(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記希土類元素の添加量は、前記チタン含有化合物のチタン100at%に対して0.1at%より多く4.0at%以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の水酸化チタンの製造方法。
前記製造方法は、工程Aで得られた反応物を有機酸及び無機酸を用いてスラリー化する工程Bを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水酸化チタンの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。
【0017】
本発明の水酸化チタンの製造方法は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy及びHoからなる群より選択される少なくとも1種の希土類元素を含む化合物とチタン含有化合物とアルカリ性物質とをpH4.0〜6.0及び温度25〜60℃の条件下で混合する工程Aを含む。
【0018】
1.工程A
工程Aは、希土類元素を含む化合物(以下、希土類元素含有化合物ともいう)とチタン含有化合物とアルカリ性物質とをpH4.0〜6.0及び温度25〜60℃の条件下で混合する工程である。
本発明の水酸化チタンの製造方法は、チタン含有化合物とアルカリ性物質とを混合する際に、希土類元素含有化合物も混合すればよく、例えば、特許文献1に記載の方法のように、粒子成長抑制剤添加工程等を別途設けなくてもよいため、少ない工程で水酸化チタンを製造することができる。
上記工程Aでは、チタン含有化合物を含む水溶液と希土類元素含有化合物とアルカリ性物質とを混合することが好ましい。
上記希土類元素含有化合物は、希土類元素を含むものである限り特に制限されないが、例えば上記希土類のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、水溶性錯体等が挙げられる。好ましくはハロゲン化物、硝酸塩であり、より好ましくはハロゲン化物である。ハロゲン化物として具体的には塩化物、臭素化物、ヨウ化物等があげられるが、中でも好ましくは塩化物である。
希土類元素の塩化物として具体的には、塩化イットリウム、塩化ランタン、塩化セリウム、塩化プラセオジム、塩化ネオジム、塩化サマリウム、塩化ユウロピウム、塩化テルビウム、塩化ジスプロシウム、塩化ホルミウム及びこれらの水和物等が挙げられる。
【0019】
上記チタン含有化合物は、チタン元素を含むものである限り特に制限されないが、例えば塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ペルオキソ錯体等が挙げられる。好ましくはハロゲン化物、硫酸塩であり、より好ましくはハロゲン化物である。ハロゲン化物として具体的には塩化物、臭素化物、ヨウ化物等が挙げられるが、中でも好ましくは塩化物であり、最も好ましくは四塩化チタンである。
【0020】
上記アルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;有機アミン等が挙げられる。中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、より好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0021】
上記工程Aにおける希土類元素含有化合物の添加量は、特に制限されないが、チタン含有化合物のチタン100at%に対して0.1at%より多く4.0at%以下の範囲であることが好ましい。希土類元素含有化合物の添加量がチタン含有化合物のチタン100at%に対して0.1at%を超える範囲であれば、得られる水酸化チタンの熱安定性がより向上し、4.0at%以下であれば製造コストを充分に抑制することができる。より好ましくは0.2〜4.0at%であり、更に好ましくは0.5〜4.0at%であり、一層好ましくは1.0〜4.0at%である。
【0022】
上記工程Aにおけるアルカリ性物質の添加量は、チタン含有化合物を中和することができる限り特に制限されないが、アルカリ性物質が1価の塩基である場合には、チタン含有化合物100モル%に対して80〜200モル%であることが好ましい。より好ましくは90〜150モル%であり、更に好ましくは95〜130モル%である。アルカリ性物質の価数が2価以上の場合には、価数に応じて使用量を変更する。
【0023】
