(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車等に搭載される広角レンズには、環境温度に対応できる広い温度範囲で安定した特性が求められる。しかしながら、特許文献1に記載の広角レンズでは、絞りの両側に配置された第3レンズおよび第4レンズがプラスチックレンズであるため、広い温度範囲で安定した特性を得ることができないという問題点がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、プラスチックレンズとガラスレンズとを併用するとともに、広い温度範囲で安定した特性を得ることができる広角レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る広角レンズは、物体側より順に配置された第1レンズ、第2レンズ、第3レンズ、第4レンズ、絞り、第5レンズ、第6レンズおよび第7レンズからなり、前記第1レンズは、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズであり、前記第2レンズは、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズであり、前記第3レンズは、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズであり、前記第4レンズは、物体側および像側に凸面を向けた正レンズであり、前記第5レンズは、物体側および像側に凸面を向けた正レンズであり、前記第6レンズは、像側に凹面を向けた負レンズであり、前記第7レンズは、物体側および像側に凸面を向けた正レンズであり、前記第5レンズはガラスレンズであり、前記第2レンズ、前記第3レンズ、前記第4レンズ、前記6レンズおよび前記第7レンズはプラスチックレンズであり、前記第6レンズと前記第7レンズは、前記第6レンズの像側の面と前記第7レンズの物体側の面とが接着剤により接合された接合レンズを構成しており、前記第5レンズの像側の面の中心曲率半径をR52とし、全体の焦点距離をf0としたとき、中心曲率半径R52および焦点距離f0は、以下の条件式
2×f0≦|R52|≦5×f0
を満たしていることを特徴とする。
【0008】
本発明では、プラスチックレンズとガラスレンズとを併用したため、全体をガラスレン
ズとした場合と比較してコストを低減することができる。また、絞りの両側に配置されたレンズ(第4レンズおよび第5レンズ)のうちの一方(第5レンズ)をガラスレンズとしたため、温度特性を向上することができる。また、第5レンズについては、像側の面の中心曲率半径R52、および全体の焦点距離f0が以下の条件式
2×f0≦|R52|≦5×f0
を満たしているため、光束の最も端を通る光線と第5レンズの像側の面とが成す角度が直角に近い。このため、温度が変化した際の焦点の移動量を低減することができるとともに、温度が変化した際の画角の変化量を低減することができる。従って、広い温度範囲にわたって安定した特性を得ることができる。
【0009】
本発明において、前記第5レンズの物体側の面の中心曲率半径をR51としたとき、中心曲率半径R51、R52は、以下の条件式
|R51|≧|R52|
を満たしている態様を採用することができる。かかる態様によれば、各種収差を適正に補正することができる。
【0010】
本発明において、前記第1レンズはガラスレンズである態様を採用することができる。かかる態様によれば、最も外側に位置する第1レンズの物体側の面に傷がつきにくい。
【0011】
本発明において、前記第7レンズの中心厚をT7とし、前記第7レンズの物体側の面の光線有効エリアの周辺厚みをC7としたとき、中心厚T7および周辺厚みC7は、以下の条件式
2≦(T7/C7)≦3
を満たしている態様を採用することができる。第1レンズがガラスレンズである場合、基本的にはアッベ数が大きい程、倍率色収差を低減することができる。但し、アッベ数が大きい場合、屈折率が小さくなるため、第1レンズの有効径を大きくする必要がある。このような場合でも、レンズユニットの外径寸法の制約から第1レンズの有効径を小さくせざるを得ない場合があり、その場合、色収差が大きくなる。それでも、第7レンズの中心厚T7および周辺厚みC7が以下の条件式
2≦(T7/C7)≦3
