特許第6770018号(P6770018)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6770018
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】設定装置及び設定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/409 20060101AFI20201005BHJP
【FI】
   G05B19/409 C
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-76667(P2018-76667)
(22)【出願日】2018年4月12日
(65)【公開番号】特開2019-185467(P2019-185467A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2019年9月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】相馬 大作
【審査官】 石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−207514(JP,A)
【文献】 特開2003−295916(JP,A)
【文献】 特開2017−215675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18−19/416
G05B 19/42−19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の制御に関する少なくとも1以上のパラメータについて第1設定値の指定を受け付ける第1受付部と、
前記第1設定値の受付後に、前記パラメータについて第2設定値の指定を受け付ける第2受付部と、
前記第1設定値及び前記第2設定値の何れを選択するかを決定するための、前記工作機械による加工の目的毎に設けられた選択条件の指定を受け付ける第3受付部と、
前記第3受付部が指定を受け付けた前記選択条件に基づいて、前記第1設定値及び前記第2設定値の何れか一方を、前記パラメータに適用する設定値として選択する選択部と、
を備える設定装置。
【請求項2】
記第1設定値は、前記選択条件に対応する加工の目的に応じて予め指定される、
請求項1に記載の設定装置。
【請求項3】
前記第1設定値の値と、前記第2設定値の値と、前記選択部が前記第1設定値及び前記第2設定値の何れを選択したのかを示す情報の少なくとも何れかを提示する提示部を更に備え、
前記選択部は、前記提示における提示先からの指定に基づいて、前記第1設定値及び前記第2設定値の何れか一方を前記パラメータに適用する設定値として再度選択する、
請求項1又は2に記載の設定装置。
【請求項4】
前記選択部により選択された前記第1設定値及び前記第2設定値の何れか一方を前記パラメータに適用し、適用した設定値に基づいて、前記工作機械の制御を実行する工作機械制御部を更に備える、
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の設定装置。
【請求項5】
前記選択条件は、前記工作機械による加工の目的毎に設けられると共に、前記加工の目的に応じて前記第1設定値及び前記第2設定値の選択基準がそれぞれ異なる条件である、
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の設定装置。
【請求項6】
前記選択条件は、前記工作機械の加工における、加工精度に関する条件又は加工時間に関する条件の少なくとも何れかを含む、
請求項1から請求項5までの何れか1項に記載の設定装置。
【請求項7】
前記第1設定値は、前記パラメータに適用された設定値の、平均値、最大値、及び最小値の少なくとも何れかを含む、
請求項1から請求項6までの何れか1項に記載の設定装置。
【請求項8】
前記パラメータは、前記工作機械の制御における、位置に係る設定、速度に係る設定、加速度に係る設定、加加速度に係る設定、トルクに係る設定、及びサーボモータ制御に係る設定の少なくとも何れかを含む、
請求項1から請求項7までの何れか1項に記載の設定装置。
【請求項9】
工作機械の制御に関する少なくとも1以上のパラメータについて第1設定値の指定を受け付ける第1受付機能と、
前記第1設定値の受付後に、前記パラメータについて第2設定値の指定を受け付ける第2受付機能と、
前記第1設定値及び前記第2設定値の何れを選択するかを決定するための、前記工作機械による加工の目的毎に設けられた選択条件の指定を受け付ける第3受付機能と、