上記工程Aにおける希土類元素を含む化合物とチタン含有化合物とアルカリ性物質との混合方法は、例えば希土類元素を含む化合物とチタン含有化合物とを含む溶液に、アルカリ性物質を含む溶液を添加する方法、上記アルカリ性物質を含む溶液に希土類元素を含む化合物と上記チタン含有化合物とを含む溶液を添加する方法、希土類元素を含む化合物と上記チタン含有化合物とを含む水溶液と上記アルカリ性物質を含む溶液を、予め、沈澱反応器に入れた所謂張り込み液に同時に添加する方法等、いずれであってもよいが、これらの中でも、希土類元素を含む化合物と上記チタン含有化合物とを含む水溶液とアルカリ性物質を含む溶液を張り込み液に同時に添加する方法により行うことが好ましい。
添加時間は、特に制限されないが30〜180分間であることが好ましい。より好ましくは60〜120分間である。
【0024】
上記希土類元素を含む化合物とチタン含有化合物とを含む溶液は、チタン含有化合物を含む溶液に希土類元素を含む化合物を添加して調製することが好ましい。
上記チタン含有化合物を含む溶液の濃度は、TiO
2に換算して60〜100g/Lであることが好ましい。上記チタン含有化合物を含む溶液の濃度が、TiO
2に換算して60g/l以上であると、チタン濃度が充分に高くなるため得られる水酸化チタン粒子が大きくなることを充分に抑制することができる。一方、チタン含有化合物を含む溶液の濃度が、TiO
2に換算して100g/l以下であれば、反応時の中和熱の発生量を充分に抑制することができ、より微細な水酸化チタンを得ることができる。
上記希土類元素を含む化合物とチタン含有化合物とアルカリ性物質との混合に用いる溶媒は、これらの化合物を溶解させるものであれば特に制限されないが、好ましくは水である。
すなわち、上記チタン含有化合物を含む溶液、アルカリ性物質を含む溶液は、水溶液であることが好ましい。
【0025】
上記工程Aにおける反応溶液のpHは、pH4.0〜6.0の範囲である。これにより、水酸化チタンの熱安定性を向上させることができる。反応溶液のpH4.0未満であると、得られる水酸化チタンの熱安定性が低下し、熱処理して得られる二酸化チタンの比表面積が低下する。また、反応溶液のpH6.0を超えると、得られる水酸化チタンの熱安定性が低下し、熱処理して得られる二酸化チタンの比表面積が低下する。より好ましくはpH4.5〜5.5であり、更に好ましくはpH4.8〜5.2である。
上記反応溶液のpHは、実施例に記載の測定機器、及び、測定条件で測定することができる。
【0026】
上記工程Aにおける反応溶液の温度は、25〜60℃の範囲である。これにより、水酸化チタンの熱安定性を向上させることができる。より好ましくは30〜55℃であり、更に好ましくは35〜50℃である。
【0027】
上記工程Aにおいて、希土類元素を含む化合物とチタン含有化合物とアルカリ性物質とを混合した後に、反応溶液を一定時間熟成させることが好ましい。上記熟成時間は特に制限されないが、30〜480分間が好ましい。より好ましくは120〜240分間である。
反応溶液の熟成を行う場合、熟成工程は上記工程Aに含まれるものとする。
【0028】
2.工程B
本発明の水酸化チタンの製造方法は、工程Aで得られた反応物を有機酸及び無機酸を用いてスラリー化する工程Bを含むことが好ましい。これにより工程Aで得られた反応物を充分に解膠(分散)させることができる。このような解膠処理を行なうことで、より効果的に粒子の成長を抑えることができる。
【0029】
上記無機酸としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸等が挙げられ、中でも、硝酸が好ましい。
上記有機酸としては、例えば、酢酸、酒石酸、グリシン、グルタミン酸、マロン酸、マレイン酸、トリメリト酸無水物、こはく酸、リンゴ酸、グリコール酸、アラニン、フマル酸、シュウ酸、グルタル酸、ギ酸等の種々の有機(オキシ)カルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、クエン酸が好ましい。
【0030】
上記工程BにおけるスラリーのpHは特に制限されないが、pH1.0〜3.0であることが好ましい。これにより工程Aで得られた反応物をより充分に解膠(分散)させることができる。より好ましくはpH1.0〜2.0であり、更に好ましくはpH1.0〜1.5である。
【0031】
工程Bでは、工程Aで得られた反応物を有機酸及び無機酸を用いてスラリー化する限り特に制限されないが、有機酸及び無機酸の添加前に工程Aで得られた反応物を洗浄することが好ましい。上記洗浄に用いられる洗浄液は特に制限されないが、水が好ましい。