を満たしていれば、色収差を適正に補正することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、プラスチックレンズとガラスレンズとを併用したため、全体をガラスレンズとした場合と比較してコストを低減することができる。また、絞りの両側に配置されたレンズ(第4レンズおよび第5レンズ)のうちの一方(第5レンズ)をガラスレンズとしたため、温度特性を向上することができる。また、第5レンズについては、像側の面の中心曲率半径R52、および全体の焦点距離f0が以下の条件式
2×f0≦|R52|≦5×f0
を満たしているため、光束の最も端を通る光線と第5レンズの像側の面とが成す角度が直角に近い。このため、温度が変化した際の焦点の移動量を低減することができるとともに、温度が変化した際の画角の変化量を低減することができる。従って、広い温度範囲にわたって安定した特性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した広角レンズの実施の形態を説明する。なお、以下の説明において、光軸Lが延在する方向において物体側にLaを付し、像側にLbを付してある。
【0015】
[実施の形態1]
(全体構成)
図1は、本発明を適用した広角レンズ100の構成を示す説明図である。表1には、本発明の実施の形態1に係る広角レンズ100のレンズデータを示してある。なお、
図1に各面1〜18を表すにあたって、非球面には「*」を付してある。また、表1の上段には、各面の中心曲率半径(Radius)、厚さ(Thickness)、屈折率nd、アッベ数νd、円錐係数K、線膨張係数等が示されており、中心曲率半径や厚さの単位はmmである。また、レンズ面が物体側Laに向けて突出した凸面あるいは物体側Laに向けて凹んだ凹面である場合には、中心曲率半径を正の値とし、レンズ面が像側Lbに向けて突出した凸面あるいは像側に向けて凹んだ凹面である場合、中心曲率半径を負の値としてある。また、表1の下欄には、非球面の形状を下式(数1)で表した際の非球面係数A4、A6、A8、A10・・が示されている。
【0017】
下式において、サグ量(光軸方向の軸)をZ、光軸と垂直方向の高さ(光線高さ)をr
、円錐係数をK、中心曲率半径の逆数をcとしてある。
【0019】
図1および表1に示すように、広角レンズ100は、物体La側より順に配置された第1レンズL1、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、絞り60、第5レンズL5、第6レンズL6および第7レンズL7からなり、第7レンズL7に対して像側Lbに平板状のフィルタ70、平板状のカバーガラス80、および撮像素子85が配置されている。本形態において、広角レンズ100は立体射影方式であり、理想像高を基準としたときの最大ディストーションは、絶対値で20%以下に設計されている。
【0020】
広角レンズ100は、レンズ系全体の焦点距離f0(有効焦点距離:Effective Focal Length)が1.43mmであり、F値が2.0であり、物像間距離(Total Track)が15.5mmである。また、広角レンズ100は、垂直画角が141.9°(像高=3.8mm)であり、水平画角が193.8°(像高=4.8mm)である。
【0021】
なお、
図1および表1には、第1レンズL1に対して物体側Laに仮想の平面90(画像)が存在するものとし、かかる平面90を第0面0としてある。また、絞り60によって第9面9が構成されている。フィルタ70の物体側Laの面によって第16面16が構成され、フィルタ70の像側Lbの面によって第17面17が構成されている。カバーガラス80の物体側Laの面によって第18面18が構成され、カバーガラス80の像側Lbの面によって第19面19が構成されている。撮像素子85の撮像面によって第20面20が構成されている。なお、第2レンズL2と第3レンズL3との間には、環状の遮光シートが配置されている。
【0022】
(レンズ構成)
第1レンズL1は、物体側Laに凸面(第1面1)を向けた負メニスカスレンズ(負のパワーを有するメニスカスレンズ)であり、像側Lbに凹面(第2面2)を向けている。第2レンズL2は、物体側Laに凸面(第3面3)を向けた負メニスカスレンズ(負のパワーを有するメニスカスレンズ)であり、像側Lbに凹面(第4面4)を向けている。第3レンズL3は、物体側Laに凹面(第5面)を向けた負メニスカスレンズ(負のパワーを有するメニスカスレンズ)であり、像側Lbに凸面(第6面6)を向けている。第4レンズL4は、物体側Laおよび像側Lbに凸面(第7面7および第8面8)を向けた正レンズ(正のパワーを有する両凸レンズ)である。第5レンズL5は、物体側Laおよび像側Lbに凸面(第10面10および第11面11)を向けた正レンズ(正のパワーを有する両凸レンズ)である。第6レンズL6は、像側Lbに凹面(第13面13)を向けた負レンズ(負のパワーを有するレンズ)である。本形態において、第6レンズL6は、像側Lbに凹面(第13面13)を向けた負メニスカスレンズ(負のパワーを有するメニスカスレンズ)であり、物体側Laに凸面(第12面12)を向けている。第7レンズL7は、物体側Laおよび像側Lbに凸面(第14面14および第15面15)を向けた正レンズ(正のパワーを有する両凸レンズ)である。
