(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の装置においては、太陽光の照射範囲を広げるために、反射板64間の、太陽光が入射する上側の間隔よりも、太陽光が出射する下側の間隔が大きくなるように、反射板64が配置されている。それにより、反射板64の上側に、空間66が形成される。この空間66は、太陽光が導光されているにもかかわらず、導光された太陽光が屋内空間65へ照射されない、無駄な空間である。すなわち、このような構造においては、導光された太陽光を、無駄なく、効率的に、屋内空間65へ照射することが難しい。また、多くの反射板64を設置するために、反射板64の材料を多く必要とするので、装置の重量が重くなると共に、装置が大きくなり多大な設置空間を要し、居住空間が狭くなる。また、多くの反射板64を多様な傾斜角度で固定する必要があり、手間がかかるため、製作費用が嵩む。
【0007】
特許文献2に記載の装置においても、ファンの設置場所によっては太陽光が遮光されるため、特許文献1と同様に、筐体内に導光されたにもかかわらず、導光された太陽光が屋内空間へ照射されない場合がある。また、ファンを回転させる駆動部分へエネルギーを供給する必要がある。更に、駆動部分のメンテナンス、及び、各光反射部材の位置ずれを調整するための、各光反射部材のメンテナンスが、定期的に必要である。
【0008】
本発明の課題は、コンパクトな構成で室内空間を圧迫せず、製作費用、メンテナンス費用を低減でき、屋内空間の広い範囲を明るくすることが可能な、光反射パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。すなわち、本発明は、支持プレートと、該支持プレートにそれぞれ連結部を介して設けられた、複数の光散乱板を備え、前記複数の光散乱板の各々は、前記連結部において、前記支持プレートに対し、姿勢を変更可能とされている、光反射パネルを提供する。
上記のような構成によれば、姿勢、すなわち、支持プレートに対する折り曲げ角度や、連結部を中心とした回転角度が調整された光散乱板により、室内の様々な場所に反射光を照射することが可能である。したがって、本光反射パネル一枚で、屋内空間の広い範囲を明るくすることが可能である。
また、複数枚の光反射パネルを使用しなくても、屋内空間の広い範囲を明るくすることが可能であるため、特許文献1のように、光反射パネルを複数枚導入することにより発生しうる、導光された太陽光が使われないという状況が発生しにくい。したがって、無駄なく、効率的な、太陽光の導光が可能である。
また、一枚の光反射パネルで屋内空間の広い範囲を明るくすることが可能であるため、本光反射パネルを用いた採光装置の構成が簡単となる。したがって、採光装置の大きさを低減して居住空間を広くし、居住性を高めることが可能となる。
また、各光散乱板の姿勢を個別に変更することができるため、様々な照明状況を作ることが可能である。
また、各光散乱板は、姿勢の調整後は動かす必要がないため、駆動のための外部からのエネルギー供給が不要である。また、光散乱板の駆動部が不要となり、かつ、反射面の姿勢の調整は、人手で簡単に行うことができるため、メンテナンスが容易となる。
【0010】
前記支持プレートを形成する部材として、光を反射する反射材で構成された部材を用い、前記支持プレートに、前記光散乱板の輪郭形状をなすスリットを形成して、該スリットの内側の部分を立ち上げることによって、前記光散乱板が形成されてもよい。
このような構成によれば、支持プレートによる反射光を屋内空間に照射すると同時に、支持プレートによる反射光が届かない場所に対しては、姿勢が調整された光散乱板による反射光を照射することも可能である。本光反射パネルにおいては、このように一枚で屋内空間の広い範囲を明るくすることが可能である。
また、一枚のパネル相当量の、少ない反射面で、太陽光の照射範囲を広げることができるため、反射材の使用量が少なくすみ、かつ、構造が単純になる。したがって、製作費用を低減することが可能となる。
