(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769973
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】保持要素を備えるループグリッパ
(51)【国際特許分類】
D05C 15/24 20060101AFI20201005BHJP
【FI】
D05C15/24
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-539394(P2017-539394)
(86)(22)【出願日】2016年1月20日
(65)【公表番号】特表2018-507330(P2018-507330A)
(43)【公表日】2018年3月15日
(86)【国際出願番号】EP2016051126
(87)【国際公開番号】WO2016124401
(87)【国際公開日】20160811
【審査請求日】2019年1月18日
(31)【優先権主張番号】102015101495.5
(32)【優先日】2015年2月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】304012943
【氏名又は名称】グローツ−ベッカート コマンディトゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】シュベーネ ヘルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ヒレンブラント ベルント
【審査官】
▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−183994(JP,U)
【文献】
特開昭62−028457(JP,A)
【文献】
特開2012−031562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05C 1/00−17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリッパ本体(11)に形成され、延伸方向(E)に保持端部(13)から自由端部(14)まで伸長しているグリッパフィンガ(12)で、その下側(16)に切断領域(20)を含み、また、その下側(16)で前記切断領域(20)の直後に、前記切断領域(20)と前記自由端部(14)との間に、ヤーンループ(26)用の滑り面(19)を含み、自由端部(14)に滑り面(19)から突出する端部突起(18)を含む前記グリッパフィンガ(12)
を備えるタフティング機用ループグリッパ(10)であって、
前記ループグリッパ(10)が、前記延伸方向(E)に対して直角に横断方向(Q)に伸長している旋回軸(S)周りを、前記グリッパフィンガ(12)に対して旋回可能に取り付けられている、保持面(37)を含む保持要素(35)を含むことと、
前記保持要素(35)が、開始位置(A)を事前設定するために設けられている手段の力によって、前記保持面(37)が前記開始位置(A)に付勢されており、前記開始位置(A)において前記保持面(37)は前記滑り面(19)から離れる方向に伸長しており、前記保持面(37)は前記開始位置(A)において前記滑り面(19)と前記切断領域(20)との間の遷移点に直接隣接しており、前記保持要素(35)は前記開始位置(A)から偏向位置(B)に向けて前記手段の力とは逆に旋回可能であり、前記偏向位置(B)において前記保持要素(35)は前記ヤーンループ(26)が前記保持面(37)と前記遷移点との間の間隙を通過して前記切断領域(20)に入ることを可能にする、または前記保持要素(35)が前記滑り面(19)に設けられた凹部に入ることで前記ヤーンループ(26)が前記切断領域(20)に入ることを可能にすることを特徴とする、ループグリッパ(10)。
【請求項2】
前記開始位置を事前設定する前記手段の力が、ばね手段(42)のばね力、および/または前記保持要素(35)もしくは前記保持要素(35)と接続されている保持本体(32)の重力であることを特徴とする、
請求項1に記載のループグリッパ。
【請求項3】
前記グリッパフィンガ(12)の前記滑り面(19)が、互いに平行かつ横断方向(Q)に、ある距離(D)を置いて配置されている、中間領域を境界とする2つの側平面に隣接していることを特徴とする、
