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特許6769931スイッチトキャパシタ電力増幅器をランプするための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769931
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】スイッチトキャパシタ電力増幅器をランプするための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/24 20060101AFI20201005BHJP
   H03F 1/00 20060101ALI20201005BHJP
   H03F 3/217 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   H03F3/24
   H03F1/00 230
   H03F3/217
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-125366(P2017-125366)
(22)【出願日】2017年6月27日
(65)【公開番号】特開2018-7251(P2018-7251A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2020年6月26日
(31)【優先権主張番号】16176431.1
(32)【優先日】2016年6月27日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508223789
【氏名又は名称】スティヒティング・イメック・ネーデルラント
【氏名又は名称原語表記】Stichting IMEC Nederland
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(72)【発明者】
【氏名】ヤック・ロンメ
【審査官】 角張 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第8547177(US,B1)
【文献】 米国特許第7276962(US,B1)
【文献】 米国特許第6249876(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0103137(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0096020(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0024235(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0126901(US,A1)
【文献】 米国特許第5420807(US,A)
【文献】 特開2007−243992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00−3/45
3/50−3/52
3/62−3/64
3/68−3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチトキャパシタ電力増幅器(102)をランプするための方法であって、
前記スイッチトキャパシタ電力増幅器(102)は、キャパシタバンク内に複数のキャパシタ(104)を含み、
前記キャパシタバンク内の所定数のキャパシタ(104)が活性化され、前記活性化されるキャパシタ(104)は、接地に接続されることと、電源に接続されることとの間で繰り返し切り替えられるように構成され、
前記方法は、前記スイッチトキャパシタ電力増幅器をランプするステップを含み、
前記ランプすることは、
前記キャパシタバンク内のキャパシタ(104)の数を変更するステップ(202)と、
前記キャパシタバンク内の活性化されるキャパシタの数を変更する連続するステップの間の時間期間において、前記キャパシタバンク内の活性化されるキャパシタの数を保持するステップ(206)と、
前記キャパシタバンク内の所望数のキャパシタが活性化されるまで、前記変更することと、前記保持することを繰り返すこととを含み、
前記時間期間の長さは、前記保持の繰り返しにわたって変化される方法。
【請求項2】
前記時間期間の長さは、擬似ランダムシーケンスに従って変化される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記時間期間の長さは、ランダム変数とクロック周期との積によって与えられ、