前記第3受付機能が指定を受け付けた前記選択条件に基づいて、前記第1設定値及び前記第2設定値の何れか一方を、前記パラメータに適用する設定値として選択する選択機能と、
をコンピュータに実現する設定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の制御に関する設定を行うための、設定装置及び設定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、数値制御(CNC:Computerized Numerical Control)装置が、工作機械を制御することにより、加工プログラムに基づいた加工が実現される。数値制御装置による制御では、様々なパラメータ(例えば、インポジション幅やフィードフォワード係数等のパラメータ)毎に設定値が設けられ、この設定値に基づいた制御が行われる。
【0003】
このようなパラメータの設定に関する技術の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示の技術では、基準となるパラメータの設定値を、ユーザの指定に応じた設定値に置き換える。これにより、パラメータの設定値を、ユーザの所望の値に変更することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3827951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ユーザが所望の値が、必ずしも適切な値とは限らない。例えば、加工条件(例えば、加工のサイクルタイムを短縮したい等の条件)によっては、基準となるパラメータの設定値のままとしたほうが、適切な場合もあり得る。それにも関わらず、特許文献1に開示の技術のような一般的な技術では、ユーザの指定に応じて、一律に設定値を置き換えるのみであった。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、工作機械の制御に関する設定において、より適切に設定を行うための、設定装置及び設定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る設定装置(例えば、後述の数値制御装置1)は、工作機械の制御に関する少なくとも1以上のパラメータについて第1設定値の指定を受け付ける第1受付部(例えば、後述の指定受付部112)と、前記第1設定値の受付後に、前記パラメータについて第2設定値の指定を受け付ける第2受付部(例えば、後述の指定受付部112)と、前記第1設定値及び前記第2設定値の何れを選択するかを決定するための選択条件の指定を受け付ける第3受付部(例えば、後述の指定受付部112)と、前記第3受付部が指定を受け付けた前記選択条件に基づいて、前記第1設定値及び前記第2設定値の何れか一方を、前記パラメータに適用する設定値として選択する選択部(例えば、後述の適用値選択部113)と、を備える。
【0008】
(2) 上記(1)に記載の設定装置を、前記選択条件は、前記工作機械による加工の目的毎に設けられ、前記第1設定値は、前記選択条件に対応する加工の目的に応じて予め指定される、ようにしてもよい。
【0009】
(3) 上記(1)又は(2)に記載の設定装置を、前記第1設定値の値と、前記第2設定値の値と、前記選択部が前記第1設定値及び前記第2設定値の何れを選択したのかを示す情報の少なくとも何れか提示する提示部(例えば、後述の提示部111)を更に備え、前記選択部は、前記提示における提示先からの指定に基づいて、前記第1設定値及び前記第2設定値の何れか一方を前記パラメータに適用する設定値として再度選択する、ようにしてもよい。
【0010】
(4) 上記(1)から(3)までの何れかに記載の設定装置を、前記選択部により選択された前記第1設定値及び前記第2設定値の何れか一方を前記パラメータに適用し、適用した設定値に基づいて、前記工作機械の制御を実行する工作機械制御部(例えば、後述の工作機械制御部114)を更に備える、ようにしてもよい。
【0011】
(5) 上記(1)から(4)までの何れかに記載の設定装置を、前記選択条件は、前記工作機械による加工の目的毎に設けられると共に、前記加工の目的に応じて前記第1設定値及び前記第2設定値の選択基準がそれぞれ異なる条件である、ようにしてもよい。
【0012】
(6) 上記(1)から(5)までの何れかに記載の設定装置を、前記選択条件は、前記工作機械の加工における、加工精度に関する条件又は加工時間に関する条件の少なくとも何れかを含む、ようにしてもよい。
【0013】
(7) 上記(1)から(6)までの何れかに記載の設定装置を、前記第1設定値は、前記パラメータに適用された設定値の、平均値、最大値、及び最小値の少なくとも何れかを含む、ようにしてもよい。
