(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、保温材などで被覆された配管の外面における腐食の有無を検出する際、鋼管などの配管に対して接触している部材に対し、打撃を印加し、印加した打撃により発生する振動波を被覆面により測定し、振動波の周波数変化の程度により、接触している腐食の有無の検出を行なう。
図1は、本発明における印加した打撃により生じる振動波の周波数変化により、配管の外面における腐食の検出の原理を説明する概念図である。
図1(a)は、配管101の配設方向に対して平行な面で、配管101を切断した断面を示している。
【0016】
以下の説明においては、配管を被覆している被覆材を保温材として説明する。保温材102は、例えば、固形の酸化物(ケイ酸カルシウム)であり、所定の厚さを有する円筒を中心軸を含んだ平面で切断した形状を有し、配管101が円筒内部に挿入されるように組み立てて用いる。また、保温材102などの被覆材は、配管101に接触した界面を介して、配管101に伝搬する振動波を伝達することができる材料で形成されている必要がある。
【0017】
図1(a)において、配管101同士を接続するフランジ201に対し、配管に対して打撃を与える。フランジは、保温材102から露出されており、被覆としての保温材102を取り外す必要が無く、配管101に対して打撃を印加することができる。また、フランジ201以外には、配設される配管101を支持する支持部材(シュー(SHOE)、配管を固定・支持する台、枠など)202も直接に配管101に接触しており、接触した支持部材202が被覆する保温材102から露出する露出部分があり、配管101に打撃を印加するために用いることができる。
【0018】
配管101の外面に腐食領域(以下、錆こぶと称する)501が生じていない場合、フランジ201に対して印加した打撃(衝撃)により、配管101を振動として伝搬する打撃波(衝撃波)が、配管101の外面と保温材102との界面において波形が変化すること無く、すなわち正常波形として振動センサ11_Aにより検出される。
一方、配管101の外面に錆こぶ501が生じている場合、錆こぶ501の領域において打撃波の波形が変化して新たな波形形状が生成され、この元々の打撃波の波形と、変形した打撃波の波形とが合成され(重畳して)、錆こぶ501が発生していない状態で検出される正常な波形とは異なった合成波の非正常波形として、振動センサ11_Bにより検出される。以下、振動センサ11_A、振動センサ11_B及び振動センサ11_Cを総称する際、単に振動センサ11として説明する。
【0019】
この打撃波を用いた錆こぶの検出方法は、実際の精油所施設における配管を用いた実験により、本発明の発明者が見いだした。
錆こぶ501が発生している所定の範囲(例えば、錆こぶ501が形成された位置の前後1m程度の幅)において、上述した非正常波形が観測され、この所定の範囲外においては正常波形が観測される。
非正常波形の振動波は、配管101を伝搬するのではなく、保温材102において、保温材102と配管101との界面から、保温材102の外面方向に放射波として伝搬する。
【0020】
また、保温材の場合には、保温材を固定するために、保温材の外面に板金の覆い(不図示)が設けられている。
図1(b)において、配管101の配設方向に対して垂直な面で、線分A−Aの位置で配管101を切断した断面を示している。
保温材102の外面は、板金103により覆われ、打撃波を検出する振動センサ11_C(他の振動センサも同様)は、板金103及び保温材102の各々を介して、配管101を伝搬する打撃波の波形を検出する。
支持部材202は、配管101に支持する部分において接触しており、自身に印加された打撃による打撃波を、配管101に対して伝搬させることができる。
【0021】
また、空間102Bは、配管101の外面と保温材102の内面との間に形成される空間である。配管101を伝搬する打撃波は、この空間102Bを介し、保温材102に対して伝達されることはない。錆こぶ501は、保温材102の隙間から侵入した水分により発生するが、配管101と保温材102との界面における結露により生じるため、配管101と保温材102との界面に発生し易い。このため、配管101と保温材102との界面における錆こぶ501を検出することにより、配管101の外面における全ての錆こぶ501の検出を行なうのと同様の結果を得ることができる。
【0022】
図2は、本発明における一実施形態による腐食検出システムの構成例を示す図である。
図2に示す腐食検出システム1は、腐食検出装置10、振動センサ11、打撃機構18及び打撃体18Bの各々を備えている。
腐食検出装置10は、振動測定部12、波形微分演算部13、波形比較部14、腐食判定部15、記憶部16及び打撃制御部17の各々を有している。
