(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769760
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】エッチング液組成物およびエッチング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/308 20060101AFI20201005BHJP
C23F 1/26 20060101ALI20201005BHJP
H01L 21/3213 20060101ALI20201005BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
H01L21/308 F
C23F1/26
H01L21/88 C
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-136336(P2016-136336)
(22)【出願日】2016年7月8日
(65)【公開番号】特開2018-6715(P2018-6715A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】591045677
【氏名又は名称】関東化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】河野 良
(72)【発明者】
【氏名】大和田 拓央
【審査官】
河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0200112(US,A1)
【文献】
韓国登録特許第10−1587758(KR,B1)
【文献】
特開2013−033942(JP,A)
【文献】
特開平07−122651(JP,A)
【文献】
特開2001−077118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/308
C23F 1/26
H01L 21/3213
H01L 21/768
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝酸と、水とを含み、さらに、硫酸および脂肪族スルホン酸からなる群より選択される少なくとも1つを含む、タングステン膜と窒化チタン膜とを一括でエッチング処理するためのエッチング液組成物。
【請求項2】
脂肪族スルホン酸がメタンスルホン酸である、請求項1に記載のエッチング液組成物。
【請求項3】
さらに、りん酸を含む、請求項1または2に記載のエッチング液組成物。
【請求項4】
水の含有量が2.0〜80.0重量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のエッチング液組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のエッチング液組成物を用いて、タングステン膜と窒化チタン膜とを一括でエッチングする、エッチング方法。
【請求項6】
エッチングにおけるエッチング組成物の温度が50℃以上である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
三次元構造を有するパターンを作成するための、請求項5または6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タングステン膜と窒化チタン膜とを一括でエッチング処理するためのエッチング液組成物および該エッチング液組成物を用いたエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タングステンおよび窒化チタンは、それぞれ、半導体素子等の電子デバイスに幅広く用いられており、所望の電子デバイスに合わせた膜質で成膜し、所定のパターンに加工して使用される。タングステン膜または窒化チタン膜を所定のパターンに加工する方法として、エッチングによる加工が広く採用されている。
【0003】
また、タングステンと窒化チタンとを用いた電子デバイスとして、不揮発性メモリなどの半導体メモリが知られている。近年、このような電子デバイスは高速処理化、大容量化が顕著に進んでおり、これに伴って、目的とするパターン形状がいっそう微細化、複雑化している。このため、パターンの加工技術およびこれに用いられるエッチング液に対する要求も高まりつつある。
特に、近年発表された3D NAND技術のように、三次元構造を採用することによってメモリの大容量化を進める場合には、所望の三次元構造を精緻に作成することが可能なエッチング液が求められる。
【0004】
特許文献1および2には、過酸化水素またはオルト過ヨウ素酸を含むエッチング液を用いてタングステン膜を加工する方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献3および4には、過酸化水素を含むエッチング液を用いて窒化チタン膜を加工する方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、上記文献では、タングステン膜と窒化チタン膜とを一括でエッチング処理するためのエッチング液組成物について、何ら検討がされていない。さらに、タングステン膜と窒化チタン膜とを一括でエッチング処理することによって三次元構造等の複雑な形状を形成する場合は、タングステン膜のエッチング速度および窒化チタン膜のエッチング速度の両方を制御する必要があるところ、そのような制御の検討も行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−31791号公報
【特許文献2】特開2005−166924号公報
【特許文献3】特開2010−10273号公報