前記ランダム変数は1から最大値までの整数である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ランプする時間を制御するための最大値の入力を受信するステップをさらに含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記キャパシタ(104)の数を、ステッピングパラメータによって制御される数だけ変化させることを含む請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記スイッチトキャパシタ電力増幅器(102)のランプを制御するための入力パラメータを受信するステップをさらに含請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記スイッチトキャパシタ電力増幅器(102)は、定包絡線無線周波信号を発生するときに使用される請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
イッチトキャパシタによって形成される信号に基づいて、前記定包絡線無線周波信号を発生することをさらに含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
無線周波信号を発生する装置であって、
前記装置は、
キャパシタバンク内に複数のキャパシタ(104)を含むスイッチトキャパシタ電力増幅器(102)と、
前記スイッチトキャパシタ電力増幅器(102)のランプを制御するための制御部(110)とを備え、
前記キャパシタバンク内の所定数のキャパシタ(104)が活性化され、前記活性化されるキャパシタ(104)は、接地に接続されることと、電源に接続されることとの間で繰り返し切り替えられるように構成され、
前記制御部(110)は、
前記キャパシタバンク内の活性化されるキャパシタ(104)の数を変更するための制御信号を送り、
前記キャパシタバンク内の活性化されるキャパシタの数を変更する連続するステップの間の時間期間において、前記活性化されるキャパシタバンク内のキャパシタ(104)の数を保持し、
前記キャパシタバンク内の所望数のキャパシタが活性化されるまで、前記制御信号の送信と前記保持を繰り返すように設けられ、
前記時間期間の長さは、前記保持の繰り返しにわたって変化される、無線周波信号を発生する装置。
【請求項10】
前記制御部は、擬似ランダムシーケンス発生部を備え、
前記時間期間の長さは、擬似乱数シーケンス発生部(114)で発生された擬似乱数シーケンスに基づいて変化される請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記制御部(110)は、前記擬似乱数シーケンス発生部(114)により発生されたランダム変数と前記制御部のクロック周波数とに基づいて、前記時間期間の長さを制御するように構成される請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記制御部(110)は、スイッチトキャパシタ電力増幅器(102)のランプの制御に影響を与える入力パラメータを受信するためのインターフェースを含む請求項9〜11のうちのいずれか1つに記載の装置。
【請求項13】
前記入力パラメータは、前記時間期間の長さに影響するランダム変数の最大値と、変更するステップにおいて変更されるキャパシタの数を規定するステッピングパラメータとのグループから選択された少なくとも1つのパラメータである請求項12に記載の装置。
【請求項14】
スイッチトキャパシタによって形成される信号に基づいて、定包絡線無線周波信号を送信するための送信機をさらに備えた請求項9〜13のうちのいずれか1つに記載の装置。
【請求項15】
無線ローカルエリアネットワーク上で通信するハンドヘルド装置であって、
請求項9〜14のうちのいずれか1つに記載の装置を含むハンドヘルド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチトキャパシタ電力増幅器をランプする(傾斜をつけて活性化する)ための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線周波数(RF)無線通信システムでは、電力増幅器は消費電力に大きな影響を与える部品である。このため、電力増幅器の高い効率は、エネルギーを節約し、バッテリ寿命を延ばすのに有益であり得る。
【0003】
RF信号の定包絡線変調は、電力増幅器が飽和レベル又はそれに近いレベルで動作することを可能にする。このことは、電力増幅器が効率的に使用されることを意味し、変調方式には低いピーク対平均電力比を与えることができるからである。
【0004】
無線送信機によって送信される信号は、電磁波干渉(EMI)規則を満たす必要がある。EMI規則は各国によって異なる場合があるが、その無線信号が互いに干渉しないことと、送信が許可されている認可された帯域で送信する送信機が帯域外の信号と干渉しないことを保証するために使用されている。
【0005】
