(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示された散水装置71では、緩衝板76の端部にもぐり堰77が設けられているので、もぐり堰77とその下の緩衝板76との間の間隙を通過する過程で、水の動圧を低減させることができる。しかし、この構成では、トラフ72内に大流量の水を導入させると、水面が激しく波打ちすることが新たに判明した。このため、特許文献1の構成は大流量に適用できない。
【0005】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、トラフ内に導入された水の流れの動圧を低減することができ、しかも、大流量の場合でも液面の波打ちを抑制できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明は、一方向に並んだ多数の伝熱管を有するオープンラック式気化器に用いられる散水装置であって、前記多数の伝熱管の並び方向に沿って延びる形状を有し、熱源流体としての水が導入される供給口が底部に形成されるとともに、供給された水を上縁から溢れさせるトラフと、前記供給口を通してトラフ内に導入された水を通過させる開口が形成される一方で、前記供給口を通過した前記水を前記トラフの長手方向の流れに変える緩衝
板と、前記緩衝板の上方で且つ液面よりも下方に配置され、前記開口を通過した水を前記トラフの長手方向の流れに変える天板と、前記緩衝板に沿って前記空間内を前記トラフの長手方向に流れる水を通過させる多数の孔を有する多孔部材と、を備え、前記
多孔部材は、前記緩衝板に繋がっている散水装置である。
【0007】
本発明では、緩衝板に沿って流れる水が多孔部材の多数の孔を通過する構成なので、従来のもぐり堰のように、緩衝板とその下側の部材との間に間隙が形成された構成に比べ、緩衝板の下側をトラフの長手方向に流れる水の流動抵抗を低減させることができる。すなわち、従来のもぐり堰のように、もぐり堰自体に多数の孔が形成されていなければ、もぐり堰の根元のところに水が滞留してしまうため、流動抵抗が高くなるのが避けられない。このため、緩衝板の下側に水が流れにくくなり、大流量の水を供給した場合には、緩衝板の上側に流れる流量が多くなってしまう。したがって、従来のもぐり堰を有する構成では、大流量の場合に、分散性に優れない。これに対し、多数の孔を有する多孔部材が設けられる場合には、水が多数の孔を通過するため、緩衝板の下側に水が滞留しない。このため、動圧を低減できる構成でありながら、流動抵抗を低減させることができる。したがって、緩衝板の開口を通過して天板に向かって流れる流量が従来の構成に比べて低減される一方で、緩衝板の下側をトラフの長手方向に流れる水の流量を増やすことができる。このため、水の分散性を向上することができる。しかも、従来のもぐり堰の場合では、もぐり堰の下側の間隙に向かって水が流れるため、大流量の水をトラフ内に供給した場合に、間隙を通過する流れに起因して水面の暴れ(又は激しい波立ち)が生ずるのに対し、本発明では、多孔部材が多数の孔を有する構成となっているため、水面の暴れ(又は激しい波立ち)が生じにくい。このため、大流量で散水することが可能となり、大流量の場合に好適なものとなる。しかも、天板とその下の緩衝板との間の間隙を流れる流量が、もぐり堰を有する従来の構成に比べて、大流量の場合であっても増大し難い。このため、水面の波立ちが抑えられる。したがって、整流板を省略することができ、その場合には、部品点数の削減を図ることができる。また、本発明では、多孔部材が多数の孔を有する構成となっていて、水が多孔部材を通過することにより多数の渦が生じてエネルギーを消散させることができるため、多孔部材を通過した水の動圧を低減させることができる。したがって、水の流れを安定化させることができる。
【0008】
前記多孔部材は、前記緩衝板に繋がっている
。すなわち、多孔部材は、緩衝板と一体的に形成されていてもよく、あるいは、緩衝板に固定されていてもよい。この場合、多孔部材を固定するための部材が不要となり、部品点数の増加を抑制することができる。
【0009】
