【実施例】
【0033】
以下、実施例および比較例により、本発明を具体的に説明する。
<実施例1>
100mlのビーカーに、有効塩素濃度が43質量%である次亜塩素酸ナトリ
ウム5水和物結晶を10.0g入れ、純水10.5mlを加えて撹拌して、有効塩素濃度21質量%の水溶液とした。
ここで、次亜塩素酸ナトリウム中の有効塩素濃度は、以下の方法で測定した。
前記水溶液0.582gを精密に量り、純水50mlを加え,ヨウ化カリウム2gおよび酢酸10mlを加え、直ちに密栓して暗所に15分間放置し、遊離したヨウ素を0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した結果(指示薬 デンプン試液)、滴定量は34.55mlであった。別に空試験を行い補正し、0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液1mlが3.545mgClに相当するので、次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の有効塩素濃度は21質量%である。
【0034】
前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液をスターラーで撹拌しながら恒温水槽にて30℃に加温した後、セルロース系原料として、平均粒子径が50μm、カルボキシル基量が0.03mmol/gである旭化成ケミカルズ社製のセオラスFD−101(商品名)を0.70g加えた。
セルロース系原料を供給後、同じ恒温水槽で30℃に保温しながら、30分間スターラーで撹拌し、次に、総量100mlになるまで純水を加えた後、目開き0.1μmのPTFE製メンブランフィルターを使用して、吸引ろ過により生成物を固液分離し、得られたろ過上物を純水で洗浄した後に、カルボキシル基量を測定したところ、0.36mmol/gであり、セルロース系原料のカルボキシル基量より増加しており、酸化セルロースが得られた。
30分間の撹拌中、激しい反応は認められなかった。ろ過上物量は0.66gであり、セルロース系原料からの大幅減少は見られなかった。
前記ろ過上物を純水に分散させて約1%スラリーとし、超音波ホモジナイザーにて10分間解繊処理をした。処理液を遠沈管に入れ、t−ブタノールを加えた後に、十分に混合し遠心分離させた。得られた上澄み分を除去してt−ブタノールを加える操作を10回繰り返して溶媒置換した。そして、得られたt−ブタノール分散液を凍結乾燥させ、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテクノロジーズ社製S−4800)で観察した結果、幅が5〜50nmであるセルロースナノファイバーが得られていることを確認した。
図1に実施例1で得られたセルロースナノファイバーのSEMの倍率が10万倍の写真を示す。
【0035】
<実施例2>
有効塩素濃度を32質量%にした以外は実施例1と同じ条件で反応を行った。
セルロース系原料の供給から約10分経過後にガス発生を伴った反応が見られ、ろ過上物の取得量は0.13gであり、ろ過上物のカルボキシル基量は0.47mmol/gであった。投入したセルロース量と比較して明らかに少なく、多くが母液に溶解したと推測した。
そこで、母液をエタノール液に添加し、得られた沈殿を固液分離、エタノールで洗浄した後、乾燥して評価サンプル(母液回収物)を得た。母液回収物は0.38gであり、処理後セルロースの多くが母液に溶解したことが分かった。ろ過下物のカルボキシル基量は0.67mmol/gであった。
ろ過上物およびろ過下物をそれぞれ、純水に分散させ、超音波ホモジナイザーで解繊処理した結果、1分間で全体が透明な処理液になった。
ろ過上物、ろ過下物を解繊した処理液を別々にt−ブタノールを加えて実施例1と同様に溶媒置換して凍結乾燥させ、SEMで観察した結果、いずれも幅が約100nm、長さが0.4〜1.0μmの棒状形状のセルロースナノクリスタルが得られていることが確認された。
【0036】
<実施例3>
有効塩素濃度が43質量%である次亜塩素酸ナトリウム5水和物を30℃に加温して融液状態を使用した以外は実施例1と同じ条件で反応を行った。
