特許第6769761号(P6769761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルテーエヌ・ゼルヴォテヒニク・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特許6769761スリップリング、及びスリップリングを有するスリップリング装置
<>
  • 特許6769761-スリップリング、及びスリップリングを有するスリップリング装置 図000002
  • 特許6769761-スリップリング、及びスリップリングを有するスリップリング装置 図000003
  • 特許6769761-スリップリング、及びスリップリングを有するスリップリング装置 図000004
  • 特許6769761-スリップリング、及びスリップリングを有するスリップリング装置 図000005
  • 特許6769761-スリップリング、及びスリップリングを有するスリップリング装置 図000006
  • 特許6769761-スリップリング、及びスリップリングを有するスリップリング装置 図000007
  • 特許6769761-スリップリング、及びスリップリングを有するスリップリング装置 図000008
  • 特許6769761-スリップリング、及びスリップリングを有するスリップリング装置 図000009
  • 特許6769761-スリップリング、及びスリップリングを有するスリップリング装置 図000010
  • 特許6769761-スリップリング、及びスリップリングを有するスリップリング装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769761
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】スリップリング、及びスリップリングを有するスリップリング装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 13/00 20060101AFI20201005BHJP
   H01R 39/08 20060101ALI20201005BHJP
   H01R 39/64 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   H02K13/00 K
   H01R39/08
   H01R39/64
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-139164(P2016-139164)
(22)【出願日】2016年7月14日
(65)【公開番号】特開2017-28989(P2017-28989A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2019年3月4日
(31)【優先権主張番号】15176837.1
(32)【優先日】2015年7月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516212751
【氏名又は名称】エルテーエヌ・ゼルヴォテヒニク・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ルートヴィヒ・アンガーポイントナー
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・アウテンツェラー
【審査官】 島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭48−036663(JP,Y1)
【文献】 特開2005−228522(JP,A)
【文献】 特開2003−197340(JP,A)
【文献】 実開昭53−012352(JP,U)
【文献】 国際公開第2013/190673(WO,A1)
【文献】 実開昭58−122388(JP,U)
【文献】 特開2012−079434(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0179125(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 13/00
H01R 39/08
H01R 39/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリップリングにおいて、
前記スリップリングは、
・周設されている1つの外側面(1.4)と半径方向に配向された前記外側面(1.4)を貫通している複数のダクト(1.1,1.2)とを有する誘電性の1つのキャリア本体(1;1′)と、