請求項1または請求項2に記載のループグリッパ。
【請求項4】
前記保持要素(35)が前記中間領域に係合していることを特徴とする、
請求項3に記載のループグリッパ。
【請求項5】
前記保持要素(35)が前記中間領域に配置されていることを特徴とする、
請求項4に記載のループグリッパ。
【請求項6】
前記保持要素(35)が、前記横断方向(Q)に、前記2つの側平面の間の前記距離(D)以下の幅(X)を有していることを特徴とする、
請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載のループグリッパ。
【請求項7】
前記保持要素(35)が、前記横断方向(Q)に、前記2つの側平面間の前記距離(D)よりも大きい幅(X)を有していることを特徴とする、
請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載のループグリッパ。
【請求項8】
前記グリッパフィンガ(12)が、前記滑り面(19)に隣接している2つの側面(17)を含み、前記保持要素(35)が前記2つの側面(17)のどちらとも接触しておらず、また前記保持要素(35)が前記2つの側面(17)のどちらともヤーンループ(26)の通路用の間隙を形成しないことを特徴とする、
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のループグリッパ。
【請求項9】
前記切断領域(20)が切断刃(25)を含むことを特徴とする、
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のループグリッパ。
【請求項10】
前記切断領域(20)が、前記グリッパフィンガ(12)をその延伸方向(E)に通過する中央面に対して、非対称に形成されていることを特徴とする、
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のループグリッパ。
【請求項11】
前記切断領域(20)が、前記旋回軸(S)に対して並行に方向づけられている横断方向(Q)に、前記滑り面(19)より小さい寸法を有することを特徴とする、
請求項9または請求項10に記載のループグリッパ。
【請求項12】
前記保持要素(35)が、前記保持面(37)の反対側で、前記保持要素(35)の前記開始位置(A)において前記滑り面(19)に対して鋭角である第1角度(α)を含むなじみ面(38)を含むことを特徴とする、
請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のループグリッパ。
【請求項13】
前記保持面(37)が、前記保持要素(35)の前記開始位置(A)において、前記滑り面(19)に対して前記第1角度(α)より大きい第2角度(β)を含むことを特徴とする、
請求項12に記載のループグリッパ。
【請求項14】
前記保持要素(35)が保持本体(32)に配置されており、前記保持本体(32)が前記グリッパ本体(11)に配置されていることを特徴とする、
請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載のループグリッパ。
【請求項15】
前記保持要素(35)が、前記保持本体(32)の一体部分であること、または旋回可能な仕方で前記保持本体(32)に配置されていることを特徴とする、
請求項14に記載のループグリッパ。
【請求項16】
前記保持本体(32)が前記ばね手段(42)を含むことを特徴とする、
請求項2を引用する請求項14、請求項2を引用する請求項15、請求項2のいずれか1項に記載のループグリッパ。
【請求項17】
前記ばね手段(42)が前記保持本体(32)の一体部分であることを特徴とする、
請求項16に記載のループグリッパ。
【請求項18】
前記保持要素(35)が、前記グリッパフィンガ(12)に設けられており、前記下側(16)に向けて開放された凹部(47)に配置されていることを特徴とする、
請求項14〜請求項17のいずれか1項に記載のループグリッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タフティング機用ループグリッパに関し、詳細には、カットパイル作製のためのループグリッパに関する。