【特許文献4】特開2015−30809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、上記従来の問題に鑑み、タングステン膜と窒化チタン膜とを一括でエッチング処理することが可能なエッチング液組成物および当該エッチング液組成物を用いたエッチング方法を提供することにある。さらに、本発明の別の課題は、タングステン膜のエッチング速度を窒化チタン膜のエッチング速度で割った値(以下、「選択比」ともいう。)を制御しつつ、タングステン膜と窒化チタン膜とを一括でエッチング処理することが可能なエッチング液組成物および当該エッチング液組成物を用いたエッチング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を行う中で、従来のエッチング液組成物では、エッチングの速度が非常に大きく、また選択比も1より大きく外れるため、所望のパターン形状を精緻に形成することができないなどの問題に直面した。かかる問題を解決すべく、鋭意検討を重ねたところ、硝酸と水とを含むエッチング液組成物が、タングステン膜と窒化チタン膜とを良好な形状で精度よく一括エッチングすることが可能であることを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1] 硝酸と、水とを含む、タングステン膜と窒化チタン膜とを一括でエッチング処理するためのエッチング液組成物。
[2] さらに、硫酸および脂肪族スルホン酸からなる群より選択される少なくとも1つを含む、[1]に記載のエッチング液組成物。
[3] 脂肪族スルホン酸がメタンスルホン酸である、[2]に記載のエッチング液組成物。
[4] さらに、りん酸を含む、[1]〜[3]のいずれか1つに記載のエッチング液組成物。
[5] [1]〜[4]のいずれか一つに記載のエッチング液組成物を用いて、タングステン膜と窒化チタン膜とを一括でエッチングする、エッチング方法。
[6] エッチングにおけるエッチング組成物の温度が50℃以上である、[5]に記載の方法。
[7] 三次元構造を有するパターンを作成するための、[5]または[6]に記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、タングステン膜と窒化チタン膜とを一括でエッチング処理することが可能なエッチング液組成物および当該エッチング液組成物を用いたエッチング方法を提供することができる。
【0012】
特に、本発明のエッチング液組成物が硫酸および脂肪族スルホン酸からなる群より選択される少なくとも1つを含むことにより、選択比を約1に制御することが可能となり、上述した効果が顕著なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施例1〜4および比較例1〜3のエッチング液組成物のエッチング速度(E.R.)を示すグラフである。
【
図2】
図2は、実施例1〜4および比較例1〜3のエッチング液組成物の選択比を示すグラフである。
【
図3】
図3は、実施例4のエッチング液組成物のエッチング量の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について、本発明の好適な実施態様に基づき、詳細に説明する。
本発明のエッチング液組成物は、タングステン膜と窒化チタン膜とを一括でエッチング処理するために用いられるエッチング液組成物である。
【0015】
本発明のエッチング液組成物は、硝酸と、水とを含む。これにより、タングステン膜および窒化チタン膜に対するエッチング速度を適度に低くすることが可能となり、これまで何ら検討されてこなかった、タングステン膜と窒化チタン膜とを一括でエッチング処理するためのエッチング液組成物を提供することができる。
【0016】
本発明のエッチング液組成物において、水は、エッチング液組成物中において、溶媒として用いられる。
エッチング液組成物中における水の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、2.0〜80.0重量%であり、より好ましくは、5.0〜70.0重量%である。
特に、昇温条件下でエッチング処理を行う場合には、水の蒸発によりエッチング液組成物の組成が変化することを抑制するために、水の含有量を8.0〜65.0重量%とすることが好ましい。エッチング液組成物の組成の変化を抑制することにより、昇温条件下でのエッチング処理に長い時間を要する場合であっても、組成の変化によって選択比がエッチング処理中に変化する恐れが少なくなり、好ましい。また、エッチング処理前後での選択比の変化が小さいため、エッチング液組成物を繰り返し使用することが可能となる。このことは、エッチング液の廃液処理に伴うコストおよび環境負荷の削減の観点から、好ましい。
【0017】
本発明のエッチング液組成物は、好ましくは、硫酸および脂肪族スルホン酸からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
エッチング液組成物が硝酸と水とからなる場合は、エッチング液組成物中の水の含有量を少なくすることは難しいが、硫酸および脂肪族スルホン酸からなる群より選択される少なくとも1つを添加することにより、水の含有量をさらに低くすることができる。
これにより、エッチング液組成物の組成をより広い範囲で調節することが可能となり、好ましい。また、水の揮発によるエッチング液組成物の組成の変化を抑制することが望まれる場合において、水の含有量を低くすることが可能となり、好ましい。
後述するように、本発明のエッチング液組成物を構成する成分の含有量は、目的とする選択比と、タングステン膜および窒化チタン膜の膜質とにより適宜調節されるため、特に制限がないが、硫酸および脂肪族スルホン酸からなる群より選択される少なくとも1つの含有量は、好ましくは5.0〜95.0重量%であり、より好ましくは8.0〜40.0重量%である。