・1つの第1導体要素(10.1)と1つの第2導体要素(20.1)とを有し、
これらの導体要素(10.1,20.1)は、
第1部分(10.11,20.11)内では、軸方向に間隔(a)をあけて並列に、前記外側面(1.4)上に円周方向に延在するように配置されていて、
第2部分(10.12,10.13,20.12,20.13)内では、半径方向の方向成分を有する前記複数のダクト(1.1,1.2)内に延在し、
前記第1部分(10.11,20.11)がそれぞれ、360°未満の第1角度範囲(α10,α20)にわたって円周方向に延在する結果、1つの中断部分(u10,u20)が、第2角度範囲(β10,β20)内ごとにこれらの導体要素(10.1,20.1)の円周方向に沿って存在し、
前記第1導体要素(10.1)の前記第2角度範囲(β10)が、前記第2導体要素(20.1)の前記第2角度範囲(β20)に対して円周方向にずれて配置されているように、前記複数のダクト(1.1,1.2)がさらに配置されていて、
前記第1導体要素(10.1)と前記第2導体要素(20.1)とは、互いに電気接続されていて、
前記外側面(1.4)は、周設されている1つの第1溝(1.41)と1つの第2溝(1.42)とを有し、前記第1導体要素(10.1)が、この第1溝(1.41)内に配置されていて、前記第2導体要素(20.1)が、この第2溝(1.42)内に配置されている当該スリップリング。
【請求項2】
前記スリップリングが、1つの第3導体要素(30.1)を有し、この第3導体要素(30.1)は、
第1部分(30.11)内では、前記第1導体要素(10.1)と前記第2導体要素(20.1)とに対して軸方向に間隔(a)をあけて並列に前記外側面(1.4)上に円周方向に延在するように配置されていて、
第2部分(30.12)内では、半径方向の方向成分を有する複数のダクト(1.3)内に延在し、
前記第1部分(30.11)が、360°未満の第1角度範囲(α30)にわたって延在する結果、1つの中断部分(u30)が、1つの第2角度範囲(β30)内ごとに前記第3導体要素(30.1)の円周方向に沿って存在し、
前記第3導体要素(30.1)の前記第2角度範囲(β30)が、前記第1導体要素(10.1)及び/又は前記第2導体要素(20.1)の前記第2角度範囲(β10,β20)に対して円周方向にずれて配置されているように、前記複数のダクト(1.3)がさらに配置されていて、前記第1導体要素(10.1)と前記第2導体要素(20.1)と前記第3導体要素(30.1)とが、互いに電気接続されている請求項に記載のスリップリング。
【請求項3】
1つの間隔(U)が、円周方向に前記第1導体要素(10.1)のダクト(1.1)と前記第2導体要素(20.1)のダクト(1.2)との間に存在する請求項1〜のいずれか1項に記載のスリップリング。
【請求項4】
複数の前記導体要素(10.1,20.1)はそれぞれ、ワイヤとして形成されている請求項1〜のいずれか1項に記載のスリップリング。
【請求項5】
前記ワイヤは、20mm未満の横断面を有する請求項に記載のスリップリング。
【請求項6】
前記複数の導体要素(10.1,20.1)はそれぞれ、1つの部材で形成されている請求項1〜のいずれか1項に記載のスリップリング。
【請求項7】
前記複数の導体要素(10.1,20.1)の電気接続部分(40.1)が、前記第1部分(10.11,20.11)に対して半径方向に内側に存在して配置されている請求項1〜のいずれか1項に記載のスリップリング。
【請求項8】
互いに電気接続されている前記複数の導体要素(10.1,20.1,30.1)が、複数のウェブ(1.44)によって軸方向に限定されている1つの軌道に敷設されている請求項1〜のいずれか1項に記載のスリップリング。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の1つのスリップリングと、1つのブラシ(2.1;2.1′;2.1″)を有する1つのブラシ装置(2)とを備えるスリップリング装置において、
2つの前記導体要素(10.1,20.1)が、前記第1部分(10.11,20.11)内で前記ブラシ(2.1;2.1′;2.1″)によってそれぞれの第1角度範囲(α10,α20)にわたって摺動接触可能であり、前記第1角度範囲(α10,α20)は、少なくとも270°である当該スリップリング装置。
【請求項10】
請求項に記載の1つのスリップリングと、1つのブラシ(2.1″)を有する1つのブラシ装置(2)とを備えるスリップリング装置において、
少なくとも2つの導体要素(10.1,20.1,30.1)が、前記ブラシ(2.1″)によって前記第1部分(10.11,20.11,30.11)内で全周にわたって摺動接触可能である当該スリップリング装置。