【0014】
(8) 上記(1)から(7)までの何れかに記載の設定装置を、前記パラメータは、前記工作機械の制御における、位置に係る設定、速度に係る設定、加速度に係る設定、加加速度に係る設定、トルクに係る設定、及びサーボモータ制御に係る設定の少なくとも何れかを含む、ようにしてもよい。
【0015】
(9) 本発明に係る設定プログラムは、工作機械の制御に関する少なくとも1以上のパラメータについて第1設定値の指定を受け付ける第1受付機能と、前記第1設定値の受付後に、前記パラメータについて第2設定値の指定を受け付ける第2受付機能と、前記第1設定値及び前記第2設定値の何れを選択するかを決定するための選択条件の指定を受け付ける第3受付機能と、前記第3受付機能が指定を受け付けた前記選択条件に基づいて、前記第1設定値及び前記第2設定値の何れか一方を、前記パラメータに適用する設定値として選択する選択機能と、をコンピュータ(例えば、後述の数値制御装置1)に実現する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、工作機械の制御に関する設定において、より適切に設定を行うための、設定装置及び設定プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に含まれる数値制御装置及び工作機械等の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に含まれる数値制御装置の機能的構成のうち、設定値選択処理を実行するための機能的構成を示す機能ブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に含まれる数値制御装置が行う設定値選択処理における、選択条件の一例を示すテーブルである。
図4】本発明の一実施形態に含まれる数値制御装置が行う設定値選択処理における、選択条件の他の一例を示すテーブルである。
図5】本発明の一実施形態に含まれる数値制御装置が行う設定値選択処理における、一連の動作を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態に含まれる数値制御装置が行う設定値選択処理における、設定用画面の一例を示す模式図である。
図7】本発明の一実施形態に含まれる数値制御装置が行う設定値選択処理における、設定用画面の他の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
本実施形態では、工作機械の制御に関する少なくとも1以上のパラメータについて推奨設定値を記憶しておく。また、本実施形態では、所定のユーザインタフェースを表示し、このユーザインタフェースにて工作機械のユーザが所望するユーザ設定値を受け付ける。更に、本実施形態では、このユーザインタフェースにて、何れの設定値を選択するかを決定するための選択条件の指定を更に受け付ける。
【0019】
そして、本実施形態では、指定された選択条件に基づいて、推奨設定値と、ユーザ設定値の何れかを選択し、選択した設定値に基づいて工作機械を制御する。
これにより、本実施形態では、選択条件に応じた適切なパラメータ設定値を、簡便に選択することができる。
【0020】
<全体構成>
図1に示すように、本実施形態は、数値制御装置1及び工作機械2を含む。
数値制御装置1は、各種パラメータの設定値に基づいて、工作機械2を制御することにより、加工プログラムに応じた加工を実現する装置である。
工作機械2は、数値制御装置1の制御に基づいて、切削加工やレーザビーム加工等の加工を実行する装置である。
数値制御装置1及び工作機械2により行われる加工の内容や加工対象物となるワークについて特に制限はない。すなわち、本実施形態は、任意の加工を行う、任意の数値制御装置1及び任意の工作機械2に対して適用することができる。
【0021】
数値制御装置1及び工作機械2は、所定の信号を送受可能に接続される。例えば、モータを制御するために数値制御装置1から工作機械2に対して出力される電流指令値(トルク指令値)が送受可能に接続される。他にも、例えば、フィードバック制御を行うために工作機械2から数値制御装置1に対して出力されるフィードバック信号が送受可能に接続される。
なお、本実施形態では、説明の一例として、工作機械2は、各種加工を行う加工機であることを想定するが、これに限定されない。工作機械2は、加工機以外にも、直接的に加工は行わない搬送機構や移動機構、あるいはロボット等の産業機械を広く含むものである。
【0022】
<ハードウェア構成>
次に、数値制御装置1及び工作機械2が備えるハードウェア構成について詳細に説明をする。
