(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1分子中に複数の活性水素基を有する1種以上の活性水素基含有化合物(HX)と1種以上のポリイソシアネート(N)との反応生成物であり、(メタ)アクリロイル基を含まない水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)と、
多官能イソシアネート化合物(I)とを含む再剥離型の粘着剤であって、
さらに、1分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基と活性水素基とを含む1種以上のラジカル重合性単量体(MX)を含み、
水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)100質量部に対する1種以上のラジカル重合性単量体(MX)の量は、10〜50質量部であり、
1種以上のラジカル重合性単量体(MX)は、1分子中に5つ以上の(メタ)アクリロイル基を含む1種以上のラジカル重合性単量体を含み、
前記粘着剤の硬化物からなる粘着層は、
活性エネルギー線の照射前の、JIS Z0237に準拠し、引張試験機を用いて、剥離速度0.3m/分、剥離角度180°の条件で測定される粘着力が8〜26gf/25mmであり、
活性エネルギー線の照射前に対する照射後の、JIS Z0237に準拠し、引張試験機を用いて、剥離速度0.3m/分、剥離角度180°の条件で測定される粘着力の低下率が2/3以下であり、
活性エネルギー線の照射後の、JIS Z0237に準拠し、引張試験機を用いて、剥離速度0.3m/分、剥離角度180°の条件で測定される粘着力が6gf/25mm以下である、粘着剤。
前記粘着層は、活性エネルギー線の照射後の、JIS Z0237に準拠し、引張試験機を用いて、剥離速度0.3m/分、剥離角度180°の条件で測定される粘着力が5gf/25mm以下である、請求項1または2に記載の粘着剤。
前記粘着層は、活性エネルギー線の照射後の、JIS Z0237に準拠し、引張試験機を用いて、剥離速度0.3m/分、剥離角度180°の条件で測定される粘着力が5gf/25mm未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着剤。
水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)100質量部に対する多官能イソシアネート化合物(I)の量は、5〜15質量部である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘着剤。
さらに、酸化防止剤、耐加水分解剤、紫外線吸収剤、および光安定剤からなる群より選ばれた1種以上の変質防止剤を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の粘着剤。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[粘着剤]
本発明の粘着剤は、
1分子中に複数の活性水素基を有する1種以上の活性水素基含有化合物(HX)と1種以上のポリイソシアネート(N)との反応生成物であり、(メタ)アクリロイル基を含まない水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)と、
多官能イソシアネート化合物(I)と、
1分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を含むラジカル重合性単量体(MX)とを含む再剥離型のウレタン系粘着剤である。
本発明の粘着シートは、基材シートと、上記の本発明の粘着剤の硬化物からなる粘着層とを含むウレタン系粘着シートである。
本発明の粘着剤の硬化物からなる粘着層は、活性エネルギー線の照射前に対して照射後に、粘着力が低下することができる。
【0019】
(水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH))
水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)は、1種以上の活性水素基含有化合物(HX)と1種以上のポリイソシアネート(N)とを共重合反応させて得られる反応生成物である。共重合反応は必要に応じて、1種以上の触媒存在下で行うことができる。共重合反応には必要に応じて、1種以上の溶剤を用いることができる。水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)は、(メタ)アクリロイル基を含まない。
【0020】
<活性水素基含有化合物(HX)>
活性水素基含有化合物(HX)は、1分子中に複数の活性水素基を有する化合物である。
活性水素基としては、水酸基(ヒドロキシ基)、メルカプト基、およびアミノ基(本明細書において、特に明記しない限り、アミノ基はイミノ基を含む)等が挙げられる。活性水素基含有化合物(HX)としては、1分子中に複数の水酸基を有するポリオール、1分子中に複数のアミノ基を有するポリアミン、1分子中にアミノ基と水酸基を有するアミノアルコール、および1分子中に複数のメルカプト基を有するポリチオール等が挙げられる。これら活性水素基含有化合物(HX)は、非重合体でもよいし、重合体でもよい。これらは、1種または2種以上用いることができる。
中でも、ポリオールが好ましい。ポリアミンおよびポリチオールはポリイソシアネートとの反応性が高くポットライフが短いため、これらを用いる場合にはポリオールと併用することが好ましい。
【0021】
活性水素基含有化合物(HX)として用いることができるポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、およびひまし油系ポリオール等が挙げられる。中でも、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびこれらの組合せが好ましい。1種以上の活性水素基含有化合物(HX)は、ポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。
【0022】
活性水素基含有化合物(HX)として用いることができるポリエステルポリオールとしては、公知のものを用いることができる。ポリエステルポリオールとしては例えば、1種以上のポリオール成分と1種以上の酸成分とのエステル化反応によって得られる化合物(エステル化物)が挙げられる。
【0023】
原料のポリオール成分としては、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,8−デカンジオール、オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0024】
原料の酸成分としては、コハク酸、メチルコハク酸、アジピン酸、ピメリック酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、ダイマー酸、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−エチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、およびこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0025】
活性水素基含有化合物(HX)として用いることができるポリエーテルポリオールとしては、公知のものを用いることができる。ポリエーテルポリオールとしては、1分子中に複数の活性水素基を有する活性水素基含有化合物を開始剤として用い、1種以上のオキシラン化合物を付加重合させて得られる化合物(付加重合物)が挙げられる。
【0026】
開始剤としては、水酸基含有化合物およびアミン類等が挙げられる。具体的には、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、N−アミノエチルエタノールアミン、イソホロンジアミン、およびキシリレンジアミン等の2官能開始剤;グリセリン、トリメチロールプロパン、およびトリエタノールアミン等の3官能開始剤;ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、および芳香族ジアミン等の4官能開始剤等が挙げられる。
オキシラン化合物としては、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、およびブチレンオキシド(BO)等のアルキレンオキシド(AO);テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。
【0027】
ポリエーテルポリオールとしては、活性水素含有化合物のアルキレンオキシド付加物(ポリオキシアルキレンポリオールとも言う)が好ましい。中でも、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、末端にエチレンオキサイド(EO)を付加させたPPG(PPG−EO)、およびポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール等の2官能ポリエーテルポリオール;グリセリンのアルキレンオキシド付加物等の3官能ポリエーテルポリオール等が好ましい。
【0028】
活性水素基含有化合物(HX)として用いることができるポリアミンとしては、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルアミン、ノルボルナン骨格のジメチレンアミン、メタキシリレンジアミン(MXDA)、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、およびペンタエチレンヘキサミン等の脂肪族ポリアミン;3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、2,4−ジアミノフェノール、2,5−ジアミノフェノール、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,3−トリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,5−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、3,4−トリレンジアミン、およびジエチルトルエンジアミン等の芳香族ポリアミン;等が挙げられる。
