(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。
以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0018】
〔変性共役ジエン系重合体〕
本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、重量平均分子量が20×10
4以上300×10
4以下であり、後述する一般式(1)又は一般式(2)に示すように、共役ジエン系重合体鎖が変性剤残基に結合する5分岐以上の星型分岐構造を有しており、変性剤残基に少なくとも窒素原子及び珪素原子を有しており、各々共役ジエン系重合体鎖が前記珪素原子に結合しており、前記珪素原子に少なくとも1個のアルコキシ基が結合している、特定構造の、変性共役ジエン系重合体である。
【0019】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、重量平均分子量(Mw)が、20×10
4以上300×10
4以下である。
重量平均分子量が20×10
4以上であることで、加硫物としたときにおける低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランス及び耐摩耗性に優れる。
また、重量平均分子量が300×10
4以下であることで、加硫物とする際の加工性及び充填剤の分散性に優れ、実用上十分な破壊特性が得られる。
変性共役ジエン系重合体の重量平均分子量は、好ましくは50×10
4以上であり、より好ましくは64×10
4以上であり、さらに好ましくは80×10
4以上である。また、上記重量平均分子量は、好ましくは250×10
4以下であり、好ましくは180×10
4以下であり、より好ましくは150×10
4以下である。
【0020】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体、及び後述する変性前の共役ジエン系重合体の重量平均分子量は、GPC測定装置を使用して、RI検出器を用いてクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用して得られる検量線に基づいて測定することができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0021】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体、及び後述する変性前の共役ジエン系重合体の重量平均分子量は、重合開始剤の使用量と単量体使用量の比率によって制御される共役ジエン系重合体鎖の分子量、及び変性剤の種類ならびに使用量によって制御することができる。
【0022】
<共役ジエン系重合体鎖と星型分岐構造>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、後述する一般式(1)又は一般式(2)に示すように、5分子以上の共役ジエン系重合体鎖が変性剤残基に結合する5分岐以上の星型分岐構造を有している。
前記共役ジエン系重合体鎖は、変性共役ジエン系重合体の構成単位であり、例えば、後述する共役ジエン系重合体と変性剤とを反応させることによって生じる、共役ジエン系重合体由来の構造単位である。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体が、7分子以上の共役ジエン系重合体鎖が変性剤残基に結合する7分岐以上の星型分岐構造を有している場合、加硫物としたときに特に優れた低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランス及び耐摩耗性と、実用上十分な破壊特性とを得ることができる、という効果をより奏する。
【0023】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体が、5分子以上の共役ジエン系重合体鎖が変性剤残基に結合する5分岐以上の星型分岐構造を有する場合、当該星型分岐構造を有する変性共役ジエン系重合体は、粘度検出器付きGPC−光散乱法測定により求められる収縮因子(g’)が0.67以下となる傾向にある。
また、7分子以上の共役ジエン系重合体鎖が変性剤残基に結合する7分岐以上の星型分岐構造を有している、当該星型分岐構造を有する変性共役ジエン系重合体は、収縮因子(g’)が0.61以下となる傾向にある。
収縮因子が低い場合は、より分岐が多い傾向にある。
収縮因子は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0024】
<変性剤残基>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体中の変性剤残基は、共役ジエン系重合体鎖に結合される、変性共役ジエン系重合体の構成単位であり、例えば、後述する共役ジエン系重合体と変性剤とを反応させることによって生じる、変性剤由来の構造単位である。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、変性剤残基に少なくとも窒素原子及び珪素原子を有しており、各々共役ジエン系重合体鎖が前記珪素原子に結合しており、更に前記珪素原子に少なくとも1個のアルコキシ基が結合している、後述する一般式(1)又は一般式(2)に示す、特定構造の変性共役ジエン系重合体である。このような構造を有することにより、本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、加硫物としたときに優れた低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランス及び耐摩耗性と、実用上十分な破壊特性が得られる。
【0025】
本実施形態の変性ジエン系重合体は、下記一般式(1)で表される変性共役ジエン系重合体である。
【0027】
(式(1)中、P
1〜P
3は、各々独立に、共役ジエン系重合体鎖を示し、R
3、R
4及びR
7は、各々独立に、炭素数1〜20のアルキレン基を示し、R
2、R
5及びR
8は、各々独立に、炭素数1〜20のアルキル基を示し、R
1、R
6及びR
9は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示す。
x、y及びzは、各々独立に、1〜2の整数を示し、q、s及びuは、各々独立に、0〜3の整数を示し、rは、1〜6の整数を示し、共役ジエン系重合体鎖の数である(x+(y×r)+z)は、5〜20の整数であり、アルコキシ基の数(q+(s×r)+u)は1以上である。)
【0028】
また、本実施形態の変性ジエン系重合体は、下記一般式(2)で表される変性共役ジエン系重合体である。
【0030】
(式(2)中、P
1〜P
3は、各々独立に、共役ジエン系重合体鎖を示し、R
3、R
4、R
7、R
12、R
13は、各々独立に、炭素数1〜20のアルキレン基を示し、R
2、R
5及びR
8は、各々独立に、炭素数1〜20のアルキル基を示し、R
1、R
6及びR
9は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示し、R
10及びR
11は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示す。x、y及びzは、各々独立に、1〜2の整数を示し、q、s及びuは、各々独立に0〜3の整数を示し、rは0〜6の整数を示し、p、tは1〜2の整数を示し、共役ジエン系重合体鎖の数である((x×p)+(y×r)+(z×t))は、7〜20の整数であり、アルコキシシリル基の数である(q×p)+(s×r)+(u×t))は1以上である。)
【0031】
前記一般式(1)又は一般式(2)の構造の変性共役ジエン系重合体は、後述する特定構造の変性剤を用い、ジエン系重合体鎖と当該変性剤を特定割合で反応させることによって得られる。
【0032】
本実施形態の変性ジエン系重合体のアルコキシシリル基の数は1以上であり、その場合、変性共役ジエン系重合体は、加硫物としたときに優れた低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランス及び耐摩耗性と、実用上十分な破壊特性が得られる。
更に、共役ジエン系重合体鎖数に対するアルコキシ基数の比が0.75以下である変性共役ジエン系重合体は、分子量が同程度の重合体と比較して変性反応時の粘度上昇がゆるやかで、製造時に制御しやすい傾向にある。
共役ジエン系重合体鎖数に対するアルコキシ基数の比としては、一般式(1)では(q+(s×r)+u)/(x+y+z)で表され、一般式(2)では((q×p)+(s×r)+(u×t))/((x×p)+(y×r)+(z×t))で表される。共役ジエン系重合体鎖数に対するアルコキシ基数の比が0.5以下の場合、変性反応における溶液の粘度上昇がより小さく、反応の制御が容易である傾向にある。共役ジエン系重合体鎖数に対するアルコキシ基数が多い場合は、縮合反応が起こりやすく、経時変化が起こりやすい傾向にある。
【0033】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系重合体5モル以上に対し変性剤1モルを反応させるものとし、前記変性剤としては、珪素原子に共役ジエン系重合体と結合する官能基を有し、少なくとも窒素原子及び珪素原子を有する特定構造の変性剤を所定量用いることにより得られる傾向である。
【0034】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体においては、上記一般式(1)において、共役ジエン系重合体鎖の数が5〜20であり、一般式(2)において、共役ジエン系重合体鎖の数が7〜20である。
これにより、加硫物とする際の加工性に優れる傾向にある。
共役ジエン系重合体鎖の数は、活性末端を有する共役ジエン系重合体と反応させる変性剤のモル数を調整することにより制御することができる。
【0035】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、重合体鎖を構成する単量体が、共役ジエン化合物又は共役ジエン化合物及び共重合可能な他の単量体から構成される。
共役ジエン化合物としては、炭素数4〜12の共役ジエン化合物が好ましく、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、及び1,3−ヘプタジエンが挙げられる。
これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、1,3−ブタジエン、及びイソプレンが好ましい。
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
共重合可能な他の単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ビニル芳香族化合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
