特許第6769905号(P6769905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769905
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】医療用長尺体
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20201005BHJP
   A61B 17/3209 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   A61M25/10 510
   A61B17/3209
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-67904(P2017-67904)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-166922(P2018-166922A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕史
(72)【発明者】
【氏名】田野 豊
(72)【発明者】
【氏名】福田 啓二
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】上野 真史
(72)【発明者】
【氏名】上内 洋輝
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−179183(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0190725(US,A1)
【文献】 特表平05−506805(JP,A)
【文献】 特開平03−030779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
A61B 17/3209
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトの先端部に固定された拡張部材と、
前記シャフトの先端側または前記拡張部材の先端側に固定され、少なくとも一部が前記拡張部材の外表面側に配置された線状部材と、を備え、
前記拡張部材は、前記シャフトに複数の羽根部を巻きつけるように配置された収縮状態と、前記シャフトの放射方向に拡張した拡張状態と、を有し、
前記線状部材は、前記拡張部材の周方向において前記拡張部材と重なる位置に、自然状態で凸部を形成する変形領域を有し、
前記変形領域は、前記拡張部材の収縮状態において、前記凸部を形成することを阻害されつつ、前記拡張部材の隣り合う羽根部の間に配置され、前記拡張部材の拡張状態において、前記拡張部材が放射方向に拡張することにより、前記拡張部材の外表面側で前記凸部を形成し、
前記変形領域は、自然状態で複数の前記凸部を形成するコイル部であり、
前記線状部材は、前記拡張部材の収縮状態において、前記コイル部が軸方向に伸長された状態で、前記拡張部材の隣り合う前記羽根部の間に配置され、前記拡張部材の拡張状態において、前記拡張部材の外表面側で前記コイル部を形成する、医療用長尺体。
【請求項2】
前記拡張部材の外表面および前記シャフトの外表面に配置されたチューブ部材を有し、
前記線状部材は、前記チューブ部材の内腔に配置される、請求項1に記載の医療用長尺体。
【請求項3】
前記チューブ部材は、前記拡張部材の外表面に配置された第1領域と、前記第1領域の基端側に位置し、前記シャフトの外表面に配置された第2領域と、を有し、
前記第1領域の内径は、前記拡張部材の拡張状態において、前記第2領域の内径よりも大きい、請求項2に記載の医療用長尺体。
【請求項4】
前記コイル部は、自然状態において、楕円形状または三角形状の前記凸部を形成する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用長尺体。
【請求項5】
前記シャフトの基端部に配置されたハブと、
前記線状部材に接続され、前記ハブに対して進退移動可能な操作部材と、を有する請求項1〜のいずれか1項に記載の医療用長尺体。
【請求項6】
前記拡張部材は、前記拡張部材の収縮状態において、隣り合う前記羽根部同士を固定する仮固定部を有し、
前記仮固定部による隣り合う前記羽根部同士の固定は、前記拡張部材の拡張状態において、解除される、請求項1〜のいずれか1項に記載の医療用長尺体。
【請求項7】
前記シャフトは、外管シャフトと、前記外管シャフトの内腔に配置された内管シャフトと、を有し、
前記内管シャフトは、前記外管シャフトの途中で開口する基端開口部を有し、
前記線状部材は、前記シャフトの軸心に垂直な断面において、前記シャフトの軸心に対して前記基端開口部と異なる位置に配置される、請求項1〜のいずれか1項に記載の医療用長尺体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体管腔で拡張可能な拡張部材を備えた医療用長尺体に関する。
【背景技術】
【0002】
血管等の生体管腔に形成された狭窄部等の病変部位を拡張する医療装置として、いわゆるバルーンカテーテルと称される医療用長尺体が知られている。また、バルーンカテーテルの一つとして、スコアリング機能が付加されたスコアリングバルーンカテーテル(カッティングバルーンカテーテル)が知られている。
【0003】
スコアリングバルーンカテーテルは、バルーン(拡張部材)の外表面に取り付けられたブレードを有している。一般的に、ブレードは、バルーンよりも剛性の高い樹脂や金属で構成されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
