特許第6769799号(P6769799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6769799ロータリエンコーダ、およびロータリエンコーダの絶対角度位置検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769799
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】ロータリエンコーダ、およびロータリエンコーダの絶対角度位置検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20201005BHJP
【FI】
   G01D5/244 J
【請求項の数】12
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-183736(P2016-183736)
(22)【出願日】2016年9月21日
(65)【公開番号】特開2018-48874(P2018-48874A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】奥村 宏克
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 豊
(72)【発明者】
【氏名】上甲 均
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−141995(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0041241(US,A1)
【文献】 特開2015−094677(JP,A)
【文献】 特許第5666886(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00−7/34
G01D 5/00−5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1センサ部と、第2センサ部とを備え、前記第1センサ部において1回転1周期の第1絶対角度データを取得するとともに、前記第2センサ部において、Nを2以上の正の整数としたときに1回転N周期のインクリメンタル角度データを取得し、前記第1センサ部からの第1検出結果および前記第2センサ部からの第2検出結果に基づいて絶対角度位置を検出するロータリエンコーダにおいて、
前記第1絶対角度データと前記インクリメンタル角度データとの位相差を取得する位相差取得部と、
N周期分の前記インクリメンタル角度データを1回転の絶対角度データに変換したインクリメンタル信号変換絶対角度データを算出する変換絶対角度データ算出部と、
前記位相差に基づいて前記第1絶対角度データを補正して前記第1絶対角度データの位相を前記インクリメンタル信号変換絶対角度データの位相に一致させた位相補正第1絶対角度データを生成する第1位相補正部と、
前記インクリメンタル信号変換絶対角度データと前記位相補正第1絶対角度データとの差に基づいて補正値を取得する補正値取得部と、
前記位相補正第1絶対角度データを前記補正値で補正した誤差補正第1絶対角度データを生成する相対誤差補正部と、
前記第1検出結果、前記第2検出結果、前記位相差、前記誤差補正第1絶対角度データ、および、前記インクリメンタル角度データに基づいて絶対角度を取得する絶対角度取得部と、
を備えることを特徴とするロータリエンコーダ。
【請求項2】
請求項1において、
前記補正値取得部は、前記インクリメンタル信号変換絶対角度データから前記位相補正第1絶対角度データを減算して前記補正値を取得し、
前記相対誤差補正部は、前記位相補正第1絶対角度データに前記補正値を加算して前記誤差補正第1絶対角度データとすることを特徴とするロータリエンコーダ。
【請求項3】
請求項1において、
前記補正値取得部は、前記位相補正第1絶対角度データから前記インクリメンタル信号変換絶対角度データを減算して前記補正値を取得し、
前記相対誤差補正部は、前記位相補正第1絶対角度データから前記補正値を減算して前記誤差補正第1絶対角度データとすることを特徴とするロータリエンコーダ。
【請求項4】
請求項1から3のうちのいずれかの項において、
さらに、記憶部を備え、
前記補正値取得部は、1回転1周期中の複数の角度位置における前記補正値を取得し、各角度位置と当該角度位置において取得した補正値とを関連付けて前記記憶部に記憶保持し、
前記相対誤差補正部は、隣り合う2つの前記角度位置のそれぞれで取得されている前記補正値に基づいて当該2つの角度位置の間の中間角度位置の中間補正値を算出するとともに、前記補正値として前記記憶部に記憶保持されている前記補正値と前記中間補正値とを用いて前記位相補正第1絶対角度データを補正することを特徴とするロータリエンコーダ。
【請求項5】
請求項1から4のうちのいずれか一項において、
前記絶対角度取得部は、
前記誤差補正第1絶対角度データがN個に内挿分割された第2絶対角度データを生成する第2絶対角度データ生成部と、
前記第2絶対角度データの位相と前記インクリメンタル角度データの位相とを比較する位相比較部と、
前記位相比較部での比較結果において前記第2絶対角度データの位相と前記インクリメンタル角度データの位相とがずれているときに前記第2絶対角度データを補正する位相補正部と、
前記第1検出結果を前記位相差で補正した位相補正第1検出結果、前記第2検出結果、前記第2絶対角度データ、および、前記インクリメンタル角度データに基づいて、回転体の絶対角度位置を決定する角度位置決定部と、
を備えることを特徴とするロータリエンコーダ。
【請求項6】
請求項1から5のうちのいずれか一項において、
前記第1センサ部は、回転中心軸周りにN極とS極とが1つずつ配置された第1磁石と、前記第1磁石の回転中心軸線方向で対向する第1磁気抵抗素子と、前記第1磁石に対向する第1ホール素子と、前記第1磁石に対向するとともに前記第1ホール素子に対して前記回転中心軸線回りに機械角で90°ずれた位置に配置された第2ホール素子と、を備え、
前記第2センサ部は、前記回転中心軸周りに複数極対が配置された第2磁石と、前記第2磁石に対向する第2磁気抵抗素子と、を備えることを特徴とするロータリエンコーダ。
【請求項7】
第1センサ部と、第2センサ部とを備え、前記第1センサ部において1回転1周期の第1絶対角度データを取得するとともに、前記第2センサ部において、Nを2以上の正の整数としたときに1回転N周期のインクリメンタル角度データを取得しておき、前記第1センサ部からの第1検出結果および前記第2センサ部からの第2検出結果に基づいて絶対角度位置を検出するロータリエンコーダの絶対角度位置検出方法において、
前記第1絶対角度データと前記インクリメンタル角度データとの位相差を取得する位相差取得工程と、
N周期分の前記インクリメンタル角度データを1回転の絶対角度データに変換したインクリメンタル信号変換絶対角度データを算出する変換絶対角度データ算出工程と、
前記位相差に基づいて前記第1絶対角度データを補正して前記第1絶対角度データの位相を前記インクリメンタル信号変換絶対角度データの位相に一致させた位相補正第1絶対角度データを生成する第1位相補正工程と、
前記インクリメンタル信号変換絶対角度データと前記位相補正第1絶対角度データとの差に基づいて補正値を取得する補正値取得工程と、
前記位相補正第1絶対角度データを前記補正値で補正した誤差補正第1絶対角度データを生成する相対誤差補正工程と、
前記第1検出結果、前記第2検出結果、前記位相差、前記誤差補正第1絶対角度データ、および、前記インクリメンタル角度データに基づいて絶対角度を取得する絶対角度取得工程と、
を備えることを特徴とするロータリエンコーダの絶対角度位置検出方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記補正値取得工程では、前記インクリメンタル信号変換絶対角度データから前記位相補正第1絶対角度データを減算して前記補正値を取得し、