また、上記のように、一枚のパネル相当量の材料しか使用しないため、軽量に実現できる。それにより、光反射パネルの設置が容易となるとともに、落下防止を目的とした特別な設備の導入や、設置場所周辺の補強作業などが不要となり、設置費用を低減することが可能となる。
【0011】
前記支持プレートは湾曲しており、前記光散乱板は、前記支持プレートの湾曲して窪んだ面に接続されていてもよい。
このような構成によれば、効果的に、太陽光の照射範囲を広げることができる。
【0012】
前記支持プレートは、アルミニウム板や鋼板などの金属薄板により構成されていてもよい。
このような構成によれば、光反射パネルの軽量化を実現することが可能となる。
【0013】
前記複数の光散乱板は、千鳥状に配置されていてもよい。
このような構成によれば、支持プレートによる反射領域を細かく分断して小さくすることができる。また、太陽光の入射方向に対して後段に位置する光散乱板の受光面積が向上する。これにより、屋内空間のより広い範囲を明るくすることが可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、屋内空間の広い範囲を明るくすることが可能な、光反射パネルを、提供することが可能となる。
【0015】
好ましい様態では、製作費用、メンテナンス費用を低減することが可能となる。
【0016】
好ましい様態では、コンパクトな構成で室内空間を圧迫しない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態として示した光反射パネル1を示す。
図1(a)、(b)は、それぞれ、光反射パネル1の側面図、
図1(a)のA−A断面図である。
【0020】
光反射パネル1は、光を反射する反射材で構成された部材により形成された支持プレート2と、複数の光散乱板3を備えている。複数の光散乱板3の各々は、連結部4を介して、光反射パネル1の支持プレート2に設けられている。
【0021】
支持プレート2は、支持プレート2を一側面から見たときに、一定の曲率半径をもって湾曲するように形成されている。具体的には、支持プレート2は、複数の、
図1においては7個の、矩形の平板5によって、構成されている。各平板5は、支持プレート2の凸側の表面の延長面と、隣接する他の平板5との角度が2.5°となるように、すなわち、平板5が2.5°ずつ異なる角度になるように、位置づけられている。支持プレート2が湾曲して窪んだ側の面が、太陽光を反射する反射面となる。
【0022】
光散乱板3は、各平板5の、支持プレート2が湾曲して窪んだ側の面に、連結部4によって接続されている。
図2に示すように、光散乱板3は台形に形成されており、連結部4は台形の長辺に接続されている。
図1(a)において、光散乱板3の、紙面方向において左側の面が、太陽光を反射する反射面となる。
【0023】
各光散乱板3の、当該光散乱板3が接続している平板5に対する姿勢、すなわち、平板5に対する折り曲げ角度や、連結部4を中心とした回転角度は、
図1(b)においては全て同じであるように図示されている。しかし、実際に採光装置に設置して用いられる際には、各光散乱板3を、連結部4を介して折り曲げ角度を変えたり、捩じったりすることによって、各光散乱板3の姿勢が個別に、変更、調整される。
【0024】
平板5間の角度を含めた、光反射パネル1の構造の一部は、昆虫の複眼の構造を参考に決定されている。昆虫の複眼は、それぞれに受光器を有する個眼が、蜂の巣のように球面状に集合している構造を有している。昆虫の複眼は、狭い領域に複数の個眼を配置して広い視界を得るという利点を有している。換言すれば、この複眼構造に対して照射される任意の方向からの光を反射することが可能であると考えられる。
【0025】
光反射パネル1は、平板5間の角度、光散乱板3の大きさ、及び、光散乱板3に照射したい光の方向等の、各要素を基にして設計されている。昆虫の複眼においては、個眼が配置される平面の延長面と、隣接する個眼が配置される平面との角度は0.5〜3°である(M.F.Land and D/-E.Nilsson; Animal Eyes. Oxford University Press, 2002)ため、個眼の存在する平面と平板5を相関させて、平板5の表面の延長面と、隣接する平板5との角度を2.5°とした。また、光散乱板3の大きさを一辺6cm以上、及び、光散乱板3に照射したい光の方向を、水平より−22.5°〜22.5°としている。