【0036】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体においては、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、1.1以上3.5以下が好ましい。この範囲の分子量分布である変性共役ジエン系重合体は、加硫物とする際の加工性により優れる傾向にあり、加硫物としたときにおける耐摩耗性により優れる傾向にある。分子量分布(Mw/Mn)は、より好ましくは1.5以上3.0以下である。
変性共役ジエン系重合体及び後述する共役ジエン系重合体に対する、数平均分子量、重量平均分子量、分子量分布は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0037】
〔変性共役ジエン系重合体の製造方法〕
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の好ましい製造方法は、有機リチウム化合物の存在下、少なくとも共役ジエン化合物を重合する共役ジエン系重合体を得る重合工程と、前記共役ジエン系重合体5モル以上と、珪素原子に共役ジエン系重合体と結合する官能基を5個以上有し、少なくとも窒素原子及び珪素原子を有する特定の変性剤を反応する変性工程と、を有する。
当該製造方法により、加硫物としたときに優れた低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランス及び耐摩耗性と、実用上十分な破壊特性が得られる変性共役ジエン系重合体が得られる傾向にある。
【0038】
(重合工程)
本実施形態の変性共役ジエン系重合体を製造する工程における重合工程においては、有機リチウム化合物の存在下、少なくとも共役ジエン化合物を重合して共役ジエン系重合体を得る。
重合工程は、リビングアニオン重合反応による成長反応による重合を行うことが好ましく、これにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得ることができ、高変性率の変性ジエン系重合体を得ることができる傾向にある。
【0039】
<共役ジエン系重合体>
共役ジエン系重合体は、単量体として、少なくとも共役ジエン化合物を重合することにより得られ、必要に応じて共役ジエン化合物及び共重合可能な他の単量体を共重合して得られる。
共役ジエン化合物としては、重合可能な共役ジエン化合物であれば特に限定されないが、1分子当り4〜12の炭素原子を含む共役ジエン化合物が好ましく、より好ましくは4〜8の炭素原子を含む共役ジエン化合物である。このような共役ジエン化合物としては、以下のものに限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、及び1,3−ヘプタジエンが挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、1,3−ブタジエン、及びイソプレンが好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
共重合可能な他の単量体としては、共役ジエン化合物と共重合可能な単量体であれば特に限定されないが、ビニル置換芳香族化合物が挙げられ、例えばモノビニル芳香族化合物が好ましい。
モノビニル芳香族化合物としては、以下のものに限定されないが、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、及びジフェニルエチレンが挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、スチレンが好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
共役ジエン化合物及び/又はビニル置換芳香族化合物中に、アレン類、アセチレン類等が不純物として含有されていると、後述する反応工程の反応を阻害するおそれがある。そのため、これらの不純物の含有量濃度(質量)の合計は、200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましい。
アレン類としては、例えば、プロパジエン、及び1,2−ブタジエンが挙げられる。アセチレン類としては、例えば、エチルアセチレン、及びビニルアセチレンが挙げられる。
【0042】
共役ジエン系重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。共役ジエン系重合体をゴム状重合体とするためには、共役ジエン系重合体の単量体全体に対して、共役ジエン化合物を40質量%以上用いることが好ましく、55質量%以上用いることがより好ましい。
【0043】
ランダム共重合体としては、以下ものに限定されないが、例えば、ブタジエン−イソプレンランダム共重合体等の2種以上の共役ジエン化合物からなるランダム共重合体、ブタジエン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、ブタジエン−イソプレン−スチレンランダム共重合体の共役ジエンとビニル置換芳香族化合物とからなるランダム共重合体が挙げられる。共重合体鎖中の各単量体の組成分布としては、特に限定されず、例えば、統計的ランダムな組成に近い完全ランダム共重合体、組成がテーパー状に分布しているテーパー(勾配)ランダム共重合体が挙げられる。共役ジエンの結合様式、すなわち1,4−結合や1,2−結合等の組成は、均一であってもよいし、分布があってもよい。
【0044】
ブロック共重合体としては、以下のものに限定されないが、例えば、ブロックが2個からなる2型ブロック共重合体(ジブロック)、3個からなる3型ブロック共重合体(トリブロック)、4個からなる4型ブロック共重合体(テトラブロック)が挙げられる。1つのブロックを構成する重合体としては、1つの種類の単量体からなる重合体であっても、2種以上の単量体からなる共重合体であってもよい。例えば、1,3−ブタジエンからなる重合体ブロックを「B」で表し、1,3−ブタジエンとイソプレンの共重合体を「B/I」で表し、1,3−ブタジエンとスチレンの共重合体を「B/S」で表し、スチレンからなる重合体ブロックを「S」で表すと、B−B/I2型ブロック共重合体、B−B/S2型ブロック共重合体、S−B2型ブロック共重合体、B−B/S−S3型ブロック共重合体、S−B−S3型ブロック共重合体、S−B−S−B4型ブロック共重合体等で表される。
【0045】
上記式において、各ブロックの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。また、1つの重合体ブロックが2種類の単量体A及びBからなる共重合体である場合、ブロック中のA及びBは均一に分布していても、又はテーパー状に分布していてもよい。
【0046】
<重合開始剤>
重合工程においては、所定の重合開始剤を用いる。
重合開始剤としては、有機リチウム化合物を用いられ、少なくとも有機モノリチウム化合物を用いることが好ましい。
有機モノリチウム化合物としては、以下のものに限定されないが、例えば、低分子化合物、可溶化したオリゴマーの有機モノリチウム化合物が挙げられる。
また、有機モノリチウム化合物としては、その有機基とそのリチウムの結合様式において、例えば、炭素−リチウム結合を有する化合物、窒素−リチウム結合を有する化合物、及び錫−リチウム結合を有する化合物が挙げられる。
【0047】
有機モノリチウム化合物の重合開始剤としての使用量は、目標とする共役ジエン系重合体又は変性共役ジエン系重合体の分子量によって決めることが好ましい。
重合開始剤の使用量に対する、共役ジエン化合物等の単量体の使用量は重合度に関係し、すなわち、数平均分子量及び/又は重量平均分子量に関係する傾向にある。したがって、分子量を増大させるためには、重合開始剤を減らす方向に調整するとよく、分子量を低下させるためには、重合開始剤量を増やす方向に調整するとよい。
【0048】
重合開始剤である有機モノリチウム化合物は、共役ジエン系重合体へ窒素原子を導入する一つの手法で用いられるという観点から、当該重合開始剤として、置換アミノ基を有するアルキルリチウム化合物、又は置換アミノリチウム化合物を用いることが好ましい。この場合、重合開始末端にアミノ基からなる窒素原子を有する共役ジエン系重合体が得られる。置換アミノ基とは、活性水素を有しない、又は、活性水素を保護した構造のアミノ基である。
【0049】
重合開始剤である有機リチウム化合物としては、上記のように有機モノリチウム化合物が好ましく、分子中に置換アミノ基を有していても有していなくてもよい。工業的入手の容易さ及び重合反応のコントロールの容易さの観点から、好ましくは、アルキルリチウム化合物である。この場合、重合開始末端にアルキル基を有する、共役ジエン系重合体が得られる。
アルキルリチウム化合物としては、以下のものに限定されないが、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、及びスチルベンリチウムが挙げられる。アルキルリチウム化合物としては、工業的入手の容易さ及び重合反応のコントロールの容易さの観点から、n−ブチルリチウム、及びsec−ブチルリチウムが好ましい。
【0050】
置換アミノ基としては、アミノ基の水素が、各々独立して、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜14のシクロアルキル基、及び炭素数6〜20のアラルキル基、保護基からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されたアミノ基であり、置換基は、結合して隣接した窒素原子とともに環状構造を形成していてもよく、その場合の置換基は炭素数5〜12のアルキル基を示し、その一部分に不飽和結合又は分岐構造を有していてもよい。なお、保護基としてはアルキル置換シリル基が好ましい。
【0051】
重合工程において適用する重合反応様式としては、以下のものに限定されないが、例えば、回分式(「バッチ式」ともいう。)、連続式の重合反応様式が挙げられる。
連続式においては、1個又は2個以上の連結された反応器を用いることができる。連続式の反応器は、例えば、撹拌機付きの槽型、管型のものが用いられる。連続式においては、好ましくは、連続的に単量体、不活性溶媒、及び重合開始剤が反応器にフィードされ、当該反応器内で重合体を含む重合体溶液が得られ、連続的に重合体溶液が排出される。
回分式の反応器は、例えば、攪拌機付の槽型のものが用いられる。回分式においては、好ましくは、単量体、不活性溶媒、及び重合開始剤がフィードされ、必要により単量体が重合中に連続的又は断続的に追加され、前記反応器内で重合体を含む重合体溶液が得られ、重合終了後に重合体溶液が排出される。
重合工程において、高い割合で活性末端を有する共役ジエン系重合体を得るためには、重合体を連続的に排出し、短時間で次の反応に供することが可能な、連続式が好ましい。
【0052】
重合工程においては、不活性溶媒中でモノマーを重合することが好ましい。
