(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769759
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】シャツ
(51)【国際特許分類】
A41D 27/10 20060101AFI20201005BHJP
A41D 27/06 20060101ALI20201005BHJP
A41B 1/08 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
A41D27/10 D
A41D27/06 E
A41B1/08 E
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-133146(P2016-133146)
(22)【出願日】2016年7月5日
(65)【公開番号】特開2018-3209(P2018-3209A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】597008533
【氏名又は名称】フレックスジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢島 隆生
【審査官】
西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3185006(JP,U)
【文献】
特開2005−105475(JP,A)
【文献】
米国特許第02374440(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 27/00 − 27/28
A41B 1/08
A41D 1/02 − 3/08
A41D 29/00
D05B 1/00 − 97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肩部分を別の生地で形成せずに後身頃を衿まで延ばして一枚の生地により形成したシャツであって、後身頃及び前身頃に対する袖付け箇所がインターロック縫いで縫着され且つその縫着部分に挟み込まれて一緒に縫い付けられた熱接着テープが生地に対し熱溶着されていると共に、後身頃と前身頃との肩合わせ箇所もインターロック縫いで縫着され且つその縫着部分に挟み込まれて一緒に縫い付けられた熱接着テープが生地に対し熱溶着されていることを特徴とするシャツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャツに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8に示す如きワイシャツやカジュアルシャツなどといったシャツ1においては、外気温度の高い夏期などに外出していると、肩部分から衿にかけての比較的厚手の部分に熱が籠って不快な暑さを感じることがある。
【0003】
即ち、シャツ1の肩部分を成すヨーク2や衿3の部分は、シャツ1の立体感を醸し出すための保形性を有するように二枚の生地を重ね合わせて仕立てられるようになっているので、この二重部分における通気性が損なわれて熱が籠り易くなってしまう。
【0004】
このような従来からの伝統的なシャツ1の構造様式は、長年に亘り踏襲され続けてきたものであり、近年においては、半袖シャツや開襟シャツなどといった根本的なデザイン変更により涼感を得られるようにしたシャツも既に存在しているが、このようなデザイン変更によるものは、シャツのスタンダードなデザインを好む購買層には受け入れられていないのが実情であり、特にビジネス用のワイシャツとしては得意先などを訪問するのにあたり先方に不適切な印象を与えかねない。
【0005】
そこで、肩部分を別の生地によりヨーク2として形成することに換えて、
図9に示す如く、後身頃4を衿3まで延ばした一枚の生地によりシャツ1の背面から肩部分までを一緒に形成し、シャツ1のスタンダードなデザインを生かしつつ肩部分の通気性を向上して夏期などに涼感が得られるようにすることが提案されており、例えば、下記の特許文献1などが先行技術文献情報として既に存在している。
【0006】
尚、図中における符号5は袖を示しており、ここには図示されていないが、シャツ1の正面側は前身頃により形成されるようになっていて、この前身頃と前記後身頃4により形成される袖ぐり(アームホール)に対し前記袖5が縫い付けられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3080022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、