【0026】
この光反射パネル1は、一枚の板状の部材から一体に形成される。すなわち、支持プレート2に、光散乱板3の輪郭形状をなすスリット7を形成して、スリット7の内側の部分を立ち上げることによって、光散乱板3が形成されている。
【0027】
具体的には、まず、金属薄板たとえばアルミニウム板や鋼板などに、反射性を高めるために銀メッキや蒸着などによるコーティングを行い、鏡面仕上げすることで、
図3(a)に示されるような板状部材6を作製する。
【0028】
次に、板状部材6に、打ち抜き加工などにより、複数のスリット7、及び本光反射パネル1の取付に使用する、図示しないネジ穴を形成する。
図3(b)の拡大図に示すように、各スリット7は略台形の、光散乱板3の輪郭形状をしている。各スリット7は、台形の長辺上の中央部である、後に連結部4が形成される部位において分断されて、スリット7の内側の台形形状の部材と、スリット7の外側の部材が、当該中央部によってのみ、接続されるように形成される。
【0029】
更に、板状部材6の複数個所、具体的には、
図3(a)の二点鎖線において、プレスなどにより曲げ加工を行い、平板5を、平板5の表面の延長面と、隣接する平板5との角度が2.5°の角度をなすように形成する。
【0030】
最後に、各スリット7の内側の台形形状の部材を、連結部4において、接続する平板5に対して折り曲げ角度を変えて傾斜をつけ、また、捩って回転させることにより、姿勢を調整して、光散乱板3とする。
図3(b)に拡大して示されるように、連結部4は、光散乱板3を平板5に対して捩ることができる程度に、十分に細くなるように、形成されている。これにより、各光散乱板3は、接続されている平板5に対する、姿勢を、任意に変え維持することが可能となる。
【0031】
光散乱板3の姿勢は、構造建築物に光反射パネル1が設置された後に、光反射パネル1を介して屋内空間に太陽光が照射された状況を見ながら、調整するのが望ましいが、太陽光は時刻と共に移動するため、固定された人工光を基に、調整してもよい。
【0032】
次に、
図4を用いて、上記のような、光反射パネル1を使用した採光装置10の、建築構造物への設置形態について、説明する。
【0033】
採光装置10は、太陽11から照射された太陽光を採光する採光部12、採光部12から射出された太陽光を導光する導光部13、及び、導光部13により導光された太陽光を屋内空間15の照明光として放光する放光部14を備えている。
【0034】
採光部12は、上方に傾斜して設けられ、太陽光が入射可能な開口部を備えている。開口部から入射された太陽光は、採光部12に連通し、かつ、天井板16上に水平に配置された、導光部13を通り、放光部14へ到達する。
【0035】
放光部14は、その内部に、上記の光反射パネル1を有している。放光部14は、導光部13と連通している。放光部14の、導光部13とは反対側の端部は閉鎖されており、当該端部の最下部には、外方に凹むように形成された溝部18を備えている。
【0036】
支持プレート2の、光散乱板3の反射面側の辺を上辺8、上辺8とは反対側の辺を下辺9とすると、光反射パネル1は、放光部14内に、その下辺9が溝部18に格納されて支持され、かつ、その上辺8が、放光部14の上部を構成する部材に、光反射パネル1の図示しないネジ穴を介して、ボルト・ナット19で締結されることにより、固定されている。光反射パネル1が反射した太陽光は、屋内空間15へ照射される。
【0037】
次に、上記のような、光反射パネル1の作用について説明する。
【0038】
支持プレート2は、光反射パネル1に照射された太陽光の主な部分を、屋内空間15の特定の場所に反射させる。支持プレート2が平面であると、反射された太陽光が照射されて明るくなる屋内空間15の場所の面積は、支持プレート2の大きさにほぼ依存した面積となる。しかし、支持プレート2は湾曲しているため、平面の場合に比べると、より広い場所に、太陽光が照射される。