不活性溶媒としては、例えば、飽和炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が挙げられる。具体的な炭化水素系溶媒としては、以下のものに限定されないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる炭化水素が挙げられる。重合反応に供する前に、不純物であるアレン類、及びアセチレン類を有機金属化合物で処理することで、高濃度の活性末端を有する共役ジエン系重合体が得られる傾向にあり、高い変性率の変性共役ジエン系重合体が得られる傾向にあるため好ましい。
【0053】
重合工程においては、極性化合物を添加してもよい。芳香族ビニル化合物を共役ジエン化合物とランダムに共重合させることができ、共役ジエン部のミクロ構造を制御するためのビニル化剤としても用いることができる傾向にある。また、重合反応の促進等にも効果がある傾向にある。
【0054】
極性化合物としては、以下のものに限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン等のエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−tert−アミラート、カリウム−tert−ブチラート、ナトリウム−tert−ブチラート、ナトリウムアミラート等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物等を用いることができる。
これらの極性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
極性化合物の使用量は、特に限定されず、目的等に応じて選択することができるが、重合開始剤1モルに対して、0.01モル以上100モル以下であることが好ましい。このような極性化合物(ビニル化剤)は重合体共役ジエン部分のミクロ構造の調節剤として、所望のビニル結合量に応じて、適量用いることができる。多くの極性化合物は、同時に共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合において有効なランダム化効果を有し、芳香族ビニル化合物の分布の調整やスチレンブロック量の調整剤として用いることができる傾向にある。共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをランダム化する方法としては、例えば、特開昭59−140211号公報に記載されているような、スチレンの全量と1,3−ブタジエンの一部とで共重合反応を開始させ、共重合反応の途中に残りの1,3−ブタジエンを断続的に添加する方法を用いてもよい。
【0056】
重合工程において、重合温度は、リビングアニオン重合が進行する温度であることが好ましく、生産性の観点から、0℃以上であることがより好ましく、120℃以下であることがさらに好ましい。このような範囲にあることで、重合終了後の活性末端に対する変性剤の反応量を充分に確保することができる傾向にある。よりさらに好ましくは50℃以上100℃以下、さらに60℃以上80℃以下が好適である。
【0057】
重合工程において得られる、変性反応工程前の共役ジエン系重合体は、好ましくは110℃で測定されるムーニー粘度が10以上90以下であり、より好ましくは15以上85以下であり、よりさらに好ましくは20以上60以下である。この範囲であると、本実施形態の変性共役ジエン系重合体は加工性及び耐摩耗性に優れる傾向にある。
【0058】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の製造方法の重合工程で得られる共役ジエン系重合体、又は本実施形態の変性共役ジエン系重合体中の結合共役ジエン量は、特に限定されないが、40質量%以上100質量%以下であることが好ましく、55質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
また、本実施形態の共役ジエン系重合体又は変性共役ジエン系重合体中の結合芳香族ビニル量は、特に限定されないが、0質量%以上60質量%以下であることが好ましく、20質量%以上45質量%以下であることがより好ましい。
結合共役ジエン量及び結合芳香族ビニル量が上記範囲であると、加硫物としたときにおける低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランス及び耐摩耗性と、破壊特性とにより優れる傾向にある。
ここで、結合芳香族ビニル量は、フェニル基の紫外吸光によって測定でき、ここから結合共役ジエン量も求めることができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法に準じて測定することができる。
【0059】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の製造方法の重合工程で得られる共役ジエン系重合体又は本実施形態の変性共役ジエン系重合体において、共役ジエン結合単位中のビニル結合量は、特に限定されないが、10モル%以上75モル%以下であることが好ましく、20モル%以上65モル%以下であることがより好ましい。
ビニル結合量が上記範囲であると、加硫物としたときにおける低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランス及び耐摩耗性と、破壊強度とにより優れる傾向にある。ここで、変性ジエン系重合体がブタジエンとスチレンとの共重合体である場合には、ハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry,21,923(1949))により、ブタジエン結合単位中のビニル結合量(1,2−結合量)を求めることができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0060】
変性共役ジエン系重合体のミクロ構造については、上記変性共役ジエン系重合体中の各結合量が上記範囲にあり、さらに、変性共役ジエン系重合体のガラス転移温度が−45℃以上−15℃以下の範囲にあるときに、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスにより一層優れた加硫物を得ることができる傾向にある。
ガラス転移温度については、ISO 22768:2006に従い、所定の温度範囲で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とする。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0061】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体が、共役ジエン−芳香族ビニル共重合体である場合、芳香族ビニル単位が30以上連鎖しているブロックの数が、少ないか又はないものであることが好ましい。より具体的には、共重合体がブタジエン−スチレン共重合体の場合、Kolthoffの方法(I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により共重合体を分解し、メタノールに不溶なポリスチレン量を分析する公知の方法において、芳香族ビニル単位が30以上連鎖しているブロックが、共重合体の総量に対して、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下である。
【0062】
本実施形態の共役ジエン系重合体が共役ジエン−芳香族ビニル共重合体である場合、芳香族ビニル単位が単独で存在する割合が多いことが好ましい。具体的には、共重合体がブタジエン−スチレン共重合体の場合、田中らの方法(Polymer,22,1721(1981))として知られているオゾン分解による方法で、前記共重合体を分解し、GPCによりスチレン連鎖分布を分析した場合、全結合スチレン量に対し、単離スチレン量が40質量%以上であり、スチレンの連鎖が8個以上の連鎖スチレン構造が5.0質量%以下であることが望ましい。この場合、得られる加硫ゴムが特に低いヒステリシスロスである優れた性能となる。
【0063】
(変性工程)
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の製造方法の変性工程においては、上記重合工程で得られた共役ジエン系重合体の活性末端に対して、5個以上の結合し得る官能基を有し、変性剤分子中に少なくとも窒素原子及び珪素原子を有しており、当該珪素原子はアルコキシ基を有している変性剤を反応させ、アルコキシシリル基を残存させる方法によって、変性共役ジエン系重合体を得る。
共役ジエン系重合体の活性末端と結合し得る官能基としては、例えばアルコキシシリル基、ハロゲン基、エポキシ基、及びカルボニル基が挙げられる。
また、用いる変性剤における結合し得る官能基としては、好ましくはアルコキシシリル基及びハロゲン基であり、より好ましくはアルコキシシリル基である。
また、変性剤残基において、残存したアルコキシシリル基は仕上げ時の水等によりシラノール(Si−OH基)となり得る傾向にある。
【0064】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の構造である、上述した一般式(1)の変性共役ジエン系重合体は、好ましくは、上記重合工程で得られる共役ジエン系重合体の活性末端と、下記一般式(3)で表される多官能変性剤を反応させる方法により製造することができる。
【0066】
(式(3)中、A
1〜A
3は、各々独立に、共役ジエン系重合体鎖と結合し得る官能基を示し、d、e及びfは、各々独立に1〜3の整数を示し、2以上の場合のA
1、A
2及びA
3のそれぞれは異なった官能基であってもよい。
R
3、R
4及びR
7は、各々独立に、炭素数1〜20のアルキレン基を示し、R
2、R
5及びR
8は、各々独立に、炭素数1〜20のアルキル基を示し、R
1、R
6及びR
9は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示し、rは、1〜6の整数を示す。)
【0067】
また、A
1〜A
3は、共役ジエン系重合体鎖と結合し得る官能基であって、少なくともアルコキシ基が1個以上である。
官能基は好ましくは、アルコキシ基、ハロゲン基、エポキシ基、又はカルボニル基であり、より好ましくは全てがアルコキシ基である。
【0068】
前記一般式(3)の変性剤としては、例えば、官能基が全てアルコキシ基である場合として、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3−トリプロポキシシリルプロピル)アミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)−(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)アミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)−(3−ジエトキシメチルプロピル)アミン、ビス(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、テトラキス(3−トリメトキシシリルプロピル)−1,3−プロパンジアミン、テトラキス(3−トリエトキシシリルプロピル)−1,3−プロパンジアミン、テトラキス(3−トリメトキシシリルプロピル)−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラキス(3−トリメトキシシリルプロピル)−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ペンタキス(3−トリメトキシシリルプロピル)−ジエチレントリアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)−ビス(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1,3−プロパンジアミンが挙げられる。
