特許第6769548号(P6769548)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769548
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】比較回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 5/24 20060101AFI20201005BHJP
【FI】
   H03K5/24
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-520255(P2019-520255)
(86)(22)【出願日】2018年5月22日
(86)【国際出願番号】JP2018019598
(87)【国際公開番号】WO2018216677
(87)【国際公開日】20181129
【審査請求日】2019年9月10日
(31)【優先権主張番号】特願2017-102180(P2017-102180)
(32)【優先日】2017年5月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104204
【弁理士】
【氏名又は名称】峯岸 武司
(72)【発明者】
【氏名】高▲瀬▼ 恭英
【審査官】 渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−109937(JP,A)
【文献】 特開2007−336051(JP,A)
【文献】 特開昭63−103513(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/126049(WO,A1)
【文献】 特開2015−228540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される第1入力電圧および第2入力電圧間の電圧差を増幅する前置増幅回路と、増幅された前記電圧差に基づいて前記第1入力電圧と前記第2入力電圧の大きさを比較して比較結果をラッチするラッチ回路とを備える比較回路において、
前記前置増幅回路は、クロック信号の特定変化タイミングにおいて反転した後、入力される前記第1入力電圧および前記第2入力電圧の各大きさに応じた速さで復帰する第1制御信号および第2制御信号に、前記第1入力電圧および前記第2入力電圧を変換し、
前記ラッチ回路は、前記第1制御信号および前記第2制御信号に基づいて前記第1入力電圧と前記第2入力電圧の大きさを比較する
ことを特徴とする比較回路。
【請求項2】
前記前置増幅回路は、第1トランジスタと第2トランジスタと第1容量と第2容量とを備え、
前記第1および第2トランジスタの各ソース端子は電源電圧または基準電圧のいずれか一方に接続され、
前記第1トランジスタのゲート端子に前記第1入力電圧が入力され、前記第2トランジスタのゲート端子に前記第2入力電圧が入力され、
前記第1トランジスタのドレイン端子と前記第1容量の一方の端子とは前記第1制御信号を前記ラッチ回路へ出力する第1制御信号端子に接続され、
前記第2トランジスタのドレイン端子と前記第2容量の一方の端子とは前記第2制御信号を前記ラッチ回路へ出力する第2制御信号端子に接続され、
前記第1容量の他方の端子と前記第2容量の他方の端子とに前記クロック信号が与えられることを特徴とする請求項1に記載の比較回路。
【請求項3】
前記クロック信号がゲート端子に与えられる第3トランジスタのドレイン端子が前記第1トランジスタと第2トランジスタの接続点に接続され、前記第3トランジスタのソース端子が電源電圧または基準電圧のいずれか一方に接続されることを特徴とする請求項2に記載の比較回路。
【請求項4】
前記ラッチ回路は、チャネルの極性が第1の極性である第4〜第9トランジスタと、チャネルの極性が第2の極性である第10〜第13トランジスタとから構成され、
前記第4〜第9トランジスタの各ソース端子は電源電圧または基準電圧のいずれか一方に接続され、
前記第12および前記第13トランジスタの各ソース端子は、前記第4〜第9トランジスタの各ソース端子が電源電圧に接続されるときに基準電圧に接続され、前記第4〜第9トランジスタの各ソース端子が基準電圧に接続されるときに電源電圧に接続され、
前記第4,前記第6および前記第10トランジスタの各ドレイン端子、並びに、前記第7および前記第11トランジスタの各ゲート端子は第1出力端子に接続され、
前記第5,前記第7および前記第11トランジスタの各ドレイン端子、並びに、前記第6および前記第10トランジスタの各ゲート端子は第2出力端子に接続され、
前記第10トランジスタのソース端子と前記第8および前記第12トランジスタの各ドレイン端子とは相互に接続され、
前記第11トランジスタのソース端子と前記第9および前記第13トランジスタの各ドレイン端子とは相互に接続され、
前記第1制御信号端子は、前記第4,前記第8および前記第12トランジスタの各ゲートに接続され、
前記第2制御信号端子は、前記第5,前記第9および前記第13トランジスタの各ゲートに接続される
ことを特徴とする請求項2または請求項3のいずれか1項に記載の比較回路。
【請求項5】
前記第1制御信号端子がゲート端子に接続され、ドレイン端子が前記第2出力端子に接続され、ソース端子が前記第4〜第7トランジスタの各ソース端子と接続される第14トランジスタと、
前記第2制御信号端子がゲート端子に接続され、ドレイン端子が前記第1出力端子に接続され、ソース端子が前記第4〜第7トランジスタの各ソース端子と接続される第15トランジスタと
を備えることを特徴とする請求項4に記載の比較回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力される第1入力電圧と第2入力電圧の大きさを比較して、その比較結果を出力する比較回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の比較回路としては、例えば、非特許文献1に開示された図1に示されるダブルテールラッチ型コンパレータ1がある。このコンパレータ1は、入力段部2とラッチ部3とから構成される。入力段部2は、NMOSトランジスタM5,M6,M9およびPMOSトランジスタM7,M8により構成され、NMOSトランジスタM5,M6の各ゲートに入力電圧Vin1,Vin2、PMOSトランジスタM7,M8およびNMOSトランジスタM9の各ゲートに第1クロック信号CLK1が入力されて動作する。この入力段部2は、信号ゲインを持つプリアンプとしての役割を果たしている。ラッチ部3は、NMOSトランジスタM1、M3,M10,M11と、PMOSトランジスタM2,M4,M12とから構成され、PMOSトランジスタM12のゲートに第2クロック信号CLK2が入力される。コンパレータ1は、入力電圧Vin1,Vin2の比較結果を出力電圧Vout1,Vout2として出力する。
