特許第6769941号(P6769941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769941
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】車両荷室構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 5/04 20060101AFI20201005BHJP
【FI】
   B60R5/04 Z
   B60R5/04 T
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-222857(P2017-222857)
(22)【出願日】2017年11月20日
(65)【公開番号】特開2019-93791(P2019-93791A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2019年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安部 龍平
(72)【発明者】
【氏名】江島 光昭
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 翔一
【審査官】 小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−007193(JP,U)
【文献】 特開2009−113608(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0096479(US,A1)
【文献】 特開2008−290647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷室の床面をなすデッキボードを備えた車両荷室構造であって、
前記デッキボードは、少なくとも横たわり状態から起き上がり状態との間で変位可能とされ、
前記デッキボードには、その床面側に取手部材が配され、前記取手部材は、前記床面から突出する突出状態と、前記床面から突出しない非突出状態との間で変位可能とされ、
前記荷室の上方にはパッケージトレイが配され、
前記パッケージトレイは、前記荷室のドアの開閉に伴って水平状態から傾斜状態に変位するものとされ、その裏面には、半円環状に吊り下げられた紐部材が設けられており、
前記取手部材は、前記非突出状態に相当する水平状態と、前記突出状態に相当する起立状態との間で回動可能とされ、水平状態にある当該取手部材の車両後方側端部を回動軸として、車両前方側端部が上方へ回動することで起立状態に変位するものとされ、前記車両前方側端部には、当該取手部材が起立状態にある場合に、車両前方に突出して前記紐部材に係止可能な係止片を備えるとともに、前記係止片より前記車両後方側端部の側には、当該取手部材を貫通する開口を備えており、
前記デッキボードが起き上がり状態にあるとき、前記取手部材が起立状態とされて、前記係止片が前記パッケージトレイの裏面側に設けられた前記紐部材に係止されることを特徴とする車両荷室構造。
【請求項2】
前記デッキボードは、前記取手部材が水平状態にある場合に前記係止片を係止する係止部と、押圧されることで前記係止部による前記係止片の掛止を解除するボタンと、を備え、
前記ボタンは、前記取手部材が水平状態にある場合に、前記開口から露出することを特徴とする請求項1に記載の車両荷室構造。
【請求項3】
前記デッキボードは、当該デッキボードを車幅方向において折り畳み可能とする、車両前後方向に沿った折畳ラインを備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両荷室構造。
【請求項4】
前記デッキボードの車幅方向における中央は、所定の幅を有した中板部とされ、
前記折畳ラインは、前記中板部における左端に設けられた第1折畳ラインと、前記中板部における右端に設けられた第2折畳ラインと、を含んでなり、
前記デッキボードは、前記中板部の車幅方向における左右両側に配された部分が、前記第1折畳ライン及び前記第2折畳ラインでそれぞれ折り畳み可能とされ、
