特許第6769920号(P6769920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769920
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】開脚型油圧ショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/02 20060101AFI20201005BHJP
   B62D 55/084 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   E02F9/02 C
   B62D55/084
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-90097(P2017-90097)
(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公開番号】特開2018-188813(P2018-188813A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2019年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 直樹
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭50−063901(JP,U)
【文献】 実開昭53−082148(JP,U)
【文献】 特開平10−266748(JP,A)
【文献】 特開2006−057313(JP,A)
【文献】 実開昭59−102654(JP,U)
【文献】 特開昭52−015025(JP,A)
【文献】 米国特許第04431074(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/02
B62D 55/084
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体、前記走行体の上部に旋回可能に設けた旋回体、前記旋回体に取り付けた作業機、前記作業機を駆動する油圧アクチュエータ、前記油圧アクチュエータを駆動する圧油を吐出する油圧ポンプ、及び前記油圧ポンプを駆動する原動機を備え、前記走行体が、前記旋回体を支持するセンタフレーム、前記センタフレームに対して回動可能に連結されて互いの前部の間隔を拡大してV字型に開脚可能な左右の走行装置、及び前記左右の走行装置を開脚及び閉脚させるシリンダを備えた開脚型油圧ショベルにおいて、
前記左右の走行装置が最大90度開脚するように構成され、
前記走行装置の前後方向の寸法が、前記旋回体の前後方向の長さ以下で、かつ前記左右の走行装置が平行なときの前記走行体の車幅方向の長さとなるように設定され、更に、
前記センタフレームの後部にのみ設けられ、最大開脚時の前記左右の走行装置の後縁に沿う直角三角形状に形成された接地部を有するアウトリガーと、
前記左右の走行装置の少なくとも一方の前記センタフレームに対する回動を拘束する拘束機構
を備えたことを特徴とする開脚型油圧ショベル。
【請求項2】
請求項1に記載の開脚型油圧ショベルにおいて、
前記拘束機構は、
前記センタフレームの前部の左右の少なくとも一方に設けた第1ブラケットと、
前記第1ブラケットに対応して前記左右の走行装置の少なくとも一方に設けた第2ブラケットと、
前記第1ブラケット及び前記第2ブラケットを連結するストッパピンを備えていることを特徴とする開脚型油圧ショベル。
【請求項3】
請求項2に記載の開脚型油圧ショベルにおいて、前記第1ブラケットと前記第2ブラケットは、前記走行装置の閉脚時に接触し合うストッパ部を互いに備えていることを特徴とする開脚型油圧ショベル。
【請求項4】
請求項2に記載の開脚型油圧ショベルにおいて、前記第1ブラケットには、前記第2ブラケットと連結する際に前記ストッパピンを挿し込むピン穴とは別に、前記第2ブラケットに干渉しない位置に前記ストッパピンを仮置きするための仮置き穴が設けられていることを特徴とする開脚型油圧ショベル。
【請求項5】
請求項2に記載の開脚型油圧ショベルにおいて、
前記センタフレームと前記左右の走行装置をそれぞれ連結する左右のリンクを備え、前記左右のリンクが前記シリンダで連結されており、
