(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769600
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】手術顕微鏡装置
(51)【国際特許分類】
A61B 90/25 20160101AFI20201005BHJP
G02B 21/24 20060101ALI20201005BHJP
A61B 46/10 20160101ALI20201005BHJP
【FI】
A61B90/25
G02B21/24
A61B46/10
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-139086(P2016-139086)
(22)【出願日】2016年7月14日
(65)【公開番号】特開2018-7853(P2018-7853A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390013033
【氏名又は名称】三鷹光器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝之
【審査官】
菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−039644(JP,A)
【文献】
特開平06−269461(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0161176(US,A1)
【文献】
特開2003−220077(JP,A)
【文献】
米国特許第05732712(US,A)
【文献】
特表2001−509861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/20−90/25
A61B 46/10
G02B 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアに設置されたスタンド本体に対して、2本の平行な前アーム及び後アームと、2本の平行な上アーム及び下アームを含み、各アームの連結部が回転自在に軸支された平行リンク機構を、前アームの途中に設定された回転軸を中心に回動自在に取付け、
該平行リンク機構の上辺は上アームの一部により形成され、上アームの平行リンク機構を越えて前方へ延長された前端部には手術顕微鏡を支持し、
平行リンク機構の下辺は下アームの一部により形成され、下アームの平行リンク機構を越えて後方へ延長された後端部にはカウンタウェイトを支持し、
少なくとも手術顕微鏡及び上アームがドレープにて覆われる手術顕微鏡装置であって、
前記上アーム及び後アームを中空構造にして上アームの前端側に吸気口を形成し、後アームの下端に下アームとの連結部を越えて下方に延び且つ下端が開放された筒状の延長部を形成して内部に排気ポンプを収納し、延長部から後アーム及び上アームを経て吸気口に至る範囲を通気可能な構造にしたことを特徴とする手術顕微鏡装置。
【請求項2】
後アームの下端が下アームのスタンド本体側の面に連結され、延長部が下アームとスタンド本体との間に位置していることを特徴とする請求項1記載の手術顕微鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドレープで覆って使用する手術顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脳神経外科手術等において使用される手術顕微鏡は、フロアに設置されたスタンド本体に縦方向に延びる平行リンク機構を軸支し、その平行リンク機構の上端から水平方向に延びる上アームの先端に釣り下げられた状態で支持されている。
【0003】
少なくとも手術顕微鏡とそれを支持する上アームは無菌状態にするためにドレープにて覆われる。ドレープは垂れ下がるとドクターやアシスタントの視界を妨げるため、上アーム内に内蔵された排気ポンプによりドレープ内の空気を吸引し手術顕微鏡等に対して密着させた状態にしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2988980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような関連技術にあっては、排気ポンプが上アーム内に収納されているため、排気ポンプと手術顕微鏡との距離が比較的近く、手術顕微鏡を観察しているドクターにとって排気ポンプのノイズが気になる。
【0006】
本発明は、このような関連技術に着目してなされたものであり、排気ポンプのノイズが気にならない手術顕微鏡装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によれば、フロアに設置されたスタンド本体に対して、2本の平行な前アーム及び後アームと、2本の平行な上アーム及び下アームを含み、各アームの連結部が回転自在に軸支された平行リンク機構を、前アームの途中に設定された回転軸を中心に回動自在に取付け、該平行リンク機構の上辺は上アームの一部により形成され、上アームの平行リンク機構を越えて前方へ延長された前端部には手術顕微鏡を支持し、平行リンク機構の下辺は下アームの一部により形成され、下アームの平行リンク機構を越えて後方へ延長された後端部にはカウンタウェイトを支持し、少なくとも手術顕微鏡及び上アームがドレープにて覆われる手術顕微鏡装置であって、前記上アーム及び後アームを中空構造にして上アームの先端側に吸気口を形成し、後アームの下端に下アームとの連結部を越えて下方に延び且つ下端が開放された筒状の延長部を形成して内部に排気ポンプを収納し、延長部から後アーム及び上アームを経て吸気口に至る範囲を通気可能な構造にしたことを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の側面によれば、後アームの下端が下アームのスタンド本体側の面に連結され、延長部が下アームとスタンド本体との間に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の側面によれば、排気ポンプを後アームの下端よりも更に下方の延長部内に収納したため、上アームの前端に支持されている手術顕微鏡からの距離が遠くなり、手術顕微鏡を観察しているドクターは排気ポンプのノイズが気にならない。