また工程Bでは、有機酸及び無機酸の添加前に工程Aで得られた反応物をTiO
2換算で20〜100g/L濃度のスラリーに調整することが好ましい。スラリー濃度が20g/L以上であると、スラリー濃度が充分に高くなるため、生産性が向上する。一方、100g/L以下であれば、スラリー濃度が高くなりすぎないため得られる水酸化チタン粒子が大きくなることを充分に抑制することができる。スラリー濃度としてより好ましくは30〜80g/Lであり、更に好ましくは40〜60g/Lであり、最も好ましくは50g/Lである。
上記スラリーの調整には水を用いることが好ましい。
より好ましくは有機酸及び無機酸の添加前に工程Aで得られた反応物を洗浄し、その後、上記濃度のスラリーに調整することが好ましい。
【0032】
工程Bにおいて、工程Aで得られる水酸化チタンを含む反応物に有機酸及び無機酸を用いてスラリー化する方法としては、例えば上記反応物を水洗した後、純水に分散させて水酸化チタンを含む水スラリーを得た後、無機酸及び有機酸を添加する方法等が好ましい。
【0033】
上記無機酸と有機酸の使用量は、工程Aで得られた反応物を充分に解膠(分散)させることができるものであれば特に制限されないが、通常、酸化チタン(TiO
2)換算の水酸化チタンに対して、無機酸は6〜8質量%程度、有機酸は4〜7質量%程度、合計で10〜15質量%程度であることが好ましい。無機酸と有機酸の合計使用量が10質量%以上であると、得られる水酸化チタンの熱安定性がより向上する。一方、合計使用量が15質量%以下であれば、製造コストを充分に抑制することができる。
【0034】
3.工程C
本発明の水酸化チタンの製造方法は、工程Bで得られたスラリーを加熱する工程Cを含むことが好ましい。
上記工程Cは、80〜90℃の温度で行うことが好ましい。これにより水酸化チタンの結晶性を高めることができ、このような水酸化チタンを焼成した際の水酸化チタン粒子の粒子成長を抑制して、得られる二酸化チタンの比表面積をより増加させることができる。
【0035】
上記工程Cの加熱時間は、特に制限されないが、1〜10時間が好ましい。より好ましくは3〜5時間である。
【0036】
4.その他の工程
本発明の水酸化チタンの製造方法は、上記工程A〜C以外のその他の工程を含んでいてもよい。
その他の工程としては、工程A、Cで得られた反応物を回収する工程(以下、回収工程ともいう)、回収した反応物を洗浄する工程(以下、洗浄工程ともいう)、乾燥する工程(以下、乾燥工程ともいう)等が挙げられる。これらの工程を適宜行うことが好ましい。
【0037】
上記回収工程は、工程A、Cで得られた反応物を回収することができる限り特に制限されないが、デカンテーション、ろ過や遠心分離により上記反応物を回収することが好ましい。
上記洗浄工程は、工程A、Cで得られた反応物を洗浄することができる限り特に制限されないが、上記反応物を水等の溶媒に分散させた後、加圧ろ過や遠心沈降やデカンテーションにより分散液から塩類を分離することにより行うことが好ましい。洗浄工程を行う回数は特に制限されず、通常1〜10回である。
【0038】
上記乾燥工程は、工程A、Cで得られた反応物から溶媒を蒸発させ、乾燥することができる限り特に制限されないが、例えば、箱型乾燥機等を用いて乾燥することが好ましい。
乾燥温度は特に制限されず、50℃〜150℃で行うことができる。
乾燥時間は特に制限されず、通常3〜24時間であり、好ましくは5〜15時間である。
【0039】
このようにして、本発明の製造方法によって得られる水酸化チタンは、600℃で焼成しても、得られる二酸化チタンは80m
2/g以上の高比表面積を有するものとなり、微細で且つ高結晶性となる。従って、本発明によるこのような水酸化チタンを原料として用いることによって、微細なチタン酸バリウムを製造することができる。
【0040】
<二酸化チタンの製造方法>
本発明の二酸化チタンの製造方法は、特に制限されないが、本発明の水酸化チタンを焼成することにより製造することが好ましい。
上記焼成温度は、400〜800℃であることが好ましい。より好ましくは500〜700℃である。
上記焼成時間は、0.5〜4時間であることが好ましい。より好ましくは1〜2時間である。
【0041】
<水酸化チタン>
本発明の製造方法により得られる水酸化チタンは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy及びHoからなる群より選択される少なくとも1種の希土類元素を含むものである。このような水酸化チタンは熱安定性に優れるため、水酸化チタンを高温で加熱した場合にも、比表面積が大きい二酸化チタンを得ることができる。上記希土類元素の中でも好ましくは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Eu、Tb、Dy、Hoであり、更に好ましくはLa、Ce、Nd、Eu、Hoであり、特に好ましくはCe、Hoである。