【0023】
振動センサ11は、振動加速度センサ、振動速度センサ及び渦電流型変位センサなどから形成され、振動が検出可能なセンサであればいずれを用いても良い。そして、振動センサ11は、錆こぶの検出対象である配管101の検出位置に適宜配設されており、配管101に伝搬する打撃波の波形を、配管101及び保温材102の界面、保温材102、板金103の各々を介して、振動波形として検出する。ここで、振動センサ11は、検出する振動波形の強度が予め設定された強度となってから、所定の期間に検出された振動波形の波形データを、自身の識別情報とともに振動測定部12に対して、通信を行なう伝送媒体として有線あるいは無線(例えば、無線LAN(Local Area Network)など)により出力する。
【0024】
また、上記所定の期間とは、例えば、配管101に対して打撃波が印加されてから共振が発生するまでの期間である。波数としては、例えば、実験結果から3波から4波程度とされる。また、配管101を被覆する被覆材が保温材102である場合、保温材102の外面の保護及び固定のため板金で覆われているため、振動センサ11は、磁石で板金103に取り付ける構成としても良い。また、被覆材が磁石に付かない非磁性体材料で形成されている場合、振動センサ11に固定具を設けて、被覆材の外面に振動センサ11を固定して、振動波形を測定する構成としても良い。
【0025】
振動測定部12は、振動センサ11から供給される振動波形を示す波形データと、振動センサ11の各々を識別する識別情報と、波形データを受信した受信時刻との組を、記憶部16の測定テーブルに対し、順次波形データが供給される毎に書き込んで記憶させる。
波形微分演算部13は、順次、記憶部16から波形データを読み出し、読み出した波形データを2階微分し、2階微分波形データを元の波形データに対応させて記憶部16に書き込んで記憶させる。このとき、波形微分演算部13は、後述する波形比較部14において相関値の計算を行えるように、求めた2階微分波形データに対して、数値の極性(+/−)を波形データに合わせるために「−1」を乗算する。
【0026】
すなわち、打撃波の波形データ(0階微分)が以下の(1)式で表される。
f(t)=sin(ωt)+α …(1)
(1)式の1階微分は、以下の(2)式で表される。
f(t)/dt=ω・cos(ωt) …(2)
(1)式の2階微分は、以下の(3)式で表される。
f(t)/dt
2=−ω
2・sin(ωt) …(3)
(1)式の3階微分は、以下の(4)式で表される。
f(t)/dt
3=−ω
3・cos(ωt) …(4)
ここで、(3)式において、1階微分の結果から2階微分を算出した際、すなわちcos(ωt)を微分すると、−sin(ωt)となり、(1)式に示す元の波形データと極性が「+」から「−」に変化する。このため、上述したように、波形微分演算部13は、求めた2階微分波形データに対して、「−1」を乗算している。
【0027】
図3は、本実施形態における記憶部16に記憶されている測定テーブルの構成例を示す図である。測定テーブルは、レコード毎に、受信時刻、センサ識別情報、波形データインデックス、2階微分波形データインデックス、相関値及び錆こぶの有無のそれぞれの項目から構成されている。上記測定テーブルにおいて、受信時刻は、振動測定部12が波形データを振動センサ11から受信した時間である。センサ識別情報は、波形データを送信した振動センサ11を識別する識別情報である。波形データインデックスは、記憶部16において受信した波形データが記憶されている記憶領域のアドレスである。
【0028】
2階微分波形データインデックスは、記憶部16において2階微分波形データが記憶されている記憶領域のアドレスである。相関値は、波形データ(0階微分波形データ)と2階微分波形データ(「−1」が各時刻の波形強度(振幅値)に対して乗算された乗算結果の2階微分波形データ)との時間毎の波形強度の相関を示す数値である(後述)。錆こぶの有無は、波形データと2階微分波形データとの各時刻における波形強度の相関を示す相関値から判定した、配管101の外面に錆こぶが有るか無いかを示す情報である(後述)。
【0029】
図2に戻り、波形比較部14は、上記測定テーブルの最上部のレコードから順番に、順次、波形データインデックス及び2階微分波形データインデックスの各々を読み出す。そして、波形比較部14は、波形データインデックス及び2階微分波形データインデックスの各々に対応し、波形データ、2階微分波形データそれぞれを記憶部16から読み出す。波形比較部14は、波形データ及び2階微分波形データの各々において、それぞれ波形強度の最大値を抽出する。
【0030】