複数のEMI規則を満たすように、送信される周波数と電力の厳密な制御を行い、可能であれば、エネルギー消費を最小限に抑えながら異なる国の異なるEMI規則に適応するRF送信機を提供することが望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】S.-M. Yoo, J. Walling, E. C. Woo, B. Jann and D. Allstot, "A switched-capacitor RF power amplifier", IEEE Journal of Solid-State Circuits, Vol. 46, No. 12, pp. 2977-2987, December 2011.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1では、スイッチトキャパシタ電力増幅器は、効率的に信号を増幅するために、非定包絡線変調信号の包絡線上で動作するように示されている。
【0008】
本発明の目的は、EMI規則を考慮した無線周波信号を発生することにある。一実施形態では、本発明の目的は、無線周波信号を発生する際のスイッチトキャパシタ電力増幅器(SCPA)のランピングを処理することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のこれらの目的及び他の目的は、独立請求項に定義される本発明によって少なくとも部分的に満たされる。好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、スイッチトキャパシタ電力増幅器をランプするための方法が提供され、前記スイッチトキャパシタ電力増幅器は、キャパシタバンク内に複数のキャパシタを含み、前記方法は、
前記スイッチトキャパシタ電力増幅器のランプすることを含み、
前記ランプすることは、
前記キャパシタバンク内のキャパシタの数を変更するステップと、
ある時間期間にわたって活性化されたキャパシタバンク内のキャパシタの数を保持するステップと、
前記変更と保持を繰り返すことにより実行され、
前記時間期間の長さは、前記保持の繰り返しにわたって変化される。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、無線周波信号を発生するための装置が提供される。前記装置は、スイッチトキャパシタ電力増幅器を備え、前記スイッチトキャパシタ電力増幅器は、キャパシタバンク内の複数のキャパシタと、スイッチトキャパシタ電力増幅器のランプ制御を行う制御部とを備える。前記制御部は、
活性化されているキャパシタバンク内のキャパシタの数を変更するための制御信号を送り、
ある時間期間にわたって活性化されたキャパシタバンク内のキャパシタの数を保持し、
前記制御信号の送信及び保持を繰り返すように設けられ、
前記時間期間の長さは、前記保持の繰り返しにわたって変化される。
【0012】
本発明によれば、無線周波信号を発生するためにSCPAを使用することができ、無線周波信号は、EMI規則が確実に満たされるようにSCPAを注意深く制御してもよい。本発明は、SCPAのデジタルロジックを用いて、定包絡線無線周波信号を発生するときにEMIを制限するための、明確に定義されたランプアップ/ダウン動作が作成される事実に基づいている。従って、高周波信号の発生をオン/オフするときに発生される信号は、EMI規則が確実に満たされるように制御することができる。
【0013】
一実施形態によれば、SCPAは、定包絡線の無線周波信号を発生するときに使用される。上述したように、SCPAの傾斜を制御することは、定包絡線無線周波信号が送信されるときに、EMI規則が満たされることを保証するために有利である。
【0014】
しかしながら、本発明のさらなる洞察として、方法及び装置が、定包絡線無線周波信号の発生するときだけでなく、非定包絡線信号の発生をオン/オフするときにランプアップ/ダウン(ramp−updown)することにおいて用いることができる。
【0015】
本発明によれば、ランプすることは、活性されるキャパシタバンク内のキャパシタの数の変更を繰り返し、一定時間期間において活性化されるキャパシタバンク内のキャパシタの数を保持することにより複数のステップにおいて実行される。時間間隔は、活性化されるキャパシタの数を変更する連続するステップ間の時間遅延を定義する。保持期間の繰り返しにわたって時間期間の長さのために、変化するステップは特定の周期性で起こることと、この周期性が望ましくない周波数で強い信号を送信する原因となることが回避される。従って、発生された信号のEMIは、規則によって設定された要件内になるように制御することができる。
【0016】