数値制御装置1は、CPU11、ROM12、RAM13、CMOSメモリ14、インタフェース15、PMC16、I/Oユニット17、インタフェース18、インタフェース19、データ通信バス20、軸制御回路30〜34、サーボアンプ40〜44、スピンドル制御回路35、スピンドルアンプ45、表示器/MDIユニット60、及び操作盤70を備える。
【0023】
また、工作機械2は、サーボモータ50〜54、スピンドルモータ55、及びパルスエンコーダ56を備える。なお、これらモータに接続されている工具や、ワークが搭載されたテーブル等については、詳細な説明を省略する。
【0024】
CPU11は数値制御装置1を全体的に制御する制御部として機能するプロセッサである。ROM12は、各種のプログラムを格納する記憶装置である。
ここで、ROM12に格納された各種のプログラムは、一般的な数値制御装置としての機能を実現するためのプログラムと、本実施形態における設定値選択処理を実現するためのプログラムとを少なくとも含む。また、ROM12には、一般的な数値制御装置としての機能を実現するためのプログラムの一部として、加工プログラムの作成及び編集のために必要とされる編集モードの処理や自動運転のための処理を実施するための各種システムプログラムも書き込まれている。
【0025】
CPU11は、ROM12に格納されたプログラムを、データ通信バス20を介して読み出し、読み出したプログラムをRAM13に展開させながら、読み出したプログラムに基づいた演算を行なう。そして、CPU11は、演算結果に基づいて数値制御装置1に含まれるハードウェアを制御することにより、図2等を参照して後述する本実施形態の機能を実現する。つまり、本実施形態は、ハードウェアとソフトウェアが協働することにより実現することができる。
【0026】
RAM13には、CPU11が行う演算処理における一時的な計算データや表示データ、及びインタフェース15や表示器/MDIユニット60を介してユーザが入力した各種データが格納される。ここで、インタフェース15や表示器/MDIユニット60を介してユーザが入力した各種データとは、例えば、ユーザ設定値等の種々の情報である。
【0027】
CMOSメモリ14は、図示しないバッテリでバックアップされ、数値制御装置1の電源がオフされても記憶状態が保持される不揮発性メモリとして構成される。CMOSメモリ14中には、インタフェース15を介して読み込まれた加工プログラムや表示器/MDIユニット60を介して入力された加工プログラム等が記憶される。これら加工プログラムは、設計者が、CAD(Computer Aided Design)やCAM(Computer Aided Manufacturing)を利用して生成したものである。
【0028】
インタフェース15は、数値制御装置1とアダプタ等の外部機器との接続を可能とするものである。外部機器側からは加工プログラムや各種パラメータ等が読み込まれる。また、数値制御装置1内で編集した加工プログラムは、外部機器を介して外部記憶手段に記憶させることができる。
【0029】
PMC(Programmable machine Controller)16は、一般的にはPLC(Programmable Logic Controller)と呼ばれる装置である。PMC16は、数値制御装置1に内蔵されたシーケンスプログラムで工作機械の補助装置(例えば、工具交換用のロボットハンドといったアクチュエータ)にI/Oユニット17を介して信号を出力し制御する。また、工作機械の本体に配備された操作盤の各種スイッチ等の信号を受け、必要な信号処理をした後、CPU11に渡す。
【0030】
表示器/MDIユニット60は、ユーザに対して所定の情報を表示する機能、及びユーザからの操作を受け付ける機能を有する手動データ入出力装置である。表示器/MDIユニット60は、例えば、ディスプレイ、キーボード、マウス、タッチパネル等、あるいはこれらの組み合わせにより実現される。
【0031】
インタフェース18は、表示器/MDIユニット60に受け付けたユーザ操作に基づいた指令やデータを受けてCPU11に渡す。インタフェース19は手動パルス発生器等を備えた操作盤70に接続されている。
【0032】
各軸の軸制御回路30〜34は、CPU11からの各軸の移動指令量を受けて、各軸の指令をサーボアンプ40〜44に出力する。
【0033】
サーボアンプ40〜44は、各軸の軸制御回路30〜34からの指令を受けて、各軸のサーボモータ50〜54を駆動する。各軸のサーボモータ50〜54は位置・速度検出器を内蔵し、この位置・速度検出器からの位置・速度フィードバック信号を軸制御回路30〜34にフィードバックし、位置・速度のフィードバック制御を行う。なお図中では、位置・速度のフィードバックに関しては記載を省略する。また、図中では、説明の為の一例として、工作機械2が、X軸、Y軸、Z軸、B軸、及びC軸の5軸を有する構成を示す。