【0029】
活性水素基含有化合物(HX)として用いることができるアミノアルコールとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン、および2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール等の水酸基を有するモノアミン;N−(2−ヒドロキシプロピル)エタノールアミン等の水酸基を有するジアミン;等が挙げられる。
【0030】
活性水素基含有化合物(HX)として用いることができるポリチオールとしては、メタンジチオール、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,9−ノナンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパジチオール、トルエン−3,4−ジチオール、3,6−ジクロロ−1,2−ベンゼンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、1,2−ベンゼンジメタンチオール、1,3−ベンゼンジメタンチオール、1,4−ベンゼンジメタンチオール、4,4’−チオビスベンゼンチオール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、およびチオール基末端ポリマー(ポリサルファイドポリマー等)等が挙げられる。
【0031】
1種以上の活性水素基含有化合物(HX)は、2官能の活性水素基含有化合物および/または3官能以上の活性水素基含有化合物を含むことができる。一般的に、2官能の活性水素基含有化合物は2次元架橋性を有し、粘着層に適度な柔軟性を付与することができる。3官能以上の活性水素基含有化合物は3次元架橋性を有し、粘着層に適度な硬さを付与することができる。各活性水素基含有化合物(HX)の官能基数(活性水素基の数)の選択により、ウレタン系粘着剤の粘着力、凝集力、および再剥離性等の特性を調整することができる。用途等に応じて、粘着力、凝集力、および再剥離性等の特性が好ましい範囲となるように、個々の材料の官能基数を選択することができる。
粘着力と再剥離性とを両立させやすいことから、1種以上の活性水素基含有化合物(HX)は、2官能の活性水素基含有化合物と3官能以上の活性水素基含有化合物とを含むことが好ましい。
【0032】
活性水素基含有化合物(HX)の数平均分子量(Mn)は特に制限されない。粘着層の粘着力および濡れ性が好適となることから、活性水素基含有化合物(HX)のMnは、好ましくは50〜20000、より好ましくは100〜7000、特に好ましくは400〜5000である。
【0033】
<ポリイソシアネート(N)>
ポリイソシアネート(N)としては公知のものを使用でき、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、および脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0034】
芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、および4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、および1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0035】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0036】
脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、および1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0037】
その他、ポリイソシアネートとしては、上記ポリイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ビウレット体、アロファネート体、および3量体(この3量体はイソシアヌレート環を含む。)等が挙げられる。
【0038】
水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)の好ましい原料配合比は、以下の通りである。
複数種の活性水素基含有化合物(HX)の有する活性水素基(H)の総モル数に対するポリイソシアネート(N)の有するイソシアネート基(NCO)のモル数の比(NCO/H比)が0.20〜0.95、より好ましくは0.40〜0.80となるように、原料配合比を決定することが好ましい。NCO/H比が1に近くなる程、水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)の合成時にゲル化しやすくなる傾向がある。NCO/H比が0.95以下であれば、水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)合成時のゲル化を効果的に抑制することができる。
【0039】
<触媒>
水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)の重合には必要に応じて、1種以上の触媒を用いることができる。触媒としては公知のものを使用でき、3級アミン系化合物および有機金属系化合物等が挙げられる。
3級アミン系化合物としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、および1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7(DBU)等が挙げられる。
有機金属系化合物としては、錫系化合物および非錫系化合物等が挙げられる。
錫系化合物としては、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキシド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキシド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、および2−エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
非錫系化合物としては、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、およびブトキシチタニウムトリクロライド等のチタン系;オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、およびナフテン酸鉛等の鉛系;2−エチルヘキサン酸鉄および鉄アセチルアセトネート等の鉄系;安息香酸コバルトおよび2−エチルヘキサン酸コバルト等のコバルト系;ナフテン酸亜鉛および2−エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛系;ナフテン酸ジルコニウム等のジルコニウム系が挙げられる。
触媒の種類および添加量は、反応が良好に進む範囲で適宜設計することができる。
【0040】
反応性の異なる複数種の活性水素基含有化合物(HX)を併用する場合、これらの反応性の相違により、単一触媒の系では重合安定性の不良または反応溶液の白濁が生じやすくなる恐れがある。この場合、2種以上の触媒を用いることにより、反応(例えば反応速度等)を制御しやすく、上記問題を解決することができる。反応性の異なる複数種の活性水素基含有化合物(HX)を併用する系では、2種以上の触媒を用いることが好ましい。2種以上の触媒の組合せは特に制限されず、3級アミン/有機金属系、錫系/非錫系、および錫系/錫系等が挙げられる。好ましくは錫系/錫系、より好ましくはジオクチル錫ジラウレートと2−エチルヘキサン酸錫である。
2−エチルヘキサン酸錫とジオクチル錫ジラウレートとの質量比(2−エチルヘキサン酸錫/ジオクチル錫ジラウレート)は特に制限されず、好ましくは0超1未満、より好ましくは0.2〜0.8である。当該質量比が1未満であれば、触媒活性のバランスが良く、反応溶液のゲル化および白濁を効果的に抑制し、重合安定性がより向上する。
【0041】
1種以上の触媒の使用量は特に制限されず、1種以上の活性水素基含有化合物(HX)と1種以上のポリイソシアネート(N)との合計量に対して、好ましくは0.01〜1.0質量%である。
【0042】
<溶剤>
水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)の重合には必要に応じて、1種以上の溶剤を用いることができる。溶剤としては公知のものを使用でき、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、およびアセトン等が挙げられる。水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)の溶解性および溶剤の沸点等の点から、酢酸エチルおよびトルエン等が特に好ましい。
【0043】
<水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)の重合方法>
水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)の重合方法としては特に制限されず、塊状重合法および溶液重合法等の公知重合方法を適用することができる。
水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)の重合手順としては、
手順1)1種以上の活性水素基含有化合物(HX)、1種以上のポリイソシアネート(N)、必要に応じて1種以上の触媒、および必要に応じて1種以上の溶剤を一括してフラスコに仕込む手順;
手順2)1種以上の活性水素基含有化合物(HX)、必要に応じて1種以上の触媒、および必要に応じて1種以上の溶剤をフラスコに仕込み、これに1種以上のポリイソシアネート(N)を滴下添加する手順等が挙げられる。