【背景技術】
【0002】
タフティング機用ループグリッパは、先行技術から様々な設計で既知である。米国特許第3084645号明細書によるループグリッパは、保持端部から自由端部まで延伸方向に伸長しているグリッパフィンガを備えるグリッパ本体を含む。グリッパフィンガの下側には、切断ブレードと協働する切断領域がある。切断領域に配置されているヤーンループは、カットパイルを作製するために、切断ブレードによって切断され得る。グリッパフィンガの自由端部と協働しており、休止位置では、グリッパフィンガの側面に当接しているばねクリップも、グリッパ本体に取り付けられている。ばねクリップと側面との間には間隙が形成され、グリッパフィンガがヤーンループを把持するとき、ニードルまたはニードルの一区間が間隙に係合できる。ヤーンループは切断ブレードによって切断され得る。あるいは、ループパイルを作製するために、切断されずにグリッパフィンガから外され得る。
【0003】
別のループグリッパは、米国特許第4134347号明細書に記載されている。このグリッパフィンガは、米国特許第3084645号明細書とは対照的に、切断領域に設けられた端部から横に突出した突起を自由端部に備える。これにより、ヤーンループが切断領域から外れ得ることを防ぐ。グリッパフィンガの自由端部にある突起と協働する旋回可能な閉鎖要素によって、切断領域へのヤーンループの侵入が妨げられ得る。その結果、ヤーンループが、切断領域に入る可能性なしに、グリッパフィンガの自由端部によって把持される場合、カットパイルの代わりに、ループパイルを作製することも可能である。
さらに、米国特許第4353317号明細書で既知のループグリッパでは、それぞれ切断領域を有する二つのグリッパフィンガが設けられ、下側のグリッパフィンガには、ヤーンループが切断領域に入ることを防止するために、グリッパフィンガの自由端部に突起と協働する
閉じ部が設けられている。閉じ部が閉位置にあるときにより短いパイルが作製され、閉じ部が開いているときにより長いパイルが作製される。さらに、米国特許第2982239号明細書には、切断領域を有する真っ直ぐなグリッパフィンガと、さらにフック形状のグリッパフィンガを備え、これらのグリッパフィンガが互いに相対的に旋回可能であるループグリッパが記載されている。旋回位置に応じて、フック形状のグリッパフィンガは、真っ直ぐなグリッパフィンガ上のループを切断する目的で保持したり(カットパイル作製)、真っ直ぐなグリッパフィンガの切断領域を解除したり(ループパイル作製)することができる。
【0004】
カットパイルを作製するとき、グリッパフィンガの切断領域および/またはグリッパフィンガに対して移動可能な追加の切断ブレードの切断領域には、一般に切断刃が用いられる。しばしば問題となるのは、得られる繊維が不均衡であるため、パイル高さが目に見えて不揃いになるほど、ループが非対称に切断されることである。この問題は、ヤーンが非常に滑りやすい材料からできている場合には、ヤーンループが、切断動作中にグリッパフィンガの延伸方向に滑り、その結果ヤーンループの張力が増大するために捻れることによって、さらに増幅される可能性がある。これは、ヤーンループが二本の等しい長さのパイル糸に切断されないという状況につながり得る。この問題は具体的に、例えば、ある種のプラスチックヤーンの場合、ポリエステル糸の場合、または防汚カーペットを作成するために用いられるコーティングされた糸などの、非常に滑りやすく、同時に切断が難しい材料の場合に、甚大な範囲で生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、前述の問題を回避して、作製されるパイル、詳細には、カットパイルの品質を向上させるループグリッパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるループグリッパは、グリッパフィンガを備えるグリッパ本体を含む。グリッパフィンガは、具体的には、グリッパ本体の一体部分である。グリッパフィンガは、保持端部から自由端部まで延伸方向に伸長している。グリッパフィンガは、その下側に、切断領域と切断領域に隣接する滑り面とを備える。滑り面は、切断領域に直接隣接しており、グリッパフィンガの切断領域と自由端部との間に設けられている。ヤーンループは、その先端領域で滑り面に沿って滑り得、グリッパフィンガの切断領域に案内され得る。グリッパフィンガは、好ましくは、自由端部に滑り面および切断領域を超えて突出した端部突起を備えており、ひいてはグリッパフィンガによって把持されたヤーンループが、グリッパフィンガから滑り落ちるのを防ぐ。