前記中板部に前記取手部材が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の車両荷室構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両荷室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両荷室構造として、自動車の後部に配設された床面を下方に凹ませて荷室を形成し、該荷室の上部開口をデッキボードによって開閉可能に構成したものが例えば特許文献1に開示されている。このデッキボードは、通常時においては荷室の上部開口を塞ぐ蓋として機能し、荷室内の小物等を取り出す場合は、デッキボードの前端の前側切欠部を回動中心として後側を上方に持ち上げ、デッキボード裏面に設けられたフックを取り出し、このフックをシートに設けられたロッドに引っ掛けることで、デッキボードが斜めになった状態で保持されるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−91644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなデッキボードでは、デッキボード裏面に設けられたフックを取り出す際に、一方の手でデッキボードを支え、他方の手でフックを取り出すという両手での作業が必要となる。例えば作業者が荷物を持った状態のように、片手しか空きがない場合にはフック取出し作業が非常に困難で、荷物を一旦仮置きした後、両手でフック取出し作業を行う必要があり、煩わしいものであった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、デッキボードの起き上げとその状態保持を片手で容易に行うことができる車両荷室構造を提供することを目的の一つとし、またデッキボードの起き上げによるデッキボード下方へのアクセスを一層容易とする車両荷室構造を提供することを異なる目的の一つとし、またデッキボードを横たわらせた通常時において他部品への傷付き等の影響が生じにくい車両荷室構造を提供することを異なる目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の車両荷室構造は、荷室の床面をなすデッキボードを備え、前記デッキボードは、少なくとも横たわり状態から起き上がり状態との間で変位可能とされ、前記デッキボードには、その床面側に取手部材が配され、前記取手部材は、前記床面から突出する突出状態と、前記床面から突出しない非突出状態との間で変位可能とされ、前記荷室の上方にはパッケージトレイが配され、前記デッキボードが起き上がり状態にあるとき、前記取手部材が突出状態とされて前記パッケージトレイの裏面側に係止されることを特徴とする。
【0007】
このような車両荷室構造によると、デッキボードの床面から突出した取手部材を掴みつつ、当該デッキボードを引き起こすことが可能となり、またデッキボードを引き起こした後、掴んでいる取手部材をそのままパッケージトレイの裏面に係止することで、簡便に当該デッキボードの起き上がり状態を保持することが可能となる。また、デッキボードの起き上がり状態を保持するための係止をパッケージトレイの裏面で設定することで、デッキボードの起き上がり角度を大きくでき、デッキボード下方へのアクセスが容易となる。また、デッキボードを起き上がらせない通常時(横たわり状態)において、取手部材を非突出状態とすることができるため、突出した部分による他部品への傷付き等の影響が生じにくい車両荷室構造を提供することが可能となる。
【0008】
上記車両荷室構造において、前記取手部材は、前記非突出状態に相当する水平状態と、前記突出状態に相当する起立状態との間で回動可能とされ、水平状態にある当該取手部材の車両後方側端部を回動軸として、車両前方側端部が上方へ回動することで起立状態に変位するものとされ、前記車両前方側端部には、当該取手部材が起立状態にある場合に、車両前方に突出して前記パッケージトレイの裏面側に係止可能な係止片を備えるものとすることができる。
【0009】
荷室においては、横たわるデッキボードを車両後方の荷室開口から上方且つ車両前方側に引き起こすことが通常で、そのように上方且つ車両前方側に引き起こしたデッキボードの起き上がり状態を保持するための取手部材において、係止片を車両前方に突出して設けることで、デッキボードの引き起こしから、パッケージトレイの裏側への係止までを好適に行うことが可能となる。
【0010】
上記車両荷室構造において、前記パッケージトレイは、前記荷室のドアの開閉に伴って水平状態から傾斜状態に変位するものとされ、その裏面には、前記取手部材との係止を可能とする紐部材が設けられているものとすることができる。
【0011】
パッケージトレイを水平状態から傾斜状態に変位可能なものとすると、パッケージトレイの傾斜角度次第で、引き起こしたデッキボードを裏面に係止できない場合が生じ得る。しかしながら、上記のように紐部材で係止するものとすれば、紐の自由度により係止角度等を調整できるため、デッキボードを裏面に係止できない等の不具合が生じにくいものとなる。