【0018】
前記脂肪族スルホン酸の例としては、炭素数1〜10の脂肪族スルホン酸が挙げられる。より具体的な例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸および1−プロパンスルホン酸などが挙げられる。本発明のエッチング液組成物に使用する脂肪族スルホン酸としては、メタンスルホン酸が好ましい。
【0019】
本発明のエッチング液組成物は、好ましくは、りん酸を含む。エッチング液組成物がりん酸を含むことにより、エッチング液組成物の組成をより広い範囲で調節することが可能となり、好ましい。
後述するように、本発明のエッチング液組成物を構成する成分の含有量は、目的とする選択比と、タングステン膜および窒化チタン膜の膜質とにより適宜調節されるため、特に制限がないが、りん酸の含有量は、好ましくは0.1〜90.0重量%であり、より好ましくは0.5〜80.0重量%である。
【0020】
本発明のエッチング液組成物は、タングステン膜と窒化チタン膜とを一括でエッチング処理することを妨げない限り、上述の成分のほか、任意の成分を含むことが可能である。本発明において使用することができる任意の成分としては、例えば、界面活性剤等が挙げられる。
【0021】
ただし、三次元構造を有するパターンなどの精緻なパターン形成が要求される場合は、エッチングの速度を過度に上昇させる、過酸化水素およびオルト過ヨウ素酸、ならびに、フッ化水素酸等のフッ素含有化合物を含まないことが好ましい。
また、昇温条件下でのエッチング液組成物の組成の変化を抑制することが要求される場合は、エッチング液に一般的に含まれる成分であっても、揮発性の高い成分を含まないことが好ましい。このような揮発性の高い成分の具体例としては、ギ酸および酢酸などのカルボン酸およびその塩、ならびに、クエン酸および酒石酸などの多価カルボン酸およびその塩が挙げられる。
【0022】
上述したように、本発明のエッチング液組成物は、タングステン膜と窒化チタン膜とを一括でエッチング処理するために用いられる。他の一態様において、本発明のエッチング液組成物は、タングステン膜と窒化チタン膜とを一括でエッチング処理することにより、三次元構造を有するパターンを形成するために用いられる。
【0023】
すなわち、本発明のエッチング液組成物は、少なくとも1層のタングステン膜と、少なくとも1層の窒化チタン膜と、を含む積層体を一括エッチングするために用いることができる。さらに、選択比を約1に制御することにより、タングステン膜と窒化チタン膜とを微細な形状、例えば、三次元構造を有するパターン、に一括でエッチングすることができる。微細な構造を形成するためには、前記選択比は、0.70〜1.30であることが好ましく、0.80〜1.20であることがより好ましい。
【0024】
本発明のエッチング液組成物の選択比は、組成物中の構成成分を変更することにより、適宜調節することが可能である。例えば、エッチング液組成物中の硝酸の含有量を多くすれば、選択比が若干小さくなる傾向があり、水の含有量を多くすれば、選択比が大きくなる傾向がある。また、硫酸、脂肪族スルホン酸およびりん酸の含有量を多くすれば、選択比はいずれも小さくなる傾向がある。選択比は、タングステン膜および窒化チタン膜の膜質にも依存するため、エッチングの対象となる膜の膜質に応じて組成物中の構成成分を適宜調節することにより、所望の選択比を得ることができる。
【0025】
上述のとおり、本発明のエッチング液組成物を構成する成分の含有量は、目的とする選択比と、タングステン膜および窒化チタン膜の膜質とにより適宜調節されるため、特に制限がないが、硝酸の含有量は、好ましくは、0.01〜10.0重量%であり、さらに好ましくは0.1〜5.0重量%である。
【0026】
本明細書におけるエッチング液組成物のエッチング速度(nm/min)は、処理時間(分)あたりの膜のエッチング量(nm)として定義される。膜のエッチング量は、エッチングの対象となる膜の厚さを、エッチング処理前と処理後のそれぞれについて測定することにより、これらの差として求めることができる。
【0027】
本発明のエッチング液組成物のエッチング速度は特に限定されないが、タングステン膜および窒化チタン膜に対して、それぞれ、0.1〜20.0nm/minの範囲にあることが好ましく、0.1〜4.0nm/minの範囲にあることがより好ましく、0.1〜2.0nm/minの範囲にあることがさらに好ましい。上記のような、適度に低いエッチング速度を有するエッチング液組成物は、三次元構造を有するパターンといった精緻な構造を作成するためのエッチングに好適である。
【0028】
タングステン膜のエッチング速度および窒化チタン膜のエッチング速度は、タングステン膜および窒化チタン膜の厚さや膜質に対応して、調節することができる。例えば、本発明のエッチング液組成物の組成およびエッチングを行う温度の少なくとも一つを適宜調整することにより、調節することができる。
【0029】
本発明のエッチング液組成物によって一括エッチングされるタングステン膜と窒化チタン膜は、それぞれが基材上に成膜された、タングステン膜と窒化チタン膜とを含む基板の形態であってもよい。
このような基材の構成材料としては、シリコン、ガラス、石英、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォンなどが挙げられる。また、タングステン膜と窒化チタン膜とは、前記基材上に形成されたシリコン酸化膜(SiO
2)上に形成されていてもよい。
【0030】
また、本発明は、一態様において、上述したエッチング液組成物を用いて、タングステン膜と窒化チタン膜とを一括でエッチングする、エッチング方法に関する。