本発明は、一方向に並んだ多数の伝熱管を有するオープンラック式気化器に用いられる散水装置であって、前記多数の伝熱管の並び方向に沿って延びる形状を有し、熱源流体としての水が導入される供給口が底部に形成されるとともに、供給された水を上縁から溢れさせるトラフと、前記供給口を通してトラフ内に導入された水を通過させる開口が形成される一方で、前記供給口を通過した前記水を前記トラフの長手方向の流れに変える緩衝板と、前記緩衝板の上方で且つ液面よりも下方に配置され、前記開口を通過した水を前記トラフの長手方向の流れに変える天板と、前記緩衝板に沿って前記トラフの長手方向に流れる水を通過させる多数の孔を有する多孔部材と、を備え、前記多孔部材は、前記緩衝板に対して着脱可能に取り付けられてい
る散水装置である。この
発明では、多孔部材のメンテナンス時に多孔部材を取り外すことができるため、多孔部材のメンテナンス作業の負担を軽減することができる。例えば海水が用いられる場合には、多孔部材の孔が詰まってしまう虞があるため、海水が用いられる場合に特に有効となる。また、開口率の異なる多孔部材に変更することが可能となるため、供給水量等に応じて適切な開口率を有する多孔部材を取り付けることも可能となる。
【0010】
前記緩衝板には、前記開口に連通する多数の孔が形成された多孔板が設けられていてもよい。この態様では、緩衝板の開口での流動抵抗を大きくすることができるため、緩衝板の下側をトラフの長手方向に流れる水の流量を更に増やすことができる。したがって、水の分散性をより高めることができる。
【0011】
前記多孔板は、前記緩衝板に対して着脱可能であってもよい。この態様では、多孔板のメンテナンス時に多孔板を取り外すことができるため、多孔板のメンテナンス作業の負担を軽減することができる。例えば海水が用いられる場合には、多孔板の孔が詰まってしまう虞があるため、海水が用いられる場合にはより有効となる。また、より適切な開口率を有する多孔板に変更することも可能となる。
【0012】
本発明は、一方向に並んだ多数の伝熱管を有するオープンラック式気化器に用いられる散水装置であって、前記多数の伝熱管の並び方向に沿って延びる形状を有し、熱源流体としての水が導入される供給口が底部に形成されるとともに、供給された水を上縁から溢れさせるトラフと、前記供給口を通してトラフ内に導入された水を通過させる開口が形成される一方で、前記供給口を通過した前記水を前記トラフの長手方向の流れに変える緩衝板と、前記緩衝板の上方で且つ液面よりも下方に配置され、前記開口を通過した水を前記トラフの長手方向の流れに変える天板と、前記緩衝板に沿って前記トラフの長手方向に流れる水を通過させる多数の孔を有する多孔部材と、前記緩衝板の下方に配置されるとともに前記トラフの底部に固定され、前記緩衝板に向かう水の流れを抑える前段緩衝部材と、前記天板及び前記緩衝板を前記前段緩衝部材に支持させる支持部材と、を備えてい
る散水装置である。
【0013】
この態様では、前段緩衝部材がトラフの底部に固定されているため、前段緩衝部材がトラフ内に導入された水のエネルギーを受けるとしても、前段緩衝部材を安定させることができる。しかも、前段緩衝部材により、緩衝板に負荷される水のエネルギーを低減できるため、多孔部材による水のエネルギーの消散効果を有効に発揮させることができる。また、支持部材によって天板及び緩衝板を前段緩衝部材に支持させるため、水の動圧を受ける天板及び緩衝板を安定して保持することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、トラフ内に導入された水の流れの動圧を低減することができ、しかも、大流量の場合でも液面の波打ちを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る散水装置10は、液化天然ガス(LNG)等の低温の液化ガスを気化させる気化装置1に用いられる。気化装置1は、垂直方向に延びる多数の伝熱管2が一方向に並べられた構成の伝熱管パネル3と、この伝熱管パネル3を構成する多数の伝熱管2の下端部にそれぞれ接続された供給ヘッダ4と、伝熱管パネル3を構成する多数の伝熱管2の上端部にそれぞれ接続された集合ヘッダ5と、伝熱管パネル3に散水するための散水装置10と、を備えている。気化装置1は、いわゆるオープンラック式気化装置1である。すなわち、気化装置1は、伝熱管2内を流れるLNGを伝熱管2の外側を流れ落ちる海水等の水(熱源流体)で加熱して、LNGを気化させる。なお、図示省略しているが、気化装置1は、多数の伝熱管パネル3を有しており、各伝熱管パネル3に両側から散水するように多数の散水装置10が設けられている。
