(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吐水部の下面と前記カバーの下面とが面一であるまたは前記吐水部の下面が前記カバーの下面よりも上側に位置するよう構成されることを特徴とする請求項2に記載の手洗装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
図1は、実施の形態に係る手洗装置10が用いられる便器装置12を示す斜視図である。便器装置12は、便器14と、ケーシング16と、便器洗浄タンク(以下、単にタンクという)18と、手洗装置10と、を備える。タンク18は、便器14の便鉢(不図示)の洗浄に利用する洗浄水を貯水する。ケーシング16は、タンク18等を収容する。タンク18およびケーシング16は、便器14に載置される。手洗装置10は、いわゆる水栓装置であり、ケーシング16の上端の開口16aを塞ぐようケーシング16に取り付けられる。
【0013】
図2は、便器装置12の給水系の一部を模式的に示す構成図である。便器装置12は、タンク給水路20と、分岐給水路22と、ボールタップ24と、を備える。手洗装置10は、吐水部材34を備える。吐水部材34は、手洗いのための水を吐水する。
【0014】
タンク給水路20は、タンク18に給水するための水路である。タンク給水路20にはボールタップ24が設置される。ボールタップ24は、タンク18内の水位に連動してタンク給水路20を開閉する。タンク18内の洗浄水が所定水位を下回るとボールタップ24が開弁し、タンク給水路20の下流端部20aからタンク18内に給水される。タンク18内の洗浄水が所定水位以上になるとボールタップ24が閉弁し、タンク給水路20からタンク18内への給水が停止する。
【0015】
分岐給水路22は、タンク給水路20から分岐する流路であって、吐水部材34に給水するための水路である。分岐給水路22は、ボールタップ24の下流側においてタンク給水路20から分岐している。したがって、分岐給水路22から吐水部材34への給水およびその停止も、タンク18の水位に連動して切り替えられる。
【0016】
図3は、手洗装置10の断面図である。
図3は、吐水部材34と給水管28とを通る鉛直断面を示す。手洗装置10は、手洗器26と、給水管28と、カバー36と、をさらに備える。給水管28は、前述の分岐給水路22の一部を構成する。給水管28は、手洗器26の後壁部26d(後述)の後ろ側に配置される。
【0017】
手洗器26は、合成樹脂、セラミックス等により形成される。手洗器26は、鉢部26aと、外周壁部26bと、を含む。外周壁部26bは、鉢部26aを外周側から囲むよう鉢部26aの上端縁部から下方に延びる。
【0018】
鉢部26aは、吐水部材34から吐水される水を受ける。鉢部26aは、その後壁部26dがその前壁部26eより上側に延びるよう形成される。鉢部26aの後壁部26dの上部には組立体30(後述)が取り付けられる取付部26fが設けられる。鉢部26aの底面部には排水口26cが形成されている。鉢部26aが受けた水は、この鉢部26aを介してタンク18(
図3では不図示)に排水される。
【0019】
図4は、吐水部材34とカバー36との組立体30とその周辺を示す断面図である。
図5は、
図4のA−A線断面図である。
図6は、吐水部材34とカバー36との組立体30とその周辺を下側から見た斜視図である。手洗装置10は、2つのねじ40をさらに備える。
【0020】
給水管28は、その先端に雄側接続筒部28aを有する。給水管28は、後壁部26dの取付部26fに設けられた挿通孔26gに雄側接続筒部28aが挿通された状態で、後壁部26dにねじ32により取り付けられる。
【0021】
カバー36は、樹脂材料から射出成形により形成される。吐水部材34の大部分を覆い隠すための部材である。本実施の形態では、カバー36は、吐水部48(後述)を除いた部分を覆っている。吐水部材34とカバー36とは、手洗器26に取り付けられる前に、組み合わされて組立体30を構成する。
【0022】
組立体30は、クリップ等の留め具38により吐水部材34が給水管28に固定されることにより、給水管28に対して固定される。給水管28は、上述のように手洗器26(特にその後壁部26d)に取り付けられる。したがって、組立体30は、給水管28を介して手洗器26に取り付けられる。
【0023】
吐水部材34は、筒状の雌側接続筒部34aと、雌側接続筒部34aより左右に幅広の平たい箱状の本体部34bと、を有する。雌側接続筒部34aには、その一端側から給水管28の雄側接続筒部28aが差し込まれる。吐水部材34の雌側接続筒部34aと給水管28の雄側接続筒部28aとの間は、給水管28の雄側接続筒部28aの外周面に装着されるシール部材42によりシールされる。雌側接続筒部34aの他端側は、本体部34bと接続されている。
【0024】