図9で説明した如き後身頃4を衿3まで延ばした一枚の生地によりシャツ1の背面から肩部分までを一緒に形成した場合には、肩部分を二枚の生地を重ね合わせて仕立てた場合と比較して保形性の低下を招いてしまうことが避けられず、シャツ1の肩部分における美しいシルエットを形づくることが難しくなるという問題があった。
【0009】
本発明は、上述の実情に鑑みてなしたもので、夏期などに涼感が得られるようシャツの肩部分を一枚の生地により形成しながらも、その保形性の低下を抑えて肩部分における美しいシルエットを保ち得るようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、肩部分を別の生地で形成せずに後身頃を衿まで延ばして一枚の生地により形成したシャツであって、後身頃及び前身頃に対する袖付け箇所がインターロック縫いで縫着され且つその縫着部分に挟み込まれて一緒に縫い付けられた熱接着テープが生地に対し熱溶着されている
と共に、後身頃と前身頃との肩合わせ箇所もインターロック縫いで縫着され且つその縫着部分に挟み込まれて一緒に縫い付けられた熱接着テープが生地に対し熱溶着されていることを特徴とするものである。
【0011】
而して、このようにすれば、袖付け箇所の縫着部分に挟み込まれて一緒に縫い付けられた熱接着テープが生地に対し熱溶着された状態となっていることで芯地のように作用し、袖付け箇所に張りやコシが出て肩部分の左右両側の保形性が補われ、該肩部分における美しいシルエットが形づくられ、しかも、インターロックミシンにより縫い合わせと生地の裁断と熱接着テープのしつけとを同時に行うことで工程の簡素化が図られる。
【0012】
また、本発明においては、後身頃と前身頃との肩合わせ箇所がインターロック縫いで縫着され且つその縫着部分に挟み込まれて一緒に縫い付けられた熱接着テープが生地に対し熱溶着されてい
るので、肩合わせ箇所の縫着部分に挟み込まれて一緒に縫い付けられた熱接着テープが生地に対し熱溶着された状態となっていることで芯地のように作用し、肩合わせ箇所にも張りやコシが出て肩部分の上側の保形性が更に補われ、該肩部分における美しいシルエットがより一層美しく形づくられ、しかも、インターロックミシンにより縫い合わせと生地の裁断と熱接着テープのしつけとを同時に行うことで工程の簡素化が図られる。
【発明の効果】
【0014】
上記した本発明のシャツによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0015】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、夏期などに涼感が得られるようシャツの肩部分を一枚の生地により形成しながらも、その保形性の低下を抑えて肩部分における美しいシルエットを形づくることができ、しかも、インターロック縫いを採用することで工程を簡素化して大幅な実施コストの削減を図ることができる。
【0016】
(II)本発明の請求項
1に記載の発明によれば、一枚の生地により形成した肩部分の上側の保形性を更に補うことができて該肩部分におけるシルエットをより一層美しく形づくることができ、しかも、肩合わせ箇所にもインターロック縫いを採用することで更なる低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明
に関連する参考例を示す正面図である。
【
図2】
図1の袖付け箇所の縫着部分を拡大して示す断面図である。
【
図3】
図2の
参考例での第一工程を示す断面図である。
【
図4】
図2の
参考例での第二工程を示す断面図である。
【
図5】
図2の
参考例での第三工程を示す断面図である。
【
図7】
図6の肩合わせ箇所の縫着部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1〜
図5は本発明
に関連する参考例を示すもので、
図9と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0020】
図1に示すように、
この参考例においては、シャツ1の肩部分を別の生地で形成せずに後身頃4を衿3まで延ばして一枚の生地により形成されており、しかも、後身頃4及び前身頃6に対する袖付け箇所(後身頃4及び前身頃6の袖ぐりに対する袖5の縫い付け箇所)がインターロック縫いで縫着され且つその縫着部分に挟み込まれて一緒に縫い付けられた熱接着テープ7が生地に対し熱溶着されているところが特徴となっている。
【0021】
尚、以下の説明で用いる断面図にあっては、後身頃4と袖5との縫着部分も前身頃6と袖5との縫着部分も見た目に変わるところがないため、同じ図面を用いて袖5の縫着相手が後身頃4である場合と前身頃6である場合とを示しており、主に後身頃4と袖5との縫着部分として図示してあるが、図中に括弧書きで示している符号は、袖5の縫着相手が前身頃6である場合について示している。