波形比較部14は、波形データ及び2階微分波形データの各々から、それぞれ波形強度の最大値を抽出する。そして、波形比較部14は、波形データ及び2階微分波形データの各々の波形強度の最大値により、波形データ、2階微分波形データそれぞれの波形強度を規格化する。また、波形比較部14は、規格化された波形データ及び2階微分波形データの各々における同一の時刻毎の波形強度の相関を示す相関値を算出する。そして、波形比較部14は、相関値を算出した波形データ及び2階微分波形データに対応させ、記憶部16の測定テーブルに対して、算出した相関値を書き込んで記憶させる。
【0031】
図4は、本実施形態における波形データと2階微分波形データとの相関値の算出を説明する図である。
図4(a)は、横軸が上記受信時刻を示す時間であり、縦軸が波形強度(波形強度の最大値で規格化した振動センサ信号の波形強度、従って最大値が「1」である)を示し、波形データ(0階微分波形、すなわち元の波形データ)の波形形状を示している。この
図4(a)の波形データは、配管101の外面に錆こぶが発生していない場合における波形形状、すなわち正常波形(錆こぶがない配管101における外面における健全な波形)の形状を示している。
【0032】
図4(b)は、横軸が上記受信時刻を示す時間であり、縦軸が波形強度(波形強度の最大値で規格化した振動センサ信号の波形強度、従って最大値が「1」である)を示し、2階微分波形データの波形の形状を示している。
図4(b)の波形形状を観察すると、
図4(a)の示す波形データにおいては、視認できない波形形状の変化が微分により強調されて若干視認できる。
図4(c)は、横軸が元波形の信号の各時刻における波形強度を示し、縦軸が2階微分波形の各時刻における波形強度を示している。すなわち、この
図4(c)は、波形データと2階微分波形データとにおける同一時間における波形強度の相関値を示している。この
図4(c)においては、相関値が0.95であり、波形データと2階微分波形データとが同様な波形形状であることを示している。
【0033】
図5は、本実施形態における波形データと2階微分波形データとの相関値の算出を説明する図である。
図5(a)は、横軸が上記受信時刻を示す時間であり、縦軸が波形強度(波形強度の最大値で規格化した振動センサ信号の波形強度、従って最大値が「1」である)を示し、波形データ(0階微分波形、すなわち元の波形データ)の波形形状を示している。この
図5(a)の波形データは、配管101の外面に錆こぶが発生している場合における波形形状、すなわち非正常波形(錆こぶが配管101の外面の全面腐食における波形)の形状を示している。
【0034】
図5(b)は、横軸が上記受信時刻を示す時間であり、縦軸が波形強度(波形強度の最大値で規格化した振動センサ信号の波形強度、従って最大値が「1」である)を示し、2階微分波形データの波形を示している。
図5(b)の波形形状を観察すると、
図5(a)の示す波形データにおいては、視認できない波形形状の変化が微分により強調されて、
図4(b)に比較してより顕著な波形形状の変化が視認できる。
図5(c)は、横軸が元波形の信号の各時刻における波形強度を示し、縦軸が2階微分波形の各時刻における波形強度を示している。すなわち、この
図5(c)は、
図4(c)と同様に、波形データと2階微分波形データとにおける同一時間における波形強度の相関値を示している。しかしながら、この
図5(c)においては、
図4(c)と異なり、相関値が0.59であり、波形データと2階微分波形データとが異なる波形形状であることを示している。
【0035】
本実施形態においては、上述したように、錆こぶがある場合、配管101を伝搬する振動である打撃波と、この打撃波に基づいて錆こぶで発生した(あるいは打撃波が変化した)波形とが保温材102を伝搬する際に合成され、打撃波と上述した新たに発生した波形とが合成波となった波形データを検出する。そして、この波形データの微分を行なうことにより、合成波における波形変化が強調され、2階微分波形データが元の波形データと異なった波形形状として求められ、元の波形データと2階微分波形データとの形状の相関値が低下する。本実施形態においては、上述した錆こぶがある場合、波形データと微分波形データとの相関値が低下することを用い、錆こぶの有無の検出を容易とするための指標として用いている。
【0036】
また、本実施形態においては、0階微分波形データ(元波形)と2階微分波形データとの、すなわち偶数階微分を行なった波形データ同士の形状の相関を算出している。しかしながら、1階微分波形データと3階微分波形データとの、すなわち奇数階微分を行なった波形データ同士の波形形状の相関値を算出して、錆こぶの有無の判定に用いても良い。また、(1)式を見て判るように、元の波形データには定数αとして、DC(直流)成分がバイアスとして含まれているため、1階微分波形データと3階微分波形データとの相関、あるいは2階微分波形データと4階微分波形データとの相関を求めて比較した方が、定数αを除去できるため、正確な相関値を求めることができる。
