(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
<1.実施の形態の全体構成>
図1は、本発明に係る第1の実施の形態としての故障診断装置1が車両制御システム2に接続された状態を示すブロック図である。本実施の形態において故障診断装置1は、車両インタフェース3を介して車両制御システム2に接続されている。
【0016】
[1−1.故障診断装置の構成]
まず、故障診断装置1の構成について
図1を参照して説明する。故障診断装置1は、情報処理及び情報通信が可能な
図1に示すようなコンピュータ装置として実現できる。本例における故障診断装置1は、例えばPC(Personal Computer)として構成されている。
【0017】
図1において、故障診断装置1のCPU(Central Processing Unit)101は、ROM( Read Only Memory)102に記憶されているプログラム、または記憶部108からRAM( Random Access Memory )103にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM103にはまた、CPU101が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0018】
CPU101、ROM102、及びRAM103は、バス104を介して相互に接続されている。このバス104には、入出力インタフェース105も接続されている。
入出力インタフェース105には、キーボード、マウス、タッチパネルなどよりなる入力部106、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)、有機EL(Electroluminescence)パネルなどよりなるディスプレイ、並びにスピーカなどよりなる出力部107、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ装置などより構成される記憶部108が接続されている。また、入出力インタフェース105には、外部機器との通信処理、特に本実施の形態では車両インタフェース3を介して接続可能とされた車両制御システム2の各制御部(車載制御ユニット)との通信処理を行う通信部109が接続されている。本例における通信部109は、USB(Universal Serial Bus)規格に対応した通信を行うことが可能とされている。
さらに、入出力インタフェース105には、必要に応じてメディアドライブ110が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア111が適宜装着され、リムーバブルメディア111に対する情報の書込や読出が行われる。
なお、通信部109と車両インタフェース3との間の通信は有線通信ではなく無線通信とすることもできる。
【0019】
このような故障診断装置1では、通信部109による通信によりデータやプログラムのアップロード、ダウンロードが行われたり、リムーバブルメディア111を介してデータやプログラムを受け渡したりすることが可能である。CPU101が各種のプログラムに基づいて処理動作を行うことで、故障診断装置1としての必要な情報処理や通信が実行される。
【0020】
故障診断装置1は、車両制御システム2における制御部から車両情報を示すデータ(以下「車両データ」と表記)を受信し、車両の故障診断を行う診断者に提示する機能を有している。受信車両データに基づく車両情報の提示は、出力部107のディスプレイを用いて行われる。
【0021】
[1−2.車両制御システムの構成]
図1に示すように、車両制御システム2は、運転支援制御部201、メモリ202、画像処理部203、撮像部204、エンジン制御部211、トランスミッション制御部212、ブレーキ制御部213、表示制御部214、エンジン関連アクチュエータ221、トランスミッション関連アクチュエータ222、ブレーキ関連アクチュエータ223、表示部224及びバスBを備えて構成されている。なお、
図1では、車両制御システム2の構成のうち主に本発明に係る要部の構成のみを抽出して示している。
上記の各制御部は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータを有して構成されている。これらの制御部はバスBを介して接続されており、相互にデータ通信を行うことが可能とされている。本例では、バスBの通信プロトコルとしては、例えばCAN(Controller Area Network)によるプロトコルが採用されている。
