【実施例】
【0126】
総論
材料:
HCC827細胞株は、ATCC(CRL−2868)から入手可能である。PC9細胞株は RIKEN Bio Resource Center, Japan から入手できる。TH−4000は、PCT特許出願公報WO2011/028135(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、望ましくない反応物質から合成され分離される。エルロチニブ(SN31254)は、Auckland Cancer Society Research Centre, Medicinal Chemistry Department から提供された。(2−ヒドロキシルプロピル)−β−シクロデキストリンは、Sigma Aldrich(カタログ番号778966−500G)から入手可能である。ポリ(エチレングリコール)400(PEG−400)は、Sigma Aldrich(カタログ番号P3265−1KG)から入手可能である。ジメチルスルホキシド(DMSO)は、ECP Ltd, New Zealand(カタログ番号2200.1−500ml)から入手可能である。注射用水(WFI)は DEMO S.A. Pharmaceutical Industry, Greece から入手可能である。
【0127】
実施例1
TH−4000の単位用量製剤
TH−4000は、蒸留又は逆浸透により精製された超純水「WFI」及び20%の2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン中に製剤化され、単位用量形態のTH−4000を生成した。
【0128】
実施例2
臨床的に適切なヒト等価用量での低酸素腫瘍細胞、特にEGFR変異陽性非小細胞肺癌の死滅におけるTH−4000の有効性の証明
HCC827及びPC9細胞は、EGFRのチロシンキナーゼドメインにおいてエキソン19欠失変異を有するNSCLC細胞株である。HCC827は変異EGFR(100%突然変異対立遺伝子)に関してホモ接合性であるのに対して、PC9細胞中の対立遺伝子の割合は野生型EGFR(87%の変異体及び13%の野生型)を含み、この点でヘテロ接合性である。この実施例は、変異型EGFR駆動肺癌のインビボ異種移植モデルを用いて、2つの遺伝的背景において臨床的に達成可能な用量レベルでのTH−4000及びエルロチニブの相対的有効性を評価した。
【0129】
HCC827及びPC9ヒト非小細胞肺癌(NSCLC)細胞を培地中で調製した。次に、接種物1個あたり1000万個の細胞を、5〜8週齢のメスのNIH−IIIヌードマウス(18〜24g)に皮下注射した。HCC827腫瘍は約200mm
3で動員され、PC9腫瘍は約400mm
3で動員された。腫瘍が所望の体積に達したら、マウスをA群〜E群に無作為に割り当て、以下の表1に詳述するように処置した:
【表1】
【0130】
TH−4000を実施例1のように製剤化した。エルロチニブを、40%の2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン中の5%DMSO、40%PEG−400の溶液中で製剤化した。3日ごと又は投与前に体重を記録し、皮下腫瘍の長さ及び幅を3日ごとに電子キャリパーで測定し、長楕円体(π/6×長さ×幅×幅)の式に従って体積を計算した。他の全ての臨床徴候が記録された。
【0131】
結果を以下に記載する。確立された皮下腫瘍を有するマウスを、FDA承認のヒト用量(150mg、毎日経口投与)と同等の平均血液曝露(AUC
inf 20,000ng*h/ml)を与えるエルロチニブ(10mg/kg、毎日経口投与)で治療すると、腫瘍を含有するホモ接合性のEGFR変異体のみをうまく制御することができる(
図1〜2、表2〜4)。
【表2】
【表3】
【表4】
【0132】
対照的に、TH−4000は、第I相臨床試験でTH−4000の最大安全投与量(150mg/m
2)で得られた血漿濃度のわずか10%〜20%である血漿濃度で、ホモ接合性及びヘテロ接合性の両方の腫瘍において高度に活性である。HCC827異種移植片におけるTH−4000の増殖遅延を、30、15、及び7.5mg/kg(q3d×8)の3用量で評価した。両方の用量レベルでのすべてのHCC827腫瘍の退行;CRが100%である。92%の腫瘍は90日以内に増殖しなかった。2つのTH−4000処置群において軽度の体重減少のみ(1.1%〜2.5%)が観察された。
【0133】
これらの結果は、低酸素依存性代謝が、低酸素腫瘍細胞におけるEGFR TKIの腫瘍選択的放出をもたらすという証拠を提供する。高い局所濃度は、低酸素腫瘍区画における野生型EGFRシグナル伝達をサイレンス化するのに必要な治療指数を提供する。これらの結果はまた、エキソン19欠失変異を有するNSCLCモデルにおけるTH−4000の有効性を確立する。従って、EGFR NSCLCは、ヒト被験体において容易に達成される血漿曝露で、エルロチニブに対する低酸素誘発耐性を克服し得る。TH−4000は、WT EGFR駆動異種移植モデルにおいてエルロチニブ及びアファチニブと比較してより大きな活性を示し、ヒト被験体において容易に達成される血漿曝露でHER2増幅異種移植モデルにおいて良好な活性を有する。
【0134】
実施例3
PC−9腫瘍におけるTH−4000及びTH−4000Eの薬物動態(PK)及び薬力学的(PD)プロファイルの証明
PC−9腫瘍を有するNIH−IIIマウスにおいて、15mg/kgのTH−4000を腹腔内投与した場合の薬物動態及び薬力学的試験を行った。マウスにPC−9細胞を接種した(マウス1匹あたり約8×10
6細胞、合計42匹のマウス)。TH−4000を上記のように製剤化し、マウスを安楽死させ、TH−4000投与後の以下の時点で3つの腫瘍を切除した:0.5時間、3時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、及び168時間。全腫瘍を(液体窒素を用いて)急速冷凍し、バイオ粉砕した。腫瘍は、集めて腫瘍の増殖速度を標的シャットダウンと相関させるまで、毎日測定された。生物粉砕後、生物粉砕した腫瘍の半分を、LC−MS/MSによるTH−4000及びTH−4000E濃度の測定のために処理した。腫瘍の残りの半分は、pEGFR及び総タンパク質(EGFR、α−チューブリン)のレベルを測定するためのタンパク質抽出及びウェスタンブロッティングのために処理した。
【0135】
LC−MS/MSについては、4容量の氷冷アセトニトリル(0.5μMのD6−TH−4000及びTH−4000Eを含む)を腫瘍試料に添加した。試料を13,000rpmで5分間遠心分離し、40μLの上清を採取した。上清に0.01%FA−水 80μLを添加し、試料を混合した。この試料10μLを分析のために注入した。質量分析検出は、マルチモードイオン化(MMI)源を備えたAgilent6410 トリプル四重極質量分析計を用いて行った。質量分析計は、多重反応モニタリング(MRM)を用いた電子噴霧陽性イオン化モードで操作した。Agilent MassHunter ソフトウェア(v4.04.00)をデータ収集とクロマトグラフのピーク積分に使用した。
【0136】