【0023】
第1レンズL1の物体側Laの凸面(第1面1)および像側Lbの凹面(第2面2)は、いずれも球面である。第2レンズL2の物体側Laの凸面(第3面3)および像側Lbの凹面(第4面4)は、いずれも非球面である。第3レンズL3の物体側Laの凹面(第
5面)および像側Lbの凸面(第6面6)は非球面である。第4レンズL4の物体側Laの凸面(第7面7)および像側Lbの凸面(第8面8)は、いずれも非球面である。第5レンズL5の物体側Laの凸面(第10面10)および像側Lbの凸面(第11面11)は、いずれも球面である。第6レンズL6の像側Lbの物体側Laの凸面(第12面12)および像側Lbの凹面(第13面13)は、いずれも非球面である。第7レンズL7の物体側Laの凸面(第14面14)および像側Lbの凸面(第15面15)は、いずれも非球面である。ここで、第6レンズL6と第7レンズL7とは、第6レンズL6の像側Lbの凹面(第13面13)と第7レンズL7の物体側Laの凸面(第14面14)とが接着剤50により接合された接合レンズL8を構成している。従って、接着剤50の物体側Laの面(第6レンズL6の像側Lbの凹面)が第13面13を構成している。
【0024】
本形態において、第5レンズL5はガラスレンズであり、各種レンズ材料のうち、−40℃〜+120℃の範囲において屈折率の温度係数がリニアに変化するものが用いられている。第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、第6レンズL6および第7レンズL7は、アクリル樹脂系、ポリカーボネート系、ポリオレフィン系等のプラスチックレンズである。第1レンズL1は、ガラスレンズおよびプラスチックレンズのいずれであってもよいが、本形態において、第1レンズL1は、ガラスレンズである。従って、最も外側に位置する第1レンズL1の物体側の凸面(第1面1)が露出している場合でも、第1レンズL1に傷がつきにくい。
【0025】
(レンズの詳細構成)
このように構成した6群7枚の広角レンズ100において、第5レンズL5の像側Lbの凸面(第11面11)の中心曲率半径R52は、−4.215mmである。また、広角レンズ100全体の焦点距離f0(有効焦点距離)は、1.43mmである。従って、中心曲率半径R52および焦点距離f0は、以下の第1条件式を満たしている。
(2×f0)=2.86≦|R52|=4.215≦(5×f0)=7.15
なお、ガラスレンズからなる第5レンズL5の像側Lbの凸面(第11面11)の中心曲率半径R52が2×f0以上であるため、ガラス成形が容易であるとともに、レンズ面を研磨により形成しやすくなるといえる。
【0026】
また、第5レンズL5の物体側Laの凸面(第10面10)の中心曲率半径R51は、8.503mmである。従って、中心曲率半径R51、R52は、以下の第2条件式を満たしている。
|R51|=8.503≧|R52|=4.215
【0027】
また、第7レンズL7の中心厚T7は2.819mmであり、第7レンズL7の物体側Laの凸面(第14面14)の光線有効エリアの周辺厚みC7は1.18mmである。従って、中心厚T7および周辺厚みC7は、以下の第3条件式を満たしている。
2≦(T7/C7)=2.389≦3
【0028】
(MTF特性)
図2は、本発明の実施の形態1に係る広角レンズ100の+25℃におけるMTF特性を示すグラフである。
図3は、本発明の実施の形態1に係る広角レンズ100の−40℃におけるMTF特性を示すグラフである。
図4は、本発明の実施の形態1に係る広角レンズ100の+85℃におけるMTF特性を示すグラフである。なお、
図2、
図3および
図4では、(a)に周波数が72lp/mmにおけるMTF特性を示し、(b)に周波数が36lp/mmにおけるMTF特性を示してある。また、
図2、
図3および
図4には、画角0°、20°40°、60°、80°、95°におけるタンジェンシャル(Tan:Tangential)方向およびサジタル(Sagi:Sagittal)方向のMTF特性を示してある。