【0010】
本発明の第2の側面によれば、排気ポンプを内蔵した延長部が下アームとスタンド本体との間に位置しているため、延長部の存在が目立ちにくい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】上アームと後アームの連結部付近を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好適な実施形態を
図1〜
図5に基づいて説明する。以上及び以下において前後左右の方向性は
図1及び
図3に示された通りである。
【0013】
手術室内のフロア上に設置されているスタンド本体1には、前アーム2及び後アーム3と、上アーム4及び下アーム5とを、それぞれ連結部6〜9により回動自在に軸支した構造の平行リンク機構Aが支持されている。平行リンク機構Aは前アーム2の途中に設定された回転軸10においてスタンド本体1に支持されている。
【0014】
平行リンク機構Aの上辺は上アーム4の一部により形成され、上アーム4はそのまま前方へ延びている。上アーム4の前端には先端アーム11の下端が軸支され、その下方に吊下アーム13を介して手術顕微鏡12が支持されている。
【0015】
平行リンク機構Aの下辺は下アーム5の一部により形成され、下アーム5はそのまま後方へ延びている。下アーム5の後端にはカウンタウェイトCが設けられている。
【0016】
このような平行リンク機構Aを変形させることにより手術顕微鏡12を前後・上下に移動させることができ、カウンタウェイトCによる重量バランスにより手術顕微鏡12は移動させた先で空中停止する。
【0017】
上アーム4の前アーム2に対する連結部6には短い基端アーム14の下端が軸支されている。前アーム2は上下に延びる角筒形状で内部には図示せぬ別の平行リンク機構が設けられている。基端アーム14はこの図示せぬ別の平行リンク機構に関連付けられ常に垂直が維持される。この基端アーム14と先端アーム11の上端同士はサブアーム15にて連結される。これにより平行リンク機構Aをどのように変形させても常に先端アーム11の垂直状態が維持される。
【0018】
上アーム4は金属製の円筒で形成され全体として上側に凸となるように湾曲している。上側に湾曲しているのは下側の作業スペースを確保するためである。上アーム4の両端は鋳物製の中空部材16、17で形成されている。上アーム4はこれら中空部材16、17も構造として含んだ状態で全体として中空である。
【0019】
上アーム4の前端の中空部材16には吸気口18が開口形成されている。後側の中空部材17は基端アーム14より後側部分がメンテナンスのために別部品のカバー19として着脱自在になっている。
【0020】
後アーム3も上下に延びる筒状の中空構造になっており、後アーム3の上端と上アーム4の後端である中空部材17との連結部9には、
図4に示すように通気口20が形成されている。従ってこの連結部9は回動自在だが通気口20を介して後アーム3と上アーム4(中空部材17)の内部空間が連通した状態になっている。
【0021】
後アーム3の下部は下アーム5の内側(スタンド本体1側)の面に連結されている。従って後アーム3の下部と下アーム5との連結部8は、下アーム5とスタンド本体1との間のスペースS内に位置している。
【0022】
後アーム3の下端には連結部8を越えて下方に延びる延長部21が形成されている。延長部21は後アーム3よりも大径で下側が開放された筒状で、内部に排気ポンプ22が収納されている。排気ポンプ22のスイッチ操作は図示せぬコントロールパネルにより行われる。
【0023】
連結部8は後アーム3と一体的に回転すると共に連結部8には後アーム3の内部と延長部21とを連通状態にする通気路23が形成されている。従って延長部21から後アーム3及び上アーム4を経て吸気口18に至る範囲が全て通気可能な1つの管構造として構成される。
【0024】
スタンド本体1には手術顕微鏡12から上アーム4を含む必要部分が無菌状態にするためのドレープPにて覆われる。特に上アーム4や手術顕微鏡12を覆う部分のドレープPが下側に垂れ下がると、ドクターやアシスタント等の視野を邪魔するため、ドレープPを上アーム4や手術顕微鏡12に密着させる必要がある。
【0025】
そのため中空構造の上アーム4及び後アーム3を通路として先端の吸気口18からドレープP内の空気Eを吸引する。吸引は後アーム3の下端の延長部21に設けられた排気ポンプ22により行う。排気ポンプ22を稼働させると、後アーム3内が減圧され、上アーム4内が減圧され、先端の吸気口18からドレープP内の空気Eが吸引され、吸引された空気Eは延長部21の下端からドレープPの外部へ排出される。
【0026】
上アーム4の前端の吸気口18から空気Eが吸引されるため、手術顕微鏡12付近及び上アーム4の先端付近のドレープPが確実に吸引されて密着状態となり、周辺にいる人の視野を遮らない。
【0027】
しかも、排気ポンプ22が後アーム3の下端よりも更に下方に位置する延長部21内に収納されており、上アーム4の前端に支持される手術顕微鏡12との距離が遠いため、手術顕微鏡12付近に排気ポンプ22のノイズが届きにくく、手術顕微鏡12を観察しているドクターが手術に集中することができる。
【0028】
また排気ポンプ22を内蔵した延長部21が下アーム5とスタンド本体1との間に位置しているため、延長部21の存在が目立ちにくい。
【符号の説明】
【0029】
1 スタンド本体
2 前アーム
3 後アーム
4 上アーム
5 下アーム
6〜9 連結部
12 手術顕微鏡
18 吸気口
21 延長部
22 排気ポンプ
A 平行リンク機構
E 空気
P ドレープ
S スペース