腫瘍試料のウェスタンブロッティングのために、粉砕した組織を収集し、ドライアイスに埋め込んだエッペンドルフチューブに迅速に移した。いったん全ての試料がバイオ粉砕されると、それらは迅速に計量され、チューブをドライアイスに保ちながら組織重量を記録した。ドラフトチャンバー下で、試料の重量の10倍に相当する冷1× Laemmli 緩衝液+プロテアーゼ阻害剤(希釈1:100)の量を加え、試料を湿った氷に移した。試料を1分間ボルテックス混合し、崩壊した組織が肉眼で可溶化されていることを確認した。試料をエッペンドルフ Thermomixer Compact 中で300RPMで振盪しながら、70℃で10分間インキュベートした。残存する未溶解組織を、室温で13,000×gで5分間遠心分離することにより沈降させた。BioRad プロテイン(Bradford)アッセイを用いてタンパク質濃度を測定するために、20mlアリコートを取っておいた。試料の残りは−20℃で凍結した。結果を以下に示す。
【表5】
【0137】
エルロチニブ(0.1〜10μM)によるEGFR自己リン酸化(Y1068)の阻害を検出するために、ウェスタンブロッティング法も使用した。HCC827及びPC9細胞培養物を対数期継代フラスコから準備する。細胞を1ウェルあたり100万細胞の密度で6ウェルプレートに播種し、酸素正常又は低酸素(1%O
2)条件下で48時間放置する。エルロチニブ薬物ストック溶液を培地で希釈して、各ウェルの最終濃度(図に示すように)を得る。3時間の薬物曝露の後、細胞を氷冷PBSで洗浄し、オルトバナジウム酸ナトリウムとフッ化ナトリウムをそれぞれ1mMの最終濃度で含む放射免疫沈降アッセイ(RIPA)緩衝液を用いて氷上で30分間溶解する。細胞破片を遠心分離(13,000rpm、2分)によりペレット化する。各試料中のタンパク質濃度は、ビシンコニン酸(BCA)アッセイにより測定される。等量のタンパク質(10μg)を変性させ(98℃で5分)、タンパク質分離のために4〜20%のトリス−グリシンタンパク質ゲルにのせる。ニトロセルロース膜に移した後、各膜を5%ウシ血清アルブミン(トリス緩衝化食塩水中)で1時間ブロックした。pEGFR(Y1068)に対する一次抗体(ウサギ、ポリクローナル)を、5%ウシ血清アルブミン(トリス緩衝化食塩水)中で1:2000の希釈率で一晩添加した。各膜中の過剰な一次抗体をトリス緩衝化食塩水で洗い流した。二次抗体(ヤギ抗ウサギ)を各膜に1:5000希釈で2時間添加した。タンパク質検出のために、膜をトリス緩衝化食塩水で洗浄して、添加した過剰の二次抗体及び化学発光基質(Pierce Supersignal West Pico 化学発光基質)を5分間除去した。Fujifilm LAS 4000イメージャを用いて膜を観察した。このインビトロのデータは、ヘテロ接合性PC−9細胞株のエルロチニブ耐性における低酸素曝露(1%O
2)の役割を示した(
図6及び7参照)。
【0138】
ヌードマウスにおける15mg/kgのTH−4000の単回投与は、ヒト被験体において32mg/m
2に相当する血漿AUCを達成し、これは第I相試験で定義した最大安全用量(MTD=150mg/m
2/週;NCT01631279)の1/5である。TH−4000はマウス血漿から急速に消失した(T
1/2=0.37時間)が、PC9腫瘍では耐久性があり(T1/
2=39時間)、有効レベルより上のTKIを7日間放出した(T
1/2β=84時間)。これらのPK特性と一致して、EGFRシグナル伝達の全体的なシャットダウンは深遠で持続性があり、7日目までに回復しなかった。作用機構を確認するために、我々は、TH−4000の物理化学的性質を反映した化学バイオツール(CBT)を調製したが、le−減少後にTKIを放出しないように設計した。TH−4000は、O
2(TKI<0.002nmol/hr/10
6細胞)により阻害されたプロセスである、ヒトNSCLC細胞株のパネル(TKI放出速度0.4〜2.1nmol/hr/10
6細胞)を用いて無酸素下で効率的に代謝された。CBTはすべての条件下で代謝的に不活性であった。細胞の抗増殖及び受容体リン酸化アッセイは、親TKIに比べてTH−4000の14〜80倍の失活を示したが、CBTが酸素状態とは無関係に失活されたことを示した。インビボでは、高圧酸素O
2呼吸は、TH−4000からのTKIのPC9腫瘍生成を>80%(538対99nmol/kg;p<0.01)抑制したが、CB−Tは有意なTKI(<1%)を放出しなかった。これらのデータはまとめると、TH−4000が独自の低酸素活性化機構を有し、変異型EGFR NSCLCのヘテロ接合性モデルにおいて活性であり、ヒト被験体において容易に達成される血漿曝露でエルロチニブに対する低酸素誘発耐性を克服し得ることを示す。
【0139】
実施例4
PC−9異種移植片におけるエルロチニブと併用された癌の治療のためのTH−4000の有効性の証明
ヘテロ接合性(変異型/野生型)腫瘍におけるTH−4000の治療的利点を更に調べるために、PC9異種移植片をエルロチニブ(10mg/kg、毎日経口)で14日間処理した後、週に1回TH−4000(15mg/kg)を導入した。更にPC9異種移植片を、単一薬剤としてエルロチニブ(10mg/kg、毎日経口)で、又は単一薬剤としてTH−4000(3、7.5、及び15mg/kg、腹腔内)で、又はエルロチニブとTH−4000を併用して上記投与量と投与経路で処理した。
【0140】
TH−4000とエルロチニブを以下のように製剤化した:20%の2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含むWFI中のTH−4000;40%の2−ヒドロキシルプロピル−β−シクロデキストリン中40%の、5%のDMSO、40%のPEG−400の溶液中のエルロチニブ。PC9腫瘍細胞を5〜8週齢のメスのNIH−IIIヌードマウス(17〜22g)に皮下接種した。腫瘍は約400mm
3まで増殖していた。腫瘍が400mm
3であった時、マウスをA群〜J群に無作為に割り当て、以下に詳述するように処置した:
【表6】
【0141】
皮下腫瘍の長さ及び幅を3日ごとに電子キャリパーで測定し、長楕円体(π/6×長さ×幅×幅)の式に従って体積を計算した。体重は、3日毎又は投与前に記録した。他の全ての臨床徴候が記録された。
【0142】
TH−4000の投与は、即時の腫瘍収縮をもたらした。PC9細胞では、TH−4000の3用量(3、7.5,15mg/kg;qw×4)にわたる有効性が証明された。腫瘍退縮は、7.5及び15mg/kgのTH−4000を投与されたすべてのマウスで見られた(
図11〜12)。3mg/kgのTH−4000を投与したマウスでは、安定した疾患が達成された(
図13)。15mg/kgのTH−4000の投与後14日目に始まるPC9腫瘍体積の減少は、マウス宿主における体重減少の欠如により示されるように、いずれの毒性の兆候とも関連していなかった(
図14)。しかし、エルロチニブは、投薬期間(21日間)にわたって安定した疾患のみを達成した。理論に拘束されるつもりはないが、これらの観察結果は、腫瘍の低酸素区画における野生型EGFRシグナル伝達と腫瘍全体にわたる変異体EGFRシグナル伝達との両方を、協調してサイレンス化する必要性と一致する。これらはまた、ヘテロ接合性EGFR腫瘍におけるTH−4000の顕著な治療指数の存在を証明している。
【0143】
更に、好気性又は低酸素条件下のホモ接合性細胞株又はヘテロ接合性細胞株のいずれかでのAZD9291の活性を比較するウェスタンブロッティングデータ(
図6〜8)は、エルロチニブについて見られたように、ヘテロ接合性EGFRにおける腫瘍低酸素の存在下でのAZD9291に対する耐性と一致する。
【0144】
上記に示されるようにTH−4000は、ヒト試験において容易に達成される用量で、エルロチニブ耐性の前臨床NSCLCモデルにおいて顕著な退行を与える。
【0145】
実施例5
HER2増幅胃癌の異種移植モデルにおけるTH−4000の有効性の証明