以下、上記の各制御部を「車載制御ユニット」とも表記する。
【0022】
運転支援制御部201は、運転支援のための各種の制御処理(以下「運転支援制御処理」と表記)を実行する。運転支援制御処理は、例えば車両の前方を撮像する撮像部204により得られた撮像画像データに基づき行われる。本例では、画像処理部203は、撮像部204による撮像画像データに基づき、車両の前方に存在する先行車両や障害物等の物体検出を行うと共に、物体の大きさや物体までの距離、相対速度等の物体情報を取得する。メモリ202には、撮像画像データや物体検出処理の結果情報等が一時的に格納される。運転支援制御部201は、画像処理部203により得られた物体検出処理の結果情報等に基づいて運転支援制御処理を実行する。
運転支援制御部201は、運転支援制御処理の一つとして、オートクルーズ制御として車間距離制御付クルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)を実現するための処理や、プリクラッシュブレーキ制御を実現するための処理等を行う。
【0023】
エンジン制御部211は、車両に設けられた各種センサからの検出信号や操作子による操作入力情報等に基づき、エンジン関連アクチュエータ221として設けられた各種アクチュエータを制御することで、エンジンの運転制御を行う。エンジン関連アクチュエータ221としては、例えばスロットル弁を駆動するスロットルアクチュエータや燃料噴射を行うインジェクタ等のエンジン駆動に係る各種のアクチュエータが設けられる。また、各種センサには、例えば車速センサ、スロットル開度センサ、アクセルペダル開度センサが挙げられる。
【0024】
トランスミッション制御部212は、車両に設けられた各種センサからの検出信号や操作子による操作入力情報等に基づき、トランスミッション関連アクチュエータ222として設けられた各種のアクチュエータを制御する。トランスミッション関連アクチュエータ222としては、例えば自動変速機の変速制御を行うためのアクチュエータが設けられる。
例えば、トランスミッション制御部212は、車両において自動変速モードが選択されている際には、所定の変速パターンに従い変速信号を上記のアクチュエータに出力して変速制御を行う。また、トランスミッション制御部212は、手動変速モードの設定時には、シフトアップ/ダウン操作に従った変速信号を上記のアクチュエータに出力して変速制御を行う。
【0025】
ブレーキ制御部213は、車両に設けられた各種センサからの検出信号や操作子による操作入力情報等に基づき、ブレーキ関連アクチュエータ223として設けられた各種のアクチュエータを制御する。ブレーキ関連アクチュエータ223としては、例えば、ブレーキブースターからマスターシリンダへの出力液圧やブレーキ液配管内の液圧をコントロールするための液圧制御アクチュエータ等、ブレーキ関連の各種のアクチュエータが設けられる。例えば、ブレーキ制御部213は、上記の液圧を指示する情報に基づき、液圧制御アクチュエータを制御して自車両を制動させる。またブレーキ制御部213は、所定のセンサ(例えば車軸の回転速度センサや車速センサ)の検出情報から車輪のスリップ率を計算し、スリップ率に応じて上記の液圧制御アクチュエータにより液圧を加減圧させることで、所謂ABS(Antilock Brake System)制御を実現する。
【0026】
表示制御部214は、車両に設けられた各種センサからの検出信号や操作子による操作入力情報等に基づき、表示部224による表示動作を制御する。例えば運転支援制御部201からの指示に基づき、運転支援の一環として表示部224に所定の注意喚起メッセージを表示させることが可能とされている。
表示部224は、運転者の前方に設置されているメータパネル内に設けられたスピードメータやタコメータ等の各種メータやMFD(Multi Function Display)、及びその他運転者に情報提示を行うための表示デバイスを包括的に表している。MFDには、自車両の総走行距離や外気温、瞬間燃費等といった各種の情報を同時又は切り換えて表示可能とされる。
【0027】