【0034】
スピンドル制御回路35は、工作機械への主軸回転指令を受け、スピンドルアンプ45にスピンドル速度信号を出力する。スピンドルアンプ45はこのスピンドル速度信号を受けて、工作機械のスピンドルモータ55を指令された回転速度で回転させ、工具を駆動する。
【0035】
スピンドルモータ55には、歯車あるいはベルト等でパルスエンコーダ56が結合され、パルスエンコーダ56が主軸の回転に同期して帰還パルスを出力し、その帰還パルスはデータ通信バス20を経由してCPU11によって読み取られる。
【0036】
<機能的構成>
次に、数値制御装置1の機能的構成について説明する。
図2は、図1の数値制御装置1の機能的構成のうち、設定値選択処理を実行するための機能的構成を示す機能ブロック図である。
設定値選択処理とは、ユーザの指定等に基づいて、パラメータに適用する設定値を選択し、選択した設定値に基づいて、工作機械2を制御する一連の処理である。
【0037】
設定値選択処理が実行される場合、図2に示すように制御部110と、記憶部120が機能する。ここで、これら制御部110及び記憶部120は、図1に示すCPU11、ROM12、RAM13、及びCMOSメモリ14等が協働することにより実現される。
【0038】
より詳細には、設定値選択処理が実行される場合、図2に示すように、制御部110において、提示部111、指定受付部112、適用値選択部113、及び工作機械制御部114が機能する。
また、設定値選択処理が実行される場合、記憶部120の一領域には、推奨設定値記憶領域121、ユーザ設定値記憶領域122、選択条件記憶領域123、及び適用値記憶領域124が設定される。
【0039】
推奨設定値記憶領域121は、工作機械の制御に関するパラメータのそれぞれについて推奨される設定値(以下「推奨設定値」と称する。)を記憶する領域である。
ユーザ設定値記憶領域122は、上記パラメータそれぞれについてユーザの指定した設定値(以下「ユーザ設定値」と称する。)を記憶する領域である。
【0040】
ここで、推奨設定値は、例えば、数値制御装置1や工作機械2を製造するメーカにて指定される。推奨設定値は、例えば、メーカが統計を取った既存の設定値をサンプルデータとして、機械サイズ毎(例えば、小型、中型、及び大型)、及び加工の目的毎に指定される。例えば、既存の設定値の、平均値、最大値、及び最小値の何れかが、推奨設定値として指定される。
この推奨設定値は、メーカが好ましいと推奨する設定値ではあるが、様々な用途を想定した値であり、ユーザの希望や用途によっては必ずしも最適な値ではない。そこで、本実施形態では、ユーザの指定したユーザ設定値を、パラメータに適用することを可能とする。
【0041】
なお、推奨設定値やユーザ設定値を適用可能なパラメータは特に限定されない。すなわち、設定値選択処理の対象とするパラメータは特に限定されない。
例えば、工作機械2の制御での位置に係る設定パラメータであれば、「インポジション幅」や、「トレランス量」等のパラメータを設定値選択処理の対象とすることができる。他にも、例えば、工作機械2の制御での速度に係る設定パラメータであれば、「送り軸の速度(例えば、上限/下限速度)」や、「許容速度差」等のパラメータを設定値選択処理の対象とすることができる。他にも、例えば、工作機械2の制御での加速度に係る設定パラメータであれば、「許容最大加速度」や、「加減速の時定数」等のパラメータを設定値選択処理の対象とすることができる。
【0042】
他にも、例えば、工作機械2の制御での加加速度に係る設定パラメータであれば、「許容加速度変化量」等のパラメータを設定値選択処理の対象とすることができる。他にも、例えば、工作機械2の制御でのトルクに係る設定パラメータであれば、「モータのトルク」等のパラメータを設定値選択処理の対象とすることができる。他にも、例えば、工作機械2の制御でのサーボモータ制御に係る設定パラメータであれば、「位置ループゲイン」や、「速度ループゲイン」や、「切削時・速度ループゲイン倍率」や、「フィードフォワード係数」や、「オーバラップ量」等のパラメータを設定値選択処理の対象とすることができる。
【0043】
選択条件記憶領域123は、パラメータに適用する適用値として、推奨設定値とユーザ設定値の何れを選択するかを決定するための選択条件を記憶する領域である。この選択条件の詳細については、適用値選択部113の説明の際に後述する。
【0044】