【0003】
図2(a)、(b)、および(c)は、Vin1>Vin2の場合における、各クロック信号CLK1,CLK2、各ノードDi1,Di2の電圧、および出力電圧Vout1,Vout2のタイミングチャート図である。入力電圧Vin1,Vin2の大きさに応じてノードDi1,Di2の電荷が引き抜かれる速さの違いにより、出力電圧Vout1,Vout2が決定される。
【0004】
また、従来、特許文献1に開示された図3に示されるコンパレータ4もある。このコンパレータ4は、プリアンプ回路5、ラッチ回路6および遅延回路7から構成される。プリアンプ回路5には2入力電圧の差電圧INが入力される。プリアンプ回路5は、第1クロック信号CLK1に基づいて、入力される差電圧INを増幅する。ラッチ回路6は、第2クロック信号CLK2に基づいて、差電圧INに応じて入力電圧の比較結果を出力電圧OUTとして出力する。遅延回路7は、第2クロック信号CLK2に対して、回路コンディションに応じた遅延を第1クロック信号CLK1との間にかける。この遅延は、回路の周囲温度や、電源電圧値、製造プロセス等の変動に応じて、適切な値に設定される。
【0005】
また、従来、特許文献2に開示された図4に示される比較器10もある。この比較器10は、差動プリアンプ回路部20と差動ラッチ回路部30とから構成される。差動プリアンプ回路部20は、3つのNMOSトランジスタ21〜23と2つのPMOSトランジスタ24,25とから構成され、入力電圧Vi1,Vi2の差電圧をクロック信号CLKに基づいて増幅して、電圧Vg1,Vg2を出力する。差動ラッチ回路部30は、6つのNMOSトランジスタ31〜34,39,40と4つのPMOSトランジスタ35〜38とから構成され、入力される電圧Vg1,Vg2に応じて、入力電圧Vi1,Vi2の比較結果を出力電圧Vo1,Vo2として出力する。
【0006】
図5(a)、(b)、および(c)は、Vi1>Vi2の場合における、クロック信号CLK、各電圧Vg1,Vg2、および出力電圧Vo1,Vo2のタイミングチャート図である。差動ラッチ回路部30は、電圧Vg1,Vg2の大きさの違いに応じて、出力電圧Vo1,Vo2を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第8487659号明細書
【特許文献2】米国特許第8362934号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Bram Nuata等著、「A Double-Tail Latch-Type Voltage Sense Amplifier with 18ps Setup+Hold Time」、IEEE International Solid-State Circuits Conference 2007, Session 17, Analog Techniques and PLLs, 17.7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1に開示された上記従来のダブルテールラッチ型コンパレータ1では、第1クロック信号CLK1と第2クロック信号CLK2との間に適切な遅延時間が必要とされる。この遅延時間が適切に設定されないと、コンパレータ1に流れる貫通電流が増大してしまう。また、入力電圧Vin1,Vin2の比較結果として出力される電圧Vout1,Vout2は、第2クロック信号CLK2の立ち下りエッジタイミングでリセットされる。このため、第2クロック信号CLK2の立ち下りエッジタイミングで動作する論理回路に接続する場合には、コンパレータ1の後段に、ハーフラッチ回路がもう1段必要とされる。
【0010】
また、特許文献1に開示された上記従来のコンパレータ4でも、第1クロック信号CLK1と第2クロック信号CLK2との間に適切な遅延時間が必要とされる。そのために専用の遅延回路7を設ける必要が生じる。また、このコンパレータ4でも、第2クロック信号CLK2の立ち下りエッジタイミングで動作する論理回路に接続する場合には、コンパレータ4の後段に、ハーフラッチ回路がもう1段必要とされる。
【0011】
また、特許文献2に開示された上記従来の比較器10では、差動プリアンプ回路部20から出力される電圧Vg1,Vg2を用いて、差動ラッチ回路部30でラッチ処理が行われる。このため、上記従来の比較器10では、1つのクロック信号CLKの使用で済み、非特許文献1に開示されたコンパレータ1や特許文献1に開示されたコンパレータ4のように、2つのクロック信号CLK1,CLK2の間に適切な遅延時間をとる必要は無い。しかし、この比較器10でも、クロック信号CLKの立ち上がり、ないし立ち下がりエッジタイミングで動作する論理回路に接続する場合には、ハーフラッチ回路がもう1段必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
入力される第1入力電圧および第2入力電圧間の電圧差を増幅する前置増幅回路と、増幅された電圧差に基づいて第1入力電圧と第2入力電圧の大きさを比較して比較結果をラッチするラッチ回路とを備える比較回路において、
前置増幅回路が、クロック信号の特定変化タイミングにおいて反転した後、入力される第1入力電圧および第2入力電圧の各大きさに応じた速さで復帰する第1制御信号および第2制御信号に、第1入力電圧および第2入力電圧を変換し、
ラッチ回路が、第1制御信号および第2制御信号に基づいて第1入力電圧と第2入力電圧の大きさを比較する
ことを特徴とする。
【0013】
本構成によれば、前置増幅回路により、クロック信号の特定変化タイミングに第1制御信号および第2制御信号が生成され、ラッチ回路は、この第1制御信号および第2制御信号に基づいて第1入力電圧と第2入力電圧の大きさを比較し、比較結果をラッチする。前置増幅回路により生成される第1制御信号および第2制御信号は、第1入力電圧および第2入力電圧の各大きさに応じた速さで反転状態から復帰して、ラッチ回路を、第1入力電圧と第2入力電圧の大きさの比較結果に応じた状態にラッチさせる。