ここで、運転支援制御部201、エンジン制御部211、トランスミッション制御部212、ブレーキ制御部213、及び表示制御部214の各制御部は、車両制御システム2と故障診断装置1とが車両インタフェース3を介して接続された際、故障診断装置1のCPU101からの送信要求に応じて、車両データを送信する。運転支援制御部201が送信可能な車両データとしては、例えば先行車両との車間距離や先行車両との相対速度を示す車両データ等、画像処理部203で得られる車両データを挙げることができる。また、エンジン制御部211、トランスミッション制御部212、表示制御部214が送信可能な情報としては、例えばそれら制御部に接続されたセンサによる検出データを挙げることができる。具体的に、エンジン制御部211であれば車速、スロットル開度、アクセルペダル開度等の車両データが挙げられ、トランスミッション制御部212であれば変速機のケース温度や変速比、動力伝達軸の回転数等の車両データが挙げられ、表示制御部214であれば外気温等の車両データが挙げられる。また、ブレーキ制御部213が送信可能な情報としては、例えば上記の液圧制御アクチュエータ等、ブレーキ関連アクチュエータ223の駆動電流値等を挙げることができる。
【0028】
[1−3.車両インタフェースの構成]
図1に示すように、車両インタフェース3は、少なくとも変換部301を備えている。変換部301は、車両制御システム2のバス通信規格に従った通信データと、故障診断装置1の通信部109による通信規格に従った通信データとの間の相互のデータ形式変換を行う。具体的に本例では、CAN通信データとUSB通信データとの間の相互のデータ形式変換を行う。
これにより、故障診断装置1と車両制御システム2における各車載制御ユニットとの間で双方向の通信を行うことが可能とされている。
【0029】
<2.CPUの機能構成>
図2は、実施の形態における故障診断装置1のCPU101の機能構成を示した機能ブロック図である。当該機能ブロック図では、CPU101が実行する各種の処理を機能ごとに分けてブロック化して示している。
図2に示すようにCPU101は、受信部11、計測部12、算出部13及び提示制御部14を有している。
【0030】
受信部11は、車両情報の取得対象とされた複数の車載制御ユニットに順次要求を行って、車載制御ユニットごとに車両データを受信する。故障診断にあたっては、車両側で検出される車両データの推移を監視することが要請されるため、受信部11による車両データの送信要求及び受信は、対象の車載制御ユニットごとに繰り返し行われる。
【0031】
計測部12は、車載制御ユニットごとに、受信部11による車両データの受信間隔を計測する。
図3は、或る一つの車載制御ユニットの車両データを受信部11が受信する場合の説明図である。
受信間隔とは、受信部11が或る車載制御ユニットの車両データを受信してから、当該車載制御ユニットの次の車両データを受信するまでに経過した時間のことをいう。
図3では、受信間隔を「t0」として示している。
【0032】
図2に戻り、算出部13は、車載制御ユニットごとに設定された最大許容通信間隔Tと計測部12が計測した受信間隔とに基づき、車載制御ユニットごとに、余裕値を算出する。
最大許容通信間隔Tとは、車両データの送信要求間隔について通信規格上定められたタイムアウト時間であり、車載制御ユニットごとに異なる値が設定され得るものである。車載制御ユニットは、送信要求に応じて車両データを送信したタイミングから、最大許容通信間隔Tとして定められた時間長以内に次の送信要求が行われない場合には、通信タイムアウトエラーと判定する。そして、該タイムアウトエラーと判定したことに応じて、エラー情報を出力する。
図3のケースでは、同一の車載制御ユニットからの車両データの受信について、各車両データの受信間隔が該車載制御ユニットに定められた最大許容通信間隔Tに対して十分に短くなっており、この場合には通信エラーは生じない。
最大許容通信間隔Tと受信間隔t0との差を余裕時間という(
図3における「t1」参照)。
【0033】
図3に示すように、受信部11が一つの車載制御ユニットから車両データを受信する場合、受信間隔t0が最大許容通信時間Tを超えることは通常想定されない。
但し、複数の車載制御ユニットから車両データを取得して提示する場合には、
図4に示すように、或る車載制御ユニット(
図4では「車載制御ユニットA」)において送信要求の間隔が当該車載制御ユニットの最大許容通信間隔Tを超えてしまい、通信エラーが生じる虞がある。このように通信エラーが生じた車載制御ユニットは送信要求に応じた車両データ送信は行わないため、故障診断装置1における車両データの提示処理は該通信エラーに起因して異常終了となる。
【0034】
そこで、本実施の形態では、このような異常終了を未然に防ぐべく、車載制御ユニットごとに最大許容通信間隔Tと計測された受信間隔とに基づいて余裕値を計算する。余裕値とは、最大許容通信間隔Tに対する受信間隔の余裕を示す指標値を意味する。本例において、算出部13は該余裕値として、最大許容通信間隔Tのうちの余裕時間t1が占める割合である余裕率を算出する。
