(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
構築物を構成する4本の構成部材により四角形に形成されている四角形フレームの内側に配設された制振手段と、この制振手段からそれぞれが水平方向に対する傾き角度をもって互いに逆方向に延びる長さを有し、互いに平行に配設されている2本のブレースとを含んで構成され、これらのブレースの前記四角形フレーム側の端部が前記構成部材に結合されている制振装置において、
前記制振手段は、前記四角形フレームと直角をなしてこの四角形フレームの内側を貫通する方向が厚さ方向となっている板状の制振パネルにより形成され、この制振パネルに前記2本のブレースが上下の段差をもって結合され、前記四角形フレームを変形させる振動エネルギが、互いに前記ブレースの長さ方向の逆方向へずれ移動する前記2本のブレースにより前記制振パネルが塑性変形することで吸収されて振動が抑制され、
前記制振パネルは、前記ブレースの長さ方向に複数個並設され、
前記制振パネルの個数が変更可能となっており、
それぞれの前記制振パネルは、これらの制振パネルに複数形成された孔と、前記ブレースに複数形成された孔とに挿通される結合具により、前記ブレースに結合され、前記制振パネルの前記孔の個数よりも前記ブレースの前記孔の個数は多くなっており、前記制振パネルの前記孔の間隔と前記ブレースの前記孔の間隔とが同じになっていることを特徴とする前記制振装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
四角形フレームを変形させる振動エネルギを吸収して振動を抑制するための制振手段は、制振装置のうちの重要な要素であり、この制振手段が多数の部材を用いた複雑な構造になると、コストが高くなるため、少ない部材による簡単な構造よりコストを低減化することが望まれる。
【0006】
本発明の目的は、四角形フレームを変形させる振動エネルギを吸収して振動を抑制するための制振手段を、少ない部材による簡単な構造によりコストの低減化を実現して得られるようになる制振装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る制振装置は、構築物を構成する4本の構成部材により四角形に形成されている四角形フレームの内側に配設された制振手段と、この制振手段からそれぞれが水平方向に対する傾き角度をもって互いに逆方向に延びる長さを有し、互いに平行に配設されている2本のブレースとを含んで構成され、これらのブレースの前記四角形フレーム側の端部が前記構成部材に結合されている制振装置において、前記制振手段は、前記四角形フレームと直角をなしてこの四角形フレームの内側を貫通する方向が厚さ方向となっている板状の制振パネルにより形成され、この制振パネルに前記2本のブレースが上下の段差をもって結合され、前記四角形フレームを変形させる振動エネルギが、互いに前記ブレースの長さ方向の逆方向へずれ移動する前記2本のブレースにより前記制振パネルが塑性変形することで吸収されて振動が抑制されることを特徴とするものである。
【0008】
以上のように本発明に係る制振装置の制振手段は、四角形フレームと直角をなしてこの四角形フレームの内側を貫通する方向が厚さ方向となっている板状の制振パネルにより形成されており、このため、制振手段を少ない部材による簡単な構造により構成でき、これにより、コストの低減化を実現できるようになる。
【0009】
以上の本発明において、制振パネルの個数を、ブレースの長さ方向に長い寸法となっている1個としてもよいが、制振パネルを、ブレースの長さ方向に複数個並設してもよい。
後者によると、制振パネルを、ブレースの長さ方向の長さが短い小型のものにできるため、前者よりも制振パネルの製造や取り扱いが容易になる。
【0010】
また、後者によると、2本のブレースから制振パネルを塑性変形させる軸力がそれぞれの制振パネルに伝達される際に、これらの制振パネルに作用する軸力は順番に減少しながらそれぞれの制振パネルに伝達されるため、2本のブレースに、四角形フレームの変形による圧縮力が作用したときに、これらのブレースに座屈が生じにくくなり、これより、ブレースの座屈が防止されて、制振パネルがこの制振パネルの厚さ方向に変形することをなくすことができるようになる。
【0011】
また、制振パネルを2本のブレースの長さ方向に複数個並設する場合には、制振パネルの個数を変更可能としてもよい。
【0012】
これによると、本発明に係る制振装置が適用される建物等の構築物に求められる制振性能に応じて、制振パネルの個数を任意に決めることが可能となり、このため、それぞれ構築物ごとに制振性能を適切に設定できるようになる。
【0013】
なお、このように制振パネルを2本のブレースの長さ方向に複数個並設し、制振パネルの個数を変更可能とするためには、一例として、それぞれの制振パネルを、これらの制振パネルに複数形成された孔と、ブレースに複数形成された孔とに挿通される結合具により、ブレースに結合できるようにするとともに、制振パネルの孔の個数よりもブレースの孔の個数を多くし、かつ制振パネルの孔の間隔とブレースの孔の間隔とを同じにすればよい。
【0014】
また、本発明において、制振パネルの上下両端部を、2本のブレースに接触してこれらのブレースに結合された接触結合箇所とし、これらの接触結合箇所の間を、2本のブレースに接触していない非接触箇所とすることが好ましい。
【0015】
これによると、制振パネルの上下両端部の間の大きな領域を、四角形フレームを変形させる振動エネルギによって塑性変形する領域にできるとともに、この領域において、ブレースとの間で摩擦を生じさせることなく、制振パネルを塑性変形させることができる。
【0016】