前記第1ブラケットには、前記リンクの軸に給脂するための給脂口に臨む開口が設けられていることを特徴とする開脚型油圧ショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履帯式の左右の走行装置における前部の間隔を広げて左右の走行装置をV字型に開脚し、左右の走行装置における前部の間の領域を掘削することができる開脚型油圧ショベルに関する。例えば深礎工法で深礎杭を挿し込む縦孔(深礎杭孔)の底部で走行体によって小刻みに位置を変えながら掘削作業をする電気駆動式の開脚型油圧ショベルに係る。
【背景技術】
【0002】
例えば山岳地の送電線等の鉄塔の建て替えの際に新しい鉄塔の深礎杭(基礎)を地中深く施工するような深礎工法では、深礎杭を挿し込むための小径の縦孔を掘削する。しかし山岳地における縦孔の掘削工事では搬入経路や広い足場が確保できず大掛かりな機械設備が使えないことが多い。そのような場合に、例えばヘリコプターで輸送することができる分解型のショベルや超小型の油圧ショベル等を用いることがある。分解型ショベルを現地で組み立てて地表から一定深さまで縦孔を掘削し、超小型の油圧ショベルをクレーン等で縦孔に投入し縦孔を掘り進めていく工法である。
【0003】
但し小径(例えば直径2.5m程度)の縦孔の内部では、いかに超小型の油圧ショベルであっても縦孔の底部に接地する自らの走行体が邪魔で実際に掘削できる領域は狭く、小刻みに走行体の位置や向きを変えなければならず効率的に作業を進めることができない。そこで特許文献1に記載されているように、履帯式の左右の走行装置の前側の間隔を開いてV字型に開脚し、これら左右の走行装置の間の領域を掘削することができる油圧ショベルがある。以下、この種の油圧ショベルを「開脚型油圧ショベル」と記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭59−102654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし走行装置を開脚すると転倒支点(この場合履帯の接地部の前端)が後退して機体重心に近付くため機体の安定性が低下する。例えば開脚して左右の走行装置の間の領域の岩盤を破砕しているときに岩盤が割れるとブレーカに生じる破砕反力が突如としてなくなり、その際に地面の傾斜によっては機体が前のめりになる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、履帯式の左右の走行装置における前部の間隔を拡大してV字型に開脚することで小径の縦孔の底部を効率的に掘削でき、かつ開脚時の転倒支点の後退を抑制し機体の安定性の低下を抑制することができる開脚型油圧ショベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、走行体、前記走行体の上部に旋回可能に設けた旋回体、前記旋回体に取り付けた作業機、前記作業機を駆動する油圧アクチュエータ、前記油圧アクチュエータを駆動する圧油を吐出する油圧ポンプ、及び前記油圧ポンプを駆動する原動機を備え、前記走行体が、前記旋回体を支持するセンタフレーム、前記センタフレームに対して回動可能に連結されて互いの前部の間隔を拡大してV字型に開脚可能な左右の走行装置、及び前記左右の走行装置を開脚及び閉脚させるシリンダを備えた開脚型油圧ショベルにおいて、前記左右の走行装置が最大90度開脚するように構成され、前記走行装置の前後方向の寸法が、前記旋回体の前後方向の長さ以下で、かつ前記左右の走行装置が平行なときの前記走行体の車幅方向の長さとなるように設定され、更に、前記センタフレームの後部にのみ設けられ、最大開脚時の前記左右の走行装置の後縁に沿う直角三角形状に形成された接地部を有するアウトリガーと、前記左右の走行装置の少なくとも一方の前記センタフレームに対する回動を拘束する拘束機構を備える。

【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、履帯式の左右の走行装置における前部の間隔を拡大してV字型に開脚することで小径の縦孔の底部を効率的に掘削でき、かつ開脚時の転倒支点の後退を抑制し機体の安定性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る開脚型油圧ショベルの全体構成を表す側面図であり、アタッチメントとしてバケットを装着した開脚型油圧ショベルを表している。
図2】本発明の一実施形態に係る開脚型油圧ショベルの全体構成を表す側面図であり、アタッチメントとしてブレーカを装着した開脚型油圧ショベルを表している。
図3図1に示した開脚型油圧ショベルの走行体の平面図である。
図4図1に示した開脚型油圧ショベルの左側の拘束機構を前方から見た図である。
図5】縦孔の底部で閉脚して作業する図1に示した開脚型油圧ショベルの様子を表す平面図である。
図6】縦孔の底部で開脚して作業する図1に示した開脚型油圧ショベルの様子を表す平面図である。
