特許第6769768号(P6769768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769768
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】移載装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20201005BHJP
   B65G 47/91 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   B25J15/06 G
   B65G47/91
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-143939(P2016-143939)
(22)【出願日】2016年7月22日
(65)【公開番号】特開2018-12176(P2018-12176A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2019年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】野口 雅人
【審査官】 松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0280812(US,A1)
【文献】 独国特許発明第102013109948(DE,B3)
【文献】 特開平03−088624(JP,A)
【文献】 特開昭59−076796(JP,A)
【文献】 実開昭61−061192(JP,U)
【文献】 韓国登録特許第10−1116191(KR,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0052708(US,A1)
【文献】 米国特許第5727832(US,A)
【文献】 特開平10−309686(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0293397(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00 − 15/12
B65G 49/47
B65B 43/42 − 43/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向及び水平方向に移動可能なピックアップ装置により箱体を移載可能な移載装置であって、
前記ピックアップ装置は、前記箱体の上面を吸着するバキューム装置と、前記バキューム装置の吸着面よりも下方に位置する箱体の一側面に当接可能な進退部材と、前記進退部材を下方に移動させ箱体の一側面方向に移動させる移動手段と、を備え、
前記移動手段を用いて、前記箱体の一側面に前記進退部材を下降移動させて、前記箱体の一側面に前記進退部材を押し当てた状態で、前記箱体の上面に対する前記バキューム装置の吸着を開始させ、前記進退部材と前記箱体との間に生じる摩擦力と前記バキューム装置の吸着力を用いて、前記箱体の一側面と上面からの2方向において前記箱体を保持し移動させることを特徴とする移載装置。
【請求項2】
前記進退部材は、板状部材であることを特徴とする請求項1に記載の移載装置。
【請求項3】
前記進退部材は、前記バキューム装置の吸着面以上の位置まで後退可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の移載装置。
【請求項4】
前記バキューム装置は、前記進退部材の前記箱体と当接する面と略並行方向に複数設けられることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の移載装置。
【請求項5】
前記板状部材は、前記箱体と当接する面に対して略垂直な方向の視線に沿って見た場合の形状がその下端に突出する頂点を有する角部を備えることを特徴とする請求項2に記載の移載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱体を吸着保持することにより移載する移載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移載対象となる物品をバキューム装置により上方から吸着保持し、この状態でバキューム装置を移動装置により上下方向及び水平方向へ移動させることにより移載する移載装置がある。
【0003】
このような移載装置には、例えば、特許文献1に開示されているような技術が採用されている。特許文献1によれば、バキューム装置は、物品を鉛直上方から吸着保持するためのバキュームカップと、真空ポンプに接続されバキュームカップ内の空気を排気する排気ホースと、上下方向に延びて下端に継手を介してバキュームカップが連結された軸部材と、を有している。