【0037】
図2に戻り、腐食判定部15は、記憶部16における測定テーブルの最上部のレコードから順番に、順次、相関値を読み出す。そして、腐食判定部15は、予め内部記憶部に設定されている閾値と、相関値とを比較する。このとき、腐食判定部15は、相関値が閾値未満の場合、配管101において、この相関値の算出に用いた波形データを測定した箇所に錆こぶがある(あるいはある可能性が高い)と判定する。一方、腐食判定部15は、相関値が閾値以上の場合、配管101において、この相関値の算出に用いた波形データを測定した箇所に錆こぶがない(あるいはある可能性が低い)と判定する。
そして、腐食判定部15は、判定に用いた相関値に対応させ、記憶部16の測定テーブルに判定した錆こぶの有無を書き込んで記憶させる。
【0038】
打撃制御部17は、配管101に加える打撃の強度を制御する。例えば、フランジ201と支持部材202との各々に同一の強度の打撃を与えても、それぞれから配管101に対して伝達される打撃の強度が実際には異なる。このため、記憶部16には、フランジ201に対して与える打撃の強度、支持部材202に対して与える打撃の強度それぞれが予め書き込まれて記憶されている。打撃制御部17は、打撃の強度を記憶部16から読み出し、打撃体18Bがフランジ201や支持部材202に対して与える打撃の強度が、読み出した打撃の強度となるように、打撃機構18を制御する。
【0039】
打撃機構18は、打撃制御部17の制御により、打撃体18Bを駆動し、所定の強度の物理的な打撃をフランジ201や支持部材202に対して衝突(激突)させることにより印加する。打撃機構18において、打撃体18Bとしてソレノイドリレーあるいは磁歪振動子などを用いても良い。あるいは、打撃機構18を設けず、作業者がフランジ201や支持部材202を、打撃体18Bとしてハンマーなどを用いて、作業者がフランジ201や支持部材202を叩き、配管101に対して打撃を与え、打撃波を生成するように構成しても良い。
【0040】
次に、
図6を用いて、本実施形態における腐食検出システムを用いた配管の外面における腐食(錆こぶ)の有無の検出を行なう処理の流れを説明する。
図6は、本実施形態における腐食検出システムを用いた配管の外面における腐食の有無の検出を行なう処理の流れ動作例を示すフローチャートである。
ステップS1:
作業者は、配管101の錆こぶの有無の検出を行なうため、予め設定されている(予定されている)検出する配管101における所定の位置において、配管101の保温材102を被覆している板金103の外面に対して、振動センサ11を取り付ける。例えば、振動センサ11には磁石が設けられている。そして、作業者は、この磁石により板金に対して、振動センサ11を固定して取り付ける。
【0041】
ステップS2:
作業者は、上記取り付け作業が終了した後、フランジ201あるいは支持部材202に対して打撃機構18を、打撃体18Bが打撃を行えられる位置に取り付ける。そして、作業者は、腐食検出システム1に対し、図示しない入力手段により、打撃機構18によって打撃体18Bをフランジ201あるいは支持部材202に対して激突させ、フランジ201あるいは支持部材202を介して配管101に、打撃を印加する動作を行うよう制御する。
【0042】
これにより、打撃制御部17は、打撃を印加する対象が、フランジ201であるか支持部材202であるかにより、印加する打撃の強度に対応した制御値を記憶部16から読み出す。そして、打撃制御部17は、読み出した制御値に対応した強度の打撃を、打撃機構18を駆動することで、打撃体18Bによりフランジ201あるいは支持部材202を叩き、フランジ201あるいは支持部材202に対して打撃による衝撃を印加する。フランジ201あるいは支持部材202を介して与えられた打撃により、配管101は振動する。そして、配管101には、発生した振動が打撃波として伝搬する。
【0043】
ステップS3:
振動センサ11は、配管101を伝搬する打撃波を、保温材102及び板金103の各々を介して振動波として検出する。このとき、振動センサ11は、検出される信号波が所定の強度を超えた時間から、予め設定された時間が経過するまでの検出期間の信号波を、相関値を求めるために用いる打撃波の波形データとして取得する。
そして、振動センサ11は、自身を識別する識別情報とともに、検出した打撃波の波形データを、腐食検出装置10に対して送信する。
ここで、振動センサ11として、センサ機能と無線機能とを有するセンサデバイス、例えばIoT(internet of things)の構成を有するセンサを用いても良い。この場合、振動センサ11は、インターネットを含む通信網(無線通信網を含む)を介して腐食検出装置10に対して自身の識別情報とともに、検出した打撃波の波形データを送信する。