活性水素基含有化合物(HX)および/またはポリイソシアネート(N)を複数種用いる場合には、複数段階で反応を行ってもよい。
【0044】
触媒を使用する場合の反応温度は、好ましくは100℃未満、より好ましくは50〜95℃、特に好ましくは60〜85℃である。反応温度が100℃以上では、反応速度および重合安定性等の制御が困難となり、所望の分子量を有する水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)の生成が困難となる恐れがある。触媒を使用しない場合の反応温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上である。
【0045】
(多官能イソシアネート化合物(I))
多官能イソシアネート化合物(I)としては公知のものを使用でき、水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)の原料であるポリイソシアネート(N)として例示した化合物(具体的には、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、および、これらのトリメチロールプロパンアダクト体/ビウレット体/アロファネート体/3量体)を用いることができる。
【0046】
(ラジカル重合性単量体(MX))
本発明の粘着剤は、1分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を含むラジカル重合性単量体(MX)を含む。本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基およびメタクリロイル基を意味する。
ラジカル重合性単量体(MX)は、必要に応じてラジカル重合開始剤(R)の存在下で、紫外線および電子線等の活性エネルギー線の照射によって重合硬化する材料である。ラジカル重合性単量体(MX)は、紫外線照射により硬化する紫外線硬化性であることが好ましい。
【0047】
ラジカル重合性単量体(MX)を含む本発明の粘着剤を用いた粘着シートでは、被着体に貼着されて使用された後、活性エネルギー線の照射によるラジカル重合性単量体(MX)の重合により粘着層が硬化して粘着層の粘着力が低下し、被着体から粘着シートを容易に剥離することができる。
本発明では、3つ以上の(メタ)アクリロイル基を含む3官能以上のラジカル重合性単量体(MX)を用いるため、ラジカル重合性単量体(MX)の重合時に架橋反応が進み、粘着層の硬化とそれによる粘着力の低下を効果的に起こすことができる。粘着層の硬化とそれによる粘着力の低下をより効果的に起こすことができるから、ラジカル重合性単量体(MX)に含まれる(メタ)アクリロイル基の数は、好ましくは4つ以上、より好ましくは5つ以上である。粘着層の硬化とそれによる粘着力の低下をより効果的に起こすことができるから、(メタ)アクリロイル基を5つ以上含むラジカル重合性
単量体の使用量は、ラジカル重合性単量体(MX)の全量に対して、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、特に好ましくは60質量%以上、最も好ましくは80質量%以上である。
【0048】
1分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を含むラジカル重合性単量体(MX)としては特に制限されず、公知のものを用いることができる。具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ) アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、および1,2,3−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート等の、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物;ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリルポリ(メタ)アクリレート、ポリアルキッドポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシポリ(メタ)アクリレート、ポリスピロアセタールポリ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンポリ(メタ)アクリレート、ポリチオールポリエンポリ(メタ)アクリレート、およびポリシリコンポリ(メタ)アクリレート等の多官能のポリ(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。これらは1種または2種以上用いることができる。
【0049】
ラジカル重合性単量体(MX)は、水酸基およびアミノ等の活性水素基を含むことが好ましい。この場合、ラジカル重合性単量体(MX)の重合時に、一部のラジカル重合性単量体(MX)は多官能イソシアネート化合物(I)を介してウレタン樹脂に結合することができ、粘着層の硬化とそれによる粘着力の低下をより効果的に起こすことができる。
ラジカル重合性単量体(MX)は、水酸基を含むことが特に好ましい。3つ以上の(メタ)アクリロイル基と水酸基を含むラジカル重合性単量体(MX)としては、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、およびジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上用いることができる。
【0050】
[背景技術]の項で挙げた特許文献2では、ウレタン樹脂(A)と光重合性単量体である(メタ)アクリル化合物(C)がいずれも(メタ)アクリロイル基を有することで、紫外線照射後の粘着層の架橋密度を効果的に高めている(段落0014)。しかしながら、ウレタン樹脂(A)と光重合性単量体である(メタ)アクリル化合物(C)がいずれも(メタ)アクリロイル基を有する場合、反応性が高くなりすぎて、蛍光灯の光および太陽光等の環境光に含まれる少量の紫外線の照射により容易に反応が開始および進行し、粘着力が低下してしまう恐れがある。被着体の真空吸着搬送時等に、環境光に含まれる少量の紫外線の照射で粘着層の粘着力が低下することは好ましくない。
本発明では、水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)が(メタ)アクリロイル基を含まないので、環境光に含まれる少量の紫外線の照射による架橋反応を抑制することができ、被着体の真空吸着搬送時等に、被着体が粘着シートから剥がれることを抑制することができる。
【0051】
(ラジカル重合開始剤(R))
本発明の粘着剤は必要に応じて、活性エネルギー線の照射を受けたときにラジカル重合性単量体(MX)の重合を開始させるラジカル重合開始剤(R)を含むことができる。ラジカル重合性単量体(MX)が紫外線硬化性である場合、本発明の粘着剤はラジカル重合開始剤(R)(この場合のラジカル重合開始剤(R)は光重合開始剤(RL)とも言う。)を含むことが好ましい。
【0052】
ラジカル重合開始剤(R)としては特に制限されず、公知のものを用いることができる。例えば、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、および2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等のアセトフェノン系重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系重合開始剤;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−メチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、および4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系重合開始剤;チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、および2,4−ジイソプロピルオキサンソン等のチオキサンソン系重合開始剤;2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、および2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系重合開始剤;アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤;ボレート系重合開始剤;カルバゾール系重合開始剤;イミダゾール系重合開始剤等が挙げられる。これらは1種または2種以上用いることができる。
【0053】
(可塑剤(P))
粘着層の粘着力の低下および濡れ性向上の観点から、本発明の粘着剤はさらに必要に応じて、1種以上の可塑剤(P)を含むことができる。可塑剤(P)としては特に制限されず、他の成分との相溶性等の観点から、有機酸エステルが好ましい。
【0054】
一塩基酸または多塩基酸とアルコールとのエステルとしては、例えば、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸オクチルドデシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジイソステアリル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジイソセチル、アセチルクエン酸トリブチル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシル、トリメリット酸トリオレイル、およびトリメリット酸トリイソセチル等が挙げられる。
【0055】
その他の酸とアルコールとのエステルとしては、例えば、ミリストレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソパルミチン酸、およびイソステアリン酸等の不飽和脂肪酸または分岐酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびソルビタン等のアルコールとのエステルが挙げられる。
【0056】