【0020】
散水装置10は、トラフ11と、トラフ11に給水するための給水部12とを備えている。給水部12は、給水管12aと、給水管12aから分岐してトラフ11の底部に接続された接続管12bと、を備えている。給水管12aは、トラフ11毎に設けられており、給水部12は、各給水管12aに繋がるマニホールド13から各給水管12aに水が流れるように構成されている。給水管12aにはそれぞれ水の流量を調整する調整弁12cが設けられている。
【0021】
トラフ11は、伝熱管パネル3を構成する多数の伝熱管2が並ぶ方向に沿って延びる形状に構成されていて、
図2に示すように、底板部16と、底板部16の幅方向両端部からそれぞれ立ち上がった一対の側板部17,17と、を備えている。底板部16は、伝熱管2が並ぶ方向に長い矩形状の平板状であり、各側板部17も伝熱管2が並ぶ方向に長い矩形状の平板状に形成されている。
【0022】
トラフ11は、上面が開口しており、この開口から水をあふれ出させて、伝熱管パネル3に向けて散水する。各側板部17の上端には、溢れる水を伝熱管2側に向けて流れさせる傾斜状のトラフエッジ19が形成されている。なお、図示省略しているが、両端に配置される伝熱管パネル3の外側に配置されるトラフ11については、伝熱管パネル3側の側板部17のみにトラフエッジ19が形成されていればよい。
【0023】
散水装置10は、トラフ11内に供給された水の上向きの勢いを低減させるための低減部25を備えている。
図1に示すように、本実施形態では、低減部25は、トラフ11の長手方向における複数箇所に配置されている。低減部25は、給水部12の接続管12bの接続部に対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0024】
トラフ11の底板部16には、接続管12bの端部開口である供給口16aが形成されている(
図3参照)。低減部25は、供給口16aのすぐ上に位置するように配置されている。
【0025】
図2及び
図3に示すように、低減部25は、トラフ11内の水の勢いを弱めるための緩衝板27と、緩衝板27の上方に配置された天板28と、多孔部材29と、緩衝板27の下方に配置された前段緩衝部材30と、緩衝板27、天板28及び前段緩衝部材30を支持する支持部材32と、を有している。本実施形態では、2つの緩衝板27,27が上下に並ぶように配置されており、多孔部材29は、各緩衝板27の両端部にそれぞれ設けられている。
【0026】
前段緩衝部材30は、トラフ11の底板部16に固定された部材であり、トラフ11の長手方向に長い形状を有する平板状の本体部30aと、本体部30aの両端にそれぞれ設けられた一対の脚部30b,30bと、を有する。本体部30aは、底板部16との間に空間を形成するように底板部16と平行に配置されている。本体部30aには、開口30cが設けられており、この開口30cは供給口16aの真上に位置している。
【0027】
脚部30bは、本体部30aの長手方向の端部から下方に延びる壁部30dと、壁部30dの下端から底板部16に沿って延出される延出部30eとを有する。脚部30bは、本体部30aの長手方向の端部を折り曲げたものであり、本体部30aと一体的に形成されている。脚部30bも、平板状の部材を折り曲げた構成となっている。
【0028】
延出部30eは底板部16の上面に重ね合わされるとともに、図略の締結具によって底板部16に固定されている。なお、延出部30eは底板部16に溶接等によって固定されていてよい。前段緩衝部材30は、供給口16aからトラフ11内に供給された水の勢いを本体部30aにおいてそのまま受ける。このため、本体部30aの浮き上がりを防止すべく、脚部30b,30bは、底板部16に強固に固定されている。