【0042】
上記水酸化チタン中の希土類元素の含有量は、特に制限されないが、チタン100at%に対して0at%より多く4.0at%以下の範囲であることが好ましい。これにより、水酸化チタンの熱安定性をより向上させることができる。希土類元素の含有量としてより好ましくは0.1〜4.0at%であり、更に好ましくは0.3〜4.0at%であり、特に好ましくは0.7〜3.5at%である。
【0043】
上記水酸化チタンの比表面積は特に制限されないが、200〜450m
2/gであることが好ましい。これにより、水酸化チタンを焼成して得られる二酸化チタンの比表面積をより好適な範囲とすることができる。比表面積としてより好ましくは、250〜420m
2/gである。
上記比表面積は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0044】
上記水酸化チタンは結晶性の高いものであることが好ましく、結晶子径としては20Å以上であることが好ましい。これにより、結晶性が充分に高い二酸化チタンを得ることができる。
【0045】
<二酸化チタン>
本発明の製造方法により得られる二酸化チタンは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy及びHoからなる群より選択される少なくとも1種の希土類元素を含み、比表面積が80m
2/g以上である二酸化チタンでもある。
比表面積が80m
2/g以上の二酸化チタンを用いると微細なチタン酸バリウムを得ることができ、電子材料等の原料として好ましい。また、本発明の二酸化チタンは結晶性も高いため、誘電特性に優れる観点からも電子材料等の原料に好適に用いることができる。
比表面積としてより好ましくは85m
2/g以上であり、更に好ましくは90m
2/g以上であり、特に好ましくは100m
2/g以上である。
上記比表面積は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0046】
本発明の二酸化チタンは上記希土類元素を含むものであるが、このような二酸化チタンを電子材料等の原料に用いた場合に、希土類元素が電子材料中に残存したとしても特に不具合が生じる可能性が低いため、この点において、本発明は特に技術的意義を発揮する。
上記希土類元素の好ましい例は、上記水酸化チタンについて述べたとおりである。
【0047】
上記二酸化チタン中の希土類元素の含有量は、特に制限されないが、チタン100at%に対して0at%より多く4.0at%以下の範囲であることが好ましい。希土類元素を含有量していないと、比表面積が十分に高い二酸化チタンを得ることが出来ない。一方、4.0at%を超えると、誘電体材料であるチタン酸バリウムに用いたに得られるチタン酸バリウムが半導体化する虞がある。より好ましくは0.2〜4.0at%であり、更に好ましくは0.4〜2.0at%である。
【実施例】
【0048】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0049】
(工程Aにおける中和反応溶液のpH測定)
工程Aにおける中和反応溶液のpHの測定は、ポータブル型pHメーター(堀場製作所社製、D−74)を用いて、希土類元素を含む化合物とチタン含有化合物とアルカリ性物質とを混合時において行なった。
【0050】
水酸化チタン、二酸化チタンについての各種測定は以下のようにして行った。
[評価]
(BET比表面積測定)
全自動比表面積計(MOUNTECH社製MACSORB MODEL−1201)を用いて窒素吸着法により求めた。このとき、脱離は窒素ガス流通下、室温の温度条件で行い、吸着は77Kの温度条件で行った。
【0051】
[結晶構造解析]
(粉末X線回折測定)
X線回折装置(リガク社製ULTIMA IV)を用い、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流16mA、発散スリット1mm、縦スリット10mm、散乱スリット開放、受光スリット開放、サンプリング幅0.02度、スキャンスピード2度/分の条件で水酸化チタンのX線回折スペクトルを測定し、このスペクトルから半価幅を求めた。
結晶子径はScherrer (シェラー) の下記式(1);
D=Kλ/β
