特許第6769939号(P6769939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769939
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】尿失禁防止器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/37 20060101AFI20201005BHJP
【FI】
   A61F5/37 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-204619(P2017-204619)
(22)【出願日】2017年10月23日
(65)【公開番号】特開2019-76326(P2019-76326A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2019年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037420
【氏名又は名称】不二精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】平尾 佳彦
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−070111(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0092179(US,A1)
【文献】 特許第6092457(JP,B1)
【文献】 特開平10−108874(JP,A)
【文献】 特表平9−504720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のベルト部材の一端にリング状部材が設けられ、前記ベルト部材の他端側を前記リング状部材の内側に挿通して前記ベルト部材を環状にした状態で陰茎の周囲に装着するための尿失禁防止器具であって、
前記ベルト部材の一方の面であって前記ベルト部材が環状をなしたときに外側を向く外側面に、前記リング状部材の内側を挿通した前記ベルト部材の他端を接着させて係止する係止部材が設けられ、かつ前記ベルト部材の前記他端側に前記リング状部材の最大内径よりも大きい幅をもつ幅広部が設けられ、前記幅広部が前記リング状部材と係合することによって前記リング状部材の内側を挿通した前記ベルト部材の前記他端が前記係止部材に接着されていなくても前記ベルト部材が環状をなした状態で維持され、
前記ベルト部材の前記外側面とは反対側面である内側面に、前記ベルト部材の長手方向へ延びる略円柱形状又は略半円柱形状を有し、前記ベルト部材が環状をなして前記陰茎に装着されたときに前記ベルト部材の内側へ突出して尿道を圧迫する尿道圧迫部材が設けられており、
前記ベルト部材の当該ベルト部材の長手方向における前記尿道圧迫部材の両側のそれぞれに前記陰茎の側方を支持する平板状の側方支持板が設けられ、前記陰茎への装着時に前記ベルト部材が略矩形環状をなして前記陰茎を締め付け、前記陰茎の断面形状を略矩形状に変形させるように構成されている、尿失禁防止器具。
【請求項2】
前記ベルト部材と前記尿道圧迫部材との間に平板状の下方支持板が設けられ、前記尿道圧迫部材が前記下方支持板によって支持された状態で前記ベルト部材の前記内側面に固定されている、請求項に記載の尿失禁防止器具。
【請求項3】
前記下方支持板と前記側方支持板とが、又は前記下方支持板と前記側方支持板とそして前記尿道圧迫部材とが一体成型されたものであって、前記下方支持板と前記側方支持板とがリビングヒンジにより連結されている、請求項に記載の尿失禁防止器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰茎に取り付けて、尿漏れを防止する男性用尿失禁防止器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌の術後や前立腺肥大症の術後あるいは脊髄損傷等において腹圧性・混合性尿失禁を生じることが少なくない。そのために患者はおむつ等の使用を余儀なくされ仕事や外出などの日常生活において不便をきたし精神的な苦痛を味わうことが多い。
【0003】