【0014】
したがって、ラッチ回路は、クロック信号の特定変化タイミングに、第1入力電圧と第2入力電圧の大きさの比較結果をラッチすると、クロック信号の次の特定変化タイミングが到来して、次の新たな第1制御信号および第2制御信号が入力されるまで、ラッチ状態を保持する。このため、ラッチ回路から出力される第1入力電圧と第2入力電圧の大きさの比較結果は、クロック信号の特定変化タイミングでない変化タイミングでは変化しない。この結果、比較回路は、従来のようにその後段にハーフラッチ回路を設けることなく、比較回路と同一のクロック信号で動作する後段の論理回路に比較結果を出力するようになる。
【0015】
また、ラッチ回路は、前置増幅回路から出力される第1制御信号および第2制御信号に基づいて動作するため、クロック信号は前置増幅回路に与える1種類で済む。このため、従来の比較回路のように、前置増幅回路に与える第1クロック信号とラッチ回路に与える第2クロック信号との間に適切な遅延時間をとることなく、前置増幅回路とラッチ回路を順に適切なタイミングで動作させることができる。したがって、従来のように、各クロック信号間に遅延時間が適切にとれないために貫通電流が増大することはなく、比較回路の低消費電力化を図ることができる。
【0016】
また、本発明は、
前置増幅回路が、第1トランジスタと第2トランジスタと第1容量と第2容量とを備え、
第1および第2トランジスタの各ソース端子が電源電圧または基準電圧のいずれか一方に接続され、
第1トランジスタのゲート端子に第1入力電圧が入力され、第2トランジスタのゲート端子に第2入力電圧が入力され、
第1トランジスタのドレイン端子と第1容量の一方の端子とが第1制御信号をラッチ回路へ出力する第1制御信号端子に接続され、
第2トランジスタのドレイン端子と第2容量の一方の端子とが第2制御信号をラッチ回路へ出力する第2制御信号端子に接続され、
第1容量の他方の端子と第2容量の他方の端子とにクロック信号が与えられる
ことを特徴とする。
【0017】
本構成によれば、クロック信号の特定変化タイミングに、第1制御信号端子には、第1入力電圧の大きさに応じた速さで反転状態から復帰する第1制御信号が現れる。また、第2制御信号端子には、第2入力電圧の大きさに応じた速さで反転状態から復帰する第2制御信号が現れる。したがって、これら第1制御信号と第2制御信号との間に生じる電圧差は、少ない素子数で、入力される第1入力電圧および第2入力電圧間の電圧差を増幅したものになる。ラッチ回路はこの電圧差を入力して、第1入力電圧と第2入力電圧の大きさを比較し、比較結果をラッチする。
【0018】
また、本発明は、クロック信号がゲート端子に与えられる第3トランジスタのドレイン端子が第1トランジスタと第2トランジスタの接続点に接続され、第3トランジスタのソース端子が電源電圧または基準電圧のいずれか一方に接続されることを特徴とする。
【0019】
本構成によれば、クロック信号の特定変化タイミングに第1トランジスタおよび第2トランジスタが動作するときに、第3トランジスタも同時に動作する。このとき、第3トランジスタのオン抵抗により、第1トランジスタおよび第2トランジスタの各ソース端子にかかる電圧は小さくなる。したがって、第1入力電圧に応じて第1トランジスタを流れる電流、および、第2入力電圧に応じて第2トランジスタを流れる電流は、それらのピーク値が抑制される。このため、比較回路で消費される電力を低減することができる。
【0020】
また、本発明は、
ラッチ回路が、チャネルの極性が第1の極性である第4〜第9トランジスタと、チャネルの極性が第2の極性である第10〜第13トランジスタとから構成され、
第4〜第9トランジスタの各ソース端子が電源電圧または基準電圧のいずれか一方に接続され、
第12および第13トランジスタの各ソース端子が、第4〜第9トランジスタの各ソース端子が電源電圧に接続されるときに基準電圧に接続され、第4〜第9トランジスタの各ソース端子が基準電圧に接続されるときに電源電圧に接続され、
第4,第6および第10トランジスタの各ドレイン端子、並びに、第7および第11トランジスタの各ゲート端子が第1出力端子に接続され、
第5,第7および第11トランジスタの各ドレイン端子、並びに、第6および第10トランジスタの各ゲート端子が第2出力端子に接続され、
第10トランジスタのソース端子と第8および第12トランジスタの各ドレイン端子とが相互に接続され、
第11トランジスタのソース端子と第9および第13トランジスタの各ドレイン端子とが相互に接続され、
第1制御信号端子が、第4,第8および第12トランジスタの各ゲートに接続され、
第2制御信号端子が、第5,第9および第13トランジスタの各ゲートに接続される
ことを特徴とする。
【0021】
本構成によれば、ラッチ回路は、チャネルの極性が第1の極性である第4〜第9トランジスタと、チャネルの極性が第2の極性である第10〜第13トランジスタとにより、少ない素子数で簡潔に構成される。
【0022】
また、本発明は、
第1制御信号端子がゲート端子に接続され、ドレイン端子が第2出力端子に接続され、ソース端子が第4〜第7トランジスタの各ソース端子と接続される第14トランジスタと、
第2制御信号端子がゲート端子に接続され、ドレイン端子が第1出力端子に接続され、ソース端子が第4〜第7トランジスタの各ソース端子と接続される第15トランジスタと
を備えることを特徴とする。
【0023】
クロック信号の特定変化タイミングに前置増幅回路から第1制御信号および第2制御信号が入力されてラッチ回路にリセットがかけられた後、第4トランジスタおよび第5トランジスタには、それぞれ、第1出力端子から出力される第1出力電圧と、第2出力端子から出力される第2出力電圧に応じた電荷とがキックバックされる。第4トランジスタにキックバックされた電荷と、第5トランジスタにキックバックされた電荷の差は、直後の前置増幅回路の増幅動作に影響を与える。つまり、比較回路によって行われる第1入力電圧と第2入力電圧の比較は、クロック信号の前回の特定変化タイミングにおける比較結果から影響を受けることがある。
【0024】