また、このように制振パネルの上下両端部を、2本のブレースに接触してこれらのブレースに結合された接触結合箇所とし、これらの接触結合箇所の間を、2本のブレースに接触していない非接触箇所とする場合には、制振パネルにおけるブレースの長さ方向の寸法を、接触結合箇所では大きくし、非接触箇所で小さくし、この寸法を、非接触箇所の最小寸法部から接触結合箇所へ連続的に大きくすることが好ましい。
【0017】
これによると、制振パネルにおけるブレースの長さ方向の寸法は、非接触箇所の最小寸法部で最小となるため、四角形フレームを変形させる振動エネルギによる塑性変形を、非接触箇所の最小寸法部から確実に生じさせて、非接触箇所のほかの部分へ拡大させることができるようになる。
【0018】
また、本発明において、2本のブレースのそれぞれを、制振パネルの厚さ方向両側に配設された2本のブレース部材を含んで構成してもよい。
【0019】
これによると、四角形フレームの変形による圧縮力が2本のブレースに作用したときに、制振パネルがこの制振パネルの厚さ方向に変形することを、制振パネルの厚さ方向両側に配設された2本のブレース部材により阻止することができる。
【0020】
また、制振パネルの厚さ方向両側に配設された2本のブレース部材を、少なくとも制振パネルが配置されている部分において、ブレースの長さ方向と直交する断面形状がボックス形状又は略ボックス形状に形成されたものとすることが好ましい。
【0021】
これによると、四角形フレームの変形による圧縮力が2本のブレースに作用したときに、これらのブレースが座屈することをボックス形状又は略ボックス形状による大きな強度により防止できるため、制振パネルがこの制振パネルの厚さ方向に変形することを一層有効に阻止することができる。
【0022】
このようにブレースの長さ方向と直交する断面形状をボックス形状又は略ボックス形状とすることは、例えば、アルミ製又はアルミ合金製の押し出し成形品や引き抜き成形品によりブレースを形成したり、H型鋼に板状の補強部材を結合することでブレースを形成することにより容易に行える。
【0023】
さらに、本発明において、2本のブレースには、これらのブレースが互いにブレースの長さ方向の逆方向へずれ移動することを案内し、かつ制振パネルの厚さ方向に2本のブレースがずれることを阻止するための案内手段を設けることが好ましい。
【0024】
これによると、制振パネルに塑性変形を生じさせるために2本のブレースが、互いにブレースの長さ方向の逆方向へずれ移動することを案内手段で許容しながら、制振パネルの厚さ方向に2本のブレースがずれることを案内手段で阻止できるため、制振パネルがこの制振パネルの厚さ方向に変形することを防止できる。
【0025】
また、本発明において、制振パネルとして、ブレースの長さ方向のうち、一方の側への傾斜した形状となっている第1制振パネルと、他方の側へ傾斜した形状となっている第2制振パネルとを設けてもよい。
【0026】
これによると、2本のブレースに軸力として引っ張り力や圧縮力が作用した際に、軸力の向きに応じて第1制振パネルと第2制振パネルのうち、一方に大きな引っ張り荷重を作用させることができるとともに、他方に大きな圧縮荷重を作用させることができ、これにより、引っ張り荷重による塑性変形と圧縮荷重による塑性変形を第1制振パネルと第2制振パネルに生じさせて、振動エネルギを有効に吸収できるようになる。
【0027】
また、以上のように制振パネルとして、ブレースの長さ方向のうち、一方の側へ傾斜した形状となっている第1制振パネルと、他方の側へ傾斜した形状となっている第2制振パネルとを設けるためには、第1制振パネルと第2制振パネルを、互いに表裏が逆であって、形状及び寸法が同じになっているものとしてもよい。
【0028】
これによると、形状及び寸法が同じになった制振パネルを表裏を逆にして用いることにより、第1制振パネルと第2制振パネルにすることができるため、これらの第1制振パネルと第2制振パネルの共通化を図ることができる。
【0029】
以上説明した本発明において、制振パネルの材質は、本発明に係る制振装置が設置される構築物に求められる制振性能に応じて任意に設定される。制振パネルの材料として、降伏強度が大きくて、せん断塑性変形や引っ張り塑性変形、圧縮塑性変形が生ずる強度が大きい材料を選択してもよく、このような場合における本発明に係る装置は、耐震装置ともいうべきものとなるため、本発明に係る制振装置は、実質的に耐震装置となっているものも含む。
【0030】
また、本発明は、新築される建物等の構築物の構築作業中に、この構築物に取り付けられる制振装置に適用できるとともに、既存の建物等の構築物に後付けで取り付けられる制振装置にも適用できる。
【0031】
さらに、本発明に係る制振装置は、建物に適用できるとともに、橋梁やタワー等にも適用でき、任意の構築物に設置することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によると、四角形フレームを変形させる振動エネルギを吸収して振動を抑制するための制振手段を、少ない部材による簡単な構造によりコストの低減化を実現して得られるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る制振装置1が構築物である高層建物に設置されているときの状態が示されている。この建物は、左右の間隔をあけて立設されているH型鋼等による柱2,3と、これらの柱2,3の間に上下の間隔を架設されているI型鋼又はH型鋼等による梁4,5とが構造材となって構築されており、柱2と梁4との接合箇所には、ガセットプレート6が結合され、柱3と梁5との接合箇所には、ガセットプレート7が結合されている。これらの柱2,3と、梁4,5と、ガセットプレート6,7は、建物を構成する構成部材となっている。
【0035】
また、これらの構成部材のうち、ガセットプレート6,7は、本実施形態の制振装置1を建物の2つの箇所の間に架け渡すために、この建物に設けられたブラケットにもなっており、ガセットプレート6,7は、高さの差をもって建物に配設されているため、柱2,3と梁4,5からなる四角形フレーム8の内側に配置されている制振装置1は、水平方向に対する傾き角度をもって建物に設置されている。
