(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769964
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】粉末としてリグノセルロース系材料を炭化する新規方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/05 20170101AFI20201005BHJP
【FI】
C01B32/05
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-531328(P2017-531328)
(86)(22)【出願日】2015年12月11日
(65)【公表番号】特表2018-504349(P2018-504349A)
(43)【公表日】2018年2月15日
(86)【国際出願番号】IB2015059531
(87)【国際公開番号】WO2016092511
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2018年10月29日
(31)【優先権主張番号】62/090,538
(32)【優先日】2014年12月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ガロフ、ニクラス
【審査官】
青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−063644(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102502625(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/05
C01B 32/30
C09C 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化粒子又は凝集体を製造するための方法であって、ここで、前記方法は、連続的又は半連続的であり、前記炭化粒子又は凝集体は、好ましくは炭素粉末の形態であり、最も好ましくは導電性であり、以下のステップを含む、上記方法:
a)リグノセルロース系材料、好ましくはリグニンから発生する粉末形態の乾燥原料を提供し、不活性ガス又は不活性ガス混合物から選択される流体媒体中で最初に200℃未満で前記原料を懸濁及び/又は希釈するステップ、
b)約1000℃〜約1800℃の温度範囲で、前記流体媒体中の原料を炭化し、該炭化は、前記流体媒体中の原料を高温チャンバー、好ましくは炉系に運び、好ましくは約1ミリ秒〜約1/4時間までの間に、前記流体媒体中の前記原料を連続的に熱処理し、これによって、1つ以上の炭化粒子又は凝集体を、好ましくは炭素粉末の形態で提供するステップを含み、また任意に
c)後処理ステップ、
を含む、上記方法。
【請求項2】
不活性ガス混合物は、窒素と二酸化炭素からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップa)の乾燥原料は、該原料全体の90%超えが乾燥固体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップa)の原料は、均質化され、粉砕され、破砕され及び/又は流体媒体で含浸されるなどの前処理がされている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップa)の原料は、任意に、溶媒、塩、水、及びそれらの混合物からなる群から選択される液体での含浸を含む補助剤との処理も含み、所定の粒径に粉砕されている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップb)から得られた炭化粒子又は凝集体が分離され、前記分離は、任意の後処理前に流体媒体から抽出及び/又は回収を含み得る、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法がステップc)の後処理を含む場合に、ステップc)の後処理は、規定された粒径、表面特性、表面分極及び/又は特定の物質に対する親和性に、前記炭化粒子又は凝集体を、好ましくは炭素粉末の形態で、粉砕、含浸及び/又はコーティグすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
100m2/g超え、好ましくは約130〜1000m2/gのBET表面積を有する炭化粒子又は凝集体、好ましくは炭化された炭素粉末を生成する請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