ろ過上物のカルボキシル基量は1.5mmol/gであり(取得量は0.01g以下)、ろ過下物(取得量は0.59g)のカルボキシル基量は4.9mmol/gであった。ろ過下物をSEMで観察した結果、幅が約100nm、長さが0.4〜1.0μmの棒状形状のセルロースナノクリスタルが得られていることが確認された。
図4に実施例3で得られたセルロースナノクリスタルのSEM写真(倍率5万倍)を示す。
【0037】
<実施例4>
有効塩素濃度を18質量%にした以外は実施例1と同じ条件で反応を行った。
ろ過上物量は0.63gであり、カルボキシル基量は0.16mmol/gであった。ろ過上物をSEMで観察した結果、幅が5〜50nmであるセルロースナノファイバーが得られていることを確認した。
【0038】
<実施例5>
有効塩素濃度を26質量%にした以外は実施例1と同じ条件で反応を行った。
30分間の撹拌中、激しい反応は認められなかった。ろ過上物量は0.40gであり、カルボキシル基量は0.41mmol/gであった。
ろ過上物をSEMで観察した結果、幅が5〜50nmであるセルロースナノファイバーが得られていることを確認した。
【0039】
<実施例6>
100mlのビーカーに、有効塩素濃度が43質量%である次亜塩素酸ナトリ
ウム5水和物結晶を30.0g入れ、純水と35質量%の塩酸を加えて撹拌して、有効塩素濃度18質量%でpH7.0の水溶液とした。
次に、前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液をスターラーで撹拌しながら恒温水槽にて30℃に加温した後、セルロース系原料として、カルボキシル基量が0.05mmol/gである針葉樹パルプ(SIGMA-ALDRICH社 NIST RM8495,bleached kraft pulp)を綿状に機械解繊した物を0.35g加えた。
セルロース原料を供給後、同じ恒温水槽で30℃に保温しながら、pH7.0を維持するために、48質量%の水酸化ナトリウムを添加して、30分間スターラーで攪拌した。目開き0.1μmのPTFE製メンブランフィルターを使用して、吸引ろ過により生成物を固液分離し、得られたろ過上物を純水で洗浄した後に、カルボキシル基量を測定したところ、1.26mmol/gであり、ろ過上物量は0.09gであった。
【0040】
<実施例7>
有効塩素濃度を14質量%とした以外は実施例6と同様に反応を行った結果、
カルボキシル基量が0.62mmol/gであり、ろ過上物量は0.16gであった。
【0041】
<実施例8〜実施例16>
有効塩素濃度および反応中のpHを表1に示すように調整した以外は、実施例6と同様に反応を行った。得られた生成物のカルボキシル基量とろ過上物量を表1に示す。
実施例10で得られたろ過上物について、実施例1と同様な方法で解繊処理してナノ化させ、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、幅が10〜20nmであるセルロースナノファイバーが得られていることを確認した。
図2に実施例10で得られたセルロースナノファイバーのSEM写真(倍率3万倍)を示す。
また、実施例7で得られたろ過上物について、実施例1と同様な方法で解繊処理してナノ化させ、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、幅が30nm〜70nm、長さ30〜280nmであるセルロースナノクリスタルが得られていることを確認した。
図3に実施例7で得られたセルロースナノクリスタルのSEM写真(倍率5万倍)を示す。
【0042】
【表1】
【0043】
<比較例1>
有効塩素濃度を12質量%にした以外は実施例1と同じ条件で反応を行った。
ろ過上物のカルボキシル基量は0.07mmol/gであり、セルロース系原料とほぼ同じ値であり、酸化はほとんど進まなかった。取得量は0.63gであり、セルロース系原料から大幅減少はなかった。
酸化が進まなかったため、ナノ化させる工程は実施しなかった。
【0044】
<比較例2>
有効塩素濃度を7質量%にした以外は実施例1と同じ条件で反応を行った。
ろ過上物のカルボキシル基量は0.09mmol/gであり、セルロース系原料との差は僅かであり、酸化はほとんど進まなかった。取得量は0.69gであり、セルロース原料から大幅減少はなかった。
酸化が進まなかったため、ナノ化させる工程は実施しなかった。