(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769722
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】両軸受リール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/015 20060101AFI20201005BHJP
【FI】
A01K89/015 B
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-66649(P2016-66649)
(22)【出願日】2016年3月29日
(65)【公開番号】特開2017-176003(P2017-176003A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年1月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】武智 邦生
(72)【発明者】
【氏名】新妻 基弘
【審査官】
大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−116292(JP,A)
【文献】
特開2011−177154(JP,A)
【文献】
特開2014−236728(JP,A)
【文献】
特開2014−140350(JP,A)
【文献】
特開2014−050334(JP,A)
【文献】
特開2015−053916(JP,A)
【文献】
特開2012−110297(JP,A)
【文献】
米国特許第05988548(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0277516(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00−89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿に装着可能な両軸受リールであって、
ハンドルと、
前記ハンドルが回転可能に取り付けられる第1リール本体部と、
前記第1リール本体部と軸方向に間隔をあけて配置される円筒状の第2リール本体部と、
前記第1リール本体部と前記第2リール本体部との間に配置されるスプールと、
前記両軸受リールが前記釣竿に装着されたときに、第1方向を向き且つ前記釣竿に接触する装着面、を有する装着部と、
を備え、
前記第2リール本体部の第2円筒部は外周面、前記第2リール本体部の前記第2円筒部の軸方向外側の端面を覆う第2カバー部は軸方向外側を向く外側面、を有し、
前記第2リール本体部の前記第2円筒部の外周面は、第1方向側端部の幅が、前記第1方向とは反対の第2方向側端部の幅よりも小さく、
前記第2リール本体部は、前記第2方向側端部に親指を載置可能であり、
前記第2リール本体部の前記第2円筒部は、前記第2リール本体部の前記第1方向側端部において、前記外周面と外側面とが交差する部分に形成された欠肉部を有し、
前記欠肉部によって、前記第1方向側端部の幅が前記第2方向側端部の幅よりも小さくなり、
前記第2リール本体部は、前記第2方向側端部に表示部を有さない、
両軸受リール。
【請求項2】
前記欠肉部は、前記外周面と外側面が交差する部分に形成された面取り部である、
請求項1に記載の両軸受リール。
【請求項3】
前記面取り部は、前記第2リール本体部の全周に亘って形成され、
前記第2リール本体部の第1方向側端部に形成された前記面取り部の幅は、前記第2リール本体部の第1方向側端部とは反対側の第2方向側端部に形成された前記面取り部の幅よりも大きい、
請求項2に記載の両軸受リール。
【請求項4】
前記面取り部の幅は、前記第1方向側に向かって大きくなる、
請求項2または3に記載の両軸受リール。
【請求項5】
前方に釣糸を繰り出す両軸受リールであって、
前記第2リール本体部の前部に形成された前記面取り部の幅は、前記第2リール本体部の後部に形成された前記面取り部の幅よりも小さい、
請求項2から4のいずれかに記載の両軸受リール。
【請求項6】
正面視において、前記外側面の外周縁は、軸方向に対して垂直に延びる、
請求項2から5のいずれかに記載の両軸受リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両軸受リールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
両軸受リールは、ハンドルと、第1リール本体部と、第2リール本体部と、スプールとを備える。ハンドルは、第1リール本体部に回転可能に取り付けられている。第1リール本体部と第2リール本体部とは、軸方向において互いに間隔をあけて配置されている。この第1リール本体部と第2リール本体部との間にスプールが配置されている。
【0003】
特許文献1に示すように、両軸受リールでは、第2リール本体部側からリール本体を握る、いわゆるパーミングをしながらスプール又は釣竿の操作を行うことがある。このパーミング時は、ハンドルを持つ手と反対の手(右側ハンドルの両軸受リールの場合は左手)でリール本体を釣竿とともに握る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−144021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような両軸受リールにおいて、糸巻き量を増やすためにスプールの幅を大きくすると、第2リール本体部が釣竿から遠ざかるため、パーミングが困難になるおそれがある。本発明の課題は、このパーミングを容易に行うことのできる両軸受リールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある側面に係る両軸受リールは、釣竿に装着可能な両軸受リールである。この両軸受リールは、ハンドルと、第1リール本体部と、第2リール本体部と、スプールと、装着部と、を備えている。第1リール本体部は、ハンドルが回転可能に取り付けられる。第2リール本体部は、第1リール本体部と軸方向に間隔をあけて配置される。第2リール本体部は、円筒状である。スプールは、第1リール本体部と第2リール本体部との間に配置される。装着部は、装着面を有する。両軸受リールが釣竿に装着されたとき、装着面は、第1方向を向き且つ釣竿に接触する。第2リール本体部は、外周面、及び外側面を有する。外側面は、軸方向外側を向く。第2リール本体部の外周面は、第1方向側端部の幅が、第1方向とは反対の第2方向側端部の幅よりも小さい。