【0044】
振動測定部12は、振動センサ11から、この振動センサ11の識別情報と波形データとが供給されると、これらを受信した受信時刻を内部の時計から取得する。
そして、振動測定部12は、記憶部16における測定テーブルに対し、取得した受信時刻に対応させて、供給された識別情報及び波形データの各々を書き込んで記憶させる。
また、振動測定部12は、測定テーブルに対するデータの書き込みが終了した後、図示しない表示画面に対し、錆こぶの検出処理を継続させるか否かを確認する通知を表示させる。
【0045】
ステップS4:
作業者は、表示画面に表示される上記通知を確認し、予定としている配管101における錆こぶの検出箇所の全てにおける波形データが取得できたか否か、すなわち所定の検出箇所全てに対する処理が終了したか否かの確認を行なう。
このとき、作業者は、全ての処理が終了したことを確認すると、錆こぶの有無の判定処理を開始させるため、腐食検出装置10に対して、判定処理の実行を開始させる制御を行なう。
一方、作業者は、全ての処理が終了していないことを確認すると、残りの他の検出箇所における打撃波の波形データの検出の処理を行なわせるため、ステップS1からの打撃波の波形データの検出処理を繰り返す。
【0046】
ステップS5:
波形微分演算部13は、例えば、記憶部16における測定テーブルを参照し、受信時刻が早い順に、打撃波の波形データを読み出す。
そして、波形微分演算部13は、読み出した波形データを、すでに述べた(1)式及び(2)式を用いることにより2階微分し、この2階微分の結果の微分波形データに対して、「−1」を乗算する。そして、波形微分演算部13は、乗算結果を2階微分波形データとし、微分前の元の波形データに対応させて、記憶部16における測定テーブルに対して書き込んで記憶させる。
波形微分演算部13は、記憶部16の測定テーブルにおける波形データの全てに対して、順次、上述した2階微分波形データを算出する処理を行なう。
【0047】
ステップS6:
波形比較部14は、例えば、記憶部16における測定テーブルを参照し、受信時刻が早い順に、波形データの波形データインデックスと、この波形データに対応する2階微分波形データの2階微分波形データインデックスとを組として読み出す。波形比較部14は、波形データインデックスにより波形データを、また2階微分波形データインデックスにより2階微分波形データを、記憶部16からそれぞれ読み出す。
そして、波形比較部14は、読み出した波形データにおける最大の波形強度(最大波形強度)を抽出し、この最大波形強度により、読み出した波形データにおける各時刻の波形強度の規格化を行なう。同様に、波形比較部14は、読み出した2階微分波形データにおける最大波形強度を抽出し、この最大波形強度により、読み出した2階微分波形データにおける各時刻における波形強度の規格化を行なう。
【0048】
次に、波形比較部14は、
図4及び
図5において説明したように、各々規格化された波形データ及び2階微分波形データにおける同一時刻の波形強度の相関値、すなわち波形データと2階微分波形データとの波形形状の相関値を算出する。
そして、波形比較部14は、算出した相関値を、この相関値を算出した波形データ及び2階微分波形データに対応させ、記憶部16の測定テーブルに対して書き込んで記憶させる。波形比較部14は、記憶部16の測定テーブルにおける波形データ及び2階微分波形データにおける組合わせの全てに対し、順次、上述した波形データ及び2階微分波形データにおける同一時刻の波形強度の相関値を算出する処理を行なう。
【0049】
ステップS7:
腐食判定部15は、例えば、記憶部16における測定テーブルを参照し、受信時刻が早い順に、波形データ及びこの波形データに対応する2階微分波形データの組合わせに対する相関値を読み出す。
そして、腐食判定部15は、読み出した相関値と、予め設定されている閾値との比較を行なう。このとき、腐食判定部15は、相関値が閾値以上である場合、この波形データを取得した箇所の配管101の外面に錆こぶが発生していないと判定する。一方、腐食判定部15は、相関値が閾値未満である場合、この波形データを取得した箇所の配管101の外面に錆こぶが発生している(あるいは相関値が閾値以上である場合に比較して、錆こぶが発生している確率が高い)と判定する。
【0050】
また、腐食判定部15は、相関値と閾値とを比較した比較結果を、比較に用いた相関値に対応させて、記憶部16の測定テーブルに対して書き込んで記憶させる。波形比較部14は、記憶部16の測定テーブルにおける波形データ及び2階微分波形データにおける組合わせの相関値の全てに対し、順次、上述した相関値と閾値との比較を行ない、錆こぶの発生の有無を判定する処理を行なう。