図2、
図3および
図4に示すように、本形態の広角レンズ100は十分な解像度を有する
とともに、広い温度範囲にわたって十分な解像度を有する。
【0029】
(収差特性)
図5は、本発明の実施の形態1に係る広角レンズ100の球面収差を示すグラフである。
図6は、本発明の実施の形態1に係る広角レンズ100の湾曲収差を示すグラフである。
図7は、本発明の実施の形態1に係る広角レンズ100の0℃および+20℃における横収差を示すグラフである。
図8は、本発明の実施の形態1に係る広角レンズ100の+40℃および+60℃における横収差を示すグラフである。
図9は、本発明の実施の形態1に係る広角レンズ100の+80℃および+95℃における横収差を示すグラフである。なお、
図5には、波長0.4358μmから0.9μmの光における球面収差を示してある。
図6には、波長0.435μmから0.9μmの光に関し、タンジェンシャル(Tan:Tangential)方向およびサジタル(Sagi:Sagittal)方向の湾曲収差を示してある。
図7〜
図9には、波長0.435835μmから0.65628μmの光に関し、タンジェンシャル(Tan:Tangential)方向およびサジタル(Sagi:Sagittal)方向の横収差を纏めて示してある。
【0030】
図5、
図6および
図7に示すように、本形態の広角レンズ100は、球面収差、湾曲収差および横収差において実用上十分な特性を示す。また、
図7、
図8および
図9に示すように、0℃から+95℃の温度範囲において、実用上十分な横収差特性を示す。
【0031】
(画角の温度特性)
図10は、本発明の実施の形態1に係る広角レンズ100の画角−温度特性を示すグラフである。
図10から分かるように、本形態の広角レンズ100では、−40℃から+85℃という広い温度範囲にわたって画角の変化が小さい。
【0032】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の広角レンズ100では、5枚のプラスチックレンズと2枚のガラスレンズとを併用したため、全体をガラスレンズとした場合と比較してコストを低減することができる。また、絞り60の両側に配置されたレンズ(第4レンズL4および第5レンズL5)のうちの一方(第5レンズL5)をガラスレンズとしたため、温度特性を向上することができる。また、第5レンズL5については、像側Lbの凸面(第11面)の中心曲率半径R52、および全体の焦点距離f0が第1条件式を満たしているため、光束の最も端を通る光線と第5レンズL5の像側Lbの凸面(第11面)とが成す角度が直角に近い。このため、温度が変化した際の焦点の移動量を低減することができるとともに、温度が変化した際の画角の変化量を低減することができる。従って、広い温度範囲にわたって安定した特性を得ることができる。
【0033】
また、第5レンズL5の物体側Laの凸面(第10面10)の中心曲率半径R51および像側Lbの凸面(第11面11)の中心曲率半径R52が第2条件式を満たしているため、各種収差を適正に補正することができる。
【0034】
なお、本形態では、第1レンズL1として屈折率が大きいものを用いたが、色収差をさらに低減することを目的に、第1レンズL1の屈折率を小さくした場合でも、倍率色収差を効果的に低減することができるように、第7レンズL7の中心厚T7、および第7レンズL7の物体側Laの面の光線有効エリアの周辺厚みC7が第3条件式を満たすように構成してある。すなわち、第1レンズL1はガラスレンズであるため、基本的にはアッベ数が大きい程、倍率色収差を低減することができるが、アッベ数が大きい場合、屈折率が小さくなるため、第1レンズL1の有効径を大きくする必要がある。それにもかかわらず、レンズユニットの外径寸法の制約から第1レンズL1の有効径を小さくせざるを得ない場合があり、その場合、第1レンズL1の曲率半径を小さくする必要がある。その結果、倍
率色収差が逆に大きくなるが、第7レンズL7の中心厚T7および周辺厚みC7が第3条件式を満たしていれば、色収差を適正に補正することができる。
【0035】
[実施の形態2]
図11は、本発明の実施の形態2に係る広角レンズ100のMTF特性を示すグラフであり、
図11には、−40℃〜105℃における周波数が60lp/mmのMTF特性を示してある。
図12は、本発明の実施の形態2に係る広角レンズ100の画角−温度特性を示すグラフである。表2には、本発明の実施の形態2に係る広角レンズ100のレンズデータを示してある。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、