また、前記式(3)の変性剤としては、例えば、官能基がアルコキシシリル基及び他の官能基である場合として、N
1,N
1−ビス(3−ジクロルメチルシリルプロピル)−N
2,N
2−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)−1,3−プロパンジアミン、N
1,N
1,N
3,N
3−テトラ(3−トリメトキシシリルプロピル)−N
2−(3−ジクロルメチルシリルプロピル)−ジエチレントリアミン、ペンタキス(3−トリメトキシシリルプロピル)−ジプロピレントリアミンが挙げられる。
官能基がアルコキシ基及び他の官能基である場合として、N
1,N
1−ビス(3−ジクロルメチルシリルプロピル)−N
2,N
2−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)−1,3−プロパンジアミン、N
1,N
1,N
3,N
3−テトラ(3−トリメトキシシリルプロピル)−N
2−(3−ジクロルメチルシリルプロピル)−ジエチレントリアミンが挙げられる。
【0069】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体構造である上記一般式(2)の変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系重合体の活性末端と、下記一般式(4)で表される多官能変性剤とを反応させる方法により製造することができる。
【0071】
(式(4)中、A
1〜A
3は、各々独立に、共役ジエン系重合体鎖と結合し得る官能基を示し、d、e及びfは、各々独立に1〜3の整数を示し、2以上の場合のA
1、A
2及びA
3のそれぞれは異なった官能基であってもよい。
R
3、R
4、R
7、R
12、R
13は、各々独立に、炭素数1〜20のアルキレン基を示し、R
2、R
5及びR
8は、各々独立に、炭素数1〜20のアルキル基を示し、R
1、R
6及びR
9は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示し、R
10及びR
11は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示す。p及びtは、各々独立に、1〜2の整数を示し、rは、0〜6の整数を示す。)
【0072】
A
1〜A
3は、共役ジエン系重合体鎖と結合し得る官能基であって、少なくともアルコキシ基が1個以上である。
官能基は好ましくは、アルコキシ基、ハロゲン基、エポキシ基又は、カルボニル基を有する炭化水素基」であり、より好ましくは全てがアルコキシ基である。
【0073】
前記式(4)の変性剤としては、官能基が全てアルコキシ基である場合として、例えば、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)−メチル−1,3−プロパンジアミン、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)−メチル−1,3−プロパンジアミン、N
1,N
2,N
3−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)−N
1,N
3−ジメチル−ジエチレントリアミンが挙げられる。
また、例えば、テトラキス(3−トリメトキシシリルプロピル)−1,3−プロパンジアミン、テトラキス(3−トリエトキシシリルプロピル)−1,3−プロパンジアミン、テトラキス(3−トリメトキシシリルプロピル)−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラキス(3−トリメトキシシリルプロピル)−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ペンタキス(3−トリメトキシシリルプロピル)−ジエチレントリアミン、ペンタキス(3−トリメトキシシリルプロピル)−ジプロピレントリアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)−ビス(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1,3−プロパンジアミン、官能基がアルコキシシリル基及び他の官能基である場合として、N
1,N
1−ビス(3−ジクロルメチルシリルプロピル)−N
2,N
2−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)−1,3−プロパンジアミン、N
1,N
1,N
3,N
3−テトラ(3−トリメトキシシリルプロピル)−N
2−(3−ジクロルメチルシリルプロピル)−ジエチレントリアミンが挙げられる。
【0074】
変性工程で用いる変性剤における官能基が全てアルコキシ基である場合、変性剤におけるアルコキシ基の数は、結合すべき共役ジエン系重合体の数及び残存すべきアルコキシ基の数の和であることが好ましい。
官能基がアルコキシ基及び他の官能基である場合、反応速度の違いによって、アルコキシ基が未反応で残存する方法を用いることが好ましい。例えば、アルコキシシリル基及びハロゲン基の場合、ハロゲン基の反応が早いので、共役ジエン系重合体末端とハロゲン基の反応が先に起こり、アルコキシ基が残る傾向である。その場合、変性剤におけるハロゲン数は、結合すべき共役ジエン系重合体の数と同じ又はそれ未満であり、変性剤におけるアルコキシ基数は残存すべきアルコキシ基の数と同じ又はそれよりも大きい数とする方法が好ましい。
なお、ハロゲンがハロゲン化シリル基を形成している場合、ハロゲン基が未反応で残った場合、アルカリ水中で加水分解して、シラノール基を形成する傾向がある。
ハロゲン基を用いる場合は、ハロゲン又はハロゲン化水素が腐食性とならないよう中和が必要な場合がある。
【0075】
変性工程において、変性剤中のアルコキシ基は必ずしも全てが反応しない場合がある。例えば、1個の珪素原子に対し3個のアルコキシ基を有する、すなわちトリアルコキシシリル基1モルに対し、3モルの窒素含有共役ジエン系重合体の活性末端を反応させる場合、2モルまでの窒素含有共役ジエン系重合体との反応は起こるが、1モルのアルコキシ基は未反応で残存する傾向にある。これは、1モルの窒素含有共役ジエン系重合体が、反応せずに未反応の重合体として残存することから確かめられる。なお、アルコキシ基は多く反応させることにより、仕上げ時、貯蔵時に縮合反応を起こすことに起因して、重合体粘度が大きく変わることを抑制できる傾向にある。特に、トリアルコキシシラン基1モルに対して、2モルの共役ジエン共重合体が反応したものが変性共役ジエン共重合体中に4以上、すなわち分岐度が8以上であり、かつ、その他に反応可能なアルコキシ基が変性共役ジエン共重合体中に存在しないとき、縮合反応を抑制できる傾向にある。
【0076】
変性剤の添加量は、添加した変性剤の反応可能基全体のモル数と、活性末端を有する共役ジエン系重合体のモル数の比が、添加した変性剤の反応可能基全体のモル数/活性末端を有する共役ジエン系重合体のモル数=0.5以上2.0以下であることが好ましく、0.7以上1.8以下であることがより好ましく、0.8以上1.5以下であることがより好ましい。この範囲に変性剤の添加量を制御することによって、高い変性率を得られる傾向にある。
ただし、トリアルコキシシリル基1モルに対して、反応可能基は2モル、ジアルコキシシリル基1モルに対して、反応可能基は1モルと数えるものとする。
【0077】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の変性率は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
変性率が30質量%以上であることで、加硫物とする際に添加する充填剤、例えばシリカの分散性が改善される傾向にある。
変性率は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0078】
変性工程の反応温度は、好ましくは共役ジエン系重合体の重合温度と同様の温度であり、より好ましくは0℃以上120℃以下であり、さらに好ましくは50℃以上100℃以下である。また、重合工程後から変性剤が添加されるまでの温度変化は、好ましくは10℃以下であり、より好ましくは5℃以下である。
【0079】
変性工程の反応時間は、好ましくは10秒以上であり、より好ましくは30秒以上である。重合工程の終了時から変性工程の開始時までの時間は、より短い方が好ましいが、より好ましくは5分以内である。そうすることにより、高い変性率が得られる傾向にある。
【0080】
変性工程における混合は、機械的な攪拌、スタティックミキサーによる攪拌等のいずれでもよい。重合工程が連続式である場合は、変性工程も連続式であることが好ましい。変性工程における反応器は、例えば、撹拌機付きの槽型、管型のものが用いられる。変性剤は、不活性溶媒により希釈して反応器に連続的に供給してもよい。重合工程が回分式の場合は、重合反応器に変性剤を投入する方法でも、別の反応器に移送して変性工程を行ってもよい。
【0081】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の製造方法においては、変性工程の後、共重合体溶液に、必要に応じて、失活剤、中和剤等を添加してもよい。
失活剤としては、以下のものに限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール等が挙げられる。
中和剤としては、以下のものに限定されないが、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、バーサチック酸(炭素数9〜11個で、10個を中心とする、分岐の多いカルボン酸混合物)等のカルボン酸;無機酸の水溶液、炭酸ガスが挙げられる。
【0082】
本実施形態においては、反応工程後、又は反応工程前に、縮合促進剤の存在下で縮合反応させる縮合反応工程を設けることもできる。
【0083】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体においては、重合後のゲル生成を防止する観点、及び加工時の安定性を向上させる観点から、ゴム用安定剤を添加することが好ましい。