スコアリングバルーンカテーテルは、狭窄部を拡張させる処置に際し、バルーンに取り付けられたブレードを狭窄部に喰い込ませることにより、狭窄部に切れ目(亀裂)を入れながら、狭窄部を拡張できる。このため、スコアリングバルーンカテーテルは、高度石灰化病変(石灰化により硬化した病変部)の拡張に対して、特に高い治療効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−504059号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたスコアリングバルーンカテーテルは、バルーンとは別部材で構成された比較的剛性の高いブレードがバルーンの外表面に凸状をなすように常設されている。このため、上記のスコアリングバルーンカテーテルは、生体管腔での送達時(バルーンの収縮時)におけるバルーンの外径が大きくなってしまい、バルーンの通過性(送達性)が低下するという課題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、狭窄部の拡張性および生体管腔送達時の通過性の向上が図られた医療用長尺体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る医療用長尺体は、シャフトと、前記シャフトの先端部に固定された拡張部材と、前記シャフトの先端側または前記拡張部材の先端側に固定され、少なくとも一部が前記拡張部材の外表面側に配置された線状部材と、を備え、前記拡張部材は、前記シャフトに複数の羽根部を巻きつけるように配置された収縮状態と、前記シャフトの放射方向に拡張した拡張状態と、を有し、前記線状部材は、前記拡張部材の周方向において前記拡張部材と重なる位置に、自然状態で凸部を形成する変形領域を有し、前記変形領域は、前記拡張部材の収縮状態において、前記凸部を形成することを阻害されつつ、前記拡張部材の隣り合う羽根部の間に配置され、前記拡張部材の拡張状態において、前記拡張部材が放射方向に拡張することにより、前記拡張部材の外表面側で前記凸部を形成し、前記変形領域は、自然状態で複数の前記凸部を形成するコイル部であり、前記線状部材は、前記拡張部材の収縮状態において、前記コイル部が軸方向に伸長された状態で、前記拡張部材の隣り合う前記羽根部の間に配置され、前記拡張部材の拡張状態において、前記拡張部材の外表面側で前記コイル部を形成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る医療用長尺体は、狭窄部を拡張する際、線状部材が拡張部材の外表面側で凸部を形成するため、狭窄部に対する拡張部材の拡張力が向上する。また、本発明に係る医療用長尺体は、狭窄部まで拡張部材を送達する際、線状部材が拡張部材の外表面側で凸部を形成しないようにその変形が阻害されるため、拡張部材の外径が大きくなるのを防止でき、生体管腔での通過性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る医療用長尺体を示す図である。
図2図2(A)は、収縮した状態の拡張部材の軸方向の断面を示す図であり、図2(B)は、図2(A)に示す矢印2B−2B線に沿う断面図(軸直交断面図)である。
図3図3(A)は、拡張した状態の拡張部材の軸方向の断面を示す図であり、図3(B)は、図3(A)に示す矢印3B−3B線に沿う断面図(軸直交断面図)である。
図4】変形例1に係る医療用長尺体を示す図であり、図4(A)は、収縮した状態の拡張部材の軸直交断面図であり、図4(B)は、拡張した状態の拡張部材の軸直交断面図である。
図5】変形例1に係る医療用長尺体を示す図であり、拡張した状態の拡張部材の軸方向の断面を示す図である。
図6】変形例2に係る医療用長尺体を示す図であり、図6(A)は、収縮した状態の拡張部材の軸直交断面図であり、図6(B)は、拡張した状態の拡張部材の軸直交断面図である。
図7】変形例2に係る医療用長尺体を示す図であり、拡張した状態の拡張部材の軸方向の断面を示す図である。
図8】変形例3に係る医療用長尺体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
図1は、シャフト100の基端側の拡大断面図とともに医療用長尺体10の全体構成を簡略して示す図であり、図2(A)は収縮した状態の拡張部材130の軸方向の断面図、図2(B)は図2(A)に示す矢印2B−2B線に沿う軸直交断面図、図3(A)は拡張した状態の拡張部材130の軸方向の断面図、図3(B)は図3(A)に示す矢印3B−3B線に沿う軸直交断面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る医療用長尺体10は、シャフト100の先端側に配置された拡張部材(バルーン)130を生体管腔に形成された狭窄部等の病変部位において拡張させることにより、病変部位を押し広げて治療する医療装置である。
【0014】
医療用長尺体10は、冠動脈の狭窄部を広げるために使用されるPTCA治療用バルーンカテーテルとして構成している。ただし、医療用長尺体10は、例えば、他の血管、胆管、気管、食道、その他消化管、尿道、耳鼻内腔、その他の臓器等の生体器官内に形成された狭窄部等の病変部位の治療を目的としたバルーンカテーテルとして構成することもできる。
【0015】
以下、図1図3を参照して、本実施形態に係る医療用長尺体10について説明する。
【0016】
図1に示すように、医療用長尺体10は、長尺状のシャフト100と、シャフト100の先端側に配置された拡張部材130と、拡張部材130およびシャフト100に配置された線状部材150と、シャフト100の基端側に配置された耐キンクプロテクタ180と、シャフト100の基端側かつ耐キンクプロテクタ180の基端側に配置されたハブ190と、を有している。
【0017】
実施形態の説明において、拡張部材130を配置した側を医療用長尺体10の先端側とし、ハブ190を配置した側を医療用長尺体10の基端側とし、シャフト100が延伸する方向を軸方向とする。また、実施形態の説明において、先端部とは、先端(最先端)およびその周辺を含む一定の範囲を意味し、基端部とは、基端(最基端)およびその周辺を含む一定の範囲を意味する。
【0018】