図1を参照して説明する。
【0037】
図1および表2に示すように、本形態の広角レンズ100も、実施の形態と同様、物体側Laより順に配置された第1レンズL1、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、絞り60、第5レンズL5、第6レンズL6および第7レンズL7からなり、第7レンズL7に対して像側Lbに平板状のフィルタ70、平板状のカバーおよび撮像素子
85が配置されている。本形態において、広角レンズ100は立体射影方式であり、理想像高を基準としたときの最大ディストーションは、絶対値で20%以下に設計されている。
【0038】
本形態の広角レンズ100は、第5レンズL5の像側Lbの凸面(第11面11)の中心曲率半径R52は、−4.016mmであり、レンズ系全体の焦点距離f0は1.4422mmである。従って、中心曲率半径R52および焦点距離f0は、以下の第1条件式を満たしている。
(2×f0)=2.8844≦|R52|=4.016≦(5×f0)=7.211
【0039】
また、第5レンズL5の物体側Laの凸面(第10面10)の中心曲率半径R51は、8.058mmである。従って、中心曲率半径R51、R52は、以下の第2条件式を満たしている。
|R51|=8.058≧|R52|=4.016
【0040】
また、第7レンズL7の中心厚T7は2.515mmであり、第7レンズL7の物体側Laの凸面(第14面14)の光線有効エリアの周辺厚みC7は1.25mmである。従って、中心厚T7および周辺厚みC7は、以下の第3条件式を満たしている。
2≦(T7/C7)=2.012≦3
【0041】
それ故、
図11および
図12に示すように、本形態の広角レンズ100も実施の形態1と同様な効果を奏する。より具体的には、
図11に示すように、本形態の広角レンズ100は十分な解像度を有するとともに、−40℃から+105℃という広い温度範囲にわたって十分な解像度を有する。また、
図12に示すように、本形態の広角レンズ100では、−40℃から+105℃という広い温度範囲にわたって、垂直画角、水平画角、および対角画角の変化が小さい。
【0042】
[実施の形態3]
図13は、本発明の実施の形態3に係る広角レンズ100の構成を示す説明図である。
図14は、本発明の実施の形態3に係る広角レンズ100の各温度におけるMTF特性を示すグラフであり、
図14(a)、(b)、(c)には、−40℃、+25℃、+105℃における周波数が80lp/mmのMTF特性を示してある。また、
図14には、画角中心(ceter)とともに、像高が水平方向で2.688mm、および像高が垂直方向で1.512mmにおけるタンジェンシャル(Tan:Tangential)方向およびサジタル(Sagi:Sagittal)方向のMTF特性を示してあり、例えば、像高が水平方向で2.688mmにおけるタンジェンシャル(Tan:Tangential)方向のMTF特性については「Tan2.688mmの曲線で示してある。
図15は、本発明の実施の形態3に係る広角レンズ100の各温度における画角の変化量を示すグラフであり、
図15(a)、(b)には、像高が水平方向で2.688mmにおける画角の変化量、および像高が垂直方向で1.512mmにおける画角の変化量を示してある。
【0043】
表3には、本発明の実施の形態3に係る広角レンズ100のレンズデータを示してある。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの詳細な説明を省略する。
【0045】
図13および表3に示すように、本形態の広角レンズ100も、実施の形態1と同様、物体La側より順に配置された第1レンズL1、第2レンズL2、第3レンズL3、第4
レンズL4、絞り60、第5レンズL5、第6レンズL6および第7レンズL7からなり、第7レンズL7に対して像側Lbに平板状のフィルタ70、平板状のカバーガラス80および撮像素子85が配置されている。本形態において、広角レンズ100は立体射影方式であり、理想像高を基準としたときの最大ディストーションは、絶対値で20%以下に設計されている。
【0046】
本形態の広角レンズ100は、レンズ系全体の焦点距離f0(有効焦点距離)が1.514であり、F値が2.0であり、物像間距離が15.9mmである。また、広角レンズ100は、垂直画角が112°(像高=3.0mm)であり、水平画角が196°(像高=5.4mm)である。