【0036】
図2には、制振装置1の分解図が示されている。この
図2に示されているように、制振装置1は、上下の段差をもって配設される2本のブレース10,11と、これらのブレース10,11の間に配置された制振パネル12とが構成部材となって構成されたものであり、制振パネル12は、ブレース10,11の長さ方向に間隔をあけて複数個並設されており、2本のブレース10,11は、制振パネル12から水平方向に対する傾き角度をもって互いに逆方向に平行に延びる長さを有している。
【0037】
図3は、制振装置1の一部を省略した拡大正面図であり、
図4、
図5及び
図6は、
図3のS4−S4線断面図、S5−S5線断面図及びS6−S6線断面図である。それぞれが四角形フレーム8の内側に配置されている制振パネル12は、本実施形態における制振手段であり、これらの制振パネル12は、四角形フレーム8と直角をなしてこの四角形フレーム8の内側を貫通する方向が厚さ方向となっている板状の金属材料、例えば、JIS規格でSM490やSS400,SN490,SN400等による金属材料で形成されている。
【0038】
図5及び
図6に示されているように、上下2本のブレース10,11のうち、上側のブレース10は、制振パネル12の厚さ方向両側に配設されたブレース部材20,21により形成され、下側のブレース11も、制振パネル12の厚さ方向両側に配設されたブレース部材22,23により形成されている。これらのブレース部材20,21,22,23のうち、ブレース部材20,21の上端部には、ブレース10,11の長さ方向に延びる突条部20A,21Aが設けられ、また、ブレース部材22,23の下端部には、ブレース10,11の長さ方向に延びる突条部22A,23Aが設けられている。
【0039】
図2に示されているように、ブレース部材20の突条部20Aには、多数の孔24がブレース10,11の長さ方向に等間隔で形成され、このような孔24は、
図5から分かるように、ブレース部材21の突条部21Aにも形成されている。また、
図2に示されているように、ブレース部材22の突条部22Aにも、多数の孔25がブレース10,11の長さ方向に等間隔で形成され、このような孔25は、
図5から分かるように、ブレース部材23の突条部23Aにも形成されている。さらに、
図2に示されているように、それぞれの制振パネル12の上端部12Aには、複数の孔26がブレース10,11の長さ方向に等間隔で形成され、これらの孔26の間隔は、孔24の間隔と同じになっている。また、それぞれの制振パネル12の下端部12Bにも、複数の孔27がブレース10,11の長さ方向に等間隔で形成され、これらの孔27の間隔は、孔25の間隔と同じになっている。
【0040】
また、孔24の間隔と孔25の間隔は同じであるため、孔26の間隔と孔27の間隔も同じである。そして、ブレース部材20,21,22,23に設けられている孔24,25の個数は、制振パネル12に設けられている孔26,27の個数よりも多くなっている。
【0041】
図3に示されているように、複数の制振パネル12をブレース10,11の長さ方向に間隔をあけて並設するとともに、
図5に示されているように、それぞれの制振パネル12をブレース部材20,21の間及びブレース部材22,23の間に配置し、突条部20A,21Aの孔24と制振パネル12の孔26とにボルト28Aの軸部を挿通するとともに、突条部22A,23Aの孔25と制振パネル12の孔27とにボルト29Aの軸部を挿通し、ボルト28A、29Aの軸部の先端に螺合したナット28B,29Bを締め付けることにより、それぞれの制振パネル12を、ブレース部材20,21で構成されるブレース10と、ブレース部材22,23で構成されるブレース11とに、ボルト28A,29A及びナット28B,29Bによる結合手段28,29により結合することができる。
【0042】
このような結合手段28,29による制振パネル12のブレース10,11への結合は、突条部20A,21A,22A,23Aの箇所では、ブレース部材20,21,22,23と制振パネル12とを接触させて行われるようになっており、突条部20A,21A,22A,23A以外の箇所には、ブレース部材20,21,22,23に制振パネル12から後退した深さの浅い凹部20B,21B,22B,23Bが形成されているため、突条部20A,21A,22A,23A以外の箇所では、ブレース部材20,21,22,23と制振パネル12とを接触させずに行われるようになっている。
【0043】
また、
図5及び
図6に示されているように、ブレース部材20,21,22,23には、内部が空洞になっているボックス形状部20C,21C,22C,23Cが形成されており、これらのボックス形状部20C,21C,22C,23Cは、ブレース部材20,21,22,23の全長のうち、ブレース部材20,21のボックス形状部20C,21Cが示されている
図4のとおり、ブレース10,11の長さ方向に複数個が並設される制振パネル12の配置部分に形成されており、この配置部分は、ブレース部材20,21,22,23の全長の大きな割合を占めている。
【0044】
図4に示されているように、ブレース部材20,21には、ボックス形状部20C,21Cの両端部のうち、
図1で示したガセットプレート6側の端部から延出部20D,21Dが延出形成されている。また、ブレース部材22,23には、ボックス形状部22C,23Cの両端部のうち、
図1で示したガセットプレート7側の端部から
図4の延出部22D,23Dが延出形成されている。ブレース部材20,22の延出部20D,22Dは、
図2にも示されている。
【0045】
図5及び