図1に示すように、医療用長尺体10は、シャフト100の先端側寄りにガイドワイヤ200が出入り可能な基端開口部(ガイドワイヤポート)105が形成された、いわゆるラピッドエクスチェンジ型のカテーテルとして構成している。
【0019】
図2(A)に示すように、シャフト100は、内腔(拡張ルーメン)115を備える外管シャフト110と、ガイドワイヤ200が挿通される内腔(ガイドワイヤルーメン)125を備える内管シャフト120と、を有している。
【0020】
内管シャフト120は、軸方向に延在する管状部材(チューブ部材)で形成している。図1に示すシャフト100の基端開口部105は、内管シャフト120の基端開口部により形成している。
【0021】
外管シャフト110は、例えば、シャフト100の基端開口部105付近において内管シャフト120と一体的に接続(融着)される先端側シャフトおよび基端側シャフト(各シャフトの図示は省略する)で形成できる。
【0022】
図2(A)に示すように、内管シャフト120の先端側は、外管シャフト110の内腔115に配置している。内管シャフト120の先端側の一定の範囲は、外管シャフト110の先端側へ突出するように配置している。
【0023】
内管シャフト120の先端側には先端部材170を配置している。先端部材170は、医療用長尺体10の先端が生体管腔(血管の内壁等)に接触した際に、生体器官に損傷が生じることを防止する。先端部材170は、例えば、柔軟な樹脂材料で形成できる。ただし、先端部材170の材質は、内管シャフト120に対して固定が可能なものであれば特に限定されない。
【0024】
図2(A)に示すように、拡張部材130は、内管シャフト120の放射方向に拡張する拡張本体部131と、拡張本体部131の先端側に配置され、内管シャフト120の先端122と固定される先端側固定部132と、拡張本体部131の基端側に配置され、外管シャフト110の先端112と固定される基端側固定部133と、を有している。
【0025】
また、拡張部材130は、拡張部材130の先端側固定部132と拡張部材130の拡張本体部131との間に形成された先端側テーパー部134と、拡張部材130の基端側固定部133と拡張部材130の拡張本体部131との間に形成された基端側テーパー部135と、を有している。
【0026】
拡張部材130は、内管シャフト120の外周面との間に、外管シャフト110の内腔115と連通する拡張空間137を形成している。
【0027】
図2(B)に示すように、拡張部材130は、拡張空間137に流体が流入していない状態において、内管シャフト120に複数の羽根部140を巻きつけるように配置された収縮状態を形成する。
【0028】
拡張部材130の羽根部140は、拡張部材130の外表面同士を内管シャフト120の周方向に重ね合わせるように配置して形成される。本実施形態では、図2(B)に示すように、医療用長尺体10は、内管シャフト120の周方向の異なる位置に3つの羽根部140が形成されるように拡張部材130が折り畳まれている。
【0029】
図2(B)に示すように、拡張部材130の羽根部140は、拡張部材130の外表面同士が向かい合う位置に所定の空間部141を形成する。この空間部141には、線状部材150および後述するチューブ部材160を配置している。
【0030】
図2(B)に示すように、拡張部材130は、拡張部材130の収縮状態において、隣り合う羽根部140同士を固定する仮固定部145を有している。
【0031】
仮固定部145は、例えば、拡張部材130の羽根部140の一部を接着や融着することで形成できる。
【0032】
仮固定部145による隣り合う羽根部140同士の固定は、拡張部材130が収縮した状態において、維持される。線状部材150およびチューブ部材160は、拡張部材130が収縮した状態では、拡張部材130の羽根部140により形成された空間部141内に配置される。
【0033】
図3(B)に示すように、仮固定部145による隣り合う羽根部140同士の固定は、拡張部材130の拡張状態において、解除される。後述するように、隣り合う羽根部140同士の固定が解除されると、線状部材150およびチューブ部材160が拡張部材130の外表面側に配置され、線状部材150により凸部155aが形成される。
【0034】
なお、羽根部140に仮固定部145を形成する位置、一つの羽根部140に仮固定部145を形成する数等は、空間部141に線状部材150およびチューブ部材160を配置可能な限り、特に限定されない。また、空間部141において線状部材150およびチューブ部材160を配置する箇所は、拡張部材130が拡張した際、線状部材150が凸部155aを形成可能な限り、特に限定されない。
【0035】
図3(B)に示すように、拡張部材130は、拡張空間137内に流体が流入すると、拡張部材130の軸方向と交差する放射方向へ拡張する。拡張部材130は、拡張部材130の羽根部140を放射方向へ広げるように拡張することにより、図3(B)に示すように略円形の断面形状となる。
【0036】
なお、本実施形態において拡張部材130が拡張した状態とは、拡張部材130が推奨拡張圧で拡張した状態を意味する。
【0037】
図2(A)に示すように、内管シャフト120は、拡張部材130の先端側テーパー部134と拡張部材130の拡張本体部131との間の境界部を示す造影マーカー129aと、拡張部材130の基端側テーパー部135と拡張本体部131との間の境界部を示す造影マーカー129bと、を有している。各造影マーカー129a、129bは、例えば、白金、金、銀、イリジウム、チタン、タングステン等の金属、またはこれらの合金等により形成できる。なお、造影マーカーは、拡張部材130の拡張本体部131の軸方向の略中心位置を示す位置に配置してもよい。
【0038】
図1に示すように、ハブ190は、流体(例えば、造影剤や生理食塩水)を供給するためのインデフレーター等の供給装置(図示省略)と液密・気密に接続可能なポート191を有している。ハブ190のポート191は、例えば、チューブ等が接続・分離可能に構成された公知のルアーテーパー等によって構成できる。