図7】左側の走行装置のみをストッパピンで拘束して開脚した状態の図3に示した走行体の平面図である。
図8】左側の走行装置のみをストッパピンで拘束して開脚した状態の図1に示した開脚型油圧ショベルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
1.開脚型油圧ショベル
図1及び図2は本発明の一実施形態に係る開脚型油圧ショベルの全体構成を表す側面図である。なお、図1はアタッチメントとしてバケットを装着した開脚型油圧ショベルを、図2はアタッチメントとしてブレーカを装着した開脚型油圧ショベルを表している。以下の説明において特に断りなく「油圧ショベル」と記載した場合には開脚型油圧ショベルを指すこととする。また図1における油圧ショベル100の運転席の前方(同図では左)を前方とする。
【0012】
油圧ショベル100は例えば深礎工法で深礎杭(不図示)を挿し込む縦孔(深礎杭孔)Hに投入され、縦孔の底部で走行体によって小刻みに位置を変えながら掘削作業をし、縦孔を掘り進める作業機械である。この油圧ショベル100は、走行体10、旋回体30及び作業機(フロント作業機)40を備えている。
【0013】
2.走行体
走行体10は油圧ショベル100が自力走行するための履帯式(クローラ式)の走行体であり、トラックフレーム11、左右の走行装置12及びアウトリガー13を備えている。トラックフレーム11は走行体10のフレームをなすもので、センタフレーム14(図3)、左右のリンク15(図3)及び左右のサイドフレーム16からなり、閉脚時に平面視でH型になるように形成されている。センタフレーム14の後部(図1では右側部分)に上記アウトリガー13が設けられている。掘削作業の邪魔になり得るためセンタフレーム14の前部にアウトリガーは設けられておらず、アウトリガー13は後部にのみ設けられている。アウトリガー13は図示しないシリンダによって上下に揺動し、場面に応じて高さを調節することで作業中における油圧ショベル100の後傾を抑制することができる。トラックフレーム11の構成の詳細については後述する。
【0014】
左右の走行装置12は、従動輪21、駆動輪22、履帯(クローラ)23及び走行駆動装置24を備えている。従動輪21はトラックフレーム11の左右のサイドフレーム16の各前端(図1では左端)に、駆動輪22は左右のサイドフレーム16の各後端(図1では右端)にそれぞれ回転自在に支持されている。トラックフレーム11の左右のサイドフレーム16は、それぞれ左右の走行装置12のフレームを兼ねる。履帯23は左右の走行装置12においてそれぞれ従動輪21及び駆動輪22に掛け回されている。また左右の走行装置12においてそれぞれ駆動輪22の回転軸に走行駆動装置24の出力軸が連結されている。走行駆動装置24が駆動されると従動輪21と駆動輪22に掛け回された履帯23が循環駆動され、油圧ショベル100の走行動作等が行われる。走行駆動装置24は油圧モータを含む。本実施形態の油圧ショベル100の場合、小径の縦孔Hの底部で動き回る都合上、走行装置12の長手方向の長さ(少なくともサイドフレーム16の長さ)は一般的な油圧ショベルよりも短く、旋回体30の前後方向の長さと同程度かそれよりも短い。特に本実施形態においては、左右の走行装置12が平行な状態では(図5に示したような閉脚時には)平面視で左右の走行装置12の車幅方向の外側の辺がほぼ正方形の対辺となるように走行装置12の間隔や長さが調整されている。これにより短い走行装置12ながら安定性が確保されている。
【0015】
3.旋回体
旋回体30は、旋回フレーム(不図示)、運転席32、カウンタウェイト33及び機械室34等を備えている。旋回フレームは旋回体30のベースフレームであり、旋回輪25を介してトラックフレーム11(センタフレーム14)の上部に設けられている。旋回フレームには旋回輪25の付近に旋回モータ(不図示)が搭載されており、旋回モータの出力軸が旋回輪25に設けた歯車と噛み合うことで、走行体10に対して旋回体30が鉛直軸周りに旋回する。旋回モータには電動モータを用いることもできるが、本実施形態では油圧モータが用いてある。
【0016】
運転席32は旋回体30の旋回中心に対して左右方向の一方側(本実施形態では左側)にオフセットした位置に配置されている。この運転席32の上側はキャノピー35で覆われている。また旋回フレームの前部には運転席32の前側に位置するように操作装置36が配置されている。操作装置36は、作業機40、走行体10及び旋回体30の動作を指示するレバー装置やペダル類等の複数の操作装置である。カウンタウェイト33は作業機40との重量のバランスをとるための錘であり、旋回フレームの後端に設けられている。本実施形態におけるカウンタウェイト33は機械室34のカバー(外壁)と一体に形成されており(カバーを兼ねており)、機械室34に収容された各機器を覆っている。また油圧ショベル100は超小型であり、キャノピー35を支持する支柱のうち旋回体30の後部に配置された支柱35aはカウンタウェイト33又はその上のカバー(不図示)の上部から立ち上がり、旋回体30の後端付近に位置する。