図6に示されているように、上下に対向配置されているブレース部材20,22のうち、上側のブレース部材20には、ガイド凸部20Eがボックス形状部20Cの全長に渡って形成されており、このガイド凸部20Eは、下側のブレース部材22のボックス形状部22Cの全長に渡って設けられているガイド凹部22Eにスライド自在に嵌合されている。また、上下に対向配置されているブレース部材21,23のうち、下側のブレース部材23にも、ガイド凸部23Eがボックス形状部23Cの全長に渡って形成されており、このガイド凸部23Eは、上側のブレース部材21のボックス形状部21Cの全長に渡って設けられているガイド凹部21Eにスライド自在に嵌合されている。
【0046】
このため、ガイド凸部20E,23Eとガイド凹部21E,22Eにより、ブレース部材20,21とブレース部材22,23が、互いにブレース10,11の長さ方向の逆方向へずれ移動することが許容されるとともに、制振パネル12の厚さ方向にずれることが阻止される。
【0047】
これらのガイド凸部20E,23Eとガイド凹部21E,22Eは、上下2本のブレース10,11のための案内手段30,31を構成しており、案内手段30,31により、ブレース部材20とブレース部材21で構成される上側のブレース10と、ブレース部材22とブレース部材23で構成される下側のブレース11とが、互いにブレース10,11の長さ方向の逆方向へずれ移動することが許容され、かつブレース10とブレース11が制振パネル12の厚さ方向にずれることが阻止される。
【0048】
なお、ガイド凸部20E,23Eの先端は制振パネル12の厚さ方向に拡張した拡張部となっていて、ガイド凹部21E,22Eはこれらの拡張部を収納するアリ溝状の形状になっているため、案内手段30,31は、2本のブレース10,11を上下に連結するための連結手段にもなっている。
【0049】
本実施形態のブレース部材20,21,22,23は、アルミ製又はアルミ合金製の押し出し成形品又は引き抜き成形品により形成したものであり、突条部20A,21A,22A,23Aと深さが浅い凹部20B,21B,22B,23Bとボックス形状部20C,21C,22C,23Cとを有して成形された長寸法の押し出し成形品又は引き抜き成形品を所定長さ寸法に切断した後に、
図4で示した延出部20D,21D,22D,23Dの箇所では、これらの延出部20D,21D,22D,23Dを残して切除加工することにより、ブレース部材20,21,22,23が形成されている。
【0050】
また、ブレース部材20とブレース部材23は上下及び左右が逆になった形状であり、ブレース部材21とブレース部材22も上下及び左右が逆になった形状であり、このため、ブレース部材20の上下及び左右を逆にすると、ブレース部材20はブレース部材23になり、ブレース部材22の上下及び左右を逆にすると、ブレース部材22はブレース部材21になるため、ブレース部材20,23を共通化でき、ブレース部材21,22も共通化できる。
【0051】
また、
図2に示されているように、それぞれの制振パネル12は、
図5及び
図6で説明した結合手段28,29によりブレース10,11に結合される上下両端部12A,12Bの間が、ブレース10,11の長さ方向の両側から制振パネル12の内側へ湾曲した湾曲部12C,12Dとなっているため、制振パネル12の上下両端部12A,12Bにおけるブレース10,11の長さ方向の寸法は、大きくなっており、上下両端部12A,12Bの間の中間部12Eにおけるブレース10,11の長さ方向の寸法は、小さくなっている。そして、この中間部12Eにおけるブレース10,11の長さ方向の寸法は、上下両端部12A,12Bの間の中央部である最小寸法部から上下両端部12A,12Bへ連続的に大きくなる寸法となっている。
【0052】
そして、制振パネル12の上下両端部12A,12Bは、前述したように、結合手段28,29によりブレース10,11に接触してこれらのブレース10,11に結合される接触結合箇所となっており、これに対して中間部12Eは、前述した深さの浅い凹部20B,21B,22B,23Bのために、ブレース10,11に接触しない非接触箇所となっている。
【0053】
以上説明した本実施形態に係る制振装置1を
図1で示した柱2,3と梁4,5で構成される四角形フレーム8の内側に架け渡し設置するためには、
図4に示されているように、制振パネル12の上端部12Aが結合手段28で結合されたブレース部材20,21の延出部20D,21Dをガセットプレート6の厚さ方向両側に配置するとともに、制振パネル12の下端部12Bが結合手段29で結合されたブレース部材22,23の延出部22D,23Dをガセットプレート7の厚さ方向両側に配置し、延出部20D,21Dをガセットプレート6に、延出部22D,23Dをガセットプレート7にそれぞれ接合する。
【0054】
これらの接合は、
図4の実施形態では、ボルト及びナットによる締結手段32により行われているが、溶接により行ってもよい。
【0055】
以上により、制振装置1の上下2本のブレース10,11は、それぞれが水平方向に対する傾き角度をもって互いに平行に配設されるとともに、制振パネル12から互いに逆方向に延びる長さを有し、制振パネル12に上下の段差をもって結合されているこれらのブレース10,11の端部は、ガセットプレート6,7を介して前記四角形フレーム8に結合されることになる。
【0056】
そして、このときにおける板状の制振パネル12の厚さ方向は、四角形フレーム8と直角をなしてこの四角形フレーム8の内側を貫通する方向になっており、この制振パネル12は、ブレース10,11の長さ方向に複数並設されている。
【0057】
図1に示されているように、四角形フレーム8に地震等による振動エネルギの横荷重Fが作用したときには、制振装置1の上下2本のブレース10,11は、これらのブレース10,11の長さ方向の軸力である圧縮力や引っ張り力により、互いにブレース10,11の長さ方向の逆方向へ案内手段30,31で案内されてずれ移動し、これにより、制振パネル12に主にせん断荷重による塑性変形が生じ、この塑性変形により、四角形フレーム8を変形させる振動エネルギが吸収され、建物の振動が抑制、減衰される。