【請求項11】
前記ブラシ(2.1;2.1′,2.1″)は、金属を含有する材料から製造されている請求項又は10に記載のスリップリング装置。
【請求項12】
前記ブラシ(2.1;2.1′,2.1″)は、貴金属を含有する表面を有する請求項11のいずれか1項に記載のスリップリング装置。
【請求項13】
少なくとも1つの導体要素(10.1,20.1,30.1)が、前記ブラシ(2.1;2.1′,2.1″)によって2回接触可能である請求項12のいずれか1項に記載のスリップリング装置。
【請求項14】
複数の前記導体要素(10.1,20.1,30.1)が、前記ブラシ(2.1;2.1′,2.1″)の軸方向の移動可能性を制限するために前記第1部分(10.11,20.11,30.11)の軸方向内で複数のウェブ(1.44)によって包囲されている請求項13のいずれか1項に記載のスリップリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載のスリップリング、及び請求項10に記載の、このようなスリップリングを有するスリップリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スリップリング装置は、通常は2つの部材群、すなわち固定子及び回転子を有する。当該固定子は、多くの場合に少なくとも1つのブラシ装置を有する。これに対して、当該回転子は、連続する複数のスリップリングを有する。当該駆動中に、当該ブラシ装置のブラシが、回転する当該スリップリングの外側面に摺動接触する。このようなスリップリング装置は、電気信号又は電力を固定装置から回転する電気装置に伝送するか又は反対方向に伝送するために多くの技術分野において使用される。
【0003】
米国特許第5224138号明細書には、絶縁材料から成るシリンダ状のキャリア本体を有するスリップリングが開示されている。1つの導体ストリップが、このキャリア本体の外側面上に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5224138号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特に高い周波数の電流又は信号を伝送するために適し、同時に簡単で且つ経済的な製造を可能にする、スリップリング装置用のスリップリングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1又は請求項10の特徴によって本発明にしたがって解決される。
【0007】
したがって、当該スリップリングは、周設されている1つの外側面と半径方向に配向された複数のダクトとを有する誘電性の1つのキャリア本体を備える。これらのダクトは、この外側面又はこのキャリア本体を貫通している。さらに、当該スリップリングは、1つの第1導体要素と1つの第2導体要素とを有する。この場合、これらの導体要素は、それぞれ1つの第1部分と1つの第2部分とを有する。第1部分内では、当該2つの導体要素が、軸方向に間隔をあけて並列に、当該外側面上に円周方向に延在するように配置されている。第2部分内では、これらの導体要素は、半径方向の方向成分を有する当該複数のダクト内に延在する。この場合、当該それぞれの第1部分が、360°未満の第1角度範囲にわたって延在する。その結果、1つの中断部分が、第2角度範囲内ごとにこれらの導体要素の円周方向に沿って存在する。さらに、当該第1導体要素の第2角度範囲が、当該第2導体要素の第2角度範囲に対して円周方向にずれて配置されているように、当該複数のダクトが配置されている。この第1導体要素とこの第2導体要素とは、互いに電気接続されている。特に、このとき、この第1導体要素とこの第2導体要素とは、1つで且つ同じ軌道に敷設される必要がある。
【0008】
したがって、当該2つの導体要素の複数の第1部分が、軸方向に間隔をあけて並列に、特に円弧状に外側面上に円周方向に延在する。その一方で、これらの導体要素の複数の第2部分が、半径方向の方向成分を有する当該複数のダクト内に、特に直線状に延在する。
【0009】
用語の外側面は、以下では、シリンダ状の本体に対する幾何学的な定義にしたがって解することができる。この場合、当該スリップリングは、シリンダ状に、特に中空シリンダ状に又はリング状に形成され得る。当該外側面は、特に当該スリップリングの周設されている外面であるが、以下では、周設されている内面も、この用語を意味するもの解し得る。
【0010】
特に、当該第1角度範囲と当該第2角度範囲とが、合計で360°にわたって、すなわち全円周にわたって延在するように、これらの角度範囲は、1つの導体要素の1つの円周線に沿って設計されている。
【0011】