前記相対誤差補正工程では、前記位相補正第1絶対角度データに前記補正値を加算して前記誤差補正第1絶対角度データとすることを特徴とするロータリエンコーダの絶対角度位置検出方法。
【請求項9】
請求項7において、
前記補正値取得工程では、前記位相補正第1絶対角度データから前記インクリメンタル信号変換絶対角度データを減算して前記補正値を取得し、
前記相対誤差補正工程では、前記位相補正第1絶対角度データから前記補正値を減算して前記誤差補正第1絶対角度データとすることを特徴とするロータリエンコーダの絶対角度位置検出方法。
【請求項10】
請求項7から9のうちのいずれか一項において、
前記補正値取得工程は、1回転1周期中の複数の角度位置における前記補正値を取得し、各角度位置と当該角度位置において取得した補正値とを関連付けて記憶部に記憶保持し、
前記相対誤差補正工程は、隣り合う2つの前記角度位置のそれぞれで取得されている前記補正値に基づいて当該2つの角度位置の間の中間角度位置の中間補正値を算出するとともに、前記補正値として前記記憶部に記憶保持されている前記補正値と前記中間補正値とを用いて前記位相補正第1絶対角度データを補正することを特徴とするロータリエンコーダの絶対角度位置検出方法。
【請求項11】
請求項7から10のうちのいずれか一項において、
前記絶対角度取得工程は、
前記誤差補正第1絶対角度データがN個に内挿分割された第2絶対角度データを生成する第2絶対角度データ生成工程と、
前記第2絶対角度データの位相と前記インクリメンタル角度データの位相とを比較する位相比較工程と、
前記位相比較工程での比較結果において前記第2絶対角度データの位相と前記インクリメンタル角度データの位相とがずれているときに前記第2絶対角度データを補正する第2位相補正工程と、
前記第1検出結果を前記位相差で補正した位相補正第1検出結果、前記第2検出結果、前記第2絶対角度データ、および、前記インクリメンタル角度データに基づいて、回転体の絶対角度位置を決定する角度位置決定工程と、
を備えることを特徴とするロータリエンコーダの絶対角度位置検出方法。
【請求項12】
請求項7から11のうちのいずれか一項において、
前記第1センサ部は、回転中心軸周りにN極とS極とが1つずつ配置された第1磁石と、前記第1磁石の回転中心軸線方向で対向する第1磁気抵抗素子と、前記第1磁石に対向する第1ホール素子と、前記第1磁石に対向するとともに前記第1ホール素子に対して前記回転中心軸線回りに機械角で90°ずれた位置に配置された第2ホール素子と、を備え、
前記第2センサ部は、前記回転中心軸周りに複数極対が配置された第2磁石と、前記第2磁石に対向する第2磁気抵抗素子と、を備えることを特徴とするロータリエンコーダの絶対角度位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の瞬間時の絶対角度位置を検出するロータリエンコーダ、およびロータリエンコーダの絶対角度位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固定体に対する回転体の回転を検出するロータリエンコーダは特許文献1に記載されている。同文献のロータリエンコーダは、第1センサ部と、第2センサ部とを備え、第1センサ部での検出結果と、第2センサ部での検出結果とに基づいて、回転体の瞬間時の絶対角度位置を検出する。第1センサ部は、N極とS極とが1つずつ配置された第1磁石と、第1磁石に対向する第1磁気抵抗素子と、第1磁石に対向する第1ホール素子と、第1磁石に対向するとともに第1ホール素子に対して回転中心軸線回りに機械角で90°ずれた位置に配置された第2ホール素子とを備える。第2センサ部は、回転中心軸周りに配置された複数極対の第2磁石と、第2磁石に対向する第2磁気抵抗素子とを備える。ロータリエンコーダでは、第1センサ部における1回転1周期の絶対角度データ、および第2センサ部における1回転N周期のインクリメンタル角度データに基づいて、回転体の瞬間時の角度位置を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5666886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、第1センサ部および第2センサ部を備えるロータリエンコーダでは、第1センサ部と第2センサ部との間に相対的な位置ずれが発生することがある。また、各センサ部の位置ずれが発生すると、第1センサ部における絶対角度データと、第2センサ部におけるインクリメンタル角度データとの間に位相のずれや誤差が発生するので、検出精度が低下するという問題が発生する。
【0005】
かかる問題に鑑みて、本発明の課題は、第1センサ部での検出結果、および第2センサ部での検出結果に基づいて回転体の絶対角度位置を検出した場合でも、第1センサ部と第2センサ部との間の相対的な位置ずれ等に起因する検出低下を抑制できるロータリエンコーダ、およびロータリエンコーダの絶対角度位置検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、第1センサ部と、第2センサ部とを備え、前記第1センサ部において1回転1周期の第1絶対角度データを取得するとともに、前記第2センサ部において、Nを2以上の正の整数としたときに1回転N周期のインクリメンタル角度データを取得し、前記第1センサ部からの第1検出結果および前記第2センサ部からの第2検出結果に基づいて絶対角度位置を検出するロータリエンコーダにおいて、前記第1絶対角度データと前記インクリメンタル角度データとの位相差を取得する位相差取得部と、N周期分の前記インクリメンタル角度データを1回転の絶対角度データに変換したインクリメンタル信号変換絶対角度データを算出する変換絶対角度データ算出部と、前記位相差に基づいて前記第1絶対角度データを補正して前記第1絶対角度データの位相を前記インクリメンタル信号変換絶対角度データの位相に一致させた位相補正第1絶対角度データを生成する第1位相補正部と、前記インクリメンタル信号変換絶対角度データと前記位相補正第1絶対角度データとの差に基づいて補正値を取得する補正値取得部と、前記位相
補正第1絶対角度データを前記補正値で補正した誤差補正第1絶対角度データを生成する相対誤差補正部と、前記第1検出結果、前記第2検出結果、前記位相差、前記誤差補正第1絶対角度データ、および、前記インクリメンタル角度データに基づいて絶対角度を取得する絶対角度取得部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明では、第1センサ部からの第1検出結果(1回転1周期の第1絶対角度データ)および第2センサ部からの第2検出結果(1回転N周期のインクリメンタル角度データ)に基づいて回転体の瞬間時の絶対角度位置を検出する。従って、高い分解能で回転体の瞬間時の絶対角度位置を検出することができる。また、本発明では、第1絶対角度データとインクリメンタル角度データとの位相差を取得して第1絶対角度データの位相をインクリメンタル角度データの位相に一致させた位相補正第1絶対角度データを算出するとともに、インクリメンタル角度データを1回転の絶対角度データに変換したインクリメンタル信号変換絶対角度データと位相補正第1絶対角度データとの差に基づいて補正値を求め、かかる補正値によって位相補正第1絶対角度データを補正した誤差補正第1絶対角度データを得る。ここで、誤差補正第1絶対角度データは、第1絶対角度データに当該第1絶対角度データとN周期分のインクリメンタル角度データとの相対的な誤差が付加されたものとなる。従って、誤差補正第1絶対角度データとインクリメンタル角度データとは、これらの間の相対的な誤差が無くなるか、或いは、抑制される。よって、誤差補正第1絶対角度データとインクリメンタル角度データとに基づいて絶対角度位置を決定すれば、第1センサ部と第2センサ部との相対的な位置ずれ等に起因する検出低下を抑制できる。
【0008】