【0058】
そして、本実施形態の制振装置1において、四角形フレーム8を変形させる振動エネルギを吸収して建物の振動を抑制、減衰させるための制振手段は、板状の制振パネル12であるため、四角形フレーム8の内側に配設されているこの制振手段を、少ない部材による簡単な構造によりコストの低減化を実現して得られることになり、このため、制振装置1全体でも、構造の簡単化とコストの低減化を図ることができる。
【0059】
また、本実施形態の制振パネル12は、ブレース10,11の長さ方向の寸法が大きい長寸法のものになっておらず、ブレース10,11の長さ方向の寸法が小さい短寸法のものであって、この短寸法の制振パネル12がブレース10,11の長さ方向に複数個並設されているため、上下2本のブレース10,11からの軸力が制振パネル12を塑性変形させる荷重としてそれぞれの制振パネル12に伝達される際に、これらの制振パネル12に作用する荷重は順番に減少しながらそれぞれの制振パネル12に伝達されることになる。このため、ブレース10,11に、四角形フレーム8の変形による圧縮力が作用したときに、これらのブレース10,11に座屈が生じにくくなり、これより、ブレース10,11の座屈が防止され、制振パネル12がこの制振パネル12の厚さ方向に変形することをなくすことができる。
【0060】
また、それぞれの制振パネル12は、上述のようにブレース10,11の長さ方向の寸法が小さい短寸法のものになっているため、これらの制振パネル12の製造や取り扱いを容易に行えるようになる。さらに、それぞれの制振パネル12は、同じ大きさ及び形状となっているため、プレス加工等により簡単に多数生産できる。
【0061】
さらに、それぞれの制振パネル12の上端部12Aと下端部12Bはブレース10,11に結合手段28,29で結合され、これらの上端部12Aと下端部12Bの間の中間部12Eはブレース10,11に結合されていないため、四角形フレーム8を変形させる振動エネルギを、大きな領域となっている中間部12Eに大きな塑性変形を生じさせることにより吸収することができる。
【0062】
また、前述したように、それぞれの制振パネル12の上下両端部12A,12Bが、ブレース10,11に接触して結合された接触結合箇所となっているのに対し、中間部12Eは、ブレース10,11に接触していない非接触箇所となっているため、大きな領域になっている中間部12Eにおいて、ブレース10,11との間で摩擦を生じさせることなく、振動エネルギを有効に吸収するために制振パネル12を有効に塑性変形させることができる。
【0063】
さらに、前述したように、制振パネル12におけるブレース10,11の長さ方向の寸法は、上下両端部12A,12Bで大きくて、中間部12Eで小さくなっており、そして、この寸法は、中間部12Eにおける最小寸法部から上下両端部12A,12Bへ連続的に大きくなっているため、四角形フレーム8を変形させる振動エネルギによる制振パネル12の塑性変形を、中間部12Eにおける最小寸法部から確実に生じさせて、中間部12Eのほかの部分へ拡大させることができる。
【0064】
また、ブレース10は、制振パネル12の厚さ方向両側に配設された2個のブレース部材20,21で構成され、ブレース11も、制振パネル12の厚さ方向両側に配設された2個のブレース部材22,23で構成され、これらのブレース部材20,21,22,23には、複数個の制振パネル12が配置されている部分において、ブレース10,11の長さ方向と直交する断面形状がボックス形状となっているボックス形状部20C,21C,22C,23Cが形成されているため、振動エネルギを吸収するためにそれぞれの制振パネル12の中間部12Eを塑性変形させる大きな圧縮力が2本のブレース10,11に作用しても、ボックス形状部20C,21C,22C,23Cの大きな強度により、ブレース部材20,21,22,23に座屈が生じることを防止でき、これにより、それぞれの制振パネル12が、制振パネル12の厚さ方向に変形することを防止できる。
【0065】
さらに、上下に配設されているブレース部材20,22の間には、これらのブレース部材20,22が制振パネル12の厚さ方向にずれることを阻止するための案内手段30が設けられ、上下に配設されているブレース部材21,23の間にも、これらのブレース部材21,22が制振パネル12の厚さ方向にずれることを阻止するための案内手段31が設けられているため、上下2本のブレース10,11が制振パネル12の厚さ方向にずれることを阻止して、それぞれの制振パネル12の中間部12Eに振動エネルギを吸収するための塑性変形を生じさせることができ、これによってもそれぞれの制振パネル12が、制振パネル12の厚さ方向に変形することを防止できる。
【0066】
図7には、ブレース10,11の長さ方向に並設される制振パネル12の個数を変更しした場合が示されている。
【0067】
前述したように、上下2本のブレース10,11に複数の制振パネル12を結合手段28,29で結合するために、ブレース部材20,21に複数形成されている孔24,25個数は、制振パネル12に形成されている孔26,27の個数よりも多く、また、ブレース10,11の長さ方向におけるそれぞれの孔24,25,26,27の間隔は同じになっているため、制振パネル12の配置位置をブレース10,11の長さ方向にずらせても、孔24と孔26とを一致させて、結合手段28の結合具であるボルト28Aの軸部をこれらの孔24,26に挿通できるとともに、孔25と孔27とを一致させて、結合手段29の結合具であるボルト29Aの軸部をこれらの孔25,27に挿通できる。
【0068】
このため、
図1の実施形態と比較して、上下2本のブレース10,11に結合手段28,29で結合できる制振パネル12の個数を増減することができ、