用語の中断部分は、以下では、導体要素がその外径(この場合、導体要素が、外側の外側面に取り付けられている)又はその内径(この場合、導体要素が、内側の外側面に取り付けられている)で当該キャリア本体に周設されていない、円周線に沿った箇所を意味する。特に、1つの導体要素の第1部分の複数の端部が、1つの隙間又は1つの継ぎ目によって離間されている。したがって、例として、中断部分は、ここでも隙間又は継ぎ目を意味し得る。
【0012】
したがって、当該中断部分は、第2角度範囲に相当する中心角度にわたって延在する。この第2角度範囲は、特に式である360°−(マイナス)当該導体要素の第1部分の第1角度範囲によって計算される。
【0013】
好ましくは、当該外側面は、周設されている第1溝と第2溝とを有する。この場合、第1導体要素が、この第1溝内に配置されていて、第2導体要素が、この第2溝内に配置されている。
【0014】
本発明のその他の構成では、当該スリップリングが、第3導体要素を有する。この第3導体要素は、第1導体要素と第2導体要素とに対して軸方向に間隔をあけて並列に当該外側面上に円周方向に延在するように配置されている。さらに、この第3導体要素の第2部分内の半径方向の方向成分が、複数のダクト内に延在する。当該第1部分が、360°未満の第1角度範囲にわたって延在する。その結果、1つの中断部分が、1つの第2角度範囲内ごとに第3導体要素の円周方向に沿って、又はこの第2角度範囲に沿って存在する。さらに、この第3導体要素の第2角度範囲が、第1及び/又は第2導体要素の第2角度範囲に対して円周方向にずれて配置されているように、当該複数のダクトが配置されている。この場合、第1導体要素と第2導体要素と第3導体要素とが、互いに電気接続されている。
【0015】
同様に、別の導体要素も、当該キャリア本体に配置され得る。その結果、例えば、4つ又はそれより多い導体要素が、4つ又はそれより多い溝内に配置され得る。
【0016】
好ましくは、当該第1角度範囲は、少なくとも270°にわたって、さらに好適な構成では少なくとも300°にわたって、特に少なくとも340°にわたって延在する。
【0017】
代わりに、複数の導体要素が、1つの円周線に沿って円周方向に一緒に一列に配置されているように、当該スリップリングが構成され得る。その結果、複数の中断部分が、この円周線に沿って発生する。
【0018】
本発明のその他の構成では、或る間隔が、当該外側面上で円周方向に当該第1導体要素のダクトと当該第2導体要素のダクトとの間に存在する。
【0019】
好ましくは、当該複数の導体要素はそれぞれ、特に、20mm未満、特に10mm、特に5mm未満の横断面を有するワイヤとして形成されている。
【0020】
当該ワイヤは、円い横断面を有し得る。このことは、高周波信号の伝送に対して直接に有益になり得る。
【0021】
好ましくは、当該複数の導体要素は、それらの第1部分及び第2部分をそれぞれ1つの部材で形成されている。
【0022】
好ましくは、当該複数の導体要素は、貴金属、例えば金でめっきされている。
【0023】
好適な構成によれば、当該複数の導体要素の第1部分の電気接続部分が、半径方向に内側に存在して配置されている。この構成の場合、これらの導体要素が、当該キャリア本体の外周に配置されている。
【0024】
本発明のその他の構成では、互いに電気接続されている複数の導体要素が、複数のウェブによって軸方向に限定されている1つの軌道に敷設されている。
【0025】
本発明は、対応するスリップリングを備え、ブラシを有するブラシ装置を備えるスリップリング装置にも関する。2つの導体要素が、1つの導体要素のそれぞれの第1部分内でこのブラシによってそれぞれの第1角度範囲にわたって摺動接触可能である。この場合、当該第1角度範囲は、少なくとも270°にわたって延在する。
【0026】
3つの導体要素を有するスリップリングの構成の場合、少なくとも2つの導体要素が、当該ブラシによって該当する導体要素のそれぞれの第1部分内で全周にわたって摺動接触可能であるように、当該スリップリング装置が構成され得る。
【0027】
好ましくは、当該ブラシは、金属を含有する材料から、特に炭素を含有しない材料から製造されている。
【0028】
当該スリップリング装置の好適なバリエーションによれば、当該ブラシが、貴金属を含有する、例えば金を含有する表面を有する。
【0029】
特に、1つの導体要素が、当該ブラシによって2回接触可能であるように、当該スリップリング装置が構成され得る。これに関連して、このブラシは、2つの自由端部を有益に有する。これらの自由端部はそれぞれ、円周方向に存在する間隔をあけて1つで且つ同じ導体要素に当接する。この配置は、特に電流伝送又はデータ伝送の冗長性をもたらす二重ブラシとも記され得る。