本願の文脈において、「キャパシタバンク内のキャパシタが活性化されている」という用語は、キャパシタのスイッチングがアクティブ状態であると解釈すべきである。このことは、キャパシタが接続される電圧をグランドと電源の間で切り替えられることを意味する。スイッチングは、発振器周波数で実行され、従って、活性化されているキャパシタは、発生された信号の電力を増幅するのに寄与する。キャパシタが活性化されると、キャパシタがグランドに接続されることと、電源に接続されることとの間で連続的にスイッチングされるようにスイッチングが保持される。SCPAのアップ又はダウン(増減)時において、活性化されたキャパシタの数は、最終的にキャパシタバンク内の所望の数の活性化されたキャパシタを有するように、いくつかのステップで変更される。
【0017】
本方法の一実施形態によれば、時間期間の長さは、擬似ランダムシーケンスに従って変化される。同様に、本装置の一実施形態によれば、前記制御部は、擬似乱数シーケンス発生部を備え、前記擬似ランダムシーケンス発生部により発生された擬似ランダムシーケンスに基づいてその時間期間の長さが変化される。
【0018】
ランダムシーケンスにより時間期間の長さを変化することは、活性化されたキャパシタの数を変更する規則的な周期性が回避され、従って、発生された信号のEMIに対するそのような周期性の影響が回避され得る。さらに、擬似乱数列を用いることにより、送信された信号上の活性化されたキャパシタの数を変更する複数のステップの効果を十分に制御することができる。
【0019】
この装置の一実施形態によれば、前記制御部は、前記擬似乱数シーケンス発生部により発生されたランダム変数と前記制御部のクロック周波数とに基づいて、時間期間の長さを制御するように構成される。SCPAはデジタル制御が可能なため、各クロックサイクルでアクティブになるキャパシタの数を変更することは自然である。キャパシタの数を変更するこの周波数は、擬似ランダムシーケンスを使用してディザリングすることができ、このことは、時間期間の長さを制御する簡単な方法を可能にする。
【0020】
本方法の一実施形態によれば、この時間期間の長さは、ランダム変数とクロック周期との積によって与えられ、ここで、ランダム変数は、1から最大値までの整数である。同様に、このことは、クロック周期を有する制御部を使用して、時間期間の長さを容易に制御することを可能にする。
【0021】
本方法の一実施形態によれば、ランプ時間を制御するための最大値の入力を受信するステップをさらに含む。このように、最大値は制御部に入力されて、SCPAのランプをリアルタイムで制御することができる。
【0022】
本方法の別の実施形態によれば、変化することは、ステッピングパラメータによって制御される数によってキャパシタの数を変化させることを含む。従って、ステッピングパラメータは、変更の各段階で変更する各ステップにおいて活性化又は非活性化され得るキャパシタの数を制御することができ、このことは、変更の各段階で変更する各ステップにおいてスプリアス周波数に影響を与えることができる。
【0023】
本方法の別の実施形態によれば、SCPAのランプを制御するための入力パラメータを受信するステップをさらに含み、入力パラメータは電磁波干渉の規則に適合される。従って、入力パラメータが、SCPAのランプが現地の地域で適用される規則に依存するように、現地のEMI規則に適合するように提供されてもよい。このことは、ランプアップがEMI規則に適合することを意味し、ランプの速度(すなわち、SCPAを完全にランプアップ/ダウンさせるのにかかる時間)を最大限に高める。このように、EMI規則が厳しい場合、入力パラメータはスプリアス周波数で弱い信号を発生しながら、速度が遅くなるようにランプを制御することがある一方で、EMI規則が寛容である場合、入力パラメータは、スピードが比較的速く、スプリアス周波数においてより強い信号を発生し(EMI規則を満たしながら)ランプを制御することができる。
【0024】
この装置の一実施形態によれば、制御部は、SCPAのランプの制御に影響を及ぼす入力パラメータを受信するためのインターフェースを備える。従って、制御部は、ランプを制御するための入力パラメータを受信することができるように構成される。
【0025】
入力パラメータは、時間期間の長さに影響を及ぼす確率変数の最大値と、変更ステップにおいて変更されるキャパシタの数を規定するステップパラメータとのグループから選択された少なくとも1つのパラメータである。
【0026】
本方法の一実施形態によれば、スイッチトキャパシタによって形成される発振信号に基づいて、定包絡線無線周波信号を発生するステップをさらに含む。従って、スイッチトキャパシタによって形成される信号は、定包絡線無線周波信号を発生するために使用され得る。
【0027】
この装置の一実施形態によれば、スイッチトキャパシタによって形成される発振信号に基づいて、定包絡線無線周波信号を送信するための送信機をさらに備える。従って、送信機は、定包絡線無線周波信号が送信されるように装置内に配置されてもよい。