【0007】
ループグリッパは、保持要素も含む。保持要素は、旋回軸周りをグリッパフィンガに対して旋回可能に取り付けられる。旋回軸は、延伸方向に対して直角に、横断方向に伸長している。例示的な一実施形態では、旋回軸は、グリッパフィンガを通過していてもよく、具体的には、グリッパフィンガの保持端部の領域において通過していてもよい。別の例示的な実施形態では、旋回軸は、グリッパフィンガの下側からある距離を置いて、グリッパ本体の外側に配置されていてもよい。さらに別の例示的な実施形態では、旋回軸は、下側からある距離を置いて、グリッパフィンガを通過していてもよい。
【0008】
保持要素は、開始位置を事前設定する手段、具体的には、ばね手段および/または重力によって、開始位置に付勢されていてもよい。保持要素には、保持面が設けられている。保持面は、保持要素の開始位置において、滑り面から直角または滑り面に対して斜めに伸長している。保持面は、好ましくは、滑り面または切断領域のグリッパフィンガの下側に対して、実質的に直角をなしている。前述の角度は、例えば80°から100°までの範囲にあることが可能である。保持面は、保持要素の開始位置における切断領域に面している。好ましい例示的な一実施形態では、保持要素は、開始位置において滑り面に当接している。
【0009】
保持面は、保持要素の開始位置において、好ましくは滑り面と切断領域との間の遷移点に隣接している。保持要素の開始位置において、滑り面と切断領域との間の遷移点から保持面までの距離は、好ましくは5mm以下であり、より好ましくは2mmまたは3mm以下である。
【0010】
保持要素は、開始位置において、切断領域に配置されたヤーンループが切断動作中に切断領域から滑り落ちて、増幅された張力の結果として捻れることを防ぐ。したがって、カットパイルを作製するとき、先端にできるだけ近い所望の位置でヤーンループを切断することが可能である。保持要素が開始位置にあるとき、保持面は、いわばヤーンループの止め具を形成する。
【0011】
保持要素は、ヤーンループがグリッパフィンガの滑り面に沿って滑ることで、開始位置の外側に、ばね手段のばね力および/または重力とは逆に、例えば、滑り面から離れて、またはグリッパフィンガの切り欠きの中へと、移動させられ得る。この間に、保持要素の旋回運動が旋回軸周りで生じる。ヤーンループが切断領域に入ると、保持要素は、開始位置を事前設定する手段、例えば、ばね手段のばね力および/または重力によって、開始位置に戻される。
【0012】
好ましくは、保持要素は開始位置において、より好ましくは任意の可能な位置で、グリッパフィンガの自由端部から延伸方向に、ある距離を置いて配置されている。滑り面の長い方の部分は、保持要素とグリッパフィンガの自由端部との間に設けられている。
【0013】
好ましい一実施形態では、グリッパフィンガの滑り面は、互いに平行に、他方から横断方向にある距離を置いて配置されている2つの側平面に隣接する。2つの平面は、滑り面が配置されている中間領域を境界としている。保持要素はこの中間領域に係合しており、好ましくは中間領域に配置されている。具体的には、保持要素または少なくとも保持面が、完全に中間領域の内部に配置されている。
【0014】
例示的な一実施形態では、保持要素または保持面の横断方向の幅が、2つの側面の間の距離以下である。あるいは、この保持要素または保持面の幅は、保持要素または保持面が2つの平面の少なくとも1つを通過するように、2つの側面間の距離より大きくてもよい。
【0015】
これは、保持面または保持要素が中間領域に対称に配置されている場合に好ましい。
【0016】
グリッパフィンガは、滑り面および切断領域に隣接して、横断方向に他方からある距離を置いて配置された2つの側面を含む。一実施形態では、側面は、少なくとも側平面のいくつかの領域に伸長していてもよく、または側平面に平行に伸長していてもよい。保持要素は、側面とは協働しない。 保持要素は、2つの側面のどちらにも当接していない。付加的に、保持要素はいずれの位置においても、ヤーンループが切断領域に横断方向に入り込み得るような側面との間隙を形成しない。