しかし、本構成によれば、第2出力端子から出力される前回の比較結果に応じた電圧が第14トランジスタのドレイン端子に印加されることで、第1出力端子から出力される前回の比較結果に応じた電荷の影響を第4トランジスタから受ける第1制御信号端子には、第2出力端子から出力される前回の比較結果に応じた電荷の影響が及ぶ。また、第1出力端子から出力される前回の比較結果に応じた電圧が第15トランジスタのドレイン端子に印加されることで、第2出力端子から出力される前回の比較結果に応じた電荷の影響を第5トランジスタから受ける第2制御信号端子には、第1出力端子から出力される前回の比較結果に応じた電荷の影響が及ぶ。したがって、第1制御信号端子および第2制御信号端子には、それぞれ、第1出力端子および第2出力端子の双方からそれぞれ出力される前回の比較結果が及ぶことになる。
【0025】
第1出力端子および第2出力端子からそれぞれ出力される前回の比較結果は、電圧レベルが相反するものである。よって、第1制御信号端子および第2制御信号端子に前回の比較結果が及ぼす影響は、ほぼ等しくなり、相殺される。したがって、クロック信号の次回の特定変化タイミングに、前置増幅回路からラッチ回路へ出力される第1制御信号および第2制御信号は、相対的に前回の比較結果が低減されたものになる。このため、比較回路よる電圧の比較は、前回の比較結果から影響を受け難く行われ、前回の比較結果からの影響が低減する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、比較回路と同一のクロック信号で動作する後段の論理回路に、ハーフラッチ回路を設けることなく比較結果を出力することができると共に、低消費電力化を図ることができる比較回路を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1の従来の比較回路の回路図である。
図2】第1の従来の比較回路における回路各部の電圧波形を示すタイミングチャート図である。
図3】第2の従来の比較回路の回路図である。
図4】第3の従来の比較回路の回路図である。
図5】第3の従来の比較回路における回路各部の電圧波形を示すタイミングチャート図である。
図6】本発明の第1の実施形態による比較回路の回路図である。
図7】(a)は第1の実施形態による比較回路におけるクロック信号、(b)は接続点x、yの電圧V、V、(c)は出力端子out1、out2の電圧Vout1、Vout2の電圧波形を示すタイミングチャート図である。
図8】第1の実施形態の変形例による比較回路の回路図である。
図9】(a)は第1の実施形態の変形例による比較回路におけるクロック信号、(b)は接続点x、yの電圧V、V、(c)は出力端子out1、out2の電圧Vout1、Vout2の電圧波形を示すタイミングチャート図である。
図10】本発明の第2の実施形態による比較回路の回路図である。
図11】第2の実施形態の変形例による比較回路の回路図である。
図12】本発明の第3の実施形態による比較回路の回路図である。
図13】(a)は第3の実施形態による比較回路におけるクロック信号、(b)は接続点x、y、Bの電圧V、V、V、(c)は出力端子out1、out2の電圧Vout1、Vout2の電圧波形を示すタイミングチャート図である。
図14】第3の実施形態の変形例による比較回路の回路図である。
図15】(a)は第3の実施形態の変形例による比較回路におけるクロック信号、(b)は接続点x、y、Bの電圧V、V、V、(c)は出力端子out1、out2の電圧Vout1、Vout2の電圧波形を示すタイミングチャート図である。
図16】本発明の第4の実施形態による比較回路の回路図である。
図17】第4の実施形態の変形例による比較回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の比較回路を実施するための形態について、説明する。
【0029】
図6は、本発明の第1の実施形態による比較回路41Aの回路図である。
【0030】
比較回路41Aは、第1入力端子in1に入力される第1入力電圧Vin1および第2入力端子in2に入力される第2入力電圧Vin2間の電圧差をダイナミックに増幅する前置増幅回路42Aと、増幅された電圧差に基づいて第1入力電圧Vin1と第2入力電圧Vin2の大きさを比較して、比較結果をラッチするラッチ回路43Aとを備える。
【0031】
前置増幅回路42Aは、図7(a)に示すクロック信号CLKの特定変化タイミング、本実施形態では立ち下がりエッジタイミングに入力される第1入力電圧Vin1および第2入力電圧Vin2を、図7(b)に示す第1制御信号Vおよび第2制御信号Vに変換する。ここでは、第1入力電圧Vin1が第2入力電圧Vin2よりも大きい(Vin1>Vin2)場合の信号波形を示している。第1制御信号Vは第1制御信号端子に相当する接続点x、第2制御信号Vは第2制御信号端子に相当する接続点yに現れる。第1制御信号Vおよび第2制御信号Vは、クロック信号CLKの立ち下がりエッジタイミングにおいてローレベル側に反転した後、入力される第1入力電圧Vin1および第2入力電圧Vin2の各大きさに応じた速さでハイレベル側に復帰する波形形状を呈する。ラッチ回路43Aは、第1制御信号Vおよび第2制御信号Vに基づいて、第1入力電圧Vin1と第2入力電圧Vin2の大きさを比較する。図7(c)は、その比較結果を示し、第1出力端子out1に第1出力電圧Vout1、第2出力端子out2に第2出力電圧Vout2として出力される。
【0032】
本実施形態では、前置増幅回路42Aは、第1トランジスタM1と第2トランジスタM2と第1容量CD1と第2容量CD2とを備える。第1トランジスタM1と第2トランジスタM2の各ソース端子は電源電圧VDDに接続されている。第1トランジスタM1のドレイン端子と第1容量CD1の一方の端子とは、第1制御信号Vをラッチ回路43Aへ出力する接続点xに接続されている。第2トランジスタM2のドレイン端子と第2容量CD2の一方の端子とは、第2制御信号Vをラッチ回路43Aへ出力する接続点yに接続されている。第1容量CD1の他方の端子と第2容量CD2の他方の端子とには、クロック信号CLKが与えられる。前置増幅回路42Aにおける第1トランジスタM1および第2トランジスタM2はPMOSトランジスタから構成され、各ゲートには第1入力電圧Vin1および第2入力電圧Vin2が印加される。
【0033】