【0039】
耐キンクプロテクタ180は、シャフト100とハブ190の連結部付近に配置している。耐キンクプロテクタ180は、シャフト100の基端部付近でシャフト100にキンク等が発生するのを防止する。
【0040】
次に、線状部材150およびチューブ部材160について詳述する。
【0041】
図2(A)および図3(A)に示すように、線状部材150は、拡張部材130の周方向において拡張部材130と重なる位置に、自然状態で凸部155aを形成する変形領域150Aを有している。
【0042】
図2(B)に示すように、線状部材150の変形領域150Aは、拡張部材130の収縮状態において、凸部155aを形成することを阻害されつつ、拡張部材130の隣り合う羽根部140の間の空間部141に配置されている。
【0043】
図3(B)に示すように、線状部材150の変形領域150Aは、拡張部材130の拡張状態において、拡張部材130が放射方向に拡張することにより、拡張部材130の外表面側で凸部155aを形成する。
【0044】
なお、本実施形態においては、図2(B)および図3(B)に示すように、線状部材150およびチューブ部材160は、拡張部材130の周方向に3つ配置しているが、図1図2(A)、図3(A)においては、1つの線状部材150および1つのチューブ部材160のみを図示し、他の線状部材150およびチューブ部材160の図示は省略している。
【0045】
図3(A)に示すように、線状部材150の変形領域150Aは、自然状態で複数の凸部155aを形成するコイル部155で構成している。また、図2(A)および図2(B)に示すように、線状部材150は、拡張部材130の収縮状態において、コイル部155が軸方向に伸長された状態で、拡張部材130の隣り合う羽根部140の間に配置される。
【0046】
上記のコイル部とは、自然状態(外力が付加されていない状態)で拡張部材130の軸方向の一定の範囲に亘って所定の形状の凸部が連続的に形成される形状又は構造を意味する。
【0047】
図3(A)および図3(B)に示すように、線状部材150は、拡張部材130の拡張状態において、コイル部155を形成する。本実施形態では、線状部材150は、軸方向に螺旋状に延在するコイル部155を形成することにより、拡張部材130の外表面側に複数の凸部155aを形成する。線状部材150は、自然状態において上記のような螺旋状のコイル部155を形成するように変形領域150Aに予め形状付けがなされている。また、線状部材150の変形領域150Aの基端側には、拡張部材130が拡張変形した際にも凸部155aを形成するように変形しない延在領域150Bが形成されている。換言すると、延在領域150Bは、線状部材150において凸部155aを形成するような形状付けが施されていない領域である。
【0048】
図3(A)および図3(B)に示すように、本実施形態では、線状部材150の変形領域150Aが形成するコイル部155は、拡張部材130が拡張した状態において、チューブ部材160の内周面に沿って円形形状に巻回して、拡張部材130の外表面側で凸部155aを形成する。なお、コイル部155が形成する凸部155aの形状は、円形形状に限定されず、例えば、後述する変形例で説明する楕円形状や三角形状、その他の形状(矩形形状)等であってもよい。
【0049】
図1に示すように、医療用長尺体10は、拡張部材130の外表面およびシャフト100の外表面に配置されたチューブ部材160を有している。図2(A)に示すように、線状部材150は、チューブ部材160の内腔165に配置している。
【0050】
図2(A)および図2(B)に示すように、線状部材150は、拡張部材130が収縮状態のとき、チューブ部材160の内腔165に収容された状態で変形領域150Aに凸部155aが形成されないように、その変形が抑制される。また、拡張部材130が収縮した状態において、線状部材150の変形領域150Aおよび延在領域150Bは、自然状態でコイル部155を形成する変形領域150Aが軸方向に引き伸ばされた状態で拘束されるため、撓んだ状態で軸方向に延在する。
【0051】
なお、延在領域150Bの基端側には、例えば、線状部材150の変形領域150Aが凸部155aを形成する際、変形領域150Aの変形に伴って軸方向に伸長する伸長領域を設けてもよい。伸長領域は、線状部材150の変形領域150Aに凸部155aが形成されて線状部材150に軸方向に収縮する力が生じた際に、延在領域150Bの基端側で伸長することにより、線状部材150からチューブ部材160に対して軸方向に収縮する力が作用することを防止する。
【0052】
図1および図2(A)に示すように、チューブ部材160の先端部162は、拡張部材130の拡張本体部131の先端付近に配置している。また、図1に示すように、チューブ部材160の基端部163は、耐キンクプロテクタ180の先端付近に配置している。なお、チューブ部材160は、図2(A)に示すように、先端が閉塞(封止)していてもよいし、先端に開口部が形成されていてもよい。同様に、チューブ部材160は、基端が閉塞していてもよいし、基端に開口部が形成されていてもよい。
【0053】
チューブ部材160の先端部162は、拡張部材130の外表面に固定している。また、チューブ部材160の基端部163は、シャフト100の外表面に固定している。チューブ部材160の固定は、例えば、融着や接着により行うことができる。
【0054】
図2(A)に示すように、チューブ部材160の内腔165に配置した線状部材150の先端部152は、チューブ部材160の先端部162付近に配置している。なお、線状部材150の基端部は、図示省略するが、チューブ部材160の基端部163付近に配置している(図1を参照)。
【0055】