本発明において、誤差補正第1絶対角度データを取得するためには、前記補正値取得部は、前記インクリメンタル信号変換絶対角度データから前記位相補正第1絶対角度データを減算して前記補正値を取得し、前記相対誤差補正部は、前記位相補正第1絶対角度データに前記補正値を加算して前記誤差補正第1絶対角度データとするものとすることができる。
【0009】
また、本発明において、誤差補正第1絶対角度データを取得するためには、前記補正値取得部は、前記位相補正第1絶対角度データから前記インクリメンタル信号変換絶対角度データを減算して前記補正値を取得し、前記相対誤差補正部は、前記位相補正第1絶対角度データから前記補正値を減算して前記誤差補正第1絶対角度データとするものとすることができる。
【0010】
本発明において、さらに、記憶部を備え、前記補正値取得部は、1回転1周期中の複数の角度位置における前記補正値を取得し、各角度位置と当該角度位置において取得した補正値とを関連付けて前記記憶部に記憶保持し、前記相対誤差補正部は、隣り合う2つの前記角度位置のそれぞれで取得されている前記補正値に基づいて当該2つの角度位置の間の中間角度位置の中間補正値を算出するとともに、前記補正値として前記記憶部に記憶保持されている前記補正値と前記中間補正値とを用いて前記位相補正第1絶対角度データを補正することが望ましい。このようにすれば、記憶部に記憶保持した補正値と、記憶部に記憶保持した補正値の間を補完した中間補正値によって位相補正第1絶対角度データを補正できるので、誤差補正第1絶対角度データとインクリメンタル角度データとの間の誤差を、より、抑制できる。また、中間補正値は演算によって得ることができるので、補正値を記憶保持する容量を抑制できる。
【0011】
本発明において、前記絶対角度取得部は、前記誤差補正第1絶対角度データがN個に内挿分割された第2絶対角度データを生成する第2絶対角度データ生成部と、前記第2絶対角度データの位相と前記インクリメンタル角度データの位相とを比較する位相比較部と、前記位相比較部での比較結果において前記第2絶対角度データの位相と前記インクリメンタル角度データの位相とがずれているときに前記第2絶対角度データを補正する位相補正
部と、前記第1検出結果を前記位相差で補正した位相補正第1検出結果、前記第2検出結果、前記第2絶対角度データ、および、前記インクリメンタル角度データに基づいて、回転体の絶対角度位置を決定する角度位置決定部と、を備えることが望ましい。このようにすれば、誤差補正第1絶対角度データにおいても、インクリメンタル角度データとの間に位相ずれ等の誤差がある場合に、これらの誤差を補正によって抑制できる。また、絶対角度位置の決定は、第1センサ部からの第1検査結果を位相差で補正した位相差位相補正第1検出結果を用いて行うので、第1センサ部と第2センサ部との間の相対的な位置ずれ等に起因する検出精度の低下を、より、抑制できる。
【0012】
本発明において、前記第1センサ部は、回転中心軸周りにN極とS極とが1つずつ配置された第1磁石と、前記第1磁石の回転中心軸線方向で対向する第1磁気抵抗素子と、前記第1磁石に対向する第1ホール素子と、前記第1磁石に対向するとともに前記第1ホール素子に対して前記回転中心軸線回りに機械角で90°ずれた位置に配置された第2ホール素子と、を備え、前記第2センサ部は、前記回転中心軸周りに複数極対が配置された第2磁石と、前記第2磁石に対向する第2磁気抵抗素子と、を備えるものとすることができる。
【0013】
次に、本発明は、第1センサ部と、第2センサ部とを備え、前記第1センサ部において1回転1周期の第1絶対角度データを取得するとともに、前記第2センサ部において、Nを2以上の正の整数としたときに1回転N周期のインクリメンタル角度データを取得しておき、前記第1センサ部からの第1検出結果および前記第2センサ部からの第2検出結果に基づいて絶対角度位置を検出するロータリエンコーダの絶対角度位置検出方法において、前記第1絶対角度データと前記インクリメンタル角度データとの位相差を取得する位相差取得工程と、N周期分の前記インクリメンタル角度データを1回転の絶対角度データに変換したインクリメンタル信号変換絶対角度データを算出する変換絶対角度データ算出工程と、前記位相差に基づいて前記第1絶対角度データを補正して前記第1絶対角度データの位相を前記インクリメンタル信号変換絶対角度データの位相に一致させた位相補正第1絶対角度データを生成する第1位相補正工程と、前記インクリメンタル信号変換絶対角度データと前記位相補正第1絶対角度データとの差に基づいて補正値を取得する補正値取得工程と、前記位相補正第1絶対角度データを前記補正値で補正した誤差補正第1絶対角度データを生成する相対誤差補正工程と、前記第1検出結果、前記第2検出結果、前記位相差、前記誤差補正第1絶対角度データ、および、前記インクリメンタル角度データに基づいて絶対角度を取得する絶対角度取得工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明では、第1センサ部からの第1検出結果(1回転1周期の第1絶対角度データ)および第2センサ部からの第2検出結果(1回転N周期のインクリメンタル角度データ)に基づいて回転体の瞬間時の絶対角度位置を検出する。従って、高い分解能で回転体の瞬間時の絶対角度位置を検出することができる。また、本発明では、第1絶対角度データとインクリメンタル角度データとの位相差を取得して第1絶対角度データの位相をインクリメンタル角度データの位相に一致させた位相補正第1絶対角度データを算出するとともに、インクリメンタル角度データを1回転の絶対角度データに変換したインクリメンタル信号変換絶対角度データと位相補正第1絶対角度データとの差に基づいて補正値を求め、かかる補正値によって位相補正第1絶対角度データを補正した誤差補正第1絶対角度データを得る。ここで、誤差補正第1絶対角度データは、第1絶対角度データに当該第1絶対角度データとN周期分のインクリメンタル角度データとの相対的な誤差が付加されたものとなる。従って、誤差補正第1絶対角度データとインクリメンタル角度データとは、これら間の相対的な誤差が無くなるか、或いは、抑制される。よって、誤差補正第1絶対角度データとインクリメンタル角度データとに基づいて絶対角度位置を決定すれば、第1センサ部と第2センサ部との相対的な位置ずれ等に起因する検出低下を抑制できる。
【0015】
本発明において、誤差補正第1絶対角度データを取得するためには、前記補正値取得工程では、前記インクリメンタル信号変換絶対角度データから前記位相補正第1絶対角度データを減算して前記補正値を取得し、前記相対誤差補正工程では、前記位相補正第1絶対角度データに前記補正値を加算して前記誤差補正第1絶対角度データとするものとすることができる。
【0016】
また、本発明において、誤差補正第1絶対角度データを取得するためには、前記補正値取得工程では、前記位相補正第1絶対角度データから前記インクリメンタル信号変換絶対角度データを減算して前記補正値を取得し、前記相対誤差補正工程では、前記位相補正第1絶対角度データから前記補正値を減算して前記誤差補正第1絶対角度データとするものとすることができる。
【0017】
本発明において、前記補正値取得工程は、1回転1周期中の複数の角度位置における前記補正値を取得し、各角度位置と当該角度位置において取得した補正値とを関連付けて記憶部に記憶保持し、前記相対誤差補正工程は、隣り合う2つの前記角度位置のそれぞれで取得されている前記補正値に基づいて当該2つの角度位置の間の中間角度位置の中間補正値を算出するとともに、前記補正値として前記記憶部に記憶保持されている前記補正値と前記中間補正値とを用いて前記位相補正第1絶対角度データを補正することが望ましい。このようにすれば、記憶部に記憶保持した補正値と、記憶部に記憶保持した補正値の間を補完した中間補正値によって位相補正第1絶対角度データを補正できるので、誤差補正第1絶対角度データとインクリメンタル角度データとの間の誤差を、より、抑制できる。また、中間補正値は演算によって得ることができるので、補正値を記憶保持する容量を抑制できる。
【0018】