【0051】
配管101の予定した箇所の錆こぶの有無の検出処理が終了した後、作業者は、腐食検出装置10に対し、相関値の判定結果として錆こぶが有ると判定された受信時刻及び振動センサ11の識別情報の各々を抽出させる制御を行なう。
これにより、腐食判定部15は、記憶部16の測定テーブルを参照して、錆こぶの有無の項が有りとされている受信時刻及び振動センサ11の識別情報を抽出する。そして、腐食判定部15は、抽出した受信時刻及び振動センサ11の識別情報を、表示画面に対して表示し、作業者に対して錆こぶが有りの判定結果として通知する。
【0052】
作業者は、表示画面に表示された受信時刻及び振動センサ11の識別情報の組合わせから、この振動センサ11を取り付けた配管101の箇所を、例えば配管101における検出箇所の測定スケジュールが記載されたスケジュール表を参照することにより特定する。
そして、作業者は、特定した配管101における箇所をX線検出装置などにより詳細に観察し、補修が必要か否かの判定を行なう。また、特定した箇所の板金202及び保温材201の各々を取り外し、目視により補修が必要か否かの判定を行なうようにしてもよい。
【0053】
上述したように、本実施形態によれば、保温材102及び板金103により被覆された配管101の外面における腐食(錆こぶ)を、保温材102及び板金103を取り外すことなく、被覆されたままで配管101の外面における腐食の有無の検出を簡易に行なうことができる。
また、本実施形態によれば、被覆されたままで配管101の外面における腐食の有無の検出が簡易に行うことで、腐食していると特定された箇所にのみに、X線装置などを用いた補修の要否の詳細な確認を行なうことが可能となり、補修の要否の確認の効率を向上させることができる。
【0054】
また、上述した実施形態において、施設における配管の設計図(2次元座標系)をデジタルデータ化しておき、受信時刻及び振動センサ11の組合わせに対して、測定箇所の座標を測定テーブルに書き込む構成としても良い。
そして、腐食判定部15は、表示画面に表示される上記設計図の画像において、腐食があると判定された座標に、腐食有りを示すマークを表示し、配管のいずれの位置において、腐食が発生しているかを、腐食検出装置10の表示画面上においてビジュアル的に観察できる構成としても良い。
【0055】
次に、
図7は、上述した本実施形態における腐食検出システムを用いた配管管理システムの構成例を示す図である。
図7における配管管理システム20は、配管管理サーバ21、腐食検出システム1、施設データベース22及び管理データベース23の各々を備えている。
施設データベース22には、管理対象となっている所定の施設毎における配管の配置(設置)形状を示す設計図の画像データが予め書き込まれて記憶されている。
管理データベース23には、各施設の配管における腐食の有無の検出を行なう予定が、各施設及び各配管の各々が記載された検出予定テーブルが予め書き込まれて記憶されている。また、管理データベース23には、上記検出予定テーブルにおいて、検出が終了した施設及び配管の腐食の有無の検出を示す測定テーブルが、腐食検出システム1から送られ、検出の日時とともに施設及び配管(例えば、施設の施設名、設計図上における配管の検出箇所の座標値などの識別情報)に対応して書き込まれて記憶されている。
【0056】
管理サーバ21は、管理データベース23の検出予定テーブルを参照し、検出予定となった施設及び配管を表示画面に表示し、作業者に検出予定の施設及び配管であることを通知する。このとき、管理サーバ21は、施設及び配管の設計図の画像を、施設データベース22から読み出して、表示画面に表示する。これにより、作業者は、表示画面を確認して、腐食検出システム1により、通知された施設及び配管における腐食の有無の検出を行なう。また、管理サーバ21は、腐食検出システム1から送られた、腐食の有無の検出が終了した施設及び配管の腐食の有無の検出を示す測定テーブルを、すでに述べたように、検出を行なった日時と施設及び配管とに対応させて、検出結果テーブルとして管理データベース23に対して書き込んで記憶させる。
【0057】
また、
図2における腐食検出装置10の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述した配管を伝搬する打撃波の波形データを用い、この配管の外面に腐食が発生した領域の有無を検出する処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0058】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0059】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。