線状部材150は、拡張部材130の先端側(拡張部材130の軸方向において拡張本体部131の基端よりも先端側)に固定している。例えば、線状部材150の先端部153は、拡張部材130の先端側に配置されたチューブ部材160の先端部162に固定できる。また、例えば、線状部材150の基端部は、チューブ部材160の基端部163に固定できる(図1を参照)。ただし、線状部材150は、線状部材150の少なくとも一部が拡張部材130の先端側またはシャフト100の先端側に固定されていればよく、線状部材150を固定する位置は特に限定されない。
【0056】
なお、医療用長尺体10にチューブ部材160が設けられていない場合、線状部材150は、拡張部材130やシャフト100に直接固定してもよいし、線状部材150が凸部155aを形成するのを妨げることのないように配置される他の部材を介して拡張部材130やシャフト100に固定してもよい。
【0057】
図3(B)に示すように、線状部材150およびチューブ部材160は、例えば、拡張部材130が拡張した際、拡張部材130の外周方向に均等な間隔を空けて配置される。本実施形態においては、拡張部材130に3つの線状部材150および3つのチューブ部材160を設けている。このため、各線状部材150および各チューブ部材160は、各線状部材150および各チューブ部材160の間に拡張部材130の外周方向に沿って120°の均等な角度差が形成されるように配置している。
【0058】
また、本実施形態では、線状部材150は、図3(B)に示す軸直交断面において、シャフト100の軸心(内管シャフト120の軸心)c1に対して内管シャフト120の基端開口部105と異なる位置に配置している。図3(B)には、内管シャフト120の基端開口部105の位置する方向を仮想線で例示している。
【0059】
線状部材150は、拡張部材130が拡張した状態において、シャフト100の外周方向で内管シャフト120の基端開口部105と重ならないように、内管シャフト120の基端開口部105との間に所定の角度差(例えば、45°前後)を設けて配置している。本実施形態では3つの線状部材150を拡張部材130に配置しているため、全ての線状部材150と内管シャフト120の基端開口部105とがシャフト100の外周方向で重ならないように、各線状部材150を配置している。
【0060】
なお、線状部材150の配置は、線状部材150の変形領域150Aの少なくとも一部が拡張部材130の拡張本体部131と周方向において重なるように配置される限り、特に限定されない。また、一つの拡張部材130に配置する線状部材150の個数等も特に限定されない。ただし、線状部材150は、拡張部材130に形成される羽根部140の個数と同数設けることが好ましい。これにより、拡張部材130は、線状部材150が形成する凸部155aにより、狭窄部に対する拡張力が好適に向上する。
【0061】
線状部材150は、図3(B)に示すように、拡張部材130が拡張して、拡張部材130の羽根部140による凸部155aの形成が阻害(抑制)された状態が解除されると、変形領域150Aにコイル部155を形成し、チューブ部材160の内腔165で放射方向に広がる。チューブ部材160は、線状部材150がコイル部155を形成すると、コイル部155により放射方向に押し広げられて、その内径および外径が大きくなるように変形する。線状部材150は、拡張部材130が拡張した際、上記のようにチューブ部材160が変形することにより、コイル部155の形成が阻害されず、変形領域150Aに凸部155aを円滑に形成できる。
【0062】
なお、上記のように、拡張部材130が拡張した際に、チューブ部材160により線状部材150の変形が阻害されることを防止するために、チューブ部材160は、例えば、線状部材150が自然状態で放射方向に付与する力で容易に内径および外径が広がる程度の柔軟性を有するように形成することが好ましい。
【0063】
図3(A)に示すように、チューブ部材160は、拡張部材130の外表面に配置された第1領域160Aと、第1領域160Aの基端側に位置し、シャフト100の外表面に配置された第2領域160Bと、を有している。
【0064】
チューブ部材160の第1領域160Aの内径は、図3(A)に示すように、拡張部材130の拡張状態において、第2領域160Bの内径よりも大きくなる。同様に、チューブ部材160の第1領域160Aの外径は、拡張部材130の拡張状態において、第2領域160Bの外径よりも大きくなる。
【0065】
図3(A)に示すように、チューブ部材160の第1領域160Aは、線状部材150の変形領域150Aと周方向において重なる位置に配置している。また、チューブ部材160の第2領域160Bは、線状部材150の延在領域150Bと周方向において重なる位置に配置している。
【0066】
図2(A)に示すように、チューブ部材160の第1領域160Aとチューブ部材160の第2領域160Bは、拡張部材130が収縮した状態では、略同一の内径および外径を有している。
【0067】
上述した通り、拡張部材130が拡張した状態におけるチューブ部材160の第1領域160Aの内径は、狭窄部の拡張性の観点から、拡張部材130が拡張した状態におけるチューブ部材160の第2領域160Bの内径よりも大きい方が好ましい。なお、拡張部材130が拡張した状態におけるチューブ部材160の第1領域160Aの内径は、拡張部材130が拡張した状態におけるチューブ部材160の第2領域160Bの内径と同じであってもよい。
【0068】
次に、医療用長尺体10の構成材料を説明する。
【0069】
外管シャフト110は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、軟質ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等の各種エラストマー、ポリアミド、結晶性ポリエチレン、結晶性ポリプロピレン等の結晶性プラスチック等で形成できる。
【0070】
内管シャフト120は、例えば、外管シャフト110の構成材料として例示した上記の材料と同様のもので形成できる。
