特許第6770008号(P6770008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6770008
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】水溶性ラパマイシン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07K 5/037 20060101AFI20201005BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20201005BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20201005BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20201005BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20201005BHJP
   A61K 38/06 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   C07K5/037
   A61P37/06
   A61P35/00
   A61P31/10
   A61P9/00
   A61K38/06
【請求項の数】19
【全頁数】55
(21)【出願番号】特願2017-568325(P2017-568325)
(86)(22)【出願日】2016年11月9日
(65)【公表番号】特表2018-519334(P2018-519334A)
(43)【公表日】2018年7月19日
(86)【国際出願番号】CN2016105178
(87)【国際公開番号】WO2017193562
(87)【国際公開日】20171116
【審査請求日】2017年12月29日
(31)【優先権主張番号】201610305510.9
(32)【優先日】2016年5月10日
(33)【優先権主張国】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510116819
【氏名又は名称】浙江海正薬業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Zhejiang Hisun Pharmaceutical CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】汪海波
(72)【発明者】
【氏名】况洪福
(72)【発明者】
【氏名】張偉
(72)【発明者】
【氏名】蔡正江
(72)【発明者】
【氏名】朱天民
(72)【発明者】
【氏名】鄭暁鶴
(72)【発明者】
【氏名】呉忠偉
(72)【発明者】
【氏名】楊志清
【審査官】 林 康子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−510621(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102911251(CN,A)
【文献】 Bioorg Med Chem Lett (2017) Vol.27, p.1175-1178
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 5/037
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【化1】

(ここで、
はHまたはRであり;
はHまたはR−Rであり;
しかしRおよびRは同時にはHではなく;
はR−R、−CHCHO−R−R
【化2】

または
【化3】

であり;

【化4】

【化5】

【化6】

カルボニルC−CアルケニレンまたはカルボニルC−Cアルキニレンであり;
nは6以下の整数;つまり、nは1、2、3、4、5または6であり;
mは6以下の整数;つまり、mは1、2、3、4、5または6であり;
はグルタチオンにおいてメルカプト基を脱水素化することによって形成される式IIのグルタチオニルであり:
【化7】

はC−Cアルキレン、C−CアルケニレンまたはC−Cアルキニレンである。)
【請求項2】
はR−Rまたは−CHCHO−R−Rである(RおよびRは請求項1に定義されたとおりである)、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】

【化8】

である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
は−CHCHO−R−Rである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】

【化9】

であり;
nは6以下の整数であり;
はグルタチオンにおいて上記メルカプト基を脱水素化することによって形成される下記式IIのグルタチオニル基である、請求項4に記載の化合物。
【化10】
【請求項6】
はHである、請求項4または5に記載の化合物。
【請求項7】
式Iの化合物は以下から選択される、請求項1〜6の何れか1項に記載の化合物。
【化11】

【化12】

【化13】

【化14】
【請求項8】
式Iの化合物を調製する方法であり、
(a)式IIIの化合物をXR10COOHと反応させて式IVの化合物を得る工程および:
【化15】

(ここで、
はH、−CHCHOHまたは
【化16】

であり;
はH、RX、−CHCHORX、
【化17】

または
【化18】

であり;
はHまたはRXであり;
およびRは同時にはHではなく;
10はC−Cアルキレン、
【化19】

【化20】

−CアルケニレンまたはC−Cアルキニレンであり;
Xはハロゲン原子であり、好ましくはIまたはBr原子である);
(b)工程(a)から得られた式IVの化合物をポリペプチドと反応させて式Iの化合物を得る工程、を含む方法。
【化21】

(ここで、
はHまたはRであり;
はHまたはR−Rであり;
しかしRおよびRは同時にはHではなく;
はR−R、−CHCHO−R−R
【化22】

または
【化23】

であり;

【化24】

【化25】

【化26】

カルボニルC−CアルケニレンまたはカルボニルC−Cアルキニレンであり;
nは6以下の整数、つまり、nは1、2、3、4、5または6であり;
mは6以下の整数、つまり、mは1、2、3、4、5または6であり;
はグルタチオンにおいてメルカプト基を脱水素化することによって形成される下記式IIのグルタチオニルであり:
【化27】

はC−Cアルキレン、C−CアルケニレンまたはC−Cアルキニレンである。)
【請求項9】
工程(b)において、式IVの化合物および上記ポリペプチドの反応は、N,N−ジメチルホルムアミド、アルコ−ル、および水を混合した溶媒である混合溶媒中で行われ、当該アルコ−ルは好ましくはエタノ−ルである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
上記混合溶媒中において、上記N,N−ジメチルホルムアミド、上記アルコ−ル、上記水の混合比は体積比で1:(1〜5):(1〜5)であり、好ましくは体積比で1:2:1である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜7の何れか1項に記載の式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な塩、好ましくはそのクエン酸塩;および医薬担体、賦形剤またはこれらの組み合わせを含む薬学的アジュバントを有効量含む、薬学的組成物。
【請求項12】
移植拒絶の治療または阻害のための薬物の調製における、請求項1〜7の何れか1項に記載の化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩、または請求項11に記載の薬学的組成物、の使用。
【請求項13】
腫瘍、真菌感染または血管疾患の治療のための薬物の調製における請求項1〜7の何れか1項に記載の化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩、または請求項11に記載の薬学的組成物、の使用。
【請求項14】
上記腫瘍は、腎細胞癌、腎上皮腎細胞癌、乳癌、膵癌、肺癌、前立腺癌、上衣下巨細胞星状細胞腫、または腎臓血管筋脂肪腫からから選択される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
請求項1〜7の何れか1項に記載の化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩、または請求項11に記載の薬学的組成物を含む調合物であって、当該調合物は錠剤、カプセル、注射薬、粉末、顆粒、薬剤溶出ステント、丸剤またはフィルムである、調合物。
【請求項16】
上記調合物は、水を注射薬のビヒクルとする注射薬である、請求項15に記載の調合物。
【請求項17】
上記注射薬は、生理食塩水を再構成のためのビヒクルとする、注射のための凍結粉末である、請求項16に記載の調合物。
【請求項18】
移植拒絶の治療もしくは阻害、または腫瘍、真菌感染もしくは血管疾患の治療における使用のための、請求項1〜7の何れか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩であって、
週1回注射によって患者に有効量投与される、化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項19】
移植拒絶の治療もしくは阻害、または腫瘍、真菌感染もしくは血管疾患の治療における使用のための、請求項11に記載の薬学的組成物であって、
週1回注射によって患者に有効量投与される、薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、有機化学および製薬化学の技術分野に関し、具体的には、水溶性ラパマイシン誘導体の調製、ならびに、免疫抑制の誘導、ならびに移植拒絶、固形腫瘍、真菌感染および血管疾患の治療におけるその使用に関する。より具体的には、本発明は、グルタチオンで修飾された水溶性ラパマイシン誘導体のクラス、その調製方法、ならびに免疫抑制の誘導、ならびに移植拒絶、固形腫瘍、真菌感染および血管疾患の治療におけるその使用に関する。
【0002】
〔背景技術〕
ラパマイシンは、Streptomyces hygroscopicus(Vezina C, et al, J. Antibiot, 1975, 10:721−726.)またはActinoplane sp(Nakao K, et al, EP022446, November 11, 1993)によって生産された新規のトリエンマクロライド化合物である。典型的なラパマイシン化合物は、下記の構造を有するシロリムス、エベロリムス、テムシロリムス等を主に含む。
【0003】
【化1】
【0004】
ラパマイシン化合物は、抗真菌活性を有するものとして、特にCandida albicansに対して比較的高い阻害活性を有するものとして、最初に発見された。
【0005】
近時、ラパマイシン化合物はラパマイシンの哺乳類のタ−ゲット(mTOR)の阻害剤であり、免疫抑制薬として作用することが発見された。ラパマイシン化合物の免疫抑制効果および臓器移植後の免疫拒絶を防止するための効果は、FASEB Journal(3, 3411, 1989)で初めて開示されている。作用機序は以下のとおりである。すなわち、異なるサイトカイン受容体を介するシグナル変換を阻害することで、T単球白血球およびその他の細胞のG1−S期移行の進行を阻害し、それにより、免疫抑制効果を発揮する。
【0006】
ラパマイシン化合物は、臨床における腫瘍の複数の兆候の治療における使用が認可されている。例えば、エベロリムスは、進行性乳癌、腎細胞癌、膵癌、血管筋脂肪腫等の固形腫瘍の治療のため、FDAによって認可されている。また、ラパマイシン化合物は、多発性硬化症、関節リウマチ、貧血、およびその他の疾患等の疾患の治療モデルにおいて効果的であることが証明された(Can J. Physiol. Pharmcol. 1997, 55, 48−52)。また、ラパマイシンは、哺乳動物のライフサイクルを延長する特定の潜在的な効果があることが報告された(Harrison DE, et al, Nature, 2009, 460, 392−395)。
【0007】
ラパマイシン化合物は、多数の兆候において使用され得、また臨床治療における多大な適用価値を有する。しかしながら、低い水溶性およびインビボにおける低い安定性のため、ラパマイシン化合物のインビボでの吸収性は低く、またバイオアベイラビリティもたった15〜30%と低い(Guy Jerusalem, et al, Breast Cancer Research and Treatment, 2010, 125:2447−2455)。また、比較的多量のラパマイシン化合物の投与はより多くの副作用を引き起こすこともある。
【0008】
上記の状況に鑑みて、ラパマイシン化合物の水溶性を向上させることにより、その生体利用効率を向上させ、また関連疾患に対するその治療的効果を大きく改善することができる。
【0009】
ポリペプチドは人体内の内因性物質である。ポリペプチドは、数個のアミノ酸からなり、また比較的良好な水溶性および大きな生理活性を有する。小分子薬剤とポリペプチドとの組み合わせは、一態様において当該小分子薬剤の溶解度を向上させ、またインビボの標的放出および持続放出を実現し、他の一態様においては、ポリペプチドの助けにより生理活性を改善する。例えば、グルタチオンは一般的な内因性ポリペプチドである。グルタチオンは、グルタミン酸、システインおよびグリシンからなる。グルタミン酸は、メルカプト基を含み、抗酸化効果および統合的解毒効果を有する。グルタチオンはまた、細胞増殖のための栄養素である。グルタチオンは細胞、特に急速に増殖する腫瘍細胞によって容易に取り込まれ得る。グルタチオンと小分子薬剤とを連結して調製された複合体は、急速に増殖する腫瘍細胞に対して選択性を有する可能性が非常に高く、また、人体における正常細胞に対する抗腫瘍薬の毒性をある程度軽減することができると同時に、当該小分子薬剤の標的放出を実現することができる。また、グルタチオンは水溶性トリペプチドである。グルタチオンが小分子薬剤とともに複合体を形成する場合、当該小分子薬剤の水溶性は大きく改善され得る。
【0010】
〔詳細な説明〕
本発明は式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な塩を提供する:
【0011】
【化2】
【0012】
(ここで、
はHまたはRであり;
はHまたはR−Rであり;
しかしRおよびRは同時にはHではなく;
はR−R、−CHCHO−R−R
【0013】
【化3】
【0014】
または
【0015】
【化4】
【0016】
であり;
【0017】
【化5】
【0018】
【化6】
【0019】
【化7】
【0020】
カルボニルC−CアルケニレンまたはカルボニルC−Cアルキニレンであり;
nは6以下の整数;つまり、nは1、2、3、4、5または6であり;
mは6以下の整数;つまり、mは1、2、3、4、5または6であり;
はポリペプチジル基であり、好ましくは、グルタチオンにおいてメルカプト基を脱水素化することによって形成される式IIのグルタチオニルであり:
【0021】
【化8】
【0022】