本発明において、前記絶対角度取得工程は、前記誤差補正第1絶対角度データがN個に内挿分割された第2絶対角度データを生成する第2絶対角度データ生成工程と、前記第2絶対角度データの位相と前記インクリメンタル角度データの位相とを比較する位相比較工程と、前記位相比較工程での比較結果において前記第2絶対角度データの位相と前記インクリメンタル角度データの位相とがずれているときに前記第2絶対角度データを補正する第2位相補正工程と、前記第1検出結果を前記位相差で補正した位相補正第1検出結果、前記第2検出結果、前記第2絶対角度データ、および、前記インクリメンタル角度データに基づいて、回転体の絶対角度位置を決定する角度位置決定工程と、を備えることを特徴とする。このようにすれば、誤差補正第1絶対角度データにおいても、インクリメンタル角度データとの間に位相ずれ等の誤差がある場合に、これらの誤差を補正によって抑制できる。また、絶対角度位置の決定は、第1センサ部からの第1検査結果を位相差で補正した位相差位相補正第1検出結果を用いて行うので、第1センサ部と第2センサ部との間の相対的な位置ずれ等に起因する検出精度の低下を、より、抑制できる。
【0019】
本発明において、前記第1センサ部は、回転中心軸周りにN極とS極とが1つずつ配置された第1磁石と、前記第1磁石の回転中心軸線方向で対向する第1磁気抵抗素子と、前記第1磁石に対向する第1ホール素子と、前記第1磁石に対向するとともに前記第1ホール素子に対して前記回転中心軸線回りに機械角で90°ずれた位置に配置された第2ホール素子と、を備え、前記第2センサ部は、前記回転中心軸周りに複数極対が配置された第2磁石と、前記第2磁石に対向する第2磁気抵抗素子と、を備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、第1センサ部からの第1絶対角度データに当該第1絶対角度データと第2センサ部からのインクリメンタル角度データとの相対的な誤差を付加した誤差補正第1絶対角度データを取得し、誤差補正第1絶対角度データおよびインクリメンタル角度データに基づいて絶対角度位置を検出する。ここで、誤差補正第1絶対角度データとインクリメ
ンタル角度データとの間では、第1絶対角度データとN周期分のインクリメンタル角度データとの間の相対的な誤差が無くなるか、或いは、相対的な誤差が抑制される。従って、誤差補正第1絶対角度データとインクリメンタル角度データとに基づいて絶対角度位置を取得すれば、相対的な位置ずれ等に起因する検出低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明を適用したロータリエンコーダの外観等を示す説明図である。
図2図1のロータリエンコーダの固定体の一部を切り欠いて示す側面図である。
図3】ロータリエンコーダのセンサ部等の構成を示す説明図である。
図4】ロータリエンコーダの角度位置の検出原理を示す説明図である。
図5】ロータリエンコーダの角度位置の決定方法の基本的構成を示す説明図である。
図6】第1絶対角度データとインクリメンタル角度データとの位相差および位相補正第1絶対角度データの説明図である。
図7】変換絶対角度データの説明図である。
図8】補正値の説明図である。
図9】誤差補正第1絶対角度データの説明図である。
図10】ロータリエンコーダの角度位置の決定方法の具体的構成を示す説明図である。
図11】第2絶対角度データの位相が進んでいる場合の説明図である。
図12】第2絶対角度データの位相が遅れている場合の説明図である。
図13】絶対角度位置を検出する絶対角度位置検出動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したロータリエンコーダの実施の形態を説明する。以下の説明では、ロータリエンコーダとして、センサ部が磁石および感磁素子(磁気抵抗素子、ホール素子)によって構成された磁気式ロータリエンコーダを中心に説明する。この場合、固定体に磁石を設け、回転体に感磁素子を設けた構成、および固定体に感磁素子を設け、回転体に磁石を設けた構成のいずれの構成を採用してもよいが、以下の説明では、固定体に感磁素子を設け、回転体に磁石を設けた構成を中心に説明する。また、以下に参照する図面において、磁石および感磁素子等の構成について模式的に示してあり、第2磁石における磁極についてはその数を減らして模式的に示してある。また、磁気抵抗素子(感磁素子)における磁気抵抗パターンの構成についても、互いの位置をずらして模式的に示してある。
【0023】
(全体構成)
図1は本発明を適用したロータリエンコーダの外観等を示す説明図である。図1(a)はロータリエンコーダを回転軸線方向の一方側かつ斜め方向から見た場合の斜視図であり、図1(b)は、回転軸線方向の一方側から見た場合の平面図である。図2は、本発明を適用したロータリエンコーダの固定体の一部を切り欠いて示す側面図である。
【0024】
ロータリエンコーダ1は、固定体10に対する回転体2の回転軸線回りの回転を磁気的に検出する装置である。固定体10は、モータ装置のフレーム等に固定され、回転体2は、モータ装置の回転出力軸等に連結された状態で使用される。図1および図2に示すように、固定体10は、センサ基板15と、センサ基板15を支持する複数の支持部材11とを備える。本例において、支持部材11は、円形の開口部122が形成された底板部121を備えたベース体12と、ベース体12に固定されたセンサ支持板13とからなる。
【0025】
センサ支持板13は、ベース体12において開口部122の縁部分から回転中心軸線方向Lの第1方向L1に向けて突出した略円筒状の胴部123にネジ191、192等により固定されている。センサ支持板13からは、回転中心軸線方向Lの第1方向L1に向け
て複数本の端子16が突出している。胴部123において回転中心軸線方向Lの第1方向L1に位置する端面には、突起124や穴125等が形成されており、かかる穴125等を利用して、胴部123にはセンサ基板15がネジ193等により固定されている。その際、センサ基板15は、突起124等により所定位置に位置決めされた状態で精度よく固定される。センサ基板15において、回転中心軸線方向Lの第1方向L1の面にはコネクタ17が設けられている。回転体2は、胴部123の内側に配置される円筒状の部材であって、その内側にはモータの回転出力軸(図示せず)が嵌合等の方法で連結されている。従って、回転体2は、回転軸線回りに回転可能である。
【0026】
(磁石および感磁素子等のレイアウト等)
図3は、本発明を適用したロータリエンコーダ1のセンサ部等の構成を示す説明図である。図3において、データ処理部90は、予め格納されているプログラムに基づいて動作するCPU等を備える。データ処理部90の構成については機能ブロック図で示す。
【0027】
第1センサ部1aは、回転体2の側に第1磁石20を有する。第1磁石20は、N極とS極とが周方向において1極ずつ着磁された着磁面21を備える。着磁面21は回転中心軸線方向Lの第1方向L1を向いている。また、第1センサ部1aは、固定体10の側に、第1磁石20の着磁面21に対して回転中心軸線方向Lの第1方向L1で対向する第1磁気抵抗素子40と、第1磁石20の着磁面21に対して回転中心軸線方向Lの第1方向L1で対向する第1ホール素子51と、第1磁石20の着磁面21に対して回転中心軸線方向Lの第1方向L1で対向するとともに、第1ホール素子51に対して回転軸線回りに機械角で90°ずれた位置に配置された第2ホール素子52と、を有する。
【0028】
第2センサ部1bは、回転体2の側に第2磁石30を有する。第2磁石は、第1磁石20に対して径方向の外側で離間する位置でN極とS極とが周方向において交互に複数着磁された環状の着磁面31を備える。着磁面31は回転中心軸線方向Lの第1方向L1を向いている。本例において、第2磁石30の着磁面31には、周方向においてN極とS極とが交互に多極に着磁されたトラック310が径方向で複数、並列している。本例では、トラック310が2列形成されている。本例においては、Nを正の整数としたとき、第2磁石30では、N極とS極との対が計N対形成されている。本例において、Nは、例えば128である。かかる2つのトラック310の間ではN極およびS極の位置が周方向でずれており、本例では、2つのトラック310の間においてN極およびS極は周方向に1極分ずれている。また、第2センサ部1bは、固定体10の側に、第2磁石30の着磁面31に対して回転中心軸線方向Lの第1方向L1で対向する第2磁気抵抗素子60を備える。