【0004】
物品をバキュームカップにより吸着する際には、軸部材を上下方向に移動させることによりバキュームカップを降下させて物品の上面に対して吸着させ、物品をバキュームカップにより吸着した状態で持ち上げて移動させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】公開実用新案平1−84994号公報(第4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にあっては、バキューム装置により内部に物品が収納された箱体を吸着保持する場合、箱体内の物品の収納位置等によっては箱体の重心から吸着保持する位置が大きく離れているため、箱体が傾いて吸着不良を起こす虞がある。また、吸着保持後に箱体内の物品が移動することにより、箱体の傾きが助長される虞もあった。そのため、吸着不良を防ぐためには、バキューム装置の吸着力を強くする等の対応が必要となっていた。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、箱体を安定して吸着保持することができる移載装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の移載装置は、
上下方向及び水平方向に移動可能なピックアップ装置により箱体を移載可能な移載装置であって、
前記ピックアップ装置は、前記箱体の上面を吸着するバキューム装置と、前記バキューム装置の吸着面よりも下方に位置する箱体の側面に当接可能な進退部材と、前記進退部材を下方に移動させ箱体の一側面方向に移動させる移動手段と、を備え
前記移動手段を用いて、前記箱体の一側面に前記進退部材を下降移動させて、前記箱体の一側面に前記進退部材を押し当てた状態で、前記箱体の上面に対する前記バキューム装置の吸着を開始させ、前記進退部材と前記箱体との間に生じる摩擦力と前記バキューム装置の吸着力を用いて、前記箱体の一側面と上面からの2方向において前記箱体を保持し移動させることを特徴としている。
この特徴によれば、箱体の上面をバキューム装置で吸着した状態で進退部材を箱体の側面に当接させることにより、箱体のバランスを維持でき、強い吸着力を必要とせずに箱体を安定して吸着保持することができる。
【0009】
前記進退部材は、板状部材であることを特徴としている。
この特徴によれば、板状部材の面を箱体の側面に当接させることができ、確実に箱体のバランスを維持できる。
【0010】
前記進退部材は、前記バキューム装置の吸着面以上の位置まで後退可能であることを特徴としている。
この特徴によれば、進退部材をバキューム装置の吸着面以上の位置まで後退させた状態でピックアップ装置を移動させることができるため、進退部材が箱体に干渉してバキューム装置の吸着動作の邪魔になることがない。
【0011】
前記バキューム装置は、前記進退部材の前記箱体と当接する面と略並行方向に複数設けられることを特徴としている。
この特徴によれば、複数のバキューム装置により箱体の上面が吸着されるため、進退部材によって規制できない方向の水平方向の箱体の傾きを抑制することができる。
【0012】
前記板状部材は、前記箱体と当接する面に対して略垂直な方向の視線に沿って見た場合の形状がその下端に突出する頂点を有する角部を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、角部が先行して下降移動することにより箱体の側方の隙間が狭い場合であっても板状部材を箱体の側面に当接させやすい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例における移載装置のピックアップ装置により箱体を吸着保持した状態を示す斜視図である。
図2】(a)は、箱体の蓋が閉められた状態を示す斜視図であり、(b)は、箱体の蓋が開けられた状態を示す斜視図である。
図3】(a)は、移載装置のピックアップ装置の構造を示す正面図であり、(b)は、同じく側面図である。
図4】(a)〜(c)は、バキューム装置による吸着構造を示す模式図である。
図5】箱体の吸着保持の仕組みを示しており、縦置き状態の箱体を吸着保持した場合のバキューム装置と板状部材との位置関係を示す模式図である。
図6】(a)〜(c)は、縦置き状態の箱体の吸着保持動作の一例を示しており、箱体をずらす動作を示す模式図である。
図7】(a)〜(c)は、縦置き状態の箱体の吸着保持動作の一例を示しており、箱体の側方に板状部材を配置させる動作を示す模式図である。
図8】(a)〜(c)は、縦置き状態の箱体の吸着保持動作の一例を示しており、箱体を吸着して持ち上げる動作を示す模式図である。