一塩基酸または多塩基酸とポリアルキレングリコールとのエステルとしては、例えば、ジヘキシル酸ポリエチレングリコール、ジ−2−エチルヘキシル酸ポリエチレングリコール、ジラウリル酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、およびアジピン酸ジポリエチレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。
【0057】
濡れ性向上等の観点から、有機酸エステルの分子量(式量またはMn)は、好ましくは250〜1,000、より好ましくは400〜900、特に好ましくは500〜850である。分子量が250以上であれば粘着層の耐熱性が良好となり、分子量が1,000以下であれば粘着剤の濡れ性が良好となる。
【0058】
(溶剤)
本発明の粘着剤は必要に応じて、1種以上の溶剤を含むことができる。溶剤としては公知のものを使用でき、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、およびアセトン等が挙げられる。水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)の溶解性および溶剤の沸点等の観点から、酢酸エチルおよびトルエン等が特に好ましい。
【0059】
(変質防止剤)
本発明の粘着剤は必要に応じて、1種以上の変質防止剤を含むことができる。これにより、粘着層の長期使用による各種特性の低下を抑制することができる。変質防止剤としては、耐加水分解剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、および光安定剤等が挙げられる。
【0060】
<耐加水分解剤>
(湿)熱環境下等において粘着層に加水分解反応が生じてカルボキシ基が生成した場合、このカルボキシ基を封鎖するために、耐加水分解剤を用いることができる。耐加水分解剤としては、カルボジイミド系、オキサゾリン系、およびエポキシ系等が挙げられる。中でも、加水分解抑制効果の観点から、カルボジイミド系が好ましい。
【0061】
カルボジイミド系加水分解抑制剤は、1分子中に1つ以上のカルボジイミド基を有する化合物である。
モノカルボジイミド化合物としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、およびナフチルカルボジイミド等が挙げられる。
ポリカルボジイミド化合物は、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させて生成することができる。ここで、ジイソシアネートとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1−メトキシフェニル−2,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、およびテトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。カルボジイミド化触媒としては、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、およびこれらの3−ホスホレン異性体等のホスホレンオキシド等が挙げられる。
【0062】
オキサゾリン系加水分解抑制剤としては、例えば、2,2’−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4 −メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、および2,2’−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)等が挙げられる。
【0063】
エポキシ系加水分解剤としては、例えば、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、およびポリアルキレングリコール等の脂肪族ジオールのジグリシジルエーテル;ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセロール、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、グリセロール、およびトリメチロールプロパン等の脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル;シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ポリオールのポリグリシジルエーテル;テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、アジピン酸、およびセバシン酸等の脂肪族または芳香族の多価カルボン酸のジグリシジルエステルまたはポリグリシジルエステル;レゾルシノール、ビス−(p−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス−(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス−(p−ヒドロキシフェニル)メタン、および1,1,2,2−テトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタン等の多価フェノールのジグリシジルエーテルまたはポリグリシジルエーテル;N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、およびN,N,N',N'−テトラグリシジル−ビス−(p−アミノフェニル)メタン等のアミンのN−グリシジル誘導体;アミノフェノールのトリグリシジル誘導体;トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、およびトリグリシジルイソシアヌレート;オルソクレゾール型エポキシ樹脂およびフェノールノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0064】
耐加水分解剤の添加量は特に制限されず、水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.2〜4.5質量部、特に好ましくは0.5〜3質量部である。
【0065】
<酸化防止剤>
酸化防止剤としては、ラジカル捕捉剤および過酸化物分解剤等が挙げられる。ラジカル捕捉剤としては、フェノール系化合物およびアミン系化合物等が挙げられる。過酸化物分解剤としては、硫黄系化合物およびリン系化合物等が挙げられる。
【0066】
フェノール系化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリン−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ベンゼンプロパン酸,3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−,C7−C9側鎖アルキルエステル、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、およびトコフェロール等が挙げられる。
【0067】
硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、およびジステアリル3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0068】
リン系化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジフォスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、および2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
【0069】
酸化防止剤を用いることで、水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)の熱劣化を防ぐことができる。
酸化防止剤の添加量は特に制限されず、水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部、特に好ましくは0.2〜2質量部である。
【0070】
酸化防止剤としては、安定性と酸化防止効果の観点から、ラジカル捕捉剤であるフェノール系化合物を1種以上用いること好ましく、ラジカル捕捉剤である1種以上フェノール系化合物と過酸化物分解剤である1種以上リン系化合物とを併用することがより好ましい。また、酸化防止剤として、ラジカル捕捉剤であるフェノール系化合物と過酸化物分解剤であるリン系化合物とを併用し、これら酸化防止剤と前述の耐加水分解剤とを併用することが特に好ましい。
【0071】
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物、およびトリアジン系化合物等が挙げられる。
紫外線吸収剤の添加量は、活性エネルギー線照射によるラジカル重合性単量体(MX)の重合の開始および進行が阻害されず、かつ、蛍光灯の光および太陽光等の環境光により容易にラジカル重合性単量体(MX)の反応が開始されない範囲内で、適宜設計することができる。ラジカル重合性単量体(MX)が紫外線硬化性である場合、紫外線吸収剤の添加量は、紫外線吸収剤の種類、および、粘着層に照射される紫外線の波長域と積算光量に応じて設計される。紫外線吸収剤の添加量は、水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)100質量部に対して、好ましくは0.01〜3質量部、より好ましくは0.1〜2.5質量部、特に好ましくは0.2〜2質量部である。
【0072】
<光安定剤>
光安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物およびヒンダードピペリジン系化合物等が挙げられる。光安定剤の添加量は特に制限されず、水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)100質量部に対して、好ましくは0.01〜2質量部、より好ましくは0.1〜1.5質量部、特に好ましくは0.2〜1質量部である。