本体部34bの外周壁34cには流入口34dが設けられる。本体部34bの内部と雌側接続筒部34aとは、この流入口34dを通じて連通する。本体部34bの底板部34eは、下流側(すなわち雌側接続筒部34aから遠い側)に吐水部48を有する。吐水部48は、下向きにシャワー状の水を吐水する部分であり、吐水部48を上下に貫通する複数の吐水口50を有する。吐水口50が形成されている部分が吐水部48であるともいえる。給水管28から雌側接続筒部34aを介して本体部34bに流れ込んだ水は、吐水孔50から吐水される。
【0025】
吐水部48は、底板部34eの他の部分よりも肉厚で底板部34eの他の部分よりも下側に突出している。カバー36には、吐水部48に対応する形状の開口部36aが設けられている。吐水部48は、この開口部36aに嵌まっている。吐水部48は特に、その下面48aとカバー36の下面36bとが実質的に面一となっている。また、吐水部48は、カバー36と直接接触しないよう構成されている。つまり、吐水部48とカバー36との間には隙間が設けられている。
【0026】
2つのねじ40は、吐水部材34の取付部34fを貫通してカバー36の取付部36dに形成されるねじ孔(不図示)に螺合されることによって、吐水部材34をカバー36に取り付ける。これにより、カバー36に対する吐水部材34の実質的な平行移動が規制される。つまり、ねじ40と、吐水部材34の取付部34fと、カバー36の取付部36dとは、カバー36に対する吐水部材34の実質的な平行移動を規制する係合構造として機能する。
【0027】
カバー36は、吐水部48より後方側に第1突出部36eを有する。第1突出部36eは、カバー36の下側部分36iの上面36jから吐水部材34に向けて上側に突出する。吐水部材34は、この第1突出部36eに当接する当接部34gを有する。第2当接部34gは、カバー36の第1突出部36eに後方側から当接する。言い換えると、第2当接部34gは、カバー36の第1突出部36eに、ねじ40を螺号する方向に当接する。
【0028】
続いて、吐水部材34とカバー36とを組み合わせて組立体30を構成する手順について説明する。
図7〜
図9は、吐水部材34とカバー36とを組み合わせる様子を示す図である。
【0029】
カバー36に吐水部材34を差し込む(
図7)。奥まで差し込むと、吐水部材34の先端部34iがカバー36の上側部分36fの下面36gに当接する(
図8)。上側部分36fの下面36gは、前方ほど下に下がっている。したがって、吐水部材34をさらに差し込むと、吐水部材34の先端部34iが上側部分36fの下面36gに沿って下方に下がる。これにより、吐水部材34の先端側が下方に下がり、その結果、吐水部材34の吐水部48がカバー36の開口部36aに嵌る。次いで、2つのねじ40(
図7〜9では不図示)により、吐水部材34をカバー36に取り付ける。このようにして、組立体30が構成される。
【0030】
以上説明した本実施の形態に係る手洗装置10によると、吐水部材34とカバー36とは組立体30を構成する。したがって、吐水部材34とカバー36とをひとつの部材(組立体30)として手洗器26に取り付けることができる。詳しくは、留め具38により吐水部材34を給水管28に固定することにより、組立体30が給水管28を介して手洗器26に取り付けられる。これにより、吐水部材34とカバー36とを別々に手洗器26に取り付ける場合と比べて、取り付け作業の作業性が向上する。
【0031】
また、本実施の形態に係る手洗装置10によると、吐水部材34と、カバー36とは別体として形成される。したがって、カバー36を取り替えることで、種々の意匠の手洗装置10を容易に実現できる。また、吐水部材34と別体であるため、カバー36をメッキする場合も、特にマスキングせずに金属を溶かした溶液にカバー36を漬けることができる。つまり、組立体30を容易にメッキできる。
【0032】
また、本実施の形態に係る手洗装置10によると、吐水部48の下面48aとカバー36の下面36bとが面一となっている。そのため、吐水部48の下面48aを拭き掃除等しやすい。つまり、本実施の形態に係る手洗装置10によると、吐水部48の清掃性が向上する。
【0033】
また、本実施の形態に係る手洗装置10では、吐水部材34をカバー36に差し込んだあとにねじ40を螺合することにより、吐水部材34とカバー36とが組み合わされた組立体30が構成される。ここで、吐水部材34の吐水部48の下面48aは、カバー36に覆われずに露出しているため、利用者の手で上向きに押されるなど外力が加わりうる。3つ以上のねじを用いて吐水部材34をカバー36に取り付ければ、吐水部48の下面48aが押された場合のカバー36に対する吐水部材34の実質的な平行移動と回転移動とを規制できる。しかしながら、ねじの数が増えるほど、手洗装置10としての部品点数が増え、また取り付け作業が繁雑になる。
【0034】
本実施の形態に係る手洗装置10では、2つのねじ40で吐水部材34をカバー36に取り付けている。この場合、吐水部48の下面48aが上向きに押されると、2つのねじ40による係合部分を通る軸を中心に(本実施の形態では左右方向に延びる軸を中心)に、カバー36に対して吐水部材34が回転移動するおそれがある。詳しくは、