【0039】
光散乱板3は、その姿勢を個別に調整可能である。したがって、支持プレート2により反射光が照射されない、暗い場所に向けて、反射光が照射されるように、特定の光散乱板3の姿勢を調整した場合には、屋内空間15の広い領域に、太陽光が照射される。
【0040】
このように、支持プレート2による反射光を屋内空間15に照射すると同時に、支持プレート2による反射光が届かない場所に対しては、姿勢が調整された光散乱板3による反射光を照射することが可能である。本光反射パネル1においては、このように、一枚だけで、屋内空間15の広い範囲を明るくすることが可能である。
【0041】
また、上記のように、複数枚の光反射パネル1を使用しなくても、屋内空間15の広い範囲を明るくすることが可能であるため、光反射パネル1を複数枚導入することにより発生しうる、導光された太陽光が使われないという状況が発生しにくい。したがって、無駄なく、効率的な、太陽光の導光が可能である。
【0042】
一枚の光反射パネル1で、屋内空間15の広い範囲を明るくすることが可能であることは、すなわち、採光装置10の放光部14を、コンパクトに構成することが可能であることをも意味する。採光装置10の高さは、放光部14の高さに左右される場合も多いため、これは、採光装置10の高さ自体を、薄くできることも意味する。例えば、
図4に示されるような構成の採光装置10において、本第1の実施形態に記載のような、7枚の、幅約10cmの平板5が、平板5の表面の延長面と、隣接する平板5との角度が2.5°の角度をなすように配される、光反射パネル1を使用する場合、放光部14の紙面左右方向の長さは42cm程度となるが、導光部13の高さは11cm程度に収まる。
【0043】
このように、本光反射パネル1を使用することにより、採光装置10の高さを低くすることが可能となる。これにより、天井裏などの、採光装置10が配置される空間を小さくすることが可能となり、構造建築物の天井を高くして居住空間を広くし、居住性を高めることが可能となる。
【0044】
また、各光散乱板3の姿勢を個別に変更することができるため、様々な照明状況を作ることが可能である。上記のように、支持プレート2による反射光が届かない場所に対して、光散乱板3による反射光を照射するように、光散乱板3の姿勢を調整することも可能であるし、支持プレート2により反射光が照射されている場所に向けて、反射光が重ねて照射されるようにして、特定の場所を更に明るくするように、光散乱板3の姿勢を調整することも、可能である。あるいは、各々の光反射板3の姿勢を不規則にして、屋内空間15の、光反射板3による反射光が照射される場所を無作為にすることで、木漏れ日のように見える、自然の光が取り込まれているような、状況にすることも可能である。
【0045】
また、各光散乱板3は、姿勢の調整後は動かす必要がないため、駆動のための外部からのエネルギー供給が不要である。また、光散乱板3の駆動部が不要となり、かつ、反射面の向きの調整は、人手で、光散乱板3の姿勢を変えることによって、簡単に行うことができるため、メンテナンスが容易となる。
【0046】
また、光反射パネル1は、一枚の板状部材6相当量の、少ない反射面で、太陽光の照射範囲を広げることができるため、反射材の使用量が少なくすみ、かつ、構造が単純になる。したがって、製作費用を低減することが可能となる。
【0047】
また、上記のように、光反射パネル1は、一枚の板状部材6相当量の材料しか使用しないため、軽量に実現できる。それにより、光反射パネル1の設置が容易となるとともに、落下防止を目的とした特別な設備の導入や、設置場所周辺の補強作業などが不要となり、設置費用を低減することが可能となる。
【0048】
また、光反射パネル1は、薄いアルミニウム板や鋼板に、反射性を高めるために銀メッキや蒸着などによるコーティングを行い、鏡面仕上げすることで構成されているため、光反射パネル1の反射性を高めるとともに、軽量化を実現することが可能となる。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、
図6を用いて、第2の実施形態として示した光反射パネルを説明する。
