(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
丸棒体の熱間鍛造において、丸棒体がプレスされた際に、丸棒体が振動し、丸棒体は、ミリ秒単位の周期で揺れている。丸棒体の振動中に、カメラ(撮像部)で丸棒体を撮像した場合、画像に写っている丸棒体(丸棒体領域)がブレる。このような画像に対して、特許文献1の技術を適用しても、丸棒体の直径の測定精度はよくない。このため、丸棒体の振動が停止するまで、丸棒体の直径の測定を待つ必要がある。この期間、丸棒体の熱間鍛造の作業が中断されるので、作業効率が悪くなる。熱間鍛造されている丸棒体は、自然冷却により丸棒体の温度が徐々に下がる。丸棒体の温度が低下すると、丸棒体が硬くなり、丸棒体にプレスしても、丸棒体の変形量が少ないので、丸棒体の直径を所望の値にすることが難しくなる(又は、所望の値にできなくなる)。従って、丸棒体の直径の測定のために、作業を中断することは望ましくない。
【0005】
熱間鍛造中に丸棒体の直径が所望の値より小さくなった場合、熱間鍛造は失敗であり、作業者は、丸棒体を再度、加熱して、熱間鍛造を最初からやり直す必要がある。従って、熱間鍛造中、常に、丸棒体の直径を測定し、測定結果をチェックすることは、作業者にとって極めて重要である。
【0006】
本発明の目的は、丸棒体の直径測定のために、熱間鍛造の作業を中断することなく、丸棒体の直径を精度よく測定できる丸棒直径測定装置および丸棒直径測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1局面に係る丸棒直径測定装置は、熱間鍛造されている丸棒体の側面を示す丸棒体領域を含む画像を取得する第1取得部と、前記画像を撮像した撮像部と前記丸棒体との距離を取得する第2取得部と、前記丸棒体の上側と前記丸棒体との境界を示す上エッジ、および、前記丸棒体の下側と前記丸棒体との境界を示す下エッジを、前記画像から検出する検出部と、前記距離、前記上エッジの位置、および、前記下エッジの位置を基にして、前記丸棒体の直径を算出する第1算出部と、前記上エッジおよび前記下エッジと交差する方向において、前記画像の中央と前記丸棒体領域の中央とのズレ量を算出する第2算出部と、前記ズレ量が小さくなるように、前記撮像部の光軸を調整するアクチュエータを制御する制御部と、を備える。
【0008】
第1算出部は、丸棒体と撮像部との距離、上エッジの位置、および、下エッジの位置を基にして、丸棒体の直径を算出する。これは公知の数式を用いることにより可能である。この直径の算出方法では、上エッジおよび下エッジと交差する方向において、丸棒体の側面の画像(すなわち、丸棒体の側面を示す丸棒体領域を含む画像)の中央と丸棒体領域の中央とのズレ量が大きくなるに従って、直径の測定精度が悪くなる。熱間鍛造中、丸棒体の振動により、画像の中央と丸棒体領域の中央とにズレが発生する。なお、中央は、中心と言い換えることができる。
【0009】
第2算出部は、上エッジおよび下エッジと交差する方向において、画像の中央と丸棒体領域の中央とのズレ量を算出する。制御部は、このズレ量が小さくなるように(好ましくは、ズレ量が0になる)、撮像部の光軸を調整するアクチュエータを制御する(光軸の調整は、光軸の高さの調整でもよいし、光軸の角度の調整でもよい)。従って、本発明の第1局面に係る丸棒直径測定装置によれば、丸棒体の直径測定のために、熱間鍛造の作業を中断することなく、丸棒体の直径を精度よく測定することができる。
【0010】
上記構成において、前記撮像部が前記画像を撮像する前に、前記丸棒体の側面内の所定領域の輝度値を取得する第3取得部と、前記丸棒体領域の輝度値が予め定められた範囲内に収まるように、前記第3取得部が取得した前記輝度値を基にして、前記撮像部の露出条件を調整する調整部と、を備える。
【0011】
熱間鍛造されている丸棒体は、時間の経過にしたがって、温度が低下するので、丸棒体の側面の輝度が低下する。従って、撮像部の露出条件(例えば、シャッタースピード(言い換えれば、露光時間)、絞り、ISO感度)が同じであれば、時間の経過にしたがって、丸棒体領域の輝度値が低下するので、検出部が、上エッジおよび下エッジを検出する精度が低下する。この構成は、丸棒体の側面内の所定領域(言い換えれば、側面に含まれる所定領域)の輝度値を、丸棒体の側面の輝度値と見なし、この輝度値を、画像の撮像前に取得し、丸棒体領域の輝度値が予め定められた範囲内に収まるように、取得した輝度値を基にして、撮像部の露出条件を調整する。従って、この構成によれば、時間が経過し、丸棒体の温度が下がっても、上エッジおよび下エッジの検出精度の低下を防止できる。所定領域の輝度値とは、例えば、所定領域の平均輝度値である。予め定められた範囲とし、下限値のみならず、上限値が設けられるのは、輝度値が飽和すると、エッジの位置がずれるからである。