【0073】
(帯電防止剤(AS))
本発明の粘着剤は必要に応じて、1種以上の帯電防止剤(AS)を含むことができる。帯電防止剤(AS)としては、無機塩、イオン性液体、イオン固体、および界面活性剤等が挙げられ、中でもイオン性液体およびイオン固体が好ましい。なお、「イオン性液体」は常温溶融塩ともいい、25℃で流動性がある塩である。
【0074】
無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、過塩素酸リチウム、塩化アンモニウム、塩素酸カリウム、塩化アルミニウム、塩化銅、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、およびチオシアン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0075】
イミダゾリウムイオンを含むイオン液体としては、例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1,3−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、および1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0076】
ピリジニウムイオンを含むイオン液体としては、例えば、1−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ヘキシルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−オクチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ヘキシル−4−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ヘキシル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロリン酸塩、1−オクチル−4−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−オクチル−4−メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−メチルピリジニウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、および1−メチルピリジニウムビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0077】
アンモニウムイオンを含むイオン液体としては、例えば、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリメチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、およびトリ−n−ブチルメチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホンイミド等が挙げられる。
【0078】
その他、ピロリジニウム塩、ホスホニウム塩、およびスルホニウム塩等の市販のイオン液体を適宜使用できる。
【0079】
イオン固体は、イオン液体同様、カチオンとアニオンの塩であるが、常圧下25℃において固体の性状を示す物質である。カチオンとしては例えば、アルカリ金属イオン、ホスホニウムイオン、ピリジニウムイオン、およびアンモニウムイオン等が好ましい。
【0080】
アルカリ金属イオンを含むイオン固体としては例えば、リチウムビスフルオロスルホニルイミド、リチウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、リチウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、リチウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、リチウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、ナトリウムビスフルオロスルホニルイミド、ナトリウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、ナトリウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、ナトリウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、ナトリウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、カリウムビスフルオロスルホニルイミド、カリウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、カリウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、カリウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、およびカリウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
【0081】
ホスホニウムイオンを含むイオン固体としては例えば、テトラブチルホスホニウムビスフルオロスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスフルオロスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビスフルオロスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、およびテトラオクチルホスホニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
【0082】
ピリジニウムイオンを含むイオン固体としては例えば、1−ヘキサデシル−4−メチルピリジニウムビスフルオロスルホニルイミド、1−ヘキサデシル−4−メチルピリジニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、1−ヘキサデシル−4−メチルピリジニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、1−ヘキサデシル−4−メチルピリジニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、および1−ヘキサデシル−4−メチルピリジニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
【0083】
アンモニウムイオンを含むイオン固体としては例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、トリブチルメチルビストリフルオロメチルスルホニルイミド、トリブチルメチルビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、トリブチルメチルビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、トリブチルメチルムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、オクチルトリブチルビストリフルオロメチルスルホニルイミド、オクチルトリブチルビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、オクチルトリブチルビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、オクチルトリブチルムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、テトラブチルビスフルオロスルホニルイミド、テトラブチルビストリフルオロメチルスルホニルイミド、テトラブチルビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、テトラブチルビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、およびテトラブチルムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
【0084】
その他、カチオンがピロリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、およびスルホニウムイオン等である公知のイオン固体を適宜使用できる。
【0085】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤が挙げられ、いずれのタイプも低分子界面活性剤と高分子界面活性剤とに分類される。
【0086】
非イオン性の低分子界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステル、および脂肪酸ジエタノールアミド等が挙げられる。
アニオン性の低分子界面活性剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、およびアルキルホスフェート等が挙げられる。
両性の低分子界面活性剤としては、アルキルベタインおよびアルキルイミダゾリウムベタイン等が挙げられる。
【0087】
非イオン性の高分子界面活性剤としては、ポリエーテルエステルアミド型、エチレンオキシド−エピクロルヒドリン型、およびポリエーテルエステル型等が挙げられる。
アニオン性の高分子界面活性剤としては、ポリスチレンスルホン酸型等が挙げられる。
両性の高分子界面活性剤としては、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、および高級アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0088】
帯電防止剤(AS)の添加量は、水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.03〜5質量部である。