エルロチニブ、アファチニブ、及びTH−4000の抗腫瘍活性を、WT EGFR発現A431異種移植片において、臨床的に適切な用量レベルとスケジュールで比較した。NIH−IIIマウスには、30mg/kgのTH−4000(腹腔内)を投与して、60.2μg*hr/mLのAUCを達成し、これは、非結合TH−4000についてのヒト被験者で104mg/m
2の用量に相当する。毎日の経口エルロチニブ又はアファチニブは、腫瘍の進行を防ぐことができなかった。1週間に1回(Qw×4)又は週2回(Q3d×8)のTH−4000(30mg/kg、腹腔内)のみが、WT EGFR駆動のA431腫瘍異種移植片を制御することができ、100%腫瘍退縮が得られた。すべての処置は、体重変化が5%未満であり十分に許容された。
図15及び16に見られるように、TH−4000は、HER2陽性NCI−N87胃腫瘍異種移植片に対して活性であり、体重減少は最小(<5%)であった。
【0146】
実施例6
FaDu細胞における種々のEGFR標的化薬剤の抗増殖アッセイ
この試験は、種々のEGFR標的化薬剤に対する5日間の曝露後のFaDu細胞の感受性を測定することを目的とした。
評価した薬剤
【0147】
この試験で評価した薬剤は以下の通りであった:
試験番号:Titleヒト下垂体FaDu細胞を用いた好気的条件下でのセツキシマブ、エルロチニブ、TH−4000及びTH−4000Eのinvitro抗増殖活性
薬剤はセツキシマブ(IMC−C225)
TH−4000
TH−4000E
エルロチニブ(OSI−774)
【表7】
【0148】
細胞株 この試験は、ヒト下咽頭細胞株であるFaDu(ATCC#HTB−43)に注目する。FaDu細胞を、日常的な抗生物質(P/S)の使用無しで、5%FBSを補足したαMEM培地で増殖させた。培養物は、液体窒素中の認証された凍結ストックから24継代超の又は培養90日超のいずれか(どちらか早い方)で再樹立された。凍結した細胞ストックは、PCR-ELIZA キット(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)を用いてマイコプラズマが存在しないことを確認した。
【0149】
抗増殖アッセイ
FaDu細胞を96ウェルプレートに播種し(5%FCSを含むαMEM培地中1500細胞/ウェル)、21%O
2で一晩沈降させた。次に、細胞を各試験化合物の10回連続希釈物(3倍)で処理した。細胞を加湿インキュベーター(5%CO
2、37℃)中で5日間増殖させた。次に、細胞を40%トリクロロ酢酸で4℃で1時間固定した。次に、細胞をスルホローダミンB(SRB)発現について染色した。Biotek ELx808 吸光マイクロプレートリーダーを用いて、細胞密度を測定した。IC50値は、細胞密度を50%低下させるのに必要な値を外挿することにより推定した。
【0150】
TH−4000Eは、5日間の抗増殖アッセイにおいて、セツキシマブよりも150倍の用量効力がある。従って、セツキシマブ耐性の頭頸部癌はTH−4000Eに対する感受性を保持し得る。エルロチニブの抗増殖活性は、セツキシマブよりもわずかに優れている(IC50値は2倍異なる)。従って、FaDu細胞は、セツキシマブ及びエルロチニブの両方に対する相対的な耐性を示す。TH−4000Eは、エルロチニブより80倍小さいIC50値を示す。従って、エルロチニブ耐性細胞は、TH−4000Eに対する感受性を保持し得る。連続的に5日間曝露されたFaDu細胞において、プロドラッグTH−4000の抗増殖活性はTH−4000E(エフェクター)より13倍低く、エフェクターと比較してプロドラッグの失活を示した。
【0151】
図17においてIC50値は、未処理対照と比較して増殖を50%低下させるのに必要な薬剤の濃度を表す。IC50値は、3つ以上の独立した実験の平均±標準誤差である。FaDu細胞は、臨床的に承認されたEGFR阻害剤セツキシマブ及びエルロチニブに対して比較的耐性である。セツキシマブ及びエルロチニブに対する耐性にもかかわらず、FaDu細胞はTH−4000Eに対して顕著な感受性を示す。プロドラッグTH−4000は、TH−4000Eと比べて失活される。
【0152】
実施例7
Fadu細胞における種々のEGFR標的化薬剤の抗増殖アッセイ
この試験は、無酸素曝露が、種々のEGFR標的化薬剤に対するFaDu細胞の感受性をどのように変化させるかを測定することを目的とした。
評価した薬剤
【0153】
この試験で評価した薬剤は以下の通りであった:
【表8】
【0154】
細胞株
この試験は、ヒト下咽頭細胞株であるFaDu(ATCC#HTB−43)に注目する。FaDu細胞を、日常的な抗生物質(P/S)の使用無しで、5%FBSを補足したαMEM培地で増殖させた。培養物は、液体窒素中の認証された凍結ストックから24継代超の又は培養90日超のいずれか(どちらか早い方)で再樹立された。凍結した細胞ストックは、PCR-ELIZA キット(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)を用いてマイコプラズマが存在しないことを確認した。
【0155】
抗増殖アッセイ
FaDu細胞の単層をトリプシン処理により採取し、血球計数器を用いて計数した。有酸素アッセイのために、細胞を96ウェルプレートに播種し(1500細胞/ウェル)、加湿インキュベーター(37℃/5%CO
2)中で2時間沈降させた。次に、各試験化合物の10回連続希釈物(3倍)により細胞を24時間処理した。無酸素プレートの場合、全ての供給品を、H
2/パラジウム触媒嫌気性チャンバー(Bactron,, Shellab)中で少なくとも72時間予備平衡化させて、残留酸素を除去した。実験の日に、細胞を遠心分離(1000rpm、5分)してペレット化した。培地を吸引した。次にペレットを嫌気性チャンバーに取り込み、無酸素平衡培地(αMEM培地、5%FCS、0.2mmol/L 2’−デオキシシチジン、10mmol/Lグルコース)で希釈して、適切な細胞密度を達成した。細胞は、同一の条件で有酸素プレートに播種した。播種後、細胞を嫌気性チャンバー内の加湿インキュベーター(37℃)中で2時間沈降させた。無酸素プレートを同様に、各試験化合物の10段階希釈物(3倍)で処理した。薬物添加の4時間後に無酸素プレートを嫌気性チャンバーから取り出し、加湿インキュベーター(37℃/5%CO
2)中に更に20時間置いた。全部で24時間の薬物曝露後、有酸素プレートと無酸素プレートの両方を新鮮な培地(αMEM+5%FCS+P/S)で3回洗浄した。細胞を合計5日間増殖させた。その後、細胞を40%トリクロロ酢酸で4℃で1時間固定した。次に、プレートをスルホローダミンB(SRB)発現について染色した。Biotek ELx808 吸光度マイクロプレートリーダーを用いて細胞密度を測定した。IC50値は、細胞密度を50%低下させるのに必要な値の補間により推定した。
【0156】