図6は、第2の実施形態として示した光反射パネルにおける、スリット27が入れられた板状部材26の平面図である。本第2の実施形態における光反射パネルは、上記第1の実施形態として示した光反射パネル1とは、光散乱板23の配置が異なっている。
【0050】
図6に示されている板状部材26においては、板状部材26が加工されて光反射パネルに組み込まれた際の太陽光の入射方向を、方向Xとして示している。板状部材26は、この入射方向Xに直交する方向Yと平行な、
図6に示される各二点鎖線において曲げ加工されて、複数の平板25A、25Bが形成される。
【0051】
本第2の実施形態においては、板状部材26の左から奇数枚目の平板25A内のスリット27により形成される光散乱板23は、方向Yにおいて、
図3(a)に示される第1の実施形態と同様に位置せしめられている。他方、板状部材26の左から偶数枚目の平板25B内の各光散乱板23は、第1の実施形態とは異なり、方向Yにおいて、奇数枚目の平板25A内の方向Yに隣接する2枚の光散乱板23の間に位置するように配されている。これにより、板状部材26においては、複数の光散乱板23が千鳥状に配置されるように、各スリット27が設けられている。
【0052】
上記第1の実施形態においては、
図3(a)に示されるように、各光散乱板3は板状部材6上において、方向Yにおける位置が揃えられて設けられている。これにより、
図3(a)にB矢視部分として示されるように、方向Yにおいて隣接する光散乱板の間は、方向X上において一枚も光散乱板が設けられていない、矩形状の領域Bとなっている。このような矩形状の領域Bは、板状部材6が加工されて光反射パネルに組み込まれた際には、支持プレートの一部を構成し、この領域に入射した太陽光は略同一方向に反射されて、室内を略矩形状に照射する。このとき、この照射光を分断することができれば、より広い空間を照らすことができる。
【0053】
このような場合においては、
図6に示されるように千鳥状に光散乱板23を配置し、偶数枚目の平板25Bに配された光散乱板23によって、
図3(a)に示されるような矩形状の領域Bを、方向Xにおいて分断することができる。これにより、上記第1の実施形態以上に、広い空間を照らすことができる。
【0054】
また、偶数枚目の平板25Bにおいては、光散乱板23が、奇数枚目の平板25Aの光散乱板23とは方向Yにずらして配設されることで、偶数枚目の平板25Bの光散乱板23へ入射する太陽光が、奇数枚目の平板25Aの光散乱板23に遮られる可能性が低減する。これにより、光散乱板23全体における受光面積が向上し、屋内空間の広い範囲を上記第1の実施形態以上に明るくすることが可能である。
【0055】
本第2の実施形態が、上記第1の実施形態の奏する他の効果と同様の効果を奏することはいうまでもない。
【0056】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態として示した光反射パネルを説明する。本第3の実施形態における光反射パネルは、上記第1の実施形態として示した光反射パネル1とは、
図3(a)として示される板状部材6の両面に対して、銀メッキや蒸着などによるコーティングを行い、鏡面仕上げを行う点が異なっている。すなわち、
図1(a)に示される各光散乱板3の、太陽光を受ける左側の面だけではなく、裏側となる右側の面も鏡面加工されている。
【0057】
このような構成によれば、
図1(a)において、太陽光の入射方向において後方に位置する部分の支持プレート2や光散乱板3により反射された光が、より前方すなわち太陽側に位置する光散乱板3の方向に反射された場合であっても、この反射光を、前方に位置する光散乱板3の右側の面、すなわち裏面で更に反射して、室内へ導光することが可能となる。これにより、屋内空間15の、上記第1の実施形態以上に広い範囲を明るくすることが可能である。
【0058】
本第3の実施形態が、上記第1の実施形態の奏する他の効果と同様の効果を奏することはいうまでもない。
【0059】
(第4の実施形態)
次に、
図7を用いて、第4の実施形態として示した光反射パネルを説明する。