その中の炭化粒子又は炭化凝集体は、約1nm〜約1mm、好ましくは約10nm〜約500μm、最も好ましくは約10nm〜約250μmの寸法を示す、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
水処理において、溶媒回収において、空気浄化において、活性炭素として、タイヤ用ゴムの補強等の補強剤として、トナーとして、レオオロジー増強剤として、インクジェット組成物中などの顔料として、カラーフィルターとして、UV安定剤として、伝導性材料として、電池電極材料として、コンピュータ及び携帯電話用ハウジング、自動車機器、電線、ケーブル、パイプ及び航空機器などの適用での使用のための導電性ポリマー組成物中の添加剤として、帯電防止剤として、ポリマー組成物中、スーパーキャパシター中、センサー中、又は伝導性インク中の充填剤として、請求項9に記載の炭化粒子又は凝集体、好ましくは炭化された炭素粉末の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リグノセルロース系材料を炭素粉末に炭化する新規なコスト効率のよい方法を提供する。驚くべきことに、処理中に基質がそれらの粉末状態を維持するような方法で、炭素化が粉末基質上で実施された場合、炭化の効率が改善されたことが発見された。本開示は、炭素粉末を製造する材料及び方法を記載する。炭化された炭素粉末の適用領域には、例えば、水処理、気体状態で空気浄化への溶媒回収のための、又はゴム補強のためのカーボンブラックの代替として、顔料として、又はポリマー電気散逸性/伝導性にするための伝導性カーボンブラックの代替として、活性炭を含む。
【背景技術】
【0002】
炭素粉末の2つの最も大きな適用領域は、カーボンブラックを使用するゴム補強及び活性炭を使用するろ過である。特別なカーボンブラックを、顔料又は添加剤として使用して、ポリマーを電気的に散逸性/伝導性にする。
【0003】
これらの炭素粉末の原料は、炭素及び主に化石系に豊富である。カーボンブラックは、化石重質油画分から完全に製造される。最も一般的な生成方法は、油が微細な液滴に分散され、約1000℃の温度で熱分解される炉内に噴霧されるいわゆるファーネスブラックプロセスである。活性炭は、亜炭又は無煙炭などの固体化石非粉末原料から主に生成される。泥炭、木材及びココナッツ殻などのリグノセルロース原料はまた、ある程度使用される。活性炭の生成は、2つのステップからなる:非炭素原子の除去のための1000℃までの温度での炭化と、高表面積を発生させるための第2の活性化ステップ。
【0004】
毎年、約105ギガトンのリグノセルロース系バイオマスが約42ギガトンの炭素に対応して製造されている。リグノセルロース系バイオマスは、炭素粉末生成物の豊富な原料になることができる。基質が熱い雰囲気に対して大きな表面積を有する微粒子として存在する場合、基質の炭化は、より効率的である。カーボンブラックは、微細な化石系油滴の熱分解によって生成される。本発明において対処されてようとしている現在の技術の主な欠点は、粉末としてのリグノセルロース系原料の効率的な炭化のための方法が、今日、存在しないことである。
【0005】
「A Study on Synthesis and Characterization of Biobased Carbon Nanoparticles from Lignin(リグニンからのバイオ系カーボンナノ粒子の合成と特性評価に関する研究)」の論文、Prasad Gonuguntaら、World Journal of Nano Science and Engineering、2012年、2、148−153において、リグニンからカーボンナノ粒子を作成する方法が開示されている。また、US20120269715において、リグニンから炭素粒子を作成する方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、リグノセルロース系材料を粉末として使用して、これが、迅速なペースで実施することができる炭化粒子又は凝集体を作成するためのプロセスは存在しない。
したがって、炭化されたリグ
ノセ
ルロース
系材料を粒子又は凝集体として作成する効率的
な方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の側面にしたがって、炭化粒子又は凝集体を製造するための方法を提供することによって、上記問題の1つ以上を解決し、ここで、前記方法は、連続的又は半連続的であり、前記炭化粒子又は凝集体は、好ましくは炭素粉末の形態であり、また最も好ましくは導電性であり、以下のステップを含む:
a)リグノセルロース系材料、好ましくはリグニンから発生する粉末形態の乾燥原料を提供し、流体媒体中で前記原料を懸濁及び/又は希釈するステップ、
b)約600〜約2500℃、好ましくは約900〜約1800℃、最も好ましくは約1000〜約1400℃の温度範囲で、前記流体媒体中の原料の炭化し、これによって、1つ以上の炭化粒子又は凝集体を、好ましくは炭素粉末の形態で提供するステップ、また任意に
c)後処理ステップ。
【0008】
本発明はまた、第2の側面によれば、第1の側面に係る方法によって得られる、炭化粒子又は凝集体、好ましくは、炭化された炭素粉末を提供する。
【0009】
本発明はまた、第3の側面によれば、前記生成物の使用を提供する、すなわち、垂れ防止材料において、制御された放出材料として、水処理において、溶媒回収において、気体状態において、空気浄化において、活性炭として、タイヤ用ゴムの補強等の補強材として、トナーとして、レオオロジー増強剤として、インクジェット組成物中などの顔料として、カラーフィルターとして、UV安定剤として、伝導性材料として、電池電極材料として、コンピュータ及び携帯電話用ハウジング、自動車機器、電線、ケーブル、パイプ及び航空機器などの適用での使用のための導電性ポリマー組成物中の添加剤として、帯電防止剤として、ポリマー組成物(ポリオレフィンを含み得る)中、スーパーキャパシター中、センサー中、伝導性インク中の充填剤として、及び粘性流体として、第2の側面の炭化粒子又は凝集体、好ましくは炭化炭素粉末の使用を提供する。第2の側面の前記炭化粒子又は凝集体、好ましくは、炭化された炭素粉末は、カーボンブラックが、通常の選択であるカーボンブラックの代替として役立ち得る。したがって、カーボンブラックの代替として役割を果たし得、次に例えば、ゴム補強材(タイヤなど)にあり得る。また、ポリマー及びポリマー組成物を電気散逸性/伝導性にするための伝導性カーボンブラックの代替として役割を果たし得る。
【0010】
よって、1つの側面において、本発明は、他の先行技術が記載しているものよりも劇的に短縮された時間間隔で起こるガス浮遊粒子バイオマスの本質的に完全な炭化を可能にする連続的又は半連続的(準連続的)プロセスを提供する。連続的プロセスとは、時間的に中断されない、すなわち、中断することなく進行するプロセスを意味することを意図される。半連続的プロセスは、例えば、以下に示す生成物の収穫によって中断され得る。
【0011】
さらに別の側面において、本発明は、連続流中の粉末状バイオマスの炭化のための方法を提供する。
さらに別の側面において、本発明は、軟材からのクラフトリグニンに関する第1の側面による本発明の方法を適用することから生じる結果として得られる生成物を提供する。本発明の第1の側面に係る提供された方法から得られる生成物は、粒状形態で80重量%以上の元素状炭素からなる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本明細書を通じて、表現「リグニン」は、炭化粒子又は凝集体、好ましくは炭化された炭素粉末を作成するために使用され得る任意のリグニンを包含することが意図される。前記リグニンの例は、軟材リグニン、硬材リグニン、1年植物由来のリグニン又はオルガノソルブパルプ化又はクラフトパルプ化などの様々なパルプ化方法によって得られるリグニンであるが、これらに限定されない。リグニンは、例えば、EP1794363で開示されるプロセスを使用することによって、単離され得る。用語「リグニン」はまた、バイオマス及びリグニン誘導体中の天然リグニンを包含する。
【0013】
原料の例としては、木材繊維、パルプ繊維、パルプ化プロセスからの繊維不合格品、おがくず、農作物(バガス、サトウダイコン、トウモロコシストーブなど)由来のリグノセルロース残渣、1年植物及びもちろんリグニンそのものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
原料、すなわち、原材料は、1mm未満、好ましくは0.1mm未満、より好ましくは10μm未満の範囲の粒径を好ましくは有する粉末状の乾燥リグノセルロース系材料である。サイズ分布は、原材料のタイプ及び前処理に依存し得る。
【0015】
本発明の第1の側面のさらに好ましい態様によれば、ステップb)の炭化は、流体培地中の、好ましくは不活性ガス混合物中の原料を高温チャンバー、好ましくは炉系に運び、好ましくは約1ミリ秒〜約1/4時間までの間に、流体培地中の前記原料を連続的に熱処理し、よって炭化粒子又は凝集体を、好ましくは炭素粉末の形態で提供することを含む。炉は、流体媒体中の原料を垂直(上方向又は下方向の両方)又は水平(右から左又は他の方向へ)に移動することを可能にするように配置され得る。熱処理の間に、1つ以上の温度ステップ、よって多くのゾーンがあり得る。