無酸素状態は、FaDu細胞のセツキシマブ感受性を低下させた。無酸素IC50値は、有酸素相当値よりも4倍高かった。従って、無酸素曝露は、恐らくEGF受容体の増強された細胞内隔離(膜内部移行)により、FaDu細胞中のセツキシマブ耐性を促進するようである。エルロチニブの抗増殖活性は、好気性曝露条件下ではセツキシマブよりもわずかに優れていた(IC50値で3倍以上の用量効力)。FaDu細胞のエルロチニブ感受性は無酸素の影響を受けなかった。無酸素曝露期間の後、エルロチニブのIC50値はセツキシマブよりも13倍低く、セツキシマブの感度の変化を反映していた。無酸素曝露条件下では、TH−4000はセツキシマブよりも3000倍も用量効力があった(相対IC50値)。従って、無酸素依存性機構によりセツキシマブ耐性になった頭頸部細胞は、TH−4000に対する感受性を保持し得る。TH−4000Eは、同族のプロドラッグTH−4000から低酸素条件下で放出される不可逆的なHER1/2/4阻害剤である。TH−4000Eは、エルロチニブより1400倍大きな用量効力を示す(IC50値で測定)。従って、エルロチニブ耐性細胞は、TH−4000Eに対する感受性を保持し得る。無酸素曝露の期間の後、TH−4000は、IC50値の変化により測定すると、エルロチニブよりも244倍高い用量効力を有した。従って、エルロチニブ耐性の頭頸部細胞はTH−4000に対する感受性を保持し得る。TH−4000は、不可逆的なHER1/2/4阻害剤であるTH−4000Eの低酸素活性化プロドラッグである。空気中では、エフェクター(TH−4000E)の抗増殖活性は、プロドラッグ(TH−4000)より優れていた。すなわちプロドラッグTH−4000は、その同種のエフェクターTH−4000Eに対して62倍不活性化される。TH−4000はFaDu細胞において低酸素選択的増殖抑制活性を示し、4時間の無酸素後に15倍活性が高かった。
【0157】
図18に関して、無酸素実験FaDu細胞を嫌気性条件下で播種した。薬物添加の4時間後、嫌気性チャンバーから無酸素プレートを取り出し、加湿インキュベーター(37℃/5%CO
2)中に更に20時間入れた。有酸素実験のために、FaDu細胞を播種し、加湿インキュベーター(37℃/5%CO
2)中で24時間薬物処理した。IC50値は、未処理対照と比較して増殖を50%低下させるのに必要な薬剤の濃度を表す。IC50値は、3つ以上の独立した実験の平均±標準誤差である。
【0158】
無酸素状態は、FaDu細胞のセツキシマブ感受性を顕著に低下させた。無酸素状態は、エルロチニブ曝露に対するFaDu細胞の感受性を変化させなかった。無酸素状態は、FaDu細胞におけるTH−4000感受性を顕著に増強した。TH−4000Eは、FaDu細胞においてセツキシマブ又はエルロチニブのいずれよりも実質的に用量効力が高かった。TH−4000は、TH−4000Eと比較して62倍の失活率を示した。TH−4000は、4時間の無酸素対有酸素に続いて、FaDu細胞に対して15倍用量効力があった。
【0159】
実施例8
FaDu細胞における種々のEGFR標的化薬剤による標的の修飾
この試験の目的は、EGFR及びその下流のシグナル伝達物質あるpAktとpERKの発現に対する種々のEGFR標的化薬剤の濃度依存関係を測定することであった。
【0160】
細胞株
この試験は、ヒト下咽頭細胞株であるFaDu(ATCC#HTB−43)を使用した。FaDu細胞を、日常的な抗生物質(P/S)の使用無しで、5%FBSを補足したαMEM培地で増殖させた。培養物は、液体窒素中の認証された凍結ストックから24継代超の又は培養90日超のいずれか(どちらか早い方)で再樹立された。凍結した細胞ストックは、PCR-ELIZA キット(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)を用いてマイコプラズマが存在しないことを確認した。
【0161】
培養条件及び溶解物の調製
FaDu細胞を6ウェルプレートに播種し(ウェルあたり70万個)、一晩沈降させた。次に、細胞を勾配濃度のTH−4000、TH−4000E、又はセツキシマブ(3倍希釈)で1時間インキュベートした。次に細胞を50ng/mL EGF(Sigma #E9644)で15分間刺激した。
【0162】
ウェスタンブロッティングのための溶解物調製
細胞を氷冷PBSで1回洗浄した。細胞を、修飾RIPA緩衝液(RIPA[50mmol/L トリス−HCl、1%NP−40,0.25%Na−デオキシコレート、150mmol/L NaCl、1.0mmol/L EDTA]+1.0mmol/L Na
3VO
4+1.0mmol/L NaF+1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma #P8340))で氷上で30分間インキュベートして、溶解物を調製した。清澄化後、BCAアッセイを行って試料のタンパク質濃度を測定した。吸光度の読み取りは550nmで行った。
【0163】
ウェスタンブロッティング
細胞溶解物をゲル電気泳動により分離し、EGFRシグナル伝達軸の種々のメンバーについてイムノブロットした。各ローディング容量は、10μgのタンパク質及び25%SDS試料緩衝液(Life Technologies #NP0007)を含んだ。試料をNuPAGE 4〜12%ビス−トリス15ウェルゲル(Life Technologies #NP0336)にのせ、MESランニング緩衝液(Life Technologies #NP0002)中で120Vで約2時間、又は試料がゲルから流れ出るまで(いずれか早い方)流した。次に、試料をニトロセルロース膜上に100Vで80分間移した(トランスファー緩衝液:25mMトリス、192mMグリシン、20%メタノール)。ブロットをTBS−T中の5%BSA又は5%ホスホブロック(CellBiolabs #AKR−104)で少なくとも1時間ブロックした。使用した一次及び二次抗体は表6及び7に要約されている。簡単に述べると、ブロットを一次抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。TBS−Tで5分間洗浄を3回行った後、ブロットを、適切なHRP結合二次抗体と室温で少なくとも2時間インキュベートした。全ての場合に、ブロットは、Supersignal West Pico 化学発光基質(Life Technologies、#34080)を用いて Fijifilm LAS4000システム上で画像化された。標的タンパク質(例えば、pERK及びpAkt)がβ−アクチン(対照)と同様のバンドサイズであるため、ブロットをRestore ウエスタンブロットストリッピング緩衝液(Thermofisher Scientific #21059)と15分間インキュベートすることにより、結合抗体を除去した。TBS−Tで1回洗浄した後、ブロットをβ−アクチン又はα−チューブリンとプローブ結合させた。
【表9】
【表10】
【0164】
TH−4000Eは、EGFRシグナル伝達を阻害する上でセツキシマブよりも優れていた。TH−4000Eは、0.12μM以上の濃度でpEGFR(Y1068)及びpERK発現を完全にサイレンス化した。同様に、pAkt発現は、0.12μMを超える濃度でほぼサイレンス化された。セツキシマブは、1.1μM以上の濃度でpEGFR発現を部分的にサイレンス化したが、これはpAkt及びpERKを介する下流のシグナル伝達に最小の影響しか及ぼさなかった。最大10μMのセツキシマブへの曝露は、pAkt及びpERK活性をサイレンス化させなかった。TH−4000Eは、EGFR経路シグナル伝達の阻害により判断されるように、セツキシマブよりも少なくとも250倍高い用量効力を有した。TH−4000E(TH−4000のエフェクター)は、EGFRシグナル伝達を阻害する上でTH−4000(プロドラッグ)よりも優れていた。TH−4000は、1.1μMまでpEGFR発現を完全にサイレンス化しました(TH−4000Eでは0.04μM)。
【0165】
pAkt発現は0.37μMまで完全にサイレンス化された。TH−4000Eは、EGFR経路シグナル伝達の阻害により判断されるように、TH−4000よりも約28倍高い用量効力を有した。
【0166】
TH−4000Eは、セツキシマブよりも少なくとも250倍高い用量効力を有した。TH−4000はTH−400EよりもEGFRシグナル伝達を阻害する効率が低く、その作用機序と一致していた。
【0167】
実施例9