適用値記憶領域124は、適用値選択部113により選択された推奨設定値又はユーザ設定値であって、パラメータに適用された設定値(以下「適用値」と称する。)を記憶する領域である。後述の工作機械制御部114は、適用値に基づいて、工作機械2を制御する。
【0045】
提示部111は、ユーザが、ユーザ設定値や選択条件を指定して、適用値を決定するための、設定用ユーザインタフェースを提示する機能を含む。提示部111は、設定用ユーザインタフェースに対応する画像データを生成する。また、提示部111は、生成した設定用ユーザインタフェースを、表示器/MDIユニット60に含まれるディスプレイ等に表示させることにより、提示を行う。設定用ユーザインタフェースの具体例については、図6及び図7を参照して後述する。なお、提示部111による提示は、ネットワーク等の通信を介して接続される他の装置への表示であってもよく、音声等の出力を伴ってもよい。
【0046】
指定受付部112は、ユーザによる指定を受け付ける機能を含む。ユーザによる指定とは、例えば、ユーザ設定値の指定や、選択条件に対応する加工の目的の指定である。また、他にも、ユーザによる指定とは、これらの指定に基づいて、適用値選択部113が選択した設定値を変更する指定や、選択した設定値をパラメータへ適用する指定である。指定受付部112は、表示器/MDIユニット60に含まれるキーボードやマウス等により入力されるユーザの操作に基づいて、ユーザの指定を受け付ける。なお、指定受付部112によるユーザの指定の受け付けは、ネットワーク等の通信を介して接続される他の装置を介して行われてもよい。
【0047】
適用値選択部113は、推奨設定値記憶領域121が記憶している推奨設定値と、ユーザ設定値記憶領域122が記憶しているユーザ設定値の何れか一方を、適用値として選択する機能を含む。また、適用値選択部113は、選択した適用値を、適用値記憶領域124に記憶させる。
【0048】
適用値選択部113による、適用値の選択は、上述したように、選択条件記憶領域123に記憶されている選択条件に基づいて行われる。この選択条件は、例えば、工作機械2による加工の目的(例えば、加工の精度や加工の速度)毎に設けられる。また、選択条件は、それぞれ加工の目的に応じて、推奨設定値又はユーザ設定値の何れを選択するのかを決定する選択基準が異なる。また、推奨設定値は、それぞれ加工の目的に応じて値が異なっていてもよい。
【0049】
選択条件の具体例として、図3に、加工の目的「サイクルタイム短縮」に対応する選択条件を示す。また、選択条件の他の具体例として、図4に、加工の目的「加工精度向上」に対応する選択条件を示す。また、これら選択条件には、選択条件に基づいて適用値を選択する対象のパラメータとして、「インポジション幅」、「送り速度」、及び「フィードフォワード係数」が含まれる。
【0050】
ここで、「インポジション幅」は、工作機械2の制御において、位置決め動作が完了したか否かを判定するための幅を示すパラメータである。数値制御装置1は、工作機械2の制御において、位置偏差がインポジション幅以内となったときに移動完了と判定して次移動を開始する。このインポジション幅が広いほどサイクルタイムは短縮するが、それに引き換えて加工精度が低下する。
【0051】
そのため、図3に示す加工の目的「サイクルタイム短縮」に対応する選択条件では、サイクルタイムが短縮するように、インポジション幅が大きい方の設定値を適用値として選択するという選択基準となる。例えば、図3に示すように、「インポジション幅」のユーザ設定値が「0.2mm」であり、推奨設定値が「0.1mm」である場合には、適用値選択部113は、選択条件に基づいて、インポジション幅が大きい方のユーザ設定値の値「0.2mm」を適用値として選択する。
【0052】
一方で、図4に示す加工の目的「加工精度向上」に対応する選択条件では、加工精度が向上するように、インポジション幅の幅が小さい方の設定値を適用値として選択するという選択基準となる。例えば、図4に示すように、「インポジション幅」のユーザ設定値が「0.2mm」であり、推奨設定値が「0.1mm」である場合には、適用値選択部113は、選択条件に基づいて、インポジション幅の幅が小さい推奨設定値の方の値「0.1mm」を適用値として選択する。
【0053】
同様に、「送り速度」については、大きいほうがサイクルタイムは短縮するが、それに引き換えて加工精度が低下する。そのため、図3に示す加工の目的「サイクルタイム短縮」に対応する選択条件では、サイクルタイムが短縮するように、送り速度が大きい方の設定値を適用値として選択するという選択基準となる。一方で、図4に示す加工の目的「加工精度向上」に対応する選択条件では、加工精度が向上するように、送り速度が小さい方の設定値を適用値として選択するという選択基準となる。