【0016】
本発明の第1の側面のさらに好ましい態様によれば、不活性ガス混合物は、窒素及び二酸化炭素からなる。比率は、50/50であり得る。100℃未満の温度で反応しない他の不活性ガスもこの状況で使用可能である。希釈ガス−固体相混合物を処理チャンバー中に運ぶための第3のガスもあり得る。これは、上記のような任意のガス又は不活性若しくは反応に関与するいずれかの他のガスであり得る。希釈ガス−固体相混合物の処理チャンバー内への供給は、層流又は乱流であり得る。ガスの粒子負荷は、変化し得る。ガスとの粒子の混合は、最初に200℃未満(好ましくは100℃未満)の低温状態で行われ得る。高温ガス流中の生成物の回収は、冷却を必要とし得る。よって、ステップb)における熱処理後の生成物の収穫(分離)に関連して、冷却ガス又はガス混合物が使用され得る。
【0017】
本発明の第1の側面のさらに好ましい態様によれば、ステップa)の原料は、90%超えの乾燥固体である。
【0018】
本発明の第1の側面のさらに好ましい態様によれば、ステップa)の原料は、均質化、粉砕、破砕及び/又は流体媒体で含浸されるなどの前処理がされている。
【0019】
本発明の第1の側面のさらに好ましい態様によれば、ステップa)の原料は、所定の粒径に粉砕され、任意に、溶媒、塩、水、又はそれらの混合物などの液体の含浸など、補助剤との処理も含む。原料、すなわち原材料の前処理は、前記のように、次のものを含む:粉砕、破砕、混合及び/又は均質化、及び加えて、水、酸、腐食剤、イオン性液体及び/又は塩を加えることも含み得る。
【0020】
本発明の第1の側面のさらに好ましい態様によれば、ステップb)から得られる炭化粒子又は凝集体は分離され、ここで、前記分離は、任意の後処理前の流体媒体からの、抽出及び/又は回収を含み得る。
【0021】
本発明の第1の側面のさらに好ましい態様によれば、ステップc)の後処理は、規定された粒径、表面特性、表面分極及び/又は特定の物質に対する親和性に、好ましくは炭素粉末の形態で、前記炭化粒子又は凝集体の粉砕、含浸及び/又はコーティグすることを含む。
【0022】
本発明の第1の側面のさらに好ましい態様によれば、炭化粒子又は凝集体、好ましくは炭化された炭素粉末は、約100m
2/g超え、好ましくは約130〜1000m
2/g超えのBET表面積を有する。
【0023】
本発明の第1の側面のさらに好ましい態様によれば、前記炭化された炭素粉末中の炭化粒子又は炭化凝集体は、約1nm〜約1mm、好ましくは約10nm〜約500μm、最も好ましくは約10nm〜約250μmの寸法を示す。前記炭化された炭素粒子中の前記炭化粒子又は炭化凝集体はまた、0.01μmと1mmの間、例えば0.01μm〜100μmの平均粒径を有する寸法を示し得る。
【0024】
得られた生成物、すなわち炭化粉末は、少なくとも85%の炭素含有量を有し得る。
【0025】
得られた生成物、すなわち炭化粉末はまた、少なくとも85%の炭素含有量及び0.01μmと1mmの間、好ましくは0.01μm〜100μmの間の範囲の平均粒径を有し得る。
【0026】
炭化粒子又は凝集体は、前記のように、好ましくは、凝集され、粉末を形成する一次粒子からなり得る。
【0027】
第1の側面による炭化プロセスはまた、以下のように記載され得、以下のステップを含み得る:
・ステップ1(任意):原料を>90%乾燥固体に乾燥させる
・ステップ2(任意):原料を所定の粒径の粉末に粉砕する;溶媒、水又は他の流体による含浸など助剤による処理
・ステップ3:不活性雰囲気中、600〜2500℃、例えば700〜1500℃での粉末状炭化(詳細に記載)
・ステップ4(任意) 規定の粒径、表面特性、表面分極、特定の物質に対する親和性への未加工炭素粉末の粉砕、含浸、コーティングなどの後処理。
【0028】
ステップ3(炭化ステップ)の説明:
粉末状原料を熱炭化する記載された方法は、3つのプロセスサブステップからなる。第1のサブステップ3.1は、粉末原料を供給しており、ここで粉末は、炉システム中に供給されており、流体媒体、好ましくは不活性ガス中に懸濁される。熱噴霧技術で知られている任意の従来の供給技術は、すなわち重力に基づく装置、回転式ホイール装置又は流動床システムを採用することができる(Handbook of Thermal Spray Technologies, ed. Joseph R. Davis、2004年、ASM International、137−141頁)。このステップの間、容積又は質量スループットが制御される。第2のサブステップ3.2は、実際の熱炭化であり、ここで、粉末/ガス混合物は、高温チャンバー中に運ばれている。