【0017】
図示していないが、機械室34には、電動機37の他、油圧ポンプや冷却ファン、バルブユニット、作動油タンク、燃料タンク、コントローラ38等が収容されている。電動機37は油圧ポンプを駆動する原動機であり、例えば油圧ショベル100とは別置きの発電機からケーブル(不図示)を介して供給される電力で駆動される。但し、外部電源からの電力供給を受ける構成ではなく、機械室34に電源(発電機、バッテリ等)を搭載する構成としても良い。電動機37によって駆動された油圧ポンプは、作動油タンクの作動油を吸い込んで圧油として吐出する。油圧ポンプから吐出された圧油は、操作装置36の操作に応じて作動するバルブユニットによって制御されて対応する油圧アクチュエータに供給される。コントローラ38は電装品を制御する制御装置である。なお、本実施形態の油圧ショベル100は図1に示したように超小型であり、コントローラ38及び電動機37を運転席32の下部に上下に並べて配置する等、機械室34の収容機器のレイアウトを立体的に工夫することで旋回体30を極めて小径に構成してある。本実施形態では電動機37より上側にコントローラ38を配置してある。特には図示していないが、運転席32は前部を支点として後部が上下に回動する構造になっており、運転席32の後部を持ち上げて傾斜させるとコントローラ38の上側が開放され、コントローラ38にアクセスできるようになっている。
【0018】
4.作業機
作業機40は作業腕41及びアタッチメントである作業具44を含む多関節型のフロント作業機であり、旋回体30に取り付けられている。作業腕41は、ブーム42、アーム43、ブームシリンダ(不図示)、アームシリンダ46及び作業具シリンダ47を備えている。ブーム42は旋回体30の前部に回動可能に連結され、アーム43はブーム42の先端に、作業具44はアーム43の先端に、それぞれ回動可能に連結されている。ブーム42、アーム43及び作業具44はいずれも左右に水平に延びる回転軸を支点にして回動する。図1では作業具44としてバケットを、図2では作業具44としてブレーカを装着した例を表しているが、他のアタッチメントも装着可能である。また、ブームシリンダは旋回体30及びブーム42に、アームシリンダ46はブーム42及びアーム43に、それぞれ両端が連結されている。作業具シリンダ47は、基端がアーム43に連結される一方、先端がリンク48を介してアーム43の先端部及び作業具44に連結されている。ブームシリンダ、アームシリンダ46及び作業具シリンダ47はいずれも油圧アクチュエータであり、油圧ポンプから吐出される圧油で駆動され、伸縮動作により作業機40を駆動する。
【0019】
5.トラックフレーム
図3図1及び図2に示した油圧ショベルの走行体の平面図である。図3においては、左右の走行装置12における前部の間隔を広げ(後部の間隔を狭め)、左右の走行装置12をV字型に開脚した状態を表している。また構造の明確化のため、センタフレームにおける上記旋回輪25が取り付けられる上面板52(図4)は図示省略してある。前述したように、トラックフレーム11は、センタフレーム14、リンク15及びサイドフレーム16(図1図2)を備えている。
【0020】
センタフレーム14はトラックフレーム11のメインフレームであり、左右両側にリンク15及びサイドフレーム16が連結される他、上部には旋回体30が支持されている。このセンタフレーム14は、下面板51、上面板52(図4)、前面板53、後面板54、左側面板55及び右側面板56を備えている。前面板53、後面板54、左側面板55及び右側面板56は鉛直に起立した板状部材である。センタフレーム14は、前面板53、後面板54、左側面板55及び右側面板56をそれぞれ前後左右の面とする四角い枠を水平な下面板51及び上面板52で上下から挟んだような構成である。下面板51、上面板52、前面板53、後面板54、左側面板55及び右側面板56は、接触するもの同士が溶接等で固定されている。
【0021】