【0012】
例えば、この構成は、丸棒体領域の輝度値が上記範囲内に収まる露出条件と、所定領域の輝度値との関係を示すテーブルを予め記憶する記憶部を備え、取得した所定領域の輝度値とテーブルとを用いて、露出条件を決定し、撮像部の露出条件をこの決定した条件に設定する。露出条件は、シャッタースピード(露光時間)、絞り、ISO感度のいずれか1つでもよいし、これらの組合せでもよい。例えば、シャッタースピード(露光時間)を露出条件とした場合、絞りおよびISO感度は固定される。
【0013】
上記構成において、前記撮像部は、前記画像の中央をまたぐ位置に対応する位置に前記所定領域を設定し、前記所定領域の前記輝度値を算出し、前記第3取得部は、前記撮像部が算出した前記輝度値を取得する。
【0014】
上述したように、調整部は、丸棒体の側面内の所定領域の輝度値を、丸棒体の側面の輝度値とみなし、撮像部の露出条件を調整する。所定領域が、丸棒体と背景との境界付近に設定されているとする。この場合、丸棒体が振動していると、所定領域が丸棒体の側面からはみ出す可能性がある。このようなことが発生すれば、丸棒体の側面内の所定領域の正確な輝度値を算出することができない。この構成は、撮像部が撮像する画像の中央をまたぐ位置に対応する位置に所定領域を設定する。このため、丸棒体が振動していても、所定領域が丸棒体の側面からはみ出すことを防止できる。
【0015】
上記構成において、前記露出条件と前記丸棒体の温度との関係を示す情報を予め記憶する第1記憶部と、前記調整部が調整した前記露出条件と前記情報とを用いて、前記丸棒体の温度を決定する決定部と、前記決定部が決定した前記丸棒体の温度を表示する制御をする第1表示制御部と、をさらに備える。
【0016】
丸棒体の温度が低下すると、丸棒体が硬くなり、丸棒体にプレスしても、丸棒体の変形量が少ないので、丸棒体の直径を所望の値にすることが難しくなる(又は、所望の値にできなくなる)。このため、作業員は、丸棒体の温度を常に監視しながら、丸棒体を熱間鍛造する。丸棒体の温度は、温度測定装置(例えば、放射温度計)で測定することができるが、この構成によれば、温度測定装置が設けることなく、作業員に丸棒体の温度を示すことができる。
【0017】
上記構成において、前記丸棒体の直径と前記丸棒体の温度とを用いて、常温での前記丸棒体の直径の推定値を表す所定式を予め記憶する第2記憶部と、前記第1算出部が算出した前記丸棒体の直径、現在の前記丸棒体の温度、および、前記所定式を基にして、前記推定値を算出する第3算出部と、前記第3算出部が算出した前記推定値を表示する制御をする第2表示制御部と、をさらに備える。
【0018】
熱間鍛造中に、作業員が丸棒体の直径を監視するのは、常温(言い換えれば、冷間、室温)での丸棒体の直径を所望値にするためである。この構成によれば、熱間鍛造中に、常温での丸棒体の直径の推定値を作業員に示すことができる。作業員は、これを目安にして、丸棒体を熱間鍛造することができる。
【0019】
本発明の第2局面に係る丸棒直径測定方法は、本発明の第1局面に係る丸棒直径測定装置を用いた丸棒直径測定方法であって、前記丸棒直径測定装置を用いて、前記丸棒体の鍛造中に、前記丸棒体の直径を測定する第1ステップと、前記第1ステップで測定した前記丸棒体の直径を、前記丸棒体の鍛造中に表示部に表示させる第2ステップと、前記丸棒直径測定装置を用いて、前記丸棒体の鍛造終了後に、前記丸棒体の直径を測定する第3ステップと、前記第3ステップで測定した前記丸棒体の直径を、前記丸棒体の鍛造終了後に前記表示部に表示させる第4ステップと、を備える。
【0020】