FaDu細胞におけるTH−4000E感受性に対する低酸素の影響
この試験の目的は、低酸素プレコンディショニングがFaDu細胞におけるTH−4000E感受性をどのように変化させるかを測定することであった。
【0168】
細胞株
この試験は、ヒト下咽頭細胞株であるFaDu(ATCC#HTB−43)を使用した。FaDu細胞を、日常的な抗生物質(P/S)の使用無しで、5%FBSを補足したαMEM培地で増殖させた。培養物は、液体窒素中の認証された凍結ストックから24継代超の又は培養90日超のいずれか(どちらか早い方)で再樹立された。凍結した細胞ストックは、PCR-ELIZA キット(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)を用いてマイコプラズマが存在しないことを確認した。
【0169】
培養条件及び溶解物の調製
FaDu細胞を、0.1%O
2及び21%O
2下で6ウェルプレートに48時間播種した(ウェルあたり50万個)。48時間の低酸素プレコンディショニングの後、細胞を種々の濃度のTH−4000Eと共に1時間インキュベートした。次に細胞を50ng/mLのEGF(Sigma #E9644)で15分間刺激した。
【0170】
ウェスタンブロッティングのための溶解物調製
指定された無酸素曝露期間の後、細胞を氷冷PBSで1回洗浄した。細胞を、修飾RIPA緩衝液(RIPA[50mmol/L トリス−HCl、1%NP−40,0.25%Na−デオキシコレート、150mmol/L NaCl、1.0mmol/L EDTA]+1.0mmol/L Na
3VO
4+1.0mmol/L NaF+1xプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma #P8340))で氷上で30分間インキュベートして、溶解物を調製した。清澄化後、BCAアッセイを行って試料のタンパク質濃度を測定した。吸光度の読み取りは550nmで行った。
【0171】
ウェスタンブロッティング
細胞溶解物をゲル電気泳動により分離し、EGFRシグナル伝達軸の種々のメンバーについてイムノブロットした。各ローディング容量は、10μgのタンパク質及び25%SDS試料緩衝液(Life Technologies #NP0007)を含んだ。試料をNuPAGE 4〜12%ビス−トリス15ウェルゲル(Life Technologies #NP0336)にのせ、MESランニング緩衝液(Life Technologies #NP0002)中で120Vで約2時間、又は試料がゲルから流れ出るまで(いずれか早い方)流した。次に、試料をニトロセルロース膜上に100Vで80分間移した(トランスファー緩衝液:25mMトリス、192mMグリシン、20%メタノール)。ブロットをTBS−T中の5%BSA又は5%ホスホブロック(CellBiolabs #AKR−104)で少なくとも1時間ブロックした。使用した一次及び二次抗体は表8及び9に要約されている。簡単に述べると、ブロットを一次抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。TBS−Tで5分間洗浄を3回行った後、ブロットを、適切なHRP結合二次抗体と室温で少なくとも2時間インキュベートした。全ての場合に、ブロットは、Supersignal West Pico 化学発光基質(Life Technologies、#34080)を用いて Fijifilm LAS4000システム上で画像化された。標的タンパク質(例えば、pERK及びpAkt)がアクチン(対照)と同様のバンドサイズであるため、ブロットをRestore ウエスタンブロットストリッピング緩衝液(Thermofisher Scientific #21059)と15分間インキュベートすることにより、結合抗体を除去した。TBS−Tで1回洗浄した後、ブロットをβ−アクチン又はα−チューブリンとプローブ結合させた。
【表11】
【表12】
【0172】
TH−4000E感受性は、有酸素及び低酸素プレコンディショニング細胞間で同等であった。使用されたTH−4000Eの濃度範囲(10.0〜0.37μmol/L)にわたって、EGFRシグナル伝達のほぼ完全なサイレンス化が観察された。
【0173】
低酸素プレコンディショニングは、使用されたTH−4000Eの希釈でTH−4000E感受性を変化させない。
【0174】
実施例10
EGFR誘導の速度論
この試験の目的は、下咽頭細胞株FaDuにおける低酸素によりEGFR発現がどのように変化するかを測定することであった。
【0175】
細胞株
この試験は、ヒト下咽頭細胞株であるFaDu(ATCC#HTB−43)を使用した。FaDu細胞を、日常的な抗生物質(P/S)の使用無しで、5%FBSを補足したαMEM培地で増殖させfた。培養物は、液体窒素中の認証された凍結ストックから24継代超の又は培養90日超のいずれか(どちらか早い方)で再樹立された。凍結した細胞ストックは、PCR-ELIZA キット(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)を用いてマイコプラズマが存在しないことを確認した。
【0176】
培養条件
FaDu細胞をT25フラスコに播種し(ウェルあたり70万個)、21%O
2で一晩沈降させた。培地(αMEM+5%FCS)を吸引し、フラスコをH
2/パラジウム触媒嫌気性チャンバー(Bactron, Shellab)に入れた。新鮮な無酸素平衡培地(αMEM+5%FCS+P/S+1%添加剤)を各フラスコに添加した。細胞を、有酸素回復有り及び無しで、無酸素状態に種々の時間曝露した(表13)。
【表13】
【0177】
ウェスタンブロッティングのための溶解物調製
指定された無酸素曝露期間の後、細胞を氷冷PBSで1回洗浄した。細胞を、修飾RIPA緩衝液(RIPA[50mmol/L トリス−HCl、1%NP−40,0.25%Na−デオキシコレート、150mmol/L NaCl、1.0mmol/L EDTA]+1.0mmol/L Na
3VO
4+1.0mmol/L NaF+1xプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma #P8340))で氷上で30分間インキュベートして、溶解物を調製した。清澄化後、BCAアッセイを行って試料のタンパク質濃度を測定した。吸光度の読み取りは550nmで行った。
【0178】
ウェスタンブロッティング
細胞溶解物をゲル電気泳動により分離し、EGFRシグナル伝達軸の種々のメンバーについてイムノブロットした。各ローディング容量は、10μgのタンパク質及び25%SDS試料緩衝液(Life Technologies #NP0007)を含んだ。試料をNuPAGE 4〜12%ビス−トリス15ウェルゲル(Life Technologies #NP0336)にのせ、MESランニング緩衝液(Life Technologies #NP0002)中で120Vで約2時間、又は試料がゲルから流れ出るまで(いずれか早い方)流した。次に、試料をニトロセルロース膜上に100Vで80分間移した(トランスファー緩衝液:25mMトリス、192mMグリシン、20%メタノール)。ブロットをTBS−T中の5%ホスホブロック(CellBiolabs #AKR−104)又は5%BSA中で少なくとも1時間ブロックした。使用した一次及び二次抗体は表11及び12に要約されている。簡単に述べると、ブロットを一次抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。TBS−Tで5分間洗浄を3回行った後、ブロットを、適切なHRP結合二次抗体と室温で少なくとも2時間インキュベートした。全ての場合に、ブロットは、Supersignal West Pico 化学発光基質(Life Technologies、#34080)を用いて Fijifilm LAS4000システム上で画像化された。標的タンパク質(例えば、pERK及びpAkt)がアクチン(対照)と同様のバンドサイズであるため、ブロットを0.2M NaOHと5分間インキュベートすることにより結合抗体を除去した。TBS−T中の5%BSAで1回洗浄した後、ブロットをアクチンとプローブ結合させた。