【0022】
図2に拡大して示す如く、後身頃4及び前身頃6の袖ぐりを成す端部がシャツ1の内側に折り返されて縫い代4a,6aを成し且つ該縫い代4a,6aと袖5上端の縫い代5aとがインターロック縫いにより地縫いと裁ち目かがりとを同時に施されているが、この際に、縫い代4a,6aと後身頃4及び前身頃6の裏面との間に熱接着テープ7が挟み込まれて一緒に縫い付けられ、アイロン8(
図5参照)によるプレスで前記熱接着テープ7が生地に対し熱溶着されるようにしてある。
【0023】
このようなインターロック縫いによる具体的な仕立ての手順は、
図3に示す如き後身頃4及び前身頃6に袖5を重ね合わせ且つこれらの裁断予定位置に熱接着テープ7を更に重ねた上で後身頃4及び前身頃6と袖5とを裁断しながら地縫いと裁ち目かがりと熱接着テープ7のしつけを同時に行う第一工程と、
図4に示す如き後身頃4及び前身頃6の全体を折り返して前記熱接着テープ7ごと縫着部分を貫通ステッチでたたき縫いする第二工程と、
図5に示す如きアイロン8により熱を加えながらプレスする第三工程とを順次行うというものであり、全て機械化された流れ作業により実施することが可能である。
【0024】
尚、
図3の第一工程、
図4の第二工程、
図5の第三工程において、後身頃4及び前身頃6は肩合わせ箇所のみを先行して縫着した展開状態となっており、また、袖5も細長い扇状に展開した状態となっていて、袖付け箇所の縫着が完了した後に後身頃4及び前身頃6の脇縫いと袖5の閉じ合わせを行ってシャツ1が完成することになる。
【0025】
而して、このようにシャツ1を縫製すれば、袖付け箇所の縫着部分に挟み込まれて一緒に縫い付けられた熱接着テープ7が生地に対し熱溶着された状態となっていることで芯地のように作用し、袖付け箇所に張りやコシが出て肩部分の左右両側の保形性が補われ、該肩部分における美しいシルエットが形づくられ、しかも、インターロックミシンにより縫い合わせと生地の裁断と熱接着テープ7のしつけとを同時に行うことで工程の簡素化が図られる。
【0026】
従って、上記
参考例によれば、夏期などに涼感が得られるようシャツ1の肩部分を一枚の生地により形成しながらも、その保形性の低下を抑えて肩部分における美しいシルエットを形づくることができ、しかも、インターロック縫いを採用することで工程を簡素化して大幅な実施コストの削減を図ることができる。
【0027】
そして、図6は本発明の形態例を示しており、先に図1〜図5で説明したシャツ1の構成に加え、後身頃4と前身頃6との肩合わせ箇所についてもインターロック縫いで縫着され且つその縫着部分に挟み込まれて一緒に縫い付けられた熱接着テープ7が生地に対し熱溶着されるようにしたものであり、
図7に拡大して示す如く、後身頃4の背面側から正面側に回り込む上端(
図7における図示では後身頃4の下側に向かう端部)がシャツ1の内側(
図7中の右側)に折り返されて縫い代4aを成し且つ該縫い代4aに前身頃6の上端が縫い代6aとして重ね合わされ、これら縫い代4a,6a同士がインターロック縫いにより地縫いと裁ち目かがりとを同時に施されるようになっているが、この際に、両縫い代4a,6aの表面と後身頃4の裏面との間に熱接着テープ7が挟み込まれて一緒に縫い付けられ、アイロン8(
図5参照)によるプレスで前記熱接着テープ7が生地に対し熱溶着されるようにしてある(具体的な仕立ての手順については、前述した
図3〜
図5の工程と特に変わるところがないため説明を割愛する)。
【0028】
而して、このようにした場合にも、肩合わせ箇所の縫着部分に挟み込まれて一緒に縫い付けられた熱接着テープ7が生地に対し熱溶着された状態となっていることで芯地のように作用し、肩合わせ箇所にも張りやコシが出て肩部分の上側の保形性が更に補われ、該肩部分における美しいシルエットがより一層美しく形づくられ、しかも、インターロックミシンにより縫い合わせと生地の裁断と熱接着テープ7のしつけとを同時に行うことで工程の簡素化が図られる。
【0029】
従って、本形態例においては、一枚の生地により形成した肩部分の上側の保形性を更に補うことができて該肩部分におけるシルエットをより一層美しく形づくることができ、しかも、肩合わせ箇所にもインターロック縫いを採用することで更なる低コスト化を実現することができる。
【0030】
尚、本発明のシャツは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、袖付け箇所の縫着が完了した後に後身頃及び前身頃の脇縫いと袖の閉じ合わせを行うにあたり、必要に応じて袖付け箇所と同様の構造を適用しても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
1 シャツ
3 衿
4 後身頃
5 袖
6 前身頃
7 熱接着テープ