上述したように、本発明の第1局面に係る丸棒直径測定装置は、アクチュエータを用いて、撮像部の光軸を調整する。これにより、丸棒体が振動していても、丸棒体の直径を精度よく測定することができる。本発明の第1局面に係る丸棒直径測定装置を用いて、振動している丸棒体の直径を高精度で測定するためには、丸棒体の振動に追従することができる、高性能なアクチュエータが必要となる。しかし、熱間鍛造中の丸棒体の直径は、丸棒体の直径の最終的な値でないので、丸棒体の直径の測定は、精度が悪くなければよく、高精度でなくてもよい。これに対して、熱間鍛造終了後、作業員は、丸棒体の直径の最終的な値を知りたいので、丸棒体の直径を高精度で測定する必要がある。熱間鍛造終了後、丸棒体はプレスされておらず、丸棒体は振動していないので、高性能なアクチェエータでなくても、本発明の第1局面に係る丸棒直径測定装置を用いて、丸棒体の直径を高精度で測定することができる。以上より、本発明の第2局面に係る丸棒直径測定方法によれば、アクチュエータが高性能でなくても、丸棒体の直径測定について、作業員の要求を満足することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、丸棒体の直径測定のために、熱間鍛造の作業を中断することなく、丸棒体の直径を精度よく測定できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。各図において、同一符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その構成について、既に説明している内容については、その説明を省略する。
【0024】
図1は、実施形態に係る丸棒直径測定装置100の構成を示すブロック図である。
図2は、
図1に示す丸棒直径測定装置100を用いた丸棒体400の熱間鍛造を説明する説明図である。
図3は、熱間鍛造プレス200によって鍛造されている丸棒体400の側面を示す模式図である。
【0025】
図2および
図3を参照して、熱間鍛造プレス200について説明する。熱間鍛造されている丸棒体400(熱間丸棒体)の温度は、約600〜1000度である。熱間鍛造プレス200は、ハンマー部201とベッド部202とを備え、ベッド部202に載置された丸棒体400をハンマー部201で叩くことにより、丸棒体400を、所望の直径および長さを有する丸棒体400に成形する。マニプレータ300は、丸棒体400の一方の端部を把持している。マニプレータ300によって、丸棒体400を回転させたり、丸棒体400の長手方向に沿って、丸棒体400を移動させたりすることができる。これにより、ハンマー部201によって丸棒体400が叩かれる箇所を変えることができる。
【0026】
熱間鍛造プレス200を操作するプレス操作盤203と、マニプレータ300を操作するマニプレータ操作盤301とは、オペレータ室500に配置されている。オペレターター室500にいる作業員は、マニプレータ操作盤301を操作し、丸棒体400の叩く箇所をハンマー部201の下方に位置させる。作業員は、プレス操作盤203を操作して、その箇所をハンマー部201で叩く。これらを繰り返すことにより、作業員は、丸棒体400を所望の直径および長さを有する丸棒体400に成形する。
【0027】
図1および
図2を参照して、丸棒直径測定装置100について説明する。丸棒直径測定装置100は、撮像部1と、距離測定部2と、調整機構3と、アクチュエータ4と、制御処理部5と、表示部7と、入力部8と、を備える。これらのうち、制御処理部5、表示部7、および、入力部8は、オペレータ室500に配置されている。丸棒直径測定装置100の測定対象は、熱間鍛造されている丸棒体400、および、熱間鍛造終了後の丸棒体400である。以下は、熱間鍛造されている丸棒体400を例にして説明するが、熱間鍛造終了後の丸棒体400についても同様である。
【0028】
撮像部1は、赤色波長以上あるいは近赤外波長以上の光を透過するバンドパスフィルターを備え、丸棒体400の側面の画像を撮像する。撮像部1の画角θの範囲に、丸棒体400が入る位置に、撮像部1が配置されている。撮像部1は、例えば、CCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサを備えるカメラである。
【0029】
距離測定部2は、撮像部1と丸棒体400(丸棒体400の表面)との距離を測定する。距離測定部2は、例えば、レーザ距離計であり、レーザ光2aを丸棒体400の表面に照射し、反射された光を受光し、この受光した光を基にして、撮像部1と丸棒体400(丸棒体400の表面)との距離を測定する。
【0030】