はC−Cアルキレン、C−CアルケニレンまたはC−Cアルキニレンである)。
【0023】
好ましい実施形態において、Rは、好ましくはR−Rまたは−CHCHO−R−R(RおよびRは式Iにおいて定義される通り)である。
【0024】
好ましい実施形態において、Rは好ましくは
【0025】
【化9】
【0026】
である。
【0027】
より好ましい実施形態において、Rは−CHCHO−R−Rであり;さらに、Rは好ましくは、
【0028】
【化10】
【0029】
(nは6以下の整数)であり、Rは好ましくはグルタチオンにおいてメルカプト基を脱水素化することによって形成される式IIのグルタチオニルである。
【0030】
【化11】
【0031】
さらに、Rは好ましくはHである。
【0032】
より好ましい実施形態において、本発明に係る式Iの化合物は以下から選択される。
【0033】
【化12】
【0034】
【化13】
【0035】
【化14】
【0036】
【化15】
【0037】
他の一態様において、本発明は式Iの水溶性ラパマイシン誘導体を調製する方法を提供し、当該方法は:
(a)式IIIの化合物をXR10COOHと反応させて式IVの化合物を得る工程および:
【0038】
【化16】
【0039】
(ここで、
はH、−CHCHOHまたは
【0040】
【化17】
【0041】
であり;
はH、RX、−CHCHORX、
【0042】
【化18】
【0043】
または
【0044】
【化19】
【0045】
であり;
はHまたはRXであり;
およびRは同時にはHではなく;
10はC−Cアルキレン、
【0046】
【化20】
【0047】
【化21】
【0048】
−CアルケニレンまたはC−Cアルキニレンであり;
Xはハロゲン原子であり、好ましくはIまたはBr原子である);
(b)工程(a)から得られた式IVの化合物をポリペプチドと反応させて式Iの化合物を得る工程、を含む方法である:
【0049】
【化22】
【0050】