プロセスは、好ましくは、連続的又は半連続的に実行され、その結果、入口流は、入口でチャンバー内に連続的に又は半連続的に供給され、その後、炭化の後、別の他端で出る。粉末として、600℃〜2500℃、例えば、900℃と1800℃の間又は1000℃と1400℃の間の範囲の温度に曝露される場合、1ミリ秒から数分までの間の期間中、材料は炭化する。1つの重要な技術的側面は、チャンバーを通る運搬中に粒子懸濁液の制御である。好ましい様式において、粒子は、外側チャンバー壁に接触時間がほとんど又は全くないため、チャンバー内のいかなるタイプの炭化した残りの残留物も回収されない。この懸濁液は、適切なガス粒子流設計、例えば、制御された渦流れによって達成され得る。
【0029】
第3のステップは、炭化物の抽出及び回収並びにチャンバーからの排ガス及び他の残留物を含み得る分離である。分離ステップは、炭化粉末を回収したフィルターを空にする場合など、回分式であり得る。熱処理を通過後、こうして処理された材料は、より低い温度への冷却が起こっている適切なパイプ中に連続的に搬送される。1つの側面において、この冷却は、おそらく本質的に不活性である必要のある一般的な温度レベルに依存する、より低温のガス流の注入によって実現され得る。これらのより低い温度レベルは、使用される冷却手段に依存する。懸濁した炭化粒子との固気相混合物は、通常、分離される必要がある。この分離は、気相から固体粒状生成物の回収を可能にするだろう。分離は、ろ過が1つの明確な選択である先行技術において知られている多くの方法で達成され得る。粒子又は粉末の分類のための技術水準において知られている分離の他の手段は、代替的に使用され得る。別の提案された形態において、冷却は、急冷水を使用することによって、達成することができたであろう。この方法は、カーボンブラック作成の先行技術において周知である。採用された方法はまた、明らかに可能な概念である。
【0030】
本発明の第1の側面に係る方法は、多くの方法で実現され得る。プロセスチャンバー又は炉チャンバーは、様々な異なる形態で実現され得る。一般に、このチャンバーは、入口と出口を有するべきである。それは、円形チューブとして実現され得る。このチューブの断面は、円形又は楕円形若しくは長方形若しくは多角形(六角形など)若しくはこれらの断面形状の混合のような非円形であることができる。一般に、チューブの断面は、長さが一定であり得る。しかし、形状であれ寸法であれ、又はその両方であれ、変化する断面を有することも可能である。
【0031】
この炉チャンバーの構成は、それぞれ
図2、
図3、及び
図4に示されており、明らかに、これは、原材料又は原材料ガス混合物の設置ニーズ、プロセス要件又はプロセス挙動に応じて変わり得る。提示された3つの構成の間の主な違いは、炉チューブ又は炉チャンバーの配向、及び入口と出口の間のその相対的な配向である。
図2において、入口と出口は、同様の高さのレベルにあるように設計され、本質的に間に水平処理ホットゾーンがもたらされる。この構成は、
図3又は
図4のいずれかの極限位置に変更され得る。
図3において、入口は、炉チャンバー又は炉チューブの上端及び下端の出口に配置される。よって、プロセスは、水平構成であり、生成物流は、上から下である。別の構成において、
図4に示すように、入口は、底部に配置され、ガス原材料混合物は、チャンバーを通って上方に搬送され、上端から出て、基本的に、垂直プロセスも生じる。プロセス及び生成物の必要性に応じて、構成は、それぞれ
図2、3及び4で示されるものの間の任意の位置で変化されることができる。
【0032】
プロセスの必要性に応じて、炉チャンバー又は炉チューブは、複数の独立して制御された温度ゾーンからなり得る。上記の構成において、3つのゾーンは想像可能であり、多かれ少なかれ技術的に可能である。これらのゾーンの温度レベルは、例えば、600℃と2500℃の間で選択され得る。より低い温度も実現可能であるが、炭化は、期待されない。また、より高い温度レベルは、技術的に実現可能であるが、達成、維持するのがますます困難であり、効率面に悪影響を及ぼし得る。
【0033】
本発明の第1の側面に係る方法は、前記のように、上記のような異なる原材料物質を処理するために使用され得、次にプロセスは、例えば選択されたプロセス及び冷却ガスで、原材料のこれらの選択に依存して変化され得る。ここで、様々な温度レベルでの反応性が考慮され得る。提示された技術において、不活性ガス窒素は、冷却時の1つの明らかな選択である。
【0034】
原材料及び目的の生成物の特性に依存して、ガス成分の部分混合物中の二酸化炭素の選択も考慮され得る。第1の側面にかかる方法において、二酸化炭素は、高温炉チャンバーにおける炭化反応に存在する。他の不活性ガスは、プロセスガス、希釈ガス又は冷却ガスとして利用するために、可能であり得る。しかし、窒素の使用が好ましい。