【表14】
【表15】
【表16】
【0179】
総EGFR(tEGFR)発現は、14時間の無酸素状態により変化しなかった。ホスホ−EGFR(Y1092)レベルは、FaDu細胞において無酸素状態の時間とともに増加した。ホスホ−EGFR(Y1092)レベルは、酸素正常状態への再曝露の5時間後に、FaDu細胞において上昇したままであった。
【0180】
FaDu細胞におけるpEGFR(Y1092)の一時的誘導が、無酸素培養条件下で観察された。pEGFR(Y1092)レベルは、酸素正常状態への再曝露後、少なくとも5時間持続可能であった。
【0181】
実施例11
野生型EGFR駆動H125非小細胞肺癌異種移植片におけるセツキシマブと組み合わせたTH−4000対セツキシマブと組み合わせたアファチニブ
この実施例の第1の目的は、H125異種移植片において毎週の単剤タルロキソチニブの有効性を、タルロキソチニブ/セツキシマブの組み合わせの有効性と比較し、H125異種移植片においてタルロキソチニブ/セツキシマブの有効性をアファチニブ/セツキシマブの有効性と比較し、並びにタキソキセチブ/セツキシマブの組合せの毒性をアファチニブ/セツキシマブの毒性と比較して評価することであった。
【0182】
すべての薬剤は、ヒトPK等価用量で投与した。WT EGFR駆動H125異種移植片において、タルロキソチニブ+セツキシマブの組み合わせは、アファチニブ+セツキシマブの組合せより顕著に有効であった(それぞれ67%及び37%のORR)。単剤のORRは、タルロキソチニブ、セツキシマブ、及びアファチニブについて、それぞれ29%、17%、及び0%であった(表3)。腫瘍増殖阻害(TGI%;27日目)の分析は、タルロキソチニブ/セツキシマブの組み合わせが最も活性であり(TGI=81%)、次にタルロキソチニブ単独(TGI=69%)であることを示した。アファチニブ/セツキシマブの組み合わせは中間の活性を示した(TGI=67%)。アファチニブとセツキシマブ単剤治療群は、不良な転帰を示した(表1)。全ての処置群において、顕著な体重減少は記録されなかった。
【表17】
【0183】
方法
H125腫瘍担持NIH−IIIマウスを、以下の処置群の1つに無作為化した:
A群:ビヒクル(20% 2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含むWFI)、腹腔内、qw×6
B群:タルロキソチニブ、48mg/kg、qw×6
C群:セツキシマブ、0.25mg/マウス、q3d×14
D群:タルロキソチニブ、48mg/kg、qw×6とセツキシマブ、0.25mg/マウス、q3d×14との組合せ
E群:アファチニブ、6mg/kg、qd×42
F群:アファチニブ、6mg/kg、qdx42とセツキシマブ、0.25mg/マウス、q3d×14との組合せ。
【0184】
全ての用量及び処置スケジュールは、各薬剤の臨床的に適切な用量及びスケジュールに関して最良の利用可能な情報に基づいていた。NIH−IIIヌードマウスにおけるヒト等価用量のタルロキソチニブ及びアファチニブを、両方の種における血漿タンパク質結合の調整後に社内で測定した。マウス(NIH−III)タルロキソチニブの48mg/kg投与は、ヒトで150mg/m
2に相当する遊離薬剤の血漿曝露を引き起こし(試験者のパンフレットTH−CR−601、Threshold Pharmaceuticals, INC)、毎週1回投与された。アファチニブのマウス用量6mg/kgは、ヒトの40mg/kgと等価であることが判明し(Wind et al, 2013, Clin Pharmacokinet; 52:1101-1109)、毎日経口投与された。使用されたセツキシマブの用量は、Luo et al (2005, Cancer Chemother Pharmacol; 56[5]:455) の知見に基づき、マウス1匹あたり0.25mgの用量はセツキシマブの臨床的に達成可能な用量と等価であった(標的飽和が観察された)。マウスにおける除去半減期がヒト被験者に対して短いこと(それぞれ40〜42時間対114時間)を補正するために、マウスにおける投与をq3d(3日毎)とした。
【0185】
タルロキソチニブとセツキシマブの組合せは、単一の薬剤としてのいずれかの治療よりも有効であった。この組合せは、PR及び2/6SDを達成する4/6(67%)の評価可能な腫瘍を有する他のすべての治療群と比較して、最も強力な抗腫瘍活性をもたらした。
【0186】
アファチニブ/セツキシマブの組み合わせは、アファチニブ又はセツキシマブのいずれか単独よりも活性であった。アファチニブ/セツキシマブの組み合わせで処置した3/8腫瘍(38%)はPRを達成したが、アバチノブ単独薬剤ではSD又はPRは達成されなかった。
【0187】
タルロキソチニブ/セツキシマブの組み合わせは、ビヒクル処置対照と比較して81%の腫瘍増殖阻害(TGI%、27日目)をもたらしたが、アファチニブ/セツキシマブの組合せは、67%のTGIをもたらした。
【0188】
全ての処置群における体重減少は<5%であった。他の毒性徴候は観察されなかったが、アファチニブ/セツキシマブの組合せで処置された1匹のマウス(13日目)では下痢の単一症例があり、これは48時間以内に解消した。
【0189】
ファーストラインTKIに対する耐性を獲得したEGFR突然変異陽性NSCLC患者におけるアファチニブとセツキシマブの第1b相評価は、アファチニブ/セツキシマブによるEGFRの二重阻害で達成された用量強度が、下痢や皮膚発疹などの機構上のグレード3/4の毒性に関連していることを証明した(Janjigian et al, 2014, Can Discov, 4:10)。この状況においてタルロキソチニブとセツキシマブとの組み合わせは、治療ウインドウを維持しながら、ErbBシグナル伝達を十分に阻害するのに必要な用量強度を与える可能性があると仮定されている。この試験は、野生型(WT)EGFR駆動NSCLCのモデルにおいて、アファチニブとセツキシマブの組合せと比較して、タルロキソチニブ+セツキシマブの治療可能性を評価するために行われた。
【0190】
タルロキソチニブ/セツキシマブの組み合わせは、WT EGFR駆動H125異種移植片におけるアファチニブ/セツキシマブの組み合わせよりも顕著に有効であった。タルロキソチニブとセツキシマブの組合せは耐容性が良好であり、重大な毒性と関連していなかった。
【表18】
【表19】
【表20】
【0191】
実施例12
ヒト患者におけるTH−4000の第I相臨床試験
この実施例は、癌患者にTH−4000を投与する非盲検及び多施設第I相試験を記載する。
【0192】
TH−4000の製剤及び投与
点滴用のTH−4000をガラスバイアル中で調製し、注入ポンプを介して1時間にわたって静脈内投与した。開始(レベル1)用量は、10mg/m