【0029】
供給口16aを通してトラフ11内に導入された水は、一旦、前段緩衝部材30の本体部30a及び脚部30b,30bで囲まれた空間内に貯留されることになる。この水の一部は、本体部30aの開口30cを通して上向きに導出される。残りの水は、後述する支持部材32の切欠き部32bを通して、支持部材32と側板部17との間の空間に導出される。
【0030】
緩衝板27は、矩形平板状の部材で形成され、前段緩衝部材30の本体部30aよりも上の位置で、底板部16に平行になるように配置されている。下側の緩衝板27は、前段緩衝部材30の本体部30aとの間に所定高さの空間を形成するように、本体部30aと平行に配置されている。上側の緩衝板27は、下側の緩衝板27との間に所定高さの空間を形成するように、下側の緩衝板27と平行に配置されている。
【0031】
緩衝板27には、何れにも開口27aが形成されている。これら開口27aは、前段緩衝部材30の本体部30aに形成された開口30cの真上に位置している。このため、前段緩衝部材30の開口30cを通して上向きに導出された水は、一部が緩衝板27の開口27aを通過し、残りは、緩衝板27の下側を緩衝板27に沿ってトラフ11の長手方向に流れる。つまり、緩衝板27は、供給口16aを通過した水の一部をトラフ11の長手方向の流れに変える。なお、本実施形態では、緩衝板27が上下二段に設けられているが、これに限られるものではない。一段のみの緩衝板27が設けられていてもよく、三段以上の緩衝板27が設けられていてもよい。
【0032】
天板28は、矩形平板状の部材によって形成され、底板部16及び緩衝板27に平行になるように配置されている。天板28は、水面よりも下の位置になるように設置されている。このため、緩衝板27の開口27aを通過した上方向の水の勢いを水中で弱めつつ、上向きの水の流れをトラフ11の長手方向の流れに変えることができる。なお、天板28は、緩衝板27と同じ大きさでもよく、あるいは、トラフ11の長手方向において緩衝板27よりも少し短く形成されていてもよい。
【0033】
多孔部材29は、緩衝板27の長手方向の両端部に位置している。多孔部材29は、緩衝板27と略垂直になっており、トラフ11の長手方向と直交する方向に長い形状となっている。多孔部材29には、そのほぼ全体に亘り、多数の孔29aが一様に形成されている。この孔29aは、何れも同じ大きさであってもよく、異なっていてもよい。また、孔29aの形状は丸に限られるものでない。例えば、孔29aは横長の形状で縦に並んでいてもよく、縦長の形状で横に並んでいてもよい。また、孔29aは、規則的に並んでいてもよく、あるいはランダムに並んでいてもよい。また、多孔部材29は、適度な流動抵抗を与えられるものであれば、メッシュ状でもよい。要は、水が多孔部材29を通過することによって生ずる渦同士が干渉してエネルギーを減ずるように、孔29a同士の相対位置及び大きさが設定されていればよい。多孔部材29の面積に対する孔29aの開口率及び分布は、水の流量に応じて適宜設定される。
【0034】
下側の緩衝板27に繋がる多孔部材29の下端部と、前段緩衝部材30との間に隙間が形成されているが、この隙間は形成されていなくてもよい。すなわち、多孔部材29と前段緩衝部材30とが接触していてもよい。また、上側の緩衝板27に繋がる多孔部材29の下端部と、下側の緩衝板27との間に隙間が形成されているが、この隙間は形成されていなくてもよい。すなわち、上側の多孔部材29と下側の緩衝板27とが接触していてもよい。
【0035】
多孔部材29は、トラフ11の長手方向における緩衝板27の端部に配置されているが、これに限られるものではない。例えば、多孔部材29は、緩衝板27の端部から内側(緩衝板27の開口に近い側)にずれた場所に配置されていてもよい。この場合においても、多孔部材29は、緩衝板27に取り付けられていてもよく、あるいは、支持部材32に取り付けられていてもよい。
【0036】