図9】(a)〜(b)は、平置き状態の箱体の吸着保持動作の一例を示しており、箱体をずらす動作を示す模式図である。
図10】(a)〜(b)は、平置き状態の箱体の吸着保持動作の一例を示しており、箱体の側方に板状部材を配置させ、箱体を吸着して持ち上げる動作を示す模式図である。
図11】箱体の側方に配置した板状部材を上昇させた状態で平置き状態の箱体の吸着保持動作の一例を示しており、箱体のバランスが崩れた状態を示す模式図である。
図12】移載装置のピックアップ装置により箱体を吸着保持した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る移載装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0015】
実施例に係る移載装置につき、図1から図12を参照して説明する。以下、図3(a)の紙面手前側及び図3(b)の紙面左側を移載装置の正面側(前方側)とし、その前方側から見たときの上下左右方向を基準として説明する。
【0016】
図1に示されるように、本実施例の移載装置は、移載対象物である箱体2を上方から吸着保持可能なピックアップ装置1により箱体2を吸着保持して持ち上げた状態で図示しない移動装置、例えば周知のロボットアーム等により上下方向及び水平方向に移動させ、所望の位置へ箱体2の移載を行うものである。
【0017】
図2(a)に示されるように、本実施例における箱体2は、商品等を収納可能な収容部2aと、該収容部2aの開口部分を閉塞する蓋2bとが連設部2eによって連設され、図2(b)に示されるように、蓋2bは、収容部2aに対して連設部2eを軸に前縁部2f側が回動することにより収容部2aの開口部分を開閉可能になっている。また、箱体2の載置される向きによってピックアップ装置1によって吸着保持される面が変化するが、本実施例においては、箱体2が縦置き状態の場合(図6参照)には、後述するバキューム装置5を吸着させる面2cは、連設部2eによって蓋2bに連設される収容部2aの側面となり、後述する板状部材63(進退部材)を当接させる面2dは、蓋2bを構成し収容部2aの開口部分を閉塞する面となる態様として説明する。さらに、箱体2が平置き状態の場合(図9参照)には、面2cは、蓋2bを構成し収容部2aの開口部分を閉塞する面となり、面2dは、連設部2eによって蓋2bと連設される収容部2aの側面となる態様として説明する。
【0018】
ピックアップ装置1は、図示しない移動装置と連結される筐体10と、該筐体10の前面側に設けられ吸着時の圧力を計測する圧力計4と、筐体10の前方側下面から下方に向って延びる棒状のアーム3と、該アーム3の下端に設けられる複数のバキューム装置5,5と、筐体10の背面側に設けられる板状部材63(説明の便宜上、二点鎖線で表示)を有する進退装置6と、から主に構成されている。
【0019】
尚、ピックアップ装置1の上方には、図示しない3Dカメラが設けられている。3Dカメラは、上方から箱体2を撮像して得た撮像データに基づいて3Dカメラに内蔵される図示しない情報処理部で箱体2の三次元位置の検出を行い、箱体2の三次元位置情報を図示しない制御部に送信できるようになっている。尚、制御部では、3Dカメラから送信された三次元位置情報に基づいてピックアップ装置1及び進退装置6の動作制御が行われる。
【0020】
図3(a)に示されるように、アーム3の下端には左右に分岐する正面視倒立略T字状の分岐部51が取付けられ、分岐部51の左右両端にそれぞれバキューム装置5,5が取付けられている。バキューム装置5,5は、下向きに開放するバキュームカップ52,52と、該バキュームカップ52,52の内部に嵌挿された上下方向に伸縮可能な吸着パッド53,53(図4(a)参照)と、から主に構成されている。
【0021】
吸着パッド53,53は、上下端が開放した筒状を成し、上端側が分岐部51の内部と連通するように連結されるとともに、自然状態でその下端側がバキュームカップ52,52の下端縁52a,52aよりも下方に突出した状態で嵌挿されている(図4(a)参照)。
【0022】
図1に示されるように、分岐部51は、所定位置に内部へ連通する排気口51aが設けられており、真空ポンプ等を利用して分岐部51の内部の空気を排気口51aから排気することにより、分岐部51の内部とそれぞれ連通するバキューム装置5,5の吸着パッド53,53の内部の空気を同時に排気できるようになっている。
【0023】