(ここで、
はHまたはRであり;
はHまたはR−Rであり;
しかしRおよびRは同時にはHではなく;
はR−R、−CHCHO−R−R
【0051】
【化23】
【0052】
または
【0053】
【化24】
【0054】
であり;
は独立に
【0055】
【化25】
【0056】
【化26】
【0057】
【化27】
【0058】
カルボニルC−CアルケニレンまたはカルボニルC−Cアルキニレンであり;
nは6以下の整数、つまり、nは1、2、3、4、5または6であり;
mは6以下の整数、つまり、mは1、2、3、4、5または6であり;
はポリペプチジル基であり、好ましくは、グルタチオンにおいてメルカプト基を脱水素化することによって形成される下記式IIのグルタチオニルであり:
【0059】
【化28】
【0060】
はC−Cアルキレン、C−CアルケニレンまたはC−Cアルキニレンである)。
【0061】
工程(a)および(b)はいくらかの改良とともに、WO0224706の方法を参照して行われる。
【0062】
さらに、工程(b)において、化合物IVおよび上記ポリペプチドの反応はN,N−ジメチルホルムアミド、アルコ−ル、および水を混合した溶媒である混合溶媒中で行われ、当該アルコ−ルは好ましくはエタノ−ルである。
【0063】
さらに、上記混合溶媒中において、N,N−ジメチルホルムアミド、アルコ−ル、水の混合比は体積比で1:(1〜5):(1〜5)であり、好ましくは体積比で1:2:1である。
【0064】
他の一態様において、本発明は式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な塩、好ましくはそのクエン酸塩;および医薬担体、賦形剤またはこれらの組み合わせを含む薬学的アジュバントを有効量含む薬学的組成物を提供する。
【0065】
本発明によって提供される式Iの化合物、その薬学的に許容可能な塩またはその薬学的組成物は、移植拒絶の治療または阻害において使用できる免疫抑制剤である。本発明に係る式Iの化合物は、腫瘍細胞の増殖に対する抑制効果を有しており、また腫瘍の治療、好ましくは腎細胞癌、腎上皮腎細胞癌、乳癌、膵癌、肺癌、前立腺癌、上衣下巨細胞星状細胞腫、または腎臓血管筋脂肪腫の治療に使用することができる。式Iの化合物はまた、真菌感染および血管疾患の治療において使用することができる。
【0066】
本発明はまた、式Iの化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩、またはその薬学的組成物を含む調合物を提供する。当該調合物は錠剤、カプセル、注射薬、粉末、顆粒、薬剤溶出ステント、丸剤またはフィルムである。
【0067】
さらに、上記調合物は、水を注射薬のビヒクルとする注射薬である。
【0068】
さらに、上記注射薬は、生理食塩水を再構成のためのビヒクルとする、凍結乾燥粉末注射薬である。
【0069】
本発明はまた、式Iの化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩、またはその薬学的組成物を患者に有効量投与する工程を含む投与方法を提供する。
【0070】
さらに、上記投与方法は、式Iの化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩、またはその薬学的組成物を週1回注射によって患者に有効量投与する工程を含む。
【0071】
本発明は、ポリペプチドで修飾された式Iのラパマイシン化合物、特にグルタチオンで修飾されたラパマイシン化合物を提供する。本発明に係る式Iの化合物は生理食塩水に溶解しやすく、生理食塩水に溶解させても、24時間以内に明らかな分解が起こることなく、その分子構造は安定である。本発明に係る式Iの化合物は、ラパマイシン化合物のプロドラッグであり、動物血清内において対応するラパマイシン化合物を徐々に放出することができ、そのため持続放出効果を示す。本発明に係る式Iの化合物は先行技術におけるラパマイシン化合物と比較して、腫瘍に対するより良い阻害活性を示す。
【0072】
特段、定義されない限り、本発明にて使用される文言は、当該分野において一般に受け入れられている意味を有する。さらに、本発明において使用される文言の一部は、以下の通り定義される。
【0073】
「アルキル」は官能基または官能基の一部として、直鎖状または分枝鎖状の飽和脂肪族炭化水素基、好ましくはC−C10アルキル、より好ましくはC−Cアルキルを示す。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、sec−ブチル、n−アミル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、n−ヘキシル、1−エチル−2−メチルプロピル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、2−メチルアミル、3−メチルアミル、4−メチルアミル、2,3−ジメチルブチル等が含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
「ポリペプチジル」は、官能基または官能基の一部として、ポリペプチドまたはタンパク質からの1つ以上の水素原子の除去によって形成される官能基、好ましくは、ポリペプチドまたはタンパク質に含まれるメルカプト基を脱水素化することによって形成されるポリペプチジルを示す。ポリペプチジルの例としては、グルタチオニルが含まれるが、これに限定されない。
【0075】
「薬学的に許容可能な塩」は上述の化合物の特定の塩を示し、当該塩は、その元々の生理活性を保つことができ、薬学的応用に好適である。式Iの化合物の薬学的に許容可能な塩は、当該化合物を、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファ−スルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、リンゴ酸、マレイン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、硝酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸等の無機および有機酸を含む好適な酸と反応させることにより形成される塩であってもよい。
【0076】
〔図面〕
図1は、実施例11から得られる、エベロリムスの濃度に対するピ−ク面積の検量線であり、上記ピ−ク面積が垂直座標によって表され、上記濃度がmg/mLを単位として水平座標によって表される。
【0077】
図2は、実施例13において測定される、化合物I−1によってラットの血清に放出されるエベロリムスの試験結果を示すグラフであり、モル濃度の割合が垂直座標によって表され、時間が分を単位として水平座標によって表される。
【0078】
図3は、実施例14において測定される、ヌ−ドマウスのNCI−460腫瘍の体積の増加傾向を示すグラフである。
【0079】
図4は、実施例14において測定される、ヌ−ドマウスの体重の変動傾向を示すグラフである。
【0080】
図5は、実施例14において測定される、ヌ−ドマウスのNCI−460腫瘍の重量を示す。
【0081】
図6は、実施例15において測定される、ヌ−ドマウスのDU145腫瘍の体積の増加傾向を示すグラフである。
【0082】
図7は、実施例16において測定される、ヌ−ドマウスのヒト腎細胞癌OS−RC−2の体積の増加傾向を示すグラフである。
【0083】
図8は、実施例16において測定される、ヌ−ドマウスの体重の変動傾向を示すグラフである。
【0084】
図9は、SD雄ラットの時間に対する平均血漿濃度をプロットする曲線である。
【0085】
〔実施例〕
本発明は、以下の実施例から当業者によってより具体的に理解されるが、当該実施例は本発明を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【0086】
以下の実施例においては、特に断りのない限り、全ての温度は摂氏温度を指し;全ての出発原料および物質は市販のものであり;また当該市販の出発原料および物質は更なる精製なしに使用される。
【0087】
以下の実施例にて記載される分取液体クロマトグラフィ−(分取HPLC)は、以下の条件下で行われる:
クロマトグラフィ−カラム:Kromasil−C18カラム、10μm、100DAC分取カラム;移動相:47%アセトニトリル−100mmol/Lアンモニウムアセテ−ト水溶液、40分間の定組成溶離;検出波長:254nm;カラム温度:25℃;流速:200ml/分。
【0088】
以下の実施例にて記載される検出液体クロマトグラフィ−(分取HPLC)は、以下の条件下で行われる:
クロマトグラフィ−カラム:Xselect CSH−C18カラム、(4.6mm×250mm、5μm);移動相A:0.1%トリフルオロ酢酸水溶液、B:アセトニトリル、勾配溶出(0→10分、A:B=75:25、10→15分、A:B=75:25→65:35、15→20分、A:B=5:95、20→30分、A:B=5:95);検出波長:280nm;カラム温度:30℃;流速:1ml/分、インジェクション容積:10μl。
【0089】
以下の実施例は、本発明に係る特定の化合物の調製方法をあくまで例示するために使用され、本発明に係る調製方法を限定することを決して意図していない。また、以下の調製の実施例に挙げられていない化合物は、必要に応じて一般常識に鑑みて出発原料が適宜選択されてもよいことおよび反応条件が適宜少し調節されてもよいことのみを除いて、以下の実施例において使用される合成経路および方法と同様のものによって調製され得る。
【0090】
本発明の調製工程の代表的な例および本発明の関連研究例は以下のとおりである:
実施例1:
【0091】
【化29】
【0092】
100mLの三つ口フラスコに、エベロリムス(5.0g、5.2mmol)およびヨ−ド酢酸(1.94g、10.4mmol)を添加し、つづいて20mLのジクロロメタン(DCM)を添加した。固形物が全て溶解するまで混合物を撹拌した。そして、混合物を0〜5℃まで冷却し、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、2.36g、11.4mmol)を添加し、0〜5℃で10〜15分間撹拌した。反応混合物に、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP、0.63g、5.2mmol)を添加した。反応混合物を室温まで温め、16〜24時間撹拌した。反応完了(TLCによってモニタリングされた)後、ブフナ−漏斗を使用することによって不溶性固形物を濾過した。そして、濾液を30〜40℃において減圧下で濃縮して乾燥した。得られたスラリ−を、シリカゲルカラム(n−ヘキサン/酢酸エチル=5:1〜2:1で溶出)で精製し、それぞれエベロリムスモノハロアセテ−トIV−1(2.15g、1.9mmol)およびエベロリムスジハロアセテ−トIV−2(2.60g、2.0mmol)を得た。
【0093】
エベロリムスモノハロアセテ−トIV−1:
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.35 (dt, J = 24.8, 14.8 Hz, 1H), 6.19−6.09 (m, 1H), 5.93 (dd, J = 30.1, 10.5 Hz, 1H), 5.60−5.45 (m, 1H), 5.41 (d, J = 9.9 Hz, 1H), 5.27 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 5.15 (dt, J = 11.6, 5.5 Hz, 1H), 4.34−4.24 (m, 2H), 4.16 (ddd, J = 21.4, 14.1, 6.6 Hz, 2H), 3.91−3.75 (m, 2H), 3.73 (d, J = 7.1 Hz, 2H), 3.67 (dd, J = 14.5, 6.8 Hz, 1H), 3.57 (d, J = 13.5 Hz, 1H), 3.44 (d, J = 10.3 Hz, 4H), 3.40−3.28 (m, 4H), 3.21−3.00 (m, 5H), 2.84 (dd, J = 17.7, 7.0 Hz, 1H), 2.72 (dd, J = 16.4, 5.5 Hz, 2H), 2.58 (dd, J = 16.7, 6.4 Hz, 1H), 2.33 (d, J = 12.9 Hz, 1H), 2.10−1.89 (m, 6H), 1.75 (s, 6H), 1.71−1.57 (m, 8H), 1.54−1.40 (m, 4H), 1.38−1.19 (m, 8H), 1.12 (dd, J = 19.6, 6.8 Hz, 4H), 1.05 (d, J = 6.3 Hz, 4H), 0.99 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 0.95 (d, J = 6.5 Hz, 2H), 0.93−0.82 (m, 4H), 0.71 (dt, J = 16.5, 8.3 Hz, 1H). ESI−MS: [M+Na]+ 1149.58, C55H84INO15
【0094】
エベロリムスジハロアセテ−トIV−2:
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.34 (dt, J = 24.7, 14.8 Hz, 1H), 6.18−6.11 (m, 1H), 5.93 (dd, J = 29.8, 10.2 Hz, 1H), 5.62−5.48 (m, 1H), 5.40 (d, J = 9.9 Hz, 1H), 5.28 (t, J = 7.0 Hz, 1H), 5.15 (dt, J = 12.0, 5.6 Hz, 1H), 4.34−4.20 (m, 2H), 4.16 (ddd, J = 21.3, 12.6, 6.5 Hz, 2H), 3.90−3.78 (m, 2H), 3.75 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 3.70 (d, J = 13.5 Hz, 1H), 3.67 (dd, J = 14.8, 6.3 Hz, 1H), 3.44 (d, J = 10.0 Hz, 4H), 3.40−3.30 (m, 4H), 3.21−2.98 (m, 5H), 2.82 (dd, J = 17.8, 7.2 Hz, 1H), 2.70 (dd, J = 16.5, 5.8 Hz, 2H), 2.60 (dd, J = 16.8, 6.6 Hz, 1H), 2.33 (d, J = 12.8 Hz, 1H), 2.12−1.91 (m, 6H), 1.73 (s, 6H), 1.70−1.58 (m, 8H), 1.55−1.43 (m, 4H), 1.37−1.21 (m, 8H), 1.12 (dd, J = 19.8, 6.8 Hz, 4H), 1.08 (d, J = 6.5 Hz, 4H), 0.98 (d, J = 6.5 Hz, 2H), 0.93 (d, J = 6.5 Hz, 2H), 0.92−0.80 (m, 6H), 0.75 (dt, J = 14.8, 8.0 Hz, 1H). ESI−MS: [M+Na]+ 1317.41, C57H85I2NO16
【0095】
実施例2:
【0096】
【化30】
【0097】
100mLの三つ口フラスコに、エベロリムスモノハロアセテ−トIV−1(1g、0.9mmol)およびグルタチオン(0.55g、1.8mmol)を添加し、つづいて5mLのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を添加した。固形物がN,N−ジメチルホルムアミドに懸濁されるまで混合物を撹拌した。懸濁液にKCO(124.2mg、0.9mmol)を添加し、そして5mLのHOおよび10mLのエタノ−ルを添加した。10分間激しく撹拌すると、反応混合物は透明になった。反応混合物を室温にて一晩撹拌した。化合物IV−1の反応完了をHPLCによってモニタリングし、反応混合物を45〜55℃において減圧下で濃縮して乾燥した。得られたスラリ−を分取HPLCによって精製し、化合物I−1(0.98g、0.75mmol)を得た。
【0098】
化合物I−1:1H NMR (400 MHz, CD3OD+CDCl3) δ 6.49−6.39 (m, 1H), 6.19 (ddd, J = 30.9, 22.1, 11.0 Hz, 3H), 5.55−5.39 (m, 1H), 5.26 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 5.10 (s, 2H), 4.64 (s, 1H), 4.24 (d, J = 24.1 Hz, 3H), 4.08 (d, J = 27.6 Hz, 2H), 3.83 (s, 4H), 3.73−3.51 (m, 3H), 3.50−3.24 (m, 12H), 3.12 (d, J = 26.5 Hz, 7H), 2.93 (s, 1H), 2.79 (d, J = 17.6 Hz, 1H), 2.50 (dd, J = 27.1, 18.3 Hz, 4H), 2.25 (d, J = 13.3 Hz, 2H), 2.15 (s, 2H), 2.05 (s, 4H), 1.93−1.53 (m, 16H), 1.43 (dd, J = 27.1, 14.5 Hz, 5H), 1.29 (s, 2H), 1.25−1.11 (m, 4H), 1.06 (d, J = 4.6 Hz, 4H), 1.02−0.79 (m, 13H), 0.76 (d, J = 11.9 Hz, 2H)。HR−ESI−MS: [M+H]+ 1305.6671, C65H100N4O21S。
【0099】
実施例3:
【0100】
【化31】
【0101】
250mLの三つ口フラスコに、エベロリムスジハロアセテ−トIV−2(1.5g、1.2mmol)およびグルタチオン(1.17g、3.6mmol)を添加し、つづいて10mLのN,N−ジメチルホルムアミドを添加した。固形物がN,N−ジメチルホルムアミドに懸濁されるまで混合物を撹拌した。懸濁液にKCO(248.4mg、1.8mmol)を添加し、そして10mLのHOおよび20mLのエタノ−ルを添加した。15分間激しく撹拌すると、反応混合物は透明になった。反応混合物を室温にて一晩撹拌した。化合物IV−2の反応完了をHPLCによってモニタリングし、反応混合物を45〜55℃において減圧下で濃縮して乾燥した。得られたスラリ−を分取HPLCによって精製し、化合物I−2(0.51g、0.31mmol)を得た。
【0102】
化合物I−2:1H NMR (400 MHz, CD3OD+CDCl3) δ 6.48−6.37 (m, 1H), 6.19 (ddd, J = 29.8, 21.5, 10.0 Hz, 3H), 5.54−5.40 (m, 1H), 5.26 (d, J = 10.1 Hz, 1H), 5.11 (s, 2H), 4.62 (s, 1H), 4.24 (d, J = 23.5 Hz, 3H), 4.10 (d, J = 27.6 Hz, 2H), 3.85 (s, 4H), 3.74−3.55 (m, 3H), 3.52−3.20 (m, 16H), 3.10 (d, J = 25.7 Hz, 7H), 2.92 (s, 1H), 2.81 (d, J = 17.6 Hz, 1H), 2.48 (dd, J = 28.0, 17.8 Hz, 4H), 2.30 (d, J = 13.5 Hz, 2H), 2.17 (s, 2H), 2.04 (s, 4H), 1.97−1.48 (m, 21H), 1.43 (dd, J = 26.8, 14.2 Hz, 5H), 1.30 (s, 2H), 1.27−1.10 (m, 4H), 1.05 (d, J = 4.6 Hz, 4H), 1.01−0.74 (m, 17H), 0.71 (d, J = 12.0 Hz, 2H)。HR−ESI−MS: [M+H]+ 1640.5401, C77H117N7O28S2
【0103】
実施例4:
【0104】
【化32】
【0105】
100mLの三つ口フラスコに、シロリムス(4.0g、4.4mmol)およびヨ−ド酢酸(1.64g、8.8mmol)を添加し、つづいて20mLのジクロロメタンを添加した。固形物が全て溶解するまで混合物を撹拌した。混合された混合物を0〜5℃まで冷却し、ジシクロヘキシルカルボジイミド(2.0g、11.4mmol)を添加した。混合物を0〜5℃で10〜15分間撹拌した。反応混合物に4−ジメチルアミノピリジン(0.54g、4.4mmol)を添加した。当該反応混合物を室温まで温め、16〜24時間撹拌した。シロリムスの反応完了をTLCによってモニタリングし、ブフナ−漏斗で不溶性固形物を濾過した。濾液を30〜40℃において減圧下で濃縮して乾燥した。得られたスラリ−をシリカゲルカラム(n−ヘキサン/酢酸エチル=10:1〜2:1で溶出)で精製し、それぞれシロリムスモノハロアセテ−トIV−3(1.8g、1.7mmol)およびシロリムスジハロアセテ−トIV−4(1.0g、0.8mmol)を得た。
【0106】
シロリムスモノハロアセテ−トIV−3:
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.34 (dt, J = 24.8, 14.8 Hz, 1H), 6.15−6.09 (m, 1H), 5.95 (dd, J = 30.0, 10.2 Hz, 1H), 5.58−5.46 (m, 1H), 5.40 (d, J = 9.9 Hz, 1H), 5.28 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 5.14 (dt, J = 11.6, 5.5 Hz, 1H), 4.33−4.28 (m, 2H), 4.18 (ddd, J = 21.4, 14.1, 6.6 Hz, 2H), 3.68 (dd, J = 14.5, 6.8 Hz, 1H), 3.56 (d, J = 13.5 Hz, 1H), 3.44 (d, J = 10.3 Hz, 4H), 3.40−3.26 (m, 4H), 3.20−3.00 (m, 5H), 2.85 (dd, J = 17.7, 7.0 Hz, 1H), 2.70 (dd, J = 16.4, 5.5 Hz, 2H), 2.57 (dd, J = 16.7, 6.4 Hz, 1H), 2.30 (d, J = 12.9 Hz, 1H), 2.12−1.90 (m, 6H), 1.75 (s, 6H), 1.71−1.58 (m, 8H), 1.55−1.42 (m, 4H), 1.38−1.20 (m, 8H), 1.15 (dd, J = 19.6, 6.8 Hz, 4H), 1.05 (d, J = 6.3 Hz, 4H), 0.98 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 0.95 (d, J = 6.5 Hz, 2H), 0.95−0.85 (m, 4H), 0.70 (dt, J = 16.5, 8.3 Hz, 1H). ESI−MS:[M+H]+ 1083.46, C53H80INO14
【0107】
シロリムスジハロアセテ−トIV−4:
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.33 (dt, J = 24.7, 14.6 Hz, 1H), 6.16−6.11 (m, 1H), 5.98 (dd, J = 25.2, 12.0 Hz, 1H), 5.62−5.49 (m, 1H), 5.38 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 5.26 (t, J = 7.0 Hz, 1H), 5.12 (dt, J = 12.0, 5.5 Hz, 1H), 4.30−4.21 (m, 2H), 4.15 (ddd, J = 20.7, 14.0, 6.5 Hz, 2H), 3.72 (d, J = 13.5 Hz, 1H), 3.68 (dd, J = 14.2, 7.2 Hz, 1H), 3.45 (d, J = 10.3 Hz, 4H), 3.39−3.32 (m, 4H), 3.21−2.99 (m, 5H), 2.83 (dd, J = 18.7, 7.2 Hz, 1H), 2.74 (dd, J = 16.5, 5.6 Hz, 2H), 2.62 (dd, J = 16.8, 6.5 Hz, 1H), 2.35 (d, J = 12.6 Hz, 1H), 2.10−1.95 (m, 6H), 1.77 (s, 6H), 1.70−1.62 (m, 8H), 1.52−1.45 (m, 4H), 1.38−1.23 (m, 8H), 1.15 (dd, J = 19.6, 6.8 Hz, 4H), 1.10 (d, J = 6.2 Hz, 4H), 0.97 (d, J = 6.3 Hz, 2H), 0.95 (d, J = 6.5 Hz, 2H), 0.92−0.82 (m, 6H), 0.73 (dt, J = 16.5, 8.4 Hz, 1H). ESI−MS: [M+H]+ 1251.04, C55H81I2NO15
【0108】
実施例5:
【0109】
【化33】
【0110】
100mLの三つ口フラスコに、シロリムスモノハロアセテ−トIV−3(1.2g、1.1mmol)およびグルタチオン(0.68g、2.2mmol)を添加し、つづいて6mLのN,N−ジメチルホルムアミドを添加した。固形物がN,N−ジメチルホルムアミドに懸濁されるまで混合物を撹拌した。懸濁液にKCO(151.8mg、1.1mmol)を添加し、そして6mLのHOおよび12mLのエタノ−ルを添加した。15分間激しく撹拌すると、反応混合物は透明になった。反応混合物を室温にて一晩撹拌した。化合物IV−3の反応完了をHPLCによってモニタリングし、反応混合物を45〜55℃において減圧下で濃縮して乾燥した。得られたスラリ−を分取HPLCによって精製し、化合物I−3(0.83g、0.75mmol)を得た。
【0111】
化合物I−3:1H NMR (400 MHz, CD3OD+CDCl3) δ 6.48−6.40 (m, 1H), 6.18 (ddd, J = 25.8, 20.5, 10.8 Hz, 3H), 5.56−5.41 (m, 1H), 5.28 (d, J = 12.0 Hz, 1H), 5.17 (s, 2H), 4.65 (s, 1H), 4.20 (d, J = 22.5 Hz, 3H), 4.07 (d, J = 26.0 Hz, 2H), 3.80 (s, 4H), 3.73−3.53 (m, 3H), 3.45−3.22 (m, 12H), 3.13 (d, J = 25.5 Hz, 7H), 2.95 (s, 1H), 2.84 (d, J = 17.8 Hz, 1H), 2.55 (dd, J = 26.0, 18.2 Hz, 4H), 2.26 (d, J = 13.5 Hz, 2H), 2.15 (s, 2H), 2.01 (s, 4H), 1.93−1.55 (m, 14H), 1.47 (dd, J = 27.3, 15.5 Hz, 5H), 1.38 (s, 2H), 1.25−1.13 (m, 4H), 1.07 (d, J = 4.7 Hz, 4H), 1.03−0.78 (m, 12H), 0.76 (d, J = 11.8 Hz, 2H). ESI−MS: [M+H]+ 1261.52, C63H96N4O20S。
【0112】
実施例6:
【0113】
【化34】
【0114】
250mLの三つ口フラスコに、シロリムスジハロアセテ−トIV−4(0.8g、0.64mmol)およびグルタチオン(0.59g、1.92mmol)を添加し、つづいて5mLのN,N−ジメチルホルムアミドを添加した。固形物がN,N−ジメチルホルムアミドに懸濁されるまで混合物を撹拌した。懸濁液にKCO(132.5mg、0.96mmol)を添加し、そして5mLのHOおよび10mLのエタノ−ルを添加した。15分間激しく撹拌すると、反応混合物は透明になった。反応混合物を室温にて一晩撹拌した。化合物IV−4の反応完了をHPLCによってモニタリングした。反応混合物を45〜55℃において減圧下で濃縮して乾燥した。得られたスラリ−を分取HPLCによって精製し、化合物I−4(0.35g、0.22mmol)を得た。
【0115】
化合物I−4:1H NMR (400 MHz, CD3OD+CDCl3) δ 6.46−6.38 (m, 1H), 6.16 (ddd, J = 29.8, 20.1, 11.5 Hz, 3H), 5.55−5.42 (m, 1H), 5.25 (d, J = 10.2 Hz, 1H), 5.12 (s, 2H), 4.63 (s, 1H), 4.23 (d, J = 24.5 Hz, 3H), 4.03 (d, J = 28.2 Hz, 2H), 3.83 (s, 4H), 3.75−3.58 (m, 3H), 3.52−3.26 (m, 14H), 3.16 (d, J = 25.6 Hz, 7H), 2.92 (s, 1H), 2.78 (d, J = 17.8 Hz, 1H), 2.51 (dd, J = 27.1, 18.2 Hz, 4H), 2.23 (d, J = 13.5 Hz, 2H), 2.17 (s, 2H), 2.05 (s, 4H), 1.95−1.49 (m, 20H), 1.42 (dd, J = 27.1, 14.5 Hz, 5H), 1.28 (s, 2H), 1.25−1.17 (m, 4H), 1.10 (d, J = 4.6 Hz, 4H), 1.05−0.79 (m, 18H), 0.78 (d, J = 11.9 Hz, 2H). ESI−MS: [M+H]+ 1609.86, C75H113N7O27S2
【0116】
実施例7:
【0117】
【化35】
【0118】
100mLの三つ口フラスコに、テムシロリムス(1.2g、1.2mmol)およびヨ−ド酢酸(0.67g、3.6mmol)を添加し、つづいて10mLのジクロロメタンを添加した。固形物が全て溶解するまで混合物を撹拌した。混合された混合物を0〜5℃まで冷却し、ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.74g、3.6mmol)を添加し、0〜5℃で10〜15分間撹拌した。反応混合物に、4−ジメチルアミノピリジン(0.15g、1.2mmol)を添加した。反応混合物を室温まで温め、16〜24時間撹拌した。テムシロリムスの反応完了をTLCによってモニタリングし、ブフナ−漏斗によって不溶性固形物を濾過した。濾液を30〜40℃において減圧下で濃縮して乾燥した。得られたスラリ−をシリカゲルカラム(n−ヘキサン/酢酸エチル=10:1〜1:1で溶出)で精製し、それぞれテムシロリムスモノハロアセテ−トIV−5(0.31g、0.25mmol)、テムシロリムスジハロアセテ−トIV−6(0.40g、0.36mmol)およびテムシロリムストリハロアセテ−トIV−7(0.36g、0.23mmol)を得た。
【0119】
テムシロリムスモノハロアセテ−トIV−5:
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.38 (dt, J = 25.1, 14.6 Hz, 1H), 6.16−6.08 (m, 1H), 5.94 (dd, J = 28.9, 10.6 Hz, 1H), 5.62−5.48 (m, 1H), 5.42 (d, J = 9.9 Hz, 1H), 5.29 (t, J = 7.3 Hz, 1H), 5.18 (dt, J = 11.8, 5.5 Hz, 1H), 4.36−4.25 (m, 2H), 4.18 (ddd, J = 20.8, 14.3, 6.8 Hz, 2H), 3.90−3.78 (m, 2H), 3.76 (d, J = 7.4 Hz, 2H), 3.68 (dd, J = 14.6, 6.8 Hz, 1H), 3.59 (d, J = 13.5 Hz, 1H), 3.45 (d, J = 10.3 Hz, 4H), 3.42−3.29 (m, 2H), 3.21−3.06 (m, 7H), 2.86 (dd, J = 17.8, 7.2 Hz, 1H), 2.74 (dd, J = 16.5, 5.8 Hz, 2H), 2.57 (dd, J = 16.6, 6.2 Hz, 1H), 2.30 (d, J = 12.9 Hz, 1H), 2.10−1.91 (m, 6H), 1.76 (s, 6H), 1.72−1.58 (m, 8H), 1.54−1.44 (m, 4H), 1.38−1.20 (m, 8H), 1.14 (dd, J = 19.8, 6.7 Hz, 4H), 1.06 (d, J = 6.5 Hz, 4H), 1.02 (s, 3H), 0.99 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 0.95 (d, J = 6.5 Hz, 2H), 0.93−0.82 (m, 4H), 0.71 (dt, J = 16.7, 8.2 Hz, 1H). ESI−MS: [M+NH4]+ 1215.80, C58H88INO17
【0120】
テムシロリムスジハロアセテ−トIV−6:
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.37 (dt, J = 24.6, 14.8 Hz, 1H), 6.15−6.09 (m, 1H), 5.95 (dd, J = 27.2, 10.6 Hz, 1H), 5.59−5.45 (m, 1H), 5.38 (d, J = 9.9 Hz, 1H), 5.25 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 5.10 (dt, J = 11.3, 5.9 Hz, 1H), 4.38−4.29 (m, 2H), 4.12 (m, 2H), 3.88−3.76 (m, 2H), 3.70 (d, J = 7.1 Hz, 2H), 3.63 (m, 6H), 3.41 (d, J = 10.3 Hz, 4H), 3.38−3.25 (m, 2H), 3.21−3.06 (m, 7H), 2.83 (dd, J = 17.8, 7.0 Hz, 1H), 2.77 (dd, J = 16.3, 5.5 Hz, 2H), 2.55 (dd, J = 16.8, 6.0 Hz, 1H), 2.32 (d, J = 12.7 Hz, 1H), 2.14−1.92 (m, 6H), 1.78 (s, 6H), 1.74−1.58 (m, 8H), 1.55−1.39 (m, 4H), 1.39−1.19 (m, 8H), 1.10(dd, J = 182, 6.8 Hz, 4H), 1.06 (d, J = 6.6 Hz, 4H), 1.02 (s, 3H), 0.98 (d, J = 6.5 Hz, 2H), 0.95 (d, J = 6.5 Hz, 2H), 0.90−0.80 (m, 4H), 0.73 (dt, J = 16.5, 8.2 Hz, 1H). ESI−MS: [M+NH4]+ 1383.60, C60H89I2NO18
【0121】
テムシロリムストリハロアセテ−トIV−7:
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.40 (dt, J = 24.8, 14.2 Hz, 1H), 6.16−6.08 (m, 1H), 5.90 (dd, J = 28.1, 10.3 Hz, 1H), 5.60−5.48 (m, 1H), 5.40 (d, J = 9.9 Hz, 1H), 5.28 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 5.16 (dt, J = 11.6, 5.5 Hz, 1H), 4.35−4.27 (m, 2H), 4.16 (m, 2H), 3.90−3.78 (m, 2H), 3.75 (d, J = 7.1 Hz, 2H), 3.68 (dd, J = 14.6, 6.8 Hz, 2H), 3.59 (d, J = 13.5 Hz, 2H), 3.44 (d, J = 10.3 Hz, 4H), 3.43−3.27 (m, 2H), 3.21−3.05 (m, 7H), 2.85 (dd, J = 17.7, 7.0 Hz, 1H), 2.74 (dd, J = 16.8, 5.5 Hz, 2H), 2.57 (dd, J = 16.7, 6.3 Hz, 1H), 2.30 (d, J = 12.8 Hz, 1H), 2.12−1.90 (m, 6H), 1.76 (s, 6H), 1.73−1.56 (m, 8H), 1.53−1.40 (m, 4H), 1.38−1.20 (m, 8H), 1.14 (dd, J = 19.4, 6.8 Hz, 4H), 1.05 (d, J = 6.3 Hz, 4H), 1.01 (s, 3H), 0.99 (d, J = 6.5 Hz, 2H), 0.93 (d, J = 6.5 Hz, 2H), 0.90−0.81 (m, 4H), 0.70 (dt, J = 16.7, 8.0 Hz, 1H). ESI−MS: [M+NH4]+ 1551.09, C62H90I3NO19
【0122】
実施例8:
【0123】
【化36】
【0124】
50mLの丸底フラスコに、テムシロリムスモノハロアセテ−トIV−5(0.28g、0.23mmol)およびグルタチオン(0.14g、0.46mmol)を添加し、つづいて3mLのN,N−ジメチルホルムアミドを添加した。固形物がN,N−ジメチルホルムアミドに懸濁されるまで混合物を撹拌した。懸濁液にKCO(19.1mg、0.14mmol)を添加し、そして3mLのHOおよび6mLのエタノ−ルを添加した。15分間激しく撹拌すると、反応混合物は透明になった。反応混合物を室温にて一晩撹拌した。化合物IV−5の反応完了をHPLCによってモニタリングした。反応混合物を45〜55℃で減圧下で濃縮して乾燥した。得られたスラリ−を分取HPLCによって精製し、化合物I−5(0.21g、0.15mmol)を得た。
【0125】
化合物I−5:1H NMR (400 MHz, CD3OD+CDCl3) δ 6.47−6.37 (m, 1H), 6.15 (m, 3H), 5.50−5.33 (m, 1H), 5.28 (d, J = 10.2 Hz, 1H), 5.12 (s, 2H), 4.66 (s, 1H), 4.23 (d, J = 24.0 Hz, 3H), 4.12 (d, J = 26.8 Hz, 2H), 3.85 (s, 4H), 3.73−3.50 (m, 3H), 3.49−3.22 (m, 12H), 3.10 (d, J = 26.5 Hz, 7H), 2.90 (s, 1H), 2.79 (d, J = 17.7 Hz, 1H), 2.52 (dd, J = 26.2, 18.0 Hz, 4H), 2.26 (d, J = 13.3 Hz, 2H), 2.14 (s, 2H), 2.08 (s, 4H), 1.95−1.52 (m, 16H), 1.45 (dd, J = 27.1, 14.5 Hz, 5H), 1.27 (s, 2H), 1.23−1.10 (m, 4H), 1.08 (d, J = 4.6 Hz, 4H), 1.05 (s, 3H), 1.01−0.79 (m, 13H), 0.78 (d, J = 11.9 Hz, 2H). HR−ESI−MS: [M+H]+1378.52, C68H104N4O23S。
【0126】
実施例9:
【0127】
【化37】
【0128】
50mLの丸底フラスコに、テムシロリムスジハロアセテ−トIV−6(0.36g、0.26mmol)およびグルタチオン(0.24g、0.78mmol)を添加し、つづいて3mLのN,N−ジメチルホルムアミドを添加した。固形物がN,N−ジメチルホルムアミドに懸濁されるまで混合物を撹拌した。懸濁液にKCO(39.5mg、0.29mmol)を添加し、そして3mLのHOおよび6mLのエタノ−ルを添加した。20分間激しく撹拌すると、反応混合物は透明になった。反応混合物を室温にて一晩撹拌した。化合物IV−6の反応完了をHPLCによってモニタリングした。反応混合物を45〜55℃で減圧下で濃縮して乾燥した。得られた残渣を分取HPLCによって精製し、化合物I−6(0.30g、0.17mmol)を得た。
【0129】
化合物I−6:1H NMR (400 MHz, CD3OD+CDCl3) δ 6.49−6.37 (m, 1H), 6.14 (m, 3H), 5.51−5.35 (m, 1H), 5.27 (d, J = 10.2 Hz, 1H), 5.07 (s, 2H), 4.60 (s, 1H), 4.20 (d, J = 24.3 Hz, 3H), 4.06 (d, J = 27.8 Hz, 2H), 3.85 (s, 4H), 3.73−3.48 (m, 8H), 3.45−3.23 (m, 12H), 3.12 (d, J = 26.5 Hz, 7H), 2.94 (s, 1H), 2.73 (d, J = 17.8 Hz, 1H), 2.54 (dd, J = 27.0, 18.2 Hz, 4H), 2.24 (d, J = 13.2 Hz, 2H), 2.15 (s, 2H), 2.07 (s, 4H), 1.96−1.50 (m, 16H), 1.45 (dd, J = 27.1, 14.5 Hz, 5H), 1.27 (s, 2H), 1.24−1.10 (m, 6H), 1.09 (d, J = 4.7 Hz, 4H), 1.05 (s, 3H), 1.05−0.78 (m, 12H), 0.78 (d, J = 11.8 Hz, 2H). HR−ESI−MS: [M+H]+1725.13, C80H121N7O30S2
【0130】
実施例10:
【0131】
【化38】
【0132】
50mLの丸底フラスコに、テムシロリムストリハロアセテ−トIV−7(0.33g、0.22mmol)およびグルタチオン(0.27g、0.88mmol)を添加し、つづいて3mLのN,N−ジメチルホルムアミドを添加した。固形物がN,N−ジメチルホルムアミドに懸濁されるまで混合物を撹拌した。懸濁液にKCO(60.7mg、0.44mmol)を添加し、そして3mLのHOおよび6mLのエタノ−ルを添加した。30分間激しく撹拌すると、反応混合物は透明になった。反応混合物を室温にて一晩撹拌した。化合物IV−7の反応完了をHPLCによってモニタリングした。反応混合物を45〜55℃で減圧下で濃縮して乾燥した。得られたスラリ−を分取HPLCによって精製し、化合物I−7(0.24g、0.12mmol)を得た。
【0133】
化合物I−7:1H NMR (400 MHz, CD3OD+CDCl3) δ 6.47−6.32 (m, 1H), 6.15 (m, 3H), 5.51−5.35 (m, 1H), 5.21 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 5.06 (s, 2H), 4.57 (s, 1H), 4.23 (d, J = 24.3 Hz, 3H), 4.05 (d, J = 27.8 Hz, 2H), 3.86 (s, 4H), 3.73−3.48 (m, 10H), 3.46−3.25 (m, 18H), 3.12 (d, J = 26.6 Hz, 7H), 2.95 (s, 1H), 2.78 (d, J = 17.1 Hz, 1H), 2.55 (dd, J = 27.3, 18.5 Hz, 4H), 2.22 (d, J = 13.5 Hz, 2H), 2.12 (s, 2H), 2.03 (s, 4H), 1.93−1.53 (m, 20H), 1.48 (dd, J = 27.0, 14.3 Hz, 5H), 1.27 (s, 2H), 1.23−1.14 (m, 8H), 1.09 (d, J = 4.6 Hz, 4H), 1.03 (s, 3H), 1.01−0.78 (m, 12H), 0.76 (d, J = 11.3 Hz, 2H). HR−ESI−MS: [M+H]+2072.30, C92H138N10O37S3
【0134】
以下の実験は、本発明に係る特定の化合物の水溶性ならびにインビボおよびインビトロ活性の検討の方法および結果を含む。以下の実験において挙げられていない化合物は、以下の実験において使用される方法および思想と同一のものを用いて検討され得る。以下の実験は、本発明に係る特定の化合物の検討の方法および結果をあくまで例示するために用いられ、使用される当該化合物に限定するために用いられない。
【0135】
実施例11:水への溶解度の試験
本発明に係る化合物の溶解度は、標準的な実験手法で確認できる。本明細書における実験においては、本発明に係る化合物の水中の溶解プロファイルを測定することができる。
【0136】
溶解度試験に使用される作業手順は化合物I−1およびI−2を例に挙げて簡潔に説明される。
【0137】
25mlのメスフラスコに、25mgのエベロリムスを添加し、アセトニトリルで容量まで希釈した。固形物の全てが溶解するまで混合物を振盪し、アセトニトリル中に1mg/mLのエベロリムス溶液を得た。
【0138】
アセトニトリル中の1mg/mLのエベロリムス溶液を10mlのメスフラスコに添加し、アセトニトリルで2回、10回、100回および1000回希釈し、それぞれ0.5mg/mL、0.1mg/mL、0.01mg/mLおよび0.001mg/mLの濃度のアセトニトリル中のエベロリムス溶液を得た。
【0139】
図1に示されるように)濃度がそれぞれ1mg/mL、0.5mg/mL、0.1mg/mL、0.01mg/mL、0.001mg/mLであるエベロリムス溶液について、HPLCの主ピ−クのピ−ク面積を用いて検量線をプロットし、以下の一次方程式を得た:y=26010x+18.338(R=1)。
【0140】
3つの10mLのメスフラスコに、10mgのエベロリムス、10mgの化合物I−1および10mgの化合物I−2をそれぞれ添加し、純水で容量まで希釈した。3つの混合物のそれぞれを、メスフラスコ中の固形物が溶解しなくなるまで振盪した。HPLCで分析する前に、1mLの各溶液を0.22μmのフィルタ−で濾過した。化合物の溶解度は、得られた主ピ−クのピ−ク面積を用いて検量線から算出した。結果を表1に示す。
【0141】
【表1】
【0142】
表1に示す通り、化合物I−1の水への溶解度はエベロリムスのそれと比較して少なくとも540倍増加している;化合物I−2の水への溶解度は、エベロリムスのそれと比較して少なくとも800倍増加している。したがって、グルタチオンで修飾された化合物の水溶性はエベロリムスのそれよりもかなり高い。
【0143】
同一の検討方法に基づき、シロリムス/テムシロリムスとグルタチオンで修飾された化合物との溶解度の比較を行う。結果を以下の表2に示す。
【0144】
【表2】
【0145】
表2に示す通り、化合物I−3およびI−4の水への溶解度はシロリムスのそれと比較して、それぞれ少なくとも470倍および610倍増加している;化合物I−5、化合物I−6およびI−7の水への溶解度は、テムシロリムスのそれと比較して、それぞれ少なくとも580倍、710倍および830回増加している。
【0146】
結論:本発明に係るグルタチオンで修飾された化合物の水溶性は、修飾される前の親化合物、つまりエベロリムス、シロリムスおよびテムシロリムスのそれと比較して、大きく改善される。したがって、グルタチオンは、ラパマイシン化合物の水溶性の改善において著しい効果を示す。
【0147】
実施例12:インビトロ活性アッセイ
本発明に係る化合物の抗腫瘍活性および毒性は薬理実験の標準的な作業手順によって分析できる。本明細書において行われる実験は、ヒト肝臓癌細胞HepG2、肺癌細胞NCI460、前立腺癌細胞DU145、前立腺癌細胞PC3、およびヒト乳癌細胞MDA−MB−435の増殖に対する、本発明に係る化合物の阻害効果を試験することができる。使用される作業手順は、ヒト肝臓癌細胞HepG2に対する阻害活性アッセイを例に挙げて下記に簡潔に記載される。