1/2cosθ (1)
(式中、Dは結晶子径、Kはシェラー定数(0.94)、λは管球X線の波長(1.54Å)、β
1/2は半価幅、θは回折角を表す)により求めた。
【0052】
[希土類元素含有量]
(粉末蛍光X線回折測定)
蛍光X線分析装置(株式会社リガク製:型番 ZSX PrimusII)の含有元素スキャニング機能であるEZスキャンにより元素分析を行った。
具体的には、測定サンプル台に水酸化チタン粉末をプレスしたサンプルをセットし、次の条件を選択(測定範囲:F−U、測定径:30mm、試料形態:酸化物、測定時間:長い、雰囲気:真空)することで、水酸化チタン中の希土類元素含有量を測定した。
【0053】
[熱安定性の評価]
希土類ドープ二酸化チタンサンプル3gを磁性ルツボに入れ、大気下200℃/時の昇温速度で600℃まで昇温し2時間保持した。その後、室温まで放冷して熱処理サンプルを得て比表面積を測定した。
【0054】
[TEM観察]
透過型電子顕微鏡(TEM)装置(日本電子製、JEM−2100 )を用いて、電圧100kV、観察倍率60,000倍の条件で実施例1及び比較例1で得られた二酸化チタンについてTEM観察を行った。
【0055】
(実施例1)
(工程A)
純水で希釈したTiO
2として80g/L濃度の四塩化チタン水溶液中へチタンイオンに対して1.0at%の塩化イットリウム6水和物(富士フイルム和光純薬(株)製)を加え四塩化チタン・イットリウム水溶液(原料A)を調製した。
別の反応容器内に40℃に加熱した純水800mLを張り、これに上記原料Aの水溶液と30質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液(直治薬品(株)製)を90分にわたって同時に添加して、四塩化チタンの中和反応を行い、水酸化チタンを沈殿させて、水スラリーを得た。上記中和反応はpH4.8〜5.2の範囲において温度40℃で4時間行った。
この後、得られた水スラリーを温度40℃で更に4時間撹拌した。このようにして得られた水スラリーを室温まで冷却し、濾過し、水洗して、水酸化チタンケーキを得た。
(工程B)
上記工程Aにおいて得られた水酸化チタンのケーキを純水にリパルプし、TiO
2換算で50g/L濃度の水スラリーとした。この水スラリーに水酸化チタンに対してTiO
2換算にて6.45質量%の硝酸と5.00質量%のクエン酸を添加し、pHが1.30の水スラリーを得た。
(工程C)
上記工程Bにおいて得られた水スラリーを85℃まで加熱し、5時間撹拌した。得られたスラリーを室温まで冷却し、濾過、水洗して、水酸化チタンのケーキを得た。
得られた水酸化チタンケーキを120℃で15時間乾燥して、イットリウム含有水酸化チタン粉末を得た。
(焼成工程)
このようにして得られたイットリウム含有水酸化チタン粉末を温度600℃で2時間焼成して、酸化チタン粉末を得た。
【0056】
(実施例2)
実施例1の塩化イットリウムを塩化ランタン7水和物(富士フイルム和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に行った。
【0057】
(実施例3)
実施例1の塩化イットリウムを塩化セリウム7水和物(富士フイルム和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に行った。
【0058】
(実施例4)
実施例1の塩化イットリウムを塩化プラセオジム7水和物(富士フイルム和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に行った。
【0059】
(実施例5)
実施例1の塩化イットリウムを塩化ネオジム6水和物(富士フイルム和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に行った。
【0060】
(実施例6)
実施例1の塩化イットリウムを塩化サマリウム6水和物(富士フイルム和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に行った。
【0061】
(実施例7)
実施例1の塩化イットリウムを塩化ユウロピウム6水和物(富士フイルム和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に行った。
【0062】
(実施例8)
実施例1の塩化イットリウムを塩化テルビウム6水和物(富士フイルム和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に行った。
【0063】
(実施例9)
