特許第6769888号(P6769888)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社神戸製鋼所の特許一覧

<>
  • 特許6769888-熱エネルギー回収装置 図000002
  • 特許6769888-熱エネルギー回収装置 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769888
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】熱エネルギー回収装置
(51)【国際特許分類】
   F01K 27/02 20060101AFI20201005BHJP
   F01D 17/08 20060101ALI20201005BHJP
   F01D 17/00 20060101ALI20201005BHJP
   F02G 5/04 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   F01K27/02 D
   F01D17/08 A
   F01D17/00 C
   F02G5/04 C
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-22219(P2017-22219)
(22)【出願日】2017年2月9日
(65)【公開番号】特開2018-127970(P2018-127970A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2019年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176315
【弁理士】
【氏名又は名称】荒田 秀明
(72)【発明者】
【氏名】足立 成人
(72)【発明者】
【氏名】成川 裕
(72)【発明者】
【氏名】西村 和真
【審査官】 小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−200182(JP,A)
【文献】 特開2017−002882(JP,A)
【文献】 特開2016−164378(JP,A)
【文献】 特開2016−061199(JP,A)
【文献】 特開2015−190364(JP,A)
【文献】 特表2013−539836(JP,A)
【文献】 特開2013−100807(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/031287(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0224469(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0326076(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 7/36,13/02,23/02,27/02
F01D 17/00,17/08
F02G 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動媒体を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器から流出した作動媒体を膨張させる膨張機と、
前記膨張機に接続された動力回収機と、
前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器から流出した作動媒体を前記蒸発器へ送るポンプと、
前記蒸発器、前記膨張機、前記凝縮器及び前記ポンプをこの順に接続する循環流路と、
前記ポンプから流出した液相の作動媒体の一部を前記循環流路のうち前記蒸発器と前記膨張機との間の部位に供給する冷却流路と、
前記冷却流路に設けられた開閉弁と、
前記循環流路のうち作動媒体の一部が前記冷却流路を通じて供給される前記部位と前記膨張機との間の部位に設けられた遮断弁と、
前記遮断弁及び前記膨張機をバイパスするバイパス流路と、
前記バイパス流路に設けられたバイパス弁と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記動力回収機での動力の回収を停止する停止信号を受信すると、前記開閉弁を開前記遮断弁を閉じ、前記バイパス弁を開き、さらに、前記循環流路のうち前記蒸発器と前記膨張機との間の前記部位の温度を基準温度以下に維持しつつ前記ポンプの回転数を段階的に低下させ、前記ポンプを停止させる、熱エネルギー回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギー回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場等の各種設備の排熱から動力を回収する熱エネルギー回収装置が知られている。例えば、特許文献1には、加熱器と、膨張機と、発電機と、凝縮器と、循環ポンプと、加熱器、膨張機、凝縮器及び循環ポンプをこの順に接続する循環流路と、冷却用通路と、冷却用通路に設けられた冷却用弁と、を備える発電装置(熱エネルギー回収装置)が開示されている。
【0003】
加熱器は、作動媒体を蒸発させる。膨張機は、加熱器から流出した作動媒体を膨張させる。発電機は、膨張機の駆動により電力を生成する。凝縮器は、膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる。循環ポンプは、凝縮器から流出した作動媒体を加熱器へ送出する。冷却用通路は、循環ポンプから吐出された液相の作動媒体の一部が循環流路のうち加熱器と膨張機との間の部位に供給されるように、循環流路における循環ポンプの下流側の部位と循環流路における加熱器の下流側の部位とを接続している。このため、加熱器から流出した作動媒体は、冷却用通路を通じて供給される液相の作動媒体によって冷却される。また、循環流路のうち加熱器と膨張機との間の部位には、遮断弁が設けられている。