ゴム用安定剤としては、以下のものに限定されず、公知のものを用いることができるが、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェノール)プロピネート、2−メチル−4,6−ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール等の酸化防止剤が好ましい。
【0084】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体には、加工性をより改善するために、必要に応じて、伸展油を変性共役ジエン系共重合体に添加した、油展変性共役ジエン系重合体としてもよい。
伸展油を変性共役ジエン系重合体に添加する方法としては、以下のものに限定されないが、伸展油を重合体溶液に加え、混合して、油展共重合体溶液としたものを脱溶媒する方法が好ましい。
伸展油としては、例えば、アロマ油、ナフテン油、パラフィン油等が挙げられる。これらの中でも、環境安全上の観点、並びにオイルブリード防止及びウェットグリップ特性の観点から、IP346法による多環芳香族(PCA)成分が3質量%以下であるアロマ代替油が好ましい。アロマ代替油としては、Kautschuk Gummi Kunststoffe 52(12)799(1999)に示されるTDAE(Treated Distillate Aromatic Extracts)、MES(Mild Extraction Solvate)等の他、RAE(Residual Aromatic Extracts)が挙げられる。
伸展油の添加量は、特に限定されないが、変性共役ジエン系重合体100質量部に対し、1質量部以上60質量部以下が好ましく、5質量部以上37.5質量部以下がより好ましい。
【0085】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体を、重合体溶液から取得する方法としては、公知の方法を用いることができる。以下に限定されるものではないが、例えば、スチームストリッピング等で溶媒を分離した後、重合体を濾別し、さらにそれを脱水及び乾燥して重合体を取得する方法、フラッシングタンクで濃縮し、さらにベント押出し機等で脱揮する方法、ドラムドライヤー等で直接脱揮する方法が挙げられる。
【0086】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、加硫物として好適に用いられる。
加硫物としては、例えば、タイヤ、ホース、靴底、防振ゴム、自動車部品、免振ゴムが挙げられ、また、耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂等の樹脂強化用ゴムも挙げられる。
特に、変性共役ジエン系重合体は、タイヤ用のトレッドゴムの組成物に好適に用いられる。
加硫物は、例えば、本実施形態の変性共役ジエン系重合体を、必要に応じて、シリカ系無機充填剤、カーボンブラック等の無機充填剤、本実施形態の変性共役ジエン系重合体以外のゴム状重合体、シランカップリング剤、ゴム用軟化剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤等と混練して、変性共役ジエン系重合体組成物とした後、加熱して加硫することにより得ることができる。
【0087】
〔ゴム組成物〕
本実施形態のゴム組成物は、ゴム成分と、当該ゴム成分100質量部に対して5.0質量部以上150質量部以下の充填剤とを含む。
また、前記ゴム成分は、当該ゴム成分の総量(100質量%)に対して、上述した本実施形態の変性共役ジエン系重合体を10質量%以上含む。
また、前記充填剤は、シリカ系無機充填剤を含むことが好ましい。
ゴム組成物は、シリカ系無機充填剤を分散させることで、加硫物とする際の加工性により優れる傾向にあり、加硫物としたときにおける低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランス及び耐摩耗性と、破壊強度と、により優れる傾向にある。
本実施形態のゴム組成物が、タイヤ、防振ゴム等の自動車部品、靴等の加硫ゴム用途に用いられる場合にも、シリカ系無機充填剤を含むことが好ましい。
【0088】
ゴム組成物においては、本実施形態の変性共役ジエン系重合体以外のゴム状重合体(以下、単に「ゴム状重合体」という。)を、本実施形態の変性ジエン系重合体と組み合わせて使用できる。
このようなゴム状重合体としては、以下のものに限定されないが、例えば、共役ジエン系重合体又はその水素添加物、共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体又はその水素添加物、共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体又はその水素添加物、非ジエン系重合体、天然ゴムが挙げられる。
具体的なゴム状重合体としては、以下のものに限定されないが、例えば、ブタジエンゴム又はその水素添加物、イソプレンゴム又はその水素添加物、スチレン−ブタジエンゴム又はその水素添加物、スチレン−ブタジエンブロック共重合体又はその水素添加物、スチレン−イソプレンブロック共重合体又はその水素添加物等のスチレン系エラストマー、アクリロニトリル−ブタジエンゴム又はその水素添加物が挙げられる。
【0089】
非ジエン系重合体としては、以下のものに限定されないが、例えば、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−ヘキセンゴム、エチレン−オクテンゴム等のオレフィン系エラストマー、ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、α、β−不飽和ニトリル−アクリル酸エステル−共役ジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、及び多硫化ゴムが挙げられる。
【0090】
天然ゴムとしては、以下のものに限定されないが、例えば、スモークドシートであるRSS3〜5号、SMR、エポキシ化天然ゴムが挙げられる。
【0091】
上述した各種ゴム状重合体は、水酸基、アミノ基等の極性を有する官能基を付与した変性ゴムであってもよい。タイヤ用に用いる場合、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、天然ゴム、及びブチルゴムが好ましく用いられる。
【0092】
ゴム状重合体の重量平均分子量は、性能と加工特性のバランスの観点から、2000以上2000000以下であることが好ましく、5000以上1500000以下であることがより好ましい。また、低分子量のゴム状重合体、いわゆる液状ゴムを用いることもできる。これらのゴム状重合体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0093】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体とゴム状重合体とを含むゴム組成物とする場合において、ゴム状重合体に対する変性共役ジエン系重合体の含有比率(質量比)は、(変性共役ジエン系重合体/ゴム状重合体)として、10/90以上100/0以下が好ましく、20/80以上90/10以下がより好ましく、50/50以上80/20以下がさらに好ましい。したがって、ゴム成分は、当該ゴム成分の総量(100質量部)に対して、本実施形態の変性共役ジエン系重合体を、好ましくは10質量部以上100質量部以下含み、より好ましくは20質量部以上90質量部以下含み、さらに好ましくは50質量部以上80質量部以下含む。
(変性共役ジエン系重合体/ゴム状重合体)の含有比率が上記範囲であると、加硫物としたときにおける低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランス及び耐摩耗性が優れ、かつ高い破壊強度も得られる。
【0094】
本実施形態のゴム組成物に用いる充填剤としては、以下のものに限定されないが、例えば、シリカ系無機充填剤、カーボンブラック、金属酸化物、金属水酸化物が挙げられる。この中でも、シリカ系無機充填剤が好ましい。
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0095】
ゴム組成物中の充填剤の含有量は、変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して5.0質量部以上150質量部であることが好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
充填剤の含有量は、充填剤の添加効果が発現する観点から、5.0質量部以上であり、充填剤を十分に分散させ、組成物の加工性及び機械強度を実用的に十分なものとする観点から、150質量部以下である。
【0096】
シリカ系無機充填剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができるが、SiO
2又はSi
3Alを構成単位として含む固体粒子が好ましく、SiO
2又はSi
3Alを構成単位の主成分として含む固体粒子がより好ましい。ここで、主成分とは、シリカ系無機充填剤中に50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上含有される成分をいう。
【0097】
シリカ系無機充填剤としては、以下のものに限定されないが、例えば、シリカ、クレイ、タルク、マイカ、珪藻土、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、ガラス繊維等の無機繊維状物質が挙げられる。
また、表面を疎水化したシリカ系無機充填剤、シリカ系無機充填剤とシリカ系以外の無機充填剤との混合物も挙げられる。
これらの中でも、強度及び耐摩耗性等の観点から、シリカ及びガラス繊維が好ましく、シリカがより好ましい。シリカとしては、例えば、乾式シリカ、湿式シリカ、合成ケイ酸塩シリカが挙げられる。これらのシリカの中でも、破壊特性の改良効果及びウェットスキッド抵抗性のバランスに優れる観点から、湿式シリカが好ましい。
【0098】
ゴム組成物の実用上良好な耐摩耗性及び破壊特性を得る観点から、シリカ系無機充填剤のBET吸着法で求められる窒素吸着比表面積は、100m
2/g以上300m
2/g以下であることが好ましく、170m
2/g以上250m
2/g以下であることがより好ましい。
また必要に応じて、比較的比表面積が小さい、例えば、比表面積が200m
2/g以下のシリカ系無機充填剤と、比較的比表面積の大きい、例えば、200m
2/g以上のシリカ系無機充填剤とを組み合わせて用いることができる。
本実施形態において、特に比較的比表面積の大きい、例えば、200m
2/g以上のシリカ系無機充填剤を用いる場合に、変性共役ジエン系重合体は、シリカの分散性を改善し、特に耐摩耗性の向上に効果があり、良好な破壊特性と低ヒステリシスロス性とを高度にバランスさせることができる傾向にある。
【0099】