【0148】
ヒト肝臓癌細胞HepG2は、下記培地中において増殖した:
増殖培地の調製:下記の物質を添加した、Earle塩(500mL)を用いたBRL最小必須培地:
5mLのBRL MEM非必須アミノ酸(10mM);
5mLのBRLペニシリン−ストレプトマイシン(10000IU/mL、10000μg/mL);
5mLのBRLピルビン酸ナトリウム溶液(1000mM);
5mLのBRL L−グルタミン(200mM);
50mLのBRL仔ウシ血清(高品質)。
【0149】
そして、増殖培地が得られ、使用可能となる。
【0150】
アッセイ用の作業手順は以下の通りである:
1.トリプシン処理された後の細胞を、10細胞/ウェルの濃度で96ウェルプレ−トに播種し、培地において200μLの終容量で増殖させた。細胞をウェルの表面に接着させるために、播種後の96ウェルプレ−トを37℃で24時間静置させる。
【0151】
2.細胞単層を壊さないように、注意深くピペットで培地を除去した。各ウェルに、200μLの新たな培地を添加した。十分な数のウェルからサンプルを回収することを可能とするために、実験を三重で行った。
【0152】
3.試験される本発明に係る化合物を、10μLのリン酸緩衝液(PBS)に溶解し、37℃で48時間インキュベ−トした。
【0153】
4.インキュベ−ションの最後の6時間においては、(試験用のサンプルを回収した日にPBSに添加された)1マイクロキュリ−のTチミジンを含むPBSを10μL添加することにより、1マイクロキュリ−のTチミジン(New England Nuclear thymidine)によって96ウェルプレ−トのそれぞれのウェルの細胞を標識した。そして、96ウェルプレ−トをインキュベ−タ−に戻し、残りの6時間インキュベ−トした。
【0154】
5.細胞単層を壊すことなく、放射性培地をピペットで除去した。そして、50μLのBRL10×トリプシンを各ウェルに添加し、つづいて、10分間または細胞単層が各ウェルの底(または壁)から剥がれるまで37℃でインキュベ−トした。Skatrion96ウェル細胞ハ−ベスタ−を使用して、サンプルをガラスファイバ−ディスケット上に回収した。ガラスファイバ−ディスケット上に沈着した細胞を、Wallac Betaplateカウンタ−にて計測した。インビトロ活性試験の結果を表3および表5に示す。
【0155】
【表3】
【0156】
表3から分かる通り、ヒト肝臓癌細胞HepG2、肺癌細胞NCI460、前立腺癌細胞DU145、前立腺癌細胞PC3、およびヒト乳癌細胞MDA−MB−435の増殖に対する化合物I−1の阻害活性は、全てエベロリムスのそれ以上またはそれと同等である。癌細胞に対する化合物I−2のインビトロ阻害活性はエベロリムスのそれと同等またはそれよりも若干低い。
【0157】
【表4】
【0158】
表4のデ−タから分かる通り、ヒト肝臓癌細胞HepG2、肺癌細胞NCI460、前立腺癌細胞DU145、前立腺癌細胞PC3、およびヒト乳癌細胞MDA−MB−435の増殖に対する化合物I−3の阻害活性は、全てシロリムスのそれ以上またはそれと同等である。癌細胞に対する化合物I−4のインビトロ阻害活性はシロリムスのそれと同等またはそれよりも若干低い。
【0159】
【表5】
【0160】
表5のデ−タから分かる通り、ヒト肝臓癌細胞HepG2、肺癌細胞NCI460、前立腺癌細胞DU145、前立腺癌細胞PC3、およびヒト乳癌細胞MDA−MB−435の増殖に対する化合物I−5およびI−6の阻害活性は、全てテムシロリムスのそれ以上またはそれと同等である。癌細胞に対する化合物I−7のインビトロ阻害活性はテムシロリムスのそれと同等またはそれよりも若干低い。
【0161】
結論:インビトロ活性スクリ−ニング実験は以下のことを示す:大環構造の42位のみで修飾された化合物は、親化合物と同等または若干優れている、癌細胞に対するインビトロ阻害活性を示す;一方、大環構造の42位および31位の両方で修飾された化合物は、親化合物と同等または若干低い、癌細胞に対するインビトロ阻害活性を示す。このような違いは、おそらく、標的に対する化合物の結合能が31位での修飾に影響を受ける結果、癌細胞に対する阻害活性が低下することに起因する。しかしながら、阻害活性は劇的には低下せず、これは31位における水酸基が培養培地へ放出され得ることによる可能性がある。インビトロ活性スクリ−ニング実験の上記結果に基づき、化合物I−1は癌細胞に対する最も高いインビトロ阻害活性を示す。
【0162】
したがって、血清への薬物放出、インビボ活性およびインビボ薬物動態の検討を含む更に詳細な調査を化合物I−1について行った。以下の実施例13〜17は化合物I−1の効果のみを示すが、本発明に開示される内容によれば、必要に応じて一般常識に鑑みて適宜少し調節した同様の検討方法を用いることにより、本明細書において挙げられていない本発明に係る他の化合物も化合物I−1の試験結果と同様の結果を示すであろうことを当業者は合理的に予想する。
【0163】
実施例13:プロドラッグによる血清への薬物放出の試験
ラパマイシンのプロドラッグとしての本発明に係る化合物の効果は、薬理実験の標準的な作業手順によって確認することができる。使用された作業手順および得られた結果は、ラットの血清における化合物I−1のエベロリムス放出の試験を例に挙げて以下に簡潔に説明される。
【0164】
1mg/mLの濃度の化合物I−1の10mL水溶液を使用のために調製した。
【0165】
0.10mol/Lの濃度の10mLのZnCl溶液を使用のために調製した。
【0166】
ラットの眼動脈からの1.5mLの血液を1.5mLの遠心管に注射し、12000rad/minで10分間遠心した。300μlの上清(血清)をピペットで1.5mLの遠心管に取った。血清の7つのサンプルを同一の方法で使用のために調製した。
【0167】
化合物I−1の水溶液100μlを、血清で満たした遠心管No.1〜6のそれぞれに添加した。ブランク対照として、100μlの水を遠心管No.7に添加した。そして、遠心菅をインキュベ−タ−にて37℃でインキュベ−トした。
【0168】
300μlのアセトニトリルおよび0.1mol/Lの300μlのZnCl溶液を遠心管No.1〜6に、それぞれ10分、0.5時間、1時間、2時間、3時間、および4時間において添加した。遠心管を5分間均一にボルテックスし、それにより化合物に対する血清中の酵素の作用が終了した。300μlのアセトニトリルおよび0.1Mの300μlのZnCl溶液を4時間にて遠心管No.7に添加し、そして5分間均一にボルテックスした。
【0169】
遠心管No.1〜7のそれぞれを15分間、12000rad/分で遠心した。血清内のタンパク質を遠心によって除去した。各遠心管から500μlの上清をHPLC用に取り、それによって、それぞれ10分、0.5時間、1時間、2時間、3時間および4時間において上清の中のエベロリムスおよび化合物I−1の量を測定した。試験結果を図2に示した。
【0170】
結論:化合物I−1はラットの血清において徐々にエベロリムスを放出し、3時間において実質的に完全に放出するできる。化合物I−1はラットにおけるエベロリムスの作用時間を効果的に延長することができる。
【0171】
実施例14:ヌ−ドマウスの腫瘍に対する化合物I−1のインビボ阻害活性アッセイ
ヌ−ドマウスにおける本発明に係る化合物のインビボ抗腫瘍活性は、薬理実験の標準的な作業手順で確認できる。本明細書における実験は、動物体内の癌細胞の増殖に対する化合物の阻害効果を実証することができる。使用される作業手順および得られる結果は、ヌ−ドマウスの腋窩に播種されたヒト肺癌細胞NCI−H460に対する阻害活性試験を例に挙げて簡潔に説明される。実験方法は以下のとおりである:
ヌ−ドマウスの腋窩に播種された急速増殖期のNCI−H460(第3世代)腫瘍を1mm×1mm×1mmの大きさの腫瘍塊にカットし、そして無菌条件の套管針を使用してヌ−ドマウスの右肢に皮下投与した。腫瘍が150〜200mmに成長した時に、マウスをグル−プに分け、そして4週間、化合物を投与した。腫瘍の大径(a)および小径(b)を週に2回または3回測定した。腫瘍容積(TV)および相対的腫瘍増殖速度(T/C)を算出した。腫瘍容積を算出する式は以下のとおりである:TV=1/2×a×b。相対的腫瘍増殖速度を算出する式は、T/C=TRTC/CRTV(TRTC:処理群における平均相対的腫瘍容積;CRTV:ビヒクル対照群の平均相対的腫瘍容積)。28日目において腫瘍を取り除いて秤量し、下記式で腫瘍抑制率を算出した:(対照の腫瘍重量−実験群の腫瘍重量)/対照の腫瘍重量×100%。
【0172】
グル−プ分け方法:腫瘍の増殖の規則性および投与法により腫瘍が平均して195mm成長した時に、マウスを1グル−プあたり6匹のマウスの3グル−プに分けた。投与経路:胃内投与。
【0173】
G1:対照(ビヒクル、qw 4×、iv)
G2:陽性の薬剤グル−プ:エベロリムス(5mg/kg、qw 4×、iv)
G3:化合物I−1(6.8mg/kg、qw 4×、iv)(化合物I−1およびエベロリムスを等モル投与量(つまりエベロリムスの5mgに相当する化合物I−1の6.8mg)で投与した)。
【0174】
試験結果を表6〜8および図3〜5に示す。
【0175】
1.腫瘍容積の変動
【0176】
【表6】
【0177】
表6のデ−タおよび図3に示すヌ−ドマウスの腫瘍容積の増加曲線から分かる通り、28日目において、化合物I−1は、35%のT/C値(40%未満)でヌ−ドマウスのNCI−H460に対して顕著な阻害効果を示す;一方、エベロリムスの等モル量はヌ−ドマウスのNCI−H460に対して42%のT/C値(40%より高い)を示す。したがって、化合物I−1グル−プの腫瘍に対する阻害効果はエベロリムスグル−プのそれよりも優れている。
【0178】
2.ヌ−ドマウスの体重の変動
【0179】
【表7】
【0180】
体重の低下は、動物に対する薬剤の中毒作用および副作用を間接的に示す。表7のデ−タおよび図4に示すヌ−ドマウスの体重の変動傾向から、以下のことが分かる。すなわち、化合物I−1グル−プ(グル−プG3)の体重の増加は、対照および陽性の薬剤(エベロリムス)グル−プ(グル−プG1およびG2)のそれよりも大きく、また、陽性の薬剤(エベロリムス)グル−プの体重の増加は対照のそれよりも小さい。したがって、化合物I−1のインビボでの中毒作用および副作用はエベロリムスのそれよりも著しく低い。
【0181】
3.腫瘍重量および腫瘍抑制率
【0182】
【表8】
【0183】
表8のデ−タならびに図5に示すヌ−ドラットの腫瘍重量および腫瘍抑制率は、ヌ−ドラットにおける化合物I−1の腫瘍抑制率がエベロリムスのそれよりも著しく優れていることを示す。
【0184】
結論:実験の結果、NCI−H460を播種されたヌ−ドマウスモデルのデ−タは以下のことを示す:化合物I−1グル−プは40%未満(35%)のT/C値および60%より高い(68%)腫瘍抑制率を示す有効量グル−プであり、NCI−H460細胞の投与により形成された腫瘍に対する良好な阻害効果を示す;陽性の薬剤(エベロリムス)グル−プは、40%より高い(42%)T/C値および60%未満(56%)の腫瘍抑制率を示す。NCI−H460細胞に対する化合物I−1のインビボ阻害活性は、エベロリムスのそれよりも著しく優れている;また、化合物I−1グル−プ(グル−プG3)の体重の増加は、陽性の薬剤(エベロリムス)グル−プ(グル−プG2)のそれよりも著しく大きい。化合物I−1の動物体に対する中毒作用および副作用はエベロリムスのそれよりも著しく低い。
【0185】
実施例15:胃内投与および注射投与による化合物I−1のインビボ腫瘍阻害効果の比較検討
ヌ−ドマウスにおける本発明に係る化合物の抗腫瘍活性は、薬理実験の標準的な作業手順で確認できる。このような実験は、動物体内の癌細胞の増殖に対する本発明に係る化合物の阻害効果を実証することができる。
【0186】