そこで、尿道を押圧する突部を内面に備えたリング状部材を陰茎に装着して突部で尿道を押圧閉塞し、無意識の尿漏れを防止する男性用尿失禁防止器具が知られている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6092457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の尿失禁防止器具は、帯状部材の一部を環状に形成し、環状部の内周面に尿道を押圧する尿道押圧凸部と、陰茎を挿通した環状部の直径を調節するための調節機構と、帯状部材を挿通する穴を有する挟み込み防止部材を備えており、そしてさらに陰茎と環状部の内周面との間に隙間を形成する複数のスペーサ用凸部を備えている。
【0006】
上記の尿失禁防止器具は、挟み込み防止部材が設けられていることによって、調節機構で環状部の直径を小さくする動作の際に陰茎の皮膚が調節機構に挟み込まれる事態を防止することができる。尿失禁防止器具を陰茎に装着する際に、環状部の直径を調節する調節機構の直下の位置に挟み込み防止部材を位置させて、陰茎の皮膚の挟み込みを防止する。そのため、環状部の直径を小さくする動作の際に、挟み込み防止部材が調節機構の直下の位置からずれ落ちないように保持しておく必要がある。すなわち、尿失禁防止器具を陰茎に装着する際、挟み込み防止部材を調節機構の直下の位置に保持しながら、調節機構のボタンを押しつつ帯状部材の両端を引っ張り上げるという動作を行なう必要がある。
【0007】
また、排尿の際には、調節機構を緩めて尿道閉塞を開放するが、調節機構を緩めると挟み込み防止部材が調節機構の直下の位置からずれ落ちるため、挟み込み防止部材を調節機構の直下に保持しておく必要がある。
【0008】
尿失禁防止器具の装着の際や排尿の際には、片方の手で下着やズボンを支えておく場合が多いため、尿失禁防止器具の脱着操作は片手で容易に行なうことができるということが患者にとって重要である。しかし、上記のような尿失禁防止器具では、装着時や排尿時の作業に煩わしさがあり、そのような作業を完全に片手のみで行なうことは容易ではない。また、そのような作業を完全に片手で行なうことが可能であるとしても、慣れるまでに時間を要するものと考えられる。
【0009】
そこで、本発明は、陰茎への装着時や排尿時の患者の作業負担が軽微でかつ装着後の安定性を向上させた尿失禁防止器具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る尿失禁防止器具は、帯状のベルト部材の一端にリング状部材が設けられ、前記ベルト部材の他端側を前記リング状部材の内側に挿通して前記ベルト部材を環状にした状態で陰茎の周囲に装着する尿失禁防止器具である。当該尿失禁防止器具は、前記ベルト部材の一方の面であって前記ベルト部材が環状をなしたときに外側を向く外側面に、前記リング状部材の内側を挿通した前記ベルト部材の他端を接着させて係止する係止部材が設けられ、かつ前記ベルト部材の前記他端側に前記リング状部材の最大内径よりも大きい幅をもつ幅広部が設けられている。
【0011】
本発明における「係止部材」とは、平面ファスナーなどのように面と面の着脱が容易なものである。このような係止部材が前記ベルト部材の外側面に設けられているので、前記リング状部材の内側を挿通した前記ベルト部材の他端を折り返した状態で容易に係止することができ、陰茎に対する着脱やベルト部材の内径の調整が容易である。また、前記ベルト部材は、前記他端側に前記リング状部材の最大内径よりも大きい幅をもつ幅広部をもつので、幅広部を前記リング状部材の内側に通しておくことで、幅広部が前記リング状部材と係合して前記ベルト部材が環状のまま維持される。これにより、排尿時などに当該尿失禁防止器具が陰茎から脱落しにくくなる。
【0012】
本発明の尿失禁具防止器具は、さらに、前記ベルト部材の前記外側面とは反対側面である内側面に、前記ベルト部材の長手方向へ延びる略円柱形状又は略半円柱形状を有し、前記ベルト部材が環状をなして前記陰茎に装着されたときに前記ベルト部材の内側へ突出して尿道を圧迫する尿道圧迫部材が設けられていることが好ましい。略円柱形状(円筒形状を含む)又は略半円柱形状の尿道圧迫部材は単なる突起と異なり尿道部に当て易く、かつ尿道押圧位置がズレにくい。そのため、尿道部を効果的に圧迫することができ、高い尿失禁防止効果を得ることができる。なお略半円柱形状とは断面が略半楕円形状も含むものである。
【0013】
本発明の尿失禁具防止器具は、さらに、前記ベルト部材の当該ベルト部材の長手方向における前記尿道圧迫部材の両側のそれぞれに前記陰茎の側方を支持する平板状の側方支持板が設けられ、前記陰茎への装着時に前記ベルト部材が略矩形環状をなすように構成されていることが好ましい。そうすれば、装着動作時のみならず装着後の位置が安定し、尿道圧迫部材の位置がずれにくくなる。また、陰茎の周囲を円形に均等に締め付けるのではないため、鬱血や浮腫を生じにくい。