【0029】
第1磁石20および第2磁石30は、回転体2と一体に回転軸線回りに回転する。第1磁石20は円盤状の永久磁石からなる。第2磁石30は円筒状であり、第1磁石20に対して径方向の外側で離間する位置に配置されている。第1磁石20および第2磁石30はボンド磁石等からなる。
【0030】
第1磁気抵抗素子40は、第1磁石20の位相に対して、互いに90°の位相差を有するA相(SIN)の磁気抵抗パターンとB相(COS)の磁気抵抗パターンとを備えた第1磁気抵抗素子である。かかる第1磁気抵抗素子40において、A相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって回転体2の移動検出を行う+a相(SIN+)の磁気抵抗パターン43および−a相(SIN−)の磁気抵抗パターン41を備える。B相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって回転体2の移動検出を行う+b相(COS+)の磁気抵抗パターン44および−b相(COS−)の磁気抵抗パターン42を備える。ここで、+a相の磁気抵抗パターン43および−a相の磁気抵抗パターン41は、ブリッジ回路を構成しており、+b相の磁気抵抗パターン44および−b相の磁気抵抗パターン42も、+a相の磁気抵抗パターン43および−a相の磁気抵抗パターン41と同様、ブリ
ッジ回路を構成している。
【0031】
第2磁気抵抗素子60は、第2磁石30の位相に対して、互いに90°の位相差を有するA相(SIN)の磁気抵抗パターンとB相(COS)の磁気抵抗パターンとを備える。かかる第2磁気抵抗素子60において、A相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって回転体2の移動検出を行う+a相(SIN+)の磁気抵抗パターン64および−a相(SIN−)の磁気抵抗パターン62を備える。B相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって回転体2の移動検出を行う+b相(COS+)の磁気抵抗パターン63および−b相(COS−)の磁気抵抗パターン61を備える。ここで、+a相の磁気抵抗パターン64および−a相の磁気抵抗パターン62は、第1磁気抵抗素子40と同様、ブリッジ回路を構成しており、+b相の磁気抵抗パターン63および−b相の磁気抵抗パターン61は、+a相の磁気抵抗パターン64および−a相の磁気抵抗パターン62と同様、示すブリッジ回路を構成している。
【0032】
本例においては、第1磁気抵抗素子40、第1ホール素子51、第2ホール素子52、および第2磁気抵抗素子60はいずれも、センサ基板15の回転中心軸線方向Lの第2方向L2に位置する第1面151に設けられている。センサ基板15において第1面151とは反対側の第2面152において、第1磁気抵抗素子40と平面視で重なる位置には、センサ基板15を貫通するスルーホール(図示せず)を介して第1磁気抵抗素子40に電気的に接続された第1アンプ91が設けられている。また、第2面152において、第2磁気抵抗素子60と平面視で重なる位置には、センサ基板15を貫通するスルーホールを介して第2磁気抵抗素子60に電気的に接続された第2アンプ92が設けられている。なお、第1ホール素子51および第2ホール素子52は、センサ基板15を貫通するスルーホールを介して第1アンプ91に電気的に接続されている。
【0033】
(検出原理)
図4は、本発明を適用したロータリエンコーダ1における検出原理を示す説明図である。図4(a)は磁気抵抗素子4から出力される信号等の説明図であり、図4(b)は、図4(a)に示す信号と回転体2の角度位置(電気角)との関係を示す説明図である。図5はロータリエンコーダにおける角度位置の決定方法の基本的構成を示す説明図である。
【0034】
図3に示すように、本例のロータリエンコーダ1において、第1磁気抵抗素子40、第1ホール素子51、第2ホール素子52、および第2磁気抵抗素子60の出力は、第1アンプ91、第2アンプ92、A−Dコンバータ93a、93b、94を介して、データ処理部90に出力される。データ処理部90は、第1磁気抵抗素子40、第1ホール素子51、第2ホール素子52、および第2磁気抵抗素子60からの出力に基づいて、固定体10に対する回転体2の絶対角度位置を求める。
【0035】
より具体的には、ロータリエンコーダ1において、回転体2が1回転すると、第1磁石20が1回転するので、第1センサ部1aの第1磁気抵抗素子40からは、図4(a)に示す正弦波信号sin、cosが2周期分、出力される。従って、データ処理部90において、図4(b)に示すように、正弦波信号sin、cosからθ=tan−1(sin/cos)を求めれば、回転体2の角度位置θが分かる。また、本例では、第1センサ部1aには、第1磁石20の中心からみて90°ずれた位置に第1ホール素子51および第2ホール素子52が配置されている。このため、現在位置が正弦波信号sin、cosのいずれの区間に位置するかが分かるので、回転体2の絶対角度位置が分かる。
【0036】
また、本例のロータリエンコーダ1では、第2センサ部1bに、N極とS極とが周方向において交互に複数着磁された環状の着磁面31を備えた第2磁石30が用いられており、かかる第2磁石30に対向する第2磁気抵抗素子60からは、回転体2が第2磁石30
の磁極の1周期分を回転する度に、正弦波信号sin、cosが出力される。従って、第2磁気抵抗素子60から出力された正弦波信号sin、cosについても、図4(b)に示すように、正弦波信号sin、cosからθ=tan−1(sin/cos)を求めれば、第2磁石30の磁極の1周期分に相当する角度内における回転体2の角度位置θが分かる。
【0037】
そこで、本例では、第1センサ部1aからの第1検出結果である1回転1周期の第1絶対角度データabs−1(図5(a)参照)と、第2センサ部1bからの第2検出結果である1回転N周期のインクリメンタル角度データINC(図5(b)参照)とに基づいて、回転体2の瞬間時の角度位置を検出する。従って、第1絶対角度データabs−1の分解能が低い場合でも、分解能の高い絶対角度データを得ることができる。
【0038】
かかる検出方式を採用するにあたって、本例のロータリエンコーダ1においては、第1センサ部1aと第2センサ部1bとの相対的な位置ずれ、第1センサ部1aおよび第2センサ部1bを構成する部材の特性の誤差、第1センサ部1aと第2センサ部1bとのサンプリング時間差等の影響で、第1センサ部1aからの第1絶対角度データabs−1(図5(a)参照)と、第2センサ部1bからの1回転N周期のインクリメンタル角度データINC(図5(b)参照)との間に、位相ずれが発生することがある。また、第1センサ部1aの回転軸からのずれ、第2センサ部1bの回転軸からのずれ、第1センサ部1aの特性、第2センサ部1bの特性によって、各センサ部1a、1bからの出力には、真の値(角度位置)に対する誤差が発生することがある。ここで、第1絶対角度データabs−1とインクリメンタル角度データINCとの間に、位相ずれを含む相対的な誤差があると、検出精度が低下してしまう。
【0039】
そこで、本例では、絶対角度位置を検出するために、まず、第1絶対角度データabs−1とインクリメンタル角度データINCとの位相差Δpを取得し、第1絶対角度データabs−1とインクリメンタル角度データINCとの間で発生している位相差相対的な誤差と位相差Δpとを抑制、或いは、無くした誤差補正第1絶対角度データabs−1cを取得する前補正工程を行う。
【0040】