2/週×8であった。改良された加速力価測定計画が用いられた(Simon et al., JNCI, 89:1138-47、参照のため本明細書に組み込まれる)。27人の患者が初回用量レベルで登録された。疾患進行、介入性疾患、併用薬物療法又は他の非薬物介入とは明らかに関連しない最初の用量制限毒性(DLT)又はグレード2毒性が第1サイクル中に生じるまで、用量は連続レベルで100%増加する。DLTは次のように定義された:
グレード4 200mg/m
2で患者のQTc間隔の延長(DLT)
グレード3 200mg/m
2で患者の顔面痛(DLT)
グレード3 200mg/m
2で患者の前庭障害
【0193】
次の投与量レベルに進む前に、医療モニター及び試験責任者は、利用可能な関連する安全性及びPKデータを検討し考察した。
【0194】
試験集団
進行した固形腫瘍を有する27人の患者(全て希望者)がこの試験に登録された。この試験の第1の目的は、MTD及びDLTを測定することであった。第2の目的は、PK、安全性、及び有効性試験を含む。MTDは150mg/m
2/wに設定された。
【0195】
治療期間:
治療のために、患者に毎週1回、IVにより1時間にわたって10mg/m
2の開始用量を注入した。疾患の評価は第6週と、次に8週間毎に行った。TH−4000及びTH−4000EのPK分析をサイクル1及び2で評価した。
用量漸増
従来の3+3用量漸増計画(≦100%)が実施された。参加者の連続コホート(4〜6人の参加者/コホート)は、それぞれ固定用量で開始した。最初の2つのコホートについてリアルタイムPKを試験した。
【0196】
結果
15人の患者における≦80mg/m
2(1時間の点滴)のTH−4000投与は、ざ瘡様皮膚炎又は皮膚そう痒を生じなかった(0/15)。グレード1/2の斑点状丘疹(4/15患者)及び下痢(1/15患者)の発症率は低い。80mg/m
2の用量の血漿曝露は、40mg/dで投与されたアファチニブと比較して、AUC0〜inf≒毎日連続して約5週を与えた。全身性TH−4000−E曝露はTH−4000の1%未満であった(中央値0.88%;範囲0.29%〜2.4%)。この毒物動態学的関係は、ヒトにおけるTH−4000の全身的失活と一致する。
【0197】
TH−4000は、約2.5日の腫瘍半減期及び4日間を超えるp−EGFRシャットダウンを伴うTH−4000Eの腫瘍選択的用量増強(例えば、AUCの>8倍の増加)を示し、これは、6時間未満のp−EGFRシャットダウンを有するアファチニブよりも優れている。従って、TH−4000は、他の治療よりも低酸素環境において、HIF2α駆動野生型EGFR及びエンドサイトーシス小胞に隔離された野生型EGFRの両方を不可逆的に阻害するという利点を有することが示された。
【0198】
実施例13
EGFRチロシンキナーゼ阻害剤で進行する、EGFR変異、T790M陰性の進行性非小細胞肺癌を有する患者におけるTH−4000
この実施例は、EGFR変異、T790M陰性の進行性非小細胞肺癌患者にTH−4000を投与する片側、非盲検、多施設、2段階の第II相試験を記載する。
【0199】
TH−4000の処方及び投与
TH−4000は、40%の2−ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリン、20mMクエン酸塩(pH3〜4)を含有する少なくとも10mLの無菌の保存剤不含溶液中で少なくとも120mgのTH−4000を含む20mLバイアル中で、凍結(−20±5℃)して供給された。TH−4000の濃度は12mg/mLであった。使用前に室温でTH−4000バイアルを棚で解凍した。解凍後、TH−4000バイアルを水中5%デキストロース(D5W)に12時間以内に希釈した。TH−4000を希釈するためのD5Wは市販の供給源から得て、室温で保存した。調製したTH−4000/D5W溶液の最終TH−4000濃度は約1mg/mLであった。
【0200】
点滴用のTH−4000をガラスバイアル中で調製し、注入ポンプにより1時間にわたって静脈内投与した。開始用量は150mg/m
2であり、進行性疾患(PD)又は許容できない毒性が見られるまで、各28日サイクルの1、8、15、及び22日目に投与した。試験は、最適な Simon 2段階計画を使用した(Simon et al., JNCI, 89:1138-47、参照のため本明細書に組み込まれる)。TH−4000に関連する可能性があるとされた毒性について、用量変更規則に従った。その後のTH−4000の投与の前に、以前の用量で以下の治療関連毒性のうちの1つを経験した患者は、以下の基準を満たさなければならない:
グレード1以下のQTcF間隔の延長;
グレード2以下の皮膚発疹;そして
グレード2以下の消化管(GI)毒性。
他の臨床的に重要なTH−4000関連毒性は、少なくともグレード1に戻らなければならない。
【0201】
TH−4000関連毒性のためにTH−4000の投与が遅れた場合、患者は先の用量から25%〜50%の用量減少でTH−4000のその後の投与を受けた場合がある。
【0202】
試験集団
表皮増殖因子(EGFR)変異、T790M陰性の進行性非小細胞肺癌(NSCLC)を有する37人の患者(すべて希望者)をこの試験に登録した。この試験の第1の目的は、EGFR TKIで進行するEGFR変異、T790M陰性の進行性NSCLCを有する患者の応答率により決定されるTH−4000の抗腫瘍活性を評価することであった。第2の目的は、この試験集団におけるTH−4000の安全性及び耐容性を評価すること;応答の持続(DOR)、無進行性生存期間(PFS)、及び全生存期間(OS)を含むTH−4000の抗腫瘍活性のさらなる尺度を評価すること;この試験集団におけるTH−4000(プロドラッグ)及びTH−4000E(TKIエフェクター)の薬物動態(PK)を研究し、潜在的なPK/薬力学的関係を探索すること;及び、TH−4000への血漿曝露とその活性代謝物TH−4000Eとの関連、及び心臓再分極への影響があるかどうかを評価することを含んだ。
【0203】
試験期間:
この試験は、以下の3つの段階を伴った:スクリーニング、治療、及びフォローアップ。各患者について試験の活性部分の推定総期間は、以下のように約30週間であった。
【0204】
スクリーニング段階:−28日
スクリーニング及びベースライン手順は、最初の計画された投与の最大28日前までであり得る。
【0205】
治療段階:1〜26週(26週間)
平均6回の28日間の治療期間(24週間)の後に、治験薬の最終投与の2週間後の試験治療終了の来院があった。重大な治療関連毒性又は進行性疾患の証拠が得られるまで、患者は試験治療を継続することができた。増加期間は約12ヶ月であった。
【0206】
治療期間:
治療のために、患者に、進行性疾患(PD)又は容認できない毒性が見られるまで、各28日間サイクルの1、8、15、及び22日目に、150mg/m
2の開始用量を1時間にわたって静脈内注射した。TH−4000の臨床活性の予測因子の候補を、低酸素PETイメージング(例えば、利用可能な部位のみにおける低酸素腫瘍体積及び低酸素画分)、及び腫瘍組織、循環腫瘍細胞、又は血漿の解析に基づいて評価した(例えば、WT:変異型EGFR対立遺伝子比;EGFR/pEGFR及びHER2/pHER2タンパク質発現;EGFR及びHER2コピー数の増加;EGFR TKIに対する応答の可能性についての Veristrat 血漿アッセイ;及び/又はTKI耐性に関連する他の既知の分子異常の同定(例えば、MET増幅又はKRAS突然変異))。
【0207】