【0007】
この構成によれば、第2リール本体部の幅は、第1方向側の方が、第2方向側よりも小さくなる。この結果、第2リール本体部をパーミングした際に、第2リール本体部の第2方向側端部において、親指を載置するスペースを確保しつつ、第2リール本体部を容易にパーミングすることができる。
【0008】
好ましくは、第2リール本体部は、欠肉部を有する。欠肉部は、第2リール本体部の第1方向側端部において、外周面と外側面とが交差する部分に形成される。
【0009】
好ましくは、欠肉部は、面取り部である。面取り部は、外周面と外側面とが交差する部分に形成されている。
【0010】
好ましくは、面取り部は、第2リール本体部の全周に亘って形成されている。第2リール本体部の第1方向側端部に形成された面取り部の幅は、第2リール本体部の第2方向側端部に形成された面取り部の幅よりも大きい。なお、第2方向側端部は、第1方向側端部とは反対側の端部である。
【0011】
好ましくは、面取り部の幅は、第1方向側に向かって大きくなる。
好ましくは、前方に釣糸を繰り出す両軸受リールであって、第2リール本体部の前部に形成された面取り部の幅は、第2リール本体部の後部に形成された面取り部の幅よりも小さい。
【0012】
好ましくは、正面視において、外側面の外周縁は、軸方向に対して垂直に延びる。正面視において、外側面の外周縁は、軸方向に対して傾斜していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る両軸受リールによれば、パーミングを容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る両軸受リールの実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、軸方向とは、スプールの回転軸Oが延びる方向を言う。軸方向の内側とは、軸方向においてスプール側を意味し、軸方向の外側とは、軸方向においてスプールから離れる側を意味する。周方向とは、回転軸Oを中心とした円の周方向を言う。径方向とは、回転軸Oを中心とした円の径方向を言う。前方とは、両軸受リールの釣糸繰り出し方向を言う。
【0016】
[両軸受リール]
図1から
図3に示すように、両軸受リール100は、釣竿に装着可能である。両軸受リール100は、第1リール本体部1、第2リール本体部2、スプール3、ハンドル4、及び回転伝達機構6(
図4参照)を備えている。
【0017】
[第1リール本体部]
第1リール本体部1は、ハンドル4が回転可能に取り付けられている。第1リール本体部1は、内部空間を有している。この第1リール本体部1の内部空間に、回転伝達機構6が収容されている。第1リール本体部1は、第1円筒部11と、第1カバー12とを有している。この第1円筒部11と第1カバー12とによって、内部空間が画定されている。
【0018】
[第2リール本体部]
第2リール本体部2は、第1リール本体部1と軸方向において間隔をあけて配置されている。第1リール本体部1と第2リール本体部2との間にスプール3が配置されている。第1リール本体部1と第2リール本体部2とによってリール本体10を構成する。第2リール本体部2は、円筒状である。
【0019】
第2リール本体部2は、第2円筒部21と、第2カバー部22とを有している。第2円筒部21は、第1円筒部11と、連結部13を介して、連結されている。なお、連結部13は、軸方向に延びている。第1円筒部11、第2円筒部21、及び連結部13は、一体的に形成されており、リール本体10のフレームを構成している。例えば、第1円筒部11、第2円筒部21、及び連結部13は、アルミ合金でダイキャスト成形によって一体的に形成されている。
【0020】
この連結部13に、装着部14が取り付けられている。装着部14は、両軸受リール100を釣竿に装着するための部材である。装着部14は、前後方向に延びている。装着部14は、装着面141を有する。装着面141は、第1方向を向いている。すなわち、第1方向とは、装着面141が向く方向である。
図1及び
図2の下方向が第1方向である。両軸受リール100が釣竿に装着されたとき、装着面141は、釣竿と接触する。
【0021】
第2カバー部22は、第2円筒部21の軸方向外側の端面を覆う。第2カバー部22は、円板状である。第2カバー部22は、第2円筒部21から取り外し可能である。なお、第2カバー部22は、第2円筒部21と一体的に形成されていてもよい。
【0022】
第2リール本体部2は、外周面2a、外側面2b、及び面取り部2c(欠肉部の一例)を有している。外周面2aは、円筒状の第2リール本体部2の径方向外側を向く面である。外周面2aは、第2円筒部21の外周面である。
【0023】
外側面2bは、軸方向の外側を向く面である。具体的には、
図1及び
図3において外側面2bは右側を向いており、