【0028】
一実施形態によれば、送信される無線周波信号はサブGHz信号である。例えば900MHzの範囲においてGHz以下の周波数のサブGHz信号である無線周波信号は、例えば装置のインターネット(IoT)の使用で。装置間の無線通信に使用することができる。しかしながら、GHz以下の周波数帯域はグローバルに規則されておらず、EMI規則は地域によって異なる場合がある。従って、本発明がSCPAの傾斜を現地のEMI規則に適合するように適応させる可能性は、送信された無線周波信号がサブGHz信号である場合には、特に有用であり得る。
【0029】
本発明の第3の態様によれば、無線ローカルエリアネットワーク上で通信するハンドヘルド(手持ち式)装置が提供され、ハンドヘルド装置は、本発明の第2の態様に係る装置を備える。
【0030】
本発明のこの第3の態様の効果及び特徴は、本発明の概念の第1及び第2の態様と関連して上述したようにこれらと類似している。本発明の第1及び第2の態様に関して述べた実施形態は本発明の第3の態様と大きく互換性がある。
【0031】
特に、人々が、例えばグローバルに旅行するとき携帯電話などのハンドヘルド装置を持ってくるのは一般的である。従って、ハンドヘルド装置は、ときどき、異なるEMI規則を有する異なる国の無線ネットワークにおいて通信するために使用されてもよい。この点において、本発明の第2の態様に係る装置を備えたハンドヘルド装置を有することは、SCPAのランプアップ/ダウンの制御をローカルEMI規則に適合させ、またランプアップ/ダウンタイムを最大にすることができる。
【0032】
本発明のこれら及び他の態様について、本発明の実施形態を示す添付の図面を参照してさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施形態に係る装置の概略図である。
図2】SCPAのランピングにおけるスプリアス放射を示す図である。
図3】本発明に係るスプリアス放射の制御を示す図である。
図4】本発明の一実施形態による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、添付の図面を参照して以下でより完全に説明される。本発明の現在の好ましい実施形態が示されているが、本発明は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、完全性及び完全性のために提供され、本発明の範囲を当業者に完全に伝える。
【0035】
ここで図1を参照すると、無線周波信号を発生するための装置100が示されている。装置100は、例えば、無線ローカルエリアネットワーク上のハンドヘルド装置の通信を可能にするハンドヘルド装置に組み込まれてもよい。ハンドヘルド装置は例えばユーザによって運ばれる携帯電話又はその他の装置である。装置100によって発生された無線周波信号は、機械型通信(MTC)のために有用である。従って、装置100は、ポータブル装置、もしくはポータブル装置であるか否かに関係なく、無線通信を使用するMTCを使用する任意の装置に組み込むことができる。
【0036】
この装置は、SCPA102を備える。SCPA102は、キャパシタバンク内に多数のキャパシタ104を含む。各キャパシタ104の1つのプレートは、代替的に、例えば接地電位、又は交流電圧の定電圧に接続されてもよく、この交流電圧は接地電位と特定の周波数の電源電圧とを交互に切り替えることができる。従って、キャパシタ104は、キャパシタ104を定電圧又は交流電圧に接続するためのスイッチ106を備えることができる。
【0037】
交流電圧は、LO周波数を有する信号をキャパシタ104への入力として提供する局部発振器(LO)108によって供給されてもよい。キャパシタ104は、スイッチ106が交流電圧に接続されているときに活性化される。
【0038】
前述したように、SCPA102は、キャパシタバンク内に複数のキャパシタ104を含む。SCPA102は、活性化されるキャパシタ104の数を変更することによって出力電力をデジタル制御する。
【0039】
活性化されたキャパシタ104の数はnによって示され、キャパシタバンク内の活性化されたキャパシタ104の総数をNとすることができる。活性化されたキャパシタ104は、合計のアクティブキャパシタンス
【数1】
をともに供給する。非活性化キャパシタは接地又は電源電圧に接続されたままであり、その結果、全容量C、すなわちアクティブ+非アクティブの容量は一定のままであり、共振周波数は変化しないようになる。これにより、キャパシタの総数及び総アレイ容量に応じて振幅が量子化される、LO周波数の方形波を発生することができる。従って、SCPA102によって出力される方形波は、接地電位と出力電圧Voutとの間で交互に変化する(交番する)ことができ、力電圧Voutは次式で表される。