【0014】
本発明の尿失禁具防止器具の好ましい実施態様では、前記ベルト部材と前記尿道圧迫部材との間に平板状の下方支持板が設けられ、前記尿道圧迫部材が前記下方支持板によって支持された状態で前記ベルト部材の前記内側面に固定されている。
【0015】
上記の場合、前記下方支持板と前記側方支持板とが、又は前記下方支持板と前記側方支持板とそして前記尿道圧迫部材とが一体成型されたものであって、前記下方支持板と前記側方支持板がリビングヒンジにより互いに連結されていることが好ましい。そうすれば、尿失禁防止器具の製造や組立てが容易である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の尿失禁防止器具では、平面ファスナーなどの係止部材によって前記リング状部材の内側を挿通した前記ベルト部材の他端を折り返した状態で容易に係止することができるので、陰茎に対する着脱やベルト部材の内径の調整が容易である。さらに、前記ベルト部材の前記他端側の幅広部を前記リング状部材の内側に通しておくことで、幅広部が前記リング状部材と係合して前記ベルト部材が環状のまま維持されるので、排尿時などに当該尿失禁防止器具が陰茎から脱落しにくくなり、装着動作や排尿動作を完全に片手で行なうことも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】尿失禁防止器具の一実施例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は裏面図である。
図2】同実施例の分解斜視図である。
図3】同実施例の陰茎への装着時の状態を示す図であり、(A)はベルト部材の端面を固定する前の状態、(B)はベルト部材の端面を固定した後の状態である。
図4】尿道圧迫部材の他の例を示す斜視図である。
図5】尿失禁防止危惧を陰茎に取り付ける際に陰茎の皮膚に作用する力を説明するための概念図であり、(A)はベルト部材の両端を通過させてベルト部材の環状の内径を調節する調節機構を用いた比較例であり、(B)は実施例である。
図6】一体成形された尿道圧迫部材、下方支持板、側方支持板の一例を示す斜視図である。
図7】一体成形された尿道圧迫部材、下方支持板、側方支持板の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明に係る尿失禁防止器具の実施形態について説明する。
【0019】
図1から図3を参照して尿失禁防止器具の一実施例について説明する。
【0020】
図1に示されているように、この実施例の尿失禁防止器具2は、帯状のベルト部材4の一端にリング状部材6が取り付けられ、ベルト部材4の一方の面4aに尿道圧迫部材12、下方支持板14、側方支持板16、18がカバー部材10によって取り付けられ、さらにベルト部材4の他方の面4bに平面ファスナー20及び22が係止部材として取り付けられている。平面ファスナー20と22は一方がループ面であり、他方がフック面である。なお、平面ファスナー20と22として、フック面とループ面の区別のない平面ファスナーを用いることもできる。その場合は、平面ファスナー20と22を区別のない1枚ものとしてもよい。
【0021】
図3に示されているように、この尿失禁防止器具2は、ベルト部材4の一方の面4aが内側にくるように他端をリング状部材6の内側に挿通して環状を形成し、ベルト部材4の他端を外側へ折り返して面4bの平面ファスナー20と22を互いに接着させて係止することで、患者の陰茎100に装着するものである。以下では、ベルト部材4の一方の面4aを「内側面4a」、他方の面4bを「外側面4b」と称する。
【0022】
図1及び図2に示されているように、尿道圧迫部材12は略円柱形状(図2では中空であるが、中空でなくてもよい。)であり、平板状の下方支持板14上に載置されている。側方支持板16、18も平板状であり、ベルト部材4の長手方向における下方支持板14の両側に設けられている。カバー部材10は、例えば伸縮性のある布であり、尿道圧迫部材12、下方支持板14、側方支持板16、18を覆った状態でその周縁部がベルト部材4の内側面4aに糸で縫いつけられて固定されている。
【0023】
伸縮性のある布からなるカバー部材10によって尿道圧迫部材12、下方支持板14、側方支持板16、18を覆うことで、陰茎への装着時に皮膚にやさしく違和感が少ないという利点がある。なお、尿道圧迫部材12、下方支持板14、側方支持板16、18をベルト部材4に固定する手段はカバー部材10によるものに限らず、他の固定方法を用いてもよい。