【0017】
一実施形態では、保持要素は、ヤーンループがもっぱらグリッパフィンガの下側の滑り面と保持要素との間を通過して切断領域に入ることを可能にするために設けられている。このために間隙は、開始位置において閉塞されている必要がある。別の実施形態では、ヤーンループが保持要素の上を滑り切断領域に入るときに、保持要素が開始位置の外側に動いて凹部に入り得るように、保持要素が設けられている。
【0018】
好ましい例示的な一実施形態では、グリッパフィンガの切断領域が切断刃を含む。切断刃は、横断方向に、滑り面より小さい寸法を有する。切断刃は、滑り面および中間領域に対して、中心から外れて配置されていてもよい。好ましくは、グリッパフィンガをその延伸方向に通過する中央面に対して、切断領域が非対称であり得る。これは、例えば、横断方向を指すグリッパフィンガの側面にある切断領域に、切り欠きが設けられている場合に生じてもよい。
【0019】
好ましい例示的な一実施形態では、保持要素が、保持面の反対側になじみ面(run−in surface)を含む。なじみ面は、保持要素の開始位置において、好ましくは、滑り面に直接隣接している。 第一角度は、保持要素の開始位置において、滑り面となじみ面との間に形成されており、前記第一角度は、好ましくは90°より小さく、より好ましくは70°より小さく、さらに好ましくは45°より小さい。このなじみ面により、ヤーンループは、滑り面から切断領域にきわめて容易に入ることができ、保持要素は、開始位置を事前設定する手段によって及ぼされた力とは逆に、開始位置の外側に付勢され得る。
【0020】
保持要素は、好ましくは、保持本体に配置される。保持本体は、グリッパ本体に配置されており、そこで圧力嵌めおよび/または形態嵌めおよび/または材料結合によって保持されている。
【0021】
保持要素は、保持本体の一体部分であってもよく、シームまたは継ぎ目なしに、保持本体の残りの部分と接続されていてもよい。あるいは、保持要素は、保持本体に旋回可能な仕方で取り付けられていてもよい。
【0022】
保持本体は、好ましくはばね手段を含む。例示的な一実施形態では、ばね手段は、保持本体の一体部分であってもよい。ばね手段は、保持要素に作用していてもよく、また保持要素を支えていてもよい。一実施形態では、保持要素は、ばね手段の一端部に配置されており、シームまたは継ぎ目なしに、ばね手段と一体化し得る。
【0023】
ループグリッパの他の実施形態では、保持本体が、グリッパフィンガに取り付けられていてもよい。具体的には、下側に向けて開放された凹部が、グリッパフィンガに設けられていてもよい。この凹部に保持本体が配置されており、保持面が開始位置の凹部から突出していてもよい。ヤーンループが滑って行くとき、保持本体または保持要素は、少なくとも部分的に凹部に移動させられる。凹部は、好ましくは、グリッパフィンガの側顎(side cheeks)によって横断方向に閉塞されている。この実施形態では、保持本体は、向きが反対の力がその上に作用していないとき、自らの重力によって開始位置に付勢または旋回されてもよい。付加的に、または代替的に、ばね手段が設けられてもよい。
【0024】
ループグリッパの有利な実施形態は、従属する請求項、説明、および図面から明らかになる。ループグリッパの好ましい例示的な実施形態は、添付図面を参照しながら、以下で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】ループグリッパの第一の例示的な実施形態の部分斜視図である。
【
図3】ループグリッパの第二の例示的な実施形態の部分斜視図である。
【
図4】ループグリッパの第三の例示的な実施形態の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ループグリッパ10の第一の例示的な実施形態は、
図1および
図2に示されている。ループグリッパ10は、グリッパフィンガ12が形成されているグリッパ本体11を含む。グリッパフィンガ12は、グリッパ本体11の一体部分であり、保持端部13から自由端部14まで延伸方向Eに伸長している。グリッパフィンガ12は、カットパイルを作製するとき、作製される繊維材料のバッキングにあてがわれている上側15を含む。グリッパフィンガ12は、上側15の反対側に下側16も含む。グリッパフィンガ12の狭い側面部は、上側15および下側16に設けられている。前記狭い側面部は、2つの側面17によって互いに接続されている。2つの側面17は、延伸方向Eに対して直角の横断方向Qに、互いにある距離を置いて配置されている。