【0035】
提示制御部14は、算出部13が算出した余裕値(余裕率)に基づいて余裕を表す情報を出力部107に提示させる。具体的には、出力部107のディスプレイに表示させる。なお、該余裕を表す情報の詳細については後述する。
【0036】
<3.処理手順>
上記により説明した実施の形態の機能を実現するにあたりCPU101が実行する具体的な処理の手順を
図5のフローチャートを参照して説明する。また、処理に伴う表示画面の遷移についても
図6乃至
図9を用いて説明する。
【0037】
まずステップS101において、CPU101は、
図6に示すようなメインメニュー画面30を出力部107のディスプレイに表示させる。メインメニュー画面30は、故障診断装置1が実行することができる各種機能を選択するための画面である。
メインメニュー画面30には、複数の機能選択ボタン31(図中では31a〜31eの五つの例としている)が設けられている。複数の機能選択ボタン31には、それぞれ故障診断装置1が実行することができる各種機能が対応付けられている。CPU101は、いずれかの機能選択ボタン31の選択情報を受信すると、それぞれの機能選択ボタン31に対応した機能を実行させる。
【0038】
図5において、CPU101はステップS102で、「複数ユニット監視」に対応する機能選択ボタン31bが操作されるまで待機し、該操作があった場合には、ステップS103に進んで
図7に示すような選択画面40を出力部107のディスプレイに表示させる。
図7において、選択画面40には、車両情報の取得対象とする車載制御ユニットを選択可能に一覧表示するユニット一覧領域41と、選択した車載制御ユニットから取得可能な車両情報の詳細項目を選択可能に一覧表示した項目一覧領域42と、決定ボタン43とが設けられている。
【0039】
ステップS104において、CPU101は、操作受付処理を行う。即ち、CPU101は、選択画面40における操作に応じた画面内容の更新処理(例えばチェック操作のあったチェックボックスにチェックマークを付加する等)を行う。そして、続くステップS105でCPU101は、決定操作、すなわち決定ボタン43の操作が行われたか否かを判定し、決定操作が行われていなければステップS104の受付処理を実行する。
【0040】
決定操作が行われた場合、CPU101はステップS106で、
図8に示すような確認画面50をディスプレイに表示させる。
確認画面50は、
図7の選択画面40で選択された車載制御ユニット及びその項目を診断者に確認させ、通信余裕を確認するためのテストを行うか、或いは該テストは行わず直接的に車両情報監視のための表示動作を行うかを選択させる画面である。確認画面50は、選択された車載制御ユニットを表示する選択ユニット確認エリア51と、選択された項目を表示する選択項目確認エリア52と、テストの実行指示ボタンとしてのテスト実行ボタン53と、診断者による車両情報監視のための表示動作の実行指示ボタンとしての情報監視実行ボタン54とが設けられている。
【0041】
CPU101は、ステップS106に続くステップS107で、テスト操作(テスト実行ボタン53の操作)が行われたか否かを判定し、テスト操作が行われていなければステップS111で情報監視実行操作(情報監視実行ボタン54の操作)が行われた否かを判定し、情報監視実行操作が行われていなければステップS107に戻る。すなわち、テスト操作又は情報監視実行操作の何れかが行われるまで待機している。
【0042】
ステップS111で情報監視実行操作が行われた場合、CPU101はステップS112に進み、情報監視表示処理を開始する。すなわち、CPU101は、選択画面40にて選択され確認画面50にて一覧表示された各項目の車両データを対応する車載制御ユニットに送信要求を行うことで送信させ、受信した車両データをディスプレイに表示させる処理を開始する。このときCPU101は、各車載制御ユニットに該当する車両データの送信要求を繰り返し行い、該送信要求に応じて車両データが受信されるごとに、該車両データをディスプレイ上に表示させる。これにより、診断者に車両情報の推移を監視させることができる。
【0043】
続くステップS113でCPU101は、情報監視表示処理の終了条件が成立するまで待機する。該終了条件としては、例えば診断者による終了操作が行われたこと、或いは予め設定された診断時間(監視時間)を経過したこと等を挙げることができる。