【0030】
本発明の別の構成では、特に、1つの軌道を形成する複数の導体要素が、当該第1部分の軸方向内で複数のウェブによって包囲されている。これらのウェブは、当該ブラシの軸方向の移動可能性を制限するためにこれらの導体要素の第1部分よりも大きい外径を有する。
【0031】
当該スリップリング装置は、電力及び/又は電気信号を伝送するために、すなわち情報を伝送するために使用される。
【0032】
高周波信号が、本発明のスリップリングによって、又は本発明のスリップリング装置によって簡単に伝送され得る。特に、当該スリップリングの特別な構造が、減少した静電容量に関して有益であることが実証されている。
【0033】
本発明の好適な構成は、従属請求項に記載されている。
【0034】
以下で、本発明のスリップリング又は本発明のスリップリング装置のその他の詳細及び利点を、添付図面に基づく複数の実施の形態により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】スリップリング装置の投影図である。
図2】スリップリング装置の側面図である。
図3】導体要素を有しないスリップリングの外側面上の詳細図である。
図4】導体要素を有しないスリップリングのキャリア本体の断面の詳細図である。
図5】導体要素を有するスリップリングの外側面上の詳細図である。
図6】導体要素を有するスリップリングの断面の詳細図である。
図7】導体要素を有するスリップリング装置の断面の詳細図である。
図8】第2の実施の形態による導体要素を有するスリップリングの断面の詳細図である。
図9】第2の実施の形態による導体要素を有するスリップリング装置の断面の詳細図である。
図10】第3の実施の形態による導体要素を有するスリップリング装置の断面の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1及び2には、スリップリング装置が示されている。このスリップリング装置は、ほぼリング状に形成されている誘電性のキャリア本体1と、ブラシ装置2とを有する。このスリップリング装置は、異なる5つの電流又は信号を伝送するために全部で5つの軌道又は経路を有するものの、以下では代表的に2つの軌道又は経路だけが詳細に解説される。これに応じて、これらの軌道又は経路のうちのその他の軌道又は経路は、符号を有しない。
【0037】
導体要素10.1,20.1;10.2,20.2が、キャリア本体1又はこのキャリア本体1の外側面1.4に配置されている。この場合、導体要素10.1,20.1は、第1軌道に配置され得、導体要素10.2,20.2は、第2軌道に配置され得る。ブラシ装置2は、ブラシホルダ2.3に固定されている複数の導電ブラシ2.1,2.2を有する。当該図示された実施の形態では、これらのブラシ2.1,2.2はそれぞれ、特に円い横断面を有する金めっきされているワイヤとして形成されている。第1ブラシ2.1は、第1軌道に属し、第2ブラシ2.2は、第2軌道に属する。
【0038】
キャリア本体1又は導体要素10.1,20.1;10.2,20.2の、軸A周りの相対回転時に、導体要素10.1,20.1;10.2,20.2とブラシ2.1,2.2との間の電流伝送、特に信号伝送が可能である。当該図示された実施の形態では、1つの導体要素10.1;20.1;10.2,20.2が、1つのブラシ2.1,2.2によって2回接触される。何故なら、各ブラシ2.1,2.2は、それぞれ1つの自由端部を有する2つの領域を有するからである(二重ブラシ構造)。当該複数の端部は、ブラシ2.1,2.2の弾性の範囲内で半径方向に可動である。
【0039】
溝1.41,1.42が、キャリア本体1の周設されている外側面1.4内に設けられている。当該図示された実施の形態では、これらの溝1.42,1.42は、周設されているv字状の溝1.41,1.42として形成されている(図3及び4参照)。したがって、当該図示された実施の形態では、2つの溝1.41,1.42が、1つの軌道又は1つの伝送経路のために設けられている。溝1.41,1.42の稜線、すなわち1つの溝1.41,1.42の2つの面が交わる箇所で発生する線が、軸方向に間隔aをあけて配置されている。当該稜線は、軸Aに対して直角に円周方向に延在する。複数のウェブ1.44が、一対の溝1.41,1.42の間に軸方向に配置されている。
【0040】
図3に示されているように、外側面1.4を貫通する半径方向に配向された複数のダクト1.1,1.2又は複数の孔が配置されている。この場合、これらのダクト1.1,1.2は、1つで且つ同じ円周線上に間隔Uをあけて配置されている。これらのダクト1.1,1.2は、当該稜線の領域内にそれぞれ1つの凹部1.11,1.21を有する。
【0041】