ラッチ回路43Aは、チャネルの極性が第1の極性である第4〜第9トランジスタM4〜M9と、チャネルの極性が第2の極性である第10〜第13トランジスタM10〜M13とから構成される。このラッチ回路43Aでは、第4〜第9トランジスタM4〜M9はチャネルの極性がPチャネルのPMOSトランジスタ、第10〜第13トランジスタM10〜M13はチャネルの極性がNチャネルのNMOSトランジスタである。第8トランジスタM8および第9トランジスタM9を除くこれら第4〜第7トランジスタM4〜M7および第10〜第13トランジスタM10〜M13は、RSフリップフロップを構成する。
【0034】
第4〜第9トランジスタM4〜M9の各ソース端子は電源電圧VDDに接続され、第12トランジスタM12および第13トランジスタM13の各ソース端子は基準電圧VSSに接続されている。また、第4トランジスタM4,第6トランジスタM6および第10トランジスタM10の各ドレイン端子は、第1出力端子out1に接続されている。また、第5トランジスタM5,第7トランジスタM7および第11トランジスタM11の各ドレイン端子は、第2出力端子out2に接続されている。また、第10トランジスタM10のソース端子と第8トランジスタM8および第12トランジスタM12の各ドレイン端子とは、相互に接続されている。また、第11トランジスタM11のソース端子と第9トランジスタM9および第13トランジスタM13の各ドレイン端子とは、相互に接続されている。接続点xは、第4トランジスタM4,第8トランジスタM8および第12トランジスタM13の各ゲートに接続され、接続点yは、第5トランジスタM5,第9トランジスタM9および第13トランジスタM13の各ゲートに接続されている。
【0035】
このような構成において、クロック信号CLKの立ち下がりエッジタイミングに、第1トランジスタM1および第1容量CD1の接続点xには、第1入力電圧Vin1の大きさに応じた速さで反転状態から復帰する第1制御信号Vが現れる。また、第2トランジスタM2および第2容量CD2の接続点yには、第2入力電圧Vin2の大きさに応じた速さで反転状態から復帰する第2制御信号Vが現れる。したがって、これら第1制御信号Vと第2制御信号Vとの間に生じる電圧差は、少ない素子数で、入力される第1入力電圧Vin1および第2入力電圧Vin2間の電圧差を増幅したものになる。
【0036】
すなわち、接続点x、yの電圧は、図7(b)に示すように、クロック信号CLKの立ち下がりエッジタイミングにおいて、反転して落ち込む。その後、第1入力電圧Vin1の方が第2入力電圧Vin2よりも大きい場合、第1トランジスタM1のゲート電位は第2トランジスタM2のゲート電位よりも高くなるので、第1トランジスタM1のソース・ドレイン間に流れる電流は第2トランジスタM2のソース・ドレイン間に流れる電流よりも小さくなる。このため、第1容量CD1には第2容量CD2よりも少ない電流で充電され、接続点xに現れる第1制御信号Vの電圧は、図7(b)に示すように、接続点yに現れる第2制御信号Vの電圧よりも低くなる。
【0037】
クロック信号CLKが立ち下がる前には接続点x、yの電圧が共にハイレベルにあり、また、第1出力電圧Vout1と第2出力電圧Vout2は、直前の比較結果を保持している。しかし、クロック信号CLKの立ち下がりエッジタイミングにおいて、接続点x、yの電圧が落ち込んで共にローレベルになると、ラッチ回路43Aは、第4トランジスタM4および第5トランジスタM5が共にオン、第12トランジスタM12および第13トランジスタM13が共にオフになる。したがって、接続点N1つまり第1出力電圧Vout1および接続点N2つまり第2出力電圧Vout2が共にハイレベルになり、ラッチ回路43Aはリセットされる。この際、第8トランジスタM8および第9トランジスタM9のオン動作により、第12トランジスタM12および第13トランジスタM13の各ドレイン電圧がハイレベルにされ、その電位がふらつかないように固定される。
【0038】
その後、第1容量CD1および第2容量CD2がそれぞれ第1入力電圧Vin1および第2入力電圧Vin2に依存したインピーダンスで充電されることにより、接続点yの電圧Vは接続点xの電圧Vよりも高くなる。したがって、第13トランジスタM13が第12トランジスタM12よりも速く導通状態に、第5トランジスタM5が第4トランジスタM4よりも速く非導通状態に近づく。このため、接続点N2の電圧が接続点N1の電圧よりも速くローレベルになろうとする。この状況は、第6トランジスタM6,第10トランジスタM10,第7トランジスタM7および第11トランジスタM11によって正帰還がかけられる。この結果、最終的に、図7(c)に示すように、接続点N1つまり第1出力電圧Vout1はハイレベル、接続点N2つまり第2出力電圧Vout2はローレベルに落ち着き、その状態がラッチ回路43Aによってラッチされる。
【0039】
これらの一連の動作はクロック信号CLKの立ち下がりエッジタイミングにだけ行われ、立ち上がりエッジタイミングには行われない。その後、クロック信号CLKの次回の立ち下がりエッジタイミングにおいて、同様な動作が行われるが、第1入力電圧Vin1と第2入力電圧Vin2との大小関係に変化がないと、図7(c)に示すように、クロック信号CLKの立ち上がりエッジタイミングにおいて第1出力電圧Vout1および第2出力電圧Vout2の電圧レベルの状態は維持される。
【0040】
このような本実施形態による比較回路41Aによれば、前置増幅回路42Aにより、クロック信号CLKの立ち下がりエッジタイミングに第1制御信号Vおよび第2制御信号Vが生成され、ラッチ回路43Aは、この第1制御信号Vおよび第2制御信号Vに基づいて第1入力電圧Vin1と第2入力電圧Vin2の大きさを比較し、比較結果をラッチする。前置増幅回路42Aにより生成される第1制御信号Vおよび第2制御信号Vは、第1入力電圧Vin1および第2入力電圧Vin2の各大きさに応じた速さで反転状態から復帰して、ラッチ回路43Aを、第1入力電圧Vin1と第2入力電圧Vin2の大きさの比較結果に応じた状態にラッチさせる。
【0041】
したがって、ラッチ回路43Aは、クロック信号CLKの立ち下がりエッジタイミングに、第1入力電圧Vin1と第2入力電圧Vin2の大きさの比較結果をラッチすると、クロック信号CLKの次の立ち下がりエッジタイミングが到来して、次の新たな第1制御信号Vおよび第2制御信号Vが入力されるまで、ラッチ状態を保持する。このため、ラッチ回路43Aから出力される第1入力電圧Vin1と第2入力電圧Vin2の大きさの比較結果は、クロック信号CLKの立ち上がりエッジタイミングでは変化しない。この結果、比較回路41Aは、従来のようにその後段にハーフラッチ回路を設けることなく、比較回路と同一のクロック信号で動作する論理回路を接続できるようになる。