撮像部1および距離測定部2は、丸棒体400の側面と対向して配置されている。撮像部1および距離測定部2によりセンサヘッドが構成されている。調整機構3は、センサヘッド(撮像部1、距離測定部2)を上下方向に移動させることができる。これにより、撮像部1の光軸の位置を調整することができる。調整機構3は、アクチュエータ4から供給される動力によって、センサヘッド(撮像部1、距離測定部2)を上下方向に移動させる。調整機構3は、例えば、ステージ面が昇降するステージである。
【0031】
制御処理部5は、機能ブロックとして、第1取得部51と、第2取得部52と、第3取得部53と、第1算出部54と、第2算出部55と、第3算出部56と、第1記憶部57と、第2記憶部58と、第3記憶部59と、第1表示制御部60と、第2表示制御部61と、第3表示制御部62と、検出部63と、調整部64と、制御部65と、決定部66と、を備える。制御処理部5は、通信インターフェイス、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、および、HDD(Hard Disk Drive)等のハードウェア、上記機能ブロックの機能を実行するためのプログラムおよびデータ等によって実現される。
【0032】
表示部7は、丸棒直径測定装置100によって測定された丸棒体400の直径等を表示する。表示部7は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ(Organic Light Emitting Diode display)等によって実現される。
【0033】
入力部8は、作業員が丸棒直径測定装置100に命令(例えば、丸棒直径の測定開始、丸棒直径の測定終了)等を入力するための装置である。入力部8は、キーボード、マウス、タッチパネル等によって実現される。
【0034】
丸棒体400の直径の算出方法について説明する。
図4は、撮像部1の光軸1aと丸棒体400の中心軸400aとが直交する状態を説明する説明図である。
図5は、
図4に示す状態で撮像部1が撮像した赤外画像600を示す模式図である。
図5を参照して、赤外画像600は、丸棒体領域601と背景領域602とを含む。丸棒体領域601は、丸棒体400の側面を示している。背景領域602は、丸棒体400の背景を示している。丸棒体400は高温なので、丸棒体領域601は明るく写されている。背景は丸棒体400と比べてかなり温度が低いので、背景領域602は、暗く写されている。
【0035】
丸棒体400と背景との境界のうち、丸棒体400の上側と丸棒体400と境界を上エッジ601aとし、丸棒体400の下側と丸棒体400との境界を下エッジ601bとする。中央(中央線)601cは、丸棒体領域601の中央を示す仮想線である。中央(中央線)600aは、赤外画像600の中央を示す仮想線である。
図5に示す赤外画像600では、丸棒体領域601の中央601cと赤外画像600の中央600aとが一致している。後で説明するように、
図7に示す赤外画像600では、丸棒体領域601の中央601cと赤外画像600の中央600aとが一致しておらず、ズレている。上エッジ601a、下エッジ601b、中央601c、および、中央600aは、丸棒体400の長手方向に延びており、丸棒体400の長手方向を示す。この方向をx方向とする。y方向は、上エッジ601a、下エッジ601b、中央601c、および、中央600aと直交する方向である。
【0036】
図4および
図5を参照して、符号Rは、丸棒体400の半径(mm)を示す。符号fは、丸棒体400にピントが合わされているときの焦点距離(mm)を示す。符号Lは、丸棒体400と撮像部1との距離(mm)を示す。符号L1は、赤外画像600の中央600aを基準にした、上エッジ601aまでの距離(mm)を示す。L2は、赤外画像600の中央600aを基準にした、下エッジ601bまでの距離(mm)を示す。上エッジ601aが中央600aより上に位置すれば、L1はプラスとなり、上エッジ601aが中央600aより下に位置すれば、L1はマイナスとなる。同様に、下エッジ601bが中央600aより上に位置すれば、L2はプラスとなり、下エッジ601bが中央600aより下に位置すれば、L2はマイナスとなる。
【0037】
図4および