左右のリンク15は、それぞれ第1アーム58及び第2アーム59を備えている。第1アーム58は、上下に延びる回転軸61を介して基端部がセンタフレーム14の下面板51及び上面板52に対し連結されており、回転軸61を中心にセンタフレーム14に対して水平面に沿って回動可能である。左右のリンク15の回転軸61は、センタフレーム14の前部の左右にそれぞれ位置している。第2アーム59は、上下に延びる回転軸62を介して基端部が第1アーム58の先端部に対し連結されており、回転軸62を中心に第1アーム58に対して水平面に沿って回動可能である。第2アーム59の先端部は上下に延びる回転軸63を介して、トラックフレーム11のサイドフレーム16(図1等)の前部から車幅方向の内側に突出したブラケット64に対し連結されている。従って第2アーム59は回転軸63を支点にサイドフレーム16に対しても水平面に沿って回動可能である。また左右のサイドフレーム16の後部には、車幅方向の内側に突出したブラケット65がそれぞれ設けられている。ブラケット65は上下に延びる回転軸66を介してセンタフレーム14の下面板51及び上面板52に対し連結されており、回転軸66を中心にセンタフレーム14に対して水平面に沿って回動可能である。これら回転軸66は、センタフレーム14の後部の左右にそれぞれ位置している。
【0022】
上記の通り左右の走行装置12の後部はサイドフレーム16のブラケット65が直接センタフレーム14に連結される一方、左右の走行装置12の前部はサイドフレーム16のブラケット64がリンク15を介してセンタフレーム14に連結されている。これにより左右の走行装置12は、回転軸66を中心にして水平方向に回動し、互いの前部の間隔を拡大すると共に後部の間隔を狭めるようにしてV字型に開脚することができるようになっている。本実施形態では特に図示していないが、左右の走行装置12の開脚角度はシリンダ67のストローク又は図示しないストッパによって最大約90度に制限されている。図3に示したように左右の走行装置12を最大限開脚しても走行装置12がアウトリガー13に干渉しないようになっている。またアウトリガー13の接地部も最大開脚時の左右の走行装置12の後縁に併せて直角三角形状に形成されている。
【0023】
また、左右のリンク15の回転軸62は1本のシリンダ67で連結されている。シリンダ67は左右に延び、センタフレーム14の左側面板55及び右側面板56に設けた開口を通して配置してある。このシリンダ67が伸縮することによって、左右の走行装置12が図3に示したようにV字型に開脚したり閉脚したりする(左右の走行装置12が共に前後に延びて互いに平行な状態になる)。縦孔Hの底部で閉脚して作業する油圧ショベル100の様子を表す平面図を図5に、縦孔Hの底部で開脚して作業する油圧ショベル100の様子を表す平面図を図6に示した。
【0024】
6.拘束機構
図4は左側の拘束機構を前方から見た図である。図3と併せて図4を参照して本実施形態の1つの特徴である拘束機構について説明する。本実施形態においては左右の走行装置12のセンタフレーム14に対する回動(開脚)をそれぞれ拘束する左右の拘束機構70を備えている。左右の拘束機構70はそれぞれ第1ブラケット71と第2ブラケット72を備えている。第1ブラケット71はセンタフレーム14の前部の左右にそれぞれ設けられており、左右の延びる鉛直のプレート73から水平なプレート74を前方に延ばした構成をしている。第2ブラケット72は第1ブラケット71に対応して左右の走行装置12のサイドフレーム16に車幅方向の内側にそれぞれ突出して設けられており、閉脚時に第1ブラケット71のプレート74を上下に挟む2枚の水平なプレート75を備えている。図4では第2ブラケット72を想像線(二点鎖線)で表している。第1ブラケット71のプレート74と第2ブラケット72のプレート75には閉脚時に上下に並ぶピン穴76が開けられている。閉脚時にプレート74,75のピン穴76にストッパピン77を挿し込むことでストッパピン77によって第1ブラケット71及び第2ブラケット72が連結される。ストッパピン77で第1ブラケット71及び第2ブラケット72が連結された側の走行装置12については拘束され、シリンダ67が伸長しても開脚方向に回動することがない。例えば左側の走行装置12のみをストッパピン77で拘束した場合、シリンダ67を伸ばしても左側の走行装置12は開かず、右側の走行装置12のみが開く。この状態の走行体10の平面図を図7に、油圧ショベル100の平面図を図8に例示した。図7図3図8図5及び図6に対応する図である。
【0025】
また第1ブラケット71と第2ブラケット72は、走行装置12の閉脚時に接触し合うストッパ部78を互いに備えている。第1ブラケット71のストッパ部78は、プレート74の車幅方向の外側を向いた端面に設けられている。第2ブラケット72のストッパ部78は、上下2枚のプレート75の間に位置しこれら2枚のプレート75を連結している。第1ブラケット71と第2ブラケット72のストッパ部78は共に閉脚時に前後に延びる鉛直な板状の部材であり、閉脚時に互いの対向面が面接触した状態で第1ブラケット71と第2ブラケット72のピン穴76が上下に並ぶように構成されている。