図5では、導体要素10.1,20.1が、第1軌道の導体要素10.1,20.1と、第2軌道の導体要素10.2,20.2が、キャリア本体1に取り付けられているという違いを伴って、スリップリングの図3と同じ部分が、図5に示されている。
【0042】
以下に、当該スリップリングの詳細な構成を第1軌道に基づいて説明する。導体要素10.1,20.1用の材料が、巻き付けられた半製品として提供され得る。その結果、スリップリングが、比較的低コストで且つ経済的に製造可能である。この取り付けの途中に、導体要素10.1,20.1が、適切に短く切断され、曲げられる。その結果、これらの導体要素10.1,20.1は、それらの端部で屈曲されている脚部又は第2部分10.12,10.13,20.12,20.13を有する(図6)。
【0043】
その後に、こうして準備された導体要素10.1,20.1が、溝1.41,1.42内に敷設される。第2部分10.12,10.13,20.12,20.13が、ダクト1.1,1.2内に嵌め込まれる。その結果、これらの第2部分10.12,10.13,20.12,20.13又はこれらの第2部分10.12,10.13,20.12,20.13の端部が、キャリア本体1から半径方向に内側に突出する(図6)。導体要素10.1,20.1は、それぞれ1つの第1部分10.1,20.11を有する。第1部分10.1,20.11は、それぞれの溝1.41,1.42内で、軸Aを中心にして円周方向に円弧状に延在する。特に、第1部分10.1,20.11の半径方向の外輪郭が、円弧に沿って延在する。凹部1.11,1.21によって、導体要素10.1,20,1を、軸方向に間隔aをあけて並列に溝1.41,1.42内に正確に適合させて配置することが可能である。
【0044】
導体要素10.1,20.1が、キャリア本体1にこのようにして配置された後に、第2部分10.12,10.13,20.12,20.13又は導体要素10.1,20.1の端部が、互いに半田付けで接続される。この場合、第1半田付け箇所40.1が生成される。第1半田付け箇所40.1は、第2部分10.12,10.13,20.12,20.13を電気式に且つ機械式に互いに結合させる。図6では、この半田付け箇所40.1は、点線によって配置されている。したがって、(すなわち、2つのウェブ1.44間に配置されている)第1軌道の2つの導体要素10.1,10.2が、付随する第2部分10.12,10.13,20.12,20.13を半田付けすることによって同じ電位を有する。スリップリング装置の後の駆動中に、1つの経路の信号が、導体要素10.1,20.1に存在する。
【0045】
残りの導体要素10.2,20.2が、同様に取り付けられる。
【0046】
導体要素10.1,20.1;10.2,20.2がそれぞれ、360°未満の巻き付け角度で周設されているように、これらの導体要素10.1,20.1;10.2,20.2は、溝1.41,1.42内に配置されている。換言すれば、当該第1軌道の導体要素10.1,20.1の第1部分10.11,20.11がそれぞれ、1つの円周線に沿って360°未満(ここでは、355°)の第1角度範囲α10,α20にわたって延在する。それ故に、1つの中断部分u10,u20又はそれぞれ1つの隙間が、それぞれ第2角度範囲β10,β20にわたってこれらの導体要素10.1,20.1の円周方向に沿って存在する。ここでは、第2角度範囲β10,β20は、5°の角度を成して延在する。当該図示された実施の形態では、第1角度範囲α10,α20をそれぞれ、第2角度範囲β10,β20に加算すると、360°になる。したがって、
α10+β10=360°=α20+β20
が成立する。
【0047】
第1導体要素10.1の第2角度範囲β10が、第2導体要素20.1の第2角度範囲β20に対して円周方向にずれて配置されているように、ダクト1.1,1.2が配置されていることによって、第1軌道のブラシ1.1と、この第1軌道の導体要素10.1,20.1のうちの少なくとも1つの導体要素との、全回転にわたる持続した接触が可能である。
【0048】
1つの軌道のそれぞれの中断部分uが、円周方向に範囲Tだけずれて互いに配置されているように、導体要素10.1,20.1;10.2,20.2が、ダクト1.1,1.2の当該ずれた配置によって溝1.41,1.42内に延在する。したがって、導体要素10.1,20.1はそれぞれ、1つの第1部分10.1,20.11を有する。この第1部分10.1,20.11は、軸Aを中心にして円弧状に溝1.41,1.42内に延在する。特に、(すなわち、中断部分u10,u20の外側の)第1部分10.1,20.11の半径方向の外輪郭が、円弧に沿って延在する。
【0049】