図5に示すように、撮像部1の光軸1aと丸棒体400の中心軸400aとが直交する場合、赤外画像600の中央600aと丸棒体領域601の中央601cとが、一致する。この場合、上エッジ601aは、中央600aより上に位置し、下エッジ601bは、中央600aより下に位置し、L1の絶対値とL2の絶対値とは等しい。これをyとする(|L1|=|L2|=y)。赤外画像600の中央600aと丸棒体領域601の中央601cとが、一致している場合(撮像部1の光軸1aと丸棒体400の中心軸400aとが直交する場合)において、丸棒体400の直径D(mm)は、以下の式(1)で示される。
【0039】
式(1)は、赤外画像600の中央600aと丸棒体領域601の中央601cとが一致している場合(撮像部1の光軸1aと丸棒体400の中心軸400aとが直交する場合)を前提にしているので、これらが一致していない場合、丸棒体400の直径の測定精度が悪くなる。
図6は、撮像部1の光軸1aと丸棒体400の中心軸400aとが直交していない状態の一例を説明する説明図である。
図7は、
図6に示す状態で撮像部1が撮像した赤外画像600を示す模式図である。y方向(上エッジ601aおよび下エッジ601bと交差する方向)において、赤外画像600の中央600aと丸棒体領域601の中央601cとにズレが発生している。このズレの量をズレ量Δとする。
【0040】
実施形態に係る丸棒直径測定装置100は、ズレ量Δが少なくなるように(好ましくは、ズレ量Δが0になる)、撮像部1の光軸1aの位置をリアルタイムで調整しながら、丸棒体400の直径を測定する。
【0041】
次に、実施形態に係る丸棒直径測定装置100の動作について説明する。
図8は、これを説明するフローチャートである。
図1を参照して、撮像部1は、丸棒体400の側面の赤外画像600を撮像する前に、丸棒体400の側面内の所定領域(言い換えれば、側面に含まれる所定領域)の輝度値を算出する(
図8のステップS1)。詳しく説明する。
図9は、赤外画像600の中央600aと、丸棒体400の側面内の所定領域400bとの位置関係を説明する説明図である。撮像部1は、赤外画像600の中央600aをまたぐ位置に対応する位置に、所定領域400bを設定する。矩形の所定領域が示されているが、所定領域の形状は、矩形に限定されない。撮像部1は、所定領域400bの輝度値(例えば、所定領域400bの平均輝度値)を算出(測定)する。
【0042】
図1を参照して、撮像部1は、算出した所定領域400bの輝度値を、制御処理部5へ送信する。第3取得部53は、この輝度値を取得する。このように、第3取得部53は、撮像部1が画像(赤外画像600)を撮像する前に、丸棒体400の側面内の所定領域400bの輝度値を取得する。
【0043】
調整部64は、丸棒体領域601の輝度値が予め定められた範囲内に収まるように、第3取得部53が取得した輝度値を基にして、撮像部1の露出条件を調整する(
図8のステップS2)。詳しく説明する。
図4および
図5を参照して、熱間鍛造されている丸棒体400は、時間の経過にしたがって、温度が低下するので、丸棒体400の側面の輝度が低下する。従って、撮像部1の露出条件(例えば、シャッタースピード(言い換えれば、露光時間)、絞り、ISO感度)が同じであれば、時間の経過にしたがって、丸棒体領域601の輝度値が低下するので、検出部63が、上エッジ601aおよび下エッジ601bを検出する精度が低下する。実施形態は、丸棒体400の側面内の所定領域400bの輝度値を、丸棒体400の側面の輝度値と見なし、この輝度値を、画像の撮像前に取得し(画像の撮像前に算出:
図8のステップS1)、丸棒体領域601の輝度値が予め定められた範囲内に収まるように、取得した輝度値を基にして、撮像部1の露出条件を調整する(
図8のステップS2)。従って、実施形態によれば、時間が経過し、丸棒体400の温度が下がっても、上エッジ601aおよび下エッジ601bの検出精度の低下を防止できる。所定領域400bの輝度値とは、例えば、所定領域400bの平均輝度値である。予め定められた範囲とし、下限値のみならず、上限値が設けられるのは、輝度値が飽和すると、エッジの位置がずれるからである。
【0044】
図1を参照して、制御処理部5は、丸棒体領域601の輝度値が上記範囲内に収まる露出条件と、所定領域400bの輝度値との関係を示すテーブルを予め記憶する第3記憶部59を備え、取得した所定領域400bの輝度値(算出した所定領域400bの輝度値:
図8のステップS1)と、テーブルと、を用いて、露出条件を決定し、撮像部1の露出条件をこの決定した条件に設定する。露出条件は、シャッタースピード(露光時間)、絞り、ISO感度のいずれか1つでもよいし、これらの組合せでもよい。例えば、シャッタースピード(露光時間)を露出条件とした場合、絞りおよびISO感度は固定される。実施形態では、露出条件として、シャッタースピードを例にして説明する。
【0045】
図9を参照して、撮像部1は、赤外画像600の中央600aをまたぐ位置に対応する位置に所定領域400bを設定し、所定領域400bの輝度値を測定する。これにより、以下の効果が生じる。上述したように、調整部64は、丸棒体400の側面内の所定領域400bの輝度値を、丸棒体400の側面の輝度値とみなし、撮像部1の露出条件を調整する。所定領域400bが、丸棒体400と背景との境界付近に設定されているとする。この場合、丸棒体400が振動していると、所定領域400bが丸棒体400の側面からはみ出す可能性がある。このようなことが発生すれば、丸棒体400の側面内の所定領域400bの正確な輝度値を算出することができない。実施形態では、撮像部1が撮像する赤外画像600の中央600aをまたぐ位置に対応する位置に所定領域400bを設定する。このため、丸棒体400が振動していても、所定領域400bが丸棒体400の側面からはみ出すことを防止できる。
【0046】
図1を参照して、決定部66は、丸棒体400の現在の温度を決定する(
図8のステップS3)。詳しく説明すると、第1記憶部57は、撮像部1のシャッタースピード(露出条件)と丸棒体400の温度との関係を示す情報を予め記憶している。この情報として、例えば、グラフ、テーブルがあるが、実施形態では、グラフを例にして説明する。
図10は、シャッタースピードと丸棒体400の温度との関係の一例を示すグラフである。グラフの横軸は、シャッタースピードを示し、縦軸は、丸棒体400の温度を示す。丸棒体400の温度が下がるに従って、丸棒体400の側面の輝度値が下がるので、シャッタースピードが遅くなる。
【0047】
図1を参照して、決定部66は、調整部64が調整したシャッタースピード(
図8のステップS2)と、
図10に示すグラフとを用いて、丸棒体400の温度を決定する。第1表示制御部60は、決定部66が決定した丸棒体400の温度を、表示部7に表示させる(ステップS4)。丸棒体400の温度が低下すると、丸棒体400が硬くなり、丸棒体440にプレスしても、丸棒体400の変形量が小さいので、丸棒体400の直径を所望の値にすることが難しくなる(又は、所望の値にできなくなる)。このため、作業員は、丸棒体400の温度を常に監視しながら、丸棒体400を熱間鍛造する。丸棒体400の温度は、温度測定装置(例えば、放射温度計)で測定することができるが、実施形態によれば、温度測定装置が設けることなく、作業員に丸棒体400の温度を示すことができる。
【0048】
ステップS4後、実施形態は、ステップS15の処理へ進む。ステップS15の処理については後で説明する。撮像部1は、ステップS2で調整されたシャッタースピードの下で、丸棒体400の側面の赤外画像600を撮像する(
図8のステップS5)。撮像部1は、撮像した赤外画像600を、制御処理部5へ送信する。第1取得部51は、撮像部1から送られてきた赤外画像600を受信し、第1算出部54へ送る。このように、第1取得部51は、熱間鍛造されている丸棒体400の側面を示す丸棒体領域601を含む画像(赤外画像600)を取得する。
【0049】
撮像部1が、赤外画像600を撮像するときに(
図8のステップS5)、距離測定部2は、撮像部1と丸棒体400との距離を測定する(
図8のステップS6)。距離測定部2は、距離の測定値を制御処理部5へ送信する。第2取得部52は、距離の測定値を受信し、第1算出部54へ送る。このように、第2取得部52は、画像(赤外画像600)を撮像した撮像部1と丸棒体400との距離を取得する。
【0050】
検出部63は、
図8のステップS5で撮像された赤外画像600から、例えば、微分フィルタを用いて、上エッジ601aおよび下エッジ601bを検出する(
図8のステップS7)。
【0051】
図1および
図7を参照して、第2算出部55は、赤外画像600の中央600aと丸棒体領域601の中央601cとのズレ量Δを算出する(
図8のステップS8)。詳しく説明すると、第2算出部55は、上エッジ601aのy座標、下エッジ601bのy座標、および、下記式(2)を用いて、丸棒体領域601の中央601cのy座標を算出する。