ゴム組成物中のシリカ系無機充填剤の含有量は、変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して、5.0質量部以上150質量部であることが好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
ゴム組成物中のシリカ系無機充填剤の含有量は、無機充填剤の添加効果が発現する観点から、5.0質量部以上であり、無機充填剤を十分に分散させ、組成物の加工性及び機械強度を実用的に十分なものとする観点から、150質量部以下である。
【0100】
カーボンブラックとしては、以下のものに限定されないが、例えば、SRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが挙げられる。
これらの中でも、窒素吸着比表面積が50m
2/g以上、かつ、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が80mL/100g以下のカーボンブラックが好ましい。
【0101】
カーボンブラックの含有量は、変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上100質量部以下が好ましく、3.0質量部以上100質量部以下がより好ましく、5.0質量部以上50質量部以下がさらに好ましい。
カーボンブラックの含有量は、ドライグリップ性能、導電性等のタイヤ等の用途に求められる性能を発現する観点から、0.5質量部以上とすることが好ましく、分散性の観点から、100質量部以下とすることが好ましい。
【0102】
金属酸化物とは、化学式MxOy(Mは、金属原子を示し、x及びyは、各々独立して、1〜6の整数を示す。)を構成単位の主成分とする固体粒子のことをいう。
金属酸化物としては、以下のものに限定されないが、例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、及び酸化亜鉛が挙げられる。
金属水酸化物としては、以下のものに限定されないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化ジルコニウムが挙げられる。
【0103】
ゴム組成物は、シランカップリング剤を含んでもよい。
シランカップリング剤は、ゴム成分と無機充填剤との相互作用を緊密にする機能を有しており、ゴム成分及びシリカ系無機充填剤のそれぞれに対する親和性又は結合性の基を有しており、硫黄結合部分とアルコキシシリル基又はシラノール基部分とを一分子中に有する化合物が好ましい。
このような化合物としては、例えば、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド、ビス−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−テトラスルフィドが挙げられる。
【0104】
シランカップリング剤の含有量は、上述した充填剤100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下が好ましく、0.5質量部以上20質量部以下がより好ましく、1.0質量部以上15質量部以下がさらに好ましい。シランカップリング剤の含有量が上記範囲であると、シランカップリング剤による上記添加効果を一層顕著なものにできる傾向にある。
【0105】
ゴム組成物は、その加工性の改良を図る観点から、ゴム用軟化剤を含んでもよい。
ゴム用軟化剤としては、鉱物油、又は、液状若しくは低分子量の合成軟化剤が好適である。
ゴムの軟化、増容、及び加工性の向上を図るために使用されているプロセスオイル又はエクステンダーオイルと呼ばれる鉱物油系ゴム用軟化剤は、芳香族環、ナフテン環、及びパラフィン鎖の混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素中50%以上を占めるものがパラフィン系と呼ばれ、ナフテン環炭素数が全炭素中30%以上45%以下を占めるものがナフテン系、芳香族炭素数が全炭素中30%を超えて占めるものが芳香族系と呼ばれている。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体が共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物との共重合体である場合、用いるゴム用軟化剤としては、適度な芳香族含量を有するものが共重合体との馴染みがよい傾向にあるため好ましい。
【0106】
ゴム用軟化剤の含有量は、変性共役ジエン系重合体を含有するゴム成分100質量部に対して、0質量部以上100質量部以下が好ましく、10質量部以上90質量部以下がより好ましく、30質量部以上90質量部以下がさらに好ましい。
ゴム用軟化剤の含有量がゴム成分100質量部に対して100質量部以下であることで、ブリードアウトを抑制し、ゴム組成物表面のベタツキを抑制する傾向にある。
【0107】
変性共役ジエン系重合体とその他のゴム状重合体、シリカ系無機充填剤、カーボンブラックやその他の充填剤、シランカップリング剤、ゴム用軟化剤等の添加剤を混合する方法については、以下のものに限定されないが、例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解混合後、溶剤を加熱除去する方法が挙げられる。
これらのうち、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機による溶融混練法が生産性、良混練性の観点から好ましい。
また、ゴム成分とその他の充填剤、シランカップリング剤、及び添加剤とを一度に混練する方法、複数の回数に分けて混合する方法のいずれも適用可能である。
【0108】
ゴム組成物は、加硫剤により加硫処理を施した加硫組成物としてもよい。加硫剤としては、以下のものに限定されないが、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル発生剤、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、硫黄化合物が挙げられる。硫黄化合物には、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、高分子多硫化合物等が含まれる。
加硫剤の含有量は、ゴム組成物に用いるゴム成分100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下が好ましく、0.1質量部以上15質量部以下がより好ましい。加硫方法としては、従来公知の方法を適用でき、加硫温度は、120℃以上200℃以下が好ましく、より好ましくは140℃以上180℃以下である。
【0109】
加硫に際しては、必要に応じて加硫促進剤、加硫助剤を用いてもよい。
加硫促進剤としては、従来公知の材料を用いることができ、以下のものに限定されないが、例えば、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系の加硫促進剤が挙げられる。
また、加硫助剤としては、以下のものに限定されないが、例えば、亜鉛華、ステアリン酸が挙げられる。
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下が好ましく、0.1質量部以上15質量部以下がより好ましい。
【0110】
ゴム組成物には、本実施形態の目的を損なわない範囲内で、上述した以外のその他の軟化剤、上記以外のその他の充填剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、滑剤等の各種添加剤を用いてもよい。
その他の軟化剤としては、公知の軟化剤を用いることができる。
その他の充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウムが挙げられる。
上記の耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、潤滑剤としては、それぞれ公知の材料を用いることができる。
ゴム組成物には、本実施形態の目的を損なわない範囲内で、上述した以外のその他の軟化剤、上記以外のその他の充填剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、滑剤等の各種添加剤を用いてもよい。
その他の軟化剤としては、公知の軟化剤を用いることができる。
その他の充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウムが挙げられる。
上記の耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、潤滑剤としては、それぞれ公知の材料を用いることができる。
【0111】
〔タイヤ〕
本実施形態のゴム組成物は、タイヤ用のゴム組成物として好適に用いられる。
すなわち、本実施形態のタイヤは、ゴム組成物を含有する。
本実施形態のゴム組成物は、以下のものに限定されないが、例えば、省燃費タイヤ、オールシーズンタイヤ、高性能タイヤ、スタッドレスタイヤ等の各種タイヤ:トレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部等のタイヤ各部位への利用が可能である。特に、本実施形態のゴム組成物は、加硫物としたときに低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランス及び耐摩耗性に優れているので、省燃費タイヤ、高性能タイヤのトレッド用として、より好適に用いられる。
【実施例】
【0112】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げ、本実施形態について詳細に説明するが、本実施形態は、以下の実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
なお、後述する実施例及び比較例における各種の物性は下記に示す方法により測定した。
【0113】
(物性1)結合スチレン量
変性共役ジエン系重合体を試料として、試料100mgを、クロロホルムで100mLにメスアップし、溶解して測定サンプルとした。
スチレンのフェニル基による紫外線吸収波長(254nm付近)の吸収量により、試料である変性共役ジエン系重合体100質量%に対しての結合スチレン量(質量%)を測定した(島津製作所社製の分光光度計「UV−2450」)。
【0114】
(物性2)ブタジエン部分のミクロ構造(1,2−ビニル結合量)
変性共役ジエン系重合体を試料として、試料50mgを、10mLの二硫化炭素に溶解して測定サンプルとした。
溶液セルを用いて、赤外線スペクトルを600〜1000cm
-1の範囲で測定して、所定の波数における吸光度によりハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry 21,923(1949)に記載の方法)の計算式に従い、ブタジエン部分のミクロ構造、すなわち、1,2−ビニル結合量(mol%)を求めた(日本分光社製のフーリエ変換赤外分光光度計「FT−IR230」)。
【0115】
(物性3)分子量