図4の矢印D1の方向に回転移動するおそれがある。これに対し、本実施の形態に係る手洗装置10では、吐水部48よりも後方側に位置するカバー36の第1突出部36eに、その後方側から吐水部材34の当接部34gが当接する。これにより、矢印D1の方向の吐水部材34の回転移動が規制される。つまり、本実施の形態に係る手洗装置10によると、吐水部材34をカバー36に取り付けるためのねじ40の数を2つに抑えつつも、吐水部材34の平行移動に加えて吐水部材34の回転移動を抑止できる。
【0035】
また、第1突出部36eの存在は、射出成形でカバー36を形成する際にひけを生じる原因となりうる。これに対し、本実施の形態に係る手洗装置10では、第1突出部36eはカバー36の下側部分36iに設けられる。したがって、仮に第1突出部36eの周辺のカバー36の部分にひけが生じても、便器装置12の利用者から視認されにくい。つまり、本実施の形態に係る手洗装置10によれば、意匠性に優れた手洗装置を実現できる。
【0036】
また、本実施の形態に係る手洗装置10では、吐水部48とカバー36との間には隙間が設けられている。これにより、吐水部48からの水がカバー36に伝わりにくくなり、カバーに水垢が付きにくくなる。
【0037】
以上、実施の形態に係る手洗装置について説明した。この実施の形態は例示であり、その各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0038】
(変形例1)
2つのねじ40と、吐水部材34の取付部34fと、カバー36の取付部36dとが、カバー36に対する吐水部材34の実質的な平行移動を規制する係合構造として機能する場合について説明したが、これに限られない。例えば、吐水部材34とカバー36はそれぞれ、スナップフィット方式により互いに係合する係合部を有してもよい。この場合、吐水部材34の係合部とカバー36の係合部とが係合構造として機能する。
【0039】
(変形例2)
実施の形態では特に言及しなかったが、吐水部材34とカバー36とは、前後方向に延びる軸を中心に、カバー36に対して吐水部材34が回転移動するのを規制するための構造を有していてもよい。
【0040】
図10は、組立体30を示す図である。
図10では、組立体30を後方から見た状態を示している。吐水部材34は、上側に突出する第2突出部34hを有する。カバー36は、上向きに凹んだ凹部36hを有する。本変形例では、凹部36hは、上側部分36fの下面36gから下向きに突出する2つの突出部の間の隙間として形成されている。なお、凹部36hは、上側部分36fの下面36gに形成される溝であってもよい。カバー36の凹部36hには、吐水部材34の第2突出部34hが嵌る。これにより、前後方向に延びる軸を中心に、矢印D2の方向に回転移動するのが抑止される。この場合、ねじ40の数を1つにしてもよい。
【0041】
(変形例3)
実施の形態では、吐水部48の下面48aとカバー36の下面36bとが実質的に面一となっている場合について説明したが、これに限られず、吐水部48は、吐水部48の下面48aがカバー36の下面36bよりも上側に位置するよう構成されてもよい。この場合、仮に製造誤差が吐水部材34(特にその吐水部48)やカバー36に製造誤差があっても、吐水部48がカバー36の下面36bよりも下側に突出するのが抑止される。
【0042】
以上の記載から、下記の発明が認識される。
本発明のある態様の手洗装置は、吐水部材と、吐水部材と組み合わされて組立体を構成する吐水部材のカバーと、組立体が取り付けられ、吐水部材から吐水される水を受けて便器洗浄タンクに排水する手洗器と、を備える。吐水部材は、下向きの吐水口を有する吐水部を有する。カバーは、カバーの内側と、カバーの外側であってカバーの下方とを連通する開口部を有する。吐水部は、下側に突出し、開口部に進入している。この態様によると、吐水部材とそのカバーとは組立体を構成する。そのため、吐水部材とカバーとをひとつの部材(組立体)として手洗器に取り付けることができ、吐水部材とカバーとを別々に手洗器に取り付ける場合と比べて、取り付け作業の作業性が向上する。
【0043】
開口部は、吐水部に対応する形状を有してもよい。
【0044】
吐水部の下面とカバーの下面とが面一であるまたは吐水部の下面がカバーの下面よりも上側に位置するよう構成されてもよい。この場合、吐水部の清掃性が向上する。
【0045】
カバーに対する吐水部材の実質的な平行移動を規制する係合構造を備えてもよい。吐水部材とカバーとは、カバーに対する吐水部材の回転移動を規制するための係合部を有してもよい。例えば、係合構造がねじによる係合の場合、回転移動を規制する係合部がない場合と比べてねじの本数を少なくできる。
【0046】
カバーの係合部は、カバーの下側部分に設けられる吐水部材に向けて突出する突出部であってもよい。
【0047】
本発明の別の態様は、便器装置である。この装置は、便器と、便器を洗浄するための洗浄水を貯水する便器洗浄タンクと、便器洗浄タンクに排水する手洗装置と、を備えてもよい。