【0027】
横断方向Qに対する直角方向および延伸方向Eに対する直角方向は、高さ方向Hと称される。
【0028】
グリッパフィンガ12は、その自由端部14においてフックを形成する。これは、端部突起18が、グリッパフィンガ12の下側16の隣接領域から離れて、高さ方向Hに実質的に突出することで達成される。
【0029】
端部突起18は、下側16において滑り面19に隣接している。滑り面19は、端部突起18からグリッパフィンガの切断領域20まで伸長している。滑り面19は、遷移点21で切断領域20に遷移する。ループグリッパ10の第一の例示的な実施形態では、切断領域20は、延伸方向Eおよび高さ方向Hにより規定されている、グリッパフィンガ12を通る中央面に対して非対称である。切断領域20には、好ましくはヤーンループ26を切断するための切断ブレード(図示せず)と協働する、切断刃25が設けられる。 切り欠き27は、切断領域20の横側のグリッパフィンガ12に形成される。切断ブレードは、グリッパフィンガ12、および、切り欠き27の反対側にある切断刃25に沿って移動する。切り欠き27は、切断刃25と共に切断ブレードを助けて、先端に近い、すなわち、グリッパフィンガ12を通る中央面の領域において、ヤーンループ26を切断できるようにし、可能な限り等しい長さのパイル糸を得られるようにする。切り欠き27は、下側16における高さ方向H、および、グリッパフィンガ12の2つの側面の一方における横断方向Qに開放されている。
【0030】
切断領域20は、滑り面19の反対側で、グリッパフィンガ12の保持端部13を含むグリッパ本体11の保持領域28に隣接している。
【0031】
ループグリッパ10は、第一の例示的な実施形態によると、保持本体32を含む。保持本体32は、例えば、形態嵌めおよび/または圧力嵌めおよび/または材料結合によって、保持領域28においてグリッパ本体11に取り付けられている取付け部分33を含む(
図1)。接続部分は、取付け部分33から始まり、切断領域20を経由して、グリッパフィンガ12の自由端部14まで伸長している。接続部分34は、いわば切断領域20を経由して係合している。保持要素35は、取付け部分33の反対側の端部で、保持本体32の接続部分34に配置されている。
【0032】
本明細書で説明される例示的な実施形態では、保持要素35が、滑り面19に面している軸受面36を含み、開始位置Aにおいて滑り面19の一部に当接している。軸受面36は、延伸方向Eにおいて、切断領域20に面する側面における保持面37に隣接している。保持要素35は、側面がグリッパフィンガ12の自由端部14に面している保持面37の反対側に、なじみ面38を含む。
【0033】
なじみ面38は、開始位置Aにおいて、滑り面19との第一角度αを含んでいる。第一角度αは、鋭角として設計されており、好ましくは70°未満または60°未満または45°未満である。保持面37は、開始位置Aにおいて、少なくとも滑り面19に直接隣接している保持面37の領域において、滑り面19との第二角度βを含んでいる。前記第二角度は、第一角度αより大きく、好ましくはほぼ直角を形成していて、例えば80°から100°までの範囲内にある。
【0034】
保持本体32は、開始位置を事前設定するための手段、例えば、第一の例示的な実施形態において、保持本体32の接続部分34によって形成されたばね手段42を含む。保持要素35は、ばね手段42を利用して、開始位置aへと偏っている。例示的な実施形態では、軸受面36は、遷移点21の領域において滑り面19に当接している。これは、開始位置Aの保持面37が、遷移点21の近くに配置されている場合に好ましい。好ましくは、遷移点21と開始位置Aの保持面37との間の延伸方向Eにおける距離は、5mm以下または2mmから3mm以下である。
【0035】
図1および
図2が示しているように、ループグリッパ10の第一の例示的な実施形態において、保持本体32は、シームまたは継ぎ目なしに一体部分として設計されている。取付け部分33、接続部分34、および保持要素35は、シームまたは継ぎ目なしに、互いに一体化している。