支持部材32は、前段緩衝部材30、緩衝板27及び天板28を挟むようにこれらの幅方向(トラフ11の長手方向と直交する方向)の両側にそれぞれ配置された一対の縦板32a,32aを有している。各縦板32aは、平板材で形成されており、溶接等によって前段緩衝部材30、緩衝板27及び天板28に固定されている。すなわち、緩衝板27及び天板28は、支持部材32を介して前段緩衝部材30に固定されている。このため、緩衝板27及び天板28の固定構造をしっかりしたものにすることができる。なお、天板28は縦板32aの上端部に沿うように設けられている。
【0037】
縦板32aは、トラフ11の側板部17との間に空間を形成するように、側板部17から離れた位置に配置されている。縦板32aの下端部は、トラフ11の底板部16に接触しているが、下端部には切欠き部32bが形成されている。したがって、この切欠き部32bを通して、縦板32aと側板部17との間の空間と、縦板32a,32a間の空間が連通している。切欠き部32bは、前段緩衝部材30とトラフ11の底板部16との間の空間に面している。
【0038】
本実施形態では、多孔部材29は、緩衝板27と一体的に形成されている。すなわち、一枚の矩形状の平板材の長手方向の両端部を折り曲げ、この折り曲げられた部位に多数の孔29aを形成することにより、多孔部材29が緩衝板27に繋がった構成となっている。しかしながら、多孔部材29は、この構成に限られるものではない。例えば、
図4に示すように、多孔部材29は、緩衝板27とは別部材によって構成されていて、緩衝板27に取り付けられる構成であってもよい。多孔部材29は、緩衝板27に溶接等によって固着されていてもよく、緩衝板27に着脱可能であってもよい。
【0039】
図4は、ボルト・ナット等の締結具33によって多孔部材29が緩衝板27に着脱可能な構成を示している。この場合、多孔部材29は、多数の孔29aが形成された平板状の孔形成部29bと、孔形成部29bの上端部に繋がり、緩衝板27に重ね合わされる平板状の重合部29cとを有した構成となっている。そして、重合部29cが緩衝板27に締結された構成となる。この構成であれば、多孔部材29の取り外し時に緩衝板27を取り外す必要がないため、多孔部材29の取り外しが容易となる。なお、孔形成部29bは、垂直な姿勢となっているが、傾斜していてもよい。
【0040】
図5は、多孔部材29の着脱時に多孔部材29をガイドするガイド部35を示している。ガイド部35は、緩衝板27への多孔部材29の装着時に多孔部材29を案内するために用いられる。ガイド部35は、各縦板32aの内面(トラフ11の側板部17と反対側を向く面)から突出した形態で縦板32aに固定されている。ガイド部35は、多孔部材29の孔形成部29bを挿通させるガイド溝35aを有している。孔形成部29bをガイド溝35a内でスライドさせることにより、重合部29cに形成されたボルト挿通孔(図示省略)を、緩衝板27に形成されたボルト挿通孔(図示省略)に合わせることができる。したがって、ボルト挿通孔同士を合わせる作業を楽に行うことができる。
【0041】
図6に示すように、緩衝板27には、多孔板37が取り付けられていてもよい。多孔板37の多数の孔37aは、緩衝板27の開口27aと連通している。多孔板37の孔37aの大きさは緩衝板27の開口27aよりも小さい。緩衝板27の開口27aを通過した水が多孔板37の多数の孔37aを通過するため、多孔板37が設けられていない構成に比べ、開口27a通過時の流動抵抗を大きくすることができる。なお、緩衝板27の開口27aは、
図4に示す開口27aと同じ形状でもよく、異なっていてもよい。緩衝板27は、二分割されていてこれらが互いに離れた状態となっていてもよい(
図6参照)。
【0042】
多孔板37は緩衝板27に対して着脱可能であってもよく、あるいは緩衝板27に溶接等により固着されていてもよい。
図6では、ボルト・ナット等の締結具39によって多孔板37が緩衝板27に取り付けられた例を示している。
【0043】