【0071】
拡張部材130は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム等で形成できる。
【0072】
チューブ部材160は、例えば、拡張部材130の構成材料として例示した上記の材料と同様のもので形成できる。
【0073】
線状部材150は、例えば、形状記憶合金や超弾性合金等で形成できる。形状記憶合金、超弾性合金としては、例えば、チタン系(Ti−Ni、Ti−Pd、Ti−Nb−Sn等)や、銅系の合金を用いることができる。また、線状部材150は、例えば、ステンレス鋼(SUS304)、βチタン鋼、Co−Cr合金、ニッケルチタン合金等のバネ性を有する合金でも形成できる。また、線状部材150は、例えば、アクリル系樹脂、トランスイソプレンポリマー、ポリノルボルネン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリウレタン等の形状記憶ポリマーでも形成できる。
【0074】
次に、本実施形態に係る医療用長尺体10の作用を説明する。
【0075】
本実施形態に係る医療用長尺体10は、シャフト100と、シャフト100の先端部に固定された拡張部材130と、拡張部材130の先端側に固定され、少なくとも一部が拡張部材130の外表面側に配置された線状部材150と、を備えている。また、拡張部材130は、シャフト100に複数の羽根部140を巻きつけるように配置された収縮状態と、シャフト100の放射方向に拡張した拡張状態と、を有する。また、線状部材150は、拡張部材130の周方向において拡張部材130と重なる位置に、自然状態で凸部155aを形成する変形領域150Aを有している。そして、変形領域150Aは、拡張部材130の収縮状態において、凸部155aを形成することを阻害されつつ、拡張部材130の隣り合う羽根部140の間に配置され、拡張部材130の拡張状態において、拡張部材130が放射方向に拡張することにより、拡張部材130の外表面側で凸部155aを形成する。
【0076】
本実施形態に係る医療用長尺体10は、狭窄部を拡張する際、線状部材150が拡張部材130の外表面側で凸部155aを形成するため、狭窄部に対する拡張部材130の拡張力が向上する。また、本実施形態に係る医療用長尺体10は、狭窄部まで拡張部材130を送達する際、線状部材150が拡張部材130の外表面側で凸部155aを形成しないようにその変形が阻害されるため、拡張部材130の外径が大きくなるのを防止でき、生体管腔での通過性が向上する。
【0077】
また、医療用長尺体10は、拡張部材130の外表面およびシャフト100の外表面に配置されたチューブ部材160を有しており、線状部材150はチューブ部材160の内腔165に配置される。
【0078】
上記のように構成した医療用長尺体10は、線状部材150がチューブ部材160の内腔165に配置されているため、拡張部材130が拡張するとともに線状部材150が凸部155aを形成した状態で、凸部155aがチューブ部材160から露出することを防止できる。このため、医療用長尺体10は、拡張部材130を拡張した後、当該医療用長尺体10を生体管腔から抜去等する際に、凸部155aが引っ掛かるなどして抜去が妨げられるのを防止できる。これにより、医師等の術者は、医療用長尺体10を生体管腔から円滑に抜去することができる。さらに、線状部材150は、チューブ部材160の内腔165で凸部155aを形成することにより、チューブ部材160の内表面側からチューブ部材160の外表面側へ向けてチューブ部材160を狭窄部に対して押し付けるため、チューブ部材160の外表面と狭窄部とが面接触して両者の接触面積が大きくなる。このため、医療用長尺体10は、狭窄部の比較的広い範囲に亘って均等な拡張力を作用させることができ、狭窄部を効果的に拡張できる。
【0079】
また、医療用長尺体10のチューブ部材160は、拡張部材130の外表面に配置された第1領域160Aと、第1領域160Aの基端側に位置し、シャフト100の外表面に配置された第2領域160Bと、を有している。そして、第1領域160Aの内径は、拡張部材130の拡張状態において、第2領域160Bの内径よりも大きなものとなる。
【0080】
上記のように構成した医療用長尺体10は、拡張部材130が拡張すると、拡張部材130の外表面に配置されたチューブ部材160の第1領域160Aの内径がシャフト100の外表面に配置されたチューブ部材160の第2領域160Bの内径よりも大きくなる。このため、線状部材150は、拡張部材130が拡張した際、チューブ部材160の第1領域160Aで円滑に凸部155aを形成できる。これにより、医療用長尺体10は、拡張部材130が拡張した際、拡張部材130および凸部155aにより狭窄部を効率良く拡張できる。
【0081】
また、線状部材150の変形領域150Aは、自然状態で複数の凸部155aを形成するコイル部155であり、線状部材150は、拡張部材130の収縮状態において、コイル部155が軸方向に伸長された状態で、拡張部材130の隣り合う羽根部140の間に配置され、拡張部材130の拡張状態において、拡張部材130の外表面側でコイル部155を形成する。
【0082】
上記のように構成した医療用長尺体10は、拡張部材130が拡張した際、線状部材150の変形領域150Aを形成するコイル部155が複数の凸部155aを形成する。このため、医療用長尺体10は、線状部材150の複数の凸部155aから狭窄部に対して効率良く拡張力を付与できる。さらに、線状部材150の変形領域150Aを形成するコイル部155は、拡張部材130が収縮した状態で拡張部材130の隣り合う羽根部140の間に配置される。このため、医療用長尺体10は、拡張部材130が収縮した状態で、コイル部155により送達性が低下することを防止できる。
【0083】