【0054】
これに対して、「フィードフォワード係数」については、大きいほうがサイクルタイムも短縮し、加工精度も向上する。そのため、図3に示す加工の目的「サイクルタイム短縮」に対応する選択条件では、サイクルタイムが短縮するように、フィードフォワード係数が大きい方の設定値を適用値として選択するという選択基準となる。また、図4に示す加工の目的「加工精度向上」に対応する選択条件においても、加工精度が向上するように、フィードフォワード係数が大きい方の設定値を適用値として選択するという選択基準となる。
このように、選択条件は、それぞれ加工の目的に応じた設定値が選択されるようにして規定される。従って、適用値選択部113は、それぞれ加工の目的に応じた、適切な設定値を選択することができる。
【0055】
図2に戻り、工作機械制御部114は、各パラメータに適用された適用値に基づいて、工作機械2を制御する機能を含む。工作機械制御部114は、適用値選択部113が上述したようにして選択した、「インポジション幅」、「送り速度」、及び「フィードフォワード係数」等のパラメータに適用された適用値に基づいて、工作機械2を制御する。なお、数値制御装置により行われる、パラメータに適用された適用値に基づいた工作機械の制御については、当業者にとってよく知られているので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0056】
<動作>
図5は、図2の機能的構成を有する図1の数値制御装置1が実行する設定値選択処理の流れを説明するフローチャートである。
【0057】
ステップS11において、提示部111は、設定用ユーザインタフェースの表示を開始する。なお、以後のステップS17まで、設定用ユーザインタフェースの表示は継続する。
【0058】
ステップS12において、指定受付部112は、ユーザからの指定を受け付ける。例えば、指定受付部112は、ユーザ設定値の指定や、選択条件に対応する加工の目的の指定を受け付ける。
【0059】
ステップS13において、適用値選択部113は、ステップS12において指定された加工の目的に対応する選択条件に基づいて、推奨設定値又はステップS12において指定されたユーザ設定値の何れかを選択する。
【0060】
ステップS14において、適用値選択部113は、ユーザからステップS13において選択した推奨設定値又はユーザ設定値を、変更する指定をユーザから受け付けたか否かを判定する。
変更する指定をユーザから受け付けた場合は、ステップS14においてYesと判定され、処理はステップS13に戻る。そして、再度行われるステップS13において、指定受付部112は、変更後の設定値を選択する。すなわち、前回のステップS13において選択した推奨設定値を選択していた場合には、これを変更してユーザ設定値を選択する。また、前回のステップS13においてユーザ設定値を選択していた場合には、これを変更して推奨設定値を選択する。
一方で、変更する指定をユーザから受け付けない場合は、ステップS14においてNoと判定され、処理はステップS15に進む。
【0061】
ステップS15において、適用値選択部113は、直近に行われたステップS13において選択した推奨設定値又はユーザ設定値を、適用値としてパラメータに適用する。
【0062】
ステップS16において、適用値選択部113は、上述の処理により、全てのパラメータについて適用値が適用されたか否かを判定する。全てのパラメータについて適用値が適用された場合は、ステップS16においてYesと判定され、処理はステップS17に進む。一方で、全てのパラメータについて適用値が適用されていない場合は、ステップS16においてNoと判定され、処理はステップS12に戻る。そして、未だ適用値が適用されていないパラメータを対象として、処理が繰り返される。
【0063】
ステップS17において、工作機械制御部114は、各パラメータに適用された適用値に基づいて、工作機械2を制御する。これにより、本設定値選択処理は終了する。
【0064】
<選択用ユーザインタフェース>
次に、図6及び図7を参照して、上述の設定値選択処理において表示される設定用ユーザインタフェースの具体例について説明をする。なお、今回は、図3に示す加工の目的「サイクルタイム短縮」が指定されている場合を想定する。
【0065】
図6及び図7に示すように、設定用ユーザインタフェースは、所定の情報を表示するための表示領域として、表示領域AR11、表示領域AR21、表示領域AR22、表示領域AR23、表示領域AR24、表示領域AR25、及び表示領域AR31を含む。
【0066】