図1及び図3(b)に示されるように、進退装置6は、ピックアップ装置1の筐体10の背面に取付けられ上下方向に亘って2本の誘導溝61a,61aを有するレール部材61と、該レール部材61の誘導溝61a,61aに沿って上下方向に移動可能な移動体62とを有している。移動体62には、略長方形状の板状部材63がネジ止めされており、この板状部材63は、移動体62の移動に併せて上下方向に移動可能になっている。
【0024】
次いで、バキューム装置5,5による吸着について図4を用いて詳しく説明する。尚、図4においては、箱体2は縦置き状態のものとして説明する。先ず、図4(a)に示されるように、3Dカメラから送信された三次元位置情報に基づいて移動装置が動作され、ピックアップ装置1が水平方向に移動し、バキューム装置5,5が箱体2の面2cの鉛直上方に配置されるように位置合わせされる。
【0025】
次に、図4(b)に示されるように、3Dカメラから送信された三次元位置情報に基づいてピックアップ装置1を下降させて吸着パッド53,53の下端開口部53a,53a(吸着面)を箱体2の面2cに対して当接させた後、さらにピックアップ装置1を下降させてバキュームカップ52,52の下端縁52a,52aを箱体2の面2cに対して当接させる。このとき、吸着パッド53,53は、下端開口部53a,53aを箱体2の面2cに対して当接させた状態から上下方向に収縮してバキュームカップ52,52内に収まっており、箱体2の面2cに対してバキュームカップ52,52の下端縁52a,52aと吸着パッド53,53の下端開口部53a,53aとが同時に当接した状態となっている。
【0026】
尚、箱体2の面2cに対してバキュームカップ52,52の下端縁52a,52aが当接させることによって、箱体2の面2cに対して吸着パッド53,53の下端開口部53a,53aが相対的に離れることがないようになっている。
【0027】
次に、図4(c)に示されるように、箱体2の面2cに対してバキュームカップ52,52の下端縁52a,52aと吸着パッド53,53の下端開口部53a,53aとがともに当接された状態で、エジェクタ等を利用して分岐部51の内部の空気を排気することにより、箱体2の面2cに吸着パッド53,53の下端開口部53a,53aを吸着させることができる。
【0028】
次いで、進退装置6の板状部材63について詳しく説明する。板状部材63は、前述したように移動体62の移動に併せて上下方向に移動可能となっており、図1に示されるように、板状部材63の下端部63aは、箱体2の面2cを吸着した状態のバキュームカップ52,52の吸着面(吸着パッド53,53の下端開口部53a,53a)よりも下方に下降移動させて箱体2の面2dに当接させることができる。
【0029】
次いで、本実施例の移載装置のピックアップ装置1による箱体2の吸着保持の仕組みについて図5を用いて説明する。尚、箱体2の重心バランスの中心を仮想中央線A1−A1として説明する。図5に示されるように、縦置き状態の箱体2の面2cをバキューム装置5,5により吸着するとともに、箱体2の面2dに板状部材63を下降移動させて当接させることにより、バキューム装置5,5により箱体2が吸着保持された状態で板状部材63により箱体2の傾動を規制することができる。
【0030】
また、縦置き状態の箱体2の前後の仮想中央線A1−A1よりも前方側の位置で箱体2の面2cがバキューム装置5,5により吸着されている場合には、その重心バランスにより、箱体2には色付き矢印方向に回転する力が作用し、箱体2の面2dの上部が板状部材63に当接する。このように、敢えて仮想中央線A1−A1よりも前方側の位置で箱体2の面2cをバキューム装置5,5により吸着することにより、常に所定方向、すなわち板状部材63方向へ箱体2を押し付けることができ、板状部材63方向と反対方向への箱体2の傾動を防止することができる。また、縦置き状態の箱体2に対しては、蓋2bの回動を板状部材63により直接規制でき、確実に開閉を防止することができる。
【0031】
尚、バキューム装置5においては、バキュームカップ52の内部に吸着パッド53が嵌挿されているため、バキュームカップ52の内壁により吸着パッド53のねじれや屈曲を抑えることができる。さらに、バキューム装置5においては、吸着前にはバキュームカップ52から吸着パッド53の下端開口部53aは下方に突出し、かつ吸着時には吸着パッド53が軸方向に縮みバキュームカップ52の下端縁と吸着パッド53の下端縁は略同一平面に位置する。そして、吸着時にはバキュームカップ52の内径側で吸着パッド53により箱体2の面2cを吸着するとともに、吸着パッド53の外径側でバキュームカップ52の下端縁が箱体2の面2cを当接支持するため、箱体2の面2cに対する吸着パッド53の傾きを抑えることができる。
【0032】
また、進退部材として箱体2と当接する面63bの大きい板状部材63を使用することにより、箱体2の面2dに板状部材63を安定して当接させることができ、箱体2のバランスを維持しやすくなっている。