【0040】
【数2】
【0041】
ここで、n∈{0,1,…,N}であり、最大出力電圧はVmax=(2Vdd)/πとなる。
【0042】
SCPA102は方形波を帯域通過フィルタ及び整合回路網109に出力することで、正弦波電圧信号を提供し、これにより、送信機によって変調された信号を送信する前において、送信される情報を含むベースバンド信号によって変調される搬送波信号を提供することができる。
【0043】
従って、SCPA102は、整合回路網109と直列共振する容量性分圧器を有するD級電力増幅器のように動作する。出力電力は次式で与えられる。
【0044】
【数3】
【0045】
は整合回路網109のインピーダンスである。
【0046】
振幅の量子化のために、スプリアス放射が予想される。以下に示すように、オン/オフ時においてスプリアスが許容範囲内に収まるようにSCPA102を傾斜させるための制御部110を設けることができる。
【0047】
従って、装置100は、制御部110をさらに備える。制御部110は、活性化されるキャパシタバンクにおいてキャパシタ104の数を制御するための制御信号を送信するように構成することができる。制御信号は、例えば、活性化されているキャパシタ104の数を制御するためにスイッチ106に接続されるキャパシタ制御部120に送られる。
【0048】
制御部110は、SCPA102の所望のランプを提供するために送信される制御信号を決定するロジック112をさらに備えてもよい。また、制御部110は、擬似ランダムシーケンスを提供する擬似乱数シーケンス発生部114を備え、擬似ランダムシーケンスは、以下でさらに説明するように、SCPA102のランプ制御を制御するときに使用されてもよい。
【0049】
制御部110は、マイクロプロセッサの動作を制御するためにプログラム可能であるマイクロプロセッサで実装してもよい。例えば、処理部は中央処理ユニット(CPU)であってもよい。代わりに、処理部は、特定の論理演算のみを提供する専用回路であってもよい。従って、処理部は、特定用途向け集積回路(ASIC)の形態で提供されてもよい。
アプリケーション特有の命令セットプロセッサ(ASIP)又はフィールドプログラマブルゲートアレイを含む。
【0050】
地域のEMI規則は、例えば米国の連邦通信委員会(FCC)、ヨーロッパの電気通信標準化機構(ETSI)、日本のARIB(Association of Radio Industries and Businesses)などの各国の当局によって規定されている。EMI規則は国によって異なる場合があり、装置100は使用される地域のEMI規則を満たすように調整されるべきである。
【0051】
従って、制御部110は、入力パラメータを受信するためのインターフェース116を備えることもできる。入力パラメータは、関連するローカルEMI規則が満たされるように、制御部110を制御するために使用されてもよい。例えば、制御部110は、装置100が異なる国の間で移動される場合、異なるEMI規則に適合させることができる。
【0052】
代替的に、制御部110は、装置100がインストールされる場所が既知であれば、すなわち、それゆえ、どのEMI規則が適用されるが既知であれば、装置100の製造時に関連するEMI規則に適合される。
【0053】
特に、制御部110は、SCPA102がオン又はオフにされるときに、SCPA102のランプアップ及びランプダウンを制御することができる。SCPA102の傾斜は、次のようにモデル化することができる。
【0054】
前記のモデルから出発して、nはランピング中に時変(時間的に変化するパラメータ)になる。無限に速いスイッチングを仮定すると、時間e(t)の関数としての包絡線は、次式で表される。
【0055】
【数4】
【0056】
ここで、u(・)は単位ステップ関数を表す。さらに、τとnはともに包絡線変化の事象に関係し、すなわち、イベント(事象)後のキャパシタの総数Nに関係する、イベントの時間、及び活性化されたキャパシタ104の数の比である。イベントにおける活性化されたキャパシタ104の数の比の変化は、aによって示され、それは次式で定義される。
【0057】
【数5】
【0058】
最後に、Kは包絡線変化事象の総数を示す。完全なランプアップをモデル化するために、すべてのキャパシタ104が、一連の事象の中でいかなるランプダウンもなしに、最後に活性化されるという意味において、次式で表される。
【0059】
−1=0
N−1=N
【0060】
表記法を単純化するために、包絡線は次式のように書き直すことができる。
【0061】
【数6】
【0062】
ここで、
【数7】
となるように、
【数8】
=n−nk−1
である。
【0063】