図1の実施形態の制振装置1に用いられている制振パネル12の個数は7個であったが、
図7の実施形態の制振装置1に用いられている制振パネル12の個数は5個となっている。
【0069】
このように制振装置1のブレース10,11の長さ方向に並設される制振パネル12の個数を変更、調整することにより、この制振装置1が設置される建物に適切に対応した制振性能を制振装置1に付与できることになる。
【0070】
図8は、建物の構造材である左右の柱42,43と上下の梁44,45により構成された四角形フレーム58の内側に、水平方向に対する傾き方向が互いに逆となっている2個の制振装置1を設置した実施形態を示している。この実施形態では、左右の柱42,43間のスパンが大きくなっており、梁44に設けたブラケット46に、2個の制振装置1におけるそれぞれのブレース10の一方の端部が接合され、2個の制振装置1のうち、一方の制振装置1におけるブレース11の他方の端部は、柱43と梁45との接合箇所に設けられたガセットプレート47に接合され、他方の制振装置1におけるブレース11の他方の端部は、柱42と梁45との接合箇所に設けられたガセットプレート48に接合されている。
【0071】
この実施形態に示されているように、四角形フレーム58の内側に水平方向に対する傾き方向をもって配置される制振装置1の個数は、複数個でもよい。
【0072】
なお、
図8の実施形態において、ブラケット46の箇所に間柱が立設されていてもよく、立設されていなくてもよい。
【0073】
図9に示されている制振装置51も、これまで説明した制振装置1と同様に、四角形フレーム8の内側に水平方向に対する傾き角度をもって配置されているとともに、上下の段差をもって配設された2本のブレース60,61と、これらのブレース60,61の間に配置された制振パネル62とが構成部材となって構成されたものであり、四角形フレーム8の内側に制振手段として配設されている制振パネル62は、ブレース60,61の長さ方向に間隔をあけて複数個並設されている。
図10には、分解された制振装置51のブレース60,61と制振パネル62が示されている。
【0074】
図11には、制振装置51の一部を省略した拡大正面図が示されており、
図12、
図13及び
図14は、
図11のS12−S12線断面図、S13−S13線断面図及びS14−S14線断面図である。
図13及び
図14に示されているように、上下2本のブレース60,61のうち、上側のブレース60は、制振パネル62の厚さ方向両側に配設されたブレース部材70,71により構成され、下側のブレース61も、制振パネル62の厚さ方向両側に配設されたブレース部材72,73により構成され、それぞれのブレース部材70,71,72,73は、H型鋼74と板状の補強部材75とを用いて構成されているため、ブレース部材70,71,72,73には、H型鋼74の構成要素である2個のフランジ部74A,74Bと、制振パネル62と平行になっているこれらのフランジ部74A,74Bの上下中央部同士を連結しているウエブ部74Cとが存在している。
【0075】
ブレース部材70,71におけるH型鋼74のフランジ部74A,74Bには、ウエブ部74Cより上側において、金属板製の補強部材75が架け渡され、フランジ部74A,74Bと補強部材75の両端部とが溶接で結合され、また、ブレース部材72,73におけるH型鋼74のフランジ部74A,74Bには、ウエブ部74Cより下側において、補強部材75が架け渡され、フランジ部74A,74Bと補強部材75の両端部とが溶接で結合されている。
【0076】
このため、それぞれのブレース部材70,71,72,73には、フランジ部74A,74Bとウエブ部74Cと補強部材75とにより、ブレース60,61の長さ方向と直交する断面形状が略ボックス形状となっている略ボックス形状部70C,71C,72C,73Cが形成されていることになり、これらの略ボックス形状部70C,71C,72C,73Cは、
図12から分かるように、ブレース部材70,71,72,73の全長のうち、ブレース60,61の長さ方向に複数個が並設される制振パネル62の配置部分に設けられている。
【0077】
ブレース60,61の長さ方向に並設される制振パネル62は、
図13に示されているように、ブレース部材70,71の間及びブレース部材72,73の間に配置され、制振パネル62の上端部は、ブレース部材70,71のフランジ部74Bの上端部に溶接で結合されているとともに、制振パネル62の下端部は、ブレース部材72,73のフランジ部74Bの下端部に溶接で結合されている。制振パネル62の厚さ方向に互いに対面しているブレース部材70,71のフランジ部74B同士の間と、ブレース部材72,73のフランジ部74B同士の間には、制振パネル62が配置されていない箇所であって、フランジ部74Bの上端部と下端部を除く箇所において、一方のフランジ部74Bに予め溶接で結合されたスペース部材76が介設されており、このスペース部材76は、制振パネル62の厚さ寸法よりも直径が若干大きい金属製の線材で形成されているため、制振パネル62の上下両端部が、上下2本のブレース60,61に接触して結合された接触結合箇所となっているのに対し、これらの上下両端部の間は、ブレース60,61に接触していない非接触箇所となっている。
【0078】
また、この実施形態でも、
図10に示されているように、それぞれの制振パネル62の上下両端部62A,62Bの間が、ブレース60,61の長さ方向の両側から制振パネル62の内側へ湾曲した湾曲部62C,62Dとなっており、このため、制振パネル62の上下両端部62A,62Bにおけるブレース60,61の長さ方向の寸法は、大きくなっており、上下両端部62A,62Bの間の中間部62Eにおけるブレース60,61の長さ方向の寸法は、小さくなっている。そして、この中間部62Eにおけるブレース60,61の長さ方向の寸法は、上下両端部62A,62Bの間の中央部である最小寸法部から上下両端部62A,62Bへ連続的に大きくなる寸法となっている。