【0026】
また左右の第1ブラケット71には、第2ブラケット72と連結する際にストッパピン77を挿し込むピン穴76とは別に、ストッパピン77を仮置きするための仮置き穴79が設けられている。仮置き穴79は、これに挿し込んだストッパピン77が走行装置12の開脚角度によらず第2ブラケット72に干渉することがない位置に設けられている。
【0027】
更には、左右の第1ブラケット71には、リンク15の回転軸61に給脂するための給脂口81に臨む開口82が設けられている。本実施形態における開口82は第1ブラケット71のプレート74を上下に挟んで2つ設けられており、開口82を介して給脂口81にグリスガン(不図示)を挿し込み、回転軸61に給脂することができるようになっている。
【0028】
7.動作
山岳地で鉄塔の深礎杭孔として縦孔Hを掘削する場合、例えば現地で組み立てた分解型油圧ショベルで地表面から一定の深さまで縦孔Hを掘削し、その後クレーン等で油圧ショベル100を縦孔Hの内部に投入する。油圧ショベル100を操作する際、オペレータは運転席32に座って操作装置36を適宜操作する。これにより走行体10によって油圧ショベル100を移動させたり、作業機40によって掘削作業をしたり旋回体30を旋回させたりすることができる。掘削作業は、例えば図1に示したように作業具44としてバケットを用いて縦孔Hの底部を掘削したり、必要に応じて図2のように作業具44としてブレーカを用いて縦孔Hの底面の岩盤を破砕したりする。掘削した土砂や礫等はバケットで掬って別途用意した容器に積み込み、クレーン等で容器を吊り上げて縦孔Hの外に運び出す。
【0029】
例えば開脚して左右の走行装置12の間の領域を掘削する必要がある場合、ピン穴76からストッパピン77を抜いて仮置き穴79に移し、ストッパピン77による拘束を解いてシリンダ67を伸長させる。その際、左右の走行装置12の両方について拘束を解けば、シリンダ67の伸長に伴って双方の走行装置12が回動し、左右対称に開脚する(図3図6参照)。左右の走行装置12の一方のみについて拘束を解けば、シリンダ67の伸長に伴って他方の走行装置12が固定された状態で一方の走行装置12のみが回動する結果、左右非対称に開脚する(図7図8参照)。
【0030】
8.効果
(1)本実施形態によれば、まず走行装置12をV字型に開脚することができるので、開脚して左右の走行装置12の間を掘削したり左右の履帯23を逆回転させることで縦孔Hの底部で円弧状に横移動したりすることができる。従って狭隘な縦孔Hの中でも小回りが利き、掘削箇所から適度な距離がとれない場合でも旋回体30の前部の下方まで掘削できるので効率良く作業を進めることができる。
【0031】
このとき、超小型の油圧ショベル100においては走行体10も小さく、センタフレーム14に対して左右の走行装置12を個別にシリンダで連結する(つまり左右の走行装置12にそれぞれ専用のシリンダを設ける)構成とするだけのレイアウト上の余裕がない。1本のシリンダ67で左右の走行装置12を開脚する構造であるため、シリンダ67を伸ばせば左右の走行装置12はセンタフレーム14に対して対称に回動して開脚する(図3参照)。センタフレーム14に対して双方の走行装置12が回動すると、転倒支点(左右の走行装置12の接地面の前端)が後退し機体重心に近付く。本実施形態の場合、図3に示したように転倒支点はセンタフレーム14の前端辺りまで後退する。トラックフレーム11の前部には、作業機40の掘削作業の邪魔になるため後部のようにアウトリガー13を設けることは好ましくない。転倒支点が後退すればそれだけ機体の安定性が低下する。
【0032】
それに対し、本実施形態においては拘束機構70を設けたことにより、一方の走行装置12を拘束してシリンダ67を伸ばせば、他方の走行装置12のみが回動して開脚する(図7参照)。一方の走行装置12が閉脚時の姿勢を保つので、図3に示した場合に比べて転倒支点の後退を抑制し、機体の安定性の低下を抑制することができる。
【0033】
(2)拘束機構70はセンタフレーム14側の第1ブラケット71と走行装置12側の第2ブラケット72をストッパピン77で連結する簡素な構造である。また走行装置12における前部が開脚する構成にあって拘束機構70はその走行装置12の前部を拘束するため、シリンダ67の伸長時に拘束機構70で受ける力が抑えられ、必要以上に強固な構成とする必要がない。従って拘束機構70を設けたことによる部品点数や製作工数の増加が抑えられる。