図7は、第4の実施形態として示した光反射パネルにおける、スリット47A、47Bが入れられた板状部材46の平面図である。本第4の実施形態における光反射パネルは、上記第1の実施形態として示した光反射パネル1とは、光散乱板43A、43Bの配置が異なっている。
【0060】
図7に示されている板状部材46においては、板状部材46が加工されて光反射パネルに組み込まれた際の太陽光の入射方向を、方向Xとして示している。板状部材46は、この入射方向Xに直交する方向Yと平行な、
図7に示される各二点鎖線において曲げ加工されて、複数の平板45が形成される。
【0061】
本第4の実施形態においては、板状部材46は、2種類のスリット、すなわち第1スリット47A、第2スリット47Bによって、各々に対応する2種類の光散乱板、すなわち第1光散乱板43A、第2光散乱板43Bが形成されている。
【0062】
第1光散乱板43Aにおいては、
図3(a)に示される第1の実施形態と同様に、第1光散乱板43Aの台形形状の長辺43aが太陽光の入射方向Xにおいて前方すなわち太陽側に、短辺43bが後方に位置するように、第1スリット47Aが設けられている。これに対し、第2光散乱板43Bにおいては、長辺43aが太陽光の入射方向Xにおいて後方に、短辺43bが前方に位置するように、第2スリット47Bが設けられている。すなわち、第2スリット47Bは、第1スリット47AをXY平面内において180°回転させた形状をなしている。これらのスリット47A、47Bに対応する光散乱板43A、43Bの、長辺43a、短辺43b以外の辺である脚43cにおいては、隣接する光散乱板43A、43Bの脚43c同士が互いに対向して平行になるように、スリット47A、47Bは位置づけられている。いずれの光散乱板43A、43Bにおいても、連結部44A、44Bは長辺43aに設けられている。
【0063】
このような構成によれば、板状部材46内の光散乱板43A、43Bの枚数を増やして密にすることができるため、光散乱板43A、43Bによる受光面積が向上する。したがって、上記第1の実施形態以上に、自然の光が取り込まれているような照射状況を実現するとともに、屋内空間の広い範囲を明るくすることが可能である。
【0064】
本第4の実施形態が、上記第1の実施形態の奏する他の効果と同様の効果を奏することはいうまでもない。
【0065】
なお、本第4の実施形態においては、各スリット47A、47Bの内側の光散乱板43A、43Bを、連結部44A、44Bにおいて折り曲げ角度を変えて傾斜をつける等により姿勢を調整する際に、特に第2光散乱板43Bに関しては、板状部材46の片面のみが鏡面仕上げされている場合においては、板状部材46の鏡面仕上げされていない裏面が、太陽側を向いて位置することになる。そのため、第2光散乱板43Bを折り曲げた後に連結部44Bにおいて第2光散乱板43Bを180°捻り、鏡面仕上げされた表面が太陽側を向くようにする必要がある。この捻りにより連結部44Bに強度上の懸念がある場合においては、例えば、第3の実施形態で説明したように、板状部材46の両面を鏡面仕上げしてもよい。
【0066】
(第5の実施形態)
次に、
図8を用いて、第5の実施形態として示した光反射パネルを説明する。
図8(a)は、第5の実施形態として示した光反射パネルにおける、スリット57が入れられた板状部材56の平面図である。本第5の実施形態における光反射パネルは、上記第1の実施形態として示した光反射パネル1とは、光散乱板53の形状が異なっている。
【0067】
より詳細には、光散乱板53においては、連結部54が光散乱板53の短辺53b側に設けられている。これにより、連結部54から、連結部54の設けられた短辺53bの両端である、2つの短辺側頂点53dの各々までの距離が、連結部54を長辺53aに設けた、第1の実施形態の場合よりも短くなっている。また、光散乱板53は、
図3(a)に示されるような、第1の実施形態における光散乱板3を、太陽光の入射方向Xにおいて反転させて、長辺53aが太陽光の入射方向Xにおいて後方に、短辺53bが前方に位置するように、スリット57により形成されている。
【0068】