【0033】
次いで、ピックアップ装置1による箱体2の吸着保持動作について図6図8を用いて説明する。尚、図6図8においては、上方が開放したコンテナ20の収容部20aに縦置き状態で複数収容された箱体2A,2B,2C,2D,2Eの内、コンテナ20の前方側の内壁面20bに最も近い箱体2Aを移載する場合のピックアップ装置1の吸着保持動作を例に挙げて説明する。
【0034】
図6(a)に示されるように、先ず、ピックアップ装置1を、3Dカメラから送信された三次元位置情報に基づいて水平方向に移動させて、箱体2Aの後方側に隣接する箱体2Bの上方に配置されるように位置合わせを行う。
【0035】
次に、図6(b)に示されるように、ピックアップ装置1を下降させて箱体2Bの面2cをバキューム装置5,5により箱体2Bの面2cを吸着した状態でピックアップ装置1を後方側に水平移動させることにより、複数の箱体2B〜2Eをまとめてコンテナ20の後方側の内壁面20c側に偏らせて配置する(図6(c)参照)。これにより、箱体2Aと箱体2Bとの隙間の間隔を広げる。尚、バキューム装置5,5により箱体2Bの面2cを吸着した状態で箱体2B〜2Eを内壁面20c側に偏らせる例について説明したが、バキューム装置5,5による吸着に代えて板状部材63を利用して箱体2B〜2Eを偏らせるものであってもよい。
【0036】
次に、図7(a)に示されるように、バキューム装置5,5による箱体2Bの面2cの吸着を解除してピックアップ装置1を上昇させた後、ピックアップ装置1を水平方向に移動させて、板状部材63の下端部63aが箱体2Aと箱体2Bとの隙間の上方に配置されるように位置合わせを行う(図7(b)参照)。続いて、3Dカメラから送信された三次元位置情報に基づいてレール部材61の誘導溝61a,61aに沿って板状部材63を下方に下降移動させて、板状部材63を箱体2Aの面2dと対向するように配置させる(図7(c)参照)。
【0037】
次に、図8(a)に示されるように、ピックアップ装置1を、水平方向に移動させて、板状部材63の面63bを箱体2Aの面2dに当接させる。このとき、ピックアップ装置1を、さらに前方側へ向けて水平方向に移動させることにより板状部材63を箱体2Aの面2dに対して押圧して、箱体2Aをコンテナ20の内壁面20bと板状部材63との間に挟み込んで位置合わせを行う。これによれば、仮に箱体2Aがコンテナ20の内壁面20bに対して傾いて配置されている場合であっても、押圧により箱体2Aを水平方向に回動させて面2gを内壁面20bと面同士で当接させることができる。すなわち、箱体2Aの面2dと板状部材63の面63bとを略並行に面同士で当接させることができる。
【0038】
次に、図8(b)に示されるように、箱体2Aをコンテナ20の内壁面20bと板状部材63との間に挟み込んで位置合わせした状態で、ピックアップ装置1を下降させて箱体2Aの面2cにバキュームカップ52,52の下端縁52a,52aを当接させ、バキューム装置5,5により吸着する。
【0039】
これによれば、箱体2の面2cがバキューム装置5,5により吸着されている状態においては、箱体2Aの面2dが板状部材63方向へ押し付けられた状態となり、バキューム装置5,5と板状部材63により箱体2を上方側と後方側の2方向から挟み込むことができるため、箱体2をより安定して吸着保持することができる。また、箱体2Aの面2dと板状部材63の面63bとの間に生じる摩擦力が高められるため、バキューム装置5,5の吸着力を小さくすることができる。尚、板状部材63の面63bに高い摩擦係数のものを採用し、例えば面63bにブラスト加工を施す、板状部材63本体に高摩擦材を貼付し面63bを構成する等、面63bの摩擦力を高めるようにしてもよい。
【0040】
最後に、バキューム装置5,5と板状部材63により箱体2Aを上方側と後方側の2方向から挟み込んだ状態でピックアップ装置1を上昇させる(図8(c)参照)。このように、箱体2Aの面2dに板状部材63を確実に当接させた状態で、箱体2Aの面2cにバキューム装置5,5を吸着させる態様であるため、箱体2Aの面2cの所定の位置をバキューム装置5,5で吸着保持することができる。
【0041】
また、バキューム装置5,5は、板状部材63の面63bと略並列方向に複数設けられ、複数のバキューム装置5,5により箱体の上面が吸着されるため、板状部材63によって規制できない方向の水平方向の箱体2の傾きを抑制することができる。また、後方視、バキューム装置5,5の間に板状部材63の少なくとも一部が位置する配置であるため、すなわち後方視、箱体2Aとバキューム装置5,5の作用点の間に、箱体2Aと板状部材63の作用点とが位置する配置であるため、箱体2Aを吸着保持したときの箱体の姿勢が安定する。