共役ジエン系重合体又は変性共役ジエン系重合体を試料として、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC測定装置(東ソー社製の商品名「HLC−8320GPC」)を使用して、RI検出器(東ソー社製の商品名「HLC8020」)を用いてクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用して得られる検量線に基づいて、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)と分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
溶離液は5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHF(テトラヒドロフラン)を使用した。
カラムは、東ソー社製の商品名「TSKgel SuperMultiporeHZ−H」を3本接続し、その前段にガードカラムとして東ソー社製の商品名「TSKguardcolumn SuperMP(HZ)−H」を接続して使用した。
測定用の試料10mgを10mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液10μLをGPC測定装置に注入して、オーブン温度40℃、THF流量0.35mL/分の条件で測定した。
【0116】
(物性4)収縮因子(g’)
変性共役ジエン系重合体を試料として、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC測定装置(Malvern社製の商品名「GPCmax VE−2001」)を使用して、光散乱検出器、RI検出器、粘度検出器(Malvern社製の商品名「TDA305」)の順番に接続されている3つの検出器を用いて測定し、標準ポリスチレンに基づいて、光散乱検出器とRI検出器結果から絶対分子量を、RI検出器と粘度検出器の結果から固有粘度を求めた。
直鎖ポリマーは、固有粘度[η]=−3.883M
0.771に従うものとし、各分子量に対応する固有粘度の比としての収縮因子(g’)を算出した。上記式中、Mは、絶対分子量である。
絶対分子量100万以上200万以下における収縮因子(g’)の平均をその共役ジエン系重合体の収縮因子(g’)とした。
溶離液は5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHFを使用した。カラムは、東ソー社製の商品名「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G5000HXL」、及び「TSKgel G6000HXL」を接続して使用した。測定用の試料20mgを10mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液100μLをGPC測定装置に注入して、オーブン温度40℃、THF流量1mL/分の条件で測定した。
【0117】
(物性5)重合体ムーニー粘度
共役ジエン系重合体又は変性共役ジエン系重合体を試料として、ムーニー粘度計(上島製作所社製の商品名「VR1132」)を用い、JIS K6300に準拠し、L形ローターを用いてムーニー粘度を測定した。
測定温度は、共役ジエン系重合体を試料とする場合には110℃とし、変性共役ジエン系重合体を試料とする場合には100℃とした。
まず、試料を1分間試験温度で予熱した後、ローターを2rpmで回転させ、4分後のトルクを測定してムーニー粘度(ML
(1+4))とした。
【0118】
(物性6)ガラス転移温度(Tg)
変性共役ジエン系重合体を試料として、ISO 22768:2006に準拠して、マックサイエンス社製の示差走査熱量計「DSC3200S」を用い、ヘリウム50mL/分の流通下、−100℃から20℃/分で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とした。
【0119】
(物性7)変性率
変性共役ジエン系重合体を試料として、シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに、変性した塩基性重合体成分が吸着する特性を応用することにより、測定した。
試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液を、ポリスチレン系カラムで測定したクロマトグラムと、シリカ系カラムで測定したクロマトグラムと、の差分よりシリカ系カラムへの吸着量を測定し、変性率を求めた。
具体的には、以下に示すとおりである。
【0120】
・試料溶液の調製
試料10mg及び標準ポリスチレン5mgを20mLのTHFに溶解させて、試料溶液とした。
・ポリスチレン系カラムを用いたGPC測定条件
東ソー社製の商品名「HLC−8320GPC」を使用して、5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHFを溶離液として用い、試料溶液10μLを装置に注入し、カラムオーブン温度40℃、THF流量0.35mL/分の条件で、RI検出器を用いてクロマトグラムを得た。カラムは、東ソー社製の商品名「TSKgel SuperMultiporeHZ−H」を3本接続し、その前段にガードカラムとして東ソー社製の商品名「TSKguardcolumn SuperMP(HZ)−H」を接続して使用した。
【0121】
・シリカ系カラムを用いたGPC測定条件
東ソー社製の商品名「HLC−8320GPC」を使用して、THFを溶離液として用い、試料溶液50μLを装置に注入し、カラムオーブン温度40℃、THF流量0.5ml/分の条件で、RI検出器を用いてクロマトグラムを得た。
カラムは、商品名「Zorbax PSM−1000S」、「PSM−300S」、「PSM−60S」を接続して使用し、その前段にガードカラムとして商品名「DIOL 4.6×12.5mm 5micron」を接続して使用した。
【0122】
・変性率の計算方法
ポリスチレン系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP1、標準ポリスチレンのピーク面積をP2、シリカ系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP3、標準ポリスチレンのピーク面積をP4として、下記式より変性率(%)を求めた。
変性率(%)=[1−(P2×P3)/(P1×P4)]×100
(ただし、P1+P2=P3+P4=100)
【0123】
(物性8)窒素原子の有無
(物性7)と同様の測定を行い、算出された変性率が10%以上であった場合、窒素原
子を有していると判断した。
これにより、実施例1〜
5、参考例6〜8、及び比較例1の変性共役ジエン系重合体が窒素原子を有すること、比較例2の変性共役ジエン系重合体が窒素原子を有しないことを確認した。
【0124】
(物性9)珪素原子の有無
変性共役ジエン系重合体0.5gを試料として、JIS K 0101 44.3.1
に準拠して、紫外可視分光光度計(島津製作所社製の商品名「UV−1800」)を用い
て測定し、モリブデン青吸光光度法により定量した。
これにより、珪素原子が検出された場合(検出下限10質量ppm)、珪素原子を有し
ていると判断した。
これにより、実施例1〜
5、参考例6〜8、及び比較例1〜2の変性共役ジエン系重合体が珪素原子を有することを確認した。
【0125】
〔実施例1〕変性共役ジエン系重合体(試料1)
内容積が10Lで、底部に入口、頂部に出口を有し、攪拌機付槽型反応器である攪拌機及び温度制御用のジャケットを有する槽型圧力容器を重合反応器とした。
予め水分除去した、1,3−ブタジエンを17.9g/分、スチレンを9.8g/分、n−ヘキサンを145.3g/分の条件で混合した。この混合溶液を反応基の入口に供給する配管の途中に設けたスタティックミキサーにおいて、残存不純物不活性処理用のn−ブチルリチウムを0.130mmol/分で添加、混合した後、反応基の底部に連続的に供給した。更に、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを0.0249g/分の速度で、重合開始剤としてn−ブチルリチウムを0.245mmol/分の速度で、攪拌機で激しく混合する重合反応器の底部へ供給し、連続的に重合反応を継続させた。
反応器頂部出口における重合溶液の温度が75℃となるように温度を制御した。重合が十分に安定したところで、反応器頂部出口より、変性剤添加前の重合体溶液を少量抜出し、酸化防止剤(BHT)を重合体100gあたり0.2gとなるように添加した後に溶媒を除去し、110℃のムーニー粘度及び各種の分子量を測定した。
その他の物性も併せて表1に示す。
【0126】
次に、反応器の出口より流出した重合体溶液に、変性剤としてテトラキス(3−トリメトキシシリルプロピル)−1,3−プロパンジアミン(表中、「A」と略す。)を0.0242mmol/分の速度で連続的に添加し、変性剤を添加された重合体溶液はスタティックミキサーを通ることで混合され変性した。
このとき、重合反応器の出口より流出した重合溶液に変性剤が添加されるまでの時間は4.8分、温度は71℃であり、重合工程における温度と、変性剤を添加するまでの温度との差は4℃であった。
変性した重合体溶液に、酸化防止剤(BHT)を重合体100gあたり0.2gとなるように0.055g/分(n−ヘキサン溶液)で連続的に添加し、変性を終了した。
酸化防止剤と同時に、重合体100gに対してオイル(JX日鉱日石エネルギー社製 JOMOプロセスNC140)が37.5gとなるように連続的に添加し、スタティックミキサーで混合した。
スチームストリッピングにより溶媒を除去して、前記一般式(1)及び(2)の変性共役ジエン系重合体(試料1)を得た。試料1の物性を表1に示す。
【0127】
〔実施例2〕変性共役ジエン系重合体(試料2)
変性剤の添加量を0.0303mmol/分とした。その他の条件は、前記〔実施例1〕と同様にして、前記一般式(1)及び(2)の変性共役ジエン系重合体(試料2)を得た。試料2の物性を表1に示す。
【0128】
〔実施例3〕変性共役ジエン系重合体(試料3)
変性剤の添加量を0.0455mmol/分とした。その他の条件は、前記〔実施例1〕と同様にして、前記一般式(1)及び(2)の変性共役ジエン系重合体(試料3)を得た。試料3の物性を表1に示す。
【0129】
〔実施例4〕変性共役ジエン系重合体(試料4)
重合開始剤n−ブチルリチウムを0.302mmol/分とし、極性物質を0.0288g/分とし、変性剤の添加量を0.0264mmol/分とした。その他の条件は、前記〔実施例1〕と同様にして、前記一般式(1)及び(2)の変性共役ジエン系重合体(試料4)を得た。試料4の物性を表1に示す。
【0130】
〔実施例5〕変性共役ジエン系重合体(試料5)
変性剤をテトラキス(3−トリエトキシシリルプロピル)−1,3−プロパンジアミン(表中「B」と略す。)とし、変性剤の添加量を0.0303mmol/分とした。その他の条件は、前記〔実施例1〕と同様にして、前記一般式(1)及び(2)の変性共役ジエン系重合体(試料5)を得た。試料5の物性を表1に示す。