【0012】
上記車両荷室構造において、前記デッキボードは、当該デッキボードを車幅方向において折り畳み可能とする、車両前後方向に沿った折畳ラインを備えているものとすることができる。このように折畳可能なデッキボードにおいて、上記のように取手部材を設けることで、引き起こしから係止までをデッキボードが折り畳まれることなく安定して行うことが可能となり得る。
【0013】
上記車両荷室構造において、前記デッキボードの車幅方向における中央は、所定の幅を有した中板部とされ、前記折畳ラインは、前記中板部における左端に設けられた第1折畳ラインと、前記中板部における右端に設けられた第2折畳ラインと、を含んでなり、前記デッキボードは、前記中板部の車幅方向における左右両側に配された部分が、前記第1折畳ライン及び前記第2折畳ラインでそれぞれ折り畳み可能とされ、前記中板部に前記取手部材が設けられているものとすることができる。このように取手部材を中板部に設けることで、引き起こしから係止までをデッキボードが折り畳まれることなく安定して行うことが可能となり得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、デッキボードの起き上げとその状態保持を片手で容易に行うことができる車両荷室構造を提供可能となる。また、デッキボードの起き上げによるデッキボード下方へのアクセスを一層容易とする車両荷室構造を提供可能となる。また、デッキボードを起き上がらせない通常時において他部品への傷付き等の影響が生じにくい車両荷室構造を提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】車両荷室を車両左後方から視た一部切欠斜視図であって、パッケージトレイ及びデッキボードが水平にある状態を示す図。
図2】車両荷室を車両左後方から視た一部切欠斜視図であって、パッケージトレイが回動して傾斜状態となり、デッキボードが水平にある状態を示す図。
図3】車両荷室を車両左後方から視た一部切欠斜視図であって、パッケージトレイ及びデッキボードが回動して傾斜し、パッケージトレイの裏面にデッキボードが係止された状態を示す図。
図4】デッキボードとパッケージトレイの回動態様及び係止関係を示す説明図。
図5】デッキボードに設けられた取手部材の斜視図。
図6】パッケージトレイに設けられた紐部材の設置態様を示す一部分解斜視図。
図7】デッキボードの一変形例を示す斜視図。
図8図7のデッキボードが一部折り畳まれた状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の車両荷室構造の一例について、図1乃至図6を用いて説明する。図1〜4においてFRは車両前方を意味し、RRは車両後方を、Rは車両右側を、Lは車両左側を意味するものである。なお、本実施形態では、車両としてハッチバック式の自動車100を例示し、自動車100の車両荷室構造200を示すものとする。
【0017】
図1に示すように、車両100の後部には荷室10が設けられており、車両後方ドア(後述するパッケージトレイ30に対して連結部材40を介して連結されたドア)を開けた状態で、車両後部開口1から荷室10内へのアクセスが可能とされている。また、荷室10の車両前方には、リアシート(乗員シート)9が荷室10と隣接するように配設されている。
【0018】
リアシート9の背もたれであるシートバック90は、その背面91が略鉛直方向に沿って立ち上がる形で配され、車幅方向において左側シートバック90Lと右側シートバック90Rとの2つに分割されるとともに、それぞれ独立して前倒し可能なものとされている(図2参照)。左側シートバック90Lと右側シートバック90Rの境界を分割ラインB2とし、左側シートバック90Lの幅約40に対し、右側シートバック90Rの幅が約60となるように分割されている。
【0019】
図1に示すように、荷室10は、車両前方壁をなすリアシート9のシートバック90と、車両側壁をなすデッキサイドトリム3と、床面11をなすデッキボード20と、で囲まれた収納空間80を有している。デッキボード20は、通常時(車両後方ドアを閉じ、当該デッキボード20を底として収容空間80に荷物を配置可能な状態)は水平方向に沿って延在する板状をなし、その上面に荷物等の搭載物を載置可能とされている。デッキボード20の下には凹形状にて構成される収容空間85が設けられており、当該床下の空間85にも荷物等の搭載物を収納可能とされている。
【0020】