【0089】
(レベリング剤)
本発明の粘着剤は必要に応じて、レベリング剤を含むことができる。レベリング剤を添加することで、粘着層のレベリング性を向上させることができる。レベリング剤としては、アクリル系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、およびシリコーン系レベリング剤等が挙げられる、粘着シート再剥離後の被着体汚染抑制の観点から、アクリル系レベリング剤等が好ましい。
【0090】
レベリング剤の添加量は特に制限されず、粘着シート再剥離後の被着体汚染抑制と粘着層のレベリング性向上の観点から、水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)100質量部に対して、好ましくは0.001〜2質量部、より好ましくは0.01〜1.5質量部、特に好ましくは0.1〜1質量部である。
【0091】
(他の任意成分)
本発明の粘着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、他の任意成分を含むことができる。他の任意成分としては、触媒、ウレタン系樹脂以外の他の樹脂、充填剤(タルク、炭酸カルシウム、および酸化チタン等)、金属粉、着色剤(顔料等)、箔状物、軟化剤、導電剤、シランカップリング剤、潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、重合禁止剤、および消泡剤等が挙げられる。
本発明の粘着剤が触媒を含む場合、粘着剤のポットライフを向上させる目的で、アセチルアセトン等の公知の触媒作用抑制剤を添加することが好ましい。
【0092】
(配合比)
本発明の粘着剤は、1種以上の水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)、1種以上の多官能イソシアネート化合物(I)、および1分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を含む1種以上のラジカル重合性単量体(MX)を必須成分として含み、さらに必要に応じて1種以上の任意成分を含む。これらの配合比は特に制限されないが、好ましい配合比は以下の通りである。
【0093】
1種以上の水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)100質量部に対する1種以上の多官能イソシアネート化合物(I)の量は、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは3〜20質量部、特に好ましくは5〜15質量部である。1種以上の多官能イソシアネート化合物(I)の量は、1質量部以上であれば粘着層の凝集力が良好となり、30質量部以下であればポットライフが良好となる。
【0094】
活性エネルギー線照射による粘着力の低減効果の観点から、1種以上の水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)100質量部に対する1種以上のラジカル重合性単量体(MX)の量は、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは3〜70質量部、特に好ましくは5〜50質量部である。
【0095】
(粘着剤の製造方法)
本発明の粘着剤の製造方法は、特に制限されない。
上記方法にて合成された1種以上の水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)(溶剤を含む溶液の形態でもよい)に対して、1種以上の多官能イソシアネート化合物(I)、1分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を含む1種以上のラジカル重合性単量体(MX)、および必要に応じて1種以上の他の任意成分を添加し混合することで、本発明の粘着剤を製造することができる。
【0096】
[粘着シート]
本発明の粘着シートは、基材シートと、上記の本発明の粘着剤の硬化物からなる粘着層とを含む。粘着層は、基材シートの片面または両面に形成することができる。必要に応じて、粘着層の露出面は、剥離シートで被覆することができる。なお、剥離シートは、粘着シートを被着体に貼着する前に剥離される。
【0097】
図1に、本発明に係る第1実施形態の粘着シートの模式断面図を示す。
図1中、符号10は粘着シート、符号11は基材シート、符号12は粘着層、符号13は剥離シートである。粘着シート10は、基材シートの片面に粘着層が形成された片面粘着シートである。
図2に、本発明に係る第2実施形態の粘着シートの模式断面図を示す。
図2中、符号20は粘着シート、符号21は基材シート、符号22A、22Bは粘着層、符号23A、23Bは剥離シートである。粘着シート20は、基材シートの両面に粘着層が形成された両面粘着シートである。
【0098】
基材シートとしては特に制限されず、樹脂シート、紙、および金属箔等が挙げられる。基材シートは、これら基材シートの少なくとも一方の面に任意の1つ以上の層が積層された積層シートであってもよい。基材シートの粘着層を形成する側の面には、必要に応じて、コロナ放電処理およびアンカーコート剤塗布等の易接着処理が施されていてもよい。
【0099】
樹脂シートの構成樹脂としては特に制限されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)等エステル系樹脂;ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂;ナイロン66等のアミド系樹脂;ウレタン系樹脂(発泡体を含む);これらの組合せ等が挙げられる。
ポリウレタンシートを除く樹脂シートの厚みは特に制限されず、好ましくは15〜300μmである。ポリウレタンシート(発泡体を含む)の厚みは特に制限されず、好ましくは20〜50,000μmである。
【0100】
紙としては特に制限されず、普通紙、コート紙、およびアート紙等が挙げられる。
金属箔の構成金属としては特に制限されず、アルミニウム、銅、およびこれらの組合せ等が挙げられる。
【0101】
剥離シートとしては特に制限されず、樹脂シートまたは紙等の基材シートの表面に剥離剤塗布等の公知の剥離処理が施された公知の剥離シートを用いることができる。
【0102】
[粘着シートの製造方法]
粘着シートは、公知方法にて製造することができる。
はじめに、基材シートの表面に本発明の粘着剤を塗工して、本発明の粘着剤からなる塗工層を形成する。塗布方法は公知方法を適用でき、ロールコーター法、コンマコーター法、ダイコーター法、リバースコーター法、シルクスクリーン法、およびグラビアコーター法等が挙げられる。
次に、塗工層を乾燥および硬化して、本発明の粘着剤の硬化物からなる粘着層を形成する。加熱乾燥温度は特に制限されず、60〜150℃程度が好ましい。粘着層の厚み(乾燥後の厚み)は用途によって異なるが、好ましくは0.1〜200μmである。
次に必要に応じて、公知方法により粘着層の露出面に剥離シートを貼着する。
以上のようにして、片面粘着シートを製造することができる。
上記操作を両面に行うことで、両面粘着シートを製造することができる。
【0103】
上記方法とは逆に、剥離シートの表面に本発明の粘着剤を塗工して、本発明の粘着剤からなる塗工層を形成し、次いで塗工層を乾燥および硬化して、本発明の粘着剤の硬化物からなる粘着層を形成し、粘着層の露出面に基材シートを積層してもよい。
【0104】
粘着シートの製造方法は好ましくは、基材シート上に粘着剤を塗工する塗工工程と、形成された塗工層を加熱乾燥処理して粘着剤の硬化物を含む粘着層を形成する加熱工程と、得られた粘着シートを巻芯に巻取って粘着シートロールの形態とする巻取工程と、粘着シートロールを養生する養生工程とを含む。
【0105】
[粘着シートの使用方法]
本発明の粘着シートの使用方法は、
被着体の表面に対して本発明の粘着シートを貼着する工程と、
被着体の表面に貼着された粘着シートに対して紫外線および電子線等の活性エネルギー線を照射して、粘着シートの粘着力を低下させる工程と、
粘着力の低下した粘着シートを被着体から剥離する工程とを含む。
【0106】
本発明の粘着剤は、ラジカル重合性単量体(MX)および必要に応じてラジカル重合開始剤(R)を含む。そのため、本発明の粘着剤の硬化物からなる粘着層は、紫外線等の活性エネルギー線照射により重合硬化することができ、活性エネルギー線の照射前に対して照射後に粘着力が効果的に低下することができる。
【0107】
本発明の粘着剤の硬化物からなる粘着層は、紫外線等の活性エネルギー線の照射前は、適度な粘着力を有し、被着体に対して良好な濡れ広がり性を有し、被着体に対して貼り直し可能な再剥離性を有しつつ、被着体の真空吸着搬送時等には被着体に対して容易に剥がれない粘着力で貼着することができる。本発明の粘着剤の硬化物からなる粘着層は、活性エネルギー線の照射後は、ラジカル重合性単量体(MX)の重合により粘着力が効果的に低下して被着体から容易に剥離することができる。
【0108】
フラットパネルディスプレイおよびタッチパネルディスプレイ等の製造工程では、生産性向上のため、粘着シート付き被着体を必要な工程を行う処理部に高速搬送できることが好ましい。例えば、真空吸着部材を用いて、粘着シート付き被着体を粘着シート側から吸着し、持ち上げ、所望の場所まで搬送する自動高速搬送が検討されている。この自動高速搬送では、粘着シート付き被着体は、真空吸着部材に吸着されている間に被着体から粘着シートが剥離しない比較的高い粘着力を有することが好ましい。一方、必要な工程を終えた粘着シート付き被着体では、粘着シートを高速剥離できるよう、粘着シートは比較的低い粘着力を有することが好ましい。
「粘着シート付き被着体」とは、ガラス基板、ガラス基板上にITO(インジウム酸化錫)膜が形成されたITO/ガラス基板、および光学部材等の被着体の表面に対して粘着シートを貼着した積層体である。
上記のような用途では、被着体の表面に対して粘着シートを貼着して必要な工程を終えた後、被着体の表面に貼着された粘着シートに対して紫外線等の活性エネルギー線を照射して粘着シートの粘着力を低下させ、粘着力の低下した粘着シートを被着体から容易に剥離することができる。
【0109】