すなわち、このような構成によれば、連結部54から2つの短辺側頂点53dの各々までの距離が短いため、
図8(b)に示されるように、スリット57の内側の光散乱板53を、連結部54において折り曲げ角度を変えて傾斜をつける等により姿勢を調整する際に、各短辺側頂点53dとスリット57の外側の部分、すなわち、支持プレート52を形成する部分との干渉を少なくすることができる。これにより、光散乱板53の姿勢の調整範囲を、第1の実施形態よりも広くすることが可能となり、屋内空間のより広い範囲を明るくすることができる。
【0069】
本第5の実施形態が、上記第1の実施形態の奏する他の効果と同様の効果を奏することはいうまでもない。
【0070】
なお、第1の実施形態においては、平板5の表面の延長面と、隣接する平板5との角度は、照射範囲を大きくしながら、採光装置10の高さを低くするためには、2.5°の値をとることが望ましいが、これに限られない。また、平板5間のなす角度は、それぞれ異なっていてもよい。支持プレート2は、曲げ加工されていない平面で構成されてよいし、曲面で構成されていてもよい。
特に、第2、第4の実施形態においては、より多くの太陽光を光散乱板へと入射させる構成となっているため、受光量が比較的少ない支持プレートの形態を変えても、屋内への照射状況に対する影響は大きくない場合がある。特にこのような場合においては、支持プレートを平面で構成すると、板状部材の加工の工程を低減可能である。
【0071】
光散乱板3の形状は、台形でなくともよく、円形、楕円形、正方形、四角形以外の多角形など、他の形状であってもよい。例えば、
図5に、五角形の形状を有する光散乱板20を示す。光散乱板20は、連結部4に隣接する光散乱板20の二つの辺の間に角度がつけられて、連結部4の付け根が削られたように、形成されている。これにより、光散乱板20の姿勢を調整する際に、支持プレート2との干渉が少なくなるため、調整が容易となる。
【0072】
図3(b)には、特に第1の実施形態における、光散乱板3の寸法関係の一例が示されている。
図3(b)において、各寸法の単位はmmである。各部の寸法は
図3(b)に示すとおりであるが、これに限られない。
図3(b)においては、光散乱板3の面積は30cm
2であり、光散乱板3一枚当たりの支持プレート2の周辺面積は約70cm
2となっている。光散乱板3、20が、上記と異なる面積を有するように構成することも可能ではあるが、面積が小さくなると光散乱板3一枚あたりの照射範囲が小さくなり、また、面積が大きくなると支持プレート2の面積が小さくなって、支持プレート2による照射範囲が小さくなるため、約30cm
2程度が望ましい。
ただし、例えば第2、第4の実施形態のように、より多くの太陽光を光散乱板へと入射させることを意図する場合においては、これに限られず、板状部材のより多くの領域を光散乱板として使用するように面積比を変更した構成としても構わない。
【0073】
光反射パネル1に導光される光は、太陽光でなく、人工光であっても構わない。人工光が使用された場合であっても、光を屋内空間に散らすように、光散乱板の姿勢を個別に調整することによって、屋内空間を太陽光のように感じさせる雰囲気をつくることができる。
【0074】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者であればこれから様々な変形及び均等な実施の形態が可能であることが理解できるであろう。
【0075】
よって、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載される本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形や改良形態も本発明に含まれる。
例えば、
図7に示される第4の実施形態のように2種類の形状の光散乱板を対向配置させたうえで、
図6に示される第2の実施形態のように平板ごとに光散乱板の方向Yにおける配置位置をずらしても構わない。
また、
図6に示される第2の実施形態において、
図8に示される第5の実施形態のように、連結部を光散乱板の短辺側に設けても構わない。