【0047】
第6レンズL6は、実施の形態1、2と同様、像側Lbに凹面(第13面13)を向けた負レンズ(負のパワーを有するレンズ)である。但し、実施の形態1、2と違って、第6レンズL6の物体側Laの面(第12面12)は、像側Lbに凹んだ凹面である。従って、第6レンズL6は、物体側Laおよび像側Lbに凹面を向けた両凹レンズである。第7レンズL7は、実施の形態1、2と同様、物体側Laおよび像側Lbに凸面(第14面14および第15面15)を向けた正レンズ(正のパワーを有する両凸レンズ)である。また、第6レンズL6は、物体側Laの凹面(第12面12)、および像側Lbの凹面(第13面13)が非球面である。第7レンズL7は、物体側Laの凸面(第14面14)、および像側Lbの凸面(第15面15)が非球面である。
【0048】
本形態でも、実施の形態1と同様、第6レンズL6と第7レンズL7とは、第6レンズL6の像側Lbの凹面(第13面13)と第7レンズL7の物体側Laの凸面(第14面14)とが接着剤50により接合された接合レンズL8を構成している。従って、接着剤50の物体側Laの面(第6レンズL6の像側Lbの凹面)が第13面13を構成している。
【0049】
第5レンズL5はガラスレンズであり、各種レンズ材料のうち、−40℃〜+120℃の範囲において屈折率の温度係数がリニアに変化するものが用いられている。第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、第6レンズL6および第7レンズL7は、アクリル樹脂系、ポリカーボネート系、ポリオレフィン系等のプラスチックレンズである。第1レンズL1は、ガラスレンズおよびプラスチックレンズのいずれであってもよいが、本形態において、第1レンズL1は、ガラスレンズである。
【0050】
その他の構成は、実施の形態1、2と同様である。このように構成した6群7枚の広角レンズ100は、表3に示す構成、および以下に説明する構成を有する。このため、
図14に示すように、−40℃から+105℃の温度範囲にわたって、実用上、十分な解像度を有している。また、
図15に示すように、−40℃から+105℃の温度範囲にわたって、最大画角の変動が小さい。
【0051】
(レンズの詳細構成)
広角レンズ100において、第5レンズL5の像側Lbの凸面(第11面11)の中心曲率半径R52は、−4.790mmである。また、広角レンズ100全体の焦点距離f0(有効焦点距離)は、1.514mmである。従って、中心曲率半径R52および焦点距離f0は、以下の第1条件式を満たしている。
(2×f0)=3.028≦|R52|=4.79≦(5×f0)=7.57
【0052】
それ故、光束の最も端を通る光線と第5レンズL5の像側Lbの凸面(第11面)とが成す角度が直角に近い。このため、温度が変化した際の焦点の移動量を低減することができるとともに、温度が変化した際の画角の変化量を低減することができる。従って、広い
温度範囲にわたって安定した特性を得ることができる。また、ガラスレンズからなる第5レンズL5の像側Lbの凸面(第11面11)の中心曲率半径R52が2×f0以上であるため、ガラス成形が容易であるとともに、レンズ面を研磨により形成しやすくなるといえる。
【0053】
また、第5レンズL5の物体側Laの凸面(第10面10)の中心曲率半径R51は、5.810mmである。従って、中心曲率半径R51、R52は、以下の第2条件式を満たしているので、各種収差を適正に補正することができる。
|R51|=5.810≧|R52|=4.790
【0054】
また、第7レンズL7の中心厚T7は3.150mmであり、第7レンズL7の物体側Laの凸面(第14面14)の光線有効エリアの周辺厚みC7は1.366mmである。従って、中心厚T7および周辺厚みC7は、以下の第3条件式を満たしている。
2≦(T7/C7)=2.306≦3
【0055】
それ故、レンズユニットの外径寸法の制約から第1レンズL1の有効径を小さくせざるを得ない場合があり、その場合、第1レンズL1の曲率半径を小さくする必要があるでも、色収差を適正に補正することができる。
【0056】
[他の実施の形態]
上記実施の形態において、第1レンズL1はガラスレンズであったが、第1レンズL1がプラスチックレンズである場合に本発明を適用してもよい。
【0057】
上記実施の形態において、中心曲率半径R52および焦点距離f0が、上記の第1条件式を満たしていたが、さらに、以下の条件式を満たすことが好ましい。
(2×f0)≦|R52|≦(4×f0)