器のための面積が必要となる。したがって、分割数を増やし過ぎると、かえって圧電性基板上に必要となる面積が増加する可能性があるので注意が必要である。
【0050】
(変形例3)
上記の実施の形態においては、いずれも並列分割数を2とした場合について示したが、並列分割数は3以上とすることも可能である。図11は、本実施の形態に従う直列腕共振子の第3の変形例を示す図である。
【0051】
図11の直列腕共振部においては、1つの共振子390を含む共振子群(第1の共振子群)と、2段に直列接続された共振子392A,392Bを含む共振子群(第2の共振子群)と、2段に直列接続された共振子394A,394Bを含む共振子群(第3の共振子群)とが並列に接続されている。
【0052】
図11の例においては、各共振子群の合成容量はC/3に等分されている。第1の共振子群に含まれる共振子390の容量はC/3であり、第2の共振子群に含まれる共振子392A,392Bの各々の容量は2C/3であり、第3の共振子群に含まれる共振子394A,394Bの各々の容量は2C/3である。そのため、全体の総容量は3倍となり、圧電性基板上の弾性表面波共振子の面積は分割前の3倍となる。
【0053】
そして、図11の例においても、直列分割数の小さい共振子390の共振周波数を、第2および第3の共振子群に含まれる共振子392A,392B,394A,394Bに比べて高く設定する。これにより、直列分割数の小さい共振子390の耐電力性を確保する。
【0054】
なお、図11においては、第2の共振子群と第3の共振子群とを同じ直列段数および同じ容量としたが、第2の共振子群と第3の共振子群とで共振子の構成を異なるようにしてもよい。
【0055】
このように、並列分割数および直列分割数と、共振子の共振周波数とを適宜調整することによって、共振子サイズおよび耐電力性についての所望の仕様を実現することが可能となる。
【0056】
なお、上記の実施の形態および変形例については、矛盾が生じない条件のもとで適宜組み合わせてもよい。
【0057】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
10,10A,11,12,13 直列腕共振部、10−1,10−2,210,215 共振子群、20,21,22,23 並列腕共振部、30,31 インダクタ、50 入力端子、51 出力端子、100,100A 弾性表面波フィルタ、200A,200B 圧電性基板、220 反射器、300,310A,310B,320,330A,330B,340,350A,350B,360A,360B,360C,370A,370B,380A,380B,380C,390,392A,392B,394A,394B 共振子。
図1
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図11