デッキボード20は、その前端部21が回動軸として床部材63に支持され、その後端部22側が上下方向に回動可能に構成されている。図1は、デッキボード20が水平状態(横たわり状態)20Aにある態様を示しており、これを回動することで、図3に示す傾斜状態(起き上がり状態)20Bに変位することができる。このようにデッキボード20は水平状態20Aから傾斜状態20Bとの間で変位可能に構成され、当該デッキボード20を傾斜状態20Bとすることで、デッキボード20の下方にある収容空間85にアクセス可能となっている。
【0021】
また、デッキボード20は、その床面11側に取手部材25を備えている。取手部材25は、図1に示すように床面11に対してフラットな状態となる水平状態(非突出状態)25Aと、図2に示すように床面11から起立した状態で突出する起立状態(突出状態)25Bとの間で回動可能に構成されている。具体的には、図5にも示される通り、図1のような水平状態25Aにある取手部材25の車両後方側端部26を回動軸として、車両前方側端部27が上方へ回動することで起立状態25Bに変位するものとされている。なお、取手部材25には、取手部材25が起立状態にある場合に、車両前方に突出する突出片(係止片)28が形成されている(図5において破線で示す)。
【0022】
水平状態25Aにある取手部材25は、突出片28が床面側に設けられた係止部29に係止されて、その水平状態25Aが保持される。一方、水平状態25Aから起立状態25Bに回動させる場合は、開口23を介して露出したボタン24を押圧することで、係止部29と突出片28の係止が解除されて回動が可能となる。
【0023】
荷室10の上方部分には、デッキボード20に対して収容空間80を隔てた形でパッケージトレイ30が配されている。パッケージトレイ30は連結部材40を介して車両後方ドアに接続され、車両後方ドアの開閉に伴って回動するものとなっている。具体的には、パッケージトレイ30は、車両後方ドアが閉じた状態から開いた状態に変位するに連れて、車両前方側端部39を回動軸として、図1の水平状態30Aから図2及び図3の傾斜状態30Bに回動(変位)するものとされている。
【0024】
また、パッケージトレイ30の裏面31には、取手部材25との係止を可能とする紐部材35(図2参照)が設けられている。この紐部材35により、デッキボード20が傾斜状態20Bにあるとき、取手部材25が起立状態25Bとされてパッケージトレイ30の裏面31側に係止されることとなる。詳しくは、取手部材25の突出片28が紐部材35に係止されることで、パッケージトレイ30に対してデッキボード20が固定されることとなる。
【0025】
紐部材35は、図6に示すように、パッケージトレイ30に対して取付部材301,321を介して取り付けられている。第1取付部材301は、パッケージトレイ30の表面側に配され、パッケージトレイ30に設けられた挿通孔32を介してパッケージトレイ30の表面側から裏面側に突出する嵌合爪302を有している。一方、第2取付部材321は、パッケージトレイ30の裏面側に配され、該裏面に突出する嵌合爪302と嵌合可能な嵌合凹部325を備えている。そして、この第2取付部材321に紐部材35が半円環状に取付固定されており、パッケージトレイ30の裏面側において、この半円環部分でデッキボード20に設けられた取手部材25の突出片28と係合可能となっている。
【0026】
続いて、図4を参照しつつ、パッケージトレイ30とデッキボード20の回動態様について、およびデッキボード20の傾斜状態保持態様について説明する。
パッケージトレイ30は、車両後方ドアの開動作に伴って、その車両前端部39を回動軸として水平状態30Aから傾斜状態30Bに回動する。傾斜状態30Bとなったパッケージトレイ30は、その裏面31、ひいては紐部材35が後部開口1(図2参照)から臨めることとなる。このように車両後方ドアを開き、パッケージトレイ30が傾斜状態30Bとなった態様において、デッキボード20を引き上げて回動させることで、該デッキボード20の下方に形成された収容空間85へのアクセスが可能となる。
【0027】
デッキボード20の引き上げは、水平状態25Aの取手部材25を起立させることで可能となり、起立した取手部材25を掴んで容易にデッキボード20を引き起こすことができるものとなっている。引き起こしたデッキボード20は、起立状態25Aの取手部材25を、パッケージトレイ30の裏面31に形成された紐部材35へ引っ掛けることで、その起き上がり状態20Bを保持することが可能となっている。なお、パッケージトレイ30を備えない車両に対しては、ドア開口上部45に取手部材25を係止することで、より傾斜角度のある傾斜状態20Cで保持することも可能である。
【0028】