該終了条件が成立した場合、CPU101はこの図に示す処理を終える。
【0044】
上記したステップS107において、テスト操作が行われた場合、CPU101はステップS121に進み、テスト処理を開始する。該テスト処理では、上述した余裕率を計算するために、ステップS112の情報監視表示処理と同様に、選択画面40にて選択され確認画面50にて一覧表示された各項目の車両データを対応する車載制御ユニットに対する送信要求を行うことで受信する処理を繰り返し行う。またこの間、テスト処理においては、送信要求を行った車載制御ユニットごとに、上述した受信間隔の計測を行う。
【0045】
続くステップS122でCPU101は、テスト終了まで待機する。本例では、予めテスト実行時間(例えば5分や10分等)が定められており、ステップS121のテスト開始から該テスト実行時間が経過したことに応じてテスト処理が終了する。
なお、操作に応じてテスト処理を終了するものとしてもよい。
【0046】
テスト終了となった場合、CPU101はステップS123で余裕率及び推奨項目数の算出を行う。
余裕率については、上記のテスト処理で車載制御ユニットごとに計測された受信間隔と、車載制御ユニットごとに設定された最大許容通信間隔Tとに基づき車載制御ユニットごとに計算する。ここで、テスト処理中においては、各車載制御ユニットからの車両データの受信が繰り返し行われるため、受信間隔は車載制御ユニットごとに複数回計測される。本例においてCPU101は、各車載制御ユニットについて、新たに受信間隔が計測されるごとに余裕率を算出する。すなわち、ステップS123の処理においては、車載制御ユニットごとに複数の余裕率が算出される。このように車載制御ユニットごとに複数回算出される余裕率は、通信条件の変化等により、それぞれが異なる値となり得るものである。
【0047】
推奨項目数は、通信余裕を確保するために許容される項目の選択数を示唆する項目選択数示唆値の一種であり、本例では車載制御ユニットごとに算出する。推奨項目数としては、テスト処理の結果算出された余裕率が、少なくとも目標値とする余裕率を下回るように算出すればよい。本例において、推奨項目数は以下の手法により車載制御ユニットごとに算出する。
●低減値基本係数=余裕率/目標余裕率を求める。
このとき、余裕率としては、対象とする車載制御ユニット(該低減値基本係数の算出対象とされた車載制御ユニット)について複数算出された余裕率のうち一の余裕率を用いる。具体的に本例では、最大の受信間隔と最大許容通信間隔Tとから算出された余裕率を用いる。
低減値基本係数は、「1」以上は「1」とし、「1」〜「0」までの値を持つ。
●低減値係数を以下のルールに従って設定する。
・低減値係数=低減値基本係数が「1」〜「0.5」の範囲内であれば低減値基本係数の値とする。
・低減値基本係数が「0.5」未満であれば「0.5」とする。
●推奨項目数=選択項目数×低減値係数とする。
なお「選択項目数」とは、対象とする車載制御ユニットについて選択された項目数を意味する。
【0048】
ステップS123の算出処理を実行したことに応じ、CPU101はステップS124に進み、
図9に示すようなテスト結果画面60をディスプレイに表示させる。
図9において、テスト結果画面60には、テスト処理で車両データの取得対象とされた車載制御ユニットごとに、計測した受信間隔の最大値、最小値、平均値や、最大許容通信間隔Tを表示している。本例では、受信間隔の情報は棒グラフ状に表示しており、最大許容通信間隔Tの情報も該グラフに合わせた態様により表示している。
また、テスト結果画面60には、車載制御ユニットごとの余裕率(例えば最大の受信間隔を用いて算出した余裕率)、選択項目数、及びステップS123で算出した推奨項目数の情報を表示している。
診断者は、テスト結果として算出された余裕率の提示を受けることで、選択した項目について故障診断のための情報監視表示処理(いわば本番としての表示処理)を行った場合に、該表示処理が通信エラーにより異常終了してしまう可能性の高/低を容易に把握することができる。
また、推奨項目数の提示を受けることで、診断者は、情報監視表示処理の異常終了防止を図るために項目の再選択を要する場合に対応して、許容される項目選択数を容易に把握することができる。
【0049】
ここで、テスト結果画面60には、上記の余裕率などテスト結果を表す情報と共に、情報監視実行ボタン61と、
図7に示した選択画面40を再度呼び出すための再選択ボタン62とが設けられている。
【0050】