【0024】
下方支持板14上に載置された状態で固定された尿道圧迫部材12は、カバー部材10によって覆われた後も突起11を形成し、尿失禁防止器具2が陰茎に取り付けられたときに尿道102を効率的に圧迫する(図3(B)を参照。)。
【0025】
ベルト部材4の他端側にリング状部材6の最大内径Dよりも大きい幅をもつ幅広部8が設けられている。幅広部8はリング状部材6の内側を挿通された後でリング状部材6と係合し、ベルト部材4の他端がリング状部材6から自然に抜けないようにするためのものである。これにより、平面ファスナー20と22による係止がなくても、ベルト部材4が環状をなした状態で維持される。
【0026】
ベルト部材4の材質は軽量で柔軟なものであれば何でもよく、この実施例ではフェルトを使用している。ベルト部材2は、例えば、幅が2cm程度であり、全長が14cm程度である。支持板14、16、18は弾性を有する合成樹脂で形成されていることが好ましい。支持板14、16、18の幅寸法は、例えば1cm程度である。下方支持板14の長さ寸法は、例えば、陰茎幅よりも5mm程度短い2cm程度である。また、側方支持板16、18の長さ寸法は、例えば、陰茎の厚みよりも5mm程度短い1.5cm程度である。これらの数値は一例であり、サイズはLサイズ、Mサイズ、Sサイズなど幾種類か用意することができる。
【0027】
尿道圧迫部材12は、塩化ビニールなどの弾力性を有する素材によって形成されていることが好ましい。尿道圧迫部材12の長さ寸法は、ベルト部材4をコ字状(略矩形環状)に折り曲げた時に隙間に入るカバー部材10の厚みを考慮して、下方支持板14の長さ寸法よりも僅かに短く設計されている。尿道圧迫部材12の外径は6mm程度である。
【0028】
なお、この実施例では、尿道圧迫部材12を円筒形状のチューブによって実現しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、図4に示されているように、尿道圧迫部材12を略半円柱形状にしてもよい。略半円柱形状とは断面が略半楕円形状も含むものである。要は、陰茎への装着時に陰茎側に曲面が当たるようになっていればよい。
【0029】
図3に示されているように、この尿失禁防止器具2を陰茎の根元近傍において陰茎100に装着する際、リング状部材6に挿通されたベルト部材4の他端を引っ張って陰茎100の締め付けを行ない、平面ファスナー20と22とで締め付け状態を保持する。
【0030】
このとき、尿道102は尿道圧迫部材12によって形成された突起11により圧迫を受け、閉塞される(図3(B)を参照。)。側方支持板16、18は弾力性を有する素材で形成されているため僅かに内側に湾曲しているが、側方支持板16、18と下方支持板14があることでベルト部材4は略矩形環状をなし、それによって陰茎100が締め付けられて断面形状が略矩形状となる。これにより、円環状をなすベルトによって陰茎100が締め付けられるのとは異なり、尿失禁防止器具2が陰茎100に対して適正な位置で一旦装着されると、陰茎との相対的な回動を生じず、保持された状態が安定に維持される。又陰茎を凸部のみで支持する方式に比べても、平坦な支持板で支持するため装着状態での違和感も少ない上、装着後の安定性も向上する。これにより、日常の生活活動中の体の動きによって尿失禁防止器具2の位置がずれることがない。また、陰茎の周囲を略矩形状に締め付けることにより円形に均等に締め付けるのではないため締め付け圧が分散され、ベルト部材と陰茎との間にスペーサ凸部等特段のスペーサ部材を設けずとも、鬱血や浮腫を生じにくい。
【0031】
また、尿失禁防止器具2を陰茎100へ装着する動作時やベルト部材4の環状の内径を緩めて排尿した後、再度ベルト部材4の締め付けを行う場合でも、3枚の支持板14、16、18で3方向からコ字状に陰茎の根元近傍において陰茎を支えることに加え、例えば右手の中指や薬指でリング状部材6の先端やベルト部材4の側面を軽く押さえながら親指と人指し指でベルト部材4の他端側を引っ張ることにより、締め付け動作時においても尿道位置がずれたりすることがなく、片手のみで極めて容易に脱着が可能である。
【0032】
尿失禁時の尿道内圧は意外に低く、尿道を強く圧迫して完全に閉塞しなくとも尿失禁を防止できることが奈良医大の研究にて明らかになっており、ベルト部材4をあまり強く締め付ける必要はない。この実施例の尿失禁防止ベルト2では、あまり強く締め付けなくとも前述の原理にて尿道押圧位置がずれることがない。平面ファスナー20、22によって締め付けの程度は自由に調節することができる。