【0079】
図13に示されているように、ブレース部材70,71,72,73のうち、上下に対向配置されているブレース部材70とブレース部材72との間、及びブレース部材71とブレース部材73との間には、上下2本のブレース60,61が互いにブレース60,61の長さ方向の逆方向へずれ移動することを許容し、かつブレース60とブレース61が制振パネル62の厚さ方向にずれることを阻止するための案内手段90,91が配置されている。これらの案内手段90,91は、ブレース部材70,71,72,73を構成しているH型鋼74の2個のフランジ部74A,74Bのうち、外側の上下2個のフランジ部74Aに跨って配置された板状の連結部材81と、それぞれのフランジ部74Aに形成された孔74D及び連結部材81に形成され
た孔82に軸部がH型鋼74の内側から挿通されたボルト83と、連結部材81から突出したボルト83の軸部の先端に螺合されたナット84とにより構成されている。
【0080】
また、
図10に示されているように、フランジ部74Aの孔74Dは丸孔であるが、連結部材81の孔82は、ブレース60,61の長さ方向に長い長孔である。
このような案内手段90,91は、
図9及び
図11から分かるように、ブレース60,61の長さ方向に複数個配置されている。
【0081】
このため、案内手段90,91により、上下2本のブレース60,61は、前記実施形態と同様に、互いにブレース60,61の長さ方向の逆方向へずれ移動することを許容されるとともに、制振パネル62の厚さ方向にずれることが阻止され、さらに、上下2本のブレース60,61は、案内手段90,91により上下に連結されることになる。
【0082】
図12には、上下2本のブレース60,61のうち、上側のブレース60のブレース部材70,71の断面構造が示されており、これらのブレース部材70,71の長さ方向両端部のうち、
図9で示したガセットプレート6側の端部には、このガセットプレート6を両側から挟む一対の継手部材77が取り付けられたエンド部材78が溶接で結合されている。また、下側のブレース61のブレース部材72,73の長さ方向両端部のうち、
図9で示したガセットプレート7側の端部にも、このガセットプレート7を両側から挟む一対の継手部材79が取り付けられたエンド部材80が溶接で結合されている。継手部材77がガセットプレート6に接合され、継手部材79がガセットプレート7に接合されることにより、制振装置51は、
図9の四角形フレーム8の内側に水平方向の傾き角度を持って配置される。
【0083】
図12では、継手部材77,79のガセットプレート6,7への接合は、ボルト及びナットによる締結手段63で行われているが、溶接で行ってもよい。
【0084】
なお、本実施形態では、継手部材77,79には、ブレース60,61に圧縮力が作用したときに、板材で形成されている継手部材77,79が制振パネル62の厚さ方向に変形することを防止するためのリブ部材77A,79Aが溶接で結合されている。
【0085】
この実施形態でも、前記実施形態と同様に、四角形フレーム8に地震等による振動エネルギの横荷重が作用したときには、上下2本のブレース60,61は、圧縮力や引っ張り力により、互いにブレース60,61の長さ方向の逆方向へ案内手段90,91で案内されながらずれ移動し、これにより、それぞれの制振パネル62に主にせん断荷重による塑性変形が生じて、四角形フレーム8を変形させる振動エネルギが吸収され、そして、ブレース60,61に圧縮力が作用したときに、それぞれ制振パネル62が制振パネル62の厚さ方向に変形することが、前述した略ボックス形状部70C,71C,72C,73Cの強度や、案内手段90,91により阻止される。
【0086】
特に、この実施形態では、略ボックス形状部70C,71C,72C,73Cが、安価に入手できるH型鋼74に板状の補強部材75を結合することで形成されているため、略ボックス形状部70C,71C,72C,73Cを有するブレース部材70,71,72,73で構成されるブレース60,61を低コストで製造することができる。
【0087】
図15で示されている制振装置101では、
図1で示した制振装置1の上下2本のブレース10,11が用いられており、これらのブレース10,11の間にそれぞれ複数個の第1制振パネル112と第2制振パネル113とがブレース10,11の長さ方向に並設されている。
【0088】
制振装置101の分解図である
図16には、第1制振パネル112と第2制振パネル113が示されており、それぞれの第1制振パネル112の全体形状は、ブレース10,11に対し、これらのブレース10,11の長さ方向のうち、一方の側へ傾斜した形状となっており、それぞれの第1制振パネル112の全体形状は、ブレース10,11に対し、これらのブレース10,11の長さ方向のうち、他方の側へ傾斜した形状となっている。第1制振パネル112の上端部112Aには、複数の孔126がブレース10,11の長さ方向に形成されているとともに、第1制振パネル112の下端部112Bにも、複数の孔127がブレース10,11の長さ方向に形成されている。また、第2制振パネル113の上端部113Aには、複数の孔128がブレース10,11の長さ方向に形成されているとともに、第2制振パネル113の下端部113Bにも、複数の孔129がブレース10,11の長さ方向に形成されている。
【0089】
そして、第1制振パネル112の上下両端部112A,112Bの間が、ブレース10,11の長さ方向の両側から第1制振パネル112の内側へ湾曲した湾曲部112C,112Dとなっており、このため、第1制振パネル112の上下両端部112A,112Bにおけるブレース10,11の長さ方向の寸法は、大きくなっており、上下両端部112A,112Bの間の中間部112Eにおけるブレース10,11の長さ方向の寸法は、小さくなっている。この中間部112Eにおけるブレース10,11の長さ方向の寸法は、上下両端部112A,112Bの間の中央部である最小寸法部から上下両端部112A,112Bへ連続的に大きくなる寸法となっている。