このように本実施形態の車両荷室構造200では、デッキボード20の床面11から突出した取手部材25を掴みつつ、当該デッキボード20を引き起こすことができ、デッキボード20を引き起こした後、掴んでいる取手部材25をそのままパッケージトレイ30の裏面に係止することで、簡便に当該デッキボード30の起き上がり状態(傾斜状態)を保持することができるものとなっている。また、デッキボード20の起き上がり状態を保持するための係止をパッケージトレイ30の裏面で設定しているため、デッキボード20の起き上がり角度を大きくでき、デッキボード20の下方にある収容空間85へのアクセスが容易となっている。また、デッキボード20を起き上がらせない通常時(横たわり状態)において、取手部材25を非突出状態とすることができるため、突出した部分による他部品への傷付き等の影響が生じにくいものとなっている。
【0029】
また、取手部材25は、水平状態と起立状態との間で回動可能とされ、水平状態にある当該取手部材25の車両後方側端部26を回動軸として、車両前方側端部27が上方へ回動することで起立状態に変位する。そして、車両前方側端部27には、取手部材25が起立状態にある場合に、車両前方に突出してパッケージトレイ30の裏面側に係止可能な係止片(突出片)28を備えている。本実施形態のようにデッキボード20の車両後方端部22を上方且つ車両前方側に引き起こす場合、引き起こしたデッキボード20の起き上がり状態を保持するための取手部材25において、係止片28を車両前方に突出して設けることで、デッキボード20の引き起こしから、パッケージトレイ30の裏側に設けられた紐部材35への係止までを好適に行うことができるものとなっている。
【0030】
また、本実施形態では、パッケージトレイ30は、荷室10のドア開放に伴って水平状態から傾斜状態に変位するものとされ、その裏面31には、取手部材25との係止を可能とする紐部材35が設けられている。パッケージトレイ30が水平状態から傾斜状態に変位可能な構成であるため、パッケージトレイ30の傾斜角度次第で、引き起こしたデッキボード20を裏面に係止できない場合が生じ得る。しかしながら、本実施形態のように紐部材35で係止するものとすれば、紐の自由度により係止角度等を調整できるため、ある程度の自由度をもってデッキボード20をパッケージトレイ30の裏面に係止することが可能となる。
【0031】
なお、上記実施形態では、デッキボード20が折り畳まれない構成、つまり折り目(折畳ライン)のない一枚板の構成のものを示したが、図7及び図8に示すように折り畳み可能な構成のデッキボード120に本発明に係る構成を適用することも好適である。
具体的には、図7及び図8に示したデッキボード120は、当該デッキボード120を車幅方向において折り畳み可能とする、車両前後方向に沿った折畳ラインB50を2本備えた、一枚の板部材である。具体的には、デッキボード120の車幅方向における中央部分は、所定の幅を有した中板部55とされ、中板部55の左端に位置する第1折畳ラインB51(折畳ラインB50)を隔てて左側に配された部分が左側ボード部50Lとされ、中板部55の右端に位置する第2折畳ラインB52(折畳ラインB50)を隔てて右側に配された部分が右側ボード部50Rとされた、3部構成とされている。
【0032】
第1折畳ラインB51及び第2折畳ラインB52は、それぞれデッキボード120において板厚を部分的に薄く設定することにより構成されたインテグラルヒンジとされている。これにより、デッキボード120は、中板部55の車幅方向における左右両側に配された部分である左側ボード部50Lと右側ボード部50Rが、平坦な状態から第1折畳ラインB51及び第2折畳ラインB52でそれぞれ荷室上側且つ荷室内側方向に折り畳み可能とされている(図8参照)。また、中板部55の床面車両後方側には上記実施形態と同様の取手部材25が設けられている。このように折畳可能なデッキボード120において、上記のように取手部材25を中板部55に設けたことで、引き起こしから係止までを途中でデッキボードが折り畳まれることなく安定して行うことができるものとなる。
【符号の説明】
【0033】
10…荷室、11…床面、20…デッキボード、20A…水平状態(横たわり状態)のデッキボード、20B…傾斜状態(起き上がり状態)のデッキボード、25…取手部材、25A…水平状態(非突出状態)の取手部材、25B…起立状態(突出状態)の取手部材、30…パッケージトレイ、31…パッケージトレイの裏面、200…車両荷室構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8