粘着層の活性エネルギー線の照射前および照射後の粘着力、並びに、粘着層の活性エネルギー線の照射前に対する照射後の粘着力の低下率は、用途および使用条件に応じて適宜設計することができる。上記したような真空吸着部材を用いて粘着シート付き被着体を高速搬送する用途等では、以下のように、設計することが好ましい。
【0110】
粘着層の活性エネルギー線の照射前に対する照射後の粘着力の低下率は特に制限されず、好ましくは2/3以下、より好ましくは1/2以下、特に好ましくは1/3以下である。
粘着層の活性エネルギー線の照射前の粘着力は、好ましくは100gf/25mm以下、より好ましくは50gf/25mm以下、特に好ましくは20gf/25mm以下である。
粘着層の活性エネルギー線の照射前の粘着力は、好ましくは8gf/25mm以上、より好ましくは10gf/25mm以上、特に好ましくは15gf/25mm以上である。
粘着層の活性エネルギー線の照射後の粘着力は、好ましくは10gf/25mm以下、より好ましくは8gf/25mm未満、特に好ましくは5gf/25mm未満である。
【0111】
以上説明したように、本発明によれば、紫外線等の活性エネルギー線の照射前は、被着体に対して良好な濡れ広がり性を有し、被着体に対して貼り直し可能な再剥離性を有しつつ、被着体に対して容易に剥がれない粘着力で貼着することができ、活性エネルギー線の照射後は粘着力が効果的に低下して被着体から容易に剥離することができる粘着層を形成することが可能な粘着剤を提供することができる。
本発明によればまた、紫外線等の活性エネルギー線の照射前は、被着体に対して良好な濡れ広がり性を有し、被着体に対して貼り直し可能な再剥離性を有しつつ、被着体に対して容易に剥がれない粘着力で貼着することができ、活性エネルギー線の照射後は粘着力が効果的に低下して被着体から容易に剥離することが可能な粘着シートを提供することができる。
【0112】
[用途]
本発明の粘着シートは、テープ、ラベル、シール、および両面テープ等の形態で、使用することができる。本発明の粘着シートは、表面保護シート、化粧用シート、および滑り止めシート等として好適に使用される。
なお、本明細書において、特に明記しない限り、「シート」は「フィルム」および「テープ」を含むものとする。
液晶ディスプレイ(LCD)および有機エレクトロルミネセンスディスプレイ(OELD)等のフラットパネルディスプレイ、並びに、かかるフラットパネルディスプレイとタッチパネルとを組み合わせたタッチパネルディスプレイは、テレビ(TV)、パーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話、および携帯情報端末等の電子機器に広く使用されている。
本発明の粘着シートは、フラットパネルディスプレイおよびタッチパネルディスプレイ(これらを総称して単に「ディスプレイ」とも言う)、並びに、これらの製造工程で製造または使用される基板(ガラス基板、およびガラス基板上にITO(インジウム酸化錫)膜が形成されたITO/ガラス基板等)および光学部材等の表面保護シートとして好適に用いられる。
【実施例】
【0113】
以下、合成例、本発明に係る実施例、および比較例について説明する。なお、以下の記載において、特に明記しない限り、「部」は質量部を意味し、「%」は質量%を意味し、「RH」は相対湿度を意味するものとする。特に明記しない限り、表中の配合量の単位は「質量部」である。特に明記しない限り、溶剤以外の成分の配合量は、不揮発分換算値である。
【0114】
[分子量の測定]
重量平均分子量(
Mw)および数平均分子量(
Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定した。測定条件は以下の通りである。なお、MwおよびMnはいずれも、ポリスチレン換算値である。
装置:SHIMADZU Prominence(株式会社島津製作所製)、
カラム:SHODEX LF−804(昭和電工株式会社製)を3本直列に接続、
検出器:示差屈折率検出器、
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、
流速:1mL/分、
溶媒温度:40℃、
試料濃度:0.2%、
試料注入量:200μL。
【0115】
[材料]
使用した材料は、以下の通りである。
<活性水素基含有化合物(HX)>
(HX−1):クラレポリオール P−2010、ポリエステルポリオール、数平均分子量Mn2000、水酸基数2、クラレ社製、
(HX−2):サンニックス GP−3000、ポリエーテルポリオール、数平均分子量Mn3000、水酸基数3、三洋化成工業社製、
(HX−3):サンニックス GL−3000、ポリエーテルポリオール、数平均分子量Mn3000、水酸基数3、三洋化成工業社製、
(HX−4):エクセノール 851、ポリエーテルポリオール、数平均分子量Mn6700、水酸基数3、AGC社製、
(HX−5):サンニックス PP−1000、ポリエーテルポリオール、数平均分子量Mn1000、水酸基数2、三洋化成工業社製、
(HX−6):1,4−ヘキサンジメタノール(CHDM)。
【0116】
<活性水素基含有化合物(HY)>
(HY−1):2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)。
【0117】
<ポリイソシアネート(N)>
(N−1):デスモジュールH、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、住化コベストロウレタン社製、
(N−2):デスモジュールI、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、住化コベストロウレタン社製、
(N−3):デスモジュールT−80、トリレンジイソシアネート(TDI)、住化コベストロウレタン社製。
【0118】
<多官能イソシアネート化合物(I)>
(I−1):スミジュール HT、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、不揮発分75%、住化コベストロウレタン社製、
(I−2):タケネート D−110N、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、不揮発分75%、三井化学社製。
【0119】
<ラジカル重合性単量体(MX)>
(MX−1):MIRAMER M500、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アクリロイル基5個、水酸基1個、MIWON社製、
(MX−2):MIRAMER M600、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アクリロイル基6個、水酸基0個、MIWON社製、
(MX−3):MIRAMER M300、トリメチロールプロパントリアクリレート、アクリロイル基3個、水酸基0個、MIWON社製、
(MX−4):MIRAMER M340、ペンタエリスリトールトリアクリレート、アクリロイル基3個、水酸基1個、MIWON社製、
(MX−5):サートマー CN925、脂肪族ウレタンテトラアクリレート、アクリロイル基4個、水酸基0個、アルケマ社製。
【0120】
<光重合開始剤(RL)>
(RL−1):イルガキュアTPO、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、BASF社製、
(RL−2):SB−PI 712、4−メチルベンゾフェノン、三洋貿易社製。
【0121】
<可塑剤(P)>
(P−1):アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、三菱ケミカル社製、
(P−2):モノサイザーW262、エーテルエステル系可塑剤、DIC社製。
【0122】
<酸化防止剤(O)>
(O−1):イルガノックス1010、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、BASF社製。
【0123】
<帯電防止剤(AS)>
(AS−1):IL−P14、イオン性液体、広栄化学工業社製。
【0124】
[水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)の溶液の合成例]
(合成例1)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、および滴下漏斗を備えた4口フラスコに、活性水素基含有化合物(HX−1)400部、活性水素基含有化合物(HX−2)600部、およびポリイソシアネート(N−1)57部を仕込んだ。これに、トルエン705部と、触媒としてのジブチル錫ジラウレート0.1部および2−エチルヘキサン酸錫0.04とを加え、混合した。内容液を90℃まで徐々に昇温し、90℃で2時間反応を行った。
随時サンプリングを行い、赤外吸収(IR)スペクトルで残存イソシアネート基の消滅を確認した上で、反応溶液を30℃まで冷却し反応を終了した。以上のようにして、水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH1)の溶液(不揮発分:60%)を得た。得られた水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH1)の重量平均分子量Mwは、83,000であった。配合組成および得られた水酸基末端ウレタンプレポリマーのMwを表1に示す。
【0125】
(合成例2〜7)
合成例2〜7においては、活性水素基含有化合物(HX)の種類、ポリイソシアネート(N)の種類、およびこれらの配合比を変更した以外は合成例1と同様にして、無色透明の水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH−2)〜(UPH−7)の溶液を得た。各合成例において、配合組成および得られた水酸基末端ウレタンプレポリマーのMwを表1に示す。
【0126】
(合成例11)
合成例11においては、仕込み組成に1分子中に1つの活性水素基および1つの(メタ)アクリロイル基を有する活性水素基含有化合物(HY)を追加した以外は合成例7と同様にして、無色透明の水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPA−1)の溶液を得た。配合組成および得られた水酸基末端ウレタンプレポリマーのMwを表1に示す。