CPU101は、ステップS124でテスト結果画面60の表示処理を実行したことに応じて、ステップS125で再選択操作(再選択ボタン62の操作)が行われたか否かを判定し、再選択操作が行われていなければステップS126で情報監視実行操作(情報監視実行ボタン61の操作)が行われたか否かを判定し、情報監視実行操作が行われていなければステップS125に戻る。すなわち、再選択操作又は情報監視実行操作の何れかが行われるまで待機する。
【0051】
ステップS125で再選択操作が行われた場合、CPU101はステップS103に戻って選択画面40の表示処理を行う。これにより診断者は、通信余裕がないと判断した場合に対応して、車載制御ユニットや項目の再選択を行うことができる。
【0052】
一方、ステップS126で情報監視実行操作が行われた場合、CPU101はステップS112に処理を進めて、情報監視表示処理を開始する。
【0053】
なお、上記では通信余裕を確保するために許容される項目の選択数を示唆する項目選択数示唆値として、推奨項目数を算出する例を挙げたが、該項目選択数示唆値としては、通信余裕を確保するために削除すべき項目の数(以下「要削除項目数」と表記)を算出してもよい。要削除項目数としては、例えば、テスト処理に応じて算出した余裕率と目標余裕率との差に応じて算出することが考えられる。具体的には、例えば余裕率1%あたりの削除項目数の値(β)を定めておき、余裕率と目標余裕率との差の値に該値(β)を乗じて要削除項目数とする例を挙げることができる。
【0054】
<4.第2の実施の形態>
第2の実施の形態について、
図10乃至
図13を参照して説明する。
第2の実施の形態は、診断者に故障診断装置1を用いた診断目的を選択させ、該診断目的に基づいて情報監視表示処理で表示対象とする車載制御ユニットや項目を自動選択するシステムを前提としたものである。
なお以下、図面において同一符号が付された部位、同一ステップ番号が付された処理については、特に言及しない限りはそれぞれ同一機能を有する部位、同一処理であるものと重複説明は避ける。
【0055】
[4−1.CPUの機能構成及びデータベース]
図10は、第2の実施の形態における故障診断装置1のCPU101の機能構成を示した機能ブロック図である。
第2の実施の形態における故障診断装置1のCPU101は、第1の実施の形態の機能構成に加えて、判定部15と選択部16を備えている。
【0056】
判定部15は、故障診断装置1を用いた診断目的を判定する。診断目的としては、例えば「加速制御診断」、オートクルーズ制御等の「運転支援制御診断」、ブレーキ制御等の「車体系制御診断」など様々な区分が考えられる。
【0057】
第2の実施の形態の故障診断装置1においては、診断目的ごとに選択すべき車載制御ユニットや車両情報の項目情報が対応づけられた診断目的DB(データベース)20が記憶されている(
図10及び
図11参照)。一例として診断目的DB20においては、
図11に示すように、「加速制御診断」の診断目的に対してエンジン制御部211としての車載制御ユニットと、エンジン回転数などエンジン制御部211が取得可能な車両情報の項目情報が対応づけられている。
また、特に本例の場合、診断目的DB20には、車両情報の項目ごとに、優先度の情報が対応づけられている。
【0058】
第2の実施の形態の故障診断装置1(CPU101)は、
図6に示したメインメニュー画面30において複数ユニット監視ボタン31bが操作されたことに応じて、
図12に示すような診断目的選択画面70をディスプレイ上に表示する。
図示のように診断目的選択画面70においては、複数の目的選択ボタン71が診断目的ごとに設けられている。本実施の形態では、例えば「加速制御診断」、「運転支援制御診断」、「車体系制御診断」の診断目的に対応した目的選択ボタン71a、71b、71cが設けられている。
【0059】
診断者が目的選択ボタン71のいずれかを選択操作すると、
図8に示したような確認画面50がディスプレイ上に表示されるが、この場合の確認画面50としては、操作された目的選択ボタン71から特定される診断目的に応じた車載制御ユニットや項目が選択状態とされた画面が表示される。この際の車載制御ユニットや項目の選択において、CPU101は診断目的DB20に格納された車載制御ユニット、及び項目の情報を参照する。
【0060】
図10において、本例の判定部15は、上記のような診断目的選択画面70での診断目的の選択操作に基づき、故障診断装置1を用いた診断目的を判定する。
なお、診断目的の判定手法は上記の手法に限定されるものではなく、例えば第1の実施の形態のように監視対象とする項目を診断者に手動選択させる前提の下では、選択された項目の別に応じて判定することもできる。