表示領域AR11には、現在設定値選択処理において設定対象としている軸を示す情報が表示される。
表示領域AR21には、設定値選択処理において設定対象としているパラメータのパラメータ名が表示される。
表示領域AR22には、各パラメータそれぞれについてユーザ設定値が選択中であるか否かを示す情報が表示される。例えば、ユーザ設定値が選択中である場合に塗りつぶされるチェックボックスが表示される。
【0067】
表示領域AR23には、各パラメータそれぞれについて対応するユーザ設定値の値が表示される。
表示領域AR24には、各パラメータそれぞれについて推奨設定値が選択中であるか否かを示す情報が表示される。例えば、推奨設定値が選択中である場合に塗りつぶされるチェックボックスが表示される。
表示領域AR25には、各パラメータそれぞれについて対応する推奨設定値の値が表示される。
表示領域AR31には、現在ユーザ設定値を入力する対象として選択されているパラメータの詳細が表示される。ユーザは、この詳細を参照した上で、ユーザ設定値を入力することができる。
【0068】
図6及び図7の例では、送り速度及びフィードフォワード係数について、図3に示す加工の目的「サイクルタイム短縮」に含まれる選択条件に基づいて、推奨設定値が選択済みである。
この場合に、ユーザがインポジション幅の設定を更に行う場合を例に取って説明すると、図6の表示領域AR23に示すようにユーザ設定値の指定が未だない場合には、図6の表示領域AR24に示すように、推奨設定値が選択される。
【0069】
その後、図7の表示領域AR23に示すようにユーザ設定値「0.2」が入力されたとする(図5のステップS13に相当)。この場合、適用値選択部113は、図7の表示領域AR22に示すように、図3に示す加工の目的「サイクルタイム短縮」に含まれる選択条件に基づいて、ユーザ設定値を選択する(図5のステップS14に相当)。図7に示す表示を参照したユーザは、ユーザ設定値のままでよいのであれば、特に変更指定を行わない(図5のステップS14においてNoに相当)。一方で、図7に示す表示を参照したユーザは、それでも推奨設定値に変更したい場合には、変更指定を行う(図5のステップS14においてYesに相当)。
【0070】
このようにして、ユーザは、設定用ユーザインタフェースを利用して、選択条件に応じた適切なパラメータ設定値を、簡便に選択することができる。
また、ユーザは、選択条件に応じた設定値以外の他の設定値を選択したい場合には、この他の設定値を選択することもできる。従って、仮に選択条件に応じた設定値が、ユーザの希望と異なるような場合であっても、ユーザの意思を反映した選択を行うことができる。
【0071】
上述した実施形態は、本発明の好適な実施形態ではあるが、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。例えば、上述した実施形態は、以下に説明するような変形例のように種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0072】
<ソフトウェアによる実現>
上述した実施形態において、数値制御装置1に含まれる各構成部は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。また、数値制御装置1に含まれる各構成部のそれぞれの協働により行なわれる設定方法も、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0073】
この場合、ソフトウェアは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、ソフトウェアは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0074】
1 数値制御装置
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 CMOSメモリ
15、18、19 インタフェース
16 PMC
17 I/Oユニット
20 データ通信バス
30〜34 軸制御回路
40〜44 サーボアンプ
50〜54 サーボモータ
35 スピンドル制御回路
45 スピンドルアンプ
55 スピンドルモータ
56 パルスエンコーダ
60 表示器/MDIユニット
70 操作盤
110 制御部
111 提示部
112 指定受付部
113 適用値選択部
114 工作機械制御部
120 記憶部
121 推奨設定値記憶領域
122 ユーザ設定値記憶領域
123 選択条件記憶領域
124 適用値記憶領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7