【0035】
本発明の各側面の好ましい特徴は、他の側面のそれぞれにについての本発明は、変更すべきところは変更して適用される。本発明は、添付の図面にさらに記載されるが、いかなる場合も本発明の範囲を制限するものではない。添付の図面の本発明の態様は、添付の図面を用いてより詳細に記載され、その目的は本発明を説明することのみであり、その範囲を何ら限定するものではない。本明細書中に記載された先行技術文献は、法律で許容される最大限の範囲に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図2】
図2は、第1の態様における本発明の方法の概略図を示す。
【
図3】
図3は、第2の態様における本発明の方法の概略図を示す。
【
図4】
図4は、第3の態様における本発明の方法の概略図を示す。
【
図5】
図5aは、得られた生成物のSEMスキャンを示す。
図5bは、得られた生成物のSEMスキャンを示す。
【
図6】
図6aは、得られた生成物のSEMスキャンを示す。
図6bは、得られた生成物のSEMスキャンを示す。
【
図7】
図7aは、得られた生成物のTEM分析を示す。
図7bは、得られた生成物のTEM分析を示す。
【
図8】
図8は、得られた生成物のTEM分析を示す。
【
図9】
図9は、提示された方法の概略図を示し、その生成物もプラスチック部品でさらに使用される。
【実施例】
【0037】
第1の側面に係る本発明は、
図4に示されるような形態で実現された。この場合のプロセス方向は、下から上へ上向きであった。固体原材料として使用されるバイオマスは、軟材からのクラフトリグニンであった。約95重量%の乾燥含量のリグニンは、窒素で希釈相状態に混合され、第2のガスをストリーム中に注入し、熱処理チャンバー中に、この場合、円形のチューブに直接導入することによって連続的に供給した。用いた注入ガスは、二酸化炭素であった。よって、50体積%の窒素と50体積%の二酸化炭素のガス混合物は、連続的にリグニンと混合された。この混合物を、高温炉チューブ中に運び、得られた固体並びに気体生成物を、チューブの上端に出していた。
【0038】
プロセス温度を、チューブの中間レベルで1400℃に設定した。固体フィーディングを、5g/分〜15g/分の間のステップで投与した。ホットゾーン内の時間間隔は、最大3秒の推定平均であった。
【0039】
気体−固体混合物からなる流出材料ストリームは、室温(約20℃)である注入された不活性ガスフローによって冷却された。冷却された気体−固体混合物を、セラミック製の濾布にポンプで送り込み、その表面上に固体の粒状生成物を集めた。
【0040】
図5a〜
図8は、結果のSEM並びにTEM分析を示す。提示された炭化方法で処理された軟材からのクラフトリグニンから生じる生成物は、主に球状炭素粒子であることがはっきりとわかる。得られる材料は、直径で数nmから約100μmまでの範囲で、炭素球である。小さな粒子の凝集状態も明らかである。
【0041】
図5bは、崩壊性の並びに開いた構造の形態で得られる球状粒子の例を示す。よって、明らかに目に見えるのは、これらのより大きな球の中空性(hollow nature)である。
【0042】
図7a及び
図7bは、製品のより小さい直径分画の走査型透過電子顕微鏡法分析を示す。ここで、数nm〜数十nmのより小さい直径範囲の寸法がはっきりと見える。また、個々の球体又は粒子が凝集体を形成する傾向が明白である。
【0043】
図8は、このようなより小さな粒子の高分解能透過電子顕微鏡法分析を示す。見かけ上の好ましい配向性をほとんど又は全く有しない分子構造の間にいくつかの規則的な空間があることがはっきりとわかる。得られた生成物の分析はまた、結晶性構造内に芳香族スタッキングを有するドメインがあることを示唆する。これらの結晶性構造の空間は、いわゆるグラファイトスタッキング又はレイヤリングの範囲内である。
【0044】
第1の側面に係る方法から得られ得る生成物のBET表面積は、138.18m
2/gであった。
【0045】
本発明の様々な態様は、上記に記載されているが、当業者は、本発明の範囲に入るさらなる小さな変更を実現する。本発明の幅及び範囲は、上記の例示的な態様のいずれかによって限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲及びそれらの等価物によってのみ定義されるべきである。例えば、上記方法のいずれかは、他の既知の方法と組み合わせられ得る。本発明の範囲内の他の側面、利点及び変更は、本発明が関連する当業者に明らかだろう。