その後、第1センサ部1aから出力される瞬間時の第1絶対角度データabs−1である第1検出結果、第2センサ部1bから出力される瞬間時のインクリメンタル角度データINCである第2検出結果、前補正工程で取得した位相差Δp、誤差補正第1絶対角度データabs−1c、および、インクリメンタル角度データINCに基づいて絶対角度位置を取得する絶対角度取得工程を行う。
【0041】
(制御系)
図6は第1絶対角度データabs−1とインクリメンタル角度データINCとの位相差および位相補正第1絶対角度データの説明図である。図7は変換絶対角度データの説明図である。図8は補正値の説明図である。図9は誤差補正第1絶対角度データabs−1cの説明図である。図10はロータリエンコーダにおける角度位置の決定方法の具体的構成を示す説明図である。図10には、第2絶対角度データabs−2の各周期が真の角度位置に対して、いずれの位置の周期かを示す符号1、2・・n−1、n、n+1・・Nを付し、インクリメンタル角度データINCの各周期が真の角度位置に対して、いずれの位置の周期かを示す符号1、2・・m−1、m、m+1・・Nを付してある。図11はロータリエンコーダにおいて第2絶対角度データの位相が進んでいる場合の説明図である。図12はロータリエンコーダにおいて第2絶対角度データの位相が遅れている場合の説明図である。
【0042】
図3に示すように、データ処理部90は、前補正工程を行う前補正処理部100と、絶
対角度取得工程を行う絶対角度取得部101を備える。
【0043】
(前補正処理部)
前補正処理部100は、メモリ(記憶部)102、位相差取得部103、変換絶対角度データ算出部104、第1位相補正部105、補正値取得部106、および、相対誤差補正部107を備える。
【0044】
位相差取得部103は、第1センサ部1aからの第1絶対角度データabs−1と第2センサ部1bからのインクリメンタル角度データINCとの位相差Δpを取得する。すなわち、位相差取得部103は、図6(a)、(b)に示すように、第1センサ部1aからの1回転1周期の第1絶対角度データabs−1と第2センサ部1bからの1回転N周期のインクリメンタル角度データINCとの間に位相ずれが発生していることを前提として、第1センサ部1aからの第1絶対角度データabs−1の角度位置0°のポイントと、当該ポイントに最も近いインクリメンタル角度データINCの角度位置0°のポイントとの角度差を位相差Δpとして取得する。なお、理想的な第1絶対角度データabs−1は、図5(a)に示すように直線的なデータである。しかし、第1センサ部1aからの第1絶対角度データabs−1は、例えば図6(a)に示すように、内包する誤差の分だけ理想的なデータからずれている。また、理想的なインクリメンタル角度データINCは図5(b)に示すように直線的なデータである。しかし、第2センサ部1bからのインクリメンタル角度データINCは、例えば図6(b)に示すように、内包する誤差の分だけ、理想的なデータからずれている。
【0045】
変換絶対角度データ算出部104は、図7に示すように、第2センサ部1bからのN周期分のインクリメンタル角度データINC(図6(b)および図7(a)参照)を、1回転1周期のインクリメンタル信号変換絶対角度データINC-abs(図7(b)参照)に変換する。すなわち、変換絶対角度データ算出部104は、第1絶対角度データabs−1における角度位置0°のポイントに最も近いインクリメンタル角度データINCの角度位置0°のポイントから逐次にインクリメンタル角度データINCを積算して、最終的にN周期分のインクリメンタル角度データINCを積算することにより、第1絶対角度データに対応する1回転1周期の絶対角度データ(インクリメンタル信号変換絶対角度データINC-abs)を算出する。
【0046】
第1位相補正部105は、位相差取得部103が取得した位相差Δpに基づいて第1絶対角度データを補正して、第1絶対角度データの位相をインクリメンタル信号変換絶対角度データINC-absの位相に一致させた位相補正第1絶対角度データabs−1pを生成する。すなわち、第1位相補正部105は、図6(c)に示すように、第1絶対角度データを位相差Δp分だけオフセットさせた位相補正第1絶対角度データabs−1pを生成する。これにより、位相補正第1絶対角度データabs−1pの角度位置0°は、インクリメンタル信号変換絶対角度データINC-absの角度位置0°と一致する。
【0047】
補正値取得部106は、インクリメンタル信号変換絶対角度データINC-absと位相補正第1絶対角度データabs−1pとの差に基づいて補正値Δqを取得する。本例では、補正値取得部106は、図8(a)に示すインクリメンタル信号変換絶対角度データINC-absから図8(b)に示す位相補正第1絶対角度データabs−1pを減算して補正値Δq1を取得する。図8(c)に示す補正値Δq1は、インクリメンタル信号変換絶対角度データINC-absと位相補正第1絶対角度データabs−1pとの相対的な誤差成分である。
【0048】
ここで、補正値取得部106は、補正値Δq1として、1回転1周期中の複数の角度位置における第1補正値Δq1を取得する。そして、補正値取得部106は、角度位置と第
1補正値Δq1とを関連付けたテーブルの形態でメモリ102に記憶保持する。本例において補正値Δq1を取得する複数の角度位置は、1回転を第2磁石30の磁極対の数Nで等間隔に分割した場合の各角度位置である。なお、補正値Δq1を取得する複数の角度位置は、例えば、1回転を第2磁石30の磁極対の数の2倍の数で等間隔に分割した場合の各角度位置とすることができる。
【0049】
相対誤差補正部107は、メモリ102を参照して、隣り合う2つの角度位置のそれぞれで取得された補正値Δq1に基づいて当該2つの角度位置の間の中間角度位置の中間補正値Δq2を算出する。本例では、中間角度位置は隣り合う2つの角度位置の中央の角度位置であり、補正値取得部106は中間角度位置における中間補正値Δq2を、隣り合う2つの角度位置の補正値Δq1を直線補完して算出する。
【0050】
また、相対誤差補正部107は、図9に示すように、位相補正第1絶対角度データabs−1pを、メモリ102に記録保持された補正値Δq1および中間補正値Δq2で補正した誤差補正第1絶対角度データabs−1cを生成する。本例では、相対誤差補正部107は、図9(a)に示す位相補正第1絶対角度データabs−1pに、図9(b)に示す補正値Δq1および中間補正値Δq2を加算する。これにより、相対誤差補正部107は、図9(c)に示す誤差補正第1絶対角度データabs−1cを取得する。
【0051】
ここで、補正値Δq1は、位相補正第1絶対角度データabs−1pに対するインクリメンタル信号変換絶対角度データINC-abs(N周期分のインクリメンタル角度データINC)の誤差成分なので、位相補正第1絶対角度データabs−1pを補正値Δq1および中間補正値Δq2で補正した誤差補正第1絶対角度データabs−1cは、インクリメンタル信号変換絶対角度データINC-abs(図7(b)参照)とほぼ同一の誤差成分を備えるものとなる。換言すれば、誤差補正第1絶対角度データabs−1cは、N周期分のインクリメンタル角度データINC(図7(a)参照)とほぼ同一の誤差成分を備えるものとなる。従って、誤差補正第1絶対角度データabs−1cとインクリメンタル角度データINCとの間では、相対的な誤差は無くなるか、或いは、抑制されている。よって、誤差補正第1絶対角度データabs−1cとインクリメンタル角度データINCとに基づいて絶対角度位置を取得すれば、第1センサ部1aと第2センサ部1bとの間の相対的な位置ずれ等に起因する検出低下を抑制できる。
【0052】
なお、補正値取得部106は、位相補正第1絶対角度データabs−1pからインクリメンタル信号変換絶対角度データINC-absを減算して補正値を取得してもよい。この場合には、相対誤差補正部107は、位相補正第1絶対角度データabs−1pから補正値を減算して誤差補正第1絶対角度データabs−1cを取得する。
【0053】
(絶対角度取得部)