実際には、SCPA102は、デジタルロジック112を使用して制御することができ、典型的には、τ=nであり、ここで、Tはデジタルロジック112のクロック周期を示す。従って、SCPA102のデジタル制御はベクトルaによって表すことができ、ここで、ベクトルaのk番目の要素aは、k番目のクロックサイクルにおける電力増幅器の振幅変化を表し、ここで、a=0は振幅変化がないことを意味する。ここで、
>0は振幅の増加を表し、a<0の場合は振幅の減少を表す。
【0064】
【数9】
【0065】
SCPA102のランプ(ランピング)の効果は、出力信号がEMI試験受信機によってどのように受信されるかに関係して解析することができる。従って、以下では、ランピングがどのように実施されるかを説明するために、EMI試験受信機によって受信された信号の解析が行われる。
【0066】
装置100によって発生された信号を受信するEMI試験受信機において、全体の立ち上がり時間が周波数の分解能帯域幅の逆数よりもかなり長い場合に、一定の振幅増加を伴う有限持続時間のランプアップは、一連のディラックパルスによって近似することができる。周期Tcを有する一連のディラックパルスを仮定することにより、ランプアップは次式のように近似することができる。
【0067】
【数10】
【0068】
言い換えると、当該信号は、振幅a/Tで1/Tだけ分離された複数のトーンの和になる。
【0069】
EMI試験受信機は、複数のバンドパスフィルタで構成されてもよく、各バンドパスフィルタはLO周波数に関して差として表される周波数fの周りの受信信号の電力を決定する。EMI試験受信機の各帯域通過フィルタにおける受信信号は次式で表される。
【0070】
【数11】
【0071】
ここで、Gは、EMI試験受信機のバンドパスフィルタのガウスフィルタの周波数応答である。
【0072】
EMI試験受信機のバンドパスフィルタの分解能帯域幅がクロックレートと比較して小さいため、任意の所与の観測周波数に対して、多くても1つのトーンが有効に通過させる。さらに、1/kの項のために、もしk∈{−1,1}の場合においてはSCPA102のランプアップによって引き起こされる最大のサイドローブが生じることは明らかである。このとき、次式を得る。
【0073】
【数12】
【0074】
信号強度がtとは無関係であること、すなわち、振幅/包絡線は一定であることは、注目されるかもしれません。さらに、結果はクロック周波数に依存せず、すなわちクロック周波数を下げても結果は変わらない。
【0075】
ここで、a=2−Nbを仮定する。ここで、Nは振幅ステップサイズのlogである。次に、最大のサイドローブの値がfclkで見つけられ、すなわち、クロック周波数と等しく、電力は次式で表される。
【0076】
【数13】
【0077】
従って、ランプアップ手順が分解能帯域幅の逆数と比較して長い場合、最大サイドローブは、−6.02N−2.95[dBm]に等しい電力で、送信機の搬送波周波数からfclkで予測することができる。
【0078】
(2Nb)が分解能帯域幅の逆数のオーダーの場合において、何が起こるか説明するために、最大結果の表現とシミュレーション結果の比較を図2に示す。この場合、N=6とし、クロックレートを変化させる。
【0079】
可視性の理由から、最大ピークサイドローブにはアスタリスク(*)が付与されている。この場合、クロックレートが6.4MHzの場合、ランプアップ時間は分解能帯域幅の逆数になる。予想されるように、クロックレートRが6.4MHzより低い場合、理論モデルはシミュレーション結果とよく一致する。クロックレートが6.4MHzを超えると、両者の差異が大きくなる。
【0080】
従って、上記に示したように、追加のキャパシタ104を各クロックサイクルで作動させると、時間的規則性が生じ、スペクトルスパイクが生じる。クロックレートを下げると、最も強いスペクトルスパイクの周波数にのみ影響するが、その電力には影響しない。クロックレートを上げると、もしそれが大きければ整合回路網109はスパイクを抑制する。典型的には、整合回路網109は、十分な抑制を達成するために非常に高いクロックレートが必要とされるように、広帯域であり、また、これはデジタル領域におけるより高い電力消費を犠牲にしている。
【0081】
本発明によれば、デジタル制御された時間ディザリング技術が、その周波数に影響を与えることなく第1のスペクトルスパイクの電力を低減するために、追加の立ち上がり時間を犠牲にして、使用される。ランプアップ/ダウンの間に各クロックサイクルにおいて1つ以上の/より少ないキャパシタ104をアクティブ/非アクティブにする代わりに、次のキャパシタ104をアクティブにする前に、クロックサイクルの擬似乱数を待つ。電力ステップ間の平均期間が長くなると、クロック周波数でのスペクトルスパイクの電力が低減される。さらに、ランダムな性質のために、他の周波数ではスパイクは発生しないが、スパイクは単に0とクロック周波数の間の全範囲に広がる。
【0082】