【0042】
また、ラッチ回路43Aは、前置増幅回路42Aから出力される第1制御信号Vおよび第2制御信号Vに基づいて動作するため、クロック信号CLKは前置増幅回路42Aに与える1種類で済む。このため、従来の比較回路のように、前置増幅回路に与える第1クロック信号とラッチ回路に与える第2クロック信号との間に適切な遅延時間をとることなく、前置増幅回路42Aとラッチ回路43Aを順に適切なタイミングで動作させることができる。したがって、従来のように、各クロック信号間に遅延時間が適切にとれないために貫通電流が増大することはなく、過剰な貫通電流を流さないため、比較回路41Aの低消費電力化を図ることができる。
【0043】
また、本実施形態による比較回路41Aによれば、ラッチ回路43Aは、PMOSトランジスタの第4〜第9トランジスタM4〜M9と、NMOSトランジスタの第10〜第13トランジスタM10〜M13とにより、少ない素子数で簡潔に構成される。
【0044】
図8は、第1の実施形態による比較回路41Aの変形例による比較回路41Bの回路図である。また、図9は、図8に示す比較回路41Bの回路各部の電圧変化を示すタイミングチャート図である。図8および図9において図6および図7と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0045】
この変形例による比較回路41Bは、第1,第2トランジスタM1,M2および第4〜第13トランジスタM4〜M13のチャネルの極性、および、電源電圧VDDおよび基準電圧VSSの印加方向が、第1の実施形態による比較回路41Aと相違する。また、クロック信号CLKの特定変化タイミングが立ち上がりエッジタイミングになっている点で、第1の実施形態による比較回路41Aと相違する。その他の構成は、第1の実施形態による比較回路41Aと同じである。
【0046】
すなわち、第1の実施形態による比較回路41Aでは、前置増幅回路42Aを構成する第1および第2トランジスタM1,M2がPMOSトランジスタ、ラッチ回路43Aを構成する第4〜第9トランジスタM4〜M9がPMOSトランジスタ、第10〜第13トランジスタM10〜M13がNMOSトランジスタであった。しかし、この変形例による比較回路41Bでは、前置増幅回路42Bを構成する第1および第2トランジスタM1,M2がNMOSトランジスタ、ラッチ回路43Bを構成する第4〜第9トランジスタM4〜M9がNMOSトランジスタ、第10〜第13トランジスタM10〜M13がPMOSトランジスタから構成される。また、第1の実施形態による比較回路41Aにおける電源電圧VDDがこの変形例による比較回路41Bでは基準電圧VSSに置き換えられ、第1の実施形態による比較回路41Aにおける基準電圧VSSがこの変形例による比較回路41Bでは電源電圧VDDに置き換えられている。そして、クロック信号CLKの立ち上がりエッジタイミングにおいて、ラッチ回路43Bの出力がローレベルにリセットされる。
【0047】
この比較回路41Bでは、第1制御信号Vおよび第2制御信号Vは、図9(a)、(b)に示すように、クロック信号CLKの立ち上がりエッジタイミングに入力される第1入力電圧Vin1および第2入力電圧Vin2の各大きさに応じた速さで反転状態から復帰する波形形状を呈する。つまり、接続点x、yの電圧は、クロック信号CLKの立ち上がりエッジタイミングにおいて、反転して上昇する。その後、第1入力電圧Vin1の方が第2入力電圧Vin2よりも大きい場合、第1トランジスタM1のゲート電位は第2トランジスタM2のゲート電位よりも高くなるので、第1トランジスタM1のドレイン・ソース間に流れる電流は第2トランジスタM2のドレイン・ソース間に流れる電流よりも大きくなる。このため、第1容量CD1からは第2容量CD2よりも多い電荷が放電され、接続点xに現れる第1制御信号Vの電圧は、図9(b)に示すように、接続点yに現れる第2制御信号Vの電圧よりも低くなる。
【0048】
クロック信号CLKが立ち上がる前には接続点x、yの電圧は共にローレベルにあり、また、第1出力電圧Vout1と第2出力電圧Vout2は、直前の比較結果を保持している。しかし、クロック信号CLKの立ち上がりエッジタイミングにおいて、接続点x、yの電圧が立ち上がってハイレベルになると、ラッチ回路43Bは、第4トランジスタM4および第5トランジスタM5が共にオン、第12トランジスタM12および第13トランジスタM13が共にオフになる。したがって、接続点N1つまり第1出力電圧Vout1および接続点N2つまり第2出力電圧Vout2が共にローレベルになり、ラッチ回路43Bはリセットされる。この際、第8トランジスタM8および第9トランジスタM9のオン動作により、第12トランジスタM12および第13トランジスタM13の各ドレイン電圧がローレベルにされ、その電位がふらつかないように固定される。
【0049】
その後、第1容量CD1および第2容量CD2がそれぞれ第1入力電圧Vin1および第2入力電圧Vin2に依存したインピーダンスで放電することにより、接続点yの電圧Vは接続点xの電圧Vよりも高くなる。したがって、第13トランジスタM13が第12トランジスタM12よりも速く非導通状態に、第5トランジスタM5が第4トランジスタM4よりも速く導通状態に近づく。このため、接続点N2の電圧が接続点N1の電圧よりも速くローレベルになろうとする。この状況は、第6トランジスタM6,第10トランジスタM10,第7トランジスタM7および第11トランジスタM11によって正帰還がかけられる。この結果、最終的に、図9(c)に示すように、接続点N1つまり第1出力電圧Vout1はハイレベル、接続点N2つまり第2出力電圧Vout2はローレベルに落ち着き、その状態がラッチ回路43Bによってラッチされる。
【0050】
これらの一連の動作はクロック信号CLKの立ち上がりエッジタイミングにだけ行われ、立ち下がりエッジタイミングには行われない。その後、クロック信号CLKの次回の立ち上がりエッジタイミングにおいて、同様な動作が行われるが、第1入力電圧Vin1と第2入力電圧Vin2との大小関係に変化がないと、図9(c)に示すように、クロック信号CLKの立ち上がりエッジタイミングにおいて第1出力電圧Vout1および第2出力電圧Vout2の電圧レベルの状態は維持される。
【0051】
このような変形例による比較回路41Bによっても、第1の実施形態による比較回路41Aと同様な作用効果が奏される。