また、拡張部材130は、拡張部材130の収縮状態において、隣り合う羽根部140同士を固定する仮固定部145を有し、仮固定部145による隣り合う羽根部140同士の固定は、拡張部材130の拡張状態において、解除される。
【0084】
上記のように構成した医療用長尺体10は、拡張部材130が収縮した状態で、拡張部材130の隣り合う羽根部140同士が仮固定部145により固定されているため、医師等の術者は、医療用長尺体10を狭窄部へ送達する際に拡張部材130の羽根部140が不用意に広がって線状部材150が意図せずに凸部155aを形成するのを防止できる。これにより、術者は、医療用長尺体10の拡張部材130を容易かつ円滑に狭窄部まで送達できる。
【0085】
また、シャフト100は、外管シャフト110と、外管シャフト110の内腔115に配置された内管シャフト120と、を有している。内管シャフト120は、外管シャフト110の途中で開口する基端開口部105を有し、線状部材150は、シャフト100の軸心に垂直な断面において、シャフト100の軸心に対して基端開口部105と異なる位置に配置される。
【0086】
上記のように構成した医療用長尺体10は、内管シャフト120の基端開口部105と線状部材150とがシャフト100の周方向で重なる位置に配置されなくなる。このため、医療用長尺体10は、内管シャフト120の基端開口部105にガイドワイヤ200を挿通させる際、ガイドワイヤ200が線状部材150と干渉するのを防止でき、ガイドワイヤ200を円滑に基端開口部105に挿入できる。
【0087】
次に、上述した実施形態の変形例を説明する。なお、各変形例において特に言及しない構成や部材については、前述した実施形態と同様のものとすることができ、その説明を省略する。
【0088】
<変形例1>
図4および図5を参照して、変形例1に係る医療用長尺体を説明する。
【0089】
図4(A)は、収縮した状態の拡張部材130を示す軸直交断面図、図4(B)は、拡張した状態の拡張部材130を示す軸直交断面図、図5は、拡張した状態の拡張部材130の軸方向の断面図である。
【0090】
前述した実施形態では、線状部材150のコイル部155は、拡張部材130が拡張した際、チューブ部材160の内周面に沿って円形に巻回するように変形して凸部155aを形成した(図3(A)および図3(B)を参照)。一方、本変形例に係る医療用長尺体は、コイル部355が自然状態において楕円形状を形成する。
【0091】
図4(B)および図5に示すように、線状部材150は、自然状態で変形領域150Aにコイル部355を形成する。コイル部355は、拡張部材130が拡張すると、拡張部材130およびシャフト100の周方向に沿って楕円形状に巻回する。
【0092】
図4(A)および図4(B)に示すように、チューブ部材160は、コイル部355が形成する楕円形状に合わせて、軸直交断面の形状を楕円形状に形成している。チューブ部材160は、図4(A)に示すように、拡張部材130が収縮した状態では、拡張部材130の隣り合う羽根部140の間に収縮した状態で配置される。また、チューブ部材160は、図4(B)に示すように、拡張部材130が拡張した状態では、軸直交断面における楕円形状の長軸方向および短軸方向の寸法が大きくなるように拡張する。
【0093】
各線状部材150および各チューブ部材160は、拡張部材130が拡張した状態において、軸直交断面における楕円形状の長軸が内管シャフト120の軸心c1を通る垂線H1に重なるように配置されることが好ましい。これにより、拡張部材130は、拡張部材130の外表面側で楕円形状の長軸上に位置する端部を狭窄部に接触させながら拡張することができるため、狭窄部を効果的に拡張できる。
【0094】
以上のように本変形例に係る医療用長尺体は、コイル部355が自然状態において楕円形状の凸部155aを形成する。このため、医療用長尺体は、拡張部材130が拡張した際、コイル部355が形成する凸部155aにより、狭窄部に対する拡張力が向上し、狭窄部をより一層効率良く拡張できる。
【0095】
<変形例2>
図6および図7を参照して、変形例2に係る医療用長尺体を説明する。
【0096】
図6(A)は、収縮した状態の拡張部材130を示す軸直交断面図、図6(B)は、拡張した状態の拡張部材130を示す軸直交断面図、図7は、拡張した状態の拡張部材130の軸方向の断面図である。
【0097】
本変形例に係る医療用長尺体は、図6(B)および図7に示すように、コイル部455が自然状態において三角形状を形成する。
【0098】
図6(B)および図7に示すように、線状部材150は、自然状態で変形領域150Aにコイル部455を形成する。コイル部455は、拡張部材130が拡張すると、拡張部材130およびシャフト100の周方向に沿って三角形状に巻回する。
【0099】
図6(A)および図6(B)に示すように、チューブ部材160は、コイル部455が形成する三角形状に合わせて、軸直交断面の形状を三角形に形成している。チューブ部材160は、図6(A)に示すように、拡張部材130が収縮した状態では、拡張部材130の隣り合う羽根部140の間に収縮した状態で配置される。また、チューブ部材160は、図6(B)に示すように、拡張部材130が拡張した状態では、拡張部材130の外表面側で拡張するように変形する。
【0100】
各線状部材150および各チューブ部材160は、拡張部材130が拡張した状態において、シャフト100の軸心(内管シャフト120の軸心)c1から放射方向に向けて配置された三角形状の頂点が内管シャフト120の軸心c1を通る垂線H1に重なるように配置されることが好ましい。これにより、拡張部材130は、拡張部材130の外表面側でコイル部455の三角形上の頂点を狭窄部に接触させながら拡張することができるため、狭窄部を効果的に拡張できる。
【0101】
以上のように、本変形例に係る医療用長尺体は、コイル部455が自然状態において三角形状の凸部155aを形成する。このため、医療用長尺体は、拡張部材130が拡張した際、コイル部455が形成する凸部155aの頂点部を狭窄部に対して押し付けることにより、狭窄部に対する拡張力が向上し、狭窄部をより一層効率良く拡張できる。