【0033】
なお、尿道圧迫部材12、下方支持板44、側方支持板16、18の4部材は、図6に示されているように、1つの合成樹脂材で一体成形により形成することができる。その場合、下方支持板14と側方支持板16、18との間が折曲可能なようにリビングヒンジ24、26によってヒンジ結合されている必要がある。
【0034】
尿道圧迫部材12、下方支持板44、側方支持板16、18の4部材を一体成形により形成する場合には、その樹脂素材として、PP(ポリプロピレン)や PE(ポリエチレン)を用いることができる。これらの素材は、下方支持板14と側方支持板16、18との間を連結するリビングヒンジ24、26に理想的な樹脂である。
【0035】
また、PP(ポリプロピレン)や PE(ポリエチレン)よりもさらに軟らかいTPE(エラストマ)を一体成形の樹脂素材として使用することもできる。この場合、陰茎に装着し締め付けを行った際に、下方支持板14が湾曲し過ぎてベルト部材4が略矩形環状をなさないようになることも考えられる。そのため、図7に示されているように、ベルト部材4の締め付けが行なわれていない状態で、あらかじめ下方支持板14がベルト部材4の締め付け方向とは反対方向へ湾曲するように形成してもよい。
【0036】
以上において説明した実施例におけるベルト部材4の締め付け方法では、ベルト締め付け時に陰茎の皮膚を挟み込むような現象はほぼ皆無である。図5の(A)は、ベルト部材4の両端を挿通させて環状部の内径を調節する従来技術の方式の調節機構200を用いた比較例であり、(B)は本発明のリング状部材6を用いた実施例である。
【0037】
図5(A)の比較例では、ベルト部材4を締め付ける際に調節機構200を指で押さえながらベルト部材4の両端を同時に上方に引き上げると、図において矢印で示されているように、ベルト部材4は陰茎の皮膚を調節機構200内の方に引き込むように力を作用させる。さらに、図5(A)の比較例の方式では、ベルト部材4による環状の内径が適正になったところでその状態を維持するために、調節機構200でベルト部材4の両端を固く締め付ける必要があるため、皮膚の挟み込み現象が必然的に生じる構造である。したがって、このような方式では、何らかの皮膚の挟み込み防止手段が必要となる。
【0038】
一方で、図5(B)の実施例では、矢印で示されているように、皮膚がリング状部材6の方に引き込まれようとしても、ベルト部材4の一端(リング状部材6が取り付けられている部分)が皮膚に対して引き込みに抗するように下方に力を作用させるため、皮膚の挟み込み現象が極めて生じにくい。この実施例の方式では、リング状部材6によってベルト部材4の両端を互いに押し付けて締め付け状態の維持を行なうのではなく、平面ファスナー20、22によって締め付け状態の維持を行なうようになっているので、リング状部材6は常にそのリング孔が開放の状態にある。このため、ベルト部材4の締め付け時に陰茎の皮膚を挟み込むという事態は生じない。したがって、この実施例の方式では、皮膚の挟み込み防止手段を何ら必要としないのである。なお、臨床実験においても、この実施例の構成では皮膚の挟み込み現象が生じないことが立証されている。
【0039】
この実施例の尿失禁防止器具2は、凸部のみで陰茎を締め付け支持する構造ではないため陰茎への装着時に内側へ鋭く突出する部分が存在せず、重量も約5g程度と軽く、図3(B)のごとく装着状態において出っ張る部分もないため、装着時に違和感や使用感がほとんどなく、効果的に尿失禁を防止することができる。また、ベルト部材4の幅も約2cm程度であるため装着状態において皮膚に蒸れを生じることもない。
【0040】
なお、図には示されていないが、本発明の尿失禁防止ベルトは、陰茎を包み込む失禁パウチと併用することによって、尿失禁を抑制する効果をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0041】
2 尿失禁防止器具
4 ベルト部材
4a 内側面
4b 外側面
6 リング状部材
8 幅広部
10 カバー部材
11 突起
12 尿道圧迫部材
14 下方支持板
16,18 側方支持板
20,22 平面ファスナー(係止部材)
24,26 リビングヒンジ
100 陰茎
102 尿道
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7