【0127】
【表1】
【0128】
[アクリル樹脂(AR)の合成例]
(合成例21)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、および滴下漏斗を備えた4口フラスコに、n−ブチルアクリレート990部、4−ヒドロキシブチルアクリレート10部、および酢酸エチル1000部を仕込み、混合した。内容液を90℃まで徐々に昇温し、溶剤還流を確認した後、アゾビスイソブチロニトリル2部を加え、混合した。8時間経過後、反応溶液を冷却し反応を終了した。以上のようにして、アクリル樹脂(AR1)の溶液(不揮発分:50%)を得た。得られたアクリル樹脂の重量平均分子量Mwは、890,000であった。
【0129】
[粘着剤と粘着シートの製造]
(実施例1)
合成例1で得られた水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH1)の溶液100部に対して、多官能イソシアネート化合物(I−1)を1部、ラジカル重合性単量体(MX−1)を5部、ラジカル重合性単量体(MX−2)を10部、ラジカル重合性単量体(MX−3)を3部、光重合開始剤(RL−1)を1部、光重合開始剤(RL−2)を1部、可塑剤(P−1)を30部、酸化防止剤(O−1)を0.1部、帯電防止剤(AS−1)を0.1部配合し、さらに溶剤として酢酸エチルを80部配合し、ディスパーで攪拌することで、ウレタン系粘着剤を得た。なお、溶剤以外の各材料の配合量は、不揮発分の量で示してある(他の実施例および比較例においても、同様)。配合組成を表2に示す。
基材シートとして、75μm厚のポリエチレンテレフタレートシート(両面易接着PETシート、コスモシャインA−4300、東洋紡社製)を用意した。この基材シートの片面に、得られた粘着剤を乾燥後の厚みが75μmになるように塗工し、100℃で5分間乾燥して、粘着層を形成した。この粘着層上に、厚さ38μmの剥離シート(スーパーステックSP−PET38、リンテック社製)を貼着して、粘着シートを得た。23℃−50%RHの雰囲気下で1週間養生した後、各種評価に供した。
【0130】
(実施例2〜35、比較例1〜3)
実施例2〜35、比較例1〜3の各例においては、粘着剤の配合組成を表2〜表6に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、ウレタン系またはアクリル系の粘着剤およびこれを用いた粘着シートを製造した。
【0131】
[評価項目および評価方法]
粘着剤および粘着シートの評価項目および評価方法は、以下の通りである。
(濡れ広がり性)
得られた粘着シートから幅100mm・長さ200mmの大きさの試験片を切り出し、23℃−50%RHの雰囲気下で30分間放置した後、試験片から剥離シートを剥離した。試験片の両端を両手で持ちながら露出した粘着層の中心部をガラス板に接触させた後、両手を離した。試験片の自重で粘着層全体がガラス板に密着するまでの時間を測定することで、粘着剤の濡れ広がり性を評価した。ガラス板と密着するまでの時間が短いほど、濡れ広がり性(被着体に対する親和性)が良好である。評価基準は以下の通りである。
◎:密着までの時間が6秒未満、優良。
○:密着までの時間が6秒以上8秒未満、良好。
△:密着までの時間が8秒以上10秒未満、実用可。
×:密着までの時間が10秒以上、実用不可。
【0132】
(紫外線(UV)照射前の粘着力と再剥離性)
得られた粘着シートから幅25mm・長さ100mmの大きさの試験片を切り出し、23℃−50%RHの雰囲気下で30分間放置した後、試験片から剥離シートを剥離した。23℃−50%RHの雰囲気下で、試験片の露出した粘着層側をステンレス(SUS)板に貼着し、2kgロールを用いて圧着した。24時間放置した後、JIS Z0237に準拠し、引張試験機(テンシロン:オリエンテック社製)を用いて、剥離速度0.3m/分、剥離角度180°の条件で粘着力(UV照射前の粘着力)を測定した。なお、UV照射前の粘着力が低い方が、再剥離性が高く、貼り直しが容易である。評価基準は以下の通りである。
◎:20gf/25mm未満、優良。
○:20gf/25mm以上50gf/25mm未満、良好。
△:50gf/25mm以上100gf/25mm以下、実用可。
×:100gf/25mm超、実用不可。
【0133】
(真空吸着保持適性)
得られた粘着シートから幅70mm・長さ100mmの大きさの試験片を切り出し、紫外線を含む光を出射する一般的な蛍光灯を含み、23℃−50%RHに調整された雰囲気下で3時間放置した後、試験片から剥離シートを剥離した。23℃−50%RHの雰囲気下で、試験片の露出した粘着層側を苛性ソーダガラス板に貼着し、2kgロールを用いて圧着した。次いで、60℃−90%RH条件下で24時間放置した後、23℃−50%RHの雰囲気にて1時間空冷した。ガラス板の裏面(試験片を貼着していない側の面)に0.5kgの重りを貼り付けた。試験片/ガラス板/重りの積層体について、試験片の上面(基材シート面、PETシート面)側から、真空吸着部材を用いて吸着保持し、1分間持ち上げ、裏面に0.5kgの重りを貼り付けたガラス板が試験片から剥がれて落下するかどうかを確認した。20回試験を実施し、落下の回数を調べた。なお、落下の回数が少ないほど、真空吸着保持適性が高くより良好であり、落下が全くないことが最も好ましい。評価基準は以下の通りである。
◎:落下が全くない、優良。
○:落下の回数が1回である、良好。
△:落下の回数が2〜3回である、実用可。
×:落下の回数が4回以上である、実用不可。
【0134】
(紫外線(UV)照射後の粘着力と再剥離性)
得られた粘着シートから幅25mm・長さ100mmの大きさの試験片を切り出し、23℃−50%RHの雰囲気下で30分間放置した後、試験片から剥離シートを剥離し、試験片の露出した粘着層側をステンレス(SUS)板に貼着し、2kgロールを用いて圧着した。23℃−50%RHの雰囲気下で24時間放置した後、高圧水銀ランプ(ピーク波長:254nm、365nm、405nm、および435nm、出力:120W)を用いて、試験片に対して、積算光量が1000mJとなる条件で、紫外線(UV)照射を行った。23℃−50%RHの雰囲気下で1時間空冷した後、引張試験機(テンシロン:オリエンテック社製)を用いて、剥離速度
0.3m/分、剥離角度180°の条件で、粘着力(UV照射後の粘着力)を測定した。また、UV照射前に対する粘着力の低下率
を求めた。なお、UV照射後の粘着力および粘着力の低下率が低い方が、高速剥離が可能であり好ましい。評価基準は以下の通りである。
◎:粘着力が5gf/25mm未満、かつ粘着力の低下率が2/3以下、優良。
○:粘着力が5gf/25mm以上8gf/25mm未満、かつ粘着力の低下率が2/3以下、良好。
△:粘着力が8gf/25mm以上10gf/25mm以下、かつ粘着力の低下率が2/3以下、実用可。
×:粘着力が10gf/25mm超、または粘着力の低下率が2/3超、実用不可。
【0135】
[評価結果]
評価結果を表2〜表6に示す。
実施例1〜35では、1分子中に複数の活性水素基を有する1種以上の活性水素基含有化合物(HX)と1種以上のポリイソシアネート(N)との反応生成物であり、(メタ)アクリロイル基を含まない水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)と、多官能イソシアネート化合物(I)と、1分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を含むラジカル重合性単量体(MX)とを含むウレタン系粘着剤を製造した。これら実施例では、得られた粘着剤を用いて粘着シートを製造した。
【0136】
実施例1〜35ではいずれも、得られた粘着シートの粘着層は被着体に対する濡れ広がり性が良好であった。これら実施例で得られた粘着シートはいずれも、UV照射前においては、適度な粘着力を有し、被着体に対して貼り直し可能な再剥離性を有しつつ、被着体に対して容易に剥がれない粘着力で貼着することができ、真空吸着保持適性が良好であった。これら実施例で得られた粘着シートはいずれも、UV照射後には粘着力が効果的に低下して被着体から容易に剥離することができるようになり、高速剥離に適したものとなった。
【0137】
水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)の代わりにアクリル樹脂(AR)を用いた比較例1で得られた粘着シートは、UV照射前において、粘着力が非常に高く、被着体に対する濡れ広がり性が不良で、再剥離性が不良であった。比較例1で得られた粘着シートは、UV照射後においても粘着力が依然として高く、高速剥離に適さないものであった。
【0138】
水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPH)の代わりに、1分子中に複数の活性水素基を有する1種以上の活性水素基含有化合物(HX)と、1分子中に1つの活性水素基および1つの(メタ)アクリロイル基を有する1種以上の活性水素基含有化合物(HY)と、1種以上のポリイソシアネート(N)との反応生成物である水酸基末端ウレタンプレポリマー(UPA)を用いた比較例2では、得られた粘着シートは、UV照射前において、真空吸着保持適性が不良であった。粘着層が蛍光灯から出射された少量のUVを吸収したことでラジカル重合性単量体(MX)の反応が開始され、UV照射前に粘着力が低下してしまい、真空吸着保持適性が不良となったと考えられる。
【0139】
比較例3では、真空吸着搬送用に設計されていない従来のウレタン系粘着剤を製造した。得られた粘着シートは、UV照射前において、粘着力は従来レベルであり、低く、真空吸着保持適性が不良であった。比較例3では、ラジカル重合性単量体(MX)を用いなかったため、UV照射後の粘着力の低下も小さく、不良であった。
【0140】
【表2】
【0141】
【表3】
【0142】
【表4】
【0143】
【表5】
【0144】
【表6】
【0145】
本発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、適宜設計変更が可能である。