【0102】
<変形例3>
以下、図8を参照して、変形例3に係る医療用長尺体500を説明する。
【0103】
図8に示すように、本変形例に係る医療用長尺体500は、シャフト100の基端部に配置されたハブ190と、線状部材150に接続され、ハブ190に対して進退移動可能な操作部材595と、を有している。
【0104】
図8においては図示省略しているが、医療用長尺体500は、前述した実施形態にと同様に、拡張部材130の周方向の異なる位置に3つの線状部材150および3つのチューブ部材160を有している(図2(B)および図3(B)を参照)。
【0105】
3つの線状部材150の各々は、耐キンクプロテクタ180の先端側に配置したチューブ部材160の基端開口部163aから基端側へ導出している。操作部材595は、各チューブ部材160から導出された線状部材150と接続している。また、操作部材595には、操作部材595のハブ190に対する進退移動(軸方向の先端側および基端側への移動)を可能にする挿通孔595aを形成している。挿通孔595aは、操作部材595が進退移動する際、その内側にハブ190を挿通させることにより、ハブ190と操作部材595とが干渉するのを防止する。
【0106】
医師等の術者は、拡張部材130を拡張させた後、例えば、線状部材150が形成した凸部155aを消失させる際に、操作部材595を基端側へ移動させることにより、線状部材150を軸方向に引き伸ばすように変形させることができる。これにより、術者は、線状部材150に凸部155aが形成された状態を解除することができ、線状部材150に凸部155aが形成されていない状態で医療用長尺体500を生体管腔から抜去できる。
【0107】
なお、医療用長尺体500に複数の線状部材150が備えられる場合、操作部材595は、例えば、各々の線状部材150と接続されるように複数設けることも可能である。ただし、変形例において説明したように、一つの操作部材595に複数の線状部材150を接続することにより、操作部材595の一度の操作で線状部材150から凸部155aを消失させることができるため、複数の線状部材150が設けられる場合、全ての線状部材150を一つの操作部材595に接続することが好ましい。
【0108】
以上のように、本変形例に係る医療用長尺体500は、シャフト100の基端部に配置されたハブ190と、線状部材150に接続され、ハブ190に対して進退移動可能な操作部材595と、を有している。
【0109】
上記のように構成した医療用長尺体500は、拡張部材130が拡張して線状部材150が凸部155aを形成した状態で、操作部材595をハブ190に対して基端側へ移動させると、線状部材150が基端側へ引き伸ばされて凸部155aを形成した状態を解除できる。このため、医師等の術者は、拡張部材130を一旦拡張させた後、線状部材150が凸部155aを形成していない状態に戻すことができ、凸部155aにより医療用長尺体500の先端側の外径が大きくなることを防止できるため、拡張部材130を一旦拡張させた後においても生体管腔から医療用長尺体500を円滑に抜去できる。
【0110】
以上、実施形態および変形例を通じて本発明に係る医療用長尺体を説明したが、本発明は実施形態および変形例で説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0111】
各変形例は適宜組み合わせることが可能であり、例えば、一つの医療用長尺体に複数の線状部材を設ける場合、実施形態や変形例で説明した線状部材のうち任意のものを組み合わせることができる。また、例えば、変形例3で示した構成において、変形例1や変形例2で例示した線状部材を組み合わせることも可能である。
【0112】
また、線状部材は、拡張部材が拡張した状態において、拡張部材の外表面側に凸部を形成する限り、線状部材の断面形状、軸直交断面の厚み(軸直交断面が円形の場合、外径)、軸方向の長さ、自然状態で形成する形状等は特に限定されない。また、例えば、線状部材は複数の線状部材を接続して構成することも可能である。このように線状部材を構成する場合、例えば、変形領域と変形領域以外の領域(部分)を別部材で構成できる。
【0113】
また、実施形態および変形例においては、医療用長尺体に線状部材を配置するチューブ部材が設けられた例を示したが、線状部材は、チューブ部材の内腔に配置せず、例えば、バルーンやシャフトに直接配置してもよい。また、医療用長尺体は、チューブ部材を設ける場合においても、チューブ部材が少なくとも拡張部材の外表面およびシャフトの外表面と周方向に重なる範囲(周方向に重なる位置)で形成されている限り、外径、内径、軸方向の長さ等は特に限定されない。
【0114】
また、例えば、医療用長尺体は、オーバーザワイヤ型のバルーンカテーテルとして構成することも可能である。
【0115】
また、例えば、実施形態において説明した医療用長尺体の構造や部材の配置等は適宜変更することができ、図示により説明した付加的な部材の使用の省略や、特に説明されなかったその他の付加的な部材の使用等も適宜に行い得る。
【符号の説明】
【0116】
10、500 医療用長尺体、
100 シャフト、
105 基端開口部(内管シャフトの基端開口部)、
110 外管シャフト、
120 内管シャフト、
130 拡張部材、
140 羽根部、
141 空間部、
145 仮固定部、
150 線状部材、
150A 線状部材の変形領域、
150B 線状部材の延在領域、
155、355、455 コイル部、
155a 凸部、
160 チューブ部材、
160A チューブ部材の第1領域、
160B チューブ部材の第2領域、
165 チューブ部材の内腔、
190 ハブ、
200 ガイドワイヤ、
595 操作部材、
595a 挿通孔、
c1 シャフトの軸心。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8