図7は、ブラシ2.1,2.2が導体要素10.1,20.1又は10.2,20.2に摺動接触している詳細図である。これらのブラシ2.1,2.2はそれぞれ、比較的弾性な導電性の金属ワイヤとして形成されている。この場合、これらのブラシ2.1,2.2の表面が、金めっきされている。これらのブラシ2.1,2.2が、導体要素10.1,20.1;10.2,20.2間の部分横断面と交互に接触する。これらのブラシ2.1,2.2が、当該スリップリング装置の駆動中に軸方向に移動され得ない。特に、例えば、第1軌道内では、ブラシ2.1が、導体要素10.1,20.1の第1部分10.11内で2つの導体要素10.1,20.1に電気接触している。
【0050】
当該スリップリング装置は、電気信号、特に高周波信号を伝送するために使用される。当該スリップリング装置によって、高いデータ速度が、例えば、イーサネット接続、SERCOSデータ接続又はその他のリアルタイムのデータ接続のために伝送され得る。特に、特別な構造によって、ブラシ2.1,2.2が、導体要素10.1,20.1;10.2,20.2に持続して接触することが保証される。さらに、当該新規の構造は、その伝送経路内の比較的小さい静電容量を特徴とする。その結果、極めて高い周波数の信号も伝送される。
【0051】
図8又は9に示された第2の実施の形態によれば、第1軌道が、3つの溝1.41,1.42,1.43をキャリア本体1′の外側面1.4内に有する。導体要素10.1,20.1,30.1が、第1の実施の形態と同様にこれらの溝1.41,1.42,1.43内に取り付けられている。これに応じて、ここでも、導体要素10.1,20.1,30.1がそれぞれ、360°未満の第1角度範囲α10,α20,α30にわたって周設されているように、これらの導体要素10.1,20.1,30.1は、溝1.41,1.42,1.43内に配置されている。これにより、1つの中断部分u10,u20,u30又は1つの隙間が、第2角度範囲β10,β20,β30にわたってそれぞれの導体要素10.1,20.1,30.1の外周に存在する。それぞれの中断部分u10,u20,u30が、円周方向にずれて互いに配置されているように、導体要素10.1,20.1,30.1が、ダクト1.1,1.2,1.3をキャリア本体1′内にずれて配置することによって溝1.41,1.42,1.43内に延在する。
【0052】
導体要素10.1,20.1,30.1を有する第1軌道が、隣接した第2軌道に対して1つのウェブ1.44によって分離されている。第1ブラシ2.1′は、2つのブラシ要素2.1a′,2.1b′を有する。当該図示された実施の形態では、ブラシ要素2.1a′,2.1b′はそれぞれ、特に円い横断面を有するワイヤとして形成されている。ブラシ要素2.1a′,2.1b′は、特に貴金属、例えば金でめっきされている。
【0053】
第3の実施の形態が示されている図10によれば、第1軌道が、3つの溝1.41,1.42,1.43をキャリア本体1′の外側面1.4内に有する。導体要素10.1,20.1,30.1が、第1又は第2の実施の形態と同様に溝1.41,1.42,1.43内に取り付けられている。
【0054】
導体要素10.1,20.1,30.1を有する第1軌道が、隣接した第2軌道に対して1つのウェブ1.44によって分離されている。第1ブラシ2.1″が、互いに半田付けされた2つのブラシ要素2.1a″,2.1b″を有する。当該図示された実施の形態では、第1ブラシ要素2.1a″は、特に円い横断面を有するワイヤとして形成されている。第2ブラシ要素2.1b″が、この第1ブラシ要素2.1a″に固定されている。この第2ブラシ要素2.1b″は、ほぼ直方体状に形成されていて、特に銀グラファイトから製造されている。当該スリップリング装置の駆動中に、第1ブラシ要素2.1a″は、電流又は信号を伝送するために使用され、且つ衝撃を吸収するように第2ブラシ要素2.1b″を導体要素10.1,20.1,30.1に半径方向に接触させるために使用される。さらに、軸方向への第2ブラシ要素2.1b″の移動の制限が、ウェブ1.44によって保証される。
【符号の説明】
【0055】
1,1′ キャリア本体
2 ブラシ装置
2.1 第1ブラシ、導電ブラシ
2.2 第2ブラシ、導電ブラシ
2.3 ブラシホルダ
1.4 外側面
1.44 ウェブ
1.41,1.42,1.43 溝
1.1,1.2,1.3 ダクト
1.11,1.21 凹部
10.1,2.1;10.2,20.2,20.11,20.1,30.1 導体要素、第1部分
10.12,10.13,20.12,20.13 脚部、第2部分
40.1 第1半田付け箇所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10