【0052】
図10は、本発明の第2の実施形態による比較回路51Aの回路図である。図10において図6と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0053】
この比較回路51Aは、ラッチ回路53Aに第14トランジスタM14および第15トランジスタM15を備える点だけが、第1の実施形態による比較回路41Aと相違する。その他の構成は、第1の実施形態による比較回路41Aと同じである。
【0054】
第14トランジスタM14は、ゲート端子に接続点xが接続され、ドレイン端子に第2出力端子out2が接続され、ソース端子に第4〜第7トランジスタM4〜M7の各ソース端子が接続されている。第15トランジスタM15は、ゲート端子に接続点yが接続され、ドレイン端子に第1出力端子out1が接続され、ソース端子に第4〜第7トランジスタM4〜M7の各ソース端子が接続されている。
【0055】
第1の実施形態による比較回路41Aでは、クロック信号CLKの立ち下がりエッジタイミングに前置増幅回路42Aからラッチ回路43Aに第1制御信号Vおよび第2制御信号Vが入力されて、ラッチ回路43Aにリセットがかけられた後、第4トランジスタM4および第5トランジスタM5に、それぞれ、第1出力電圧Vout1と第2出力電圧Vout2に応じた電荷がキックバックされる。第4トランジスタM4にキックバックされた電荷と、第5トランジスタM5にキックバックされた電荷の差は、直後の前置増幅回路43Aの増幅動作に影響を与える。つまり、比較回路41Aによって行われる第1入力電圧Vin1と第2入力電圧Vin2の比較は、クロック信号CLKの前回の立ち下がりエッジタイミングにおける比較結果から影響を受けることがある。
【0056】
しかし、第2の実施形態による比較回路51Aによれば、第2出力端子out2から出力される前回の比較結果に応じた電圧が第14トランジスタM14のドレイン端子に印加されることで、第1出力端子out1から出力される前回の比較結果に応じた電荷の影響を第4トランジスタM4から受ける接続点xには、第2出力端子out2から出力される前回の比較結果に応じた電荷の影響が及ぶ。また、第1出力端子out1から出力される前回の比較結果に応じた電圧が第15トランジスタM15のドレイン端子に印加されることで、第2出力端子out2から出力される前回の比較結果に応じた電荷の影響を第5トランジスタから受ける接続点yには、第1出力端子out1から出力される前回の比較結果に応じた電荷の影響が及ぶ。したがって、接続点xおよび接続点yには、それぞれ、第1出力端子out1および第2出力端子out2の双方からそれぞれ出力される前回の比較結果が及ぶことになる。
【0057】
第1出力端子out1および第2出力端子out2からそれぞれ出力される前回の比較結果は、電圧レベルが相反するものである。よって、接続点xおよび接続点yに前回の比較結果が及ぼす影響は、ほぼ等しくなり、相殺される。したがって、クロック信号CLKの次回の立ち下がりエッジタイミングに、前置増幅回路42Aからラッチ回路53Aへ出力される第1制御信号Vおよび第2制御信号Vは、相対的に前回の比較結果が低減されたものになる。このため、比較回路51Aよる電圧の比較は、前回の比較結果から影響を受け難く行われ、前回の比較結果からの影響が低減する。
【0058】
図11は、第2の実施形態による比較回路51Aの変形例による比較回路51Bの回路図である。図11において図8および図10と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0059】
この変形例による比較回路51Bは、第1,第2トランジスタM1,M2および第4〜第15トランジスタM4〜M15のチャネルの極性、および、電源電圧VDDおよび基準電圧VSSの印加方向が、第2の実施形態による比較回路51Aと相違する。また、クロック信号CLKの特定変化タイミングが立ち上がりエッジタイミングになっている点で、第2の実施形態による比較回路51Aと相違する。その他の構成は、第2の実施形態による比較回路51Aと同じである。
【0060】
すなわち、第2の実施形態による比較回路51Aでは、前置増幅回路42Aを構成する第1および第2トランジスタM1,M2がPMOSトランジスタ、ラッチ回路53Aを構成する第4〜第9トランジスタM4〜M9および第14,第15トランジスタM14,M15がPMOSトランジスタ、第10〜第13トランジスタM10〜M13がNMOSトランジスタであった。しかし、この変形例による比較回路51Bでは、前置増幅回路42Bを構成する第1および第2トランジスタM1,M2がNMOSトランジスタ、ラッチ回路43Bを構成する第4〜第9トランジスタM4〜M9および第14,第15トランジスタM14,M15がNMOSトランジスタ、第10〜第13トランジスタM10〜M13がPMOSトランジスタから構成される。また、第2の実施形態による比較回路51Aにおける電源電圧VDDがこの変形例による比較回路51Bでは基準電圧VSSに置き換えられ、第2の実施形態による比較回路51Aにおける基準電圧VSSがこの変形例による比較回路51Bでは電源電圧VDDに置き換えられている。そして、クロック信号CLKの立ち上がりエッジタイミングにおいて、ラッチ回路53Bの出力がローレベルにリセットされる。
【0061】
このような変形例による比較回路51Bによっても、第2の実施形態による比較回路51Aと同様な作用効果が奏される。
【0062】
図12は、本発明の第3の実施形態による比較回路61Aの回路図である。図12において図6と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0063】
この第3の実施形態による比較回路61Aは、前置増幅回路62Aに第3トランジスタM3を備える点だけが、第1の実施形態による比較回路41Aと相違する。その他の構成は、第1の実施形態による比較回路41Aと同じである。第3トランジスタM3は、第1トランジスタM1と第2トランジスタM2の接続点に接続されており、ゲート端子にクロック信号が与えられている。
【0064】
図13は、図12に示す比較回路61Aの回路各部の電圧変化を示すタイミングチャート図である。図13において図7と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0065】