【0036】
保持要素35は、開始位置の外側へ、偏向位置B(
図2)に向けて、ばね手段42のばね力とは逆に、旋回軸S周りに旋回され得る。保持要素35の旋回運動は、外部の制御手段によって引き起こされるのではなく、保持本体32のばね手段および切断領域20の中に移動したヤーンループ26のみによって生じる。
【0037】
ループグリッパ10の第一の例示的な実施形態は、以下のように動作する。
【0038】
カットパイルを作製するとき、ヤーンループはグリッパフィンガ12によって把持されており、ヤーンループ26の先端の周辺領域が滑り面19に当接するように、最初は切断領域20と端部突起18との間に配置されている。バッキングとループグリッパ10との間の相互の動きのおかげで、ヤーンループ26は、滑り面19に沿って、切断領域20に向かって、保持要素35と接触するまで、この場合ではなじみ面38と接触するまで移動する。延伸方向Eに向かう継続的な相互運動により、ヤーンループ36は、なじみ面38を押し、保持要素35を旋回軸S周りに、開始位置Aから偏向位置Bに向けて、ばね手段42のばね力と逆に旋回させる。そのため、軸受面36と滑り面19との間に間隙が形成され、その間隙を通じて、ヤーンループ26が滑り面19から切断領域20を通ることができる(線図は
図2の破線で図示する)。第一角度αは鋭角であるため、保持要素35が偏向位置Bへと偏向する力は、十分に小さい。
【0039】
ヤーンループ26は、切断領域20に配置されると、そこで切断ブレード手段により先端領域において切断される。この間ヤーンループ26は、保持要素35の保持面37にぶつかり、いくら遅くとも引き止められるため、切断領域20からは逃れられない。これによって、作製されるカットパイルの品質は著しく向上することになる。例示的な実施形態では、第二角度βが第一角度αより大きいため、ヤーンループが切断領域20の中に移動するとき、ヤーンループ26は、保持要素35を開始位置Aから偏向させることができる。バッキングに対してループグリッパ10が逆向きに相対的に移動する場合、角度βがより大きいことにより、保持要素35とグリッパフィンガ12との間を通ってヤーンループ26を移動させるために必要となる所要の力は非常に大きくなり、その結果、ヤーンループ26が切断領域20において確実に保持される。
【0040】
図3は、ループグリッパ10の変更された第二の例示的な実施形態を示す。グリッパフィンガ12を備えるグリッパ本体11は、
図1および
図2で図示された第一の例示的な実施形態と同一である。したがって、上記説明が参照され得る。
【0041】
図1および
図2による第一の例示的な実施形態に対する、
図3で図示された第二の例示的な実施形態の主な相違は、保持要素35が、保持本体32にある別の部分として配置されているという点である。保持要素35は、取付け部分33の反対側にある、接続部分34の端部に、旋回軸S周りに旋回できるように取り付けられている。第一の例示的な実施形態では、旋回軸Sが保持部分28の領域に配置されているのに対して、第二の例示的な実施形態では、旋回軸Sが滑り面19の下に伸長している。両方の例示的な実施形態で、旋回軸Sは、高さ方向の滑り面19と、ある距離を置いて配置されている。
【0042】
第一の例示的な実施形態に対する別の相違は、
図3で図示された第二の例示的な実施形態において、ばね手段42が、接続部分34とは別に形成されているという点にある。ばね手段42は、取付け部分33から保持要素35まで伸長している弾性ばねフィンガ43によって形成されており、軸受面36の反対側において、保持要素35に対して高さ方向にばね力を及ぼし、滑り面19に対して軸受面36を押す。弾性ばねフィンガ43は、例えば保持本体32の一体部分である。
【0043】
図3で示されたループグリッパ10の第二の例示的な実施形態は、さらに、
図1および
図2で示された第一の例示的な実施形態に対応する。動作の仕方は、第一の例示的な実施形態と同じである。したがって、上記の説明が参照され得る。
【0044】
ループグリッパ10の第三の例示的な実施形態は、