【0034】
(3)第1ブラケット71と第2ブラケット72に閉脚時に接触し合うストッパ部78を設けた。これによりストッパ部78を接触させることでピン穴76を容易に位置決めすることができ、閉脚時におけるピン穴76へのストッパピン77の挿し込み作業を容易化することができる。
【0035】
(4)ピン穴76とは別に第1ブラケット71に仮置き穴79を設けたので、走行装置12の回動動作を拘束しない場合、仮置き穴79にストッパピン77を挿し込んでおくことができる。これにより抜き取ったストッパピン77をなくさないように注意する必要がなく、オペレータは油圧ショベル100の操縦に専念することができる。
【0036】
(5)本実施形態では左右の走行装置12を直接シリンダ67で連結するのではなく、左右のリンク15をシリンダ67で連結している。これによりシリンダ67の伸縮動作を効率良く走行装置12の回動運動に変換することができ、シリンダ67の長さやストロークも抑えられる。またこのリンク15の回転軸61の給脂口81が臨む開口82を第1ブラケット71に設けたことにより、回転軸61に対する給脂作業を機体前方から容易に行うことができる。
【0037】
9.変形例
以上の実施形態では、左右の走行装置12の双方についてそれぞれ拘束機構70を設けた場合を例示挙げて説明したが、拘束すべき走行装置12が常時同じであるような場合にはいずれか一方を省略しても良い。また第1ブラケット71及び第2ブラケット72をストッパピン77で連結する構成の拘束機構70を例示したが、拘束機構70の構成は適宜変更可能である。例えば走行装置12をセンタフレーム14に対してフックで係止する構成、ボルトで締結する構成等、走行装置12が回動できなくする構成であれば良い。
【0038】
また上記効果(3)を得るために第1ブラケット71及び第2ブラケット72にストッパ部78を設けた構成を例示したが、閉脚時に接触し合うストッパを第1ブラケット71及び第2ブラケット72に設ける必要は必ずしもない。但し拘束機構70は走行装置12の回動支点となる回転軸66から距離があり、ここにストッパ部78を設けることでトラックフレーム11やストッパ部78の製作誤差が閉脚姿勢の精度に与える影響を抑えることができる。またピン穴76の位置決め作業の容易化の必要性がなく本質的な上記効果(1)が得られれば足りる場合、ストッパ部78は省略しても良い。
【0039】
また上記効果(4)を得るために第1ブラケット71に仮置き穴79を設ける場合を例示したが、仮置き穴79は第1ブラケット71以外の部材に設けても良い。例えば運転席32の足元にストッパピン77のホルダーを設ける等しても良い。またストッパピン77の管理が問題にならず本質的な上記効果(1)が得られれば足りる場合、仮置き穴79やそれに相当するものは省略しても良い。
【0040】
また上記効果(5)を得るために第1ブラケット71に給脂用の開口82を設ける構成を例示したが、レイアウト上、給脂作業の改善の必要性がない場合、或いは第1ブラケット71が給脂の邪魔にならない場合、開口82を省略しても良い。
【0041】
更には、左右のリンク15をシリンダ67で連結した構成を例示したが、左右の走行装置12のサイドフレーム16を直接シリンダ67で連結する構成も考えられる。この場合、リンク15は必ずしも必要ない。また設置可能であればシリンダ67は複数本あっても良い。この場合、左右の走行装置12を別々のシリンダで個別に回動させる構造とすることもできるが、複数のシリンダを連結しストローク量を増大させたシリンダユニットを上記シリンダ67に代えることも考えられる。
【0042】
また油圧ポンプを駆動する原動機として電動機37を搭載した油圧ショベル100に発明を適用する場合を例示して説明した。しかし油圧ショベル100が遠隔操作可能な場合、或いは稼働現場で排気ガスが問題にならないような場合等には、電動機37に代えてエンジン(内燃機関)を原動機として用いても良い。
【符号の説明】
【0043】
10…走行体、12…走行装置、14…センタフレーム、15…リンク、30…旋回体、37…電動機(原動機)、40…作業機、46…アームシリンダ(油圧アクチュエータ)、47…作業具シリンダ(油圧アクチュエータ)、67…シリンダ、70…拘束機構、71…第1ブラケット、72…第2ブラケット、76…ピン穴、77…ストッパピン、78…ストッパ部、79…仮置き穴、81…給脂口、82…開口、100…開脚型油圧ショベル
図1
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図8