【0052】
丸棒体領域の中央のy座標=(上エッジのy座標+下エッジのy座標)÷2・・・(2)
第2算出部55は、算出した丸棒体領域601の中央601cのy座標と、
図8のステップS5で撮像された赤外画像600の中央600aのy座標との差(ズレ量Δ)を算出する。赤外画像600の中央600aのy座標は、0である。丸棒体領域601の中央601cが赤外画像600の中央600aより上に位置するとき、ズレ量Δは、プラスとなり、丸棒体領域601の中央601cが赤外画像600の中央600aより下に位置するとき、ズレ量Δは、マイナスとなる。ズレ量Δは、ピクセルの単位で算出される。第2算出部55は、ピクセルミリ変換の式を用いて、ズレ量Δを、ピクセル単位からミリ単位に変換する。このミリ単位に変換されたズレ量Δが、撮像部1の上下方向の移動量となる。
【0053】
制御部65は、ズレ量Δ(
図8のステップS8)が、0か否かを判定する(
図8のステップS9)。制御部65は、ズレ量Δが0でないと判定したとき(
図8のステップS9でNo)、ズレ量Δが少なくなるように(好ましくは、ズレ量Δが0になる)、撮像部1の光軸1aを調整する(
図8のステップS10)。詳しく説明すると、制御部65は、ズレ量Δが0より小さい場合(例えば、
図7)、撮像部1の位置(撮像部1の光軸1aの位置)の上がる量が、ズレ量Δになるように、アクチュエータ4を制御する。制御部65は、ズレ量Δが0より大きい場合、撮像部1の位置(撮像部1の光軸1aの位置)の下がる量が、ズレ量Δになるように、アクチュエータ4を制御する。これにより、丸棒体領域601の中央601cと赤外画像600の中央600aとのズレ量Δが小さくなる(0になる)。
【0054】
これに対して、制御部65は、ズレ量Δが0と判定したとき(
図8のステップS9でYes)、ステップS10の処理をしない。ステップS9でYesの判定がされた後、または、ステップS10の処理がされた後、実施形態は、ステップS15の処理へ進む。ステップS15の処理については後で説明する。
【0055】
第1算出部54は、丸棒体400の直径を算出する(
図8のステップS11)。詳しく説明すると、第1算出部54は、
図8のステップS6で測定された撮像部1と丸棒体400との距離と、ステップS7で検出された上エッジ601aの位置、下エッジ601bの位置と、上記式(1)と、を基にして、丸棒体400の直径を算出する。第3表示制御部62は、第1算出部54が算出した丸棒体400の直径を、表示部7に表示させる(ステップS12)。
【0056】
このように、第1算出部54は、丸棒体400と撮像部1との距離、上エッジ601aの位置、および、下エッジ601bの位置を基にして、丸棒体400の直径を算出する。この直径の算出方法では、y方向(上エッジ601aおよび下エッジ601bと交差する方向)において、丸棒体400の側面の赤外画像600(すなわち、丸棒体400の側面を示す丸棒体領域601を含む赤外画像600)の中央600aと丸棒体領域601の中央601cとのズレ量Δが大きくなるに従って、直径の測定精度が悪くなる。熱間鍛造中、丸棒体400の振動により、赤外画像600の中央600aと丸棒体領域601の中央601cとにズレが発生する。
【0057】
制御部65は、ズレ量Δが小さくなるように(好ましくは、ズレ量Δが0になる)、撮像部1の光軸1aの高さを調整するアクチュエータ4を制御する(
図8のステップS10)。従って、実施形態によれば、丸棒体400の直径測定のために、熱間鍛造の作業を中断することなく、丸棒体400の直径を精度よく測定することができる。
【0058】
ステップS12の処理がされた後、実施形態は、ステップS15の処理へ進む。ステップS15の処理については後で説明する。第3算出部56は、丸棒体400が常温(室温)になったときの直径の推定値を算出する(
図8のステップS13)。詳しく説明すると、第2記憶部58は、丸棒体400の直径と丸棒体400の温度とを用いて、常温(室温)での丸棒体400の直径の推定値を表す所定式を予め記憶している。この所定式は、下記式3および式4である。
【0059】
D1=D2−Δd・・・(3)
Δd=α×(T2−T1)×D2・・・(4)
D1は、常温(室温)での丸棒体400の直径の推定値を示す。D2は、熱間鍛造されている丸棒体400の直径を示す。Δdは、直径の変化量を示す。αは、丸棒体400の材料(鍛造素材)の線膨張係数を示す。T1は、常温(20度)を示す。T2は、熱間鍛造されている丸棒体400の現在の温度を示す。