図4で概略的に示されている。この実施形態では、保持要素35を含む保持本体32が、グリッパフィンガ12の凹部47の内部に、旋回可能に取り付けられている。保持要素35は、開始位置Aにおいて、凹部47から突出しており、滑り面19および/またはグリッパフィンガ12の切断領域20における下側16を超えて突出している。凹部47は、この端部まで、下側16に対して開放されている。凹部47は、横断方向Qにおいて、それぞれ側面17の一部を含む側顎によって閉塞されている。
【0045】
示された例示的な実施形態では、保持要素35は、ほぼ三角形である。上述の例示的な実施形態とは異なって、第一角度αは、鈍角として設計されており、好ましくは100°より大きく、より好ましくは120°または130°より大きい。第二角度βは、実質的に直角として設計されていてもよく、他の例示的な実施形態のように、例えば、80°から100°までの範囲にあってもよい。
【0046】
この実施形態では、開始位置を事前設定する手段が、保持本体35の重力によって、保持要素35を開始位置Aに付勢するための力を発生してもよい。付加的に、または代替的に、ばね手段42も設けられる。ヤーンループ26がグリッパフィンガ12に沿って延伸方向Eに移動するとき、保持要素35は、重力および/またはばね力とは逆に、凹部47に旋回させられる。その結果、ヤーンループ26は、保持要素35を経由して滑り面19から切断領域20に移動しうる。保持要素35の開始位置Aからの旋回運動は、好ましくは一方向の旋回、例えば旋回軸S周りで時計回りにおいてのみ可能である。これは、保持要素35が凹部47に移動することによって、切断領域20に配置されているヤーンループ26が切断領域20に残され得ることを防ぐ。
【0047】
全ての例示的な実施形態において、少なくとも保持面37および/または保持要素35全ては、横断方向Qに幅Xを有する。その幅は、反対側から横断方向Qにおいて滑り面19に隣接している2つの側平面間の距離Dと最大でも同じ大きさである。2つの側平面は、互いに平行に向かっており、延伸方向Eおよび高さ方向Hによって規定されている。それぞれの側平面は、滑り面19とそれぞれに隣接している側面17との間に端部を含む。2つの側平面は、中間領域を規定し、その内部で保持面37および/またはなじみ面38と、好ましくは保持要素35が配置されている。
図3で図示された第二の例示的な実施形態において、保持本体32に保持要素35を旋回可能に取り付けるために設けられる、ピンやボルトなどの軸受手段は、側平面の1つまたは両方を通過してもよい。
【0048】
好ましい例示的な実施形態では、保持平面37およびなじみ面38が、2つの側平面の間でグリッパフィンガ12を通過する中央面に対して中央に、かつ好ましくは対称に配置および設計されている。保持本体32の他の部品は、側平面の間の中間領域の外側に配置されていてもよく、また側平面の少なくとも1つを通過していてもよい。
【0049】
本発明は、タフティング機のためのループグリッパ10に関する。ループグリッパ10は、保持端部13から自由端部14まで延伸方向Eに伸長しているグリッパフィンガ12を備えるグリッパ本体11を含む。グリッパフィンガ12の下側16には、遷移点21で滑り面19に遷移する切断領域20がある。保持要素35は、遷移点21の領域に配置されており、グリッパフィンガ12に対して旋回軸S周りを旋回可能に取り付けられている。旋回軸Sは、延伸方向Eに対して直角に、横断方向Qに伸長している。保持要素35は、力、例えば、ばね手段42のばね力および/または重力によって開始位置Aに付勢されている。開始位置Aにおいて、保持要素35の保持面37は、滑り面19から離れる方向に斜めまたは直角に伸長している。
【符号の説明】
【0050】
10 ループグリッパ
11 グリッパ本体
12 グリッパフィンガ
13 グリッパフィンガの保持端部
14 グリッパフィンガの自由端部
15 上側
16 下側
17 側面
18 端部突起
19 滑り面
20 切断領域
21 遷移点
25 切断刃
26 ヤーンループ
27 切り欠き
28 グリッパ本体の保持領域
32 保持本体
33 取付け部分
34 接続部分
35 保持要素
36 支え面
37 保持面
38 なじみ面
42 ばね手段
43 フィンガ
47 凹部
α 第一角度
β 第二角度
A 開始位置
B 偏向位置
D 側平面間の距離
E 延伸方向
H 高さ方向
Q 横断方向
S 旋回軸
X 保持要素の保持面の幅