本実施形態の散水装置10では、給水部12から供給された水は、トラフ11の底板部16に形成された供給口16aからトラフ11内に勢いよく流入する。トラフ11内に流入した水は、その一部が前段緩衝部材30の開口30cを通して上向きに流れ、残りは、前段緩衝部材30の本体部30a及び脚部30b,30bで囲まれた空間内に一旦貯留される。これにより、トラフ11内に導入された水の動圧が低減される。また、前段緩衝部材30の本体部30a及び脚部30b,30bで囲まれた空間内に一旦貯留されることにより、水の勢いを弱めることができる。この空間内の水の一部は、支持部材32の切欠き部32bを通して、側板部17と縦板32aとの間の空間に流入する。この空間に流入した水は、トラフエッジ19を超えて、伝熱管パネル3に向かって散水される。
【0044】
一方、前段緩衝部材30の開口30cを通して上向きに流れた水は、その一部が、緩衝板27の開口27aを通過して天板28を押圧する。この水は、天板28の下面に沿って、トラフ11の長手方向に流れる。天板28に沿って流れた水は、天板28と緩衝板27との間から低減部25を抜け出る。
【0045】
また、前段緩衝部材30の開口30cを通過した水の一部は、緩衝板27と前段緩衝部材30の本体部30aとを間の空間、及び、緩衝板27間の空間をトラフ11の長手方向に流れる。この水は、多孔部材29の多数の孔29a及び多孔部材29の下側の間隙を通過して低減部25を抜け出る。
【0046】
低減部25からトラフ11の長手方向に抜け出た水は、隣接する低減部25間の空間を通してトラフエッジ19からあふれ出る。
【0047】
以上説明したように、本実施形態では、緩衝板27に沿って流れる水が多数の孔29aを通過する構成なので、従来のもぐり堰のように、緩衝板27とその下側の部材との間に間隙が形成された構成に比べ、緩衝板27の下側をトラフ11の長手方向に流れる水の流動抵抗を低減させることができる。すなわち、従来のもぐり堰のように、もぐり堰自体に多数の孔が形成されていなければ、もぐり堰の根元のところに水が滞留してしまうため、流動抵抗が高くなるのが避けられない。このため、緩衝板の下側に水が流れにくくなり、大流量の水を供給した場合には、緩衝板の上側に流れる流量が多くなってしまう。したがって、従来のもぐり堰を有する構成では、大流量の場合に、分散性に優れない。これに対し、多数の孔29aを有する多孔部材29が設けられる場合には、水が多数の孔29aを通過するため、緩衝板27の下側に水が滞留しない。このため、動圧を低減できる構成でありながら、流動抵抗を低減させることができる。したがって、緩衝板27の開口を通過して天板28に向かって流れる流量が従来の構成に比べて低減される一方で、緩衝板27の下側をトラフ11の長手方向に流れる水の流量を増やすことができる。このため、水の分散性を向上することができる。しかも、従来のもぐり堰の場合では、もぐり堰の下側の間隙に向かって流れるため、大流量の水を供給口16aからトラフ11内に供給した場合に、間隙を通過する流れに起因して水面の暴れ(又は激しい波立ち)が生ずるのに対し、本実施形態では、多孔部材29が多数の孔29aを有する構成となっているため、水面の暴れ(又は激しい波立ち)が生じにくい。このため、大流量で散水することが可能となり、大流量の場合に好適なものとなる。しかも、天板28とその下の緩衝板27との間の間隙を流れる流量が、もぐり堰を有する従来の構成に比べて、大流量の場合であっても増大し難い。このため、水面の波立ちが抑えられる。したがって、側板部17と平行に整流板を設ける必要がない。このため、部品点数の削減にも寄与する。また、本実施形態では、多孔部材29が多数の孔29aを有する構成となっていて、水が多孔部材29を通過することにより多数の渦が生じてエネルギーを消散させることができるため、多孔部材29を通過した水の動圧を低減させることができる。したがって、水の流れを安定化させることができる。
【0048】
また本実施形態では、多孔部材29が緩衝板27に繋がっている。このため、多孔部材29を固定するための部材が不要となり、部品点数の増加を抑制することができる。
【0049】