【0042】
また、板状部材63の下端部63aは、自然状態のバキューム装置5,5の吸着パッド53,53の下端開口部53a,53aより高い位置まで上昇移動できるようになっている。これによれば、移動装置によりピックアップ装置1を水平方向に移動させて箱体2に対して位置合わせを行う際に板状部材63の下端部63aが箱体2に当たることがなくなり邪魔にならない。
【0043】
また、図3(a)に示されるように、板状部材63の下端部63aは、右端側が下方に向けて突出するように傾斜しているため、該突出部分が先行して下降移動することにより、箱体2の側方の隙間が狭い場合であっても板状部材63を箱体2の面に当接させやすくなっている。
【0044】
また、吸着パッド53,53は、バキュームカップ52,52の内壁によってその外周面がガイドされて、箱体2の面2cに対して略鉛直に当接できるようになっているため、吸着不良を起こしにくい。
【0045】
尚、図示しないがコンテナ20内の箱体2Bを移載する場合には、前述した吸着保持動作を行うことにより、箱体2Bを箱体2Aに押し付けて吸着保持を行うことにより、移載を行うことができる。
【0046】
また、コンテナ20の収容部20aに平置き状態で複数収容された箱体2,2,…を移載する場合は、図9及び図10に示すような吸着保持動作となる。また、平置き状態の箱体2Aの前後の仮想中央線A2−A2(図10(b)参照)よりも後方側の位置で箱体2の面2cがバキューム装置5,5により吸着されている場合には、その重量バランスにより箱体2Aには板状部材63方向に回転する力(図示省略)が作用し、箱体2Aの面2dの上部が板状部材63に当接する。これにより、縦置き状態の場合と同様に、常に所定方向、即ち板状部材63方向へ箱体2Aを押し付けることができ、板状部材63方向と反対方向への箱体2Aの傾動を防止することができる。また、平置き状態の場合には、バキューム装置5,5により箱体2Aの蓋2bを構成する面2cが吸着されているが、連設部2eによって蓋2bと連設される収容部2aの側面である面2dに板状部材63を当接させることにより、箱体2Aの面2cと面2dとを略直角に抑えることができるため、蓋2bの回動を規制でき、確実に開閉を防止することができる。
【0047】
また、図11に示されるように、例えば、箱体2Aの面2dに当接させた板状部材63を上昇移動させた状態で、バキューム装置5,5により平置き状態の箱体2Aの蓋2bを構成する面2cを吸着すると、図10に示される本実施例とは異なり、吸着保持された箱体2Aの面2dから板状部材63の面63bが離れて箱体2Aのバランスが崩れ、箱体2Aの蓋2bの回動を規制されないため、箱体2Aの蓋2bが開いてしまう。尚、図示しないが、縦置き状態の箱体2の場合も同様である。
【0048】
さらに、図12に示されるように、ピックアップ装置1は、寸法の大きい箱体21(平置き状態)に対して、箱体21の前後の仮想中央線A3−A3よりも大きく後方側にずれた位置で箱体21の面21cをバキューム装置5により吸着した状態となるが、前述したように、板状部材63方向へ箱体21を押し付けることができ、板状部材63方向と反対方向への箱体2Aの傾動を防止することができるため、寸法が大きい箱体21であっても安定した状態で吸着保持することができる。
【0049】
そのため、寸法の大きい箱体21と縦置き状態の箱体2A及び平置き状態の箱体2Bが混在した状態でコンテナ20に収容されている場合であっても、前述したピックアップ装置1の吸着保持動作を行うことにより全ての箱体を吸着保持することができる。
【0050】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0051】
例えば、前記実施例では、移載装置の移載対象物は、物品を収納可能な箱本体と蓋とが連設され、蓋を開閉可能な箱体2である態様として説明したが、これに限らず、移載装置の移載対象物は、バキューム装置により吸着保持可能なものであれば別形態の箱体やビニール包装体等であってもよい。
【0052】
また、ピックアップ装置1の筐体に制御部が内蔵される態様としてもよい。
【0053】
また、前記実施例では、バキューム装置5は、バキュームカップ52の内径側で実質的な吸着面を構成する吸着パッド53の下端開口部53aにより箱体2の面2cを吸着するとともに、吸着パッド53の外径側でバキュームカップ52の下端縁52aが箱体2の面2cを当接支持することにより、箱体2の面2cに対する吸着パッド53の傾きを抑える態様として説明したが、さらに、バキュームカップ52と吸着パッド53の間の空気も排気する構成として、箱体2の面2cに対する吸着面を大きくしてバキューム装置5の吸着力を高めるようにしてもよい。