前記のように、(アクティブキャパシタ104の数を1だけ増減させる)2つのイベント間の時間は、(擬似)乱数とすることができ、すなわち、次式で表される。
【0083】
【数14】
【0084】
ここで、rは、r∈{1,2,…,N}の自然数値を持つ確率変数である。その結果、ランプアップ時間もランダムになる。
【0085】
図3において、得られたスペクトルは、異なる値のNrを有するランダムな実現のために示される。図3では、それぞれ16MHz及び32MHzのクロック周波数を使用してランピングを行い、ディザリングなしのときを基準値として示されている。さらに、図3は、928MHzの搬送波周波数を仮定したARIBマスクも示している。この例では、Nは8に等しく選択され、このことはディザリングが適用されない場合、両方のクロックレートに対してARIBマスクが違反されることを意味する。図3において、2MHzを超える周波数を与えられた大域的な最大値は「+」でマークされ、約32MHzの局所的最大値は「x」でマークされる。その結果、両方が一致するとアスタリスク(*)が表示される。再び、クロックレートを減少させてもクロックスパーの電力は変化しないことが示されている。両方のディザリングされたケース(N=2;4)において、クロック周波数でのスプリアスが低減される一方、期待されるように、Nrが4であればランプアップ時間は犠牲になり、より低いスプリアスが得られる。
【0086】
値rのランダムシーケンスの実現は、擬似ランダムに発生することができ、例えばリニアフィードバックシフトレジスタ(LFSR)を使用して、ランプアップ/ダウンごとに再初期化することができ、このことはスペクトルマスクとの適合性を保証することができる。
【0087】
制御部110は、振幅のステップサイズを規定するステップパラメータを入力パラメータとして受信し、すなわち、これらのパラメータは各イベントにおいて活性化されるキャパシタ104の数、及び/又はランダム変数の最大値Nrを含む。入力パラメータは、現地のEMI規則が確実に満たされるようにするために、そのパラメータの中でSCPA102が特定のEMI規則を満たすように使用できる試験に基づいて使用されてもよい。
【0088】
従って、過酷な条件では、ステッピングパラメータは1に設定されてもよく、Nの最大値は大きくてもよい(例えば、4)。より寛大な要件では、ステッピングパラメータを増加させることができ、及び/又は最大値を減少させることができる。
【0089】
一実施形態によれば、ランプ中にSCPA102から出力される信号に連続位相変調(CPM)が加えられる。従って、CPMは、搬送波信号に加えられてもよく、これによりスプリアスの電力も低下する可能性がある。特に、このことは、もし変調が、変調帯域幅がEMI試験受信機の分解能帯域幅のオーダー又はオーダーであるようになされるならば、隣接チャネル/代替チャネルの電力漏れとランピングスプリアスとの間のトレードオフを行うことができる。利点は、CPMを使用してもランピング時間が増加せず、ディザリングに加えて使用できることである。
【0090】
ここで図4を参照して、SCPA102をランプする方法について説明する。この方法は、装置100による信号の送信をオン又はオフにする必要性に基づいて、SCPA102がランプアップ又はランプダウンされるトリガを受信すると開始される。
【0091】
この方法は、ステップ202において、ステッピングパラメータによって設定された数だけ活性化されるキャパシタ104の数が変更される。次に、本方法はステップ204に進み、所望の数のキャパシタ104がSCPA102で起動されているか否かをチェックし、すなわち、SCPA102が所望の電力に傾斜されているかチェックされる。
【0092】
もしそうでない場合、本方法は、ステップ206に進み、キャパシタ104の数を変更する別のイベントが実行されるまで繰り返される。次のイベントは、クロック周期の整数倍で発生するようにスケジューリングされてもよい。従って、ステップ206は、クロックサイクルが、rと一致するか否かをチェックすることを構成してもよい。ここで、rは、キャパシタ104の数を変化させるイベント間の時間間隔が変化し得るようなランダム変数である。発生する待機中において、ステップ206は、所望の時間が経過したか否かをチェックし、活性化されたキャパシタは活性状態に保持される。
【0093】
所望の時間が経過すると、本方法は、活性化されているキャパシタ104の数を再び変化させるためにステップ202に戻る。従って、この方法は、所望の数のキャパシタ104が活性化されてランプが完了するまでステップ202−206の処理を繰り返す。
【0094】
前記において、本発明は、限られた数の実施形態に関して主に説明されているが、当業者には容易に理解されるように、上述したもの以外の他の実施形態も本発明の範囲内で同様に可能であり、添付の特許請求の範囲によって規定される。
図1
図2
図3
図4