サイクル1の1日目の投与前、点滴開始の30分後、点滴終了時、点滴終了の30分後、及び点滴終了の1時間(h)後、2時間後、3時間後、5時間後、及び24時間後の患者について、血漿TH−4000及びTH−4000Eのための薬物動態サンプリングを行った。TH−4000及びTH−4000Eの濃度は以下のパラメータとともに報告された:ピーク血漿濃度(Cmax)までの最大観察時間(Tmax);対数濃度の直線回帰の傾きの大きさ(Tmax);終末期中の除去定数対時間プロファイル(Kel);終末半減期(T1/2)、濃度−時間曲線下の面積(AUC)、Hr0から最後の定量化可能な濃度の時間までの曲線下面積(AUClast)、曲線下面積(AUC);クリアランス(CL)、分配後の期間の分布容量及び(c1);定常状態での分布容量(Vss);分布期後の見かけの分布容量(Vβ)。
【0208】
フォローアップ:初回投与後1年以内
患者は、最初の投与から死亡まで、フォローアップの中止まで、又は試験閉鎖まで、約3ヵ月毎に最大12ヵ月間、生存及び治験後の治療情報について連絡を受ける。
【0209】
実施例14
頭頸部又は皮膚の再発性又は転移性扁平上皮癌を有する患者におけるTH−4000
この実施例は、頭頸部又は皮膚の再発性又は転移性の扁平上皮癌を有する患者にTH−4000を投与する非盲検、多施設、2段階の第II相試験を記載する。
【0210】
TH−4000の処方及び投与
TH−4000は、40%の2−ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリン、20mMクエン酸塩(pH3〜4)を含有する少なくとも10mLの無菌の保存剤不含溶液中で少なくとも120mg〜150mgのTH−4000を含む20mLバイアル中で、凍結(−20±5℃)して供給された。TH−4000の濃度は12mg/mLであった。使用前に室温でTH−4000バイアルを棚で解凍した。解凍後、TH−4000バイアルを水中5%デキストロース(D5W)に12時間以内に希釈した。TH−4000を希釈するためのD5Wは市販の供給源から得て、室温で保存した。調製したTH−4000/D5W溶液の最終TH−4000濃度は約1mg/mLであった。
【0211】
点滴用のTH−4000をガラスバイアル中で調製し、注入ポンプにより1時間にわたって静脈内投与した。開始用量は150mg/m
2であり、進行性疾患(PD)又は許容できない毒性が見られるまで、各28日サイクルの1、8、15、及び22日目に投与した。試験は、最適な Simon 2段階計画を使用した(Simon et al., JNCI, 89:1138-47、参照のため本明細書に組み込まれる)。TH−4000に関連する可能性があるとされた毒性について、用量変更規則に従った。その後のTH−4000の投与の前に、以前の用量で以下の治療関連毒性のうちの1つを経験した患者は、以下の基準を満たさなければならない:
グレード1以下のQTcF間隔の延長;
グレード2以下の皮膚発疹;そして
グレード2以下の消化管(GI)毒性。
他の臨床的に重要なTH−4000関連毒性は、少なくともグレード1に戻らなければならない。
【0212】
TH−4000関連毒性のためにTH−4000の投与が遅れた場合、患者は先の用量から25%〜50%の用量減少でTH−4000のその後の投与を受けた場合がある。
【0213】
試験集団
頭頸部又は皮膚の再発性又は転移性の扁平上皮癌を有する30人の患者をこの試験に登録した。この試験の第1の目的は、頭頸部又は皮膚の再発性又は転移性の扁平上皮癌を有する患者の応答率により決定されるTH−4000の抗腫瘍活性を評価することであった。第2の目的は、この試験集団におけるTH−4000の安全性及び耐容性を評価すること;応答の持続(DOR)、無進行性生存期間(PFS)、及び全生存期間(OS)を含むTH−4000の抗腫瘍活性のさらなる尺度を評価すること;この試験集団におけるTH−4000(プロドラッグ)及びTH−4000E(TKIエフェクター)の薬物動態(PK)を研究し、潜在的なPK/薬力学的関係を探索すること;及び、TH−4000への血漿曝露とその活性代謝物TH−4000Eとの関連、及び心臓再分極への影響があるかどうかを評価することを含んだ。
【0214】
試験期間:
この試験は、以下の3つの段階を伴った:スクリーニング、治療、及びフォローアップ。各患者の試験の活性部分の推定総期間は、以下のように約30週間であった。
【0215】
スクリーニング段階:−28日
スクリーニング及びベースライン手順は、最初の計画された投与の最大28日前までであり得る。
【0216】
治療期間:1〜26週(26週間)
平均6回の28日間の治療期間(24週間)の後に、治験薬の最終投与の2週間後の試験治療終了の来院があった。重大な治療関連毒性又は増悪疾患の証拠が得られるまで、患者は試験治療を継続することができた。増加期間は約12ヶ月であった。
【0217】
治療期間:
治療のために、患者に、進行性疾患(PD)又は容認できない毒性が見られるまで、各28日間サイクルの1、8、15、及び22日目に、150mg/m
2の開始用量を1時間にわたって静脈内注射した。TH−4000の臨床活性の予測因子の候補を、低酸素PETイメージング(例えば、利用可能な部位のみにおける低酸素腫瘍体積及び低酸素画分)、及び腫瘍組織、循環腫瘍細胞、又は血漿の解析に基づいて評価した(例えば、WT:変異型EGFR対立遺伝子比;EGFR/pEGFR及びHER2/pHER2タンパク質発現;EGFR及びHER2コピー数の増加;EGFR TKIに対する応答の可能性についての Veristrat 血漿アッセイ;及び/又はTKI耐性に関連する他の既知の分子異常の同定(例えば、MET増幅又はKRAS突然変異))。
【0218】
サイクル1の1日目の投与前、点滴開始の30分後、点滴終了時、点滴終了の30分後、及び点滴終了の1時間(h)後、2時間後、3時間後、5時間後、及び24時間後の患者について、血漿TH−4000及びTH−4000Eのための薬物動態サンプリングを行った。TH−4000及びTH−4000Eの濃度は以下のパラメータとともに報告された:ピーク血漿濃度(Cmax)までの最大観察時間(Tmax);対数濃度の直線回帰の傾きの大きさ(Tmax);終末期中の除去定数対時間プロファイル(Kel);終末半減期(T1/2)、濃度−時間曲線下の面積(AUC)、Hr0から最後の定量化可能な濃度の時間までの曲線下面積(AUClast)、曲線下面積(AUC);クリアランス(CL)、分配後の期間の分布容量及び(c1);定常状態での分布容量(Vss);分布期後の見かけの分布容量(Vβ)。
【0219】
フォローアップ:初回投与後1年以内
患者は、最初の投与から死亡まで、フォローアップの中止まで、又は試験閉鎖まで、約3ヵ月毎に最大12ヵ月間、生存及び治験後の治療情報について連絡を受けた。
【0220】
本発明をその特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更を行うことができ、同等物を代用することができることを当業者は理解すべきである。更に、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明により提供される利益を達成するために、特定の状況、材料、組成物、プロセス、プロセス工程に適合させるために多くの修正を行うことができる。そのような変更はすべて、添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【0221】
本明細書中に引用される全ての刊行物及び特許文書は、そのような刊行物又は文書のそれぞれが、参照により本明細書に組み込まれることを具体的及び個別に示したかのように、参照により本明細書に組み込まれる。刊行物及び特許書文書の引用は、そのような文書が、関連する先行技術であることを示すものではなく、またその内容又は日付に関する承認を構成することを意図するものでもない。