次に、絶対角度取得部101は、図3に示すように、第2絶対角度データ生成部110、第1メモリ111、第2メモリ112、角度位置決定部113を備える。また、絶対角度取得部101は、位相比較部114および第2位相補正部115を備える。
【0054】
第2絶対角度データ生成部110は、図10(a)に示すように、前処理工程により得られた誤差補正第1絶対角度データabs−1cを、第2磁石30の磁極対の数(N:2以上の正の整数)に内挿分割した第2絶対角度データabs−2を作成する。そして、第2絶対角度データ生成部110は、第2絶対角度データabs−2を第1メモリ111に記憶保持する。ここで、第2メモリ112には、インクリメンタル角度データINCが記憶保持される。
【0055】
角度位置決定部113は、位相差Δp、第1センサ部1aから出力される瞬間時の第1
絶対角度データである第1検出結果、第2センサ部からの瞬間時のインクリメンタル角度データである第2検出結果、第1メモリ111に記憶された第2絶対角度データabs−2、および第2メモリ112に記憶されたインクリメンタル角度データINCに基づいて、瞬間時の回転体2の絶対角度位置を決定する。
【0056】
より具体的には、角度位置決定部113は、第1センサ部1aからの第1検出結果(瞬間時の第1絶対角度データabs−1)を取得すると、第1検出結果を位相差Δpで補正した位相補正第1検出結果(瞬間時の位相補正第1絶対角度データabs−1p)を算出する。そして、角度位置決定部113は、この位相補正第1検出結果が、第1メモリ111に記憶保持された第2絶対角度データabs−2のいずれの周期にあるかをデジタルデータの上位データとし、第2センサ部1bからの第2検出結果(瞬間時のインクリメンタル角度データINC)が第2メモリ112に記憶保持されたインクリメンタル角度データINCのいずれの位置に相当するかをデジタルデータの下位データとして、瞬間時の回転体2の絶対角度位置を決定する。
【0057】
ここで、位相比較部114は、所定のタイミングで第2絶対角度データabs−2の位相とインクリメンタル角度データINCの位相とを比較する。また、第2位相補正部115は、位相比較部114により第2絶対角度データabs−2とインクリメンタル角度データINCとの位相がずれていると判断されたときに、第2絶対角度データabs−2を補正して第2絶対角度データabs−2の位相とインクリメンタル角度データINCの位相とを一致させるとともに、補正した第2絶対角度データabs−2を第1メモリ111に記憶保持(上書き)する。なお、所定のタイミングとは、例えば、ロータリエンコーダ1に電源が投入された時点である。
【0058】
より詳細には、位相比較部114は、図3に示すように、第3絶対角度データ生成部116と、第1判定部117と、第2判定部118と、第3メモリ119を備える。
【0059】
第3絶対角度データ生成部116は、図11(b)および図12(b)に示すように、誤差補正第1絶対角度データabs−1cが(2×N)個に内挿分割されたデータに相当する第3絶対角度データabs−3を生成して、第3メモリ119に記憶保持する。
【0060】
第1判定部117は、第3絶対角度データabs−3に基づいてインクリメンタル角度データINCに対する第2絶対角度データabs−2の位相の進みの有無を判定する。具体的には、図11(a)、(b)に示すように、第1判定部117は、位相補正第1検出結果が第3絶対角度データabs−3における奇数番目(例えば、i番目)の周期であって、第2センサ部1bによる第2検出結果がインクリメンタル角度データINCにおける第1閾値TH1以上である場合、第2絶対角度データabs−2の位相がインクリメンタル角度データINCの位相より進んでいると判定する。すなわち、第2絶対角度データabs−2の位相とインクリメンタル角度データINCの位相とが一致している場合には、位相補正第1検出結果が第3絶対角度データabs−3における奇数番目の周期であるときには、第2センサ部1bによる第2検出結果は、インクリメンタル角度データINCにおける第1閾値TH1未満であるから、上記の処理によれば、第2絶対角度データabs−2の位相がインクリメンタル角度データINCの位相より進んでいることを検出することができる。本形態において、第1閾値TH1は、電気角で270degである。
【0061】
第2判定部118は、第3絶対角度データabs−3に基づいてインクリメンタル角度データINCに対する第2絶対角度データabs−2の位相の遅れの有無を判定する。具体的には、図12(a)、(b)に示すように、第2判定部118は、第1センサ部1aによる第1検出結果を位相差Δpで補正した位相補正第1検出結果(瞬間時の位相補正第1絶対角度データabs−1p)が第3絶対角度データabs−3における偶数番目(例
えば、(i+1)番目)の周期であって、第2センサ部1bによる第2検出結果がインクリメンタル角度データINCにおける第2閾値TH2以下である場合、第2絶対角度データabs−2の位相がインクリメンタル角度データINCの位相より遅れていると判定する。すなわち、第2絶対角度データabs−2の位相とインクリメンタル角度データINCの位相とが一致している場合、位相補正第1検出結果が第3絶対角度データabs−3における偶数番目の周期であるときには、第2センサ部1bによる第2検出結果は、インクリメンタル角度データINCにおける第2閾値TH2を超えることから、上記の処理によれば、第2絶対角度データabs−2の位相がインクリメンタル角度データINCの位相より遅れていることを検出することができる。本形態において、第2閾値TH2は、電気角で90degである。
【0062】
第2位相補正部115は、位相補正第1検出結果が第3絶対角度データabs−3におけるi番目(奇数番目)の周期であって、第2センサ部1bによる第2検出結果がインクリメンタル角度データINCにおける第1閾値TH1以上である期間については、図11(c)に示すように、第2絶対角度データabs−2における(((i+1)/2)−1)番目の周期(n−1番目の周期)となるように、第2絶対角度データabs−2を補正する。従って、インクリメンタル角度データINCと、補正後の第2絶対角度データabs−2とでは位相が一致する。そして、第2位相補正部115は、かかる補正後の第2絶対角度データabs−2を第1メモリ111に記憶保持(上書き)する。
【0063】
また、第2位相補正部115は、位相補正第1検出結果が第3絶対角度データabs−3における(i+1)番目(偶数番目)の周期であって、第2センサ部1bによる第2検出結果がインクリメンタル角度データINCにおける第2閾値TH2以下である期間については、図12(c)に示すように、第2絶対角度データabs−2における(((i+1)/2)+1)番目の周期(n+1番目の周期)となるように、第2絶対角度データabs−2を補正する。従って、インクリメンタル角度データINCと、補正後の第2絶対角度データabs−2とでは位相が一致する。そして、第2位相補正部115は、かかる補正後の第2絶対角度データabs−2を第1メモリ111に記憶保持(上書き)する。
【0064】
なお、角度位置決定部113は、絶対角度位置を決定する際に、第1メモリ111に記憶保持された第2絶対角度データabs−2を参照する。従って、第2位相補正部115によって第2絶対角度データabs−2が補正され、補正後の第2絶対角度データabs−2cが第1メモリ111に記憶保持されると、それ以降、角度位置決定部113は補正された第2絶対角度データabs−2cに基づいて絶対角度位置を決定する。
【0065】
(絶対角度位置取得動作)
次に、図13を参照して、絶対角度位置取得動作を説明する。絶対角度位置取得動作は前補正工程(ステップST1)と、絶対角度位置取得工程(ステップST2)とを備える。
【0066】
前補正工程(ステップST1)では、回転体2を回転させて、第1センサ部1aからの出力に基づいて1回転1周期の第1絶対角度データabs−1を取得するとともに、第2センサ部1bからの出力に基づいて、1回転N周期のインクリメンタル角度データINCを取得する(ステップST11)。