【0004】
この熱エネルギー回収装置は、当該装置の運転中において、循環流路のうち加熱器と膨張機との間の部位の作動媒体が過熱状態であってかつ当該部位の作動媒体の温度が基準温度を超えることがないように冷却用弁を制御する制御部を有している。このため、作動媒体が気液二相の状態で膨張機に流入することが抑制され、かつ、循環流路のうち加熱器と膨張機との間の部位が高温になりすぎること(遮断弁やフランジのパッキン等に耐熱部材の使用が要求されること)が回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−190364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される発電装置では、当該装置の定常運転中においては、循環流路のうち加熱器と膨張機との間の部位が高温になりすぎることが回避されるものの、当該装置の停止時、すなわち、膨張機及び発電機を停止させる停止信号を制御部が受信してから膨張機、発電機及びポンプが完全に停止するまでの間に前記部位が高温になりすぎることの対策については、なんら言及されていない。
【0007】
本発明の目的は、動力回収機での動力の回収の停止時に、循環流路のうち蒸発部と膨張機との間の部位が高温になりすぎることを回避可能な熱エネルギー回収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明は、作動媒体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器から流出した作動媒体を膨張させる膨張機と、前記膨張機に接続された動力回収機と、前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器から流出した作動媒体を前記蒸発器へ送るポンプと、前記蒸発器、前記膨張機、前記凝縮器及び前記ポンプをこの順に接続する循環流路と、前記ポンプから流出した液相の作動媒体の一部を前記循環流路のうち前記蒸発器と前記膨張機との間の部位に供給する冷却流路と、前記冷却流路に設けられた開閉弁と、前記循環流路のうち作動媒体の一部が前記冷却流路を通じて供給される前記部位と前記膨張機との間の部位に設けられた遮断弁と、前記遮断弁及び前記膨張機をバイパスするバイパス流路と、前記バイパス流路に設けられたバイパス弁と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記動力回収機での動力の回収を停止する停止信号を受信すると、前記開閉弁を開前記遮断弁を閉じ、前記バイパス弁を開き、さらに、前記循環流路のうち前記蒸発器と前記膨張機との間の前記部位の温度を基準温度以下に維持しつつ前記ポンプの回転数を段階的に低下させ、前記ポンプを停止させる、熱エネルギー回収装置を提供する。
【0009】
本熱エネルギー回収装置では、制御部は、動力回収機での動力の回収を停止する停止信号を受信すると開閉弁を開くので、動力回収機が停止動作に入った後(動力回収機の回転数が低下し始めた後)、蒸発器から流出した気相の作動媒体が冷却流路を通じて供給された液相の作動媒体によって有効に冷却される。よって、動力回収機での動力の回収の停止時に、循環流路のうち蒸発器と膨張機との間の部位が高温になりすぎることが抑制されつつ動力回収機及びポンプが停止される
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、動力回収機での動力の回収の停止時に、循環流路のうち蒸発部と膨張機との間の部位が高温になりすぎることを回避可能な熱エネルギー回収装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態の熱エネルギー回収装置の構成を概略的に示す図である。
図2】制御部の制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態の熱エネルギー回収システムについて、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0015】
図1に示されるように、本熱エネルギー回収システムは、蒸発器10と、膨張機12と、動力回収機14と、凝縮器16と、ポンプ18と、蒸発器10、膨張機12、凝縮器16及びポンプ18をこの順に接続する循環流路20と、冷却流路30と、制御部40と、を備えている。
【0016】
蒸発器10は、作動媒体と加熱媒体とを熱交換させることによって作動媒体を蒸発させる。
【0017】
膨張機12は、循環流路20のうち蒸発器10の下流側の部位に設けられている。膨張機12は、蒸発器10から流出した気相の作動媒体を膨張させる。本実施形態では、膨張機12として、気相の作動媒体の膨張エネルギーにより回転駆動されるロータを有する容積式のスクリュ膨張機が用いられている。
【0018】
動力回収機14は、膨張機12に接続されている。本実施形態では、動力回収機14として発電機が用いられている。この動力回収機14は、膨張機12の前記ロータに接続された回転軸を有している。動力回収機14は、前記回転軸が前記ロータの回転に伴って回転することにより電力を発生させる。なお、動力回収機14として、圧縮機等が用いられてもよい。
【0019】
凝縮器16は、循環流路20のうち膨張機12の下流側の部位に設けられている。凝縮器16は、膨張機12から流出した作動媒体と冷却媒体(冷却水等)とを熱交換させることによって作動媒体を凝縮させる。
【0020】