【0054】
また、前記実施例では、真空ポンプ等を利用して分岐部51の内部の空気を排気口51aから排気することにより、複数の吸着パッド53,53の内部の空気を同時に排気する態様として説明したが、これに限らず、複数の排気口を設けて吸着パッドの内部の空気をそれぞれ排気できるようにしてもよい。
【0055】
また、吸着パッド53,53の下端開口部53a,53aにそれぞれ複数の貫通孔が配置されたインサート部材を取り付けて吸着力を調整することにより、例えば、ビニール包装体を吸着した後にビニールに皺が残らないようにしてもよい。
【0056】
また、前記実施例では、バキューム装置5のバキュームカップ52,52は、進退装置6の板状部材63に沿って左右に所定間隔離間して一対設けられる態様として説明したが、これに限らず、バキュームカップは2つ以上から構成されてもよく、それぞれが離間せずに左右に連続的に設けられるものであってもよい。また、左右方向に所定寸法幅をもって吸着面が構成されるものであればバキュームカップは1つであってもよい。
【0057】
また、進退装置6において、板状部材63を上下移動させるための移動体62への動力伝達手段は自由に構成されてよく、例えば、電動モータや油圧シリンダ等を用いて上下方向に移動可能にしてもよい。
【0058】
また、前記実施例では、板状部材63は、バキューム装置5に対して上下方向にのみ相対移動する態様として説明したが、これに限らず、板状部材はバキューム装置に対して水平方向に相対移動するものであってもよい。
【0059】
また、前記実施例では、板状部材63の下端部63aは、自然状態のバキューム装置5の吸着パッド53,53の下端開口部53a,53aより上の高さ位置まで上昇移動できる態様と説明したが、これに限らず、板状部材の下端部が吸着パッドの下端開口部以上の高さ位置まで上昇移動できれば、ピックアップ装置の移動の邪魔にならない。さらに、板状部材63による保持を必要としない物品(例えば、ビニール包装体等)を吸着保持する場合においては、板状部材63の下端部63aをバキュームカップ52,52の下端縁52a,52a以上の高さ位置まで上昇移動させておけば、バキューム装置5による物品の吸着の邪魔にならない。
【0060】
また、前記実施例では、移動装置によってピックアップ装置1を上下方向に移動させる態様として説明したが、これに限らず、ピックアップ装置自体が上下方向に移動するものであってもよく、例えばアームの部分を上下に伸縮させるようにしてもよい。
【0061】
上述した移載方法は、
箱体の側面に板状部材を押し当てた状態で、箱体の上面をバキューム装置により吸着することを特徴としている。
この特徴によれば、箱体の上面をバキューム装置で吸着した状態で板状部材を箱体の側面に当接させることにより、箱体のバランスを維持でき、強い吸着力を必要とせずに箱体を安定して吸着保持することができる。
【0062】
また、前記箱体の上面を吸着して移動させた後、前記箱体の側面に板状部材を配置するように下降移動させて、該板状部材により被対象物の方向に前記箱体を押し込んで当接させてから再度箱体の上面を吸着することを特徴としている。
この特徴によれば、箱体の側面に板状部材を確実に当接させた状態で、箱体の上面の所定の位置をバキューム装置で吸着保持することができるため、箱体を安定して吸着保持することができる。
【0063】
また、前記板状部材を前記バキューム装置の吸着面以上の位置まで後退させた状態で前記箱体の上面を吸着することを特徴としている。
この特徴によれば、箱体に対してバキューム装置の位置合わせを行う際に板状部材の下端が箱体に当たることがなくなり邪魔にならない。
【0064】
また、前記板状部材によりコンテナの内壁面に前記箱体を押し込んで当接させてから再度箱体の上面を吸着することを特徴としている。
この特徴によれば、コンテナの内壁面と板状部材により箱体を挟み込んだ状態で箱体の上面の所定の位置をバキューム装置で吸着保持することができるため、箱体を安定して吸着保持することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 ピックアップ装置
2,2A〜2E 箱体
2a 収容部
2b 蓋
2c,2d 面
2e 連設部
2f 前縁部
5 バキューム装置
6 進退装置
20 コンテナ
20b 内壁面
20c 内壁面
51 分岐部
52 バキュームカップ
52a 下端縁
53 吸着パッド
53a 下端開口部
61 レール部材
62 移動体
63 板状部材(進退部材)
63a 下端部
63b 面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12