【0060】
温度T2は、ステップS3で決定された値が用いられる。なお、丸棒直径測定装置100が、丸棒体400の温度を決定する機能(ステップS3)、および、決定した温度を表示する機能(ステップS4)を備えない態様の場合、温度測定装置(例えば、放射温度計)が測定した丸棒体400の温度が、温度T2として用いられる。
【0061】
第3算出部56は、第1算出部54が算出した丸棒体400の直径(
図8のステップS11)を直径D2とし、決定部66が決定した丸棒体400の温度(
図8のステップS3)を、丸棒体400の現在の温度とし、式(3)、式(4)を用いて、推定値D1を算出する。
【0062】
第2表示制御部61は、第3算出部56が算出した推定値D1を表示部7に表示させる(
図8のステップS14)。熱間鍛造中に、作業員が丸棒体400の直径を監視するのは、常温(室温)での丸棒体400の直径を所望値にするためである。実施形態によれば、熱間鍛造中に、常温(室温)での丸棒体400の直径の推定値D1を作業員に示すことができる。作業員は、これを目安にして、丸棒体400を熱間鍛造することができる。
【0063】
ステップS14の処理がされた後、制御処理部5は、直径の測定の終了命令がされたか否かを判断する(ステップS15)。詳しく説明すると、作業員は、入力部8を操作して、直径の測定の終了命令を入力したとき(ステップS15でYes)、制御処理部5は、ステップS1〜ステップS14の処理を終了させる。
【0064】
作業員は、入力部8を操作して、直径の測定の終了命令を入力しないとき(ステップS15でNo)、実施形態は、ステップS1の処理に戻る。よって、実施形態は、熱間鍛造中に、リアルタイムで、丸棒体400の温度を表示し(ステップS4)、撮像部1の光軸1aを調整し(ステップS10)、丸棒体400の直径を表示し(ステップS12)、丸棒体400の直径の推定値を表示する(ステップS14)。
【0065】
なお、熱間鍛造の終了後も、実施形態は、ステップS1〜ステップS14の処理をするので、リアルタイムで、丸棒体400の温度を表示し(ステップS4)、撮像部1の光軸1aを調整し(ステップS10)、丸棒体400の直径を表示し(ステップS12)、丸棒体400の直径の推定値を表示する(ステップS14)。
【0066】
実施形態は、アクチュエータ4を用いて、撮像部1の光軸1aの位置を、リアルタイムで調整する(ステップS10)。これにより、丸棒体400が振動していても、丸棒体400の直径を精度よく測定することができる。丸棒直径測定装置100を用いて、振動している丸棒体400の直径を高精度で測定するためには、丸棒体400の振動に追従することができる、高性能なアクチュエータ4が必要となる。しかし、熱間鍛造中の丸棒体400の直径は、丸棒体400の直径の最終的な値でないので、丸棒体400の直径の測定は、精度が悪くなければよく、高精度でなくてもよい。これに対して、熱間鍛造終了後、作業員は、丸棒体400の直径の最終的な値を知りたいので、丸棒体400の直径を高精度で測定する必要がある。熱間鍛造終了後、丸棒体400はプレスされておらず、丸棒体400は振動していないので、高性能なアクチェエータでなくても、丸棒直径測定装置100を用いて、丸棒体400の直径を高精度で測定することができる。以上より、実施形態によれば、アクチュエータ4が高性能でなくても、丸棒体400の直径測定について、作業員の要求を満足することができる。
【0067】
図1に示すように、実施形態に係る丸棒直径測定装置100は、撮像部1、距離測定部2、調整機構3(
図2)、アクチュエータ4、表示部7、および、入力部8を備えるが、これらは、本発明に係る丸棒直径測定装置の必須の構成要件ではない。
【0068】
実施形態に係る丸棒直径測定装置100の変形例を説明する。
図2を参照して、実施形態に係る丸棒直径測定装置100は、調整機構3を用いて、撮像部1の光軸1a(
図4)を上下方向に移動させることにより、光軸1aの位置を調整している。
図11は、変形例に備えられる調整機構9を説明する説明図である。調整機構9は、傾斜ステージである。変形例は、アクチュエータ4を用いて、調整機構9により、撮像部1を傾斜させることにより、光軸1a(
図2)の角度を変える。これにより、光軸1aの位置が調整される。