【0067】
次に、位相差取得部103が第1絶対角度データabs−1とインクリメンタル角度データINCとの位相差Δpを取得する(ステップST12:位相差取得工程)。位相差Δpが取得されると、変換絶対角度データ算出部104が、N周期分のインクリメンタル角度データINCを1回転の絶対角度データに変換したインクリメンタル信号変換絶対角度データINC-absを算出するとともに、第1位相補正部105が、位相差Δpに基づ
いて第1絶対角度データabs−1を補正して第1絶対角度データabs−1とインクリメンタル信号変換絶対角度データINC-absとの位相を合わせた位相補正第1絶対角度データabs−1pを生成する(ステップST13:変換絶対角度データ算出工程、第1位相補正工程)。
【0068】
その後、補正値取得部106がインクリメンタル信号変換絶対角度データINC-absと位相補正第1絶対角度データabs−1pとの差に基づいて補正値Δq1を取得する。また、補正値取得部106は、かかる補正値Δq1を角度位置と対応付けたテーブルの形態でメモリ102に記憶保持する。(ステップST14:補正値取得工程)。
【0069】
補正値Δq1が取得されると、相対誤差補正部107が、位相補正第1絶対角度データabs−1pを補正値Δq1および中間補正値Δq2で補正した誤差補正第1絶対角度データabs−1cを生成する(ステップST15:相対誤差補正工程)。
【0070】
ここで、補正値Δq1は、位相補正第1絶対角度データabs−1pに対するN周期分のインクリメンタル角度データINCの誤差成分なので、位相補正第1絶対角度データabs−1pを補正値Δq1および中間補正値Δq2で補正した誤差補正第1絶対角度データabs−1cは、インクリメンタル信号変換絶対角度データINC-abs(N周期分のインクリメンタル角度データINC)とほぼ同一の誤差成分を備えるものとなる。これにより、誤差補正第1絶対角度データabs−1cとインクリメンタル角度データINCとの間の相対的な誤差は無くなるか、或いは、抑制される。よって、次の絶対角度取得工程において、誤差補正第1絶対角度データとインクリメンタル角度データとに基づいて絶対角度位置を決定すれば、第1センサ部と第2センサ部との相対的な位置ずれ等に起因する検出低下を抑制できる。なお、前補正工程は、真の絶対角度に対して、2つのセンサ部1a、1bからの出力を補正するものではなく、2つのセンサ部1a、1bからの出力を一致させるための補正であるといえる。
【0071】
(絶対角度取得工程)
絶対角度取得工程(ステップST2)では、第2絶対角度データ生成部110が、誤差補正第1絶対角度データabs−1cを、第2磁石30の磁極対の数(N:2以上の正の整数)に内挿分割した第2絶対角度データabs−2を作成し、この第2絶対角度データabs−2を第1メモリ111に記憶保持する(ステップST21:第2絶対角度データ生成工程)。その後、回転体2を回転させて、第1センサ部1aからの第1検出結果(第1センサ部1aから出力される瞬間時の第1絶対角度データ)および第2センサ部1bからの第2検出結果(第2センサ部1bから出力される瞬間時のインクリメンタル角度データ)を得る。また、角度位置決定部113は、第1検出結果(第1センサ部1aから出力される瞬間時の第1絶対角度データ)を位相差Δpで補正した位相補正第1検出結果(瞬間時の位相補正第1絶対角度データ)を算出する。
【0072】
ここで、第1判定部117および第2判定部118によって、第2絶対角度データabs−2の位相とインクリメンタル角度データINCの位相とがずれていると判定されていない場合(第2絶対角度データabs−2の位相とインクリメンタル角度データINCの位相とが一致している場合)には(ステップ22:位相比較工程、Yes)、角度位置決定部113は、位相補正第1検出結果が、第1メモリ111に記憶保持された第2絶対角度データabs−2のいずれの周期にあるかをデジタルデータの上位データとし、第2検出結果が第1メモリ111に記憶保持されたインクリメンタル角度データINCのいずれの位置に相当するかをデジタルデータの下位データとして、瞬間時の回転体2の絶対角度位置を決定する(ステップST23:角度位置決定工程)。
【0073】
一方、第1判定部117が、第2絶対角度データabs−2の位相がインクリメンタル
角度データINCの位相より進んでいると判定した場合、或いは、第2判定部118が、第2絶対角度データabs−2の位相がインクリメンタル角度データINCの位相より遅れていると判定した場合には(ステップ22:位相比較工程、No)、第2位相補正部115が第2絶対角度データabs−2を補正して、第2絶対角度データabs−2の位相をインクリメンタル角度データINCの位相に一致させる。そして、補正後の第2絶対角度データabs−2を新たな第2絶対角度データabs−2として、第1メモリ111に記憶保持する(ステップST24:第2位相補正工程)。
【0074】
その後、角度位置決定部113は、位相補正第1検出結果が、第1メモリ111に記憶保持された第2絶対角度データabs−2のいずれの周期にあるかをデジタルデータの上位データとし、第2検出結果が第1メモリ111に記憶保持されたインクリメンタル角度データINCのいずれの位置に相当するかをデジタルデータの下位データとして、瞬間時の回転体2の絶対角度位置を決定する(ステップST23:角度位置決定工程)。
【0075】
(変形例)
なお、絶対角度取得工程の後に、絶対角度取得工程を経て検出された絶対角度位置を更に補正する後補正工程を備えることもできる。この場合には、予め、絶対角度取得工程を経て検出された絶対角度位置と、基準エンコーダーにより取得した基準絶対角度位置との誤差を取得して位置誤差データとしてメモリに記憶保持しておき、絶対角度取得工程を経て検出された絶対角度位置を、位置誤差データを用いて補正して、基準エンコーダーにより取得した基準絶対角度位置に一致させる。かかる後補正工程を行う後補正部は、メモリ(記憶部)と、絶対角度取得工程を経て検出された絶対角度位置と基準エンコーダーにより取得した基準絶対角度位置との誤差を取得して位置誤差データとしてメモリ(記憶部)に記憶保持する位置誤差データ記憶部と、絶対角度取得工程を経て検出された絶対角度位置を、位置誤差データを用いて補正して、基準エンコーダーにより取得した基準絶対角度位置に一致させる絶対角度位置補正部と、を備えるものとすることができる。
【0076】
(その他の実施の形態)
上記実施形態の磁気式のロータリエンコーダでは、第1センサ部1aおよび第2センサ部1bの第2検出結果に磁石と磁気抵抗素子とを用いたが、第1センサ部1aおよび第2センサ部1bの第2検出結果の一方あるいは双方をレゾルバによって構成した場合に本発明を適用してもよい。
【0077】
上記実施形態のロータリエンコーダは、磁気式であったが、光学式のロータリエンコーダに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1・・・ロータリエンコーダ
1a・・・第1センサ部
1b・・・第2センサ部
20・・・第1磁石
30・・・第2磁石
40・・・第1磁気抵抗素子
51・・・第1ホール素子
52・・・第2ホール素子
60・・・第2磁気抵抗素子
101・・・絶対角度取得部
102・・・メモリ(記憶部)
103・・・位相差取得部
104・・・変換絶対角度データ算出部
105・・・第1位相補正部
106・・・補正値取得部
107・・・相対誤差補正部
110・・・第2絶対角度データ生成部
113・・・角度位置決定部
114・・・位相比較部
115・・・位相補正部
abs-1・・・第1絶対角度データ
INC・・・インクリメンタル角度データ
INC−abs・・・インクリメンタル信号変換絶対角度データ
L・・・回転中心軸方向
Δp・・・位相差
Δq1・・・補正値
Δq2・・・中間補正値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13