実施例1の塩化イットリウムを塩化ジスプロシウム6水和物(富士フイルム和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に行った。
【0064】
(実施例10)
実施例1の塩化イットリウムを塩化ホルミウム6水和物(富士フイルム和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に行った。
【0065】
(実施例11)
実施例2の塩化ランタンの添加量を0.2at%に変更した以外は実施例2と同様に行った。
【0066】
(実施例12)
実施例2の塩化ランタンの添加量を4.0at%に変更した以外は実施例2と同様に行った。
【0067】
(実施例13)
実施例2の塩化ランタンの添加量を0.5at%に変更した以外は実施例2と同様に行った。
【0068】
(実施例14)
実施例13の塩化ランタンを塩化ネオジム6水和物(富士フイルム和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例13と同様に行った。
【0069】
(実施例15)
実施例13の塩化イットリウムを塩化ユウロピウム6水和物(富士フイルム和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例13と同様に行った。
【0070】
(比較例1)
実施例1における塩化イットリウムの添加を無添加に変更した以外は実施例1と同様に行った。
【0071】
(比較例2)
実施例13の(工程A)における中和反応のpHをpH2.8〜3.2の範囲に変更した以外は実施例13と同様に行った。
【0072】
(比較例3)
実施例13の(工程A)における中和反応のpHをpH7.8〜8.2の範囲に変更した以外は実施例13と同様に行なった。
【0073】
(比較例4)
実施例13の(工程A)における中和反応温度40℃を65℃に変更した以外は実施例13と同様に行った。
【0074】
実施例1〜15及び比較例1〜4で得られた水酸化チタン、二酸化チタンについて比表面積(SSA)、及び、水酸化チタン中の希土類元素の含有量を測定し、結果を表1に示した。
【0075】
【表1】
【0076】
表1に示すように、本発明の水酸化チタンの製造方法である実施例では、600℃2時間の焼成条件で得られる二酸化チタンは、いずれも比表面積(SSA)が目標とする80m
2/gを超えており、熱安定性が良いことが分かる。特に実施例1〜5、7〜10、及び12では比表面積が100m
2/gを超える二酸化チタンが得られていることが分かる。一方、希土類を添加しなかった比較例1では、熱安定性が悪く二酸化チタンの比表面積が小さくなっていることが分かる。また、工程Aにおける混合時のpH域をより酸性側とした比較例2では、比表面積が小さく、水酸化チタン中の希土類元素は確認できなかった。この比表面積の低下は、希土類元素による熱安定性が寄与していないためと考えられる。また、工程Aにおける混合時pH域をよりアルカリ性側とした比較例3では、二酸化チタンの比表面積が若干増加したものの80m
2/gに満たないことが分かる。さらに工程Aにおける混合(中和)温度を65℃とした比較例4では、二酸化チタンの比表面積が若干増加したものの、80m
2/gに満たないことが分かる。
工程Aにおける混合時pHを弱酸性領域とすることにより、結晶子径の大きな粒子、つまり結晶性が充分に高い二酸化チタンを得ることができる。
このように、二酸化チタンの前駆体となる水酸化チタンの合成時から希土類元素を所定量添加することで、粒子全体に希土類元素を均一に分布させることができ、熱処理時の希土類元素と酸化チタンとの複合酸化物が粒子表面に均一に生成することに起因して粒子の拡散が制御される。このような粒子の拡散制御機構と二酸化チタンの結晶子径が大きくなること、すなわち、高結晶性による粒成長抑制機構により、二酸化チタンの熱安定性が向上したと考察される。
【課題】電気特性に悪影響を及ぼす成分を用いることなく、比表面積が充分に大きいものが得られ、かつ、製造コストを低減できる二酸化チタンの原料となる水酸化チタンの製造方法を提供する。
【解決手段】希土類元素を含む水酸化チタンを製造する方法であって、該製造方法は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy及びHoからなる群より選択される少なくとも1種の希土類元素を含む化合物とチタン含有化合物とアルカリ性物質とをpH4.0〜6.0及び温度25〜60℃の条件下で混合する工程Aを含むことを特徴とする水酸化チタンの製造方法。