【0061】
選択部16は、算出部13がテスト処理に応じて算出した余裕率に基づいて、項目の選択を行う。このようなテスト処理の結果に応じた項目選択の手法としては、多様に考えられる。例えば、本例では、算出部13により車載制御ユニットごとに算出される余裕率と目標余裕率とに基づいて、通信余裕に乏しい非余裕ユニット(例えば余裕率>目標余裕率の車載制御ユニット)を検出する処理を行い、該非余裕ユニットが検出された場合のみ選択部16が項目の選択を行う手法を採る。この際の項目選択は、少なくとも、検出された非余裕ユニットの余裕率が目標余裕率を下回るように行う。例えば、上述したような推奨項目数を算出し、該推奨項目数を目標選択項目数として項目選択を行うことが考えられる。
上記の項目選択手法により、非余裕ユニットが存在しない場合において無闇に項目選択のための処理が行われてしまうことの防止が図られる。
【0062】
さらに、本例の選択部16は、上記のような項目選択を判定部15が判定した診断目的に基づいて行う。すなわち、診断目的DB20において、判定された診断目的に対応づけられた情報に基づいて項目選択を行う。この際、項目の選択にあたっては、項目ごとに対応づけられた優先度の情報を用いる。具体的に、通信余裕の観点から項目の選択解除が必要とされた場合は、優先度の低い項目を優先的に選択解除する。
これにより、情報監視表示処理の異常終了防止を図るために項目の再選択を要する場合に対応して、診断目的上必要度の高い項目が選択解除され難くなるようにすることができる。
【0063】
[4−2.処理手順]
上記により説明した第2の実施の形態の機能を実現するにあたりCPU101が実行する具体的な処理の手順を
図13のフローチャートを参照して説明する。
まず、この場合のCPU101は、ステップS102でメインメニュー画面30上の複数ユニット監視ボタン31bが操作されたことに応じ、ステップS131で診断目的選択画面70を出力部107のディスプレイに表示させ、続くステップS132において何れかの目的選択ボタン71が操作されるまで待機する。そして、目的選択ボタン71が操作されると、CPU101はステップS133で、診断目的に対応する項目を診断目的DB20の情報内容に基づき選択し、続くステップS106で確認画面50の表示処理を行う。上記説明から理解されるように、この場合の確認画面50としては、操作された目的選択ボタン71から特定される診断目的に応じた車載制御ユニットや項目が選択状態とされた画面を表示させる。
【0064】
また、この場合のCPU101は、ステップS122でテスト終了となった場合、ステップS141で非余裕ユニットの検出処理を例えば上述した手法により行う。なお、ステップS141では、非余裕ユニットの検出に要する車載制御ユニットごとの余裕率については、テスト処理で車載制御ユニットごとに複数回計測された受信間隔のうち、それぞれ一の受信間隔を用いて算出する。具体的に本例では、最大の受信間隔を用いる。これにより、非余裕ユニットの検出精度向上を図ることができる。
【0065】
続くステップS142でCPU101は、ステップS141の検出処理の結果に基づき非余裕ユニットが存在するか否かを判定し、非余裕ユニットが存在しないと判定した場合はステップS112に進んで情報監視表示処理を開始する。つまり、この場合は通信余裕が十分であるため、ステップS133で選択された項目ついて、情報監視表示処理が開始される。
【0066】
一方、ステップS142で非余裕ユニットが存在すると判定した場合、CPU101はステップS143で項目の再選択処理を行う。すなわち、上記で説明したように診断者により選択された診断目的と診断目的DB20の情報内容とに基づいて取得対象とする項目(情報監視表示の対象とする項目)の選択を行う。
そして、該ステップS143の再選択処理を行った上で、CPU101はステップS112に進んで情報監視表示処理を開始する。
【0067】
なお、上記ではステップS143の再選択処理から直接ステップS112の情報監視表示処理に移行する例を挙げたが、ステップS143の再選択処理の実行に応じてステップS106の確認画面表示処理に移行するようにして、診断者に項目選択の余地を与えてもよい。
また、上記ではテスト処理結果に応じた項目の再選択を行う上で非余裕ユニットの判定処理を行う例を挙げたが、該非余裕ユニットの判定処理は必須ではない。例えば、第1の実施の形態で説明したように車載制御ユニットごとに推奨項目数を算出するものとし、車載ユニットごとに推奨項目数を目標選択項目数として項目再選択を行うという手法を採ることもできる。その場合には、非余裕ユニットの検出や判定の処理は不要とできる。