【0031】
本発明のエッチング方法は、タングステン膜と窒化チタン膜とを含む基板に対して行うことが好ましい。このようなタングステン膜と窒化チタン膜とを含む基板としては、特に限定されないが、例えば、上述した基材上に、少なくとも1層の窒化チタン膜とタングステン膜とが積層されている態様が挙げられる。好ましくは、基材上に、窒化チタン膜と、タングステン膜とがこの順序で積層された基板である。
【0032】
また、エッチングは、上記基板のタングステン膜および窒化チタン膜に対し、上述したエッチング液組成物を、例えば公知の方法により、接触させることにより行うことができる。
【0033】
また、エッチングにおけるエッチング組成物の温度は、特に限定されないが、好ましくは50℃以上である。
【0034】
一方、エッチングにおける、エッチング液組成物の温度が50℃未満の場合、実用的なエッチング速度が得られない場合がある。
【0035】
本発明の一態様において、本発明のエッチング液組成物およびエッチング方法は、種々の電子デバイス、特に、NAND型フラッシュメモリを含む不揮発性メモリなどの半導体メモリの製造において、電極をエッチングするための、エッチング液組成物およびエッチング方法に関する。本発明のさらなる一態様において、本発明のエッチング液組成物およびエッチング方法は、三次元構造を有するパターンの作成のための、エッチング液組成物およびエッチング方法に関し、これにより、大容量化されたメモリなどの高度なデバイスを得ることが可能となる。
【0036】
以上、本発明について好適な実施態様に基づき詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成を付加することもできる。
【実施例】
【0037】
本発明を以下の実施例と比較例とともに示し、発明の内容をさらに詳細に示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
以下の方法で、本発明のエッチング液組成物と比較のためのエッチング液組成物とを用いて実験を行った。
【0039】
シリコン基板上にタングステン膜を98.8nmの膜厚に成膜した基板、および、シリコン基板上に窒化チタン膜を81.2nmの膜厚に成膜した基板を、それぞれ準備した。各エッチング液組成物を表1および表2に記載された温度に保持し、準備したそれぞれの基板を、30および60分間、無撹拌浸漬条件にてエッチング処理した。エッチングした基板を超純水で洗い、窒素ブローにて乾燥させた。
【0040】
エッチング処理前および処理後のタングステン膜および窒化チタン膜のそれぞれについて、蛍光X線装置(Rigaku社製 ZSX100e)を用いて膜厚を測定した。そして、タングステン膜および窒化チタン膜のそれぞれについて、エッチング処理前の膜厚と処理後の膜厚との差より、エッチング量を求めた。
【0041】
表1および表2に、各実施例および比較例で用いたエッチング液組成物の組成ならびに、タングステン膜および窒化チタン膜をエッチングした結果を示した。また、タングステン膜および窒化チタン膜のエッチング速度(E.R.)は、それぞれ、タングステン膜および窒化チタン膜のエッチング量(nm)と処理時間(分)の関係から導かれる1次関数の直線の傾きから求めた。また、選択比(W/TiN)は、前記タングステン膜のエッチング速度を前記窒化チタン膜のエッチング速度で割ることにより求めた。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
比較例1のエッチング液組成物は、特開2004−031791号公報に記載されたエッチング組成物である。そして、比較例2および3のエッチング液組成物は、特開2010−010273号公報に記載されたエッチング液組成物である。
【0045】
比較例1〜3のエッチング液組成物は、タングステン膜および窒化チタン膜の少なくとも一方に対するエッチング速度が10nm/minを超える大きな値となるため、精緻な構造を作成するためのエッチングに用いることができない(表2、
図1)。さらに、選択比が1より大きく外れるため、タングステン膜と窒化チタン膜とを制御よく一括エッチングすることが困難である(表2、
図2)。
【0046】
これらの比較例とは対照的に、実施例1〜4のエッチング液組成物は、タングステン膜および窒化チタン膜のエッチング速度が適度に低く(表1、
図1)、かつ、選択比が約1であった(表1、
図2)。このため、実施例1〜4のエッチング液組成物は、タングステン膜と窒化チタン膜とを制御よく一括エッチングすることが可能であり、さらに、三次元構造を有するパターンといった精緻な構造を作成するためのエッチングに好適である。
【0047】
さらに、
図3は、実施例4のエッチング液組成物の各処理時間に対するエッチング量を、タングステン膜(a)および窒化チタン膜(b)のそれぞれについてプロットしたグラフである。
【0048】
図3のグラフは、タングステン膜および窒化チタン膜の両者について、実施例4のエッチング液組成物のエッチング量が処理時間に対して直線的に増加することを示している。このことは、エッチング速度(プロットとプロットとを結ぶ直線の傾きに相当する。)が経時変化をほとんど生じていないことを意味している。また、実施例4のエッチング組成物の選択比が約1であり(表1、
図2)、エッチング速度の経時変化がほとんどないことから(
図3)、実施例4のエッチング組成物の選択比が、経時変化することなく約1に保持されていることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のエッチング液組成物を使用することにより、タングステン膜と窒化チタン膜とを一括でエッチング処理することが可能となる。