【0090】
以上の第1制振パネル112についての形状及び寸法は、第2制振パネル113についても同様であるため、第2制振パネル113の上下両端部113A,113Bの間が、ブレース10,11の長さ方向の両側から第2制振パネル113の内側へ湾曲した湾曲部113C,113Dとなっており、第2制振パネル113の上下両端部113A,113Bにおけるブレース10,11の長さ方向の寸法は、大きくなっており、上下両端部113A,113Bの間の中間部113Eにおけるブレース10,11の長さ方向の寸法は、小さくなっている。この中間部113Eにおけるブレース10,11の長さ方向の寸法は、上下両端部113A,113Bの間の中央部である最小寸法部から上下両端部113A,113Bへ連続的に大きくなる寸法となっている。
【0091】
第1制振パネル112と第2制振パネル113にそれぞれブレース10,11に長さ方向に複数個設けられている孔126,127,128,129の間隔は、ブレース10,11の前述したブレース部材20,21,22,23の突条部20A,21A,22A,23Aにおいて、それぞれブレース10,11に長さ方向に形成されている孔24,25の間隔と同じである。
【0092】
また、第1制振パネル112と第2制振パネル113は、互いに表裏を逆にしたものであり、このため、これらの第1制振パネル112と第2制振パネル113は、形状及び寸法が同じになっている制振パネルを表裏を逆にして用いられたものとなっている。
【0093】
図17は、
図15のS17−S17線断面図であり、互いに傾き方向を逆にした第1制振パネル112と第2制振パネル113を上下2本のブレース10,11の間に配置するときには、この
図17に示されているように、それぞれがブレース10,11の長さ方向に複数個並設されるこれらの第1制振パネル112と第2制振パネル113を、制振パネル112,113の厚さ方向に重ね合わせて配置するとともに、互いに重なり合っている第1制振パネル112と第2制振パネル113の上端部112A,113Aに形成されている孔126と孔128とを一致させ、ブレース10のブレース部材20,21の突条部20A,21Aに形成されている孔24に挿通させた結合手段28のボルト28Aの軸部を孔126と孔128にも挿通し、また、互いに重なり合っている第1制振パネル112と第2制振パネル113の下端部112B,113Bに形成されている孔127と孔129とを一致させ、ブレース11のブレース部材22,23の突条部22A,23Aに形成されている孔25に挿通させた結合手段29のボルト29Aの軸部を孔126と孔128にも挿通する。そして、ボルト28A,29Aの軸部の先部にナット28B,29Bを螺合して締め付ける。
【0094】
これにより、第1制振パネル112と第2制振パネル113の上下両端部112A,112B,113A,113Bは、共通の結合手段28,29により上下2本のブレース10,11に結合されることになる。
【0095】
この実施形態において、
図15で示す四角形フレーム8に地震等による振動エネルギの横荷重が作用し、上下2本のブレース10,11に軸力としての引っ張り力や圧縮力が作用した際には、軸力の向きに応じて第1制振パネル112と第2制振パネル113のうち、一方に主に引っ張り荷重が作用し、他方に主に圧縮荷重が作用し、これにより、引っ張り荷重による塑性変形と圧縮荷重による塑性変形を第1制振パネル112と第2制振パネル113に生じさせて、振動エネルギを有効に吸収できるようになる。
【0096】
特に、この実施形態の第1制振パネル112と第2制振パネル113は、ブレース10,11に対して傾いた形状となっており、ブレース10,11も、四角形フレーム8において、水平方向に対して傾いているため、第1制振パネル112と第2制振パネル113に作用する引っ張り荷重の大きさを、四角形フレーム8に作用する横荷重が拡大された大きさにすることができ、これにより、第1制振パネル112と第2制振パネル113に生ずる引っ張り荷重による塑性変形を大きくして、振動エネルギを一層有効に吸収できるようになる。
【0097】
また、この実施形態でも、第1制振パネル112と第2制振パネル113におけるブレース10,11の長さ方向の寸法は、上下両端部112A,112B,113A,113Bで大きくて、中間部112E,113Eで小さくなっており、この寸法は、中間部112E,113Eの最小寸法部から上下両端部112A,112B,113A,113Bへ連続的に大きくなっているため、引っ張り荷重による塑性変形を中間部112E,113Eの最小寸法部から生じさせて、中間部112E,113のほかの部分へ拡大させることができる。
【0098】
また、この実施形態でも、ブレース10,11の長さ方向に並設される第1制振パネル112と第2制振パネル113の個数を、制振装置101が設置される建物に求められる制振性能に応じて変更、調整することができる。
【0099】
また、第1制振パネル112と第2制振パネル113は、表裏を逆にしたものであるため、形状及び寸法が同じになっている制振パネルを多数製造し、これらの制振パネルの半分ずつを表裏逆とすることにより、容易に第1制振パネル112と第2制振パネル113を得ることができ、第1制振パネル112と第2制振パネル113の共通化を図ることができる。
【0100】
なお、この実施形態において、それぞれがブレース10,11の長さ方向にそれぞれ複数個が並設される第1制振パネル112と第2制振パネル113を制振パネル112,113の厚さ方向の重ね合わせずに、すなわち、第1制振パネル112と第2制振パネル113をブレース10,11の長さ方向にずらせて、これらの制振パネル112,113をブレース10,11に結合手段28,29で結合してもよい。