ポンプ18は、循環流路20における凝縮器16の下流側の部位(凝縮器16と蒸発器10との間の部位)に設けられている。ポンプ18は、凝縮器16から流出した液相の作動媒体を所定の圧力で蒸発器10に送る。
【0021】
冷却流路30は、ポンプ18から吐出された液相の作動媒体の一部が循環流路20のうち蒸発器10と膨張機12との間の部位に供給されるように、循環流路20のうちポンプ18の下流側の部位と循環流路20のうち蒸発器10の下流側の部位とを接続している。本実施形態では、循環流路20は、蒸発器10と膨張機12との間に形成された被冷却部22を有しており、冷却流路30の下流側の端部は、その被冷却部22の上部に接続されている。このため、ポンプ18から吐出された液相の作動媒体の一部は、冷却流路30を経由して被冷却部22内に供給される。これにより、蒸発器10から流出した気相の作動媒体が被冷却部22において有効に冷却される。被冷却部22は、循環流路20における蒸発器10と膨張機12との間の他の部位の径よりも大きな径を有している。なお、図1には、被冷却部22の下部に液相の作動媒体が溜まっている状態が示されている。
【0022】
本実施形態の熱エネルギー回収装置は、冷却流路30に設けられており開度調整が可能な開閉弁V1と、循環流路20のうち被冷却部22と膨張機12との間の部位に設けられた遮断弁V2と、遮断弁V2及び膨張機12をバイパスするバイパス流路32と、バイパス流路32に設けられたバイパス弁V3と、をさらに備えている。各弁V1〜V3は、開閉可能に構成されている。なお、熱エネルギー回収装置の定常運転時においては、遮断弁V2は開いており、バイパス弁V3は閉じている。
【0023】
制御部40は、動力回収機14での動力(本実施形態では電力)の回収中(膨張機12、動力回収機14及びポンプ18の駆動中)において、動力回収機14での動力の回収を停止する停止信号を受信すると、被冷却部22の冷却、つまり、ポンプ18から吐出された液相の作動媒体の一部の冷却流路30を通じた被冷却部22への供給を開始する。その後、制御部40は、循環流路20のうち蒸発器10と膨張機12との間の部位の温度が基準温度T1以下に維持されるようにポンプ18の回転数を低下させる。なお、前記停止信号は、オペレータが当該装置の停止操作を行ったときに制御部40に送信される信号や、動力回収機14(本実施形態では発電機)の異常を示す信号等を意味する。以下、図2を参照しながら、制御部40の制御内容について説明する。
【0024】
制御部40は、前記停止信号を受信すると、開閉弁V1を開き、遮断弁V2を閉じ、バイパス弁V3を開く(ステップS11)。これにより、ポンプ18から吐出された液相の作動媒体の一部が被冷却部22に供給されるので、蒸発器10から流出した気相の作動媒体が被冷却部22において有効に冷却される。また、被冷却部22で冷却された作動媒体は、バイパス流路32を経由して凝縮器16へ向かう。なお、ステップS11と同時、あるいは、その前に、膨張機12及び動力回収機14の回転数を低下させてもよい。
【0025】
その後、制御部0は、ポンプ18の回転数を低下させる(ステップS12)。これにより、冷却流路0を通じて被冷却部22に供給される液相の作動媒体の流量(被冷却部22での冷却量)が低下する。一方で、蒸発器10への加熱媒体の供給が継続されると、蒸発器10内に存在する液相の作動媒体の蒸発及び蒸発器10から流出した気相の作動媒体の被冷却部22への流入が継続されるので、循環流路20のうち蒸発器10と膨張機12との間の部位の温度Tが上昇する場合がある。なお、前記温度Tは、循環流路20のうち被冷却部22と遮断弁V2との間の部位に設けられた温度センサ42により検出される。
【0026】
本実施形態では、制御部40は、ポンプ18の回転数を低下させた後(ステップS12の後)、循環流路20のうち蒸発器10と膨張機12との間の部位の温度Tが基準温度T1(例えば130℃)以下か否かを判定する(ステップS13)。
【0027】
この結果、前記温度Tが基準温度T1以下である場合に、制御部40は、ステップS12に戻る、つまり、ポンプ18の回転数をさらに低下させる。このため、前記部位の温度Tが基準温度T1に維持されつつポンプ18が安定的に停止される。なお、ステップS13でNOの場合、制御部40は、再びステップS13に戻る。
【0028】
以上のように、本熱エネルギー回収装置では、制御部40は、動力回収機14での動力の回収を停止する停止信号を受信すると開閉弁V1を開くので、動力回収機14が停止動作に入った後(動力回収機14の回転数が低下し始めた後)、蒸発器10から流出した気相の作動媒体が冷却流路30を通じて供給された液相の作動媒体によって有効に冷却される。よって、動力回収機14での動力の回収の停止時に、循環流路20のうち蒸発器10と膨張機12との間の部位が高温になりすぎることが抑制される。したがって、遮断弁V2やバイパス弁V3のパッキンに耐熱部材を用いることが不要となる。
【0029】
また、制御部40は、開閉弁V1を開いた後、前記温度Tが基準温度T1以下に維持されるようにポンプ18の回転数を低下させるので、前記部位が高温になりすぎることが抑制されつつ動力回収機14及びポンプ18が停止される。
【0030】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0031】
例えば、被冷却部22の径は、循環流路20における蒸発器10と膨張機12との間の他の部位の径と同じに設定されてもよい。
【符号の説明】
【0032】
10 蒸発器
12 膨張機
14 動力回収機
16 凝縮器
18 ポンプ
20 循環流路
30 冷却流路
32 バイパス流路
40 制御部
V1 開閉弁
V2 遮断弁
V3 バイパス弁
図1
図2