ヌ−ドマウスの腋窩に播種された急速増殖期のDU145(第3世代)腫瘍を1mm×1mm×1mmの大きさの腫瘍塊にカットし、そして無菌条件の套管針を使用してヌ−ドマウスの右肢に皮下投与した。腫瘍が150〜200mmに成長した時に、マウスをランダムに3グル−プに分け、そして4週間、化合物を投与した。腫瘍の大径(a)および小径(b)を週2回または3回測定した。腫瘍容積(TV)を下記式によって算出した:TV=1/2×a×b。28日目において腫瘍を取り除いて秤量し、下記式を用いて腫瘍抑制率を算出した:(対照の腫瘍重量−実験群の腫瘍重量)/対照の腫瘍重量×100%。
【0187】
腫瘍の増殖の規則性および投与法により腫瘍が平均して185−200mmに増殖した時に、ヌ−ドマウスを1グル−プあたり4匹のマウスの3グル−プに分類した。
【0188】
グル−プ1:陽性の薬剤グル−プ:エベロリムス(5mg/kg、qw、4w、3×/w)投与経路:胃内投与;
グル−プ2:化合物I−1(3.4mg/kg、qw、4w、3×/w)(エベロリムスの2.5mgに相当する化合物I−1の3.4mg);投与経路:尾静脈注射;
グル−プ3:化合物I−1(1.7mg/kg、qw、4w、3×/w)(エベロリムスの1.25mgに相当する化合物I−1の1.7mg);投与経路:尾静脈注射。
【0189】
試験結果を表9〜10および図6に示す。
【0190】
1.腫瘍容積の変動
【0191】
【表9】
【0192】
上記表9のデ−タおよび図6に示す腫瘍容積の増加傾向から分かる通り、試験の最後で、エベロリムスの投与量の4分の1に相当する投与量での化合物I−1の尾静脈注射投与により、エベロリムスの胃内投与と実質的に同一の腫瘍阻害効果を実現することができ;エベロリムスの投与量の半分に相当する投与量での化合物I−1の尾静脈注射投与は、エベロリムスの胃内投与よりも著しく優れた腫瘍阻害効果を実現することができる。
【0193】
2.ヌ−ドマウスの体重の変動
【0194】
【表10】
【0195】
体重の低下は薬剤の動物への中毒作用および副作用を間接的に示す。表10のデ−タから、以下のこと分かる:注射投与グル−プ(グル−プG2およびG3)の体重の増加傾向は、胃内投与グル−プ(グル−プG1)のそれよりも大きい。したがって、化合物I−1の注射投与は明らかな中毒作用および副作用をもたらさない。
【0196】
結論:化合物I−1の水溶性は著しく改善される。化合物I−1は生理食塩水に溶解することができ、得られる溶液は安定である。化合物のインビボのバイオアベイラビリティは注射投与により著しく向上され得る。試験結果によれば、エベロリムスの投与量の4分の1に相当する投与量での化合物I−1の注射投与は、エベロリムスの胃内投与と同一の腫瘍阻害効果を実現することができる。
【0197】
実施例16:ヌ−ドマウスにおけるヒト腎細胞癌OS−RC−2に対する化合物I−1のインビボ阻害活性アッセイ
ヌ−ドマウスの腋窩に播種された急速増殖期のOS−RC−2(第3〜第10世代)腫瘍を1mm×1mm×1mmの大きさの腫瘍塊にカットし、そして無菌条件の套管針を使用してヌ−ドマウスの右肢に皮下投与した。腫瘍が167mmに成長した時に、マウスをランダムにグル−プ分けし、化合物を投与した。腫瘍の大径(a)および小径(b)を週2回または3回測定した。腫瘍容積(TV)を下記式によって算出した:TV=1/2×a×b。実験を終了し、腫瘍を取り除いて秤量した。腫瘍抑制率を算出した。
【0198】
グル−プ分け方法:腫瘍が平均して167mmに増殖した時に、マウスを1グル−プあたり6匹のマウスの7グル−プに分けた。
【0199】
1)G1:対照(ビヒクル);
2)G2:エベロリムス(2mg/kg ig 3×/qw);
3)G3:エベロリムス(6mg/kg ig 3×/qw);
4)G4:化合物I−1(8.12mg/kg ig 3×/qw)(化合物I−1およびグル−プG3のエベロリムスを等モル量、つまりエベロリムスの6mgに相当する化合物I−1の8.12mgで投与した);
5)G5:化合物I−1(2.0mg/kg iv 3×/qw)(エベロリムスの1.5mgに相当する化合物I−1の2.0mg);
6)G6:化合物I−1(8.12mg/kg iv 3×/qw)(エベロリムスの6mgに相当する化合物I−1の8.12mg)
7)G7:化合物I−1(32.7mg/kg iv 1×/qw)エベロリムスの24mgに相当する化合物I−1の32.74mg)。
【0200】
試験結果を表11、12ならびに図7および8に示す。
【0201】
1.ヌ−ドマウスにおける腫瘍重量および腫瘍抑制率
【0202】
【表11】
【0203】
図7に示すヌ−ドマウスの腫瘍容積の増加傾向から分かる通り、エベロリムスを週3回経口投与したヌ−ドマウス(グル−プG2およびG3)については、6mg/Kgの高投与量グル−プも2mg/Kgの低投与量グル−プも、32日後、ヌ−ドマウスにおける腫瘍容積の増加を効果的に阻害できなかった;一方、注射投与による化合物I−1グル−プ(グル−プG5、G6およびG7)については、週3回の低量投与(2.0mg/Kg)または週1回の高量投与(32.7mg/Kg)により、良好な腫瘍阻害効果を示した。
【0204】
表11に示すヌ−ドマウスの腫瘍の最終重量および算出された腫瘍抑制率から、以下のことがさらに分かる。すなわち、化合物I−1の低量注射投与または高量注射投与(グル−プG5、G6およびG7)は、それぞれ57.1%、59.9%および60.6%の腫瘍抑制率の良好な腫瘍阻害効果を示し、これの腫瘍抑制率は全てエベロリムスグル−プ(グル−プG2およびG3)のそれよりも著しく優れている。その他においては、週1回の化合物I−1の高量注射投与は、最大60.6%の腫瘍抑制率で最良の効果を示した。一方、エベロリムスと等モル量の化合物I−1を、同一の投与経路を介して投与しても、化合物I−1の腫瘍抑制率はエベロリムスのそれよりも著しく高い(G4とG3を比較して、腫瘍抑制率はそれぞれ55.6%および41.1%であった)。
【0205】
2.ヌ−ドマウスの体重の変動
【0206】
【表12】
【0207】
体重は、薬剤の毒性を間接的に反映する。表12および図8のデ−タは、ブランク対照のヌ−ドマウスの体重が最大33.0%の減少率で大きく低下したことを示す。このような状況は、おそらく腫瘍の成長により引き起こされた栄養欠乏によるものである。また、薬物治療グル−プにおける体重の減少率は、ブランク対照におけるそれよりも低い。その他においては、高投与量化合物I−1グル−プ(グル−プG6およびG7)は、それぞれ11.7%および10.7%の体重減少率を示し;一方、経口投与によるエベロリムスグル−プ(グル−プG2およびG3)はそれぞれ17.4%および11.7%の体重減少率を示す。経口投与によるエベロリムスグル−プ同士を比較すると、高投与量化合物I−1グル−プは顕著な毒性を示さない。したがって、マウスは、注射投与による高投与量の化合物I−1に対して良好な耐性を示す。また、顕著な中毒作用は見られなかった。
【0208】
結論:週1回の化合物I−1の高量投与によって、ヌ−ドマウスの腎細胞癌の増殖は最大60.6%の腫瘍抑制率で効果的に阻害され得る;一方、週3回6mg/kgの経口投与によるエベロリムスグル−プはヌ−ドマウスにおいて41.1%の腫瘍抑制率のみを示した。週1回の注射による投与は、臨床において進行性癌患者の治療的コンプライアンスを高める。また、マウスは、注射投与による高投与量の化合物I−1に対して比較的良好な耐性を示す。顕著な中毒作用は見られなかった。
【0209】
実施例17:ラットにおける化合物I−1のインビボ薬物動態の検討
ラットにおける化合物I−1のインビボ薬物動態的特徴をさらに検討するために、化合物I−1を静脈注射を介してSDラットに投与した。ラット内で放出されたエベロリムスのインビボ薬物動態的特徴およびバイオアベイラビリティを測定し、経口投与でのエベロリムスの薬物動態的特徴と比較した。投与経路およびサンプリング頻度を以下の表13に示す。
【0210】
【表13】
【0211】
投与後2時間における動物の健康状態を観察した。そして、最後のサンプルが回収されるまで、血液がサンプリングされる度に動物を観察した。血液サンプルの試験結果を表14〜16および図9に示す。
【0212】
【表14】
【0213】
【表15】
【0214】
NA:該当なし
【0215】
【表16】
【0216】
上記表14〜表16および血漿濃度・時間曲線(図9)によれば、10mg/Kgのエベロリムスを経口投与したラットは、比較的低い平均血漿濃度を示す。しかし、エベロリムスの経口投与量の5分の1に相当する投与量(2mg/Kg)の化合物I−1を注射されたラットについては、ラット内で放出されたエベロリムスの平均血漿濃度は、経口投与されたエベロリムスにより放出されたそれよりもかなり高かった。2.72mg/Kgの化合物I−1(エベロリムスの2mg/Kgに相当)を注射したラットにおいて放出されたエベロリムスの血漿濃度をプロットした曲線(AUC)下時間に対する面積は2500であり;一方、エベロリムスを経口投与されたラットにおけるエベロリムスの血漿濃度をプロットした曲線下時間に対する面積は450にすぎない。したがって、経口投与によってエベロリムスの投与量の5分の1の投与量の化合物I−1を注射した場合、注射された化合物I−1によってインビボに放出されたエベロリムスのバイオアベイラビリティは、経口投与されたエベロリムスによるそれの5〜6倍である。
【0217】
結論:経口投与されたエベロリムスのバイオアベイラビリティは非常に低いが、注射によって投与された化合物I−1は多量のエベロリムスを完全に放出することができる。したがって、エベロリムスのバイオアベイラビリティが高くないという問題は、解決されている。
【0218】
要約すれば、上記の検討内容から、以下のことが明らかとなる:
1)例えば低い水溶性およびインビボでの不安定な化学構造等のラパマイシンの特徴は、その低いバイオアベイラビリティの主な理由である。したがって、ラパマイシンの水溶性の改善およびインビボでの構造的安定性の向上は、そのバイオアベイラビリティの改善において要点である。グルタチオンで修飾されたラパマイシン化合物は、その水溶性を著しく改善することができる。修飾後の化合物は、安定した構造で生理食塩水によく溶解することができ、したがって注射に使用され得る。結果として、インビボでのラパマイシン化合物のバイオアベイラビリティは著しく改善している。
【0219】
2)修飾後の化合物は、ラットの血清において元の薬剤を徐々に放出することができる。したがって、これらは、インビボでの持続的な放出効果を示し、薬剤の作用時間を延長することができる。
【0220】
3)動物におけるインビボおよびインビトロ試験から、修飾後の化合物が、元の化合物と比較してより高い腫瘍阻害活性およびより低い毒性を示すことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0221】
図1図1は、実施例11から得られる、エベロリムスの濃度に対するピ−ク面積の検量線であり、上記ピ−ク面積が垂直座標によって表され、上記濃度がmg/mLを単位として水平座標によって表される。
図2図2は、実施例13において測定される、化合物I−1によってラットの血清に放出されるエベロリムスの試験結果を示すグラフであり、モル濃度の割合が垂直座標によって表され、時間が分を単位として水平座標によって表される。
図3図3は、実施例14において測定される、ヌ−ドマウスのNCI−460腫瘍の体積の増加傾向を示すグラフである。
図4図4は、実施例14において測定される、ヌ−ドマウスの体重の変動傾向を示すグラフである。
図5図5は、実施例14において測定される、ヌ−ドマウスのNCI−460腫瘍の重量を示す。
図6図6は、実施例15において測定される、ヌ−ドマウスのDU145腫瘍の体積の増加傾向を示すグラフである。
図7図7は、実施例16において測定される、ヌ−ドマウスのヒト腎細胞癌OS−RC−2の体積の増加傾向を示すグラフである。
図8図8は、実施例16において測定される、ヌ−ドマウスの体重の変動傾向を示すグラフである。
図9図9は、SD雄ラットの時間に対する平均血漿濃度をプロットする曲線である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9