また、多孔部材29は緩衝板27に対して着脱可能に取り付けられていてもよい。この場合には、多孔部材29のメンテナンス時に多孔部材29を取り外すことができるため、多孔部材29のメンテナンス作業の負担を軽減することができる。例えば海水が用いられる場合には、多孔部材29の孔29aが異物で詰まってしまう虞があるため、海水が用いられる場合に特に有効となる。また、開口率の異なる多孔部材29に変更することが可能となるため、供給水量に応じて適切な開口率を有する多孔部材29を取り付けることも可能となる。
【0050】
緩衝板27の開口27aに連通する多数の孔37aが形成された多孔板37が設けられている構成では、緩衝板27の開口27aでの流動抵抗を大きくすることができる。このため、緩衝板27の下側をトラフ11の長手方向に流れる水の流量を更に増やすことができる。したがって、水の分散性をより向上することができる。
【0051】
また、多孔板37が緩衝板27に対して着脱可能な場合、多孔板37のメンテナンス時に多孔板37を取り外すことができるため、多孔板37のメンテナンス作業の負担を軽減することができる。例えば海水が用いられる場合には、多孔板37の孔37aに異物が詰まってしまう虞があるため、海水が用いられる場合にはより有効となる。
【0052】
また本実施形態では、前段緩衝部材30がトラフ11の底部に固定されているため、前段緩衝部材30がトラフ11内に導入された水のエネルギーを受けるとしても、前段緩衝部材30を安定させることができる。しかも、前段緩衝部材30により、緩衝板27に負荷される水のエネルギーを低減できるため、多孔部材29による水のエネルギーの消散効果を有効に発揮させることができる。また、支持部材32によって天板28及び緩衝板27を前段緩衝部材30に支持させるため、水の動圧を受ける天板28及び緩衝板27を安定して保持することができる。
【0053】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、整流板が設けられていない構成としたが、整流板23が設けられた構成であってもよい。例えば、
図7に示すように、整流板23は、底板部16に立設された図略の支持柱に支持された上で、底板部16との間に間隙を形成した状態で配置されている。整流板23は、トラフ11の側板部17と平行な姿勢で、支持部材23の縦板32aに沿うように配置されており、トラフ11の幅方向において、低減部25の両側に配置されている。なお、整流板23は、トラフエッジ19よりも高い位置まで配置されている。
【0054】
この場合において、低減部25からトラフ11の長手方向に流出した水は、整流板23の下の間隙を通して側板部17と整流板23との間の空間に流入し、この空間を通ってトラフエッジ19から溢れ出る。
【0055】
この構成において、
図7及び
図8に示すように、整流板23には、区画板21が固定されていてもよい。区画板21は、整流板23に直交するように配置された平板部材からなり、幅方向の両端部がそれぞれ整流板23に固定されている。区画板21の下端部は、整流板23の下端よりも上方に位置している。区画板21が設けられることにより、トラフ11内は、低減部25が配置される第1区画S1と、低減部25が配置されない第2区画S2とに区画される。
【0056】
この構成では、低減部25を抜け出た水の一部は、低減部25と区画板21と整流板23とに囲まれた空間に流入し、その一部は整流板23と側板部17との間の間隙を通してトラフエッジ19からあふれ出る。また、残りの水は、区画板21の下側を通り抜けて、第2区画S2内に流入し、整流板23と側板部17との間の間隙を通してトラフエッジ19からあふれ出る。なお、区画板21を省略することも可能である。
【0057】
また、前記実施形態では、多孔部材29が緩衝板27に支持された構成としたがこれに限られるものではない。多孔部材29は、支持部材32を構成する一対の縦板32a,32aに取り付けられてもよく、あるいは、
図9に示すように、第1区画S1にも整流板23が設けられていて、多孔部材29は整流板23に取り付けられてもよい。この場合は、多孔部材29は、整流板23に溶接等によって固定されてもよく、あるいは締結具によって着脱可能となっていてもよい。