【0131】
〔
参考例6〕変性共役ジエン系重合体(試料6)
内容積が10Lで、底部に入口、頂部に出口を有し、攪拌機付槽型反応器である攪拌機
及び温度制御用のジャケットを有する槽型圧力容器を2基連結し重合反応器とした。
予め水分除去した、1,3−ブタジエンを25.3g/分、スチレンを14.0g/分
、n−ヘキサンを206.3g/分の条件で混合した。この混合溶液を1基目反応基の入
口に供給する配管の途中に設けたスタティックミキサーにおいて、残存不純物不活性処理
用のn−ブチルリチウムを0.123mmol/分で添加、混合した後、1基目反応基の
底部に連続的に供給した。更に、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロ
パンを0.0267g/分の速度で、重合開始剤を0.307mmol/分の速度で、攪
拌機で激しく混合する1基目重合反応器の底部へ供給し、連続的に重合反応を継続させた
。1基目反応器頂部出口における重合溶液の温度が73℃となるように温度を制御した。
1基目反応器頂部と2基目反応器の底部を連結させることより、1基目反応器頂部から2
基目反応器底部へ重合体溶液を連続的に供給した。2基目反応器頂部出口における重合体
の温度が78℃となるように温度を制御した。重合が十分に安定したところで、2基目反
応器頂部出口より、変性剤添加前の重合体溶液を少量抜出し、酸化防止剤(BHT)を重
合体100gあたり0.2gとなるように添加した後に溶媒を除去し、110℃のムーニ
ー粘度及び各種の分子量を測定した。その他の物性も併せて表1に示す。
【0132】
次に、2基目反応器の出口より流出した重合体溶液に、変性剤としてトリス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン(表中、「C」と略す。)を0.0409mmol/分の速度で連続的に添加し、変性剤を添加された重合体溶液はスタティックミキサーを通ることで混合され変性した。このとき、反応器の出口より流出した重合溶液に変性剤が添加されるまでの時間は3.4分、温度は75℃であり、重合工程における温度と、変性剤を添加するまでの温度との差は3℃であった。変性した重合体溶液に、酸化防止剤(BHT)を重合体100gあたり0.2gとなるように0.055g/分(n−ヘキサン溶液)で連続的に添加し、変性反応を終了した。酸化防止剤と同時に、重合体100gに対してオイル(JX日鉱日石エネルギー社製 JOMOプロセスNC140)が37.5gとなるように連続的に添加し、スタティックミキサーで混合した。スチームストリッピングにより溶媒を除去して、前記一般式(1)の変性共役ジエン系重合体(試料6)を得た。試料6の物性を表1に示す。
【0133】
〔
参考例7〕変性共役ジエン系重合体(試料7)
変性剤の添加量を0.0512mmol/分とした。その他の条件は、前記〔
参考例6〕と同様にして、前記一般式(1)の変性共役ジエン系重合体(試料7)を得た。試料7の物性を表1に示す。
【0134】
〔参考例8
〕変性共役ジエン系重合体(試料8)
変性剤をトリス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミン(表中、「D」と略す。)
とし、変性剤の添加量を0.0512mmol/分とした。その他の条件は、前記〔
参考例6〕と同様にして、前記一般式(1)の変性共役ジエン系重合体(試料8)を得た。試料8の物性を表1に示す。
【0135】
〔比較例1〕
内容積が10Lで、底部に入口、頂部に出口を有し、攪拌機付槽型反応器である攪拌機及び温度制御用のジャケットを有する槽型圧力容器を重合反応器とした。
予め水分除去した、1,3−ブタジエンを17.9g/分、スチレンを9.8g/分、n−ヘキサンを145.3g/分の条件で混合した。この混合溶液を反応基の入口に供給する配管の途中に設けたスタティックミキサーにおいて、残存不純物不活性処理用のn−ブチルリチウムを0.130mmol/分で添加、混合した後、反応基の底部に連続的に供給した。
更に、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを0.0194g/分の速度で、重合開始剤としてn−ブチルリチウムを0.220mmol/分の速度で、攪拌機で激しく混合する重合反応器の底部へ供給し、連続的に重合反応を継続させた。
反応器頂部出口における重合溶液の温度が75℃となるように温度を制御した。重合が十分に安定したところで、反応器頂部出口より、変性剤添加前の重合体溶液を少量抜出し、酸化防止剤(BHT)を重合体100gあたり0.2gとなるように添加した後に溶媒を除去し、110℃のムーニー粘度及び各種の分子量を測定した。その他の物性も併せて表1に示す。
【0136】
次に、反応器の出口より流出した重合体溶液に、変性剤としてビス(3−トリメトキシシリルプロピル)メチルアミン(表中、「E」と略す。)を0.0550mmol/分の速度で連続的に添加し、変性剤を添加された重合体溶液はスタティックミキサーを通ることで混合され変性反応した。このとき、反応器の出口より流出した重合溶液に変性剤が添加されるまでの時間は4.8分、温度は71℃であり、重合工程における温度と、変性剤を添加するまでの温度との差は4℃であった。変性した重合体溶液に、酸化防止剤(BHT)を重合体100gあたり0.2gとなるように0.055g/分(n−ヘキサン溶液)で連続的に添加し、変性した。酸化防止剤と同時に、重合体100gに対してオイル(JX日鉱日石エネルギー社製 JOMOプロセスNC140)が37.5gとなるように連続的に添加し、スタティックミキサーで混合した。スチームストリッピングにより溶媒を除去して、変性共役ジエン系重合体(試料9)を得た。試料9の物性を表1に示す。
試料9の変性共役ジエン系重合体は、4分岐の構造であり、一般式(1)、(2)のいずれにも該当しない。
【0137】
〔比較例2〕
変性剤をビス(トリメトキシシリル)エタン(表中、「F」と略す。)とし、変性剤の添加量を0.0367mmol/分とした。その他の条件は、前記〔比較例1〕と同様にして、変性共役ジエン系重合体(試料10)を得た。試料10の物性を表1に示す。
試料10の変性共役ジエン系重合体は、窒素原子を有していないかつ4分岐の構造であり、一般式(1)、(2)のいずれにも該当しない。
【0138】
【表1】
【0139】
〔実施例9〜
13、参考例14〜16、及び比較例3〜4〕
表1に示す試料1〜10を原料ゴムとして、以下に示す配合に従い、それぞれの原料ゴ
ムを含有するゴム組成物を得た。
変性共役ジエン系重合体(試料1〜10):100質量部(オイル抜き)
シリカ(エボニック デグサ社製の商品名「Ultrasil 7000GR」窒素吸
着比表面積170m2/g):75.0質量部
カーボンブラック(東海カーボン社製の商品名「シーストKH(N339)」):5.
0質量部
シランカップリング剤(エボニック デグサ社製の商品名「Si75」、ビス(トリエ
トキシシリルプロピル)ジスルフィド):6.0質量部
S−RAEオイル(JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「プロセスNC140」):
37.5質量部
亜鉛華:2.5質量部
ステアリン酸:1.0質量部
老化防止剤(N−(1,3−ジメチルブチル)−N'−フェニル−p−フェニレンジア
ミン):2.0質量部
硫黄:2.2質量部
加硫促進剤1(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフィンアミド):1.7
質量部
加硫促進剤2(ジフェニルグアニジン):2.0質量部
合計:239.4質量部
【0140】
上記した材料を次の方法により混練してゴム組成物を得た。
温度制御装置を備える密閉混練機(内容量0.3L)を使用し、第一段の混練として、充填率65%、ローター回転数30〜50rpmの条件で、原料ゴム(試料1〜10)、充填剤(シリカ、カーボンブラック)、シランカップリング剤、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸を混練した。このとき、密閉混合機の温度を制御し、排出温度は155〜160℃で各ゴム組成物(配合物)を得た。
【0141】
次に、第二段の混練として、上記で得た配合物を室温まで冷却後、老化防止剤を加え、シリカの分散を向上させるため再度混練した。この場合も、混合機の温度制御により、配合物の排出温度を155〜160℃に調整した。
冷却後、第三段の混練として、70℃に設定したオープンロールにて、硫黄、加硫促進剤1、2を加えて混練した。
その後、成型し、160℃で20分間、加硫プレスにて加硫した。
加硫前のゴム組成物、及び加硫後のゴム組成物を評価した。
具体的には、下記の方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0142】
〔評価1〕配合物ムーニー粘度
上記で得た第二段の混練後、かつ、第三段の混練前の配合物を試料として、ムーニー粘度計を使用し、JIS K6300−1に準拠して、130℃、1分間の予熱を行った後に、ローターを毎分2回転で4分間回転させた後の粘度を測定した。
比較例3の結果を100として指数化した。
指数が小さいほど加工性が良好であることを示す。
【0143】
〔評価2〕粘弾性パラメータ
レオメトリックス・サイエンティフィック社製の粘弾性試験機「ARES」を使用し、ねじりモードで粘弾性パラメータを測定した。
各々の測定値は、比較例3のゴム組成物に対する結果を100として指数化した。
0℃において周波数10Hz、ひずみ1%で測定したtanδをウェットグリップ性の指標とした。
指数が大きいほどウェットグリップ性が良好であることを示す。
また、50℃において周波数10Hz、ひずみ3%で測定したtanδを低ヒステリシスロス性の指標とした。
指数が小さいほど低ヒステリシスロス性が良好であることを示す。
【0144】
〔評価3〕引張強度及び引張伸び
JIS K6251の引張試験法に準拠し、引張強度及び引張伸びを測定し、比較例3の結果を100として指数化した。
指数が大きいほど引張強度、引張伸びが良好であることを示す。
【0145】
〔評価4〕耐摩耗性
アクロン摩耗試験機(安田精機製作所社製)を使用し、JIS K6264−2に準拠して、荷重44.4N、1000回転の摩耗量を測定し、比較例3の結果を100として指数化した。
指数が大きいほど耐摩耗性が良好であることを示す。
【0146】
【表2】
【0147】
表2に示すように、実施例の試料1~3、5〜8は、比較例の試料9と比較してムーニー粘度が高いにも関わらず、実施例の試料1〜3、5〜8を使用したゴム組成物は、比較例の試料9を使用したゴム組成物と比較すると、配合物ムーニー粘度が低く、優れた加工性を示した。
また、実施例の試料1〜8を使用したゴム組成物は、比較例の試料9〜10を使用したゴム組成物と比較すると、加硫物としたときにおける特に優れた低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランス及び耐摩耗性を有し、実用上十分な破壊特性をも有していることが確認された。