図2において外側面2bは左側を向いている。外側面2bは、第2カバー部22の外側面である。正面視において、外側面2bの外周縁2dは、軸方向に対して垂直に延びている。外側面2bは、軸方向の外側に膨らむように湾曲している。なお、正面視における外側面2bの外周縁2dは、外側面2bの上端と下端とを結んだ線となる。この線が、軸方向に対して垂直に延びている。なお、外側面2bは、完全に垂直である必要は無い。
【0024】
面取り部2cは、外周面2aと外側面2bとが交差する部分に形成されている。面取り部2cは、第2リール本体部2の軸方向外側端部の外周縁部を面取り加工することによって形成されている。なお、本実施形態では、面取り部2cは、第2円筒部21の軸方向外側端部に形成されている。面取り部2cは、第2円筒部21の外周縁部に沿って形成されている。面取り部2cは、環状に延びている。すなわち、面取り部2cは、第2リール本体部2の全周に亘って形成されている。面取り部2cは、軸方向の外側且つ径方向の外側を向くように傾斜している。
【0025】
面取り部2cの幅は、周方向において変化している。第2リール本体部2の第1方向側端部に形成された面取り部2cの幅w1は、第2リール本体部2の第2方向側端部に形成された面取り部2cの幅w2よりも大きい。なお、面取り部2cの幅とは、面取り部2cにおける軸方向の寸法を言う。面取り部2cの幅は、第2リール本体部2の第2方向側端部から第1方向側端部に向かって大きくなる。特に限定されるものではないが、第2リール本体部2の第1方向側端部に形成された面取り部2cの幅w1は、3〜6mm程度とすることができる。また、第2リール本体部2の第2方向側端部に形成された面取り部2cの幅w2は、1〜3mm程度とすることができる。この幅w1と幅w2との差は、2mm程度とすることができる。
【0026】
このように、第2リール本体部2の第1方向側端部に形成された面取り部2cの幅w1は、第2リール本体部2の第2方向側端部に形成された面取り部2cの幅w2よりも大きい。このため、第2リール本体部2の第1方向側端部における外周面2aの幅は、第2方向側端部における外周面2aの幅よりも小さくなっている。この結果、第2リール本体部2をパーミングする際に、第2リール本体部2の第2方向側において親指を載置するスペースを確保することができつつ、第2リール本体部2を容易にパーミングすることができる。
【0027】
図3に示すように、第2リール本体部2の前部に形成された面取り部2cの幅は、第2リール本体部2の後部に形成された面取り部2cの幅よりも小さい。これにより、よりパーミングし易い形状となっている。
【0028】
[スプール]
スプール3は、第1リール本体部1と第2リール本体部2との間において、回転可能に配置されている。スプール3の外周面には、釣糸が巻き付けられる。
図4に示すように、スプール3は、スプール軸30に固定され、スプール軸30と一体的に回転する。なお、スプール軸30は、第1リール本体部1と第2リール本体部2との間を延びている。スプール軸30は、軸受部材などを介して、第1及び第2リール本体部1,2に回転可能に支持されている。
【0029】
[ハンドル]
ハンドル4は、第1リール本体部1に回転可能に装着されている。詳細には、ハンドル4は、第1リール本体部1から突出した駆動軸61に取り付けられている。ハンドル4の回転は、回転伝達機構6を介してスプール3に伝達される。
【0030】
[回転伝達機構]
回転伝達機構6は、ハンドル4の回転をスプール3に伝達する機構である。回転伝達機構6は、第1リール本体部1の内部空間内に配置されている。詳細には、回転伝達機構6は、駆動軸61、駆動ギア62、及びピニオンギア63を有する。
【0031】
駆動軸61は、ハンドル4と連結されており、ハンドル4と一体的に回転する。なお、駆動軸61は、ワンウェイクラッチ64によって、釣糸繰り出し方向への回転が禁止される。
【0032】
駆動ギア62は、駆動軸61に装着され、駆動軸61と一体的に回転する。ピニオンギア63は、駆動ギア62にかみ合う。なお、ピニオンギア63は筒状である。ピニオンギア63は、クラッチ機構65を介してスプール軸30と連結されている。クラッチ機構65がオン状態のとき、ピニオンギア63とスプール軸30は一体的に回転し、クラッチ機構65がオフ状態のときはピニオンギア63とスプール軸30とは相対回転可能となる。例えば、クラッチ機構65は、スプール軸30を径方向に貫通する係合ピンと、ピニオンギア63に形成された係合凹部とによって構成される。ピニオンギア63が軸方向に移動することによって、クラッチ機構65のオン状態とオフ状態とを切り替える。
【0033】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態において、面取り部2cは、C面取り加工によって形成されているが、R面取り加工によって形成されてもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、欠肉部の一例として面取り部2cを例示したが、欠肉部は面取り部2cに限定されない。例えば、面取り部2cの代わりに段差部が欠肉部として形成されていてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、外側面2bの外周縁2dは、軸方向に対して垂直に延びているが、軸方向に対して傾斜していてもよい。
【0036】
また。上記実施形態では、面取り部2cの幅は、第2側端部から第1側端部に向かって徐々に大きくなっているが、段階的に大きくなってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 :第1リール本体部
2 :第2リール本体部
2a :外周面
2b :外側面
2c :面取り部
3 :スプール
4 :ハンドル
10 :リール本体
14 :装着部
141 :装着面
100 :両軸受リール