第3の実施形態による比較回路61Aによれば、クロック信号CLKの立ち下がりエッジタイミングにおいて、第1トランジスタM1および第2トランジスタM2が動作するときに、第3トランジスタM3も同時に動作する。このとき、第3トランジスタM3のオン抵抗により、第3トランジスタM3のドレインにおける接続点Bの電圧は、図13(b)に示すように、低下する。よって、第1トランジスタM1および第2トランジスタM2の各ソース端子にかかる電圧は小さくなる。したがって、クロック信号CLKの立ち下がりエッジタイミングにおいて、第1入力電圧Vin1に応じて第1トランジスタM1を流れる電流、および、第2入力電圧Vin2に応じて第2トランジスタM2を瞬間的に流れる電流は、それらのピーク値が抑制される。このため、比較回路61Aで消費される電力を低減することができる。
【0066】
図14は、第3の実施形態による比較回路61Aの変形例による比較回路61Bの回路図である。また、図15は、図14に示す比較回路61Bの回路各部の電圧変化を示すタイミングチャート図である。図14および図15において図8図12および図13と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0067】
この変形例による比較回路61Bは、第1〜第13トランジスタM1〜M13のチャネルの極性、および、電源電圧VDDおよび基準電圧VSSの印加方向が、第3の実施形態による比較回路61Aと相違する。また、クロック信号CLKの特定変化タイミングが立ち上がりエッジタイミングになっている点で、第3の実施形態による比較回路61Aと相違する。その他の構成は、第3の実施形態による比較回路61Aと同じである。
【0068】
すなわち、第3の実施形態による比較回路61Aでは、前置増幅回路62Aを構成する第1〜第3トランジスタM1〜M3がPMOSトランジスタ、ラッチ回路43Aを構成する第4〜第9トランジスタM4〜M9がPMOSトランジスタ、第10〜第13トランジスタM10〜M13がNMOSトランジスタであった。しかし、この変形例による比較回路61Bでは、前置増幅回路62Bを構成する第1〜第3トランジスタM1〜M3がNMOSトランジスタ、ラッチ回路43Bを構成する第4〜第9トランジスタM4〜M9がNMOSトランジスタ、第10〜第13トランジスタM10〜M13がPMOSトランジスタから構成される。また、第3の実施形態による比較回路61Aにおける電源電圧VDDがこの変形例による比較回路61Bでは基準電圧VSSに置き換えられ、第3の実施形態による比較回路61Aにおける基準電圧VSSがこの変形例による比較回路61Bでは電源電圧VDDに置き換えられている。そして、クロック信号CLKの立ち上がりエッジタイミングにおいて、ラッチ回路43Bの出力がローレベルにリセットされる。
【0069】
この比較回路61Bでは、クロック信号CLKの立ち上がりエッジタイミングにおいて、第1トランジスタM1および第2トランジスタM2が動作するときに、第3トランジスタM3も同時に動作する。このとき、第3トランジスタM3のオン抵抗により、第3トランジスタM3のドレインにおける接続点Bの電圧は、図15(b)に示すように、上昇する。よって、第1トランジスタM1および第2トランジスタM2の各ソース端子にかかる電圧は小さくなる。したがって、クロック信号CLKの立ち上がりエッジタイミングにおいて、第1入力電圧Vin1に応じて第1トランジスタM1を流れる電流、および、第2入力電圧Vin2に応じて第2トランジスタM2を瞬間的に流れる電流は、それらのピーク値が抑制される。このため、比較回路61Bで消費される電力を低減することができ、変形例による比較回路61Bによっても、第3の実施形態による比較回路61Aと同様な作用効果が奏される。
【0070】
図16は、本発明の第4の実施形態による比較回路71Aの回路図である。図16において図10および図12と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0071】
この第4の実施形態による比較回路71Aは、第3の実施形態による比較回路61Aと同様に前置増幅回路62Aに第3トランジスタM3を備える点だけが、第2の実施形態による比較回路51Aと相違する。その他の構成は、第2の実施形態による比較回路51Aと同じである。
【0072】
この第4の実施形態による比較回路71Aにおいても、前置増幅回路62Aに第3トランジスタM3を備えることで、第3の実施形態による比較回路61Aと同様な作用効果が奏される。
【0073】
図17は、本発明の第4の実施形態による比較回路71Aの変形例による比較回路71Bの回路図である。図17において図11および図14と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0074】
この変形例による比較回路71Bは、第3の実施形態の変形例による比較回路61Bと同様に前置増幅回路62Bに第3トランジスタM3を備える点だけが、第2の実施形態の変形例による比較回路51Bと相違する。その他の構成は、第2の実施形態の変形例による比較回路51Bと同じである。
【0075】
この変形例による比較回路71Bにおいても、前置増幅回路62Bに第3トランジスタM3を備えることで、第3の実施形態による比較回路61Aと同様な作用効果が奏される。
【産業上の利用可能性】
【0076】
上記の各実施形態および変形例による比較回路41A,41B,51A,51B,61A,61B,71Aおよび71Bは、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータなどにおけるコンパレータに利用することで、デジタル・アナログ混載LSIのシステム全体での高速化と共に低消費電力化に寄与することができる。
【符号の説明】
【0077】
41A,41B,51A,51B,61A,61B,71A,71B…比較回路
42A,42B,62A,62B…前置増幅回路
43A,43B,53A,53B…ラッチ回路
M1〜M15…第1トランジスタ〜第15トランジスタ
D1,CD2…第1,第2容量
in1,in2…入力端子
out1,out2…出力端子
in1,Vin2…入力電圧
out1,Vout2…出力電圧
DD…電源電圧
SS…基準電圧
CLK…クロック信号
,V…第1,第2制御信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17