【0068】
また、各実施の形態では、「余裕値」として余裕率を算出する例を挙げたが、「余裕値」としては例えば上述した余裕時間(
図3参照)を算出する等、算出手法は多様に考えられるものである。
さらに、各実施の形態では、最大の受信間隔を用いて余裕値を算出したが、受信間隔の平均値、最小値、直近値等のうちから操作等により選択された値を用いて余裕値を算出することもできる。
【0069】
また、上記では「余裕値」の提示を視覚情報の表示により行う例を挙げたが、例えば音声情報の出力等により該提示を実現することもできる。
【0070】
<5.まとめ>
上記した実施の形態としての故障診断装置(1)は、車載制御ユニットから受信した車両情報を示すデータ(車両データ)に基づいて提示部(出力部107)に車両情報を提示させる故障診断装置において、車両情報の取得対象とされた複数の車載制御ユニットに順次要求を行って車載制御ユニットごとに車両データを受信する受信部(11)と、車載制御ユニットごとに受信部による車両データの受信間隔を計測する計測部(12)と、車載制御ユニットごとに設定された最大許容通信間隔(T)と計測部が計測した受信間隔とに基づき、車載制御ユニットごとに最大許容通信間隔に対する受信間隔の余裕を示す指標値である余裕値を算出する算出部(13)と、算出部が算出した余裕値に基づいて余裕を表す情報を提示部に提示させる提示制御部(14)と、を備えている。
【0071】
これにより、車両情報の取得対象とされた車載制御ユニットについて、最大許容通信間隔に対する受信間隔の余裕がどの程度であるかが提示部に提示される。
従って、故障診断にあたっての車両情報取得量の事前調整を診断者に促すことができるため、車載制御ユニットの通信タイムアウトエラーに起因した車両情報提示処理の異常終了防止を図ることができる。
【0072】
また、実施の形態の故障診断装置においては、車載制御ユニットのそれぞれが車両情報として複数の項目による情報を取得可能とされており、受信部は、車両データとして、それぞれの車載制御ユニットが取得可能な車両情報のうち車載制御ユニットごとに選択された項目の車両データを要求して受信し、算出部は、車載制御ユニットについて算出した余裕値に基づき、該車載制御ユニットの余裕を確保するために許容される項目の選択数を示唆する項目選択数示唆値を算出し、提示制御部は、算出部が算出した項目選択数示唆値が表す数値情報を提示部に提示させている。
【0073】
これにより、車両情報提示処理の異常終了防止を図るために項目の再選択を要する場合に対応して、診断者に許容される項目選択数を示唆することが可能とされる。
従って、診断者による項目再選択の容易化を図ることができる。具体的には、診断者が通信余裕確保のために項目の選択を何度もやり直すような事態の発生を防ぐことができる。
【0074】
また、実施の形態の故障診断装置においては、車載制御ユニットのそれぞれが車両情報として複数の項目による情報を取得可能とされており、受信部は、車両データとして、それぞれの車載制御ユニットが取得可能な車両情報のうち車載制御ユニットごとに選択された項目の車両データを要求して受信し、算出部が算出した余裕値に基づいて項目の選択を行う選択部(16)を備えている。
【0075】
これにより、車両情報提示処理の異常終了防止を図るために項目の再選択を要する場合に対応して、項目の再選択が故障診断装置によって余裕値に基づき自動的に行われる。
従って、診断者による項目再選択の負担を軽減することができる。
【0076】
また、実施の形態の故障診断装置においては、当該故障診断装置を用いた診断目的を判定する判定部(15)を備え、選択部は、判定部が判定した診断目的に基づいて項目を選択している。
【0077】
これにより、車両情報提示処理の異常終了防止を図るために項目の再選択を要する場合に対応して、診断目的上必要とされる項目が選択解除され難くなるようにすることが可能とされる。
従って、通信エラーに起因した車両情報提示処理の異常終了防止と、適切な車両故障診断への寄与との両立を図ることができる。
【0078】
また、実施の形態の故障診断装置においては、算出部は、車載制御ユニットごとに、計測部が計測した受信間隔のうち最大の受信間隔を用いて余裕値を算出している。
【0079】
これにより、通信条件的に最も厳しい条件下で算出された受信間隔に基づいて余裕値が算出され、提示される。
従って、車両情報提示処理の異常終了防止効果